説明

レーザ光を照射する方法及び装置、並びに非単結晶半導体膜をアニールする方法及び半導体装置を作製する方法

【課題】 レンズアレイを用いて結晶化等を行う際に照射体において反射した戻り光による悪影響を回避した、レーザ発振器の安定性を高く保ち、かつ均一なレーザ処理をすることができるレーザ照射技術、並びにそれを用いる結晶化方法及び半導体装置の作製方法の提供。
【解決手段】 レーザ発振器から射出されたレーザ光をシリンドリカルレンズアレイ等のレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて照射面上に照射する。
このようにして、スリットを用いることにより照射体で反射した戻り光をカットし、レーザの出力又は周波数の変動や、ロッドの破壊を防ぐものであり、その結果レーザ光の出力を安定化させ、これによって、安定して強度分布の均一なレーザ光を照射面において照射することができ、均一なアニールを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非単結晶半導体膜の結晶化等に好適な、レーザ発振器の安定性を高く保ち、かつ均一なレーザ光を照射することができるレーザ光の照射方法及び装置、並びにそのレーザ光の照射を用いた非単結晶半導体膜をアニールする方法及び半導体装置を作製する方法に関する。
より詳しくは、本発明は、シリンドリカルレンズアレイ又はフライアイレンズアレイ等のレンズアレイを用いて非単結晶半導体膜の結晶化等を行う際に、被照射体において反射した戻り光による悪影響を回避してレーザ発振器の安定性を高く保ち、かつ均一なレーザ光を照射することができるレーザ光の照射方法及び装置、並びにそのレーザ光の照射を用いた非単結晶半導体膜をアニールする方法及び半導体装置を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に薄膜トランジスタ(以下TFTと記す。)を製造する技術が大幅に進歩し、アクティブマトリクス型表示装置への応用開発が進められている。
特に、多結晶半導体膜を用いたTFTは、従来の非晶質半導体膜を用いたTFTよりも電界効果移動度が高いので、高速動作が可能である。
そのため、外付けのICチップで実装していた画素の駆動用の回路を、画素と同一の基板上にTFTを用いて一体形成することが可能となっている。
【0003】
そのTFTを作製するために適した多結晶半導体膜は、非晶質半導体膜を結晶化して得られているが、近年この結晶化には通常レーザアニール法が用いられている。
これは、通常の熱アニールでは600℃以上の高温が必要であるのに対し、廉価なガラス基板は耐熱性に劣り熱変形しやすいためである。
すなわち、レーザアニール法は輻射加熱あるいは伝導加熱を利用するアニール法と比較して処理時間を大幅に短縮できることや、半導体基板又は半導体膜を選択的、局所的に加熱して、基板に殆ど熱的損傷を与えないといった有利な特徴を有しているため、ガラス基板上に形成した非晶質半導体膜の結晶化に広く用いられている。
【0004】
そして、そのレーザアニール法とは、半導体基板又は半導体膜に形成された損傷層やアモルファス層を再結晶化する技術や、基板上に形成された非晶質半導体膜を結晶化させる技術や多結晶半導体膜のアニール技術を指している。
また、半導体基板又は半導体膜の平坦化や表面改質に適用される技術も含んでいる。
そのレーザアニール法の一例としては、エキシマレーザに代表されるパルス発振のレーザ光を、照射面において、数cm角の四角いスポットや、長さ100mm以上の線状となるように光学系にて成形し、レーザ光の照射位置を被照射体に対し相対的に移動させて、アニールを行う方法がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平08‐088196号公報
【0005】
なお、ここでいう「線状」は、厳密な意味で「線」を意味しているのではなく、アスペクト比の大きい長方形(もしくは長楕円形)を意味する。
例えば、アスペクト比が2以上(好ましくは10〜10000)のものを指すが、照射面における形状が矩形状であるレーザ光(以下、矩形状ビームと呼ぶ)も含まれると考えてよい。
また、線状とするのは被照射体に対して十分なアニールを行うためのエネルギー密度を確保するためであり、矩形状や面状であっても被照射体に対して十分なアニールを行えるのであれば構わない。
【0006】
前記したエキシマレーザの出力は、大きく、かつ半導体膜として珪素膜を用いた場合には、珪素膜によく吸収される波長を持つことから、レーザアニール工程において一般的に使用されているものの、そのレーザ発振器は大出力になるほど安定性を保つことが困難であるという問題がある。
従って、照射面に対して均一なアニールを行うためには、レーザ発振器の安定性を高く保つ必要がある。
【0007】
そこで、安定性を高く保ちつつ均一なレーザアニールを行う方法に関し、更に言及すると、レーザ発振器から出力されたレーザ光の強度分布を、照射面において均一化する手段として、シリンドリカルレンズアレイに代表されるレンズアレイを用いてレーザ光を分割し、その後、集光レンズを用いて分割されたレーザ光を合成する方法が知られている。
シリンドリカルレンズアレイとは、シリンドリカルレンズを縦又は横に複数配列した光学系である。
レンズアレイの他の例としては、球面レンズを縦及び横に複数配列したフライアイレンズがある。
【0008】
こういったレンズアレイを用いてレーザ光を分割することで強度分布の強い箇所が分散し、その後に集光レンズで前記分割したレーザ光を合成することで照射面において強度分布を均一にすることができる。
しかし、被照射体が、用いるレーザ光に対する反射率の高いものであれば、被照射体で反射したレーザ光は、いわゆる戻り光となってレーザ発振器に戻ってしまう。
前記戻り光は、レーザ光の出力や周波数の変動、又はロッドの破壊などの悪影響を及ぼし、レーザ光の発振が不安定になるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題に対処すべく鋭意研究開発に努め、その結果戻り光がレーザ発振器に到達しないようする手段を見出し、開発に成功したものである。
