説明

パターン検査装置

【目的】パターン領域と非パターン領域の間に段差がある被検査試料であっても、効率的に検査可能なパターン検査装置を提供する。
【構成】パターン領域内に指定される被検査領域を記憶する被検査領域記憶部と、被検査試料上のパターン面高さ測定位置に対するパターン面高さ信号を検出するパターン面高さ検出部と、パターン面高さ検出部で検出されるパターン面高さ信号を用いて、被検査試料に対するフォーカスを合わせるオートフォーカス機構と、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置するか否かを判定する判定部と、判定部が、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置すると判定する場合にはオートフォーカス機構を駆動し、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置しないと判定する場合にはオートフォーカス機構を停止するオートフォーカス機構制御部と、を有することを特徴とするパターン検査装置

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが形成された被検査試料を検査するパターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パターンの微細化は著しく進んでいる。半導体は、一般的にマスクに描画されたパターンをウェハに縮小投影する形で製造される。そのため、半導体の微細加工には縮小投影光学系における回折の影響による限界がある。
【0003】
縮小光学系が対応できる最小パターンサイズは使用する光の波長に比例するため、半導体露光装置の光源の短波長化は193nmまで進んでいる。しかし、これ以上の短波長化は、対応できる硝材がほとんどなくなるため、次世代露光装置では真空中の反射光学系で構成される極紫外線(EUV光)を使ったものまで一気に進むと考えられている。
【0004】
もっとも、この装置は解決すべき課題も多く、また非常にコスト高である。このため、その代案の1つとしてインプリント・リソグラフィが検討されている。
【0005】
インプリント・リソグラフィの原理は、半導体パターンと同サイズのパターンが彫られたガラスマスクをインプリント・レジストに押し付け、レジストを紫外線硬化させた後マスクを剥がす、いわば判子の原理である。そのため、インプリント・リソグラフィ用のマスクは、パターン領域が周辺の非パターン領域より突出した凸形状を持っている。
【0006】
インプリント・リソグラフィ用のマスクをマスク欠陥検査装置で検査する場合、以下のような問題が発生する。一般に、マスク欠陥検査装置は、リニア・サーペンタイン動作で検査領域をスキャンする。検査の対象となるパターン領域は、凸形状の端のぎりぎりまでパターンが形成されている。このため、マスク走行時に数十ミクロンから数百ミクロンある非パターン領域との段差でマスク面に対する大幅なデフォーカスが生じてしまう。
【0007】
特許文献1には、試料面に段差のあるぺリクル付きの被検査試料の検査においても、フォーカスのための試料面の高さ調整を行うことが可能な高さ位置調整方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−125411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、パターン領域と非パターン領域の間に段差がある被検査試料であっても、効率的に検査可能なパターン検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様のパターン検査装置は、パターンが形成されたパターン領域と、パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有する被検査試料上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて被検査試料を検査するパターン検査装置であって、パターン領域内に指定される被検査領域を記憶する被検査領域記憶部と、被検査試料上のパターン面高さ測定位置に対するパターン面高さ信号を検出するパターン面高さ検出部と、パターン面高さ検出部で検出されるパターン面高さ信号を用いて、被検査試料に対するフォーカスを合わせるオートフォーカス機構と、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置するか否かを判定する判定部と、判定部が、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置すると判定する場合にはオートフォーカス機構を駆動し、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置しないと判定する場合にはオートフォーカス機構を停止するオートフォーカス機構制御部と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記第1の態様のパターン検査装置において、検査開始時のパターン面高さ測定位置を被検査領域内に設定する検査開始位置設定部を、さらに有することが望ましい。
