説明

プラズマCVD用基板ホルダー、太陽電池の製造方法及び太陽電池

【課題】
従来のプラズマCVD装置は、基板サイズの孔部を開穿した基板ホルダーに基板を並べてSiNx膜などの反射防止膜を製膜する方式をとっており、基板ホルダーの枠体と基板の間には、反応ガスの流れを良くするため、6mm程度の間隔が設けられている。このため、製膜すると、受光面(製膜したい面)のみならず、基板裏面にも反応ガスが回り込み、少なからずSiNxが製膜される。この回り込みSiNxは、次工程の電極形成時に電極形成の妨げとなり、さらにはボール発生の原因となって、割れを誘発する。
【解決手段】
基板ホルダーの略上面もしくは略下面に沿って、略平行に基板を配置することを特徴とするプラズマCVD用基板ホルダーを用いて太陽電池を製造する。特に、基板の受光面となる表面と、基板の受光面となる表面側に近接する側の基板ホルダーの枠体の面との間隔を0mm以上2mm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD用基板ホルダー並びにこのプラズマCVD用基板ホルダーを用いる安価で高効率な太陽電池の作製方法及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶や多結晶シリコン基板を用いた太陽電池では、入射光を効率良く吸収するため、通常反射防止膜と呼ばれる薄膜を受光面に堆積、もしくは成長させる。反射防止膜は数十〜100nm前後の厚さの酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン、酸化チタン、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、硫化亜鉛等の薄膜を単層もしくは2層以上組み合わせて利用される。中でも、窒化シリコン膜は、化学量論的にはSi34の組成を持つが、生成条件により膜中のシリコン(Si)と窒素(N)の比率を制御することが可能であり、SiNxと表記されることもある。生成条件により屈折率を変化させることが比較的容易なため、他の物質に比べて応用範囲が広い。近年、例えば非特許文献1のような、SiNx膜を大量かつ高速に製膜できるCVD装置が開発され、注目を浴びている。
【0003】
図3〜図7を用いてこの量産用プラズマCVD装置について説明する。図3はこの量産用プラズマCVD装置において使用される基板ホルダーの平面図、図4は図3の拡大断面図、図5は図4の要部の摘示拡大図、図6は図5の状態でCVD膜を形成した場合のCVD膜の形成態様を示す説明図、及び図7はこの量産用プラズマCVD装置によるSiNx膜の製膜工程の工程順を示すフローチャートである。図7に示すように、量産用プラズマCVD装置の基板投入口110において、基板ホルダー201(図3〜図6)に基板Wを載せ(基板の仕込み)、プログラムを開始すると、基板Wを載せた基板ホルダー201はロードロック室112に搬送される。ロードロック室112では、真空ポンプで減圧し、同時に基板Wの予備加熱を行う。基板ホルダー201の熱容量が小さくないため、少なくとも数十秒〜数分の予備加熱時間が必要とされる。十分な予備加熱後、基板ホルダー201はプラズマ室114に搬送され、室内を搬送されながら製膜が行われる。プラズマ室114の端まで搬送されると、アンロードロック室116への扉が開き、アンロードロック室116に搬送される。アンロードロック室116では窒素によるパージが行われ、真空から大気圧に戻される。また、ここは基板Wの冷却も兼ねている。大気圧に戻り次第扉が開き、基板ホルダー201は基板出口118へ搬出される。搬出された基板ホルダー201は、外部搬送系120を通じて再び基板投入口110に戻ってくる。基板ホルダー201を次々に投入することで、短時間で大量の基板に製膜が可能となる。
【非特許文献1】PROGRESS IN PHOTOVOLTAICS: RESEARCH AND APPLICATIONS 2004; 12:21−31
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した量産用プラズマCVD装置で一般的に用いられる基板ホルダー201は、配設される基板Wに対応して当該基板Wと略同等の大きさ(基板サイズ)の複数個の孔部210が開穿された基板ホルダー枠体211に当該基板ホルダー201に設けられた基板支持具、例えば支持ピン212に基板Wを支持して基板Wを配設する方式をとっている(図3及び図4)。一般に、基板ホルダー201の枠体211の下面211Aと基板Wの表面WAとの間には、反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)204の流れを良くするため、6mm程度の間隔Dが設けられている(図4及び図5)。このため、製膜すると、図6に示すように、受光面(製膜面)、図示例では基板表面WAにCVD膜(例えば、SiNx膜)204Aが製膜されるのみならず、基板裏面WBにも反応ガス204(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)が回り込み、基板裏面WBにも少なからずCVD膜(例えば、SiNx膜)204Aが製膜されてしまう。
【0005】