したがって、本発明は、基板上に形成した半導体膜などの加工対象物、すなわち被照射体、に対し、レーザ発振器の安定性を高く保ち、かつ均一にアニールなどのレーザ処理を行うことができるレーザ光を照射する方法及び装置、並びに前記レーザ光の照射装置を用いた結晶化方法及び半導体装置の作製方法を提供することを発明の解決すべき課題、すなわち目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記したとおりレーザ光を照射する方法及び装置、並びにそのレーザ光の照射を用いた非単結晶半導体膜をアニールする方法及び半導体装置を作製する方法を提供するものである。そのうちの戻り光を遮断してレーザ光を照射する方法は、レーザ発振器から射出されたレーザ光をレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を当該レーザ光が焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて照射面上に照射することを特徴としている。また戻り光を遮断してレーザ光を照射する装置は、レーザ発振器、レーザ発振器から射出されたレーザ光を通過させて複数に分割するレンズアレイ、分割後のレーザ光を当該レーザ光が焦点を結ぶ位置で開口を通過させるスリット、スリット通過後のレーザ光を重ね合わせる集光レンズ、集光レンズを通過したレーザ光を照射させる照射面を設置するステージを備えたことを特徴としている。
【0011】
そして、それらレーザ光の照射を利用する技術である、戻り光を遮断してレーザ光を照射して非単結晶半導体膜をアニールする方法は、レーザ発振器から射出されたレーザ光をレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて非単結晶半導体膜に照射することを特徴としている。また、戻り光を遮断してレーザ光を照射する半導体装置を作製する方法は、レーザ発振器から射出されたレーザ光をレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて非単結晶半導体膜に照射してアニールすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、レーザ発振器から出力されたレーザ光を、シリンドリカルレンズアレイに代表されるレンズアレイを用いて分割し、その後集光レンズを用いて分割されたレーザ光を合成することで照射面においてエネルギー強度分布を均一化できるレーザ光を照射する技術を提供するものである。
そのレーザ光を照射する技術においては、被照射体で反射したレーザ光は、いわゆる戻り光となってレーザ発振器に戻り、その戻り光はレーザ光の出力や周波数の変動又はロッドの破壊などの悪影響を及ぼし、レーザ光の発振が不安定になる。
【0013】
本発明では、レンズアレイを構成するそれぞれのレンズが焦点を結ぶ位置に、スリットの各開口部を合わせるようにスリットを配置し、それにより戻り光をカットし、レーザ光の出力あるいは周波数の変動や、ロッドの破壊を防ぎ、レーザ光の出力を安定させることができ、本発明は優れた効果を発揮するものである。
本発明は、これによって安定して強度分布の均一なレーザ光を照射面に照射することができ、均一なアニールを行うことができる。
【0014】
さらに言及すれば、被照射体で反射したレーザ光、すなわち戻り光は、通常さまざまな方向に散乱する散乱光となっており、戻り光が、レンズアレイ通過後のレーザ光が結ぶ焦点と同じ位置に焦点を結ぶことは稀である。
したがって、スリットを用いることにより、シリンドリカルレンズアレイが結ぶ焦点のみをスリットの開口部から通過させ、他の部分を遮ることによって、戻り光のほとんどをカットすることができる。
【0015】
この点に関し加えて言及すると、戻り光を防ぐために、レンズアレイに応じてスリットを最適化し、開口部の幅を極力細くすることで、レンズアレイを通過したレーザ光が結ぶ焦点のみを通過させ、戻り光の大部分をカットすることができる。
戻り光をよりカットすることで、レーザの出力や周波数の変動や、ロッドの破壊を防ぐことができ、レーザ光の出力をより安定化することができる。
これによって、安定して強度分布の均一なレーザ光を照射面において照射することができ、均一なアニールを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下において、本発明について、発明を実施するための最良の形態を含む実施の形態に関し説明するが、本発明は、それによって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
本発明は、前記したとおりレーザ発振器から射出されたレーザ光をレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を当該レーザ光が焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて照射面上に照射するものである。
【0017】
本発明では、前記したとおりスリットを用いることにより、被照射体で反射した戻り光をカットし、レーザの出力あるいは周波数の変動や、ロッドの破壊を防ぐものであり、その結果レーザ光の出力を安定化させ、これによって、安定して強度分布の均一なレーザ光を照射面において照射することができ、均一なアニールを行うものである。
この点に関し以下において更に詳細に説明する。
レーザ発振器から出力されたレーザ光の強度分布を、照射面において均一化する手段として、シリンドリカルレンズアレイに代表されるレンズアレイを用いてレーザ光を分割し、その後集光レンズを用いて合成する方法があり、本発明もこの範疇に属する技術である。
【0018】
レンズアレイの代表的なものは前記したとおりシリンドリカルレンズアレイであり、それはシリンドリカルレンズを縦又は横のいずれかに複数配列した光学系、すなわち複数のシリンドリカルレンズを各シリンドリカルレンズの母線が横方向又は縦方向で平行になるように組み合わせたものである。
レンズアレイには、それ以外のものもあり、その例としては、球面レンズを縦及び横に複数配列したフライアイレンズアレイがあり、これも本発明におけるレンズアレイとして用いることができる。
