説明

レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法

【課題】エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】アルデヒド基及び水酸基の少なくともいずれかを有するピレン骨格を含むノボラック樹脂と有機溶媒とを含有するレジスト下層膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセス用のレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法に関する。更に詳しくは、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスは、シリコンウエハ上に複数の被加工膜を積層させ、この被加工膜を所望のパターンにパターニングする工程を多く備えている。そして、被加工膜のパターニングは、まず、一般にレジストと呼ばれる感光性物質を被加工膜上に堆積させてレジスト膜を形成し、このレジスト膜の所定の領域を露光する。次いで、レジスト膜の露光部または未露光部を現像処理して除去し、所定のパターンが形成されたレジストパターンを得る。その後、このレジストパターンをエッチングマスクとして用い、被加工膜をドライエッチングすることによって被加工膜をパターニングする。
【0003】
このようなプロセスにおいては、レジスト膜に露光するための露光光源としてArFエキシマレーザー等の紫外光が用いられているが、最近では大規模集積回路(LSI)の微細化に対する要求が益々高まっており、必要とされる解像度が露光光(紫外光)の波長以下になってきている。このように、必要とされる解像度が露光光の波長以下であると、露光量裕度、フォーカス裕度等の露光プロセス裕度が不足することとなる。このような露光プロセス裕度の不足を補うためには、レジスト膜の膜厚を薄くして解像性を向上させることが有効であるが、膜厚を薄くすると、被加工膜のエッチングに必要なレジスト膜厚を確保することが困難になってしまう。
【0004】
このようなことから、被加工膜とレジスト膜の間にレジスト下層膜(以下、単に「下層膜」と記す場合がある)を形成し、レジストパターンを一旦、下層膜に転写して下層膜パターンを形成した後、この下層膜パターンをエッチングマスクとして用いて被加工膜にパターンを転写するプロセスの検討が行われている。
【0005】
このようなプロセスにおいて、下層膜としてはエッチング耐性を有する材料からなるものが好ましく、その材料としては、例えば、エッチング中のエネルギーを吸収し、エッチング耐性があることが知られているベンゼン環を含む樹脂、特に、熱硬化フェノールノボラックを含有する組成物や、アセナフチレン骨格を有する重合体を含有する組成物等が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、スチレン誘導体またはアリルベンゼン誘導体とノルトリシクレン誘導体との共重合体を含有する組成物なども提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−40293号公報
【特許文献2】特開2000−143937号公報
【特許文献3】特開2008−65303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エッチングパターンの更なる微細化に伴い、レジスト下層膜のオーバーエッチングが大きな問題となっており、特許文献1〜3に記載されている組成物によって形成した下層膜であっても十分なエッチング耐性が得られず、エッチング耐性が更に向上された下層膜を形成可能な組成物(レジスト下層膜形成用組成物)の開発が求められている。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、以下のレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法が提供される。
【0010】
[1] アルデヒド基及び水酸基の少なくともいずれかを有するピレン骨格を含むノボラック樹脂と有機溶媒とを含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【0011】
[2] 前記ノボラック樹脂は、フェノール性水酸基を2つ以上有するナフタレン骨格を更に含むものである前記[1]に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0012】
[3] 前記ピレン骨格が、ジヒドロキシピレンに由来するものである前記[1]または[2]に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0013】
[4] 酸発生剤と架橋剤の少なくともいずれかを更に含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0014】
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布して塗膜を形成し、形成した前記塗膜を、前記被加工基板とともに焼成して、前記被加工基板上にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜の形成方法。
【0015】
[6] 前記焼成を、酸素を含有する雰囲気下で行う前記[5]に記載のレジスト下層膜の形成方法。
【0016】
[7] 前記[5]または[6]に記載のレジスト下層膜の形成方法によって形成した前記レジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する(1)工程と、得られた前記レジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、前記レジスト被膜を露光する(2)工程と、露光した前記レジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する(3)工程と、前記レジストパターンをマスクとして用い、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板をドライエッチングして、前記被加工基板に所定のパターンを形成する(4)工程と、を備えるパターン形成方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができるという効果を奏するものである。
【0018】
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができるという効果を奏するものである。
【0019】
本発明のパターン形成方法は、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0021】
[1]レジスト下層膜形成用組成物:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、アルデヒド基及び水酸基の少なくともいずれかを有するピレン骨格を含むノボラック樹脂と有機溶媒とを含有するものである。このようなレジスト下層膜形成用組成物は、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができる。
【0022】
