パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計
【課題】第1基板の反りを低減して、歩留まりを向上させるとともに、パッケージの機械的強度を向上させることができるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供する。
【解決手段】充填工程と第2研磨工程との間に、矯正治具によりベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱する矯正工程を有し、矯正治具は、ベース基板用ウエハ40とガラスフリット38との熱膨張係数差に基づくベース基板用ウエハ40の反りの向きと、逆向きに反っている。
【解決手段】充填工程と第2研磨工程との間に、矯正治具によりベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱する矯正工程を有し、矯正治具は、ベース基板用ウエハ40とガラスフリット38との熱膨張係数差に基づくベース基板用ウエハ40の反りの向きと、逆向きに反っている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この種の圧電振動子は様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続している(例えば、特許文献2参照)。具体的に、特許文献2では、まずベース基板に貫通孔を形成し、ベース基板を熱軟化させた状態で貫通孔内に金属ピンを打ち込む方法が記載されている。しかしながら、この方法では、金属ピンと貫通孔との間隙を完全に塞ぐのが困難であり、キャビティ内の気密性を確保できないという問題がある。また、ベース基板上の全ての貫通孔に位置決めして金属ピンを打ち込むのは煩雑である。
【0004】
そこで、近時では、貫通孔と金属ピンとの間隙にガラスフリットを充填し、このガラスフリットを焼成することで、ベース基板と金属ピンとを一体化させる技術が開発されている。
【0005】
図14は貫通電極の製造方法を説明するための工程図である。なお、以下の説明では、複数のベース基板が連なるベース基板用ウエハに貫通電極を形成する場合について説明する。
図14(a)に示すように、まずプレス加工等によりベース基板用ウエハ200(以下、ウエハ200という)の第1面200aからテーパ状の凹部を形成した後、ウエハ200の第2面200b側を破線部Hまで研磨することで、凹部を貫通させ、貫通孔201を形成する。次に、図14(b)に示すように、平板状の土台部202と、土台部202の表面から法線方向に沿って立設される芯材部203とを有する鋲体型の金属ピン204の芯材部203を、貫通孔201の小径側(ウエハ200の第2面200b側)から挿入する。続いて、図14(c)に示すように、貫通孔201の大径側(第1面200a側)からペースト状のガラスフリット206を充填する。その後、図14(d)に示すように、ウエハ200を焼成炉に搬送し、ガラスフリット206を焼成する。そして、焼成したガラスフリット206を冷却した後、少なくともウエハ200の第2面200bを研磨して土台部202を除去することで、貫通電極210を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−279872号公報
【特許文献2】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の方法では、ガラスフリット206の冷却時において、ウエハ200に反りが発生するという問題がある。具体的に、ウエハ200に形成された貫通孔201はテーパ状に形成されているため、ガラスフリット206の冷却時において、ウエハ200の収縮が厚さ方向で不均一になる。この場合、ウエハ200(ガラス材料)の熱膨張係数は、ガラスフリット206の熱膨張係数に比べて大きいため、貫通孔201の小径側(第2面200b側)の方が大径側(第1面200a側)に比べて冷却時の収縮が大きい。その結果、第1面200a側を凸にしてウエハ200が大きく反ってしまうという問題がある。
【0008】
ウエハ200に反りが発生すると、後工程において、不良品が発生する確率が高くなり、歩留まりが低下するという問題がある。具体的に、圧電振動子を製造するためには、キャビティ用の凹部が複数形成されたリッド基板用ウエハ(不図示)と、上述したベース基板用ウエハ200とを接合した後、両ウエハの接合体を圧電振動子の形成領域毎(キャビティ毎)に切断する。この際、接合体の切断予定線に対して一方の面からレーザーを照射してスクライブライン(溝)を形成した後、接合体の他方の面から切断刃を当接させ、この切断刃により機械的な割断応力を加えることにより接合体を切断する。
【0009】
しかしながら、リッド基板用ウエハと反りが発生しているベース基板用ウエハ200とを接合することで、ベース基板用ウエハ200の反りに追従して接合体にも反りが発生する虞がある。この場合、レーザー照射時において、接合体の切断予定線とレーザーの焦点位置とがずれてしまい、所望の位置にスクライブラインを形成できないという問題がある。その結果、接合体を所定サイズに切断できない可能性がある。
また、リッド基板用ウエハと、反りが発生しているベース基板用ウエハ200とを接合することで、接合体の内部に残留応力が発生し、切断された圧電振動子における機械的強度の低下に繋がるという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、第1基板の反りを低減して、歩留まりを向上させるとともに、パッケージの機械的強度を向上させることができるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記第1基板の第1面側に、前記第1面側から第2面側にかけて内径が次第に小さくなる凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部内に金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、前記凹部と前記金属ピンとの間にガラスフリットを充填する充填工程と、前記凹部内に充填された前記ガラスフリットを焼成して、硬化させる焼成工程と、前記第1基板の少なくとも第2面を研磨して前記金属ピンを前記第2面に露出させる研磨工程とを有し、前記充填工程と前記研磨工程との間に、矯正治具により前記第1基板を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱する矯正工程を有し、前記矯正治具は、前記第1基板と前記ガラスフリットとの熱膨張係数差に基づく前記第1基板の反りの向きと、逆向きに反っていることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、矯正工程において、第1基板とガラスフリットとの熱膨張係数差に基づく第1基板の反りの向きと、逆向きに反った矯正治具で第1基板を挟み込んだ状態で、加熱することで、第1基板は反りが減少する方向に変形する。その結果、研磨工程の終了後における第1基板の反りを低減できるので、後工程において、不良品が発生する確率を低減できる。例えば、後工程において、複数の基板を接合した際に複数の基板の接合体に反りが発生するのを抑制できるので、接合体を所望の切断予定線(切断線)に沿って切断できる。これにより、歩留まりを向上させ、所望のサイズのパッケージを製造できる。
さらに、第1基板の反りを低減できるので、複数の基板を接合してパッケージとした際に、パッケージでの残留応力の発生を抑制できる。これにより、パッケージの機械的強度を向上できる。
【0013】
また、前記矯正工程では、前記第1基板を歪点以上の温度に加熱することを特徴としている。
この構成によれば、第1基板を歪点以上の温度に加熱することで、第1基板が変形し易くなるので、第1基板の割れ等を防止した上で、第1基板の反りを低減できる。
【0014】
また、前記焼成工程と前記矯正工程とを同時に行うことを特徴としている。
この構成によれば、焼成工程及び矯正工程を別々に行う場合に比べて、第1基板を加熱(及び冷却)する回数を削減できるので、第1基板に発生する残留応力を低減できる。そのため、第1基板(パッケージ)の機械的強度の更なる向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係るパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造しているため、歩留まりを向上させるとともに、パッケージ内部での残留応力の発生を抑制して、パッケージの機械的強度を向上できる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い圧電振動子を提供できる。
【0017】
また、本発明の発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のパッケージの製造方法及びパッケージによれば、第1基板の反りを低減して、歩留まりを向上させるとともに、パッケージの機械的強度を向上させることができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い圧電振動子を提供できる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】ベース基板用ウエハの断面図であって、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
【図8】ベース基板用ウエハの断面図であって、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
【図9】金属ピンの斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態を示す図であって、発振器の構成図である。
【図11】本発明の一実施形態を示す図であって、電子機器の構成図である。
【図12】本発明の一実施形態を示す図であって、電波時計の構成図である。