こういったレンズアレイを用いてレーザ光を分割することで強度分布の強い箇所が分散し、その後に集光レンズで前記分割したレーザ光を合成することで照射面において強度分布を均一にすることができる。
【0019】
しかしながら、被照射体がレーザ光に対する反射率の高いものであれば、被照射体で反射したレーザ光は、いわゆる戻り光となってレーザ発振器に戻ってしまう。
前記戻り光は、レーザ光の出力や周波数の変動、又はロッドの破壊などの悪影響を及ぼし、レーザ光の発振が不安定になるという問題がある。
本発明は、上記問題を解決するために、前記したとおり戻り光がレーザ発振器に到達しないように、レンズアレイに応じた構成のスリットを設けて、レーザ光を照射する方法及び装置、並びにそのレーザ光の照射を用いた非単結晶を結晶化する方法及び半導体装置を作製する方法を提供するものである。
【0020】
上記のように、レンズアレイとは複数のレンズが配列しているため、レンズアレイを通過したレーザ光が結ぶ焦点は複数存在する。
従って、スリットにも複数の開口部を設け、レンズアレイを構成するそれぞれのレンズが焦点を結ぶ位置に、スリットの各開口部を合わせるようにスリットを配置する。
各光学系に入射するレーザ光は、レンズアレイ通過後に結ぶ焦点と同じ位置に、戻り光が焦点を結ぶことは稀であり、前記戻り光は通常、さまざまな方向に散乱する散乱光となっている。
従って、シリンドリカルレンズアレイが結ぶ焦点のみをスリットの開口部から通過させ、他の部分を遮ることによって、戻り光のほとんどをカットすることができる。
【0021】
本発明に使用するスリットの一例を図1に示す。
スリット201全体のサイズ及び各開口部202のサイズ、間隔、配置する方向等は、使用するレンズアレイに応じて適宜最適化すればよい。
図1に示すスリットは、図2に示すシリンドリカルレンズアレイ203に応じて最適化したものである。
図2は、7つのシリンドリカルレンズからなるシリンドリカルレンズアレイ203に、本発明によるスリット201を設けた構成の上面図を示す。
この場合、シリンドリカルレンズが7つ並んでいるため、このシリンドリカルレンズアレイ203を通過したレーザ光は7つの焦点を結んでいる。
【0022】
前記スリット201の開口部202の間隔及び幅は、シリンドリカルレンズアレイ203通過後のレーザ光に関し前記焦点のみを通過させるように調節し、最適化を行う。
図2に示しているスリット201は、シリンドリカルレンズアレイ203によって7つの焦点ができるため、開口部を7つ有しており、各開口部の幅はレーザ光が通過することのできる細さとし、0.1mmから3mmの幅が好ましい。
このように、通過するレーザ光が結ぶ焦点の大きさの分だけ開口部を設け、残りの部分を遮ることによって、戻り光204の大部分を遮ることができる。
こうして、戻り光204がレーザ発振器まで戻り、レーザ光の発振が不安定になる等の悪影響を防止することができる。
【0023】
そして、本発明において用いるスリットは、図1に示したものに限定されない。
すなわち、図2に示したシリンドリカルレンズアレイ203が、レーザ光を分割する方向を横方向とすると、縦方向にレーザ光を分割するシリンドリカルレンズアレイにも、最適化したスリットを用いることができる。
例えば、図4(a)に示したような、各開口部206を縦方向に並べたスリット205を用いることができる。
さらに、レンズアレイとして球面レンズが縦横に並んだフライアイレンズの場合には、それに対応させて、図4(b)に示したような正方形状の開口部208を縦横に並べたスリット207を用いるのがよい。
なお、その開口部208の形状は正方形状に限らず、円状、多角形などでもよい。
また、これらのスリットを組み合わせて用いると、より多くの戻り光をカットできるため、より大きな効果を得られるので好ましい。
【0024】
以下において、更に本発明を実施するための最良の形態である半導体膜のレーザアニールに関し、図3を用いて説明する。
なお、本発明におけるレーザアニールとは、前記した従来技術の場合と同様に半導体基板又は半導体膜に形成された損傷層やアモルファス層を再結晶化する技術や、基板上に形成された非晶質半導体膜を結晶化させる技術や多結晶半導体膜のアニール技術を指している。
その図3は、本発明のレーザ光の照射装置の一例を示している。
レーザ発振器301として、パルス発振であるエキシマレーザを用いて、半導体膜を照射面としてレーザ光を照射し、レーザアニールを行う。
この際、図3に示した光学系を用いて、照射面307上に長方形状のレーザ光(以下、長方形状ビームと呼ぶ)に整形してレーザアニールを行う。
なお、図3(a)において照射面307上に形成される長方形状ビームは、紙面に垂直な方向が短辺方向である。
【0025】
その図3(a)に図示するように、レーザ発振器301から出力されたレーザ光は、シリンドリカルレンズアレイ302によって、照射面307上に形成される長方形状ビームの長辺方向に7分割され、シリンドリカルレンズ304によって合成される。
このようにレーザ光が分割、合成されることによって長方形状ビームの長辺方向の強度分布が均一化される。
その際シリンドリカルレンズ304によって前記長辺方向の長さが決定される。
【0026】
他方、図3(b)に図示するように、シリンドリカルレンズアレイ303によってレーザ光を前記長方形状ビームの短辺方向に4分割した後、シリンドリカルレンズ305によって合成し、前記短辺方向の強度分布も均一にする。
この後、シリンドリカルレンズ306a、306bからなるダブレットシリンドリカルレンズ306によって前記短辺方向の長さを決定し、照射面307上に照射する。
こうして、照射面307上に強度分布の均一な長方形状ビームが形成される。
【0027】
その際に、本発明では被照射体である半導体膜上で反射したレーザ光が戻り光となってレーザ発振器まで到達し、レーザ発振に影響を与えることを防ぐために、スリットを採用しており、その点が本発明の特徴点である。
そのスリットは図1に図示する構造を有しており、そのシリンドリカルレンズアレイとの配置関係及び機能は図2に図示される。
そのスリットはシリンドリカルレンズアレイ302の焦点位置に設置され、レーザ発振器301から射出されたレーザ光は、図2の実線で図示されるようにシリンドリカルレンズアレイ302を通過後、その焦点のみをスリットの開口部から通過させ、残りの部分を遮ることで、ほとんどの戻り光を破線で示すようにカットすることができる。