一般的な太陽電池作製プロセスでは、この反射防止膜製膜工程の次に電極形成を行う。電極形成には、アルミニウム(Al)や銀(Ag)、チタン(Ti)などの導電性物質を真空蒸着法やスパッタ法で製膜する方法や、これらの導電性物質を微細粒子として溶剤に混ぜ込んだ導電性ペーストを印刷する方法などが用いられる。電気的接触を改善するため、電極製膜後500〜900℃で熱処理されることもある。
【0006】
基板裏面WBに回り込んだ反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)204によって形成されるCVD膜(例えば、SiNx膜)204Aは絶縁膜であるため、この上に電極を形成すると、太陽電池の内部抵抗を増大させる等の太陽電池特性を低下させる要因となる。さらには、電極製膜後の熱処理により、電極の数mm大の盛り上がり(以下、本明細書では「ボール」と呼ぶ)が多発し、基板Wの割れを誘発する。
【0007】
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、基板表面にCVD膜(例えば、SiNx膜)を製膜する際に、基板裏面への反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)の回り込みを激減させることができ、基板裏面の周辺部の変色が殆ど無くなり、さらには、基板表面に形成される受光面の色ムラも若干改善することができるようにしたプラズマCVD用基板ホルダー、並びにこのプラズマCVD用基板ホルダーを用いる安価で高効率な太陽電池の作製方法及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマCVD用基板ホルダーは、配設される基板に対応して複数個の孔部を開穿した基板ホルダー枠体と、当該基板ホルダー枠体の上面もしくは下面に沿って、略平行に基板を配設することができるように当該基板ホルダー枠体に設けられた基板支持具とを有し、前記基板の受光面となる表面に反応ガスを用いてCVD膜を形成させるために使用されるプラズマCVD用基板ホルダーであって、前記基板の受光面となる表面と前記基板の受光面となる表面側に近接する側の前記基板ホルダー枠体の面との間隔が0mm以上2mm以下であるようにしたものである。前記反応ガスとしてはモノシランとアンモニア、窒素又は水素のいずれか一種以上を混合した混合ガスが好適にも用いられる。
【0009】
本発明の太陽電池の作製方法は、上記した本発明のプラズマCVD用基板ホルダーを用いて、前記基板の表面にCVD膜を形成するものである。本発明の太陽電池は、上記した本発明の太陽電池の作製方法により安価かつ高効率に作製されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の基板ホルダーを用いて基板表面にCVD膜、例えばSiNx膜を製膜すると、基板裏面へ向かう反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)が減少することで、基板裏面の周辺部の変色は殆ど無くなり、基板裏面への反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)の回り込みは激減する。さらには、基板表面に形成される受光面の色ムラも若干改善される。
【0011】
また、本発明の基板ホルダーを用いることにより、基板裏面への反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)の回り込みが低減することで、裏面電極形成後の基板裏面のボールは激減し、割れの発生頻度は大幅に低下する。さらに、絶縁膜であるCVD膜(例えば、SiNx膜)が製膜されている領域が減ることで、このCVD膜を製膜した基板からなる太陽電池の内部抵抗は低下する等、太陽電池特性は大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明に係るプラズマCVD用基板ホルダーの一つの実施の形態を添付図面中の図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2において、図3〜図6に示した部材等と同様の部材等は同一又は類似の符号を用いて示す。なお、図示例は例示的に示されるもので、本発明のプラズマCVD用基板ホルダーが図示例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0013】
図1において、符号201Aは本発明に係るプラズマCVD用基板ホルダーで、前述した従来のプラズマCVD用基板ホルダー201と基本的構造においては共通した構造を有しており、再度の詳細な説明は省略するが、その構造について概説する。即ち、当該基板ホルダー201Aは、配設される基板Wに対応して当該基板Wと略同等の大きさの複数個の孔部210が開穿された基板ホルダー枠体211に当該基板ホルダー201に設けられた基板支持具、例えば支持ピン212に基板Wを支持して基板Wを配設するように構成されている。
【0014】
本発明の基板ホルダー201Aと従来の基板ホルダー201の最大の相違点は、次の通りである。従来の基板ホルダー201においては、その枠体211の下面211Aと基板Wの表面WAとの間には、反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)204の流れを良くするため、6mm程度の大きな間隔Dが設けられている(図4及び図5)。これに対して、本発明の基板ホルダー201Aにおいては、その枠体211の下面211Aと基板Wの表面WAとの間に0mm以上2mm以下の間隔dを設けるものである(図1)。