【図13】矯正治具の他の構成を示す断面図である。
【図14】ベース基板の断面図であって、従来の貫通電極の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の第1面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0023】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔(凹部)21,22が形成されている。貫通孔21,22は、ベース基板2の第1面2aから第2面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径したテーパ形状をなしている。
【0024】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の内面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の内面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0025】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0026】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の第2面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の第2面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0027】
外部電極6,7は、ベース基板2の第1面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0028】
貫通電極8,9は、焼成によって貫通孔21,22に対して一体的に固定された筒体32及び芯材部31によって形成されたものであり、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0029】
筒体32は、ペースト状のガラスフリット38(図7参照)が焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。また、本実施形態では貫通孔21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐台状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、貫通孔21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これら貫通孔21,22に対して強固に固着されている。
上述した芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部31は、円柱状でベース基板2の厚さと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、後述する図9に示すように、芯材部31の一方の端部に連結された平板状の土台部36とともに鋲体型の金属ピン37を形成している。
【0030】
リッド基板3の内面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材で形成することも可能である。そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0031】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0032】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ(第1基板)40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S42以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0033】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0034】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の第1面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の第1面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、第1面50aを鏡面加工する。
【0035】
次に、リッド基板用ウエハ50の第1面50a全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材23を形成する接合材形成工程(S24)を行う。このように、接合材23をリッド基板用ウエハ50の第1面50a全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材23の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S24)の前に接合面を研磨しているので、接合材23の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0036】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0037】
(貫通電極形成工程)
次いで、ベース基板用ウエハ40を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極8,9(図3参照)を形成する貫通電極形成工程(S32)を行う。以下に、貫通電極形成工程(S32)について詳細を説明する。図7,図8はベース基板用ウエハの断面図であって、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
貫通電極形成工程(S32)では、まずベース基板用ウエハ40を貫通する一対の貫通孔21,22を複数形成する貫通孔形成工程(S33)を行う。
【0038】
貫通孔形成工程(S33)では、図7(a)に示すように、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の第1面40a側から第2面40b側に向かって内径が漸次小さくなるような凹部41を形成する(S34:凹部形成工程)。
【0039】
次に、図7(b)に示すように、ベース基板用ウエハ40の少なくとも第2面40bを研磨して、凹部41をベース基板用ウエハ40の厚さ方向で貫通させる(S35:第1研磨工程)。これにより、ベース基板用ウエハ40(ベース基板2)の第1面40a側から第2面40b側に向かって内径が漸次小さくなるように貫通孔21,22を形成することができる。
【0040】
続いて、貫通孔形成工程(S32)で形成された複数の貫通孔21,22内に、金属ピン37の芯材部31を配置する金属ピン配置工程を行う(S36)。図9は金属ピンの斜視図である。
図9に示すように、金属ピン37は、平板状の土台部36と、土台部36上から土台部36の表面に略直交する方向に沿ってベース基板用ウエハ40の厚さよりも僅かに短い長さで形成されるとともに、先端が平坦に形成された芯材部31と、を有している。
【0041】
そして、図7(c)に示すように、貫通孔21,22の小径側(ベース基板用ウエハ40の第2面40b側)から金属ピン37の芯材部31を挿入する。この時、上述した金属ピン37の土台部36の表面がベース基板用ウエハ40の第2面40bに接触するまで、芯材部31を挿入する。ここで、芯材部31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とが略一致するように金属ピン37を配置する必要がある。しかしながら、土台部36上に芯材部31が形成された金属ピン37を利用するため、芯材部31を貫通孔21,22内に挿入する際に、土台部36をベース基板用ウエハ40に接触させるまで押し込むだけの簡単な作業で、芯材部31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とを略一致させることができる。したがって、金属ピン配置工程(S36)時における作業性を向上することができる。
【0042】
次に、図7(d)に示すように、貫通孔21,22の大径側(ベース基板用ウエハ40の第1面40a側)からペースト状のガラスフリット38を充填する(S37)。なお、充填工程(S37)は、真空印刷法等を用い、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに沿って図示しないスキージを走査することにより、貫通孔21,22内にガラスフリット38を押し流すように充填する。
また、充填工程(S37)では、ベース基板用ウエハ40の第1面40a上に存在する余分なガラスフリット38を焼成前に除去しておく。具体的には、図示しないスキージを用い、スキージの先端をベース基板用ウエハ40の第1面40aに当接させた状態で、第1面40a上に沿って走査することで、貫通孔21,22からはみ出しているガラスフリット38の残渣を除去する。
【0043】
本実施形態では、充填工程(S37)に真空印刷法を用いることで、ガラスフリット38が脱気され、ガラスフリット38中に含まれる気泡(空気等)を除去できる。これにより、気泡の少ないガラスフリット38を貫通孔21,22内に充填できる。
また、貫通孔21,22内から空気を抜いた状態でガラスフリット38を充填できるので、大気圧雰囲気下にてガラスフリット38を充填する場合に比べて、貫通孔21,22内にガラスフリット38をスムーズに充填できる。その結果、貫通孔21,22内にガラスフリット38を隙間なく充填できる。さらに、本実施形態では、貫通孔21,22の大径側からガラスフリット38を充填することで、貫通孔21,22と金属ピン37との間隙に容易にガラスフリット38を充填できる。
【0044】