別言すれば、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工に好適に用いることができ、エッチング耐性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。そのため、多層レジストプロセスの中でも、90nmよりも微細な領域(ArF、液侵露光でのArF、F、EUV、ナノインプリント)での多層レジストプロセスを用いたパターン形成方法に特に好適に用いることができる。
【0023】
[1−1]ノボラック樹脂:
ノボラック樹脂は、上述したように、アルデヒド基及び水酸基の少なくともいずれかを有するピレン骨格を含むものである。このようなノボラック樹脂は、水酸基を有する場合、この水酸基がピレン骨格の水素原子と反応すること、及び、水酸基によってピレンの電子密度が増すことにより、架橋反応性が向上するという利点がある。
【0024】
上記ピレン骨格が有するアルデヒド基は、架橋性を有し、かつ、ノボラック樹脂の水素含有量を低下させるという作用を有するものである。ノボラック樹脂の水素含有量を低下させることによって、エッチング時の下層膜パターンの曲がり耐性が向上するという利点がある。
【0025】
上記ピレン骨格が有する水酸基は、1つ以上であり、2〜8つであることが好ましく、2〜4つであることが更に好ましい。水酸基及びアルデヒド基を有していない場合には、ノボラック樹脂の架橋反応性が低下したり、ノボラック樹脂の水素含有量が十分に低下しないという問題があり、この問題に起因して、下層膜と、この下層膜上に形成する上層膜とがインターミキシングを起こすおそれがある。また、下層膜は、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がりやすくなるおそれがある。
【0026】
上記ピレン骨格は、アルデヒド基、水酸基以外に、その他の置換基を有するものであってもよい。その他の置換基としては、例えば、アルキル基、芳香環、ヘテロ原子などを挙げることができる。
【0027】
上記ピレン骨格としては、上記条件を満たすものである限り特に制限はないが、ジヒドロキシピレンに由来するものであることが好ましい。ジヒドロキシピレンに由来するものであると、2つの水酸基によりピレンの電子密度が増加するため、架橋反応性を向上させることができ、また、ノボラック樹脂の水素含有量を低下させることができるという利点がある。
【0028】
ノボラック樹脂は、上記ピレン骨格以外に、その他の骨格を更に含むものであってもよく、その他の骨格としては、例えば、フェノール性水酸基を2つ以上有するナフタレン骨格、フェノール骨格、ナフトール骨格、アントラセノール骨格などを挙げることができる。これらの中でも、フェノール性水酸基を2つ以上有するナフタレン骨格が好ましい。フェノール性水酸基を2つ以上有するナフタレン骨格の中でも、ジヒドロキシナフタレン骨格が好ましい。このようにフェノール性水酸基を2つ以上有するナフタレン骨格を更に含むと、フェノール性水酸基を2つ以上有するナフタレン骨格の上記水酸基が架橋部位として作用するため、インターミキシングを防止することができるという利点がある。
【0029】
ノボラック樹脂は、例えば、分子中にアルデヒド基及び水酸基の少なくともいずれかを有するピレンと縮合剤を反応させて得ることができる。このようにして得られるノボラック樹脂を用いると、上記水酸基がピレン骨格中の水素原子と反応するため、膜密度の高い下層膜を形成することができるという利点がある。
【0030】
縮合剤は、上記ピレンと縮合反応が可能なものである限り特に制限はないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド等の飽和脂肪族アルデヒド類;アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和脂肪族アルデヒド類;フルフラール等のヘテロ環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントラアルデヒド等の芳香族アルデヒド類等を挙げることができる。これらの中でも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラールが好ましい。なお、縮合剤は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0031】
縮合剤の使用量は、上記ピレン100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることが更に好ましく、1〜10質量部であることが特に好ましい。上記含有量が0.01質量部未満であると、上記ピレンと縮合剤との架橋反応が十分に起こらないため、下層膜と、この下層膜上に形成した上層膜とがインターミキシングを起こすおそれがある。一方、100質量部超であると、下層膜の炭素含有量が低下するため、エッチング耐性が低下するおそれがある。
【0032】
上記ノボラック樹脂を得るためには、上記ピレン及び縮合剤以外に、その他の化合物(i)を用いてもよい。
【0033】
その他の化合物(i)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−アセトキシスチレン、m−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル等のカルボン酸ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル化合物;
【0034】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、ジメチルビニルメタクリロイルオキシメチルシラン等の不飽和基含有不飽和カルボン酸エステル化合物;2−クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸アリル等のハロゲン含有ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有ビニル化合物;
【0035】
(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド等のアミド基含有ビニル化合物;2−メタクロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクロイルオキシエチルマレイン酸等のカルボキシル基含有ビニル化合物;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン等の無置換芳香族炭化水素化合物;
【0036】
トルエン、m−キシレン、p−キシレン、1−メチルナフタレン等のアルキル置換芳香族炭化水素化合物;安息香酸、1−ナフタレンカルボン酸、9−アントラセンカルボン酸等のカルボキシル基置換芳香族炭化水素化合物;アニリン等のアミノ基置換芳香族炭化水素化合物;クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素化合物;
【0037】
