説明

マイクロパターン形成用材料、マイクロパターン複合材及びその製造方法並びに微小3次元構造基板の製造方法

【課題】流路などの微小セル構造を積層形成するための10μm以下の大きさの複数のマイクロパターン部材を有するマイクロパターン複合材であって、各層の位置合わせを容易とし、確実に接着することを可能とするマイクロパターン形成用材料を提供する。
【解決手段】マイクロパターン部材5Aを形成するためのマイクロパターン形成用材料であって、第1のトリガーが部分的に与えられることにより部分的に硬化し、かつ部分的に硬化した部分以外の部分が除去された後に、第1のトリガーとは異なる第2のトリガーが与えられることにより硬化し、かつ接着性を発現するマイクロパターン形成用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、化学実験をダウンサイジングしたり、微量な検体を分析したりするのに用いられるマイクロチップなどを製造するのに用いられるマイクロパターン形成用材料に関し、より詳細には、マイクロメートルオーダー以下の貫通部分または溝を有するマイクロパターン部材を得るためのマイクロパターン形成用材料、マイクロパターン複合材及びその製造方法並びに微小3次元構造基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1μmから1mmの毛管寸法のマイクロキャビティおよびマイクロチャネルを含むマイクロ構造によって微小容量の流体を操作できる、Lab−on−a−Chipもしくは、マイクロTAS、マイクロ化学チップなどと呼ばれるマイクロチップ型の液体操作デバイスが知られている。このようなデバイスは、化学実験をダウンサイジングするための、あるいは検体発生現場等において分析を簡便にかつ速やかに行うための機器として注目されている。
【0003】
この種のデバイスは、少なくとも2枚以上の複数の基板を含む積層体を有する。基板の一方面及び/または他方面の一部に微小流路が構成されている。この微小流路に成分分析または合成などを行うために、ガスや液体が流入され、分析や反応などが行われる。
【0004】
マイクロチップのような上記デバイスのコストを低めるために、プラスチックからなる基板が用いられている。しかし、微細流路がより一層小さくなるにつれて、微細流路を埋めないで基板同士を接合することが困難となる。
【0005】
下記の特許文献1には、(A)分子内に開環重合性反応基を有する化合物と(C)高エネルギー線を吸収し酸あるいは塩基を発生する化合物を必須成分とする感光性樹脂組成物が開示されている。この感光性樹脂組成物の全面に、高エネルギー線を照射することにより該組成物が半硬化状態となる。次に、レーザー光を照射することにより半硬化状態の組成物の一部分が除去される。これらの工程を経ることにより、微細な流路を有する3次元パターンが得られる。
【0006】
他方、下記の特許文献2には、光後硬化型の樹脂組成物からなるレジストフィルムを用いたマイクロリアクターの製造方法が開示されている。この方法によると、微細流路が正確に形成された基板が歪みなどを生ずることなく正確に積層されているマイクロリアクターを製造することができる。
【特許文献1】特開2003−307849公報
【特許文献2】特開2005−329479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の感光性樹脂組成物および特許文献2に記載のマイクロリアクターの製造方法では、微細な流路が形成された3次元パターンや基板などのマイクロパターン部材を得ることができる。また、作製されたマイクロパターン部材は接着性を維持しているので、マイクロパターン部材を他の部材に、またはマイクロパターン部材同士を積層し、接合することができる。しかしながら、流路幅が10μmを下回ると、微細流路が正確に形成されたマイクロパターン部材の量産性は悪くなる。また、マイクロパターン形成後の部材が粘着性を有するために、接触アライメント法、すなわち、何度も接触させ直しながら正確な位置決めを行う方法を用いることができなかった。よって、部材間で精密な位置決めを行う必要がある場合には、作業性が低かった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、最小幅10μm以下の微細構造を有し、精密位置合わせのための接触アライメント法を適用し得る、マイクロパターンを形成するためのマイクロパターン形成用材料、マイクロパターン複合材、及びその製造方法、並びに微小3次元構造基板の製造方法を提供することにある。本発明のより限定的な目的は、特に、接着時に加熱の必要がない、近紫外光刺激による遅延接着性のマイクロパターンを有するマイクロパターン複合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマイクロパターン形成用材料は、マイクロパターン部材を形成するためのマイクロパターン形成用材料であって、第1のトリガーが部分的に与えられることにより部分的に硬化し、かつ部分的に硬化した部分以外の部分が除去された後に、第1のトリガーとは異なる第2のトリガーが与えられることにより硬化し、かつ接着性を発現するものである。
【0010】
本発明に係るマイクロパターン形成用材料のある特定の局面では、前記第1のトリガーが光であり、前記第2のトリガーが光である。この場合、第1,第2のトリガーのいずれもが光であるため、加熱が好ましくないマイクロパターン部材の製造に好適に用いられる。また、加熱装置を必要としないので、製造設備の簡略化を果たすことができる。
【0011】
本発明に係るマイクロパターン形成用材料としては、好ましくは、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)と、ラジカル重合性化合物(B)と、光ラジカル発生剤(C)と、イオン重合性樹脂(D)と、光イオン重合触媒(E)を含む組成物が用いられる。この場合には、例えば第1のトリガーとして光ラジカル発生剤(C)を活性化させる光を照射することにより、また第2のトリガーとして、光イオン重合触媒(E)を活性化させる光を照射することにより、マイクロパターン部材を得ることができる。
【0012】
より好ましくは、前記第1のトリガーの印加総量(P1)に対する前記第2のトリガーの印加総量(P2)の比であるP2/P1が1〜100の範囲とされる。この場合には、第1のトリガーを付与してパターニングを良好に行うことができ、かつ第2のトリガーの付与により十分な接着性を発現させることができる。
【0013】
本発明に係るマイクロパターン形成用材料のある特定の局面では、前記第1のトリガーが光であり、前記第2のトリガーが熱である。このように、第1のトリガーが光である場合、第2のトリガーとして熱を用いてもよい。その場合には、好ましくは、マイクロパターン形成用材料として、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)と、ラジカル重合性化合物(B)と、光ラジカル発生剤(C)と、イオン重合性樹脂(D)と、熱硬化剤(F)とを含む組成物が好適に用いられる。
【0014】
本発明に係るマイクロパターン複合材は、支持体と、前記支持体上に形成されており、マイクロパターンを構成しているマイクロパターン部材とを備え、前記マイクロパターン部材が、本発明に従って提供されるマイクロパターン形成用材料に第1のトリガーを付与することにより得られた材料からなり、第2のトリガーが付与された後に接着性を発現する。
【0015】
本発明に係るマイクロパターン複合材では、支持体に支持された状態で、接着力が無い或いは微粘着性を有するマイクロパターン部材が用意される。従って、支持体に支持された状態でのマイクロパターンが取り扱われ、接触アライメント法を適用でき得るため、多数のマイクロパターンが精密位置あわせのうえに積層接合された後述の微小3次元構造を容易にかつ高精度に形成することができる。
【0016】
本発明に係るマイクロパターン複合材では、好ましくは、前記マイクロパターン部材の厚み方向のヤング率が、1〜5MPaである。厚み方向のヤング率が1〜5MPaであるマイクロパターン部材の場合には、被着体に非常に小さな中空構造、橋渡し構造、または片持ち梁構造などの微小3次元構造が存在している場合でもこれらの構造を埋めることなく接着することができる。また、好ましくは、前記マイクロパターン部材の第2のトリガーを付与する前の前記支持体に対する剥離力は0.02N/10mm以下とされる。
【0017】
本発明に係るマイクロパターン複合材の製造方法は、本発明に従って構成されたマイクロパターン形成用材料を支持体上に積層する工程と、前記マイクロパターン形成用材料を前記支持体に積層する前、または積層した後に、第1のトリガーを付与して、マイクロパターン形成用材料をパターニングすることにより、マイクロパターン部材を形成し、それによって支持体とマイクロパターン部材とを有するマイクロパターン複合材を得る工程とを備える。
【0018】
本発明に係る微小3次元構造基板の製造方法は、本発明に従って構成されたマイクロパターン形成用材料を支持体上に積層する工程と、前記マイクロパターン形成用材料を前記支持体に積層した後に、第1のトリガーを付与してマイクロパターン形成用材料をパターニングすることにより、マイクロパターン部材を形成し、それによって支持体とマイクロパターン部材とを有するマイクロパターン複合材を得る工程と、前記マイクロパターン部材に第2のトリガーを付与し、マイクロパターン部材において接着性を発現させる工程と、前記マイクロパターン複合材の前記マイクロパターン部材を基板の表面に圧着する工程とを備える。
【0019】
本発明に係る微小3次元構造基板の製造方法のある特定の局面では、前記マイクロパターン部材を前記基板に圧着した後に、前記支持体を前記マイクロパターン部材から剥離する工程がさらに備えられる。
【0020】
本発明に係る微小3次元構造基板の製造方法のさらに別の特定の局面では、前記支持体が剥離された後に、前記マイクロパターン部材上に、新たなマイクロパターン複合材のマイクロパターン部材をさらに圧着する工程と、新たなマイクロパターン複合材の支持体を剥離する工程とがさらに備えられる。
【0021】
本発明に係る微小3次元構造基板の製造方法のさらに別の特定の局面によれば、前記支持体が剥離され、露出された前記マイクロパターン部材が接着反応を完了する前に、該マイクロパターン部材に他の部材を積層し、接着する工程がさらに備えられる。このように、マイクロパターン部材上に、マイクロパターン部材以外の他の部材を積層し、接着する工程を実施することにより、より多層の微小3次元構造基板を得てもよい。
