説明

三次元形状測定装置

【課題】被測定物の奥行き方向の空間分解能を低下させずに測定範囲を拡大できる三次元形状測定装置を提供する。
【解決手段】色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成する第1パルス光源30と、所定の波長の単波長光パルスを生成する第2パルス光源32と、ワーク24から反射されたチャープ光パルス110a、110bの第1反射光像を取得する反射光像取得部78と、前記第2反射光像の二次元情報を参照し、ワーク24から反射された単波長光パルス112の第2反射光像を取得する反射光像取得部78と、前記第1反射光像の二次元情報及び色情報を用いてワーク24の三次元情報を取得する三次元情報取得部80と、前記チャープ光パルスをワーク24に向けて照射するタイミングと、前記単波長光パルスをワーク24に向けて照射するタイミングとを調整するタイミング制御部70とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の三次元形状を測定する三次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の三次元形状、例えばワークの塗装面等の表面欠陥やその平滑さを測定する方法の一つとして、パルス光を用いたTOF(Time of Flight)法が挙げられる。
【0003】
パルス光を用いたTOF法とは、パルス光源から照射されたパルス光が、被測定物の表面の照射領域で反射され、検出器により検出されるまでの飛行時間(TOF)と光速度とから、奥行き方向の距離差として換算し、被測定物の三次元形状を測定するものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、波長が規則的に経時変化するパルス光(いわゆるチャープ光パルス)を用い、三次元情報を二次元画像である色付き等高線マップに変換して検出する技術が開示されている。このように構成すれば、被測定物の三次元形状を高精度且つ高速で測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2500379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された装置を用いることにより被測定物の三次元形状を高精度に測定できる反面、その測定精度を確保するために、パルス光の照射領域(奥行き)を狭小の空間内に設定する必要がある。
【0007】
以下、奥行き方向の段差ΔHとチャープ光パルスの長さLとの関係について具体的に説明する。被測定物表面上の2点の測定位置の奥行き方向に高さΔHの段差が存在し、2つのチャープ光パルスを、前記2点の測定位置に向けて同時に、奥行き方向に対して平行となるように入射(反射)させる場合を考える。このとき、前記2点の測定位置間の段差(高さΔH)に起因して生じる光路差は2ΔHである。
【0008】
検出器により検出される反射光を切り出す時間(いわゆるシャッタ開閉時間)をΔt、光速度をcとすると、前記2つのチャープ光パルスの一部が、1回のシャッタ開閉動作で同時に切り出されるためには、下記(1)式に示す関係を満たす必要がある。
L≧2ΔH+cΔt …(1)
【0009】
高分解能で測定することを考慮すると2ΔH>>cΔtであるから、奥行き方向において測定可能な範囲(高低差)は、高々L/2、換言すればチャープパルス長さの半分である。すなわち、チャープ光パルスの長さを20mmとしても、高々10mm程度の高低差を測定できるにすぎない。
【0010】
仮に、チャープ光パルスの全長を長くした場合であっても、チャープ導入装置又は検出器の波長分解能には限界があるので、チャープ光パルスの単位長さ当たりの波長分解能が低下するおそれがある。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、被測定物の奥行き方向の空間分解能を低下させずに測定範囲を拡大できる三次元形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この項では、理解の容易化のために添付図面中の符号を付けて説明する。したがって、この項に記載した内容がその符号を付けたものに限定して解釈されるものではない。
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明に係る三次元形状測定装置(12)は、例えば図2及び図3に示すように、色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成するチャープ光パルス生成手段(30、82)と、所定の波長の単波長光パルスを生成する単波長光パルス生成手段(32)と、前記チャープ光パルス生成手段により生成された前記チャープ光パルスを被測定物(24)に照射し、前記被測定物(24)から反射された前記チャープ光パルスの第1反射光像を取得する第1の反射光像取得手段(78)と、前記単波長光パルス生成手段(32)により生成された前記単波長光パルスを前記被測定物(24)に照射し、前記被測定物(24)から反射された前記単波長光パルスの第2反射光像を取得する第2の反射光像取得手段(78)と、該第2の反射光像取得手段(78)により取得された前記第2反射光像の二次元情報を参照し、前記第1の反射光像取得手段(78)により取得された前記第1反射光像の二次元情報及び色情報を用いて前記被測定物の三次元情報を取得する三次元情報取得手段(80)と、前記チャープ光パルスを前記被測定物(24)に向けて照射するタイミングと、前記単波長光パルスを前記被測定物(24)に向けて照射するタイミングとを調整する照射タイミング調整手段(70)とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、単波長光パルスを生成する単波長光パルス生成手段と、単波長光パルス(第2反射光像)を取得する第2の反射光像取得手段と、チャープ光パルスの照射タイミングに合わせ短波長光パルスを照射する照射タイミング調整手段とを設けたので、短波長光パルスがマーキング機能を果たすことにより、複数のチャープ光パルスを長さが長い一つのチャープ光パルスとして擬似的に利用することが可能となり、被測定物の奥行き方向の空間分解能を低下させずに測定範囲を拡大できる。