【0012】
上記第1の態様のパターン検査装置において、検査に使用する画像よりも低倍率だが焦点深度が大きくオートフォーカスを必要としない低倍率画像取得部と、低倍率画像取得部で取得される画像から被検査領域を指定する被検査領域指定部と、をさらに有することが望ましい。
【0013】
本発明の第2の態様のパターン検査装置は、パターンが形成されたパターン領域と、パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有し、ステージ上に載置される被検査試料上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて被検査試料を検査するパターン検査装置であって、パターン領域が形成するパターン面上の3箇所の高さを測定する高さ測定部と、高さ測定部の測定結果から、パターン面の傾斜を算出する傾斜演算部と、傾斜演算部における演算結果からパターン面とステージ走行面との傾斜を一致させるための補正値を演算する補正値演算部と、補正値を用いてパターン面とステージ走行面との傾斜を一致させる傾斜補正機構と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記第2の態様のパターン検査装置において、被検査試料上のパターン面高さをモニタするパターン面高さモニタ部を、さらに有することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パターン領域と非パターン領域の間に段差がある被検査試料であっても、効率的に検査可能なパターン検査装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態のパターン検査装置の要部の構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施の形態のパターン検査装置の全体構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態のパターン検査装置における検査の説明図である。
【図4】第1の実施の形態のパターン検査装置の被測定試料となるインプリント・リソグラフィ用のマスクの説明図である。
【図5】第1の実施の形態のパターン検査方法を示す図である。
【図6】第2の実施の形態のパターン検査装置の要部の構成を示す模式図である。
【図7】第3の実施の形態のパターン検査装置の要部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
なお、本明細書中、「マスク面」とは、マスクのパターンが形成された側の面を意味するものとする。
【0019】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のパターン検査装置は、パターンが形成されたパターン領域と、パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有する被検査試料上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて被検査試料を検査するパターン検査装置である。そして、パターン領域内に指定される被検査領域を記憶する被検査領域記憶部と、被検査試料上のパターン面高さ測定位置に対するパターン面高さ信号を検出するパターン面高さ検出部と、パターン面高さ検出部で検出されるパターン面高さ信号を用いて、被検査試料に対するフォーカスを合わせるオートフォーカス機構と、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置するか否かを判定する判定部と、判定部が、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置すると判定する場合にはオートフォーカス機構を駆動し、パターン面高さ測定位置が被検査領域内に位置しないと判定する場合にはオートフォーカス機構を停止するオートフォーカス機構制御部と、を有する。
【0020】
本実施の形態のパターン検査装置は、あらかじめ指定される被検査領域内でのみ、オートフォーカス機構を駆動することを可能にする。このため、例えばマスク面上のパターン領域と非パターン領域の間に段差があるマスクを被検査試料とする場合であっても、段差の影響でフォーカス合わせ機構が無駄な動作をすることがなくなり、その動作に伴うタイムラグや誤動作もなくなるため、効率的に検査することが可能となる。
【0021】
以下、被検査試料が、マスク面上のパターン領域と非パターン領域の間に段差があるインプリント・リソグラフィ用のマスクである場合を例に説明する。また、パターン検査装置として、マスク欠陥検査装置を例に説明する。