【0028】
本発明においては、スリットの配置関係等を積極的に工夫することにより、より一層効果的に戻り光を遮断することができるのであり、それに関し以下において詳しく述べる。
図2に図示するように、シリンドリカルレンズアレイ203通過後のレーザ光をスリット201の開口で焦点のみを通過させ、更に集光レンズを通過させてレーザ光を平行光として照射面上に照射した場合には、被照射体上で反射した戻り光は、集光レンズの軸の対称方向に反射することとなる。
そのため、シリンドリカルレンズアレイの中心軸を集光レンズの中心軸と一致させた場合には、戻り光もスリットの別の開口に焦点を結ぶこととなる。
【0029】
その結果、このようにした場合には、戻り光のレーザ発振器への逆行を遮断できないことになる。
しかしながら、この点を逆に利用することにより、すなわちシリンドリカルレンズアレイの中心軸と集光レンズの中心軸とが一致しないように両者を配置した場合には、戻り光のレーザ発振器への侵入をほぼ完全に回避することができ、戻り光による弊害を効果的に抑制できることになる。
【0030】
これに関し、図6を用いて詳しく説明する。
図6において、レーザ発振器601から射出したレーザ光は、シリンドリカルレンズアレイ602によって複数の光路に分割される。分割された複数のレーザ光は、シリンドリカルレンズアレイ602の焦点位置に開口部を持つスリット603を通過し、シリンドリカルレンズ604に入射する。
複数に分割されたレーザ光は、シリンドリカルレンズ604によって被照射体605上の同一領域に重ね合わされることで、レーザ光の強度を均一化することが可能である。
なお、ここでは、シリンドリカルレンズアレイ602の中心軸を一点鎖線607で示し、シリンドリカルレンズ604の中心軸を二点鎖線608で示した。
【0031】
シリンドリカルレンズ604を通過したレーザ光が図6において実線で示すように平行光となるとき、図6において点線で示した戻り光は、集光レンズの軸の対称方向に反射する。
その反射したレーザ光は平行なまま再びシリンドリカルレンズ604を通過し、スリット603上で焦点609を結ぶ。
しかし、シリンドリカルレンズアレイ602及びシリンドリカルレンズ604の中心軸が図6で示すように一致しないようにずらすことで、焦点609はスリット603上の開口部がないところに形成されるため戻り光を遮蔽することができる。
以上のとおりであるから、本発明では、スリットの構造及び配置関係等を選択することにより、より効果的に戻り光を遮断することができる。
【0032】
さらに、レンズを選択することにより、戻り光による弊害を効果的に抑制できる別な態様に関し以下において説明する。
この態様においては、図7に図示する軸はずしレンズを使用する。
ここで使用する軸外しシリンドリカルレンズアレイ700は、曲率中心軸を曲率面の中心位置に持たない複数枚のシリンドリカルレンズからなるものであり、そのレンズアレイを通過することで複数に分割されたレーザ光を照射面上で同一の領域に重ね合さるように設計されたものである。
【0033】
このレンズアレイでは、複数に分割されたレーザ光が同一領域上に重ね合わさることで、レーザ光の強度を均一化することが可能である。
このような軸外しシリンドリカルレンズアレイ700を用いた場合、分割された複数のレーザ光は平行光になることがなく拡がり続ける。
そのため、照射面702上で反射したレーザ光は、拡がり角を保ったままレーザ発振器側に戻るため、この場合にはスリット701を軸外しシリンドリカルレンズアレイ700の焦点位置のみに開口部を持たせることで大部分の戻り光を効果的に遮蔽することができる。
【0034】
本発明では、このようにして、レーザ光の出力を安定させることにより、均一なレーザアニールを行うことができ、非単結晶半導体膜を照射面としてレーザアニールを行うことにより、前記半導体膜を結晶化させたり、結晶性を向上させて一様な結晶性を有する結晶性半導体膜を得たり、不純物の活性化を行うことができる。
さらに、前記結晶性半導体膜を利用して、例えばアクティブマトリクス型のディスプレイを作製することができる。
その作製は、実施者が適宜既知の方法に従って行えばよい。
【実施例1】
【0035】
以下において、本発明のレーザ光を照射する方法及び装置に関し、実施例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によってなんら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
本実施例1では、実施の形態と同様に図3に示すレーザ光の照射装置を使用する。
本実施例では、シリンドリカルレンズアレイ302だけではなく、シリンドリカルレンズアレイ303にもスリットを用いる。
【0036】
このシリンドリカルレンズアレイ303は、シリンドリカルレンズを縦に4つ並べたシリンドリカルレンズアレイであり、スリットはこれに合わせて最適化する必要がある。
そのシリンドリカルレンズアレイ303に合わせて最適化したスリットを図4(a)に示す。
図4(a)に示すスリット205は縦に開口部206が4つ並んだスリットであり、図3中のシリンドリカルレンズアレイ303が焦点を結ぶ位置に配置する。
なお、図3にスリットは図示していない。
【0037】
こうして、縦方向及び横方向にスリットを計2枚設けることによって、より多くの戻り光をカットすることができる。
なぜなら、シリンドリカルレンズアレイ303に設けた横方向スリットの開口部から、戻り光が通過してしまった場合でも、シリンドリカルレンズアレイ302に設けた縦方向スリットによってカットすることができるからである。
こうして、本発明を適用して戻り光をカットすることによって、レーザ光の出力が安定し、照射面において、安定して強度分布を均一化することができる。
【実施例2】
【0038】
本実施例2は、レンズアレイにフライアイレンズを採用した例、すなわちフライアイレンズによってレーザ光を分割し、球面レンズで合成することで強度分布の均一化を行うレーザ光の照射装置において、スリットを用いて戻り光を防止するものであり、それに関し図4(b)及び図5を用いて説明する。