【0022】
本発明に係る微小3次元構造基板の製造方法のさらに別の特定の局面では、前記マイクロパターン部材が圧着された後に、該マイクロパターン部材に前記第2のトリガーが与えられる。このように、第2のトリガーは、マイクロパターン部材の圧着後に与えられてもよく、従って、マイクロパターン部材が柔らかい状態でマイクロパターン部材を容易に圧着することができ、しかる後、第2のトリガーを付与することにより、マイクロパターン部材を硬化させることができる。
【0023】
また、マイクロパターン形成用材料の組成によっては、基板などに圧着する前に第2のトリガーを付与し、遅延硬化により遅れて接着性を発現させてもよい。
【0024】
また、微小3次元構造を形成する各層のパターンが連なっていない多数の独立したパターンであっても、一括して転写され、接合される。したがって、多くの微小3次元構造が高度に集積された微小3次元構造基板を安定にかつ確実に作製することができる。
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0026】
先ず、本発明において、上記マイクロパターンを形成するのに用いられるマイクロパターン形成用材料につき説明する。
【0027】
本発明に係るマイクロパターン形成用材料は、支持体上にマイクロパターン部材を形成するためのマイクロパターン形成用材料であって、第1のトリガーが部分的に与えられることにより部分的に硬化し、かつ部分的に硬化した部分以外の部分が除去された後に、第1のトリガーとは異なる第2のトリガーが与えられることにより、硬化し、接着性を発現するマイクロパターン形成用材料である。
【0028】
上記第1のトリガー及び第2のトリガーとしては、特に限定されず、光や熱などの様々な活性エネルギー線を用いることができる。好ましくは、第1のトリガーが光であり、第2のトリガーが光であるマイクロパターン形成用材料が用いられる。この場合には、加熱が適当でない用途に、本発明に係るマイクロパターン形成用材料を好適に用いることができる。例えば、蛋白質などの加熱により変性する材料を収納したマイクロパターン部材を形成する場合などには、第1,第2のトリガーのいずれもが光であることが好ましい。
【0029】
上記第1のトリガーが光であり、第2のトリガーが光であるマイクロパターン形成用材料として、好ましくは、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)と、ラジカル重合性化合物(B)と、光ラジカル発生剤(C)と、イオン重合性樹脂(D)と、光イオン重合触媒(E)とを含む組成物が用いられる。この場合、第1のトリガーとして光ラジカル発生剤(C)を活性化させる光を照射し、第2のトリガーとして光イオン重合触媒(E)を活性化させる光を照射すればよい。
【0030】
光ラジカル発生剤(C)を活性化させることにより、光ラジカルが生じ、それによってラジカル重合性化合物(B)の重合が進み、半硬化する。また、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)が、側鎖に反応性官能基を有するような場合には、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)とラジカル重合性化合物(B)との共架橋もしくは共重合が進み、半硬化する。従って、第1のトリガーとしての光が部分的に照射された場合に、光が照射された部分を半硬化させることができる。そして、光が照射されていない部分をアルカリにより処理し、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)を溶解し、除去することにより、パターニングを行うことができる。
【0031】
なお、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)が側鎖に反応性官能基を有しない場合には硬化せず、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)はバインダーとしての役割を有するだけである。
【0032】
上記第1のトリガーを付与することにより、後述する本発明に係るマイクロパターン複合材のマイクロパターン部材が得られる。このマイクロパターン部材は、第2のトリガーが付与される前であり、従って、接着性を発現する前の状態にある。
【0033】
上記マイクロパターン形成用材料の好ましい第1〜第3の態様を説明する。
【0034】
上記マイクロパターン形成用材料の第1の態様としては、(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂、(B)ラジカル重合性化合物と、(C)光ラジカル発生剤と、(D)イオン重合性樹脂と、(E)光イオン重合触媒とを含み、前記第1,第2のトリガーが光であり、前記第2のトリガーとしての光の印加エネルギー総量の前記第1のトリガーとしての光の印加エネルギー総量に対する比が1倍〜100倍の範囲にある、マイクロパターン形成用材料である。
【0035】
また、第2の態様は、(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂、(B)ラジカル重合性化合物と、(C−1)波長400nm以上の光が与えられた際にラジカルを発生する光ラジカル発生剤と、(D)イオン重合性樹脂と、(E−1)波長400nm未満の光が照射された際に活性化されるイオン重合触媒とを含み、前記第1のトリガーが光であり、前記第2のトリガーが光であり、前記第1のトリガーとしての光の波長が、前記第2のトリガーとしての光の波長よりも長波長である、マイクロパターン形成用材料である。
【0036】
さらに、第3の態様は、(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂、(B)ラジカル重合性化合物と、(C)光ラジカル発生剤と、(D)イオン重合性樹脂と、(F)前記イオン重合性樹脂(D)を加熱により硬化する熱硬化剤とを含み、前記第1のトリガーが光であり、前記第2のトリガーが熱である、マイクロパターン形成用材料である。
【0037】
これらの第1〜第3の態様に係るマイクロパターン形成用材料において用いられる各成分の詳細を説明する。
【0038】
(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂:
上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)は、アルカリ現像液による現像に際し、溶解され得る、適宜の合成樹脂からなる。このような合成樹脂としては、アルカリ現像液に可溶である限り、特に限定されないが、側鎖にアルカリ可溶基であるカルボキシル基または水酸基を有するように合成された(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、クレゾールノボラック系樹脂が挙げられる。また、SBSやSISなどの熱可塑性エラストマーが、カルボキシル基やフェノール性水酸基のようなアルカリ可溶性基を有するように変性された樹脂を用いてもよい。好ましくは、アルカリ溶解速度の制御、粘接着性の制御、及び他の成分との相溶性の制御が容易であるため、側鎖にカルボキシル基または水酸基を有するように合成された(メタ)アクリル系樹脂が望ましい。
【0039】
また、アルカリ可溶性バインダーは、側鎖に反応性官能基を有することが好ましく、中でも重合性の二重結合を有することが好ましい。
【0040】
上記側鎖にカルボキシル基または水酸基を有するように合成された(メタ)アクリル系樹脂としては、共重合性単量体としての(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物と、カルボキシル基または水酸基と不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル系単官能化合物とを共重合してなる(メタ)アクリル系共重合体を好適に用いることができる。
【0041】
また、上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)としては、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有する(メタ)アクリル共重合体を用いても良い。側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有する(メタ)アクリル共重合体は、ラジカル重合性化合物(B)と共架橋するので、露光・現像工程における解像度がより一層高くなる。
【0042】
側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有する(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、少なくとも酸性官能基を有する構成単位と水酸基を有する構成単位とからなる主鎖を有し、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物が該イソシアネート化合物のイソシアネート基を介して上記酸性官能基の少なくとも一部にアミド結合している及び/又は上記水酸基の少なくとも一部にウレタン結合している重合体が好適である。
【0043】
上記共重合性単量体と、カルボキシル基または水酸基と不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル系単官能化合物とを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により重合する方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
【0044】
なお、上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)のガラス転移温度Tgや分子量は、組み合わされる他の成分との関係により、適宜選択すればよい。
【0045】
上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)としては、1種のみの樹脂が用いられてもよく、2種以上の樹脂が併用されてもよい。