ブタジエン、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、5−ビニルノルボルナジエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、9−ビニルアントラセン、9−ビニルカルバゾール等のビニル化合物等を挙げることができる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンが好ましい。なお、他の化合物は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0038】
その他の化合物(i)の使用量は、上記ピレン100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることが更に好ましく、1〜10質量部であることが特に好ましい。上記含有量が0.01質量部未満であると、上記ピレンと縮合剤との架橋反応が十分に起こらないため、下層膜と、この下層膜上に形成した上層膜とがインターミキシングを起こすおそれがある。一方、100質量部超であると、下層膜の炭素含有量が低下するため、エッチング耐性が低下するおそれがある。
【0039】
ノボラック樹脂を得るための反応条件は、従来公知の条件を採用することができる。具体的には、酸触媒の存在下で、上記ピレンと縮合剤を、下記反応温度及び反応時間で反応させることによって行うことができる。反応温度は、40〜200℃であることが好ましく、60〜150℃であることが更に好ましく、70〜100℃であることが特に好ましい。また、反応時間は、反応温度によって異なるが、30分〜72時間であることが好ましく、1〜24時間であることが更に好ましく、2〜10時間であることが特に好ましい。
【0040】
酸触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類;蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類等を挙げることができる。酸触媒の使用量は、使用する酸触媒の種類によって異なるが、上記ピレンと縮合剤の合計量100質量部に対して、0.001〜30質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることが更に好ましく、0.1〜5質量部であることが特に好ましい。
【0041】
ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と記載する場合がる)は、1,000〜5,000であることが好ましく、1,000〜3,000であることが更に好ましく、1,000〜2,000であることが特に好ましい。上記重量平均分子量が1,000未満であると、レジスト下層膜形成用組成物の塗布性が低下するおそれがある。一方、5,000超であると、下層膜の膜密度が低下するおそれがある。
【0042】
[1−2]有機溶媒:
有機溶媒は、ノボラック樹脂を溶解させることができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル類;
【0043】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0044】
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸i−ブチル等の乳酸エステル類;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸n−プロピル、蟻酸i−プロピル、蟻酸n−ブチル、蟻酸i−ブチル、蟻酸n−アミル、蟻酸i−アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、酪酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
【0045】
ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
【0046】
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。
【0047】
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが好ましい。なお、有機溶媒は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0048】
有機溶媒の含有量は、レジスト下層膜形成用組成物の固形分濃度が、5〜80質量%となる量であることが好ましく、5〜40質量%となる量であることが更に好ましく、10〜30質量%となる量であることが特に好ましい。上記レジスト下層膜形成用組成物の固形分濃度が5質量%未満であると、十分な膜厚が得られないため、エッチング加工ができないおそれがある。一方、80質量%超であると、溶解性が十分でないため、ノボラック樹脂が析出するおそれがある。
【0049】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、上記ノボラック樹脂と有機溶媒以外に、酸発生剤と架橋剤の少なくともいずれかを更に含有することが好ましい。
【0050】
[1−3]酸発生剤:
酸発生剤は、露光または加熱により酸を発生する成分である。このような酸発生剤を含有することによって、ピレン骨格の水素原子と反応が促進されるため、下層膜の膜密度が向上し、エッチング耐性が向上するという利点がある。なお、本明細書中、露光により酸を発生する酸発生剤を「光酸発生剤」といい、加熱により酸を発生する酸発生剤を「熱酸発生剤」という。また、酸発生剤として、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用することもできる。
【0051】
光酸発生剤として、具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
【0052】
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシフェニル・フェニル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、
【0053】
シクロヘキシル・メチル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0054】
1−(4−ヒドロキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−(1−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0055】
1−(4−i−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−t−ブトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)ナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−(2−テトラヒドロピラニルオキシ)ナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−ベンジルオキシ)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類;
【0056】
フェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−ナフチルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類;1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等のジアゾケトン化合物系光酸発生剤類;4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物系光酸発生剤類;ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリス(トリフルオロメタンスルホネート)、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸化合物系光酸発生剤類等を挙げることができる。
【0057】
これらの中でも、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート等が好ましい。なお、光酸発生剤は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0058】
熱酸発生剤としては、具体的には、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等を挙げることができる。なお、熱酸発生剤は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0059】
酸発生剤の含有量は、ノボラック樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、1〜20質量部であることが更に好ましく、3〜10質量部であることが特に好ましい。レジスト下層膜形成用組成物が酸発生剤を含有することによって、常温を含む比較的低温でノボラック樹脂の分子鎖間に有効に架橋反応を生起させることができる。
【0060】
[1−4]架橋剤:
架橋剤は、レジスト下層膜形成用組成物を硬化させて得られる下層膜と、この下層膜の上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止し、更には下層膜のクラックの発生を防止する作用を有する成分である。このような架橋剤としては、多核フェノール類や、種々の市販の硬化剤を使用することができる。また、これらは併用することもできる。
【0061】
多核フェノール類としては、具体的には、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4”−メチリデントリスフェノール、4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等を挙げることができる。これらの中でも、4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、ノボラック等が好ましい。なお、多核フェノール類は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0062】
市販の硬化剤として、具体的には、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等のジイソシアナート類;以下商品名で、「エピコート812」、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031(以上、油化シェルエポキシ社製)、「アラルダイト6600」、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099(以上、チバガイギー社製)、「DER331」、同332、同333、同661、同644、同667(以上、ダウケミカル社製)等のエポキシ化合物;
【0063】
「サイメル300」、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、「マイコート506」、同508(以上、三井サイアナミッド社製)等のメラミン系硬化剤;「サイメル1123」、同1123−10、同1128、「マイコート102」、同105、同106、同130(以上、三井サイアナミッド社製)等のベンゾグアナミン系硬化剤;「サイメル1170」、同1172(以上、三井サイアナミッド社製)、「ニカラックN−2702」(三和ケミカル社製)等のグリコールウリル系硬化剤等を挙げることができる。これらの中でも、メラミン系硬化剤、グリコールウリル系硬化剤等が好ましい。なお、硬化剤は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0064】
架橋剤の含有量は、ノボラック樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0065】
[1−5]その他の成分:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、所望の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。その他の成分は、下層膜とレジスト被膜との間のインターミキシングを防止し、レジスト下層膜形成用組成物の塗布性を向上させる等の作用を有する成分であり、例えば、バインダー樹脂、放射線吸収剤、界面活性剤、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等を挙げることができる。
【0066】
バインダー樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−ヘプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリ−1−ドデセン、ポリ−1−テトラデセン、ポリ−1−ヘキサデセン、ポリ−1−オクダデセン、ポリビニルシクロアルカン等のα−オレフィン系重合体類;ポリ−1,4−ペンタジエン、ポリ−1,4−ヘキサジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン系重合体類;α,β−不飽和アルデヒド系重合体類;ポリ(メチルビニルケトン)、ポリ(芳香族ビニルケトン)、ポリ(環状ビニルケトン)等のα,β−不飽和ケトン系重合体類;(メタ)アクリル酸、α−クロロアクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物等のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の重合体類;ポリ(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸の共重合体等のα,β−不飽和カルボン酸無水物の重合体類;メチレンマロン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和多塩基性カルボン酸エステルの重合体類;
【0067】