その図5の(a)及び(b)において、レーザ発振器501はエキシマレーザである。
このレーザ発振器501から出力されたレーザ光は、フライアイレンズ502によって縦及び横に分割される。
そのことは上面図である図5(a)及び側面図である図5(b)の両図に図示されている。
【0039】
それら両図から明らかなように、具体的には、フライアイレンズ502は縦に4つ、横に4つの長方形状の球面レンズが配列しているため、焦点が16に分散され、強度分布の強い箇所が分散する。
スリット503を通過後、球面レンズ504によって合成され、強度分布が均一化されて照射面505に照射される。
そのフライアイレンズ502を構成する各球面レンズは長方形状であり、そのため照射面505上に形成されるビームスポットは長方形状になる。
長方形状のビームスポット内全域において、半導体膜のアニールに必要なエネルギーを確保するため、大出力であるエキシマレーザ、例えば、SOPRA社のエキシマレーザを用いることが好ましい。
【0040】
その際、該エキシマレーザに対する反射率が高い半導体膜を照射面として用いると、半導体膜でレーザ光は反射し、戻り光506としてレーザ発振器501の方向に戻っていく。
この戻り光506の光路を図5では点線で記載した。
その戻り光506がレーザ発振器に影響を及ぼすことを防止するために、本発明にではスリットを採用する。
図4(b)に示すスリットはフライアイレンズ502に応じて最適化したものである。
このスリットを用いることによってほぼ全ての戻り光をカットし、レーザ光の出力を安定させることができる。
【0041】
このようにして、例えば、半導体膜を照射面としてレーザアニールを行えば、前記半導体膜を結晶化させたり、結晶性を向上させて一様な結晶性を有する結晶性半導体膜を得たり、不純物の活性化を行うことができる。
さらに、前記結晶性半導体膜を利用して例えば、アクティブマトリクス型のディスプレイを作製することができる。
なお、前記ディスプレイの作製は、実施者が既知の方法にしたがって行えばよい。
【実施例3】
【0042】
本実施例は、本発明のレーザ光の照射方法及びレーザ光の照射装置を用い、本発明の半導体装置を作製する方法であり、それについて図8及び図9を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、本実施例に加え、その製造プロセスにおいて採用し得る他の態様に関しても併記する。
まず、基板100上に下地絶縁膜101a、101bを形成する(図8(a))が、その際本実施例においては基板にガラス基板を使用する。
なお、その基板の材料としては、ガラス基板、石英基板、結晶性ガラスなどの絶縁性基板やセラミック基板、ステンレス基板、金属基板(タンタル、タングステン、モリブデン等)、半導体基板、プラスチック基板(ポリイミド、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン等)等を用いることができるが、少なくともプロセス中に発生する熱に耐えうる材料を使用する。
【0043】
その絶縁膜としては、本実施例では1層目の下地絶縁膜101aとして窒化酸化シリコン膜を50nm、2層目の下地絶縁膜101bとして酸化窒化シリコン膜を100nmで形成する。
なお、その基板上に形成する下地絶縁膜101a、101bとしては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などが使用でき、これら絶縁膜を単層又は2以上の複数層形成する。
これらはスパッタ法や減圧CVD法、プラズマCVD法等の公知の方法を用いて形成する。
前記のとおりであり、本実施例の下地絶縁膜は2層の積層構造だが、本発明では下地絶縁膜は勿論単層でも3層以上の複数層でも構わない。
なお、窒化酸化シリコン膜と酸化窒化シリコン膜はその窒素と酸素の割合が異なっていることを意味しており、前者の方がより窒素の含有量が高いことを示している。
【0044】
次いで、非晶質半導体膜102を形成する。
本実施例では、アモルファスシリコンをCVD法により膜厚66nmで形成する。
なお、その非晶質半導体膜はシリコン又はシリコンを主成分とする材料(例えばSixGe1-x等)で25〜80nmの厚さに形成すればよい。
その作製方法としては、公知の方法、例えばスパッタ法、減圧CVD法又はプラズマCVD法等が使用できる。
その形成後、アモルファスシリコンの結晶化を行う(図8(b))。
【0045】
本実施例においては、その結晶化は、勿論本発明のレーザ光の照射方法及び装置を用いるレーザアニールにより行う。
そのレーザ発振器として、パルス発振のエキシマレーザを用いる。
ここでは、上記実施の形態又は実施例で示したように、レーザ光を照射した際に半導体膜で反射した光(戻り光)をカットするためのスリットを設けてレーザ光の照射を行うことによって、レーザ光の出力を安定させて強度分布が均一なレーザ光を照射する。
そのアニールによる結晶化後、エッチングにより所望の形状を有する結晶性半導体膜102a〜102dとする。
【0046】
続いて、ゲート絶縁膜103を形成する(図8(c))ことになるが、本実施例では酸化シリコン膜を形成する。
その膜厚は115nm程度とし、減圧CVD法またはプラズマCVD法、スパッタ法などでシリコンを含む絶縁膜を形成すればよい。
その後、ゲート絶縁膜上に第1の導電層104a〜104dとして膜厚30nmの窒化タンタル(TaN)とその上に第2の導電層105a〜105dとして膜厚370nmのタングステン(W)を形成する(図8(d))。
【0047】
TaN膜、W膜ともスパッタ法で形成すればよく、TaN膜はTaのターゲットを用いて窒素雰囲気中で、W膜はWのターゲットを用いて成膜すればよい。
なお、本実施例では、前記したとおり第1の導電層を膜厚30nmのTaN、第2の導電層を膜厚370nmのWとしたが、これに限定されず、第1の導電層と第2の導電層は、共にTa、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素、又は前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成してもよい。
【0048】