【0015】
請求項2に記載の発明に係る三次元形状測定装置(12)は、例えば図2及び図3に示すように、請求項1記載の三次元形状測定装置(12)において、前記チャープ光パルスと前記単波長光パルスとを合波して合波光パルスを生成する光合波手段(84、96、98、102)と、前記合波光パルスを、前記第1の反射光像取得手段(78)により取得される前記第1反射光像と前記第2の反射光像取得手段(78)により取得される前記第2反射光像とに分波する光分波手段(50)とを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、光合波手段と光分波手段とを設けたので、合波した光パルスの導光路を共通化可能となり、装置の製造コストを低減できる。
【0017】
請求項3に記載の発明に係る三次元形状測定装置(12)は、例えば図2及び図3に示すように、請求項1又は2に記載の三次元形状測定装置(12)において、前記単波長光パルス生成手段(32)は、波長の異なる単波長光パルスを交互に生成することを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、単波長光パルス生成手段は波長の異なる単波長光パルスを交互に生成するようにしたので、波長の異なる単波長光パルスがマーキング機能を果たすことにより、チャープ光パルスの配列順番を特定可能となり、複数のチャープ光パルスを長さが長い一つのチャープ光パルスとして擬似的に利用することが可能となり、被測定物の奥行き方向の空間分解能を低下させずに測定範囲を拡大できる。
【0019】
請求項4に記載の発明に係る三次元形状測定装置(12)は、例えば図2及び図3に示すように、請求項1又は2に記載の三次元形状測定装置(12)において、前記チャープ光パルスを分配する光分配手段(84)と、前記光分配手段(84)により分配された各チャープ光パルスが同一光路上で互いに重複しない光路長となるように前記分配された各チャープ光パルスの光路長を調整する光路長調整手段(76、92)とを備えることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、チャープ光パルスを分配する光分配手段と、各チャープ光パルスが同一光路上で互いに重複しない光路長となるように調整する光路長調整手段とを設けたので、被測定物の奥行き方向の測定に利用可能なチャープ光パルスを最長化できるとともに、各チャープ光パルスの離間・重複に起因する撮像信号の誤検出を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る三次元形状測定装置によれば、色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成するチャープ光パルス生成手段と、所定の波長の単波長光パルスを生成する単波長光パルス生成手段と、生成された前記チャープ光パルスを被測定物に照射し、前記被測定物から反射された前記チャープ光パルスの第1反射光像を取得する第1の反射光像取得手段と、生成された前記単波長光パルスを前記被測定物に照射し、前記被測定物から反射された前記単波長光パルスの第2反射光像を取得する第2の反射光像取得手段と、取得された前記第2反射光像の二次元情報を参照し、取得された前記第1反射光像の二次元情報及び色情報を用いて前記被測定物の三次元情報を取得する三次元情報取得手段と、前記チャープ光パルスを前記被測定物に向けて照射するタイミングと、前記単波長光パルスを前記被測定物に向けて照射するタイミングとを調整する照射タイミング調整手段とを設けたので、短波長光パルスがマーキング機能を果たすことにより、複数のチャープ光パルスを長さが長い一つのチャープ光パルスとして擬似的に利用することが可能となり、被測定物の奥行き方向の空間分解能を低下させずに測定範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る三次元形状測定システムの概略側面図である。
【図2】本実施形態に係る三次元形状測定装置の構成ブロック図である。
【図3】本実施形態に係るパルス光調整光学系の構成ブロック図である。
【図4】図4Aは、シャッタの通過直前におけるチャープ光パルス及び単波長光パルスの飛行位置の関係を表す模式図である。図4Bは、シャッタの通過直前におけるチャープ光パルス及び単波長光パルスの飛行位置の関係を表す模式図である。図4Cは、拡大光学系側に供給される合波光パルスの飛行位置の関係を表す模式図である。
【図5】図5Aは、第1撮像信号の波長と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。図5Bは、第2撮像信号の検出光強度と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。
【図6】本実施形態の第1変形例に係る三次元形状測定装置の構成ブロック図である。