次に、図8(a)に示すように、充填工程(S37)で充填したガラスフリット38を焼成する焼成工程(S38)を行う。具体的には、ベース基板用ウエハ40を焼成炉のステージ45上にセットし、ベース基板用ウエハ40を例えば610℃程度の温度雰囲気下に30分程度保持する。これにより、貫通孔21,22と、貫通孔21,22内に埋め込まれたガラスフリット38と、ガラスフリット38内に配置された金属ピン37(芯材部31)とが互いに固着し合う。この焼成を行う際に、土台部36ごと焼成するため、芯材部31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とを略一致させた状態にしたまま、両者を一体的に固定することができる。そして、ガラスフリット38は、焼成されることで筒体32として固化する。その後、ベース基板用ウエハ40を徐々に温度を下げながら冷却する。
【0045】
ところで、上述したように焼成工程(S38)後、ベース基板用ウエハ40を冷却すると、ベース基板用ウエハ40とガラスフリット38との熱膨張係数の違いにより、ベース基板用ウエハ40が第1面40a側を凸にして大きく反ってしまう。なお、この時のベース基板用ウエハ40の反り量D1(ベース基板用ウエハ40の中央と周縁端部との高さ)は、例えば500μm〜1500μm程度となる。
【0046】
この場合、例えば後工程である第2研磨工程(S40)において、研磨装置の保持盤にベース基板用ウエハ40の面方向全体を貼着できず、ベース基板用ウエハ40の研磨面と研磨装置の研磨パッドとの接触が、ベース基板用ウエハ40の面方向で不均一になる。その結果、ベース基板用ウエハ40の面方向で研磨レートにばらつきが生じ、最終的なベース基板用ウエハ40の仕上がり厚みにばらつきが生じるという問題がある。そして、最終的なベース基板用ウエハ40の仕上がり厚みにばらつきが生じ、ベース基板用ウエハ40の平行度が低下する、いわゆる片減りが発生するという問題がある。
また、上述したように反りが発生しているベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハとを接合することで、ベース基板用ウエハ40の反りに追従してウエハ接合体にも反りが発生する虞がある。この場合、レーザー照射時において、ウエハ接合体の切断予定線とレーザーの焦点位置とがずれてしまい、所望の位置にスクライブラインを形成できないという問題がある。その結果、接合体を所定サイズに切断できない可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態では、図8(b)に示すように、焼成工程(S38)後、後述する第2研磨工程(S40)に先立って、ベース基板用ウエハ40の反りを矯正する矯正工程(S39)を行う。矯正工程(S39)は、矯正治具62によりベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱することで行う。
具体的には、図8(c)に示すように、まずベース基板用ウエハ40に矯正治具62を装着する。矯正治具62は、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側に設置される受型63と、第1面40a側に設置される加圧型64とを備え、これら受型63と加圧型64とでベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟持するように構成されている。
【0048】
受型63は、ベース基板用ウエハ40の平面形状よりも大きく形成された板材であり、その表面(ベース基板用ウエハ40における第2面40bとの対向面)側には、厚さ方向に窪んだ凹部65が形成されている。この凹部65は、受型63の外周部分から中央部分にかけて湾曲する凹面形状に形成されている。
【0049】
加圧型64は、ベース基板用ウエハ40を第1面40a側から厚さ方向に沿って押圧する型であって、ベース基板用ウエハ40の平面形状よりも大きく形成された板材である。加圧型64の裏面(ベース基板用ウエハ40における第1面40aとの対向面)側には、厚さ方向に向けて突出する凸部67が形成されている。この凸部67は、加圧型64の外周部分から中央部分に向けて湾曲する凸面形状に形成されている。この場合、上述した受型63の凹部65と加圧型64の凸部67との曲率半径は同等に形成されており、受型63と加圧型64とを重ね合わせた際に、凹部65内に凸部67が収容されるようになっている。この場合、凹部65の深さD2及び凸部67の高さD3は、ともに例えば50μm〜100μm程度に形成されている。
【0050】
また、凸部67には、貫通孔21,22を避ける複数の溝部66が形成されている。各溝部66は、加圧型64の裏面において、行列方向に形成されており、ベース基板用ウエハ40の面方向において、同一直線上に配置された貫通孔21,22を共通して避けるようになっている。
【0051】
ここで、矯正工程(S39)では、受型63の凹部65とベース基板用ウエハ40の第2面40bとが対向するとともに、加圧型64の凸部67とベース基板用ウエハ40の第1面40aとが対向するように、矯正治具62でベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟み込む。この場合、矯正治具62の湾曲面の向きと、ベース基板用ウエハ40の反りの向きとが逆向きになるように、矯正治具62を装着することで、受型63の外周部分にベース基板用ウエハ40における第2面40bの外周部分が接するとともに、加圧型64の中央部分にベース基板用ウエハ40における第1面40aの中央部分が接する。
【0052】
そして、矯正治具62が装着されたベース基板用ウエハ40を加熱炉内で加熱する。この際、加圧型64の表面側に錘68をセットして、加圧型64を介してベース基板用ウエハ40を厚さ方向に向けて押圧した状態で(例えば、3kg/inch)、加熱する。なお、上述した錘68は加圧型64の平面形状と同等に形成されており、これによりベース基板用ウエハ40の面方向全域を厚さ方向に沿って均一に押圧できる。
また、矯正工程(S39)においては、ベース基板用ウエハ40をソーダ石灰ガラスの歪点(例えば、495℃程度)以上の温度、例えば500℃〜550℃程度に加熱して20分程度保持する。なお、本実施形態ではベース基板用ウエハ40を500℃程度に加熱する。ここで、ガラスは、加熱されると連続的に粘度が低下するが、ガラスの熱特性を示す指標となる温度として、歪点、徐冷点、軟化点がある。これらのうち、歪点とはガラスの粘性曲線において粘性が1014.5dPasとなる温度である。
【0053】
そして、上述した条件でベース基板用ウエハ40を加圧型64により押圧しつつ、加熱すると、ベース基板用ウエハ40の中央部分においては第1面40a側から厚さ方向に沿って加圧型64による押圧力が作用する一方、外周部分においては第2面40b側から厚さ方向に沿って加圧型64による押圧力に抗する方向に力が作用する。これにより、ベース基板用ウエハ40は、矯正治具62の凹部65や凸部67の形状に倣うように、反り量D1が減少する方向に変形する。その結果、ベース基板用ウエハ40と、ガラスフリット38と、の熱膨張係数の差に基づいて発生したベース基板用ウエハ40の反り量D1を低減できる。この際、上述したようにベース基板用ウエハ40を歪点以上の温度に加熱することで、ベース基板用ウエハ40が変形し易くなるので、ベース基板用ウエハ40の割れ等を防止した上で、ベース基板用ウエハ40の反りを低減できる。
その後、ベース基板用ウエハ40を徐々に温度を下げながら冷却し、ベース基板用ウエハ40から矯正治具62を取り外す(図8(d)参照)。
【0054】
なお、矯正工程(S39)において、加熱時にガラスフリット38(筒体32)が貫通孔21,22内で再び溶融する可能性もあるが、本実施形態の加圧型64には貫通孔21,22を避けるように溝部66が形成されているため、溶融したガラスフリット38が加圧型64に付着するのを防止できる。また、仮にガラスフリット38内に気泡が残存していた場合に、ガラスフリット38の溶融に伴い、ガラスフリット38から放出されたとしても、溝部66が気泡逃げ流路として機能するため、ガラスフリット38内での気泡の残存を抑制できる。
【0055】
矯正工程(S39)の終了後、ベース基板用ウエハ40の両面40a,40bを研磨する第2研磨工程(S40)を行う。第2研磨工程(S40)では、図8(e)に示すように、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側を破線部K1まで研磨し、金属ピン37の土台部36を除去する。これにより、筒体32及び芯材部31を位置決めさせる役割を果たしていた土台部36を除去して、芯材部31のみを筒体32の内部に取り残すことができる。一方、ベース基板用ウエハ40の第1面40a側を破線部K2まで研磨し、第1面40aから芯材部31の先端を露出させる。その結果、筒体32と芯材部31とが一体的に固定された一対の貫通電極8,9を複数得ることができる。なお、第2研磨工程(S39)は、両面研磨装置等によって同時に行うことが可能である。
【0056】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに導電性材料をパターニングして、引き回し電極形成工程を行う(S41)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0057】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S42)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0058】
重ね合わせ工程(S50)後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0059】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。
そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S90)を行う。具体的には、まずウエハ接合体60のベース基板用ウエハ40の第2面40b側にUVテープを貼り付ける。次に、リッド基板用ウエハ50側から切断線Mに沿ってレーザーを照射し、切断線Mに沿ってスクライブラインを形成する。次に、UVテープの表面から切断線Mに沿って切断刃を押し当て、ウエハ接合体60を割断する(ブレーキング)。その後、UVを照射してUVテープを剥離する。これにより、ウエハ接合体60を複数の圧電振動子1に分離することができる。なお、これ以外のダイシング等の方法によりウエハ接合体60を切断してもよい。
【0060】
そして、電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0061】
このように、本実施形態では矯正工程(S39)において、ベース基板用ウエハ40とガラスフリット38との熱膨張係数差に基づくベース基板用ウエハ40の反りの向きと、逆向きに湾曲する矯正治具62でベース基板用ウエハ40を挟み込んだ状態で、加熱する構成とした。
この構成によれば、ベース基板用ウエハ40を加圧型64により押圧しつつ、加熱することで、矯正治具62の凹部65や凸部67に倣うようにベース基板用ウエハ40は反り量D1が減少する方向に変形する。その結果、第2研磨工程(S40)終了後におけるベース基板用ウエハ40の反りを低減できるので、後工程において、不良品が発生する確率を低減できる。例えば、後工程においてベース基板用ウエハ40を研磨する際に、研磨レートのばらつきを抑制できるため、ベース基板用ウエハ40の仕上がり厚みを均一にできるとともに、片減りの発生を抑制できる。また、後工程において、両ウエハ40,50を接合した際にウエハ接合体60に反りが発生するのを抑制できるので、ウエハ接合体60を所望の切断予定線(切断線M)に沿って切断できる。これにより、歩留まりを向上させ、所望のサイズのパッケージ10を製造できる。
【0062】
さらに、ベース基板用ウエハ40の反りを低減できるので、両ウエハ40をウエハ接合体60として接合した際に、ウエハ接合体60での残留応力の発生を抑制できる。これにより、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0063】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図10を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図10に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片5が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0064】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0065】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、機械的強度が確保された圧電振動子1を備えているので、機械的強度に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0066】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図11を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0067】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図8に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0068】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0069】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0070】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0071】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0072】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0073】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0074】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、機械的強度が確保された圧電振動子1を備えているので、機械的強度に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0075】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図12に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0076】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0077】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0078】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0079】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、機械的強度が確保された圧電振動子1を備えているので、機械的強度に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0080】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片を用いた圧電振動子を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子等に、本発明を適用しても構わない。
【0081】
また、上述した実施形態では、貫通孔21,22内に土台部36から立設された金属ピン37を配置し、その後、土台部36を研磨して除去することにより貫通電極7,8を形成する場合について説明したが、これに限られない。例えば、貫通孔21,22を有底の凹部とし、円柱状の金属ピンを凹部内に配置して貫通電極を形成しても構わない。但し、金属ピンが傾倒することなく、貫通孔内に配置できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0082】
また、矯正治具62の凹部65の深さD2や凸部67の高さD3は、ベース基板用ウエハ40のサイズや反り量D1に応じて適宜設計変更が可能である。
さらに、上述した実施形態では、矯正治具62の凹部65や凸部67を、ベース基板用ウエハ40の反りの向きと逆方向に湾曲するように形成したが、これに限らず、以下の構成も可能である。具体的には、図13に示すように、受型63の凹部65を外周側から中央部にかけて厚さ方向に沿って段々と窪むように形成する一方、加圧型64の凸部67を外周側から中央部にかけて段々と突出するように形成しても構わない。これにより、凹部65や凸部67を湾曲させる場合に比べて、矯正治具62の加工が容易になる。なお、凹部65や凸部67の各段差は10μm程度なので、矯正工程(S39)においてベース基板用ウエハ40の表面形状に影響を与えることはない。
【0083】
さらに、上述した実施形態では、焼成工程(S38)の終了後、ベース基板用ウエハ40を一旦冷却した後に、矯正工程(S39)を行う場合について説明したが、これに限らず、焼成工程(S38)と矯正工程(S39)を同時に行う構成にしても構わない。すなわち、充填工程(S37)の終了後、ガラスフリット38固化前の真っ直ぐな状態のベース基板用ウエハ40を矯正治具62で挟み込み、上述した焼成工程(S38)において、ベース基板用ウエハ40を押圧しつつ、加熱してガラスフリット38を焼成しても構わない。
この構成によれば、ベース基板用ウエハ40を加熱(及び冷却)する回数を削減できるので、ベース基板用ウエハ40に発生する残留応力を低減できる。そのため、ベース基板用ウエハ40(圧電振動子1)の機械的強度の更なる向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1…圧電振動子 5…圧電振動片(電子部品) 8,9…貫通電極 10…パッケージ 21,22…貫通孔(凹部) 31…芯材部(金属ピン) 36…土台部 37…金属ピン 38…ガラスフリット 40…ベース基板用ウエハ(第1基板)40a…第1面 40b…第2面 62…矯正治具 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この種の圧電振動子は様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続している(例えば、特許文献2参照)。具体的に、特許文献2では、まずベース基板に貫通孔を形成し、ベース基板を熱軟化させた状態で貫通孔内に金属ピンを打ち込む方法が記載されている。しかしながら、この方法では、金属ピンと貫通孔との間隙を完全に塞ぐのが困難であり、キャビティ内の気密性を確保できないという問題がある。また、ベース基板上の全ての貫通孔に位置決めして金属ピンを打ち込むのは煩雑である。
【0004】
そこで、近時では、貫通孔と金属ピンとの間隙にガラスフリットを充填し、このガラスフリットを焼成することで、ベース基板と金属ピンとを一体化させる技術が開発されている。
【0005】
図14は貫通電極の製造方法を説明するための工程図である。なお、以下の説明では、複数のベース基板が連なるベース基板用ウエハに貫通電極を形成する場合について説明する。