また、それら両導電層は、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよいし、AgPdCu合金を用いてもよいし、更にその組み合わせも適宜選択すればよい。
その両導電層の膜厚は、第1の導電層が20〜100nm、第2の導電層が100〜400nmの範囲で形成すればよい。
本実施例では、前記したとおり2層の積層構造としたが、1層としてもよいし、もしくは3層以上の積層構造としてもよい。
【0049】
次に、ゲート電極またはレジストを形成しパターニングしたものをマスクとして用い、結晶性半導体膜102a〜102dにn型またはp型の導電性を付与する不純物を選択的に添加し、ソース領域、ドレイン領域、さらにはLDD領域等を形成する。
その後、レジストからなるマスクを除去して第1のパッシベーション膜120を形成する(図9(a))。
本実施例では、プラズマCVD法により膜厚100nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
なお、この第1のパッシベーション膜としてはシリコンを含む絶縁膜を100〜200nmの厚さに形成すればよい。
その膜の成膜法としては、プラズマCVD法や、スパッタ法を用いればよい。
【0050】
その際には、プラズマCVD法でSiH4、N2O、NH3から作製される酸化窒化シリコン膜、又はSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜を形成すればよい。
この場合の作製条件は、反応圧力20〜200Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(60MHz)電力密度0.1〜1.0W/cm2である。
また、第1のパッシベーション膜としてSiH4、N2O、H2から作製される酸化窒化水素化シリコン膜を適用してもよい。
勿論、第1のパッシベーション膜120は、本実施例のような酸化窒化シリコン膜の単層構造に限定されるものではなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層構造、もしくは積層構造として用いてもよい。
【0051】
その後、レーザアニール法を行い、半導体膜の結晶性の回復、半導体膜に添加された不純物元素の活性化を行う。
なお、この場合も、結晶化の場合と同様にレーザ光を照射した際に反射した光(戻り光)をカットするためのスリットを設けてレーザ光の照射を行うことによって、強度分布が均一なレーザ光を照射することができ、本実施例ではそれを採用する。
また、第1のパッシベーション膜120を形成した後で熱処理を行うことで、活性化処理と同時に半導体膜の水素化も行うことができる。
その水素化は、第1のパッシベーション膜に含まれる水素によって、半導体膜のダングリングボンドを終端するものである。
【0052】
さらに、第1のパッシベーション膜120を形成する前に加熱処理を行ってもよい。
但し、第1の導電層104a〜104d及び第2の導電層105a〜105dを構成する材料が熱に弱い場合には、本実施例のように配線などを保護するため、第1のパッシベーション膜120を形成した後で熱処理を行うことが望ましい。
また、この場合、第1のパッシベーション膜がないため、当然パッシベーション膜に含まれる水素を利用しての水素化は行うことができない。
この場合には、プラズマにより励起された水素を用いる手段(プラズマ水素化)を用いての水素化や、3〜100%の水素を含む雰囲気中において、300〜450℃で1〜12時間の加熱処理による水素化を用いればよい。
【0053】
次いで、第1のパッシベーション膜120上に第1の層間絶縁膜121を形成する(図9(b))。
本実施例では、膜厚1.6μmの非感光性アクリル膜を形成した(図9(b))。
なお、その第1の層間絶縁膜としては無機絶縁膜あるいは有機絶縁膜を用いることができる。
無機絶縁膜としては、CVD法により形成された酸化シリコン膜や、SOG(Spin On Glass)法により塗布された酸化シリコン膜などを用いることができ、有機絶縁膜としてはポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリル又はポジ型感光性有機樹脂、ネガ型感光性有機樹脂等の膜を用いることができる。
さらに、アクリル膜と酸化窒化シリコン膜の積層構造を用いてもよい。
【0054】
また、その層間絶縁膜は、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む材料で形成することができる。
それについては、前記置換基に関しフッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料で形成することができ、これらの材料の代表例としては、シロキサン系ポリマーが挙げられる。
そのシロキサン系ポリマーは、その構造により、例えばシリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマーなどに分類することができる。
さらに、Si−N結合を有するポリマー(ポリシラザン)を含む材料で層間絶縁膜を形成してもよい。
【0055】
上記した材料を用いることで、層間絶縁膜は、膜厚を薄くしても十分な絶縁性及び平坦性を有するものを得ることができる。
そのため、第1の層間絶縁膜によって基板上に形成されたTFTによる凹凸を緩和し、平坦化することができ、特に、層間絶縁膜は平坦化の意味合いが強いので、平坦化されやすい材質の絶縁膜を用いることが好ましい。
また、上記した材料は、耐熱性が高いため、多層配線におけるリフロー処理にも耐えうる層間絶縁膜を得ることができる。
さらに、吸湿性が低いため、脱水量の少ない層間絶縁膜を形成することができる。
【0056】
その後、層間絶縁膜上に窒化酸化シリコン膜等からなる第2のパッシベーション膜を形成してもよく、本実施例では、RFスパッタ法を用いて、酸化窒化シリコン膜を70nmの膜厚で形成する。
なお、その膜厚は、10〜200nm程度で形成すればよく、第2のパッシベーション膜によって層間絶縁膜へ水分が出入りすることを抑制することができる。
第2のパッシベーション膜には、他にも窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜やカーボンナイトライド(CN)膜も同様に使用できる。