【図7】図7Aは、第2変形例に係る合波光パルスが拡大光学系へ到達する直前における飛行位置の関係を表す模式図である。図7Bは、第1撮像信号の波長と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。図7Cは、第2撮像信号の検出光強度と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。
【図8】図8Aは、第3変形例に係る合波光パルスが拡大光学系へ到達する直前における飛行位置の関係を表す模式図である。図8Bは、第1撮像信号の波長と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。図8Cは、第2撮像信号の検出光強度と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る三次元形状測定装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
先ず、本実施形態に係る三次元形状測定装置が組み込まれた三次元形状測定システムについて図1を参照しながら説明する。三次元形状測定システム10は、三次元形状測定装置12と、画像処理装置14と、モニタ16と、上位制御装置18と、ロボット制御装置20とを備える。
【0025】
三次元形状測定装置12の撮像面22は、被測定物としてのワーク24の表面26側を指向する。また、三次元形状測定装置12は、図示しないロボットのアームに装着されているので、前記ロボット制御装置20による制御下に前記ロボットのアームを駆動することで、上下・左右方向に移動が自在である。
【0026】
画像処理装置14は、三次元形状測定装置12に電気的に接続されており、三次元形状測定装置12から供給される撮像信号に対して種々の画像処理を行う。
【0027】
モニタ16は、画像処理装置14に接続されており、画像処理装置14により画像処理された画像や測定情報等を表示する。
【0028】
上位制御装置18は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)で構成され、画像処理装置14や、図示しないロボットの駆動制御を行うロボット制御装置20に対して各種の指令を送信する。また、上位制御装置18が備える図示しない操作部から種々の測定条件を設定可能である。
【0029】
図2は、本実施形態に係る三次元形状測定装置12の概略構成図である。
【0030】
この三次元形状測定装置12は、第1パルス光を射出する第1パルス光源30と、第2パルス光を射出する第2パルス光源32と、前記第1パルス光源30により射出された第1パルス光をチャープすることでチャープ光パルスを生成し、該チャープ光パルス又は前記第2パルス光源32により射出された第2パルス光の光路を調整して合波光パルスを生成するパルス光調整光学系34と、該パルス光調整光学系34により生成された合波光パルスのビーム径を拡大する拡大光学系36と、該拡大光学系36によりビーム径が拡大された合波光パルスを偏光方向に応じて分割する偏光ビームスプリッタ38と、該偏光ビームスプリッタ38により透過された前記合波光パルスを平行化するコリメートレンズ40と、該コリメートレンズ40により平行化された合波光パルスの偏光方向を所定の方向に傾けるλ/4波長板42と、該λ/4波長板42により偏光された合波光パルスの光束を集光してワーク24の表面26上に焦点像(以下、照射領域44という。)を形成するとともに、図示しない駆動機構によってA方向(ワーク24に対する鉛直方向)に沿って移動自在な対物レンズ46と、を備える。
【0031】
また、光路L1上に、図示しない遮光性のシャッタ幕の開閉が自在であって偏光ビームスプリッタ38により反射された合波光パルスを切り出し可能なシャッタ48と、該シャッタ48により切り出された合波光パルスのうち前記所定の波長の光パルス(以下、「単波長光パルス成分」という。)のみを光路L2側に反射し、それ以外の波長の光パルス(以下、「チャープ光パルス成分」という。)を透過するダイクロイックミラー50と、該ダイクロイックミラー50により透過されたチャープ光パルス成分を所定の角度方向に反射する反射ミラー52と、該反射ミラー52からの反射されたチャープ光パルス成分から適切な反射光像(第1反射光像)を形成する結像光学系54と、該結像光学系54により生成された反射光像を第1撮像信号に変換するカラー二次元検出器56と、該カラー二次元検出器56により変換された第1撮像信号を後述する第2撮像信号と合成する画像合成部57と、該画像合成部57により合成された撮像信号を画像処理装置14に送信するI/F58とを備える。
【0032】
さらに、光路L2上に、ダイクロイックミラー50により反射された単波長光パルス成分から適切な反射光像(第2反射光像)を形成する結像光学系60と、該結像光学系60により生成された第2反射光像を第2撮像信号に変換する二次元検出器62と、該二次元検出器62により変換された第2撮像信号を前記第1撮像信号と合成する画像合成部57と、該画像合成部57により合成された撮像信号を画像処理装置14に送信するI/F58とを備える。
【0033】
さらに、この三次元形状測定装置12は、第1パルス光源30による第1パルス光の射出動作を制御する第1パルス光射出制御部64と、第2パルス光源32による第2パルス光の射出動作を制御する第2パルス光射出制御部66と、シャッタ48による図示しないシャッタ幕の開閉動作を制御するシャッタ開閉制御部68と、第1パルス光源30及び第2パルス光源32の射出動作とシャッタ48の開閉動作とのタイミングを制御するタイミング制御部70とを備える。