【0046】
マイクロパターン形成用硬化性組成物におけるアルカリ可溶性バインダー樹脂(A)の配合割合については、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)、ラジカル重合性化合物(B)及びイオン重合性樹脂(D)の合計100重量部に対して、20〜40重量部の割合とすることが好ましい。20重量部未満では、アルカリ現像できないことがあり、40重量部を超えると、耐水性が悪くなることがある。より好ましくは、25〜35重量部である。
【0047】
(B)ラジカル重合性化合物:
上記ラジカル重合性化合物(B)としては、発生したラジカルにより重合する適宜の化合物を用いることができ、このようなラジカル重合性化合物としては、例えば、以下のb1)ラジカル重合性単量体、b2)ラジカル重合性二重結合を有するオリゴマー、及び/またはb3)ラジカル重合性二重結合を一分子中に2個以上有する化合物または共重合体が好適に用いられる。
【0048】
b1)ラジカル重合性単量体
ラジカル重合性単量体b1)は、ラジカル重合性二重結合を1分子中に2個以上有する化合物または共重合体以外、すなわち化合物または共重合体b3)以外のラジカル重合性の単量体である。
【0049】
ラジカル重合性単量体としては、第1のトリガーを付与した際にマイクロパターン形成用材料を半硬化状態とし得る適宜の単量体が用いられる。中でも、半硬化状態の程度を容易にコントロールすることができるので、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0050】
また、その他のラジカル重合性単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等からなる化合物を用いてもよい。これらは、ラジカル重合性単量体としての(メタ)アクリル酸エステルに代えて用いられても良いし、混合して用いられてもよい。
【0051】
b2)ラジカル重合性二重結合を有するオリゴマー
上記b2)ラジカル重合性二重結合を有するオリゴマーとしては、ラジカル重合性二重結合を有する限り、特に限定されるものではない。例えば、(メタ)アクリル系オリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリカーボネート系オリゴマー、ポリアミド系オリゴマー、ポリイミド系オリゴマー、ポリウレタン系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、フェノール系オリゴマー、クレゾールノボラック系オリゴマーなどが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、SBSやSISなどの熱可塑性エラストマーに、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニルエステル基、またはビニロキシ基などのようなラジカル重合性二重結合を有するように変性されたオリゴマーを用いてもよい。
【0052】
上記オリゴマーb2)としては、1種のオリゴマーのみが用いられてもよく、2種以上のオリゴマーが併用されてもよい。
【0053】
b3)ラジカル重合性二重結合を一分子中に2個以上有する化合物または共重合体
上記化合物または共重合体b3)としては、一分子中にラジカル重合性二重結合を2個以上有する限り、特に限定されるものではない。例えば、ラジカル重合性二重結合を有する官能基を一分子中に2個以上有する適宜の化合物や側鎖にラジカル重合性の二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。このようなラジカル重合性二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニルエステル基、ビニロキシ基などが挙げられる。
【0054】
側鎖にラジカル重合性の二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーを作成する方法としては、水酸基又はカルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーと、水酸基又はカルボキシル基と反応する基と反応性二重結合とを有する化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0055】
上記水酸基又はカルボキシル基と反応する基と反応性二重結合とを有する化合物の具体例としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は1,1−bis(acryloyloxymethyl)ethyl isocyanate等が挙げられる。
【0056】
上記化合物または共重合体b3)としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性した化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性した化合物等が挙げられる。
【0057】
上記化合物または共重合体b3)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
マイクロパターン形成用材料における(B)ラジカル重合性化合物のガラス転移点温度Tgや(B)ラジカル重合性化合物の分子量は、組み合わされる他の成分との関係により、適宜選択すれば良い。
【0059】
マイクロパターン形成用材料における(B)ラジカル重合性化合物の配合割合については、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)、ラジカル重合性化合物(B)及びイオン重合性樹脂(D)の合計100重量部に対して、40〜70重量部の割合とすることが好ましい。40重量部未満では、微細パターンに応じた形状が転写できなくなることがあり、70重量部を超えると、基板への充分な接着性が発現できないおそれがある。より好ましくは、50〜60重量部である。
【0060】
(C)光ラジカル発生剤:
光ラジカル発生剤(C)としては、第1のトリガーとしての光の照射により活性化され、ラジカルを発生する適宜の化合物を挙げることができる。好ましくは、光の照射により活性化され、前述した共重合性単量体b1)、オリゴマーb2)及び化合物または共重合体b3)をラジカル反応架橋させる光ラジカル反応開始剤を用いることができる。
【0061】
後述の光イオン重合触媒(E)を活性化させる場合には、光イオン重合触媒(E)の活性化に用いる光とは異なる波長の光で活性化される光ラジカル発生剤(C−1)を用いるのが望ましい。例えば、光イオン重合触媒(E)が第2のトリガーとしての400nmより短い波長の光により活性化される場合、光ラジカル発生剤(C−1)としては、400nmより長い波長の光により感光する化合物が好ましく用いられる。しかしながら、光ラジカル発生剤(C)の励起波長と光イオン重合触媒(E)の励起波長とが重なっていても、ラジカル連鎖反応の反応速度とイオン重合反応の反応速度とに差があるため、微細パターニング形成能と光硬化接着性との両立を果たすことはできる。微細パターニング形性能と接着性との機能をより明確に分離するために、第1のトリガーが付与される場合の印加される光エネルギー総量P1に対する、接着性を付与するために印加される、すなわち、第2のトリガーが付与される際の印加される光エネルギー総量P2の比P2/P1が1〜100であることが好ましい。比P2/P1が1未満では、光硬化接着不良となることがあり、100を超えると、微細パターンを高精度に形成することができなくなることがある。
【0062】
このような光ラジカル発生剤(C)としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等、従来公知の光反応開始剤が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
400nmより長い波長の光により活性化される光ラジカル発生剤(C−1)としては、ビスアシルフォスフィンオキサイド系ラジカル発生剤、具体的にはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイン)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名イルガキュア819)、チタノセン系ラジカル発生剤、具体的には、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウム(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名イルガキュア784)等が挙げられる。
【0064】
また、光イオン重合触媒(E)とは異なる波長で活性化される光ラジカル発生剤(C−1)として、例えば、染料とラジカル発生剤または水素ドナーとを併用すること、あるいは、α−ジケトン誘導体と水素ドナーとを併用することが好ましい。さらに、単独の可視光重合開始剤の他、有機過酸化物と色素、ジフェニルヨードニウム塩と色素、イミダゾールとケト化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と水素供与性化合物、メルカプトベンゾチアゾールとチオピリリウム塩、金属アレーンとシアニン色素などのヘキサアリールビイミダゾールとラジカル反応開始剤等の公知の開始剤の組み合わせを用いてもよい。
【0065】
(C)光ラジカル発生剤の配合割合については、(B)ラジカル重合性化合物の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.05〜5重量部である。0.01重量部未満では、(B)ラジカル重合性化合物の光架橋・重合が十分に進行し難いことがあったり、架橋・重合速度が遅くなり過ぎることがあり、10重量部を超えると、得られるマイクロパターン部材の物性が低下するおそれがある。
【0066】
(D)イオン重合性樹脂:
イオン重合性樹脂(D)は、イオン性反応基を有し、光の照射及び/または加熱により該イオン性反応基が反応して硬化する化合物である。上記イオン重合性樹脂(D)のイオン性反応基としては、アニオン系官能基とカチオン官能基とが存在する。上記カチオン反応基としては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニロキシ基、スチリル基、アルコキシシリル基などを挙げることができる。