【0022】
図2は、本実施の形態のパターン検査装置の全体構成を示す図である。図3は、本実施の形態のパターン検査装置における検査の説明図である。
【0023】
図2に示す、マスク欠陥検査装置100においては、被測定試料であるマスク101に形成されたパターンにおける被検査領域が、図3に示されるように、仮想的に幅Wの短冊状の検査ストライプに分割されている。そして、この分割された検査ストライプが連続的に走査されるように、図2に示すXYθテーブル102上にマスク101を搭載し、ステージをX軸方向に連続移動させながら検査が実行される。1つのストライプ検査が終了したら、隣のストライプを観察するためにY軸方向にステップ移動が行われる。この動作を続けることにより、本実施の形態では、リニア・サーペンタイン型スキャンが行われる。
【0024】
マスク101は、オートローダ130とオートローダ制御回路113を用いて、XYθテーブル102の上に載置される。上記のXYθテーブル102の制御は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータとテーブル制御回路114を用いて行われる。
【0025】
マスク101に形成されたパターンには、適切な光源103から発せられた光が照明光学系170によって照射される。マスク表面で反射した光は拡大光学系104を介して、検査用撮像手段であるフォトダイオードアレイ105に入射される。フォトダイオードアレイ105の上には、図3に示す仮想的に分割されたパターンの短冊状領域の一部が拡大され、光学画像として結像される。結像状態を良好に保つためにマスク面でのデフォーカスが最小に抑えられるよう、オートフォーカス制御回路142によりオートフォーカス制御されている。
【0026】
フォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によりA/D変換される。このセンサ回路106から出力された測定画像データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上のマスク101の位置を示すデータと共に比較回路108に送られる。
【0027】
一方、マスク101のパターン形成時に用いた設計データは、磁気ディスク109から制御計算機110を介して展開回路140に読み出される。展開回路140では、読み出された設計データが、2値または多値の設計画像データに変換され、この設計画像データが参照回路144に送られる。参照回路144は、送られてきた図形の設計画像データに対して適切なフィルタ処理を施す。
【0028】
このフィルタ処理は、センサ回路106から得られた測定パターンデータには、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態になるため、設計画像データにもフィルタ処理を施して、測定画像データに合わせるために行われる。比較回路108は、測定画像データと適切なフィルタ処理が施された設計画像データとを適切なアルゴリズムにしたがって比較し、一致しない場合には欠陥有りと判定する。
【0029】
このように、被検査試料であるマスク表面に形成されたパターンに存在する欠陥や異物を検査する本実施の形態のマスク検査装置では、高分解能顕微鏡と同様の光学系を用いてマスクパターン像を形成し、例えば、上記のフォトダイオードアレイのようなCCDカメラや、あるいはラインセンサ等の撮像素子によって画像情報として取得し、別に取得あるいは形成した基準画像との比較を行ってパターン内の欠陥や異物を見つけるようになっている。
【0030】
なお、ここでは欠陥検出のために設計画像データと測定画像データを比較するマスク欠陥検査装置について説明したが、測定画像データ同士を比較するマスク欠陥検査装置であってもかまわない。
【0031】
また、ここでは照明光学系として反射検査のための反射照明光学系のみを有するマスク欠陥検査装置について説明したが、透過検査のための透過照明光学系をさらに有するマスク欠陥検査装置であってもかまわない。
【0032】
図4は、本実施の形態のマスク欠陥検査装置の被測定試料となるインプリント・リソグラフィ用のマスクの説明図である。図4(a)が上面図、図4(b)が図4(a)のAA断面図である。
【0033】
インプリント・リソグラフィ用のマスク10には、パターン領域12と非パターン領域14が存在し、パターン領域12は、非パターン領域14から、数十ミクロンから数百ミクロン出っ張って形成されている。また、パターン領域には表面の凹凸によりパターンが形成されている。
【0034】
図1は、本実施の形態のパターン検査装置の要部の構成を示す模式図である。図1(a)はマスクの断面を含む模式図、図1(b)は上面から見た模式図である。
【0035】