【0057】
その製膜の際には、RFスパッタ法を用いて成膜された膜は緻密性が高く、バリア性に優れている。
そのRFスパッタの条件は、例えば酸化窒化珪素膜を成膜する場合、Siターゲットで、N2、Ar、N2Oをガスの流量比が31:5:4となるように流し、圧力0.4Pa、電力3000Wとして成膜する。
また、例えば第2のパッシベーション膜として窒化珪素膜を成膜する場合、Siターゲットで、チャンバー内のN2、Arをガスの流量比が1:1となるように流し、圧力0.8Pa、電力3000W、成膜温度を215℃として成膜する。
【0058】
次いで、エッチングにより第2のパッシベーション膜、第1の層間絶縁膜及び第1のパッシベーション膜をエッチングし、ソース及びドレイン領域に達するコンタクトホールを形成する。
その後、各ソース及びドレイン領域とそれぞれ電気的に接続する配線及び電極を形成する。
なお、これらの配線は、膜厚50nmのTi膜と膜厚500nmの合金膜(AlとTi)との積層膜をパターニングして形成する。
勿論2層構造に限らず、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造にしてもよい。
また、配線材料としては、AlとTiに限らない。
例えばTaN膜上にAl膜やCu膜を形成し、更にTi膜を形成した積層膜をパターニングして配線を形成してもよい。
【0059】
以上の工程により、図9(c)に示すような半導体装置が完成する。
なお、本発明のレーザアニール方法を用いた半導体装置の作製方法は、上述したTFTの作製工程に限定されない。
また、本実施例は上記実施の形態又は実施例と自由に組み合わせて行うことができる。
【実施例4】
【0060】
本発明のレーザアニール方法を用い、本発明の作製方法により製造した半導体装置を組み入れた電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)あるいは記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc))等が挙げられ、それらは記録媒体を再生し、その画像を表示するディスプレイを備えた装置である。
【0061】
それら電子機器の具体例を図10に示す。
図10(A)はテレビ受像機であり、それは筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。
そのテレビ受像機は、本発明のレーザ光の照射方法を用いて作製した半導体装置を表示部2003に使用することによって作製することができる。
同(B)はデジタルカメラであり、それは本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105あるいはシャッター2106などを含む。
そのデジタルカメラは、本発明のレーザ光の照射方法を用いて作製した半導体装置を表示部2102やその他回路などに使用することによって作製することができる。
【0062】
図10(C)はコンピュータであり、それは本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205あるいはポインティングマウス2206等を含む。
そのコンピュータは、本発明のレーザ光の照射方法を用いて作製した半導体装置を表示部2203やその他回路などに用いることによって作製することができる。
すなわち、本発明のレーザ光の照射方法を表示部2203やその他回路などの加工に用いることによってコンピュータを作製することができる。
同(D)はモバイルコンピュータであり、それは本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。
本発明のレーザ光の照射方法を表示部2302やその他回路などの加工に用いることによって、モバイルコンピュータを作製することができる。
【0063】
図10(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(DVD再生装置など)であり、それは、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406あるいはスピーカー部2407等を含む。
その表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示する。
本発明のレーザ光の照射方法を表示部A2403、表示部B2404あるいはその他の回路などの加工に用いることによって、画像再生装置を作製することができる。
なお、記録媒体を備えた画像再生装置にはゲーム機器なども含まれる。
【0064】
図10(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、それは、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。
本発明のレーザ光の照射方法を表示部2502やその他回路などの加工に用いることによって、ゴーグル型ディスプレイを作製することができる。
同(G)はビデオカメラであり、それは、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609あるいは接眼部2610等を含む。
本発明のレーザ光の照射方法を表示部2602やその他回路などの加工に用いることによって、ビデオカメラを作製することができる。
【0065】
図10(H)は携帯電話であり、それは、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707あるいはアンテナ2708等を含む。
本発明のレーザ光の照射方法を表示部2703やその他回路などの加工に用いることによって、携帯電話を作製することができる。
なお、上述した電子機器の他に、フロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
以上のとおりであり、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明で使用するスリットの一例を図示する。