【0067】
上記アニオン系官能基としては、エポキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基などを挙げることができる。
【0068】
イオン重合性樹脂(D)としては、好ましくは、エポキシ基、オキセタニリル基、ビニロキシ基、ステアリル基、アルコキシシリル基などのイオン反応性官能基を一分子中に2個以上有する化合物を挙げることができる。より具体的には、光の照射及び/または加熱により、硬化される各種エポキシ化合物を挙げることができる。このようなエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化SBSなどを挙げることができる。
【0069】
上記イオン重合性樹脂(D)の配合割合については、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)、ラジカル重合性化合物(B)及びイオン重合性樹脂(D)の合計100重量部に対して、10〜20重量部の割合とすることが好ましい。10重量部未満では、基板への充分な硬化接着性が得られないことがあり、20重量部を超えると、型取り転写性が低下するおそれがある。
【0070】
(E)光イオン重合触媒:
光イオン重合触媒(E)は、光により活性化されてイオンを発生し、イオン重合性樹脂(D)をイオン重合により硬化させる化合物である。
【0071】
光イオン重合触媒(E)は、光により活性化され、イオン重合性樹脂(D)のイオン重合反応を進行させる。光イオン重合触媒(E)としては、例えば、感光性オニウム塩やフェロセン系化合物などの光の照射によりカチオンを発生させる化合物を挙げることができる。このカチオンを発生させる化合物としては、種々の光カチオン重合開始剤を用いることができる。上記光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の感光性オニウム塩類や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などのメタロセン塩、ピリジニウム等がある。
【0072】
上記光カチオン重合開始剤のうち、芳香族ヨードニウム塩と芳香族スルホニウム塩は、紫外領域以外の光ではカチオンを生成しないが、芳香族アミンや多環芳香族炭化水素等の公知の増感剤であって可視光領域に励起吸収帯を有する増感剤を併用することにより、可視領域の光でもカチオンを生成することが出来る。またメタロセン塩を用いる場合には、ターシャリーアルコールのオキサレートエステルを反応促進剤として用いてもよい。
【0073】
より、具体的には、上記感光性オニウム塩としては、トリアリールスルフォニウム塩、ジアリールスルフォニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などのSbF6−、PF6−、BF4−、B(PhF4−を対アニオンとする化合物を挙げることができる。上記鉄−アレン錯体としては、例えば、Fe−フェロセン錯体を挙げることができる。なお、上記光カチオン重合開始剤は、波長400nm以下の光のみでもカチオンを生成することができるので、本発明の(E)光イオン重合触媒として使用することができる。
【0074】
市販の光カチオン重合開始剤は、イオン性光酸発生タイプと非イオン性光酸発生タイプに大別されており、イオン性光酸発生タイプの光カチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」(以上、旭電化工業社製)、商品名「UVE−1014」(ゼネラルエレクトロニクス社製)、商品名「CD−1012」(サートマー社製)等が挙げられる。
【0075】
非イオン性光酸発生タイプの光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスホナート等が挙げられる。
【0076】
上記光イオン重合触媒(E)は、1種のみが単独で用いられてもよく、2種類以上が用いられても良い。
【0077】
上記光イオン重合触媒(E)の配合割合については、(D)イオン重合性樹脂100重量部に対し、0.1〜50重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。0.1重量部未満では、光の照射により(D)イオン重合性樹脂の硬化が不足し、基板への接着性が充分に高くならないおそれがある。また、50重量部を超えると、得られるマイクロパターン部材の物性が低下するおそれがある。
【0078】
(F)熱硬化剤:
熱硬化剤(F)は、イオン重合性樹脂(D)を加熱により硬化促進させる。このような熱硬化剤(F)としては適宜のアミン及び/またはチオール基を有する硬化剤を挙げることができる。1,3−ビス[ヒドラジノカルボノエチル−5−イソプロピルヒダントイン]等のヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、N,N’−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N’−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)−アジポアミド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、変性脂肪族ポリアミン、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールービス(アンヒドロトリメリテート)等の酸無水物、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
【0079】
上記熱硬化剤(F)の配合割合については、(D)イオン重合性樹脂100重量部に対し、1〜100重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部の範囲である。1重量部未満では、加熱により(D)イオン重合性樹脂の硬化が不足し、基板への接着性が充分に高くならないおそれがある。また、100重量部を超えると、得られるマイクロパターン部材の物性が低下するおそれがある。
【0080】
(その他の成分)
本発明の目的を阻害しない限り、上記マイクロパターン形成用材料には、他の成分が適宜添加されてもよい。このような他の成分としては、支持体上にフィルムを形成する際の溶剤、柔軟性を付与するための可塑剤、光反応性を制御するための反応促進剤もしくは反応抑制剤、適宜の充填剤、安定性を高めるための酸化防止剤、耐候性を高めるための紫外線吸収剤、あるいは酸素吸収剤などが挙げられる。また、導電性を付与するために、金属微粒子、有機導電性化合物あるいは固体電解質などを添加してもよい。
【0081】
(光源)
上記マイクロパターン形成用材料における光架橋や硬化を進めるための光源としては、使用する光の波長に応じて適宜の光源を用いることができる。このような光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザー、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置、UV−LED等が挙げられる。また、フィルター等を用いて不要な波長成分を低減又は除去してもよいし、各種光源を組み合わせて用いても良い。
【0082】
(熱源)
また、熱硬化剤(E)の硬化にトリガーとして熱を利用する場合には、適宜の熱源を用いることができる。このような熱源としては、ヒーター、炉あるいは赤外線を照射する赤外光照射装置などを挙げることができる。
【0083】
(マイクロパターン部材の好ましい物性)
上記マイクロパターン形成用材料に第1のトリガーを印加した後の半硬化物、すなわちマイクロパターン部材の表面タックは、好ましくは、4〜20である。タックが4未満であると、基板への貼り合わせ時に滑ってしまい、位置合わせが困難になるおそれがある。また、20を超えると、位置合わせ修正が困難になるおそれがある。なお、上記タックは以下の方法で測定した値である。
【0084】
タックの測定:
離型処理を施した厚み50μmのPETフィルム上に、厚みが20μmとなるようにマイクロパターン形成用材料をキャスティングし、樹脂フィルムを作成した。カバーフィルムとして厚み50μmのPETフィルムをラミネートした。
【0085】
タックを測定する前に、カバーフィルム面より、主発光波長400nm、照度1mW/cmのUV光を、120秒間照射した。次に、カバーフィルムを剥離し、樹脂フィルムを露出させ、タック測定用サンプルを得た。タックの測定は、JIS Z 0237ボールタック試験に準じて行った。
【0086】
本発明のマイクロパターン部材を基板に貼り付け、第2のトリガーを印加した後の基板との接着力は、好ましくは、0.05N/cm以上である。接着力が0.05N/cm未満であると、基板から剥がれてしまうおそれがあり、目的とする中空構造が維持できなくなることがある。上記接着力は、以下の方法で測定された値である。
【0087】
接着力の測定:
離型処理を施した厚み50μmのPETフィルム上に、厚みが20μmとなるようにマイクロパターン形成用材料をキャスティングし、樹脂フィルムを作成した。カバーフィルムとして厚み50μmのPETフィルムをラミネートした。
【0088】
カバーフィルム面より、主発光波長400nm、照度1mW/cmのUV光を、120秒間照射した。次に、カバーフィルムを剥離し、上記樹脂フィルムを基板となるアクリル板あるいはポリカーボネート板に貼付した。次に、逆の面のPETフィルムを剥がし、もう一枚のアクリル板あるいはポリカーボネート板を同様にして樹脂フィルムに貼付した。
【0089】
なお、接着面積は、2.5cm×2.5cmとし、貼り合わせに際しては、一方のアクリル板の背面において2kgのゴムローラーを1往復させた。
【0090】
貼り合わせ後、主発光波長365nm、照度24mW/cmのUV光を、250秒間照射した。次に、JIS K 6854−1:1999に準じて剥離試験を行い、剥離に至った際の強度を接着力とした。
【0091】