ソルビン酸エステル、ムコン酸エステル等のジオレフィンカルボン酸エステルの重合体類;(メタ)アクリル酸チオエステル、α−クロロアクリル酸チオエステル等のα,β−不飽和カルボン酸チオエステルの重合体類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル又はその誘導体の重合体類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体の重合体類;スチリル金属化合物の重合体類;ビニルオキシ金属化合物の重合体類;ポリイミン類;ポリフェニレンオキシド、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリオキシラン、ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロピラン等のポリエーテル類;ポリスルフィド類;ポリスルホンアミド類;ポリペプチド類;ナイロン66、ナイロン1〜ナイロン12等のポリアミド類;脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂環族ポリエステル、ポリ炭酸エステル等のポリエステル類;ポリ尿素類;ポリスルホン類;ポリアジン類;ポリアミン類;ポリ芳香族ケトン類;ポリイミド類;ポリベンゾイミダゾール類;ポリベンゾオキサゾール類;ポリベンゾチアゾール類;ポリアミノトリアゾール類;ポリオキサジアゾール類;ポリピラゾール類;ポリテトラゾール類;ポリキノキサリン類;ポリトリアジン類;ポリベンゾオキサジノン類;ポリキノリン類;ポリアントラゾリン類等を挙げることができる。
【0068】
また、熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜(上層膜)との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分である。熱硬化性樹脂として、具体的には、熱硬化性アクリル系樹脂類、フェノール樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、アミノ系樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、エポキシ樹脂類、アルキド樹脂類等を挙げることができる。これらの中でも、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等が好ましい。
【0069】
なお、バインダー樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。バインダー樹脂の含有量は、ノボラック樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。
【0070】
放射線吸収剤としては、例えば、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、商品名「チヌビン234」、同1130(以上、チバガイギー社製)等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等がある。なお、放射線吸収剤は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。放射線吸収剤の含有量は、ノボラック樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。
【0071】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下商品名で、「KP341」(信越化学工業社製)、「ポリフローNo.75」、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業社製)、
【0072】
「エフトップEF101」、同EF204、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、「メガファックF171」、同F172、同F173(以上、大日本インキ化学工業社製)、「フロラードFC430」、同FC431、同FC135、同FC93(以上、住友スリーエム社製)、「アサヒガードAG710」、「サーフロンS382」、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(以上、旭硝子社製)等がある。なお、界面活性剤は1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。界面活性剤の含有量は、ノボラック樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることが更に好ましい。
【0073】
[2]レジスト下層膜の形成方法:
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を、上記被加工基板とともに焼成して、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する方法である。このような方法によると、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができる。即ち、レジスト下層膜付きの基板を良好に得ることができる。
【0074】
被加工基板としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、以下、全て商品名で、「ブラックダイヤモンド」(AMAT社製)、「シルク」(ダウケミカル社製)、「LKD5109」(JSR社製)等の低誘電体絶縁膜で被覆したウェハ等の層間絶縁膜を使用することができる。また、この被加工基板としては、配線溝(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等のパターン化された基板を用いることもできる。
【0075】
塗膜の形成方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、スピンコート法等を挙げることができる。
【0076】
塗膜の厚さは、得られるレジスト下層膜の膜厚が100〜20000nmとなる厚さであることが好ましい。
【0077】
焼成条件は、特に制限はないが、その温度が、80〜500℃であることが好ましく、150〜450℃であることが更に好ましく、250〜350℃であることが特に好ましい。上記温度が80℃未満であると、ピレン骨格中の水酸基と水素原子の反応が起こり難く、下層膜と、この下層膜上の上層の膜とがインターミキシングを起こすおそれがある。一方、500℃超であると、下層膜が分解するおそれがある。
【0078】
また、焼成は、不活性ガス雰囲気下や酸素を含有する雰囲気(酸素雰囲気)下などで行うことができるが、酸素を含有する雰囲気下で行うことが好ましい。酸素を含有する雰囲気下で焼成を行うことによって、ピレン骨格中の水酸基と水素原子の反応が促進されるため、下層膜の膜密度が向上し、エッチング耐性が向上するという利点がある。ここで、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスなどを挙げることができる。
【0079】
酸素雰囲気下で焼成を行う場合、酸素濃度が1〜70%であることが好ましく、2〜50%であることが更に好ましく、10〜30%であることが特に好ましい。上記酸素濃度が1%未満であると、ピレン骨格中の水酸基と水素原子の反応が十分に起こらないおそれがある。一方、70%超であると、酸化反応が進みすぎ、下層膜が分解するおそれがある。
【0080】
[3]パターン形成方法:
本発明のパターン形成方法は、本発明のレジスト下層膜の形成方法によって形成したレジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する(1)工程と、得られたレジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、レジスト被膜を露光する(2)工程と、露光したレジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する(3)工程と、レジストパターンをマスクとして用い、レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングして、被加工基板に所定のパターンを形成する(4)工程と、を備える方法である。
【0081】
このような工程によれば、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することができる。そのため、多層レジストプロセスの中でも、90nmよりも微細な領域(ArF、液侵露光でのArF、F、EUV、ナノインプリント)での多層レジストプロセスを用いたパターン形成方法において特に好適に用いることができる。
【0082】
[3−1](1)工程:
(1)工程は、本発明のレジスト下層膜の形成方法によって形成したレジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する工程である。
【0083】
レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型またはネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等を挙げることができる。
【0084】
レジスト組成物の固形分濃度は、例えば、5〜50質量%であることが好ましい。また、レジスト組成物としては、孔径0.2μm程度のフィルターによってろ過したものを用いることが好ましい。なお、本発明のパターン形成方法は、レジスト組成物として市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0085】
レジスト組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法等の従来の方法を挙げることができる。なお、レジスト組成物の塗布量は、所定の膜厚のレジスト被膜が得られるように調整する。
【0086】
レジスト被膜は、上記レジスト組成物の塗膜をプレベークすることによって塗膜中の溶剤(即ち、レジスト組成物に含有される溶剤)を揮発させて形成することができる。プレベークする際の温度は、使用するレジスト組成物の種類等に応じて適宜設定することができるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜150℃であることが更に好ましい。
【0087】
本発明のパターン形成方法は、本工程において、必要に応じて、レジスト下層膜上に中間層を更に形成し、この中間層上にレジスト被膜を形成してもよい。この中間層は、レジストパターン形成において、下層膜及び/又はレジスト被膜が有する機能を更に補ったり、これらが有していない機能を得るために、必要とされる所定の機能を有する層である。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合には、下層膜の反射防止機能を更に補うことができる。
【0088】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物を用いて形成することができる。有機化合物としては、例えば、ブルワー・サイエンス(Brewer Science)社製の「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」等の商品名で市販されている材料や、ローム アンド ハース社製の「AR−3」、「AR−19」等の商品名で市販されている材料等を用いることができる。また、無機酸化物としては、例えば、JSR社製の「NFC SOG01」、「NFC SOG04」等の商品名で市販されている材料やCVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0089】
中間層を形成するための方法は、例えば、塗布法やCVD法等を挙げることができる。これらの中でも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、下層膜を形成した後に、連続して中間層を形成することができるという利点がある。
【0090】
また、中間層の膜厚は、中間層に求められる機能に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的なリソグラフィープロセスにおいては、10〜3000nmであることが好ましく、20〜300nmであることが更に好ましい。中間層の膜厚が10nm未満であると、下層膜のエッチング処理の途中で中間層が削れてしまい消失してしまうおそれがある。一方、3000nm超であると、レジストパターンを中間層に転写する際に、加工変換差が大きくなってしまうおそれがある。
【0091】
[3−2](2)工程:
(2)工程は、得られたレジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、レジスト被膜を露光する工程である。ここで、「選択的に」とは、具体的には、所定のマスクパターンが形成されたフォトマスクを介してという意味である。
【0092】
照射される放射線は、レジスト組成物に使用されている酸発生剤の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等を挙げることができる。これらの中でも、遠紫外線が好ましく、特に、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)が更に好ましい。
【0093】
[3−3](3)工程:
(3)工程は、露光したレジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する工程である。
【0094】
現像に用いる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物を使用する場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液を用いることができる。また、これらのアルカリ性水溶液は、水溶性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。
【0095】
また、ネガ型化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト組成物を使用する場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液等を用いることができる。
【0096】
本工程においては、上記現像液で現像した後、洗浄し、乾燥することができる。また、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、レジスト被膜を現像する前に、ポストベークを行うことが好ましい。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整することができるが、50〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることが更に好ましい。