【0015】
即ち、本発明の基板ホルダー201Aの特徴は、従来の大きな間隔Dを小さな間隔dに変更した点に存在する。なお、この小さな間隔dを0mmとしても本発明の作用効果を達成することができる。このように、小さな間隔dを有する基板ホルダー201Aを用いて基板Wの表面上に製膜すると、図2に示すように、受光面(製膜面)、図示例では基板表面WAにCVD膜(例えば、SiNx膜)204Aが製膜されることは従来の基板ホルダー201を用いる場合と変わりないが、基板裏面WBへの反応ガス204(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)の回り込みが激減し、基板裏面WBにはCVD膜(例えば、SiNx膜)204Aが僅かに製膜されるにすぎない状態となる。
【0016】
つまり、本発明の基板ホルダー201Aを用いてCVD膜の製膜を行うと、基板裏面WBへ向かう反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)204が減少することで、基板裏面WBの周辺部の変色は殆ど無くなり、さらには、基板表面WAに形成される受光面の色ムラも若干改善される。また、基板裏面WBへの反応ガス(例えば、モノシランとアンモニアの混合ガス)204の回り込みが低減することで、裏面電極形成後の基板裏面WBのボールは激減し、割れの発生頻度は大幅に低下する。絶縁膜であるCVD膜(例えば、SiNx膜)204Aが製膜されている領域が減ることで、このCVD膜204Aを製膜した基板からなる太陽電池の内部抵抗は低下する等、太陽電池特性は向上する。
【0017】
なお、上記実施の形態では、基板Wを基板ホルダー枠体211の下面側に配設した場合であり、間隔dは、枠体下面211Aと基板表面(受光面)との間隔と規定されているが、基板Wを基板ホルダー枠体211の上面側に設置することも可能であり、その場合間隔dは枠体211の上面と基板表面(受光面)との間隔と規定される。つまり、本発明の基板ホルダー201Aにおける間隔dは、基板Wの受光面となる表面側に近接する側の基板ホルダー枠体211の面との間隔と規定されるものである。
【0018】
続いて、本発明の太陽電池の作製方法について説明するが、本発明方法が以下の説明に限定されるものでないことはいうまでもない。本発明の太陽電池の作製方法は、上記した本発明の基板ホルダー201Aを用いて基板Wの表面(受光面)にCVD膜を形成することによって太陽電池を作製することを特徴とするものである。基板表面へのCVD膜の形成技術については従来の手法を適用すればよいものであるが、以下に説明する。
【0019】
まず、高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのようなIII族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}p型シリコン基板表面のスライスダメージを、濃度5〜60%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくは、ふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチングする。単結晶シリコン基板は、CZ法及びFZ法のいずれの方法によって作製されてもよい。
【0020】
引き続き、基板表面にテクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10%、温度60〜100℃)中に10分から30分程度浸漬することで容易に作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。
【0021】
テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。
【0022】
この基板上に、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法によりエミッタ層を形成する。一般的なシリコン太陽電池は、PN接合を受光面にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、拡散前に裏面にSiO2膜やSiNx膜などを拡散マスクとして形成して、裏面にPN接合ができないような工夫を施す必要がある。後述するが、ここで拡散マスクとしてSiNx膜を用いる場合も、本発明の基板ホルダーを用いることも可能である。
【0023】
拡散後、表面にできたガラスをふっ酸などで除去する。拡散マスクを用いた場合でも、ここで同時に除去される。
【0024】
次に、受光面の反射防止膜形成を行う。製膜には前述のプラズマCVD装置を用いSiNx膜を約100nm製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH4)及びアンモニア(NH3)を混合して用いることが多いが、NH3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、さらには、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