図14(a)に示すように、まずプレス加工等によりベース基板用ウエハ200(以下、ウエハ200という)の第1面200aからテーパ状の凹部を形成した後、ウエハ200の第2面200b側を破線部Hまで研磨することで、凹部を貫通させ、貫通孔201を形成する。次に、図14(b)に示すように、平板状の土台部202と、土台部202の表面から法線方向に沿って立設される芯材部203とを有する鋲体型の金属ピン204の芯材部203を、貫通孔201の小径側(ウエハ200の第2面200b側)から挿入する。続いて、図14(c)に示すように、貫通孔201の大径側(第1面200a側)からペースト状のガラスフリット206を充填する。その後、図14(d)に示すように、ウエハ200を焼成炉に搬送し、ガラスフリット206を焼成する。そして、焼成したガラスフリット206を冷却した後、少なくともウエハ200の第2面200bを研磨して土台部202を除去することで、貫通電極210を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−279872号公報
【特許文献2】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の方法では、ガラスフリット206の冷却時において、ウエハ200に反りが発生するという問題がある。具体的に、ウエハ200に形成された貫通孔201はテーパ状に形成されているため、ガラスフリット206の冷却時において、ウエハ200の収縮が厚さ方向で不均一になる。この場合、ウエハ200(ガラス材料)の熱膨張係数は、ガラスフリット206の熱膨張係数に比べて大きいため、貫通孔201の小径側(第2面200b側)の方が大径側(第1面200a側)に比べて冷却時の収縮が大きい。その結果、第1面200a側を凸にしてウエハ200が大きく反ってしまうという問題がある。
【0008】
ウエハ200に反りが発生すると、後工程において、不良品が発生する確率が高くなり、歩留まりが低下するという問題がある。具体的に、圧電振動子を製造するためには、キャビティ用の凹部が複数形成されたリッド基板用ウエハ(不図示)と、上述したベース基板用ウエハ200とを接合した後、両ウエハの接合体を圧電振動子の形成領域毎(キャビティ毎)に切断する。この際、接合体の切断予定線に対して一方の面からレーザーを照射してスクライブライン(溝)を形成した後、接合体の他方の面から切断刃を当接させ、この切断刃により機械的な割断応力を加えることにより接合体を切断する。
【0009】
しかしながら、リッド基板用ウエハと反りが発生しているベース基板用ウエハ200とを接合することで、ベース基板用ウエハ200の反りに追従して接合体にも反りが発生する虞がある。この場合、レーザー照射時において、接合体の切断予定線とレーザーの焦点位置とがずれてしまい、所望の位置にスクライブラインを形成できないという問題がある。その結果、接合体を所定サイズに切断できない可能性がある。
また、リッド基板用ウエハと、反りが発生しているベース基板用ウエハ200とを接合することで、接合体の内部に残留応力が発生し、切断された圧電振動子における機械的強度の低下に繋がるという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、第1基板の反りを低減して、歩留まりを向上させるとともに、パッケージの機械的強度を向上させることができるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記第1基板の第1面側に、前記第1面側から第2面側にかけて内径が次第に小さくなる凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部内に金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、前記凹部と前記金属ピンとの間にガラスフリットを充填する充填工程と、前記凹部内に充填された前記ガラスフリットを焼成して、硬化させる焼成工程と、前記第1基板の少なくとも第2面を研磨して前記金属ピンを前記第2面に露出させる研磨工程とを有し、前記充填工程と前記研磨工程との間に、矯正治具により前記第1基板を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱する矯正工程を有し、前記矯正治具は、前記第1基板と前記ガラスフリットとの熱膨張係数差に基づく前記第1基板の反りの向きと、逆向きに反っていることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、矯正工程において、第1基板とガラスフリットとの熱膨張係数差に基づく第1基板の反りの向きと、逆向きに反った矯正治具で第1基板を挟み込んだ状態で、加熱することで、第1基板は反りが減少する方向に変形する。その結果、研磨工程の終了後における第1基板の反りを低減できるので、後工程において、不良品が発生する確率を低減できる。例えば、後工程において、複数の基板を接合した際に複数の基板の接合体に反りが発生するのを抑制できるので、接合体を所望の切断予定線(切断線)に沿って切断できる。これにより、歩留まりを向上させ、所望のサイズのパッケージを製造できる。
さらに、第1基板の反りを低減できるので、複数の基板を接合してパッケージとした際に、パッケージでの残留応力の発生を抑制できる。これにより、パッケージの機械的強度を向上できる。
【0013】
また、前記矯正工程では、前記第1基板を歪点以上の温度に加熱することを特徴としている。
この構成によれば、第1基板を歪点以上の温度に加熱することで、第1基板が変形し易くなるので、第1基板の割れ等を防止した上で、第1基板の反りを低減できる。
【0014】
また、前記焼成工程と前記矯正工程とを同時に行うことを特徴としている。
この構成によれば、焼成工程及び矯正工程を別々に行う場合に比べて、第1基板を加熱(及び冷却)する回数を削減できるので、第1基板に発生する残留応力を低減できる。そのため、第1基板(パッケージ)の機械的強度の更なる向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係るパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造しているため、歩留まりを向上させるとともに、パッケージ内部での残留応力の発生を抑制して、パッケージの機械的強度を向上できる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い圧電振動子を提供できる。
【0017】
また、本発明の発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のパッケージの製造方法及びパッケージによれば、第1基板の反りを低減して、歩留まりを向上させるとともに、パッケージの機械的強度を向上させることができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い圧電振動子を提供できる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】ベース基板用ウエハの断面図であって、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
【図8】ベース基板用ウエハの断面図であって、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
【図9】金属ピンの斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態を示す図であって、発振器の構成図である。
【図11】本発明の一実施形態を示す図であって、電子機器の構成図である。
【図12】本発明の一実施形態を示す図であって、電波時計の構成図である。
【図13】矯正治具の他の構成を示す断面図である。
【図14】ベース基板の断面図であって、従来の貫通電極の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の第1面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0023】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔(凹部)21,22が形成されている。貫通孔21,22は、ベース基板2の第1面2aから第2面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径したテーパ形状をなしている。
【0024】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の内面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の内面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0025】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0026】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の第2面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の第2面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0027】
外部電極6,7は、ベース基板2の第1面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0028】
貫通電極8,9は、焼成によって貫通孔21,22に対して一体的に固定された筒体32及び芯材部31によって形成されたものであり、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0029】