上記マイクロパターン形成用材料に第1,第2のトリガーを付与し、硬化することにより得られた樹脂シートでは、厚み方向のヤング率は、好ましくは、1〜5MPaである。ヤング率の範囲がこの範囲内の場合、転写法を用いて被着体表面に積層された際に、非常に小さな中空構造、橋渡し構造または片持ち梁構造などの微小な3次元構造が被着体に存在していた場合であっても、これらを埋めることなく接着することができる。ヤング率がこの範囲外の場合、転写法により、これらの構造を埋めることなく接着することが困難となるおそれがある。上記マイクロパターンのヤング率は、本明細書においては、以下の方法で測定された値である。
【0092】
ヤング率の測定:
従来からヤング率の測定法として知られているバルジ法に基づき、ヤング率を測定した。すなわち、被測定対象物であるフィルムに負圧を加え、その負圧に対するフィルムの歪み量をヘテロダイン変位計で計測して、負圧と歪み量の計測結果を30〜500点求め、その関係式よりヤング率を計算する方式を採用した。負圧は真空系を用いて実現した。薄膜に負圧を加える領域を円形とした場合、薄膜の最大のたわみを示す部位(薄膜の中心)でのたわみ量には
Δp=(Ath/r)+(BtEh/r
の関係がある。ここで、p;大気圧との差の圧力、h;たわみ量、E;ヤング率、r;負圧のかかる円形領域の半径、t;薄膜厚、A、B;定数である。この計算式に基づき、ヤング率が既知の窒化シリコンの標準サンプルで定数A,Bを求めて、目的のフィルムのヤング率Eを算出した。測定用サンプルは,シリコン異方性エッチングにより形成された2mm丸の開口を有する厚さ2ミリのステンレスプレートに被測定フィルムを貼り付けて作製した。
【0093】
(マイクロパターン複合材)
本発明に係るマイクロパターン複合材は、支持体上に、マイクロパターン部材が積層された構造を有する。この状態におけるマイクロパターン部材は、最小幅10μm以下のオーダーの微小貫通構造もしくは微小スリット構造を有するフィルム、あるいは、微小周期構造等である。マイクロパターン部材は、そのままでは接着力はないが、第2のトリガーの付与により接着性を発現する。支持体に対するマイクロパターン部材の剥離力は、好ましくは、0.02N/10mm以下である。それによって、転写後に支持体を容易に剥離することができる。剥離力がこの値を超えると、転写後に支持体を剥離することが困難となることがある。なお、剥離力は、以下の方法で測定された値である。
【0094】
(剥離力の測定方法)
180度引きはがし粘着力試験
JIS Z0237:2000に準拠
1.試験片
厚み25μmのPETからなる支持体上にマイクロパターン部材が積層されたマイクロパターン複合材を幅10mmにカットして、試験片を得た。
【0095】
2.被着体
厚さ2.0mmの市販アクリル板(キャスト品)を幅約50mm及び長さ約125mmに切断し、エタノールで洗浄して、被着体を得た。
【0096】
3.試験
被着体の表面に上記試験片をマイクロパターン部材側から積層した。この試験片の支持体のマイクロパターン部材が積層されている側とは反対側の面、すなわち背面に0.2MPaの荷重を加えるようにゴムローラーを300mm/分の速度で1往復させた。しかる後、上記被着体に試験片が圧着された積層体を23℃及び湿度50%で20分間静置した。
【0097】
静置後、速度300mm/分で180度方向に支持体である厚み25μmのPETフィルムを、マイクロパターン部材から剥離し、剥離強度を測定した。
【0098】
(解像度)
解像度10μm以下のオーダーとは、流路や反応槽を形成するためのスリットや貫通孔の幅もしくは径などの最小幅寸法が10μm以下、すなわち反応槽を形成するための最終寸法部分が10μm以下であることを意味するものとする。
【0099】
(マイクロパターン複合材の製造方法)
上記マイクロパターン部材の形成は、上記マイクロパターン形成用材料を支持体上に塗工もしくは積層する前に、または塗工もしくは積層した後に、流路や貫通孔となる部分以外に、流路や貫通孔となる部分を遮光部とするマスクを用いて第1のトリガーを付与する。それによって、流路や貫通孔となる遮光部分では、光が照射されず、残りの部分では光が照射されることにより、光架橋が進行する。しかる後、アルカリ現像液で現像する。上記光が照射されなかった部分における未硬化の硬化性組成物がアルカリ現像液に溶解除去され、流路や貫通孔が形成されることになる。このようにしてマイクロパターン部材が支持体上に支持されたマイクロパターン複合材が得られる。マイクロパターン部材には、未反応のイオン重合性樹脂(D)と、光イオン重合触媒(E)とが含まれている。このため、該マイクロパターン部材は、マイクロパターン形成時の光照射の約十倍量の光照射により、イオン重合反応を開始し、光遅延接着機能を発現する。
【0100】
上記支持体としては、マイクロパターン部材の形成に際して、上記アルカリ現像液に耐え得る適宜の材料からなる支持体を用いることができる。もっとも、転写後に支持体の剥離を容易とするには、支持体を柔軟性を有する合成樹脂フィルムからなるものとすることが望ましい。このような合成樹脂フィルムとしては、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの適宜の合成樹脂フィルムを挙げることができる。支持体の厚みについても、転写後に剥離されるものであるため、特に限定されないが、取り扱いを容易する上では、10μm〜100μm程度であればよい。
【0101】
上記支持体のマイクロパターン部材が積層される面は、好ましくは、離型処理されていることが望ましい。それによって、最終的な支持体の剥離を容易に行うことができる。離型処理は、一般的なシリコン系離型材やフッ素系離型材を適宜塗布することにより行われ得る。
【0102】
なお、マイクロパターン部材の被着体に接着しようとする面に離型性の保護フィルムを積層してもよい。その場合には、支持体の離型性を保護フィルムの離型性に比べてやや低くなるように調整することが好ましい。
【0103】
(微小3次元構造基板の製造方法)
本発明において、微小3次元構造基板を得るにあたっては、先ず、上記マイクロパターン複合材を用意する。次に、別途用意された基板に該マイクロパターン複合材のマイクロパターン部材を積層する。このマイクロパターン部材の積層前あるいは積層後に、マイクロパターン部材に第2のトリガー、例えば光を付与し、マイクロパターン部材に接着性を発現させる。その後、ハンドゴムローラーやラミネーター等の加圧治具や装置を用いて、加圧しながら、該マイクロパターン複合材のマイクロパターン部材を基板の表面に圧着させる。圧着の際には、必要に応じて、加圧治具や装置の加圧圧力や回数を調整する。
【0104】
上述のイオン重合性樹脂(D)のイオン重合は光の照射を停止した後も進行する。
【0105】
すなわち、マイクロパターン部材の被着体への接着は、前述したマイクロパターン形成用材料中のイオン重合性樹脂(D)をイオン重合させることにより行われる。この場合、イオン重合性樹脂(D)が光カチオン重合により重合が進行する場合、光カチオン重合は光の照射を停止した後も重合反応が進行する。従って、マイクロパターン部材の積層及び圧着前に光の照射を停止してもよい。
【0106】
なお、積層前に光などの第2のトリガーを付与せずに、積層及び圧着後に第2のトリガーを付与してもよい。
【0107】
なお、マイクロパターン部材を基板に積層する前に光を照射した場合、積層後にさらに加熱により硬化を促進してもよい。
【0108】
また、上記加熱は、熱硬化剤を併用した場合に、熱硬化剤の作用によりイオン重合性樹脂(D)を硬化促進させるために行われる。
【0109】
本発明に係る製造方法では、好ましくは、上記支持体に支持されたマイクロパターン部材が基板に圧着された後に、上記支持体を上記マイクロパターン部材から剥離する。このように、転写法により、上記マイクロパターン部材を基板に圧着することができる。この場合、上記支持体が剥離された微小3次元構造基板上のマイクロパターン部材を次の被着体とし、さらにその上に、新たなマイクロパターン複合材を積層し、マイクロパターン部材を上述のように圧着してもよい。その後、上記被着体である微小3次元構造基板上のマイクロパターン上に新たに圧着されたマイクロパターン複合材の支持体を剥離する。このようにすることで、多数のマイクロパターン部材を精密位置合わせしながら順次転写接合し、多層のマイクロパターン部材が積層された微小3次元構造積層体を得ることも容易である。
【0110】
さらに、基板上に積層された1枚以上の上記マイクロパターン部材上に、上記マイクロパターンとは異なるフィルム等の他の部材を積層し、接着し圧着してもよい。この場合、上記他の部材は、上記基板上に積層された1枚以上のマイクロパターン部材から、支持体を剥離し、上記基板上に積層された1枚以上のマイクロパターン部材が接着反応を完了する前に積層し、接着し圧着される。このような他のフィルム部材として、粘着性もしくは非粘着性の適宜のフィルム材を用いることができる。このようなフィルム材を構成する材料としては、例えば、金属や樹脂、セルロース等の打ち抜き加工品、合成樹脂薄肉成形品、薄肉発泡体、織布、不織布、予め用意されたこれらの積層体などを挙げることができる。
【0111】
上記他のフィルム材には、マイクロパターンが形成されていてもよく、形成されていなくてもよい。他のフィルム材の厚みについては、特に限定されず、例えば10μm〜2mm程度とすることができる。
【0112】
なお、上記マイクロパターン部材及び他の部材が圧着された後に、上記マイクロパターン部材に更に第2のトリガーが付与されてもよい。
【0113】
本発明の微小三次元構造用マイクロパターン部材により、マイクロウェル、マイクロチャンバ、マイクロチャネル、マイクロバルブ、マイクロミキサー、マイクロポンプといった微小流体要素をつくることができる。また、本発明のマイクロパターン部材により、光導波路、細胞培養基板、フラットパネルディスプレイ電子ペーパーを構成する電極アレイの隔壁、スペーサー、誘電体層を形成することもできる。さらに、色素や蛍光物質を添加することで、カラーフィルター、蛍光セル、およびブラックマトリクスを作製することができる。また、本発明のマイクロパターン形成用材料に金属粒子を分散させて、配線、マイクロコイルまたはバンプの形成に用いることもできる。更に、本発明のマイクロパターン形成用材料をメッキ工程やインクジェット技術と組み合わせて、化学電極アレイ、圧力センサアレイ、抵抗体アレイ、バイオ電池セル、色素太陽電池セル、フォトニッククリスタル、可動ミラーアレイ、抵抗アレイ、キャパシタアレイ、ヒーターアレイ、バイメタルアレイ、マイクロリレーアレイ、ノズルアレイ、乳化チップ、微細なロストコア材を形成することができる。