【0097】
[3−4](4)工程:
(4)工程は、レジストパターンをマスクとして用い、レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングして、被加工基板に所定のパターンを形成する工程である。なお、レジスト下層膜上に中間層を形成した場合には、レジスト下層膜及び被加工基板とともに中間層もドライエッチングする。
【0098】
ドライエッチングには、従来公知のドライエッチング装置を用いることができる。そして、ドライエッチング時のソースガスは、被エッチ膜の元素組成によって適宜選択されるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0100】
[重量平均分子量(Mw)]
以下の各合成例において得られた重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とは、東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0ml/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0101】
(合成例1)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、1,6−ジヒドロキシピレン100部、ホルマリン30部、p−トルエンスルホン酸1部、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル150部を仕込み、攪拌しつつ80℃で6時間重合させて反応溶液を得た。その後、反応溶液を酢酸n−ブチル100部で希釈し、多量の水/メタノール(質量比:1/2)混合溶媒で有機層を洗浄した。その後、溶媒を留去して重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)は、1200であった。その結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
(合成例2〜5、比較合成例1)
表1に示す単量体を用いた以外は、合成例1と同様の手法にて、それぞれ、重合体(A−2)〜(A−5)、及び(AR−1)を得た。得られた重合体(A−2)〜(A−5)、及び(AR−1)の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0104】
(参考例1)
還流管を装着したセパラブルフラスコに、窒素気流下で、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−3−エン(以下、単量体(I)という)29部、8−メチル−8−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−3−エン(以下、「単量体(II)」という)10部、無水マレイン酸(以下、「単量体(III)」という)18部、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアクリレート4部、t−ドデシルメルカプタン1部、アゾビスイソブチロニトリル4部、及び、1,2−ジエトキシエタン60部を仕込み、攪拌しつつ70℃で6時間重合させて反応溶液を得た。
【0105】
その後、得られた反応溶液を大量のn−ヘキサン/i−プロピルアルコール(質量比:1/1)の混合溶媒中に注いで、反応溶液中の樹脂を凝固させた。凝固させた樹脂を上記混合溶媒で数回洗浄した後、真空乾燥させて、下記式(a)で表される構造、下記式(b)で表される構造、及び、下記式(c)で表される構造を有する樹脂を得た(収率60%)。なお、この樹脂は、下記式(a)で表される構造、下記式(b)で表される構造、及び、下記式(c)で表される構造のモル比が、64:18:18であり、重量平均分子量(Mw)が27,000であった。
【0106】
【化1】

【0107】
得られた上記樹脂80部、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート1.5部、及び、トリ−n−オクチルアミン0.04部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート533部に溶解させて、レジスト組成物を得た。
【0108】
(実施例1)
合成例1で得られた重合体(A−1)10部、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル0.5部、酸発生剤としてビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート0.5部を、溶剤(乳酸エチル)89部に溶解して混合溶液を得た。その後、この混合溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することによりレジスト下層膜形成用組成物を得た。このレジスト下層膜形成用組成物を塗工液として用い、以下に示す各種評価を行った。
【0109】
(1)ArF用ポジ型レジストパターンの形成:
まず、直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物をスピンコート法により塗布した。次に、ホットプレート上に置き、180℃で60秒間加熱した。引き続き、350℃で60秒間加熱して、膜厚0.3μmの下層膜を形成した。次に、この下層膜上に3層レジストプロセス用中間層組成物溶液(商品名「NFC SOG080」、JSR社製)をスピンコートした後、ホットプレート上に置き、200℃で60秒間加熱した。引き続き、300℃で60秒間加熱して、膜厚0.05μmの中間層被膜を形成した。次に、この中間層被膜上に、上記参考例1で得たレジスト組成物をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.2μmのレジスト被膜を形成した。
【0110】
次に、NIKON社製のArFエキシマレーザー露光装置(レンズ開口数0.78、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、最適露光時間露光した。次に、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークした後、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、レジスト被膜を、25℃で1分間現像した。その後、水洗し、乾燥して、ポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜を得た。
【0111】
そして、ポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜を、走査型電子顕微鏡により観察して以下の基準で評価した(表2中、「パターン形状」と記す)。観察されるパターン形状が矩形の場合を良好(表2中、「○」と記す)とし、矩形以外の形状(例えばT−top、スカム等)を不良(表2中、「×」と記す)とした。
【0112】
(2)定在波防止効果:
ポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜への定在波の影響の有無を、走査型電子顕微鏡により観察して以下の基準で評価した。パターン側面に、下層膜からの反射による定在波が見られなかった場合を良好(表2中、「○」と記す)とし、定在波が見られた場合を不良(表2中、「×」と記す)とした。