筒体32は、ペースト状のガラスフリット38(図7参照)が焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。また、本実施形態では貫通孔21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐台状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、貫通孔21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これら貫通孔21,22に対して強固に固着されている。
上述した芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部31は、円柱状でベース基板2の厚さと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、後述する図9に示すように、芯材部31の一方の端部に連結された平板状の土台部36とともに鋲体型の金属ピン37を形成している。
【0030】
リッド基板3の内面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材で形成することも可能である。そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0031】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0032】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ(第1基板)40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S42以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0033】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0034】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の第1面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の第1面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、第1面50aを鏡面加工する。
【0035】
次に、リッド基板用ウエハ50の第1面50a全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材23を形成する接合材形成工程(S24)を行う。このように、接合材23をリッド基板用ウエハ50の第1面50a全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材23の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S24)の前に接合面を研磨しているので、接合材23の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0036】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0037】
(貫通電極形成工程)
次いで、ベース基板用ウエハ40を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極8,9(図3参照)を形成する貫通電極形成工程(S32)を行う。以下に、貫通電極形成工程(S32)について詳細を説明する。図7,図8はベース基板用ウエハの断面図であって、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
貫通電極形成工程(S32)では、まずベース基板用ウエハ40を貫通する一対の貫通孔21,22を複数形成する貫通孔形成工程(S33)を行う。
【0038】
貫通孔形成工程(S33)では、図7(a)に示すように、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の第1面40a側から第2面40b側に向かって内径が漸次小さくなるような凹部41を形成する(S34:凹部形成工程)。
【0039】
次に、図7(b)に示すように、ベース基板用ウエハ40の少なくとも第2面40bを研磨して、凹部41をベース基板用ウエハ40の厚さ方向で貫通させる(S35:第1研磨工程)。これにより、ベース基板用ウエハ40(ベース基板2)の第1面40a側から第2面40b側に向かって内径が漸次小さくなるように貫通孔21,22を形成することができる。
【0040】
続いて、貫通孔形成工程(S32)で形成された複数の貫通孔21,22内に、金属ピン37の芯材部31を配置する金属ピン配置工程を行う(S36)。図9は金属ピンの斜視図である。
図9に示すように、金属ピン37は、平板状の土台部36と、土台部36上から土台部36の表面に略直交する方向に沿ってベース基板用ウエハ40の厚さよりも僅かに短い長さで形成されるとともに、先端が平坦に形成された芯材部31と、を有している。
【0041】
そして、図7(c)に示すように、貫通孔21,22の小径側(ベース基板用ウエハ40の第2面40b側)から金属ピン37の芯材部31を挿入する。この時、上述した金属ピン37の土台部36の表面がベース基板用ウエハ40の第2面40bに接触するまで、芯材部31を挿入する。ここで、芯材部31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とが略一致するように金属ピン37を配置する必要がある。しかしながら、土台部36上に芯材部31が形成された金属ピン37を利用するため、芯材部31を貫通孔21,22内に挿入する際に、土台部36をベース基板用ウエハ40に接触させるまで押し込むだけの簡単な作業で、芯材部31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とを略一致させることができる。したがって、金属ピン配置工程(S36)時における作業性を向上することができる。
【0042】
次に、図7(d)に示すように、貫通孔21,22の大径側(ベース基板用ウエハ40の第1面40a側)からペースト状のガラスフリット38を充填する(S37)。なお、充填工程(S37)は、真空印刷法等を用い、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに沿って図示しないスキージを走査することにより、貫通孔21,22内にガラスフリット38を押し流すように充填する。
また、充填工程(S37)では、ベース基板用ウエハ40の第1面40a上に存在する余分なガラスフリット38を焼成前に除去しておく。具体的には、図示しないスキージを用い、スキージの先端をベース基板用ウエハ40の第1面40aに当接させた状態で、第1面40a上に沿って走査することで、貫通孔21,22からはみ出しているガラスフリット38の残渣を除去する。
【0043】
本実施形態では、充填工程(S37)に真空印刷法を用いることで、ガラスフリット38が脱気され、ガラスフリット38中に含まれる気泡(空気等)を除去できる。これにより、気泡の少ないガラスフリット38を貫通孔21,22内に充填できる。
また、貫通孔21,22内から空気を抜いた状態でガラスフリット38を充填できるので、大気圧雰囲気下にてガラスフリット38を充填する場合に比べて、貫通孔21,22内にガラスフリット38をスムーズに充填できる。その結果、貫通孔21,22内にガラスフリット38を隙間なく充填できる。さらに、本実施形態では、貫通孔21,22の大径側からガラスフリット38を充填することで、貫通孔21,22と金属ピン37との間隙に容易にガラスフリット38を充填できる。
【0044】
次に、図8(a)に示すように、充填工程(S37)で充填したガラスフリット38を焼成する焼成工程(S38)を行う。具体的には、ベース基板用ウエハ40を焼成炉のステージ45上にセットし、ベース基板用ウエハ40を例えば610℃程度の温度雰囲気下に30分程度保持する。これにより、貫通孔21,22と、貫通孔21,22内に埋め込まれたガラスフリット38と、ガラスフリット38内に配置された金属ピン37(芯材部31)とが互いに固着し合う。この焼成を行う際に、土台部36ごと焼成するため、芯材部31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とを略一致させた状態にしたまま、両者を一体的に固定することができる。そして、ガラスフリット38は、焼成されることで筒体32として固化する。その後、ベース基板用ウエハ40を徐々に温度を下げながら冷却する。
【0045】
ところで、上述したように焼成工程(S38)後、ベース基板用ウエハ40を冷却すると、ベース基板用ウエハ40とガラスフリット38との熱膨張係数の違いにより、ベース基板用ウエハ40が第1面40a側を凸にして大きく反ってしまう。なお、この時のベース基板用ウエハ40の反り量D1(ベース基板用ウエハ40の中央と周縁端部との高さ)は、例えば500μm〜1500μm程度となる。
【0046】
この場合、例えば後工程である第2研磨工程(S40)において、研磨装置の保持盤にベース基板用ウエハ40の面方向全体を貼着できず、ベース基板用ウエハ40の研磨面と研磨装置の研磨パッドとの接触が、ベース基板用ウエハ40の面方向で不均一になる。その結果、ベース基板用ウエハ40の面方向で研磨レートにばらつきが生じ、最終的なベース基板用ウエハ40の仕上がり厚みにばらつきが生じるという問題がある。そして、最終的なベース基板用ウエハ40の仕上がり厚みにばらつきが生じ、ベース基板用ウエハ40の平行度が低下する、いわゆる片減りが発生するという問題がある。