【発明の効果】
【0114】
本発明に係るマイクロパターン形成用材料によれば、先ず第1のトリガーを部分的に与えてパターニングし、マイクロパターン部材を得ることができる。得られたマイクロパターン部材は、そのままでは、接着性を発現しないので、マイクロパターン部材を基板などの他の部材上に積層するに際し、位置決めを容易に行うことができる。また、上記マイクロパターン部材を基板などに積層する前または積層後に第2のトリガーを付与することにより、マイクロパターン部材が接着性を発現し、マイクロパターン部材が基板や他のマイクロパターン部材に確実に接着される。従って、微小流路などを有するマイクロパターン部材を高精度に積層し、本発明の微小3次元構造基板を容易に得ることが可能となる。
【0115】
また、第1,第2のトリガーの種類や強度を変化させることにより、様々なマイクロパターンを有するマイクロパターン部材を高精度に形成することも可能となる。
【0116】
本発明に係るマイクロパターン複合材の製造方法では、本発明に係るマイクロパターン形成用材料を支持体に積層し、または積層後に、第1のトリガーを付与し、パターニングするだけで、上記マイクロパターン複合材を容易に得ることができる。
【0117】
本発明に係る微小3次元構造基板の製造方法によれば、本発明に係るマイクロパターン形成用材料を用い、第1のトリガーを付与することを含むパターニング工程を実施して、本発明のマイクロパターン複合材を得た後に、該マイクロパターン複合材のマイクロパターン部材を基板表面に圧着し、圧着前または圧着後に第2のトリガーを付与するだけで、マイクロチップ等に適した微細流路が形成された微小3次元構造基板を容易に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0119】
(実施例1)
(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂として、サイクロマーP ACAZ300(ダイセルサイテック社製)(40重量部)と、
(B)ラジカル重合性二重結合を有するオリゴマー(b2)として、EBECRYL4858(ダイセルサイテック社製)(30重量部)及び
ラジカル重合性二重結合を一分子中に二個以上有する化合物(b3)として、ライトアクリレート DPE−6A(共栄社化学社製)(10重量部)と、
(C)光ラジカル発生剤として、イルガキュア819(チバスペシャリティケミカル社製)(1重量部)と、
(D)イオン重合性樹脂として、エピコート834(ジャパンエポキシレジン社製)(20重量部)と、
(E)光イオン重合触媒として、オプトマーSP−170(ADEKA社製)(2重量部)と、
さらに、溶剤として酢酸エチル40重量部とを加え、遮光下で撹拌・混合することにより均一なキャスト用樹脂組成物溶液からなるマイクロパターン形成用材料を得た。
【0120】
上記のようにして得られたマイクロパターン形成用材料を、支持体としてのポリカーボネートフィルム上に、乾燥後の厚みが100μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工し、110℃で5分乾燥した。次に、図3(a)に示すフォトマスク1を用意した。フォトマスク1では、透明なガラスプレート2上に、マイクロパターンとしての流路等を形成する部分に、遮光性薄膜3が貼り合わされている。遮光性薄膜3の平面形状は、形成するマイクロパターンに応じた形状とされている。遮光性薄膜3は、光を遮光する金属クロム薄膜からなる。
【0121】
次に、図3(b)に示すように、支持体としてのポリカーボネートフィルム4上に、樹脂組成物層5が塗工されている複合シート上に、上記フォトマスク1を配置し、メタルハライドランプ(オーク社製)を用い、400nmの波長の紫外光をエネルギー量100mJ/cmとなるように照射した。照射により、遮光性薄膜3が存在しない部分では、上記紫外光が樹脂組成物層5上に照射され、遮光性薄膜3の下方では、樹脂組成物層5は、露光されなかった。しかる後、光照射後に、現像液として0.24%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を用い、現像を行った。すなわち、0.24%TMAHに上記複合シートを浸漬し、引き上げることにより、光が照射されていない未反応部分の樹脂組成物層5を除去した。
【0122】
その結果、図1に示すように、ポリカーボネートフィルム4上に、フィルム状のマイクロパターン部材5Aが形成されているマイクロパターン複合材6が得られた。このマイクロパターン部材5Aでは、上記フォトマスク1の遮光性薄膜3が設けられている部分に相当する形状の流路が形成されている。もっとも、流路の底には、下方のポリカーボネートフィルム4が存在する。従って、有底の微細流路が形成されている。このようにして得られたマイクロパターン複合材6の流路部位には、未硬化部分の樹脂組成物5が完全に除去されていた。
【0123】
図1に示すマイクロパターン複合材6では、マイクロパターン複合材6の表面は、微粘着性を有するが、そのままでは強固な接着力は有しない。前述した試験方法「接着力の測定」で測定された第1のトリガー付与後により得られた、本組成のマイクロパターン部材のポリカーボネート基板に対する接着力は、0.04N/cmであった。
【0124】
次に、該マイクロパターン部材に365nm波長の紫外光をエネルギー量4000mJ/cmとなるように照射した。照射後、ポリカーボネート基板に対する接着力を同様にして求めたところ、接着力は、1.1N/cmまで高まっていた。
【0125】
(実施例2)
マイクロパターン形成用材料として下記の組成を用いたことを除いては、実施例1と同様にしてマイクロパターン複合材を得た。得られたマイクロパターン複合材の流路部位には、未硬化部分の樹脂組成物が完全に除去されていた。マイクロパターン複合材6の表面は、微粘着性を有するが、そのままでは強固な接着力は有しない。前述した試験方法「接着力の測定」で測定された第1のトリガー付与後により得られた、本組成のマイクロパターン部材のポリカーボネート基板に対する接着力は、0.03N/cmであった。
【0126】
次に、該マイクロパターン部材に365nm波長の紫外光をエネルギー量4000mJ/cmとなるように照射した。照射後、ポリカーボネート基板に対する接着力を同様にして求めたところ、接着力は、0.9N/cmまで高まっていた。
【0127】
(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂として、ARUFON UC−3000(東亜合成社製)(40重量部)と、
(B)ラジカル重合性二重結合を有するオリゴマー(b2)として、EBECRYL4858(ダイセルサイテック社製)(30重量部)及びラジカル重合性二重結合を一分子中に二個以上有する化合物(b3)として、ライトアクリレート TMP−A(共栄社化学社製)(10重量部)と、
(C)光ラジカル発生剤として、イルガキュア819(チバスペシャリティケミカル社製)(1重量部)と、
(D)イオン重合性樹脂として、エピコート834(ジャパンエポキシレジン社製)(20重量部)と、
(E)光イオン重合触媒として、オプトマーSP−170(ADEKA社製)(2重量部)と、
酢酸エチル(40重量部)。
【0128】
(実施例3)
マイクロパターン形成用材料として下記の組成を用いたことを除いては、実施例1と同様にしてマイクロパターン複合材を得た。得られたマイクロパターン複合材の流路部位には、未硬化部分の樹脂組成物が完全に除去されていた。マイクロパターン複合材6の表面は、微粘着性を有するが、そのままでは強固な接着力は有しない。前述した試験方法「接着力の測定」で測定された第1のトリガー付与後により得られた、本組成のマイクロパターン部材のポリカーボネート基板に対する接着力は、0.025N/cmであった。
【0129】
次に、該マイクロパターン部材に365nm波長の紫外光をエネルギー量4000mJ/cmとなるように照射した。照射後、ポリカーボネート基板に対する接着力を同様にして求めたところ、接着力は、0.75N/cmまで高まっていた。
【0130】
(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂として、アクリル酸を20重量%共重合しているポリブチルアクリレート樹脂(40重量部)と、
(B)ラジカル重合性二重結合を有するオリゴマー(b2)として、EBECRYL4858(ダイセルサイテック社製)(30重量部)及びラジカル重合性二重結合を一分子中に二個以上有する化合物(b3)として、UA324(新中村化学社製)(10重量部)と、
(C)光ラジカル発生剤として、イルガキュア819(チバスペシャリティケミカル社製)(1重量部)と、
(D)イオン重合性樹脂として、エピコート834(ジャパンエポキシレジン社製)(20重量部)と、
(E)光イオン重合触媒として、オプトマーSP−170(ADEKA社製)(2重量部)と、
酢酸エチル(40重量部)。
【0131】
但し、上記ポリブチルアクリレート樹脂は、メタクリル酸メチル20重量部と、アクリル酸ブチル50重量部と、アクリル酸30重量部と、重合溶媒として酢酸エチルを50重量部とを、撹拌器と冷却還流管とを備えたセパラブルフラスコに仕込み、撹拌させながら、ウォーターバスで加熱、酢酸エチルの沸点温度での重合を行うことによって得た。
【0132】
重合開始剤としては、パーヘキサTMH(日油(株)製)とパーロイル355(日油(株)製)とを用いた。添加量は、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとアクリル酸との合計を100重量部とした場合に、パーヘキサTMHを、重合反応開始時に0.035重量部、0.5h後に0.035重量部、1.0h後に0.1重量部、パーロイル355を、同じくメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとアクリル酸との合計を100重量部とした場合に、重合反応開始後1.5h後0.05重量部、2.5h後0.05重量部、4.0h後0.75重量部、7.0h後1.5重量部添加した。重合反応は、10時間行った。
【0133】
(実施例4)