【0034】
さらに、この三次元形状測定装置12は、外部装置であるPC72と電気的に接続され且つPC72により設定された光路調整パラメータを取得可能であるI/F74と、該I/F74により取得された光路調整パラメータに基づきパルス光調整光学系34の光路長を制御する光学系制御部76とを備える。
【0035】
なお、所定の波長の単波長光パルスを生成する単波長光パルス生成手段は、第2パルス光源32から構成される。また、ワーク24から反射された光路L1上のチャープ光パルスの第1反射光像を取得する第1の反射光像取得手段としての反射光像取得部78は、偏光ビームスプリッタ38と、コリメートレンズ40と、λ/4波長板42と、対物レンズ46と、シャッタ48と、シャッタ開閉制御部68とから構成される。さらに、ワーク24から反射された光路L1上の単波長光パルスの第2反射光像を取得する第2の反射光像取得手段は、第1の反射光像取得手段である反射光像取得部78と共通に設けられている。さらに、単波長光パルスの第2反射光像の二次元情報を参照しながら、チャープ光パルスの第1反射光像の二次元情報及び色情報とを用いて前記被測定物の三次元情報を取得する三次元情報取得手段である三次元情報取得部80は、カラー二次元検出器56と、画像合成部57と、二次元検出器62とから構成される。さらに、合波光パルスを第1反射光像と第2反射光像とに分波する光分波手段は、ダイクロイックミラー50から構成される。
【0036】
図3は、本実施形態に係るパルス光調整光学系34の概略構成図である。
【0037】
この三次元形状測定装置12は、第1パルス光源30により射出された第1パルス光をチャープすることでチャープ光パルスを生成するチャープ導入装置82と、該チャープ導入装置82により生成されたチャープ光パルスを分割するビームスプリッタ84と、該ビームスプリッタ84により透過されたチャープ光パルスをさらに分割するビームスプリッタ86と、該ビームスプリッタ86により透過されたチャープ光パルスを所定の角度方向に反射する反射ミラー88と、該反射ミラー88により反射されたチャープ光パルスの一部を光路L3側に反射するビームスプリッタ90と、該ビームスプリッタ90により反射されたチャープ光パルスを反対方向に反射するとともに、光学系制御部76の制御下に図示しない駆動機構によってC方向(光路L3に対して平行方向)に沿って移動自在な反射ミラー92とを備える。
【0038】
また、光路L4上に、ビームスプリッタ86からの反射光を受光し、その受光をトリガとして図示しない遮光性のシャッタ幕の開閉が自在であり、超高速非線形光学シャッタ等から構成されるシャッタ94を備える。
【0039】
さらに、光路L5上に、ビームスプリッタ84からのチャープ光パルスを所定の角度方向に反射する反射ミラー96と、該反射ミラー96からの反射光のうち特定の波長である単波長光パルスのみを反射し、それ以外の波長の光パルス(チャープ光パルスを含む。)を透過するダイクロイックミラー98と、該ダイクロイックミラー98を透過されたチャープ光パルスを切り出し可能なシャッタ94と、該シャッタ94により切り出されたチャープ光パルスを所定の角度方向に反射する反射ミラー100と、該反射ミラー100により反射されたチャープ光パルスの一部を拡大光学系36側に反射するビームスプリッタ90とを備える。
【0040】
さらに、第2パルス光源32により射出された第2パルス光を所定の角度方向に、すなわち、ダイクロイックミラー98側の方向に反射する反射ミラー102を備える。この第2パルス光は、チャープ導入装置82により生成されたチャープ光パルスが有する波長(例えば、λP≦λ≦λR)の範囲外である波長(λ<λP、又はλ>λR)を有する単波長光である。
【0041】
なお、色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成する光パルス生成手段は、第1パルス光源30とチャープ導入装置82とから構成される。また、チャープ光パルスと単波長光パルスとを合波して合波光パルスを生成する光合波手段は、ビームスプリッタ84と、反射ミラー96、ダイクロイックミラー98と、反射ミラー102とから構成される。また、チャープ光パルスを分配する光分配手段はビームスプリッタ84から構成される。さらに、各チャープ光パルスが同一光路上で互いに重複しない光路長となるように各チャープ光パルスの光路長を調整する光路長調整手段は、光学系制御部76と、反射ミラー92とから構成される。
【0042】
この実施形態に係る三次元形状測定装置12は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0043】
先ず、ユーザである作業者は、三次元形状測定システム10によるワーク24の表面26の三次元形状測定の準備を行う。
【0044】
続いて、作業者が上位制御装置18の図示しない操作部から測定開始指示を行うと、ワーク24の表面26上の三次元形状測定が開始される。
【0045】
図2に示すように、第1パルス光射出制御部64によるパルス射出指示を受信した第1パルス光源30からパルス光が射出され、該パルス光はパルス光調整光学系34に供給される。同様に、第2パルス光射出制御部66によるパルス射出指示を受信した第2パルス光源32からパルス光が射出され、単波長光パルスとしての前記パルス光はパルス光調整光学系34に供給される。
【0046】