図1(a)に示すように、本実施の形態のマスク欠陥検査装置は、XYθテーブル102上に載置されるインプリント・リソグラフィ用のマスク10を検査する。図1(a)では、マスク10のパターン面(またはマスク面)が上側にくるように図示している。すなわち、検査光は図の上方からマスク面に照射される。
【0036】
本実施の形態のパターン検査装置は、パターン領域12内にあらかじめ指定される被検査領域16を記憶する被検査領域記憶部22を備えている。被検査領域16は、例えばパターン領域12と非パターン領域14との境界線から、数μm〜数mmパターン領域側に入った線で囲まれる領域である。被検査領域記憶部22は、例えば、ハードディスクで構成される。
【0037】
被検査領域16の指定方法は、特に、限定されるものではない。例えば、マスクの設計データに基づき、その範囲を決定しておき、あらかじめ被検査領域記憶部22に記憶させることが可能である。
【0038】
そして、被検査試料上のパターン面高さ測定位置Pに対するパターン面高さをパターン面信号として検出するパターン面高さ検出部24を備えている。パターン面高さ測定位置Pは、例えば、検査視野20の中心である。また、例えば、検査視野20外の検査視野20近傍であってもかまわない。
【0039】
パターン面高さ検出部24は、マスク面(またはパターン面)におけるパターン面高さを検出しうる構成であれば特に限定されるものではない。例えば、マスク面と共役の位置に配置される検査視野用のスリットにパターンを設け、このパターンの光量をパターン画像取得用のフォトダイオードアレイと別個のセンサでモニタすることでパターン面高さを検出することが可能である。あるいは、検査光とは別個のパターン面高さ測定用光学系を用いてもかまわない。
【0040】
さらに、パターン面高さ検出部24で検出されるパターン面高さ信号を用いて、マスク10に対するフォーカスを自動的に合わせるオートフォーカス機構26を備えている。オートフォーカス機構26は、マスク面におけるパターン面高さの検出結果に基づき、例えば、図1(a)中黒両矢印で示すように、図示しない高さ調整機構により、マスク10を上下移動させることにより所望のパターン面高さに保持しフォーカス合わせを行う。いわゆる、フォーカスサーボ処理が行われることになる。
【0041】
これにより、フォトダイオードアレイに結像されるマスク面のパターン画像の結像状態を良好に保つことが可能となる。図2に示すオートフォーカス回路142は、オートフォーカス機構26の一構成要素である。なお、フォーカス合わせは、必ずしも、マスク10の上下移動に限らず、例えば、対物レンズやフォーカス補正用の光学レンズ等を移動させることで行うものであってもかまわない。
【0042】
そして、パターン面高さ測定位置Pが被検査領域16内に位置するか否かを判定する判定部28を備えている。判定は、例えば、レーザー測長システム122(図2)でモニタされるステージ位置と、指定された被検査領域16との位置関係を用いて行われる。
【0043】
そして、判定部28が、パターン面高さ測定位置Pが被検査領域16内に位置すると判定する場合にはオートフォーカス機構26を駆動し、パターン面高さ測定位置Pが被検査領域16内に位置しないと判定する場合にはオートフォーカス機構26を停止するオートフォーカス機構制御部30を備えている。
【0044】
さらに、検査開始時のパターン面高さ測定位置Pを被検査領域16内に設定する検査開始位置設定部32を備えている。検査開始位置設定部32は、例えば、被検査領域記憶部22に記憶される被検査領域16の範囲を読み取り、検査開始位置を人為的または自動的に設定する機能を備える。そして、検査開始時に設定された位置にパターン面高さ測定位置Pがくるようテーブル制御回路114(図2)に指令し、XYθテーブル102を移動させる。
【0045】
なお、判定部28、オートフォーカス機構制御部30、検査開始位置設定部32は、例えば、CPUや回路基板等のハードウェアまたはハードウェアとプログラム等のソウトウェアとの組み合わせで構成される。
【0046】
さらに、判定部28の結果に基づき、パターン面高さ測定位置Pが被検査領域16内から被検査領域16外へと出る際、すなわちオートフォーカス機構26を停止する際に、マスク10の高さを固定する高さ固定部(図示せず)と、オートフォーカス機構26作動中のマスク高さを記憶するマスク高さ記憶部(図示せず)とを備えることが望ましい。
【0047】
高さ固定部は、例えば、パターン面高さ測定位置Pが被検査領域16内から被検査領域16外へと出る直前のマスクの高さに、マスク高さを固定する機能を備える。固定するマスク高さは、例えば、マスク高さ記憶部に記憶されるオートフォーカス機構26停止の瞬間または直前の一点のマスク高さであっても良いし、一定期間内の平均的な高さであってもかまわない。平均的な高さを用いる場合には、さらに、高さの平均を演算するマスク高さ演算部(図示せず)を設けることが望ましい。
【0048】
図5は、本実施の形態のパターン検査方法を示す図である。以下、図1をも参照しつつ、本実施の形態のパターン検査方法について説明する。