(A)アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)として、ポリブチルアクリレート樹脂組成を、アクリル酸ブチル80重量部と、メタクリル酸メチル20重量部と変更したことを除いては、実施例3と同様にしてマイクロパターン複合材を得た。得られたマイクロパターン複合材の流路部位には、未硬化部分の樹脂組成物が若干ではあるが残存していた。前述した試験方法「接着力の測定」で測定された第1のトリガー付与後により得られた、本組成のマイクロパターン部材のポリカーボネート基板に対する接着力は、0.02N/cmであった。
【0134】
次に、該マイクロパターン部材に365nm波長の紫外光をエネルギー量4000mJ/cmとなるように照射した。照射後、ポリカーボネート基板に対する接着力を同様にして求めたところ、接着力は、0.73N/cmまで高まっていた。
【0135】
(実施例5)
実施例1で得られたマイクロパターン複合材6のマイクロパターン部材5A上に、貫通孔7a〜7cを有する厚さ1mmのアクリル系樹脂プレート7を、接触アライメント法による精密位置決めのうえ積層して、積層体を得た。この積層体をゴムローラーで軽くしごき、しかる後、2枚の2mm厚の石英ガラス板で挟み挟持サンプルを得た。このようにして得られた挟持サンプルに対し、0.1MPaの背圧をかけつつ、ポリカーボネートフィルム4が配置されている側の石英ガラス板の外側から365nm以下の波長の紫外光を4000mJ/cmのエネルギー量となるように照射した。このようにして、上記アクリル系樹脂プレート7とマイクロパターン複合材6とを接合した。それによって、図2に示すように、マイクロパターン複合材6にアクリル系樹脂プレート7が接合された微小3次元構造基板からなるマイクロチップ8を得た。なお、充分な接着力が発現するまでの静置時間は6時間と短かった。従って、比較的短時間で充分な接着力が発現した。
【0136】
上記のように、そのままでは接着性を有しない微粘着性のフィルム状のマイクロパターン部材5Aと、アクリル系樹脂プレート7とが、上記紫外光の照射により強固に接着されることを確認した。なお、アクリル系樹脂プレート7の貫通孔7a〜7cのいずれかにキャピラリーを接着し、シリンジを用いて墨汁を注入し、0.2MPaの圧力を加えて一夜放置したが、接着面における剥離や液の漏洩は認められなかった。
【0137】
(実施例6)
実施例1で得られたマイクロパターン複合材6のフィルム状のマイクロパターン部材5Aに365nm以下の波長の紫外光を4000mJ/cmのエネルギー量となるように照射した。しかる後、実施例4で用いた貫通孔7a〜7cを有する厚さ1mmのアクリル系樹脂プレート7をマイクロパターン部材5A側に接触アライメント法により精密位置決めし、積層し、積層体を得た。この積層体をゴムローラーで軽くしごいた後、2mmの厚みの鉄板を積層体の面上に載置し、6時間静置した。それによって、アクリル系樹脂プレート7とマイクロパターン部材5Aとポリカーボネートフィルム4とが接合された、図2に示したのと同じ構造のマイクロチップ8を得た。このように、光照射後に、マイクロパターン部材5Aとアクリル系樹脂プレート7とを密着させた場合においても、遅延硬化反応により接着が進行し、充分接着することを確認した。なお、充分な接着力が発現するまでの静置時間は6時間と短かった。従って、比較的短時間で充分な接着力が発現した。
【0138】
実施例6においても、アクリル系樹脂プレート7の貫通孔7a〜7cのいずれかの貫通孔にキャピラリーを接着し、シリンジを用いて墨汁を注入し、0.2MPaの圧力を加えて一夜放置したが、接着面における剥離や液の漏洩は認められなかった。
【0139】
(実施例7)
実施例1で得られたマイクロパターン複合材6のフィルム状のマイクロパターン部材5Aに365nm以下の波長の紫外光を80mJ/cmのエネルギー量となるように照射したことを除いては、実施例6と同様にして、マイクロチップ8を得た。
【0140】
このように、光照射後に、マイクロパターン部材5Aとアクリル系樹脂プレート7とを密着させた場合においても、遅延硬化反応により接着が進行したが、充分な接着性が発現するまで、12時間、静置しなければならなかった。
【0141】
実施例7においても、アクリル系樹脂プレート7の貫通孔7a〜7cのいずれかの貫通孔にキャピラリーを接着し、シリンジを用いて墨汁を注入し、0.2MPaの圧力を加えて一夜放置したが、接着面における剥離や液の漏洩は認められなかった。
【0142】
(実施例8)
実施例1で得られたマイクロパターン複合材6のフィルム状のマイクロパターン部材5Aに365nm以下の波長の紫外光を200mJ/cmのエネルギー量となるように照射したことを除いては、実施例6と同様にして、マイクロチップ8を得た。
【0143】
このように、光照射後に、マイクロパターン部材5Aとアクリル系樹脂プレート7とを密着させた場合においても、遅延硬化反応により接着が進行したが、充分な接着性が発現するまで、9時間、静置しなければならなかった。
【0144】
実施例8においても、アクリル系樹脂プレート7の貫通孔7a〜7cのいずれかの貫通孔にキャピラリーを接着し、シリンジを用いて墨汁を注入し、0.2MPaの圧力を加えて一夜放置したが、接着面における剥離や液の漏洩は認められなかった。
【0145】
(実施例9)
実施例1で得られたマイクロパターン複合材6のフィルム状のマイクロパターン部材5Aに365nm以下の波長の紫外光を8000mJ/cmのエネルギー量となるように照射したことを除いては、実施例6と同様にして、マイクロチップ8を得た。
【0146】
実施例9の場合においては、第2のトリガー照射のエネルギー量が大きいため、硬化反応がマイクロパターン部材5Aとアクリル系樹脂プレート7を密着させる前に進行し過ぎ、接着部分に未接着部分のムラがわずかに認められた。
【0147】
実施例9においても、アクリル系樹脂プレート7の貫通孔7a〜7cのいずれかの貫通孔にキャピラリーを接着し、シリンジを用いて墨汁を注入し、0.2MPaの圧力を加えて一夜放置したら、接着面における剥離や液の漏洩は認められなかった。
【0148】
(実施例10)
実施例1で得られたマイクロパターン複合材6のフィルム状のマイクロパターン部材5Aに365nm以下の波長の紫外光を10200mJ/cmのエネルギー量となるように照射したことを除いては、実施例6と同様にして、マイクロチップ8を得た。
【0149】
実施例10の場合においては、第2のトリガー照射のエネルギー量が更に大きいため、硬化反応がマイクロパターン部材5Aとアクリル系樹脂プレート7を密着させる前に進行し過ぎ、接着部分に未接着部分のムラが少し認められた。
【0150】
実施例10においても、アクリル系樹脂プレート7の貫通孔7a〜7cのいずれかの貫通孔にキャピラリーを接着し、シリンジを用いて墨汁を注入し、0.2MPaの圧力を加えて一夜放置したら、接着面における剥離や液の漏洩は認められなかった。
【0151】
(実施例11)
表面離型処理された市販のポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として用いたこと、図4に示したフォトマスク11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、フィルム状のマイクロパターン部材が形成されているマイクロパターン複合材を用意した。図4に示すフォトマスク11では、多数の円盤形の遮光性薄膜12と、外周縁に沿う矩形枠状の遮光性薄膜13とが光透過性の樹脂シート14に印刷されている。
【0152】
図5は、支持体としての上記離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、上記フォトマスク11を用いることで得られたマイクロパターン部材17が積層されたマイクロパターン複合材を示したものである。
【0153】
支持体上のマイクロパターン部材17は、そのままでは接着力を有しないが、光の照射により接着性を発現する微粘着性のフィルムであり、上記遮光性薄膜12に対応した部分に、貫通孔が形成されている。しかる後、上記マイクロパターン複合材のマイクロパターン部材17側を、複数の印刷電極18がマトリックス状に形成された厚さ1mmのアクリル板製の回路基板16の上に積層し、積層体を得た。この積層体をゴムローラーを用いて、積層体の厚み方向に力を加えて軽くしごいた後、マイクロパターン複合材の支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルム側から365nm以下の波長の紫外光を4000mJ/cmのエネルギー量となるように照射し、上記アクリル板製の回路基板16と、上記マイクロパターン部材17とを接着した。しかる後、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、図5に示すような印刷電極18が上記マイクロパターン部材17の貫通孔からなる各マイクロウェル17a内に配置されたマイクロウェル付き化学電極アレイプレート15を作製した。このように、転写接着により、微小3次元構造基板を形成することにより、印刷電極18の周縁部を汚染することなく、マイクロウェル付き化学電極アレイプレート15を形成することができた。
【0154】
(実施例12)
表面が離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として用いたこと、図6に示したフォトマスク21を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてマイクロパターン複合材を得た。フォトマスク21では、複数の正方形の遮光部21aがマトリックス状に配置されている。次に、得られたマイクロパターン複合材のマイクロパターン部材を、貫通孔を有する厚さ0.5mmのポリカーボネートプレート上に積層し、積層体を得た。この積層体を厚み方向に圧力を加えるように、ゴムローラーで軽くしごいた後、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、さらにその上に別の貫通孔を有する厚さ0.5mmのポリカーボネートプレートを積層し、マイクロパターン部材が2枚のポリカーボネートプレートにより挟持されてなる積層体を得た。この積層体に、365nm以下の波長の紫外光を4000mJ/cmのエネルギー量となるように照射し、マイクロパターン部材と、両側のポリカーボネートプレートとを接着し、図7に示す上面及び下面に開口を有する微小3次元構造を備えたマイクロプレート23を得た。このように、マイクロパターン部材を支持していた支持体とは異なる2枚のポリカーボネートプレートに挟持された微小3次元構造体を容易に作製することができた。