図3に示すように、第1パルス光源30から射出されたパルス光は、チャープ導入装置82によりチャープされ、チャープ光パルスが生成される。該チャープ光パルスは、ビームスプリッタ84、ビームスプリッタ86を介して、反射ミラー88により反射され、ビームスプリッタ90によりチャープ光パルスの一部がさらに反射される。このチャープ光パルス(以下、チャープ光パルス110bという。)は、光路L3上で、反射ミラー92により反対方向に反射され、ビームスプリッタ90により透過され、拡大光学系36側に供給される。
【0047】
ビームスプリッタ84により透過されたチャープ光パルスの一部は、ビームスプリッタ86により光路L4方向に反射され、シャッタ94に照射される。このとき、超高速非線形光学シャッタ等から構成されるシャッタ94は、励起光であるチャープ光パルスが到達したときのみ開かれ、ピコ秒〜フェムト秒程度の応答時間を実現できるものである。また、光路L5の光路長を適切に設定することより、シャッタ94の開閉動作は適切なタイミングに制御される。
【0048】
チャープ導入装置82で生成されたチャープ光パルスの一部(以下、チャープ光パルス110aという。)は、ビームスプリッタ84により光路L5方向に反射され、反射ミラー96により反射され、ダイクロイックミラー98により透過され、シャッタ94により所定のタイミングで切り出され、反射ミラー100により反射され、ビームスプリッタ90により反射され、拡大光学系36側に供給される。
【0049】
第2パルス光源32から射出された単波長光パルス112は、反射ミラー102により反射され、ダイクロイックミラー98により反射され、シャッタ94により所定のタイミングで切り出され、反射ミラー100により反射され、ビームスプリッタ90により反射され、拡大光学系36側に供給される。
【0050】
ここで、光学系制御部76によるチャープ光パルス110aの光路長制御と、タイミング制御部70(図2参照)による単波長光パルス112の射出タイミング制御とに基づいて、チャープ光パルス110a、110b、及び単波長光パルス112の飛行位置は適切に調整される。この各光パルスの飛行位置の調整について図4A〜図4Cを参照しながら詳細に説明する。
【0051】
図4Aは、シャッタ94の通過直前(図3に示すP1の位置)におけるチャープ光パルス110a及び単波長光パルス112の飛行位置の関係を表す模式図である。
【0052】
ここで、チャープ光パルス110a及び単波長光パルス112は矢印方向に飛行し、チャープ光パルス110aは、前縁である長波長側(赤色側であって、図4AではRと表記する。)から後縁である短波長側(紫色側であって、図4AではPと表記する。)まで色が連続的に変化するものとする。また、所定の波長(図4AではS1と表記する。例えば、紫外線領域の波長に相当する。)を有する単波長光パルス112は、チャープ光パルス110aよりも長いものとする。
【0053】
第2パルス光源32からの単波長光パルス112は、タイミング制御部70(図2参照)により射出されるタイミングが調整されている。よって、単波長光パルス112は、第1パルス光源30から射出されたチャープ光パルス110aとダイクロイックミラー98の位置で合波し、その後は同一光路上を飛行する。
【0054】
図4Bは、シャッタ94の通過直後(図3に示すP2の位置)におけるチャープ光パルス110a及び単波長光パルス112の飛行位置の関係を表す模式図である。
【0055】
合波されたチャープ光パルス110a及び単波長光パルス112は、シャッタ94の適切な開閉動作によって切り出される。よって、チャープ光パルス110a及び単波長光パルス112の後縁の飛行位置が揃えられるように、単波長光パルス112の後縁部114が切除されている。
【0056】
その後、後縁部114が切除されたチャープ光パルス110a及び単波長光パルス112は、反射ミラー100により反射され、ビームスプリッタ90により反射され、他のチャープ光パルス110bとともに合波光パルス116として、拡大光学系36側に供給される。
【0057】
図4Cは、拡大光学系36への到達直前(図3に示すP3の位置)における合波光パルス116の飛行位置の関係を表す模式図である。
【0058】
第1パルス光源30からのチャープ光パルスのうち、ビームスプリッタ84を透過されビームスプリッタ90に供給されたチャープ光パルス110bは、反射ミラー92の位置移動によって光路L3上の光路長が適切に調整されている。よって、チャープ光パルス110aの後縁Pとチャープ光パルス110bの前縁Rの飛行位置が略一致、すなわち、チャープ光パルス110a及び110bが時間間隔を空けることなく、換言すれば、チャープ光パルス110aの後縁Pとチャープ光パルス110bの前縁Rとが接するよう直列的に配置されるように合波される。
【0059】
本実施形態では、PC72で予め設定された光路調整パラメータをI/F74を介して取得し、図示しない記憶部に記憶しておくことができる。そうすれば、光学系制御部76は、前記記憶部に記憶された光路調整パラメータを適宜読み出し、該光路調整パラメータに基づいて反射ミラー92の移動量を決定し、反射ミラー92をC方向に沿って適切な位置に移動させることができる。
【0060】
図2に示すように、パルス光調整光学系34から合波光パルス116が供給されると、該合波光パルス116は、拡大光学系36によりビーム径が拡大され、偏光ビームスプリッタ38を透過され、コリメートレンズ40により平行化され、λ/4波長板42により直線偏光から円偏光とされ、対物レンズ46により前記合波光パルスの光束が集光され、ワーク24の表面26上の照射領域44に照射される。
【0061】
なお、対物レンズ46は、図示しない駆動機構により、A方向(Z軸方向)に沿って所定の変位量だけ移動させられ、照射領域44を所望の大きさになるように予め設定されている。