【0049】
本実施の形態のマスク欠陥検査方法では、マスク10の検査は、XYθテーブルが移動しながらパターン画像を取得することで行われる。スキャン経路40のように、検査視野20がマスク面上をリニア・サーペンタイン動作で走査してパターン画像を取得していく。
【0050】
まず、最初にパターン領域12内に被検査領域16が、人為的または自動的に設定される。この被検査領域16は、被検査領域記憶部22に記憶される。
【0051】
そして、検査開始時には、検査開始位置設定部32によって、パターン面高さ測定位置Pが、被検査領域記憶部22に記憶される被検査領域16内にくるようXYθテーブル102を移動させる。図5では、検査開始時のフォーカス測定位置をPで示す。
【0052】
パターン面高さ検出部24により、マスク10上のパターン面高さ測定位置に対するパターン面高さが検出される。そして、オートフォーカス機構26が、パターン面高さ検出部で検出されるパターン面高さ信号を用いて、マスクに対するフォーカスを合わせる。
【0053】
判定部28が、パターン面高さ測定位置が被検査領域16内に位置するか否かを判定する。被検査領域16内に位置すると判定する場合にはオートフォーカス機構26を駆動し、被検査領域16内に位置しないと判定する場合にはオートフォーカス機構26を停止する。
【0054】
検査開始時には、パターン面高さ測定位置が被検査領域16内のPに位置するため、オートフォーカス機構26が駆動される。
【0055】
検査開始後、検査視野20が移動する際、パターン面高さ測定位置が被検査領域16内にある場合には、オートフォーカス機構26が駆動して、マスク面(パターン面)に対し、フォーカスが合わせられる。そして、第一のストライプを撮像するために、一度P6までバックするが、このときパターン面高さ測定位置がP5に示される検査領域16のエッジに達し、被検査領域16外の位置に出るとオートフォーカス機構26が停止される。オートフォーカス機構26が停止する瞬間または直前に、例えば、停止前の一定期間内の平均的なマスクの高さに、マスクの高さを固定する。
【0056】
その後、P6から第一のストライプの走査に入り、パターン面高さ測定位置がP5で示される被検査領域16のエッジに達し、被検査領域16内に入ると、停止していたオートフォーカス機構26が再度、駆動を開始し、マスク面に対し、フォーカスが合わせられる。このとき、既にパターン面の高さに固定された状態からオートフォーカス動作が復帰するため、復帰の際に発生するステップ的な変動が最小限に抑えられ、スムーズに復帰することができる。
【0057】
その後、検査視野20が移動する際、マスク高さ測定位置が被検査領域16内にある間は、オートフォーカス機構26が駆動して、マスク面に対し、フォーカスが合わせられる。そして、検査視野20が移動し、マスク高さ測定位置がPで示される被検査領域16のエッジに達し、被検査領域16外の位置に出ると、オートフォーカス機構26が停止される。例えば、Pで示される位置にマスク高さ測定位置がある場合、マスクの高さは固定されている。
【0058】
その後、逆方向の走査に入り、パターン面高さ測定位置がPで示される被検査領域16のエッジに達し、被検査領域16内に入ると、停止していたオートフォーカス機構26が再度、駆動を開始し、マスク面に対し、フォーカスが合わせられる。その後、フォーカス測定位置がPで示されるように、被検査領域16内にある間は、オートフォーカス機構26が駆動を続ける。
【0059】
上記動作を、経路40に沿った検査視野20の走査に伴い繰り返すことでパターン画像が取得される。そして、取得されたパターン画像を用いて、パターン検査、すなわち、マスクの欠陥検査が行われる。
【0060】
なお、検査視野20の走査方向と直交する方向のパターン領域12境界近傍のパターン画像を取得する際は、パターン面高さ測定位置がパターン領域12境界からはみ出ないような位置に検査視野20が来るようにして撮像する。
【0061】
本実施の形態のパターン検査装置およびパターン検査方法によれば、パターン領域12に対して大きな高低差のある非パターン領域14について、オートフォーカス機構が駆動されることはない。したがって、リニア・サーペンタイン動作の走査においても、マスクの段差の影響でオートフォーカス機構が無駄な動作、例えば、非パターン領域14にフォーカスを合わせるためのフォーカスサーボ処理、あるいは、非パターン領域14に合わせたフォーカスをフォーカスサーボ処理により再度パターン領域12に合わせなおすための待機等で生ずるタイムラグがなくなり、効率的に検査することが可能となる。また、オートフォーカス機構が誤動作し、装置が停止してしまうような問題も生じない。
【0062】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、パターン画像よりも低倍率の画像を取得可能な低倍率画像取得部と、この低倍率画像取得部で取得される画像から被検査領域を指定する被検査領域指定部を、さらに備えること以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については、記述を省略する。