【0113】
(3)光学特性:
直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートした。その後、ホットプレート上にて、300℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmの下層膜を形成した。この下層膜について、J.A.WOOLLAM社製の「分光エリプソメータVUV−VASE」を用いて、波長193nmにおける屈折率(表1中、「屈折率(n)」と示す)と吸光度(表1中、「消衰係数(k)」と示す)を測定した。
【0114】
(4)エッチング耐性:
まず、スピンコート法により、直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートして、膜厚300nmの下層膜を形成した。その後、この下層膜を、エッチング処理(圧力:0.03Torr、高周波電力:3000W、Ar/CF4=40/100sccm、基板温度:20℃)し、エッチング処理後の下層膜の膜厚を測定した。そして、膜厚の減少量と処理時間との関係からエッチングレート(nm/分)を算出し、その値をエッチング耐性の評価とした(表2中、「エッチング耐性」と示す)。
【0115】
なお、なお、屈折率が1.40〜1.60の範囲内であると、ArF露光レジスト工程において、反射防止膜として十分な機能を有するものと判断することができる。また、消衰係数(k)が0.25〜0.40の範囲内であると、ArF露光レジスト工程において、反射防止膜として十分な機能を有するものと判断することができる。
【0116】
(5)ビアへの埋め込み性:
得られたレジスト下層膜形成用組成物が、ビアホール内に良好に浸入するか、即ち、ビアホール内に良好に埋め込まれるか否かについて評価を行った。まず、ビアサイズ100nm、ビアピッチ1H/1.2S、深さ1000nmのビアホールが形成されたテトラエチルオルソシリケート(TEOS)の基板上に、レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートした。スピンコート後、ホットプレート上で180℃で60秒間加熱し、その後、更に250℃で60秒間加熱した。このようにしてビアホール内にレジスト下層膜形成用組成物を埋め込むとともに、TEOS表面上に膜厚300nmの下層膜を形成した。その後、走査型電子顕微鏡によりビアホールを観察して以下の基準で評価した(表2中、「ビア埋め込み性」と示す)。レジスト下層膜形成用組成物がビアホール内に浸入している場合(埋め込まれている場合)を良好(「○」)とし、浸入していない場合(埋め込まれていない場合)を不良(「×」)とした。
【0117】
本実施例のレジスト下層膜形成用組成物は、ArF用ポジ型レジストパターンの形成の評価が「○」であり、定在波防止効果の評価が「○」であり、屈折率(n)が1.51であり、消衰係数(k)が0.44であり、エッチングレート(nm/分)が0.68であり、ビアへの埋め込み性の評価が「○」であった。評価結果を表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
(実施例2〜5、比較例1)
表2に示す重合体(重合体(A−2)〜(A−5)、及び(AR−1))を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてレジスト下層膜形成用組成物を得、得られたレジスト下層膜形成用組成物について、実施例1と同様にして各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0120】
表2から明らかなように、実施例1〜5のレジスト下層膜形成用組成物は、比較例1のレジスト下層膜形成用組成物に比べて、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能な下層膜を形成することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセスに用いられる下層膜を形成するための材料として好適である。
【0122】
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセスに用いられる下層膜を形成するための方法として採用することができる。
【0123】
本発明のパターン形成方法は、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセスにおけるパターン形成方法として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド基及び水酸基の少なくともいずれかを有するピレン骨格を含むノボラック樹脂と有機溶媒とを含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項2】
前記ノボラック樹脂は、フェノール性水酸基を2つ以上有するナフタレン骨格を更に含むものである請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記ピレン骨格が、ジヒドロキシピレンに由来するものである請求項1または2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
酸発生剤と架橋剤の少なくともいずれかを更に含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布して塗膜を形成し、形成した前記塗膜を、前記被加工基板とともに焼成して、前記被加工基板上にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜の形成方法。
【請求項6】
前記焼成を、酸素を含有する雰囲気下で行う請求項5に記載のレジスト下層膜の形成方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のレジスト下層膜の形成方法によって形成した前記レジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する(1)工程と、
得られた前記レジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、前記レジスト被膜を露光する(2)工程と、
露光した前記レジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する(3)工程と、
前記レジストパターンをマスクとして用い、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板をドライエッチングして、前記被加工基板に所定のパターンを形成する(4)工程と、を備えるパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−117629(P2010−117629A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291885(P2008−291885)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】