【0025】
従来用いられている大きい間隔D(約6mm)を有する基板ホルダー(図5)を用いて製膜した場合、基板裏面WBの周辺部は茶色に変色する。これは、50nm程度のSiNx膜が成長してしまうためである(図6)。しかしながら、本発明の基板ホルダー201A(0mm〜2mmの間隔d)(図1)を用いて製膜すると、図2に示されるように、基板裏面WBへ向かう反応ガス(モノシランとアンモニアの混合ガス)204が減少することで、基板裏面WBの周辺部の変色は殆ど無くなる。すなわち、基板裏面WBへの反応ガス(モノシランとアンモニアの混合ガス)204の回り込みが激減したことがわかる。基板ホルダー201と基板W間の間隔dは狭いほど回り込みは減るが、2mm以下であれば効果は十分得られる。
【0026】
本発明の基板ホルダー201Aを用いて製膜すると、予想に反し、受光面の色ムラも若干改善される。これは基板ホルダー201の下面と基板Wの表面間の間隔dが小さくなることで基板Wとプラズマ源との間隔が広がり反応ガス204が一様に行き渡るようになるためと考えられる。
【0027】
本発明の基板ホルダー201Aは、基板Wと基板ホルダー201A間の間隔dを縮めている(図1)ため、基板Wとプラズマ源との間隔が広がり、製膜速度が若干低下するが、間隔Dの大きい従来の基板ホルダー201(図5)との差は約6%であった。プラズマCVD装置は予備加熱時間が律速となっているため、6%程度の製膜速度の低下では生産性に全く支障をきたさない。
【0028】
次いで、裏面電極及び受光面の電極をスクリーン印刷法で形成する。上記基板の裏面に、Al粉末を有機物バインダで混合したペーストをスクリーン印刷する。印刷後、5〜30分間700〜800℃の温度で焼成して、裏面電極が形成される。裏面電極形成は印刷法による方が好ましいが、蒸着法、スパッタ法等で作製することも可能である。受光面電極もスクリーン印刷法を用いる。Ag粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合したAgペーストを、スクリーン印刷した後、熱処理によりSiNx膜にAg粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極とシリコンを導通させる。裏面電極及び受光面電極の焼成は一度に行うことも可能である。
【0029】
基板裏面WBへの反応ガス(モノシランとアンモニアの混合ガス)の回り込みが低減することで、裏面電極形成後の基板裏面WBのボールは激減し、割れの発生頻度は大幅に低下する。さらに、絶縁膜であるSiNx膜が製膜されている領域が減ることで、太陽電池の内部抵抗は低下するため、太陽電池特性は向上する。
【0030】
このように、本発明の基板ホルダー201Aを用いて基板裏面WBへの反応ガス(モノシランとアンモニアの混合ガス)の回り込みを低減することで、裏面電極上のボール低減による割れの回避、さらには、太陽電池特性の向上をもたらす。
【0031】
前述のように、拡散マスクとしてSiNx膜を用いる際に本発明の基板ホルダー201Aを用いた場合は、以下の利点が得られると考えられる。
【0032】
従来の基板ホルダー201を用いる方法によれば、反応ガス(モノシランとアンモニアの混合ガス)の回り込みにより、本来拡散がなされるべき部分に拡散されなかったり、仮に拡散されても拡散が不十分で面内分布が生じることが予想される。本発明の基板ホルダー201Aを用いることで、面内均一に拡散されることが期待できる。
【0033】
本発明の太陽電池は、上述した本発明の太陽電池の作製方法によって作製されるもので、安価でかつ高効率であるという特徴を有するものである。
【実施例】
【0034】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0035】
(実施例1及び2並びに比較例1及び2)
本発明の間隔2mmの基板ホルダー(実施例1)及び間隔0mmの基板ホルダー(実施例2)の能力を検証するため、従来の間隔の大きい(6mm)基板ホルダー(比較例1)を用意、さらに、比較用に間隔3mmの基板ホルダー(比較例2)も用意し、四者を用いてそれぞれSiNx膜を製膜して比較した。
【0036】
拡散厚さ300μm、比抵抗1Ω・cmの、ホウ素ドープ{100}p型アズカットシリコン基板40枚に対し、熱濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去後、水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬しテクスチャ形成を行い、引き続き塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。次に、オキシ塩化リン雰囲気下、850℃で裏面同士を重ねた状態で熱処理し、エミッタ層を形成した。拡散後、ふっ酸にてガラスを除去し、洗浄、乾燥させた。
【0037】
以上の処理の後、前述のプラズマCVD装置を用いて、SiNx膜を受光面反射防止膜として全試料に対し形成した。この際基板ホルダーとして上記した実施例1及び2並びに比較例1及び2の4種を用い、各々10枚づつ作製した。実施例1及び比較例2の基板ホルダーを用いる場合は比較例1の基板ホルダーの場合に比べ製膜速度が若干低下するため、基板ホルダーの搬送速度を変更して反射率が同程度になるよう調整した。