【0063】
図6は、本実施の形態のパターン検査装置の要部の構成を示す模式図である。図6(a)はマスクの断面を含む模式図、図6(b)は上面から見た模式図である。
【0064】
本実施の形態のパターン検査装置は、検査に用いるパターン画像よりも低倍率の画像を取得可能な低倍率画像取得部42を備えている。また、この低倍率画像取得部42で取得される画像から被検査領域16を指定する被検査領域指定部44を備えている。
【0065】
低倍率画像取得部42は、例えば、倍率が等倍から64倍程度のカメラであり、焦点深度が深いためオートファーカス機構なしでマスク面に対するフォーカスが合うよう構成されている。被検査領域指定部44は、この低倍率画像取得部42で取得される画像から、人為的または自動的に被検査領域16を指定する。
【0066】
例えば、低倍率のカメラで撮像された画像上でカーソル等を用いて範囲指定することで、被検査領域16を指定することが可能である。また、例えば、低倍率のカメラで撮像された画像上で自動的にパターン領域12を認識し、そのパターン領域12のエッジから所定の寸法内側の矩形領域を自動的に被検査領域16と指定してもかまわない。
【0067】
指定された被検査領域16は、被検査領域記憶部22に記憶される。
【0068】
本実施の形態のパターン検査方法においては、パターン画像の取得に先立ち、低倍率画像取得部42によるマスク面の撮像と、被検査領域指定部44による被検査領域16の指定が行われる。
【0069】
本実施の形態のパターン検査装置およびパターン検査方法によれば、カメラで撮像した画像をもとに、被検査領域の指定が行われる。したがって、より精度よく被検査領域の指定をおこなうことが可能である。よって、例えば、判定部における判定をより精度良く行うことが可能となる。また、例えば、パターン領域のエッジの極近傍まで被検査領域を指定することも可能となる。
【0070】
(第3の実施の形態)
本実施の形態のパターン検査装置は、パターンが形成されたパターン領域と、パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有し、ステージ上に載置される被検査試料上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて被検査試料を検査するパターン検査装置である。そして、パターン領域が形成するパターン面上の3箇所の高さを測定する高さ測定部と、測定部の測定結果から、パターン面の傾斜を算出する傾斜演算部と、傾斜演算部における演算結果からパターン面とステージ(またはXYθテーブル)走行面との傾斜を一致させるための補正値を演算する補正値演算部と、補正値を用いてパターン面とステージ走行面との傾斜を一致させる傾斜補正機構と、を有する。
【0071】
本実施の形態のパターン検査装置は、パターン面と、ステージ走行面の傾斜を一致させることが可能となる。したがって、パターン面上の一点においてフォーカス合わせを行えば、検査中にフォーカス合わせを行わずとも、フォーカスの合ったパターン画像を取得することが可能となる。
【0072】
なお、パターン検査装置およびパターン検査方法で、第1の実施の形態と重複する内容については以下記述を省略する。
【0073】
図7は、本実施の形態のパターン検査装置の要部の構成を示す模式図である。図7(a)はマスクの断面を含む模式図、図7(b)は上面から見た模式図である。
【0074】
図7(a)に示すように、本実施の形態のマスク欠陥検査装置は、XYθテーブル102上に載置されるインプリント・リソグラフィ用のマスク10を検査する。図7(a)では、マスク10のパターン面(またはマスク面)が上側にくるように図示している。すなわち、検査光は図の上方からマスク面に照射される。
【0075】
本実施の形態のパターン検査装置は、パターン領域が形成するパターン面上の3箇所、例えば図7のA、B、Cの高さを測定することが可能な高さ測定部50を備えている。パターン面上の少なくとも3箇所を測定することで、パターン検査装置に対して定められるXYZ座標系にパターン面を定義することが可能になる。
【0076】
高さ測定部50は、パターン面上の3箇所A、B、Cの高さを測定することが可能であれば、いかなる構成をとることも可能である。例えば、パターン面高さを検出するパターン面高さ検出部と、ステージの高さ位置モニタ部と、ステージ高さ移動機構を用いて、3箇所A、B、Cの高さを測定する構成が可能である。また、例えば、レーザー干渉計で3箇所A、B、Cの高さを測定する構成であってもかまわない。
【0077】
そして、高さ測定部50の測定結果から、パターン面の傾斜を算出する傾斜演算部52を備えている。傾斜演算部52では、パターン検査装置に対して定められるXYZ座標系におけるパターン面の傾斜を算出する。