また、上述したように反りが発生しているベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハとを接合することで、ベース基板用ウエハ40の反りに追従してウエハ接合体にも反りが発生する虞がある。この場合、レーザー照射時において、ウエハ接合体の切断予定線とレーザーの焦点位置とがずれてしまい、所望の位置にスクライブラインを形成できないという問題がある。その結果、接合体を所定サイズに切断できない可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態では、図8(b)に示すように、焼成工程(S38)後、後述する第2研磨工程(S40)に先立って、ベース基板用ウエハ40の反りを矯正する矯正工程(S39)を行う。矯正工程(S39)は、矯正治具62によりベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱することで行う。
具体的には、図8(c)に示すように、まずベース基板用ウエハ40に矯正治具62を装着する。矯正治具62は、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側に設置される受型63と、第1面40a側に設置される加圧型64とを備え、これら受型63と加圧型64とでベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟持するように構成されている。
【0048】
受型63は、ベース基板用ウエハ40の平面形状よりも大きく形成された板材であり、その表面(ベース基板用ウエハ40における第2面40bとの対向面)側には、厚さ方向に窪んだ凹部65が形成されている。この凹部65は、受型63の外周部分から中央部分にかけて湾曲する凹面形状に形成されている。
【0049】
加圧型64は、ベース基板用ウエハ40を第1面40a側から厚さ方向に沿って押圧する型であって、ベース基板用ウエハ40の平面形状よりも大きく形成された板材である。加圧型64の裏面(ベース基板用ウエハ40における第1面40aとの対向面)側には、厚さ方向に向けて突出する凸部67が形成されている。この凸部67は、加圧型64の外周部分から中央部分に向けて湾曲する凸面形状に形成されている。この場合、上述した受型63の凹部65と加圧型64の凸部67との曲率半径は同等に形成されており、受型63と加圧型64とを重ね合わせた際に、凹部65内に凸部67が収容されるようになっている。この場合、凹部65の深さD2及び凸部67の高さD3は、ともに例えば50μm〜100μm程度に形成されている。
【0050】
また、凸部67には、貫通孔21,22を避ける複数の溝部66が形成されている。各溝部66は、加圧型64の裏面において、行列方向に形成されており、ベース基板用ウエハ40の面方向において、同一直線上に配置された貫通孔21,22を共通して避けるようになっている。
【0051】
ここで、矯正工程(S39)では、受型63の凹部65とベース基板用ウエハ40の第2面40bとが対向するとともに、加圧型64の凸部67とベース基板用ウエハ40の第1面40aとが対向するように、矯正治具62でベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から挟み込む。この場合、矯正治具62の湾曲面の向きと、ベース基板用ウエハ40の反りの向きとが逆向きになるように、矯正治具62を装着することで、受型63の外周部分にベース基板用ウエハ40における第2面40bの外周部分が接するとともに、加圧型64の中央部分にベース基板用ウエハ40における第1面40aの中央部分が接する。
【0052】
そして、矯正治具62が装着されたベース基板用ウエハ40を加熱炉内で加熱する。この際、加圧型64の表面側に錘68をセットして、加圧型64を介してベース基板用ウエハ40を厚さ方向に向けて押圧した状態で(例えば、3kg/inch)、加熱する。なお、上述した錘68は加圧型64の平面形状と同等に形成されており、これによりベース基板用ウエハ40の面方向全域を厚さ方向に沿って均一に押圧できる。
また、矯正工程(S39)においては、ベース基板用ウエハ40をソーダ石灰ガラスの歪点(例えば、495℃程度)以上の温度、例えば500℃〜550℃程度に加熱して20分程度保持する。なお、本実施形態ではベース基板用ウエハ40を500℃程度に加熱する。ここで、ガラスは、加熱されると連続的に粘度が低下するが、ガラスの熱特性を示す指標となる温度として、歪点、徐冷点、軟化点がある。これらのうち、歪点とはガラスの粘性曲線において粘性が1014.5dPasとなる温度である。
【0053】
そして、上述した条件でベース基板用ウエハ40を加圧型64により押圧しつつ、加熱すると、ベース基板用ウエハ40の中央部分においては第1面40a側から厚さ方向に沿って加圧型64による押圧力が作用する一方、外周部分においては第2面40b側から厚さ方向に沿って加圧型64による押圧力に抗する方向に力が作用する。これにより、ベース基板用ウエハ40は、矯正治具62の凹部65や凸部67の形状に倣うように、反り量D1が減少する方向に変形する。その結果、ベース基板用ウエハ40と、ガラスフリット38と、の熱膨張係数の差に基づいて発生したベース基板用ウエハ40の反り量D1を低減できる。この際、上述したようにベース基板用ウエハ40を歪点以上の温度に加熱することで、ベース基板用ウエハ40が変形し易くなるので、ベース基板用ウエハ40の割れ等を防止した上で、ベース基板用ウエハ40の反りを低減できる。
その後、ベース基板用ウエハ40を徐々に温度を下げながら冷却し、ベース基板用ウエハ40から矯正治具62を取り外す(図8(d)参照)。
【0054】
なお、矯正工程(S39)において、加熱時にガラスフリット38(筒体32)が貫通孔21,22内で再び溶融する可能性もあるが、本実施形態の加圧型64には貫通孔21,22を避けるように溝部66が形成されているため、溶融したガラスフリット38が加圧型64に付着するのを防止できる。また、仮にガラスフリット38内に気泡が残存していた場合に、ガラスフリット38の溶融に伴い、ガラスフリット38から放出されたとしても、溝部66が気泡逃げ流路として機能するため、ガラスフリット38内での気泡の残存を抑制できる。
【0055】
矯正工程(S39)の終了後、ベース基板用ウエハ40の両面40a,40bを研磨する第2研磨工程(S40)を行う。第2研磨工程(S40)では、図8(e)に示すように、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側を破線部K1まで研磨し、金属ピン37の土台部36を除去する。これにより、筒体32及び芯材部31を位置決めさせる役割を果たしていた土台部36を除去して、芯材部31のみを筒体32の内部に取り残すことができる。一方、ベース基板用ウエハ40の第1面40a側を破線部K2まで研磨し、第1面40aから芯材部31の先端を露出させる。その結果、筒体32と芯材部31とが一体的に固定された一対の貫通電極8,9を複数得ることができる。なお、第2研磨工程(S39)は、両面研磨装置等によって同時に行うことが可能である。
【0056】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに導電性材料をパターニングして、引き回し電極形成工程を行う(S41)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0057】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S42)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0058】
重ね合わせ工程(S50)後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0059】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。
そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S90)を行う。具体的には、まずウエハ接合体60のベース基板用ウエハ40の第2面40b側にUVテープを貼り付ける。次に、リッド基板用ウエハ50側から切断線Mに沿ってレーザーを照射し、切断線Mに沿ってスクライブラインを形成する。次に、UVテープの表面から切断線Mに沿って切断刃を押し当て、ウエハ接合体60を割断する(ブレーキング)。その後、UVを照射してUVテープを剥離する。これにより、ウエハ接合体60を複数の圧電振動子1に分離することができる。なお、これ以外のダイシング等の方法によりウエハ接合体60を切断してもよい。
【0060】
そして、電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0061】
このように、本実施形態では矯正工程(S39)において、ベース基板用ウエハ40とガラスフリット38との熱膨張係数差に基づくベース基板用ウエハ40の反りの向きと、逆向きに湾曲する矯正治具62でベース基板用ウエハ40を挟み込んだ状態で、加熱する構成とした。
この構成によれば、ベース基板用ウエハ40を加圧型64により押圧しつつ、加熱することで、矯正治具62の凹部65や凸部67に倣うようにベース基板用ウエハ40は反り量D1が減少する方向に変形する。その結果、第2研磨工程(S40)終了後におけるベース基板用ウエハ40の反りを低減できるので、後工程において、不良品が発生する確率を低減できる。例えば、後工程においてベース基板用ウエハ40を研磨する際に、研磨レートのばらつきを抑制できるため、ベース基板用ウエハ40の仕上がり厚みを均一にできるとともに、片減りの発生を抑制できる。また、後工程において、両ウエハ40,50を接合した際にウエハ接合体60に反りが発生するのを抑制できるので、ウエハ接合体60を所望の切断予定線(切断線M)に沿って切断できる。これにより、歩留まりを向上させ、所望のサイズのパッケージ10を製造できる。
【0062】