【0155】
上記ポリカーボネートプレートに代えて、2mm径の開口を有する厚さ2mmのステンレスプレートを用いたこと、フォトマスクを用いずに前面露光したこと以外は、上記と同様にして、ヤング率測定用サンプルを得た。得られたサンプルとしてのマイクロパターンのヤング率は3.5MPaであった。
【0156】
(実施例13)
支持体として、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと、図8(a)及び(b)に示した各フォトマスク31,32を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体上にマイクロパターン部材が形成されているマイクロパターン複合材を4枚作製した。フォトマスク31,32では、複数本の互いに平行に延びるストライプ状の遮光部31a,32aが設けられている。得られた1枚のマイクロパターン複合材を被着体としてとりあげ、被着体のマイクロパターン部材上に、別の1枚のマイクロパターン複合材のマイクロパターン部材を、複数の平行に延びるパターンが、被着体側のパターンの向きと交差するように積層し、積層体をゴムローラーで軽くしごいた。支持体側から365nm以下の波長の紫外光をエネルギー量が4000mJ/cmとなるように照射し、被着体とマイクロパターン部材を接着後、マイクロパターン部材から支持体を剥離した。しかる後、更にもう1枚のマイクロパターン複合材を同様に重ね、光接着および支持体の剥離を行った。この操作を繰り返し、図9に斜視図で示すように、厚み方向に隣り合うマイクロパターンの延びる方向が直交するように、4層のマイクロパターンが積層されたフォトニッククリスタル積層体41を得た。図10は得られたフォトニッククリスタル積層体41の電子顕微鏡写真であり、図11はその接着面をミクロトームで切開した部分を示す電子顕微鏡写真である。
【0157】
(実施例14)
実施例13と同様の方法により、5層積層接着を行って、マイクロ流体チップを作製した。作製したマイクロ流体チップの光学顕微鏡写真を図12に示す。2層めと4層めにスリットによる流路があり、3層めの貫通孔で接続されている。1層めと5層めは蓋の役割を果たしている。約10分間で5層全ての接着を終えることができた。2層めと4層めにみられる最小幅は 10μmであり、ラプラス圧によるパッシブバルブを構成している。
【0158】
(実施例15)
実施例2及び実施例3の各マイクロパターン複合材を用いたことを除いては、実施例5と同様にしてマイクロチップを得たところ、微粘着性のフィルム状のマイクロパターン部材Aと、アクリル樹脂プレート7とが、紫外光の照射により強固に接着されていることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】実施例1で作製したマイクロパターン複合材の斜視図である。
【図2】実施例1で作製されたマイクロパターン複合材に他の部材としてのアクリル系樹脂プレートが積層されたマイクロチップを示す斜視図である。
【図3】(a)は、実施例1で用いたフォトマスクを示す図であり、(b)は、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィーのための露光工程を示す模式的正面断面図である。
【図4】実施例11で用いたフォトマスクを示す斜視図である。
【図5】実施例11で作製されたマイクロウェル付き化学電極アレイプレートを示す斜視図である。
【図6】実施例12で用いたフォトマスクを示す平面図である。
【図7】実施例12で形成された微小3次元構造体を示す斜視図である。
【図8】(a)及び(b)は、実施例13で用いた各フォトマスクを示す平面図である。
【図9】実施例13で得られたフォトニッククリスタル構造体を示す斜視図である。
【図10】実施例13で得られたフォトニッククリスタル構造体の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図11】実施例13で得られたフォトニッククリスタル構造体における接着面をミクロトームで切開した断面部分の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図12】実施例14で得られたマイクロ流体チップの光学顕微鏡写真を示す図である。
【符号の説明】
【0160】
1…フォトマスク
2…ガラスプレート
3…遮光性薄膜
4…ポリカーボネートフィルム
5…樹脂組成物層
5A…マイクロパターン部材
6…マイクロパターン複合材
7…アクリル系樹脂プレート
7a、7b、7c…貫通孔
8…マイクロチップ
11…フォトマスク
12…遮光性薄膜
13…遮光性薄膜
14…樹脂シート
15…マイクロウェル付き化学電極アレイプレート
16…回路基板
17…マイクロパターン部材
17a…マイクロウェル
18…印刷電極
21…フォトマスク
21a…遮光部
23…マイクロプレート
31…フォトマスク
31a…遮光部
32…フォトマスク
32a…遮光部
41…フォトニッククリスタル積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロパターン部材を形成するためのマイクロパターン形成用材料であって、
第1のトリガーが部分的に与えられることにより部分的に硬化し、かつ部分的に硬化した部分以外の部分が除去された後に、第1のトリガーとは異なる第2のトリガーが与えられることにより硬化し、かつ接着性を発現するマイクロパターン形成用材料。
【請求項2】
前記第1のトリガーが光であり、前記第2のトリガーが光である、請求項1に記載のマイクロパターン形成用材料。
【請求項3】
アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)と、
ラジカル重合性化合物(B)と、
光ラジカル発生剤(C)と、
イオン重合性樹脂(D)と、
光イオン重合触媒(E)を含む、請求項2に記載のマイクロパターン形成用材料。
【請求項4】
光ラジカル発生剤(C)が、波長400nm以上の光が与えられた際にラジカルを発生する光ラジカル発生剤である、請求項3に記載のマイクロパターン形成用材料。
【請求項5】
前記第1のトリガーの印加総量(P1)に対する前記第2のトリガーの印加総量(P2)の比であるP2/P1が1〜100の範囲にある、請求項2〜4のいずれか1項に記載のマイクロパターン形成用材料。
【請求項6】
前記第1のトリガーが光であり、前記第2のトリガーが熱である、請求項1に記載のマイクロパターン形成用材料。
【請求項7】
アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)と、
ラジカル重合性化合物(B)と、
光ラジカル発生剤(C)と、
イオン重合性樹脂(D)と、
熱硬化剤(F)とを含む、請求項6に記載のマイクロパターン形成用材料。
【請求項8】
支持体と、前記支持体上に形成されており、マイクロパターンを構成しているマイクロパターン部材とを備え、
前記マイクロパターン部材が、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロパターン形成用材料に第1のトリガーを付与することにより得られた材料からなり、第2のトリガーが付与された後に接着性を発現する、マイクロパターン複合材。
【請求項9】
前記マイクロパターン複合材におけるマイクロパターン部材の厚み方向のヤング率が1〜5MPaである請求項8に記載のマイクロパターン複合材。
【請求項10】
前記マイクロパターン部材の第2のトリガーを付与する前の前記支持体に対する剥離力が、0.02N/10mm以下である、請求項8または9に記載のマイクロパターン複合材。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロパターン形成用材料を支持体上に積層する工程と、
前記マイクロパターン形成用材料を前記支持体に積層する前、または積層した後に、第1のトリガーを付与して、マイクロパターン形成用材料をパターニングすることにより、マイクロパターン部材を形成し、それによって支持体とマイクロパターン部材とを有するマイクロパターン複合材を得る工程とを備える、マイクロパターン複合材の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロパターン形成用材料を支持体上に積層する工程と、
前記マイクロパターン形成用材料を前記支持体に積層した後に、第1のトリガーを付与してマイクロパターン形成用材料をパターニングすることにより、マイクロパターン部材を形成し、それによって支持体とマイクロパターン部材とを有するマイクロパターン複合材を得る工程と、
前記マイクロパターン部材に第2のトリガーを付与し、マイクロパターン部材において接着性を発現させる工程と、
前記マイクロパターン複合材の前記マイクロパターン部材を基板の表面に圧着する工程とを備える、微小3次元構造基板の製造方法。
【請求項13】
前記マイクロパターン部材を前記基板に圧着した後に、前記支持体を前記マイクロパターン部材から剥離する工程をさらに備える、請求項12に記載の微小3次元構造基板の製造方法。
【請求項14】
前記支持体が剥離された後に、前記マイクロパターン部材上に、新たなマイクロパターン複合材のマイクロパターン部材をさらに圧着する工程と、新たなマイクロパターン複合材の支持体を剥離する工程とを備える、請求項13に記載の微小3次元構造基板の製造方法。
【請求項15】
前記支持体が剥離され、露出された前記マイクロパターン部材が接着反応を完了する前に、該マイクロパターン部材に他の部材を積層し、接着する工程をさらに備える、請求項13または14に記載の微小3次元構造基板の製造方法。
【請求項16】
前記マイクロパターン部材が圧着された後に、該マイクロパターン部材に前記第2のトリガーを与える、請求項12〜15のいずれか1項に記載の微小3次元構造基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−134255(P2009−134255A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202143(P2008−202143)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】