【0078】
さらに、本実施の形態のパターン検査装置は、傾斜演算部52における演算結果からパターン面とステージの走行面との傾斜を一致させるための補正値を演算する補正値演算部54を備えている。補正値演算部54では、パターン面とステージ走行面との傾斜を一致させる、すなわち、2つの面を平行にするために必要なマスク10の高さの補正値を算出する。
【0079】
ここで、ステージ走行面とは、ステージまたはXYθテーブル上の任意の1点が、ステージのXY方向の走行に伴い形成する面である。ステージ走行面は、ステージ(XYθテーブル102)を載置する定盤の平面に平行な既知の平面である。したがって、パターン検査装置に対して定められるXYZ座標系において、ステージ走行面を定義することが可能である。
【0080】
よって、上述のXYZ座標系におけるステージ走行面の傾斜はあらかじめ求めておくことが可能である。例えば、ステージ走行面の傾斜を記憶する走行面傾斜記憶部を設ける構成とすることも可能である。
【0081】
そして、本実施の形態のパターン検査装置は、補正値演算部54で演算された補正値を用いてパターン面とステージの走行面との傾斜を一致させる、すなわち、パターン面とステージの走行面とを平行にする、傾斜補正機構を備えている。傾斜補正機構は、パターン面の傾斜を走行面に対して相対的に変更できる構成であれば、特に限定されるものではない。
【0082】
例えば、図7に示すように、傾斜補正制御部56と、XYθテーブル102とマスク10との間に設けられる3個のピエゾ素子56a、56b、56cと、ピエゾ素子56a、56b、56cそれぞれの変位をモニタする変位モニタ計(図示せず)で構成される。この構成により、ステージ上のマスク高さを、3点で補正し、パターン面とステージ走行面との傾斜を一致させることが可能である。
【0083】
上述の補正値演算部54で演算される補正値は、例えば、3個のピエゾ素子56a、56b、56cで補正すべき高さである。
【0084】
なお、パターン面と走行面との傾斜を一致させる際には、少なくともパターン面の1点でフォーカスの合ったパターン画像が撮像可能なように補正する。
【0085】
また、本実施の形態において、被検査試料上のパターン面高さをモニタするパターン面高さモニタ部(図示せず)を、さらに備えることが望ましい。パターン面高さモニタ部を設けることで、検査中に、例えば、マスクのパターン面とステージの走行面との傾斜がずれたことによるデフォーカスを検知することが可能になる。
【0086】
なお、傾斜演算部52、補正値演算部54、傾斜補正制御部56は、例えば、CPUや回路基板等のハードウェアまたはハードウェアとプログラム等のソウトウェアとの組み合わせで構成される。
【0087】
また、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、パターン領域12内にあらかじめ指定される被検査領域16を記憶する被検査領域記憶部を備える構成とすることが望ましい。この構成により、記憶された被検査領域16内のパターン面上の3箇所A、B、Cを容易に決定し、高さを測定することが容易になる。
【0088】
さらに、第2の実施の形態のように、パターン画像よりも低倍率の画像を取得可能な低倍率画像取得部と、この低倍率画像取得部で取得される画像から被検査領域を指定する被検査領域指定部を備えることが、より精度よく被検査領域の指定をおこなうことが可能となるため望ましい。
【0089】
以下、図7を参照しつつ、本実施の形態のパターン検査方法について説明する。
【0090】
まず、検査に先立ちパターン検査装置に対して定められるXYZ座標系におけるステージ走行面の傾斜を求める。
【0091】
次に、ステージ(XYθテーブル102)上にマスク10を載置する。その後、高さ測定部50により、マスクのパターン領域の3箇所A、B、Cの高さを測定する。
【0092】
次に、傾斜演算部52にて、パターン検査装置に対して定められるXYZ座標系におけるパターン面の傾斜をそれぞれ算出する。
【0093】
次に、補正値演算部54により、傾斜演算部52における演算結果からパターン面とステージ走行面との傾斜を一致させるための補正値を演算する。
【0094】
次に、傾斜補正機構により、補正値演算部54で演算された補正値を用いてパターン面とステージ走行面との傾斜を一致させる。すなわち、パターン面とステージ走行面を平行にする。この時、少なくともパターン面の1点でフォーカスの合ったパターン画像が撮像可能なように補正する。
【0095】
その後、検査を開始し、検査視野をマスク面に対し走査することで、パターン画像を撮像する。このパターン画像を用いて、マスクの欠陥を検査する。
【0096】
なお、検査中にパターン面高さモニタ部により、デフォーカスが生じないかパターン面高さをモニタすることが望ましい。パターン面高さをモニタすることで、デフォーカスを検知した場合には、例えば、検査を一旦中止して、再度、マスクのパターン面の傾斜を補正する等の処置が可能となり、検査の効率および精度を向上させることが可能となる。