【0062】
ワーク24の表面26上の照射領域44で反射した合波光パルス116は、対物レンズ46により集光され、λ/4波長板42により円偏光から直線偏光とされ、コリメートレンズ40により平行化され、偏光ビームスプリッタ38により光路L1方向に反射され、シャッタ48により所定のタイミングで所定の光量だけ切り出され、ダイクロイックミラー50により合波光パルス116のうちチャープ光パルス成分(チャープ光パルス110a、110b)のみが透過され、反射ミラー52により所定の角度方向に反射され、結像光学系54により第1反射光像が形成され、カラー二次元検出器56により第1撮像信号に変換され、画像合成部57に供給される。
【0063】
このようにして取得した三次元形状に関する第1撮像画像の階調特性について説明する。図1に定義されたX−Y軸平面上の各位置におけるZ軸方向の奥行きの差は、シャッタ48に到達する合波光パルス116の飛行時間の差として変換される。この飛行時間の差は、シャッタ48の開閉動作により同時に切り出された光色(波長)の差によって検出され、撮像画像の階調特性(信号値)として表現される。具体的には、Z方向の奥行きが大きいX−Y軸平面上の位置において、合波光パルス116がシャッタ48に到達する時間が遅延する。したがって、カラー二次元検出器56では、合波光パルス116の前縁の方であるチャープ光パルス110aの前縁側(長波長側)の光色が検出される傾向がある(図4C参照)。
【0064】
また、シャッタ48により切り出された合波光パルス116は、ダイクロイックミラー50により合波光パルスのうち単波長光パルス成分(単波長光パルス112)のみが光路L2方向に反射され、結像光学系60により第2反射光像が形成され、二次元検出器62により第2撮像信号に変換され、画像合成部57に供給される。
【0065】
なお、単波長光パルス112は、チャープ光パルス110a、110bが有する波長(λP≦λ≦λR)の範囲外である波長を有する。よって、合波光パルス116は、ダイクロイックミラー50により、チャープ光パルス成分と単波長光成分とに完全に分波される。
【0066】
その後、第1及び第2撮像信号は、画像合成部57により撮像信号が合成される。画像合成部57における画像処理の具体例について、図4C、図5A及び図5Bを参照しながら詳細に説明する。
【0067】
先ず、第1及び第2撮像画像の各画素の二次元位置(X−Y座標)をそれぞれ対応させるように適切な画像処理を行う。例えば、アフィン変換、画像拡縮処理や領域ベースマッチング等の公知の画像処理手法を用いることができる。なお、カラー二次元検出器56と二次元検出器62の撮像領域が一致することが好ましい。さらに、カラー二次元検出器56の解像度及び画素数は、二次元検出器62の解像度及び画素数と一致することが好ましい。そうすれば、第1及び第2撮像画像の各画素の二次元位置(X−Y座標)が予め対応付けられるので、上述の画像処理が不要になる。
【0068】
次いで、第2撮像信号の二次元位置(各画素に相当するアドレス)を参照しながら、第1撮像信号の二次元位置及び色情報を用いてワーク24の三次元形状を表す撮像信号を取得する。
【0069】
図5Aは、第1撮像信号の波長と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。ここで、合成された撮像信号の階調レベルが大きいほどZ軸座標は大きく(撮像面22から近く)、合成された撮像信号の階調レベルが小さいほどZ軸座標は小さくなる(撮像面22から遠い)とする。
【0070】
図4Cに示すチャープ光パルス110a、110bは、奥行き方向(Z軸方向)の空間分解能についてそれぞれ256レベルの階調表現が可能とすると、図5Aに示す合波光パルス116は、256の2倍である512階調レベルを表現することができる。図4Cにおいて、階調レベル511(最高値)はチャープ光パルス110aの前縁Rでの波長λRに相当し、階調レベル0(最低値)はチャープ光パルス110bの後縁Pでの波長λPに相当し、階調レベル255(中間値)はチャープ光パルス110aの後縁Pでの波長λP又はチャープ光パルス110bの前縁Rでの波長λRに相当する。このように、第1撮像信号の波長と合成された撮像信号の階調レベルとは、鋸型のグラフとなるような関係を有する。
【0071】
図5Bは、第2撮像信号の検出光強度と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。チャープ光パルス110aに相当する飛行位置では単波長光パルス112が検出されるため所定の値を有する一方、チャープ光パルス110bに相当する位置では単波長光パルスが一切検出されないため値は0である(図4C参照)。
【0072】
ここで、図4Bに示すように、シャッタ94により単波長光パルス112の後縁部114が切除されているので、シャッタ48(図2参照)によりチャープ光パルス110bを切り出される際に単波長光パルス112が併せて切り出されることはない。したがって、単波長光パルス112の検出の有無によって、切り出されたチャープ光パルス110a、110bの種類を識別することができる。
【0073】
また、チャープ光パルス110aの後縁とチャープ光パルス110bの先端は離間・重複することなく配置しているので、撮像信号の誤検出のおそれがない。
【0074】