さらに、ベース基板用ウエハ40の反りを低減できるので、両ウエハ40をウエハ接合体60として接合した際に、ウエハ接合体60での残留応力の発生を抑制できる。これにより、機械的強度が確保された高品質で信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0063】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図10を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図10に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片5が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0064】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0065】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、機械的強度が確保された圧電振動子1を備えているので、機械的強度に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0066】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図11を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0067】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図8に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0068】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0069】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0070】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0071】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0072】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0073】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0074】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、機械的強度が確保された圧電振動子1を備えているので、機械的強度に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0075】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図12に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0076】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0077】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0078】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0079】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、機械的強度が確保された圧電振動子1を備えているので、機械的強度に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0080】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片を用いた圧電振動子を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子等に、本発明を適用しても構わない。
【0081】
また、上述した実施形態では、貫通孔21,22内に土台部36から立設された金属ピン37を配置し、その後、土台部36を研磨して除去することにより貫通電極7,8を形成する場合について説明したが、これに限られない。例えば、貫通孔21,22を有底の凹部とし、円柱状の金属ピンを凹部内に配置して貫通電極を形成しても構わない。但し、金属ピンが傾倒することなく、貫通孔内に配置できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0082】
また、矯正治具62の凹部65の深さD2や凸部67の高さD3は、ベース基板用ウエハ40のサイズや反り量D1に応じて適宜設計変更が可能である。
さらに、上述した実施形態では、矯正治具62の凹部65や凸部67を、ベース基板用ウエハ40の反りの向きと逆方向に湾曲するように形成したが、これに限らず、以下の構成も可能である。具体的には、図13に示すように、受型63の凹部65を外周側から中央部にかけて厚さ方向に沿って段々と窪むように形成する一方、加圧型64の凸部67を外周側から中央部にかけて段々と突出するように形成しても構わない。これにより、凹部65や凸部67を湾曲させる場合に比べて、矯正治具62の加工が容易になる。なお、凹部65や凸部67の各段差は10μm程度なので、矯正工程(S39)においてベース基板用ウエハ40の表面形状に影響を与えることはない。
【0083】
さらに、上述した実施形態では、焼成工程(S38)の終了後、ベース基板用ウエハ40を一旦冷却した後に、矯正工程(S39)を行う場合について説明したが、これに限らず、焼成工程(S38)と矯正工程(S39)を同時に行う構成にしても構わない。すなわち、充填工程(S37)の終了後、ガラスフリット38固化前の真っ直ぐな状態のベース基板用ウエハ40を矯正治具62で挟み込み、上述した焼成工程(S38)において、ベース基板用ウエハ40を押圧しつつ、加熱してガラスフリット38を焼成しても構わない。
この構成によれば、ベース基板用ウエハ40を加熱(及び冷却)する回数を削減できるので、ベース基板用ウエハ40に発生する残留応力を低減できる。そのため、ベース基板用ウエハ40(圧電振動子1)の機械的強度の更なる向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1…圧電振動子 5…圧電振動片(電子部品) 8,9…貫通電極 10…パッケージ 21,22…貫通孔(凹部) 31…芯材部(金属ピン) 36…土台部 37…金属ピン 38…ガラスフリット 40…ベース基板用ウエハ(第1基板)40a…第1面 40b…第2面 62…矯正治具 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記第1基板の第1面側に、前記第1面側から第2面側にかけて内径が次第に小さくなる凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部内に金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、
前記凹部と前記金属ピンとの間にガラスフリットを充填する充填工程と、
前記凹部内に充填された前記ガラスフリットを焼成して、硬化させる焼成工程と、
前記第1基板の少なくとも第2面を研磨して前記金属ピンを前記第2面に露出させる研磨工程とを有し、
前記充填工程と前記研磨工程との間に、矯正治具により前記第1基板を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱する矯正工程を有し、
前記矯正治具は、前記第1基板と前記ガラスフリットとの熱膨張係数差に基づく前記第1基板の反りの向きと、逆向きに反っていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記矯正工程では、前記第1基板を歪点以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程と前記矯正工程とを同時に行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項4記載のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記第1基板の第1面側に、前記第1面側から第2面側にかけて内径が次第に小さくなる凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部内に金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、
前記凹部と前記金属ピンとの間にガラスフリットを充填する充填工程と、
前記凹部内に充填された前記ガラスフリットを焼成して、硬化させる焼成工程と、
前記第1基板の少なくとも第2面を研磨して前記金属ピンを前記第2面に露出させる研磨工程とを有し、
前記充填工程と前記研磨工程との間に、矯正治具により前記第1基板を厚さ方向両側から挟み込んだ状態で、加熱する矯正工程を有し、
前記矯正治具は、前記第1基板と前記ガラスフリットとの熱膨張係数差に基づく前記第1基板の反りの向きと、逆向きに反っていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記矯正工程では、前記第1基板を歪点以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程と前記矯正工程とを同時に行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項4記載のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−39511(P2012−39511A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179512(P2010−179512)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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