【0097】
本実施の形態のパターン検査装置およびパターン検査方法によれば、オートフォーカス機構を用いずに、パターン領域12全面のパターン画像を、フォーカスが合った状態で撮像することが可能である。よって、オートフォーカス機構を用いた検査の際に、パターン領域12と非パターン領域14との境界部の段差に起因して生ずるタイムラグや誤動作等の問題を解消することが可能となる。
【0098】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0099】
例えば、被検査試料としてインプリント・リソグラフィ用のマスクを例に説明したが、パターン領域と非パターン領域との間に段差を有するマスクであれば、その他のマスクにも本発明を適用することが可能である。
【0100】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0101】
10 マスク
12 パターン領域
14 非パターン領域
16 被検査領域
20 検査視野
22 被検査領域記憶部
24 パターン面高さ検出部
26 オートフォーカス機構
28 判定部
30 オートフォーカス機構制御
32 検査開始位置設定部
42 低倍率画像取得部
44 被検査領域指定部
50 高さ測定部
52 傾斜演算部
54 補正値演算部
56 傾斜補正制御部
100 マスク欠陥検査装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成されたパターン領域と、前記パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有する被検査試料上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて前記被検査試料を検査するパターン検査装置であって、
前記パターン領域内に指定される被検査領域を記憶する被検査領域記憶部と、
前記被検査試料上のパターン面高さ測定位置に対するパターン面高さ信号を検出するパターン面高さ検出部と、
前記パターン面高さ検出部で検出される前記パターン面高さ信号を用いて、前記被検査試料に対するフォーカスを合わせるオートフォーカス機構と、
前記パターン面高さ測定位置が前記被検査領域内に位置するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記パターン面高さ測定位置が前記被検査領域内に位置すると判定する場合には前記オートフォーカス機構を駆動し、前記パターン面高さ測定位置が前記被検査領域内に位置しないと判定する場合には前記オートフォーカス機構を停止するオートフォーカス機構制御部と、
を有することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
検査開始時の前記パターン面高さ測定位置を、前記被検査領域内に設定する検査開始位置設定部を、さらに有することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記パターン画像よりも低倍率の画像を取得可能な低倍率画像取得部と、
前記低倍率画像取得部で取得される画像から前記被検査領域を指定する被検査領域指定部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
パターンが形成されたパターン領域と、前記パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有し、ステージ上に載置される被検査試料上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて前記被検査試料を検査するパターン検査装置であって、
前記パターン領域が形成するパターン面上の3箇所の高さを測定する高さ測定部と、
前記高さ測定部の測定結果から、前記パターン面の傾斜を算出する傾斜演算部と、
前記傾斜演算部における演算結果から前記パターン面とステージ走行面との傾斜を一致させるための補正値を演算する補正値演算部と、
前記補正値を用いて前記パターン面と前記ステージ走行面との傾斜を一致させる傾斜補正機構と、
を有することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項5】
前記被検査試料上のパターン面高さをモニタするパターン面高さモニタ部を、さらに有することを特徴とする請求項4記載のパターン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78164(P2012−78164A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222430(P2010−222430)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】