このように、チャープ光パルス110a、110bを直列的に配置し、単波長光パルス112を付随させる合波光パルス116を生成することにより、仮想的に長いチャープ光パルスとして検出可能である。つまり、単波長光パルス112がマーキング機能を発揮することにより、チャープ光パルス110a、110bの配置順番を特定することができる。さらに、検出された合波光パルス116のうち、第1撮像信号(チャープ光パルス成分)の波長と第2撮像信号(単波長光パルス成分)の検出光強度との組合せによって、単一のチャープ光パルスの階調表現能を超えた階調レベルを表現することができる。
【0075】
このようにして合成された撮像信号は、I/F58を介し、外部装置である画像処理装置14に送信され、画像処理装置14により所望の画像処理が施され、図1に示すモニタ16により可視画像として表示される。この可視画像によって、ワーク24の表面26上の照射領域44内において三次元形状を解析し、把握することができる。
【0076】
次いで、本発明に係る三次元形状測定装置の第1変形例について図6を参照しながら説明する。図6は、本発明に係る三次元形状測定装置12の第1変形例の概略構成図であり、あわせて光パルスの飛行位置の関係を表している。
【0077】
チャープ光源200から射出されたチャープ光パルス202は、前縁から後縁までに、赤色(図6ではR)、緑色(図6ではG)、青色(図6ではB)の順番で色が連続的に変化している。このチャープ光パルス202は、ビームスプリッタ204によって第1チャープ光パルス206と第2チャープ光パルス208とに分割される。ビームスプリッタ204によって反射された第1チャープ光パルス206は、反射ミラー210によりさらに反射され、単波長光源212から適切なタイミングで射出された単波長光パルス214と合波され、その後は同一光路上を飛行する。この単波長光パルス214は、チャープ光パルス202が有する波長範囲外である紫色(図6ではP)の波長を有する。
【0078】
同一光路上の第1チャープ光パルス206及び単波長光パルス214の後縁の飛行位置が揃えられるように、シャッタ216の適切な開閉動作によって単波長光パルス214の後縁部が切除される。その後、第1チャープ光パルス206及び単波長光パルス214は、反射ミラー218によって所定の角度方向に反射され、ワーク24の表面26側に向けて照射される。
【0079】
一方、ビームスプリッタ204を透過された第2チャープ光パルス208は、反射ミラー220により反射され、反射ミラー222により所定の角度方向に反射され、ワーク24の表面26側に向けて照射される。
【0080】
反射ミラー220と反射ミラー222との離間距離は適切に設定されており、第2チャープ光パルス208は適切な光路長に調整されている。したがって、第1チャープ光パルス206及び第2チャープ光パルス208は時間間隔を空けることなく配置されるように合波されて、単波長光パルス214とともに合波光パルス224を形成する。
【0081】
ワーク24に照射された合波光パルス224は、その表面26上で反射され、シャッタ226により所定のタイミングで所定の光量だけ切り出される。ここでは、第1チャープ光パルス206の緑色光成分228及び単波長光パルス214の一部である単波長成分230が切り出されるものとする。切り出された緑色光成分228及び単波長成分230はビームスプリッタ232により分割される。
【0082】
ビームスプリッタ232を透過された緑色光成分228a及び単波長成分230aは、青色光よりも高波長光を透過させる帯域透過フィルタ234により単波長成分230aのみが遮断される。帯域透過フィルタ234により透過された緑色光成分228aは、奥行き計測カメラ236により撮像される。
【0083】
一方、ビームスプリッタ232を反射された緑色光成分228b及び単波長成分230bは、青色光よりも低波長光を透過させる帯域透過フィルタ238により緑色光成分228bのみが遮断される。帯域透過フィルタ238により透過された単波長成分230bは、インデックス判定カメラ240により撮像される。
【0084】
シャッタ226により第1チャープ光パルス206の緑色光成分228が切り出された場合、画像合成部57には、奥行き計測カメラ236により撮像された第1撮像信号242と、インデックス判定カメラ240により撮像された第2撮像信号244とがそれぞれ供給される。一方、シャッタ226により第2チャープ光パルス208の緑色光成分が切り出された場合、画像合成部57には、奥行き計測カメラ236により撮像された第1撮像信号246と、インデックス判定カメラ240により撮像された第2撮像信号248とがそれぞれ供給される。
【0085】
そうすると、第1撮像信号242と第1撮像信号246とは略一致するが、第2撮像信号244と第2撮像信号248とは異なっている。したがって、第2撮像信号をインデックス(チャープ光パルスの配列順番)として参照することにより、奥行き位置の差異を識別することができる。
【0086】
次いで、本発明に係る三次元形状測定装置の第2変形例について図7A〜図7Cを参照しながら説明する。この第2変形例は、パルス光調整光学系34により生成される合波光パルスの構成と、画像合成部57による撮像信号の合成方法とに関して本実施形態と相違する。
【0087】
以下の変形例において本実施形態と同一である構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略し、以下同様とする。
【0088】