【図2】本発明におけるシリンドリカルレンズアレイとスリットとの配置関係及びスリットの機能を図示する。
【図3】本発明のレーザ光の照射装置の1例を図示する。
【図4】本発明で使用するスリットの他の例を図示する。
【図5】本発明のレーザ光の照射装置におけるフライアイレンズアレイを用いた例を図示する。
【図6】スリットと集光レンズの配置関係を工夫することにより、戻り光のレーザ発振器への侵入を回避する態様を図示する。
【図7】軸はずしレンズを使用することで、戻り光のレーザ発振器への侵入を回避する別な態様を図示する。
【図8】本発明のレーザ光の照射方法を用いて、本発明の半導体装置を作製する方法を図示する。
【図9】本発明のレーザ光の照射方法を用いて、本発明の半導体装置を作製する方法を図示する。
【図10】本発明の半導体装置の作製方法により製造した半導体装置を組み込まれた電子機器を図示する。
【符号の説明】
【0067】
201 スリット
202 開口部
203 シリンドリカルレンズアレイ
205 スリット
206 開口部
207 スリット
208 開口部
301 レーザ発振器
302 シリンドリカルレンズアレイ
303 シリンドリカルレンズアレイ
304 シリンドリカルレンズ
305 シリンドリカルレンズ
306 ダブレットシリンドリカルレンズ
306a シリンドリカルレンズ
306b シリンドリカルレンズ
307 照射面
501 レーザ発振器
502 フライアイレンズ
503 スリット
504 球面レンズ
505 照射面
601 レーザ発振器
602 シリンドリカルレンズアレイ
603 スリット
604 シリンドリカルレンズ
605 被照射体
607 一点鎖線
608 二点鎖線
609 焦点
700 シリンドリカルレンズアレイ
701 スリット
702 照射面
100 基板
101a 下地絶縁膜
101b 下地絶縁膜
102 非晶質半導体膜
102a 結晶性半導体膜
102b 結晶性半導体膜
102c 結晶性半導体膜
102d 結晶性半導体膜
103 ゲート絶縁膜
104a 第1の導電層
104b 第1の導電層
104c 第1の導電層
104d 第1の導電層
105a 第2の導電層
105b 第2の導電層
105c 第2の導電層
105d 第2の導電層
120 第1のパッシベーション膜
121 第1の層間絶縁膜
122 配線及び電極
123 配線及び電極
124 配線及び電極
125 配線及び電極
126 配線及び電極
127 配線及び電極
128 配線及び電極
129 配線及び電極
2001 筐体
2002 支持台
2003 表示部
2004 スピーカー部
2005 ビデオ入力端子
2101 本体
2102 表示部
2103 受像部
2104 操作キー
2105 外部接続ポート
2106 シャッター
2201 本体
2202 筐体
2203 表示部
2204 キーボード
2205 外部接続ポート
2206 ポインティングマウス
2301 本体
2302 表示部
2303 スイッチ
2304 操作キー
2305 赤外線ポート
2401 本体
2402 筐体
2403 表示部
2404 表示部
2405 記録媒体読み込み部
2406 操作キー
2407 スピーカー部
2501 本体
2502 表示部
2503 アーム部
2601 本体
2602 表示部
2603 筐体
2604 外部接続ポート
2605 リモコン受信部
2606 受像部
2607 バッテリー
2608 音声入力部
2609 操作キー
2610 接眼部
2701 本体
2702 筐体
2703 表示部
2704 音声入力部
2705 音声出力部
2706 操作キー
2707 外部接続ポート
2708 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から射出されたレーザ光をレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて照射面上に照射することを特徴とする戻り光を遮断してレーザ光を照射する方法。
【請求項2】
レンズアレイがシリンドリカルレンズアレイ又はフライアイレンズである請求項1に記載のレーザ光を照射する方法。
【請求項3】
レンズアレイの中心軸と、集光レンズの中心軸とを不一致とした請求項1又は2に記載のレーザ光を照射する方法。
【請求項4】
レンズアレイのレンズに軸はずしレンズを用いた請求項1又は2に記載のレーザ光を照射する方法。
【請求項5】
レーザ発振器、レーザ発振器から射出されたレーザ光を通過させて複数に分割するレンズアレイ、分割後のレーザ光が焦点を結ぶ位置で開口を通過させるスリット、スリット通過後のレーザ光を重ね合わせる集光レンズ、集光レンズを通過したレーザ光を照射させる照射面を設置するステージを備えたことを特徴とする戻り光を遮断してレーザ光を照射する装置。
【請求項6】
レンズアレイがシリンドリカルレンズアレイ又はフライアイレンズである請求項5に記載のレーザ光を照射する装置。
【請求項7】
レンズアレイの中心軸と、集光レンズの中心軸とを不一致とした請求項5又は6に記載のレーザ光を照射する装置。
【請求項8】
レンズアレイのレンズに軸はずしレンズを用いた請求項5又は6に記載のレーザ光を照射する装置。
【請求項9】
レーザ発振器から射出されたレーザ光をレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて非単結晶半導体膜に照射することを特徴とする戻り光を遮断してレーザ光を照射し、非単結晶半導体膜をアニールする方法。
【請求項10】
レーザ発振器から射出されたレーザ光をレンズアレイを通過させて複数に分割し、分割後のレーザ光を焦点を結ぶ位置でスリットの開口を通過させ、その後更に集光レンズを通過させて非単結晶半導体膜に照射してアニールすることを特徴とする戻り光を遮断してレーザ光を照射する半導体装置を作製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−24916(P2006−24916A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169737(P2005−169737)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】