【0038】
製膜後、比較例1の基板ホルダーを用いた場合は、いずれの基板も裏面外周部は茶色に変色し、外周から遠ざかるほど色は薄くなった。色から判断すると、最大で50nm程度のSiNx膜が製膜されたものと考えられる。一方、実施例1及び実施例2の基板ホルダーを用いた場合、基板の裏面周辺部の変色は非常に小さく、最大でも30nm以下と思われる。さらに受光面の色むらは比較例1の基板ホルダーを用いた場合に比べ若干の改善が見られた。比較例2の基板ホルダーを用いた場合も比較例1の基板ホルダーを用いた場合に比べれば基板裏面への回りこみは小さいが、十分とはいえるものではなかった。
【0039】
次に、基板裏面及び受光面の電極を、スクリーン印刷後焼成して形成し、太陽電池を作製した。比較例1の基板ホルダーを用いて作製された基板は、基板裏面の反応ガスが回り込んでSiNx膜が形成された部分(基板裏面の周辺部)にボールが多数発生した。比較例1の基板ホルダーを用いた場合には及ばないものの、比較例2の基板ホルダーを用いた場合にもボール発生が見られた。一方、実施例1及び実施例2の基板ホルダーを用いた場合にはボールの発生は殆ど見られなかった。
【0040】
基板端面の拡散層並びに基板裏面のボールを研磨して除去後、ソーラーシミュレータを用い、標準条件下でこれら太陽電池の電流―電圧特性を測定し、光電変換効率を求めた。それぞれの平均値を表1に示す。比較例1及び2の場合には、ボール研磨時及び測定時に、ボール起因と思われる割れが発生したため、これも表1中に併せて示してある。
【0041】
比較例1の場合には、基板裏面に回り込み形成されたSiNx膜が絶縁膜であるため、この上に電極が形成されたことで、太陽電池の内部抵抗が増大し、曲線因子が低下したものと考えられる。また、比較例1の場合は開放電圧も低い。これも、裏面周辺部でAlによるBSF(電界)効果が有効になってないためと考えられる。一方、実施例1及び実施例2の場合の短絡電流が高いのは、受光面の色むらが改善されたことによるものと考えられる。
【0042】
比較例2の場合には、性能はほぼ実施例1の場合に近いものが得られているが、ボール発生による割れが生じた。この結果から、基板表面と基板ホルダーとの間隔dは、2mm以下であることが必要であると考えられる。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、安価で高効率な太陽電池を作製することができ、かつ得られた太陽電池の内部抵抗が低下する等、太陽電池特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るプラズマCVD用基板ホルダーの要部の拡大断面図である。
【図2】図1の状態でCVD膜を作製した場合のCVD膜の形成態様を示す説明図である。
【図3】従来の基板ホルダーの平面図である。
【図4】図3の拡大断面図である。
【図5】図4の要部の摘示拡大図である。
【図6】図5の状態でCVD膜を形成した場合のCVD膜の形成態様を示す説明図である。
【図7】量産用プラズマCVD装置によるSiNx膜の製膜工程の工程順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
110:基板投入口、112:ロードロック室、114:プラズマ室、116:アンロードロック室、118:基板出口、120:外部搬送系、201:従来の基板ホルダー、201A:本発明の基板ホルダー、204:反応ガス、204A:CVD膜、210:孔部、211:基板ホルダー枠体、211A:基板ホルダー枠体の下面、212:基板支持具、D,d:間隔、W:基板、WA:基板表面、WB:基板裏面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配設される基板に対応して複数個の孔部を開穿した基板ホルダー枠体と、当該基板ホルダー枠体の上面もしくは下面に沿って、略平行に基板を配設することができるように当該基板ホルダー枠体に設けられた基板支持具とを有し、前記基板の受光面となる表面に反応ガスを用いてCVD膜を形成させるために使用されるプラズマCVD用基板ホルダーであって、前記基板の受光面となる表面側に近接する側の前記基板ホルダー枠体の面と前記基板の受光面となる表面との間隔が0mm以上2mm以下であることを特徴とするプラズマCVD用基板ホルダー。
【請求項2】
前記反応ガスがモノシランにアンモニア、窒素又は水素のいずれか1種以上を混合した混合ガスであることを特徴とする請求項1記載のプラズマCVD用基板ホルダー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラズマCVD用基板ホルダーを用いて、前記基板の表面にCVD膜を形成することを特徴とする太陽電池の作製方法。
【請求項4】
請求項3の作製方法により作製されることを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−197745(P2007−197745A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15685(P2006−15685)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】