図7Aは、第2変形例に係る合波光パルス120が拡大光学系36へ到達する直前(図3に示すP3の位置)の飛行位置の関係を表す模式図である。チャープ光パルス110aの後縁Pとチャープ光パルス110bの前縁Rの飛行位置が略一致し、チャープ光パルス110bの後縁Pとチャープ光パルス110cの前縁Rの飛行位置が略一致している。すなわち、チャープ光パルス110a、110b、及び110cが直列的に配置するように合波される。また、所定の波長S1(例えば、紫外線領域の波長に相当する。)を有する単波長光パルス112とチャープ光パルス110aとが同一の飛行位置及び同一のパルス長さとなるように調整されている。さらに、S1とは異なる波長S2(例えば、赤外線領域の波長に相当する。)を有する単波長光パルス118とチャープ光パルス110bとが同一の飛行位置及び同一のパルス長さとなるように調整されている。
【0089】
なお、単波長光パルス112と単波長光パルス118は、同一のパルス光源(図2に示す第2パルス光源32)から射出されるようにしてもよいし、異なるパルス光源から射出されるようにしてもよい。
【0090】
図7Bは、第1撮像信号の波長と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。図7Aに示す合波光パルス120は、256の3倍である768階調レベルを表現することができる。図7Aにおいて、階調レベル767(最高値)はチャープ光パルス110aの前縁Rでの波長λRに相当し、階調レベル0(最低値)はチャープ光パルス110cの後縁Pでの波長λPに相当する。
【0091】
図7Cは、第2撮像信号の検出光強度と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。チャープ光パルス110aに相当する飛行位置では単波長光パルス112が検出されるため所定の値(高レベル)を有し、チャープ光パルス110bに相当する飛行位置では単波長光パルス118が検出されるため所定の値(低レベル)を有する一方、チャープ光パルス110cに相当する位置では単波長光パルスが一切検出されないため値は0である。
【0092】
次いで、本発明に係る三次元形状測定装置の第3変形例について図8A〜図8Cを参照しながら説明する。この第3変形例は、パルス光調整光学系34により生成される合波光パルスの構成と、画像合成部57による画像合成方法と、に関して本実施形態と相違する。
【0093】
図8Aは、第3変形例に係る合波光パルス124が拡大光学系36へ到達する直前(図3に示すP3の位置)の飛行位置の関係を表す模式図である。チャープ光パルス110aの後縁Pとチャープ光パルス110bの前縁Rの飛行位置が略一致し、チャープ光パルス110bの後縁Pとチャープ光パルス110cの前縁Rの飛行位置が略一致している。すなわち、チャープ光パルス110a、110b、及び110cが直列的に配置するように合波される。また、所定の波長S1(図8AではS1と表記する。例えば、紫外線領域の波長に相当する。)を有し光強度が高レベルである単波長光パルス112aとチャープ光パルス110aとが同一の飛行位置となるように、波長S1を有し光強度が中レベルである単波長光パルス112bとチャープ光パルス110bとが同一の飛行位置となるように、波長S1を有し光強度が低レベルである単波長光パルス112cとチャープ光パルス110cとが同一の飛行位置となるように、それぞれ調整されている。さらに、チャープ光パルス110bは、チャープ光パルス110aとOL1の範囲で重複しているとともに、チャープ光パルス110cとOL2の範囲で重複している。
【0094】
なお、単波長光パルス112a、112b、及び112cは、同一のパルス光源(図2に示す第2パルス光源32)からそれぞれ射出されるようにしてもよいし、複数の光分配器を用いて射出された単一の光パルスを分配してもよい。
【0095】
図8Bは、第1撮像信号の波長と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。図8Aに示す合波光パルス120は、256の3倍である768階調レベルを表現することができる。これに関しては、第2変形例と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0096】
図8Cは、第2撮像信号の検出光強度と合成された撮像信号の階調レベルとの関係を示すグラフである。チャープ光パルス110aに相当する飛行位置では単波長光パルス112aが検出されるため所定の値(高レベル=8)を有し、チャープ光パルス110bに相当する飛行位置では単波長光パルス112bが検出されるため所定の値(中レベル=3)を有し、チャープ光パルス110bに相当する飛行位置では単波長光パルス112cが検出されるため所定の値(低レベル=1)を有する。
【0097】
単波長光パルス112aと単波長光パルス112bとの重複範囲であるOL1では、光干渉の如何によっては、二次元検出器62により検出される光強度は矢印に示す範囲で変動し得る。しかし、前記中レベルである3を下回ることはないので、階調レベルが511周辺であることを特定可能であり、誤検出することなく適切な階調レベルに変換することができる。
【0098】
また、単波長光パルス112bと単波長光パルス112cとの重複範囲であるOL2では、光干渉の如何によっては、二次元検出器62により検出される光強度は矢印に示す範囲で変動し得る。しかし、前記低レベルである1を下回ることはないので、階調レベルが255周辺であることを特定可能であり、誤検出することなく適切な階調レベルに変換することができる。
【0099】
このように構成すれば、単波長光パルス112a〜112cとチャープ光パルス110a〜110cとの飛行位置(前後する光パルスの前縁及び後縁)を調整する必要がなくなるので好ましい。具体的には、シャッタ94(図3参照)やシャッタ216(図6参照)等を用いて、図4Bに示すような単波長光パルス112a〜112cの後縁部114(又は前縁)を切除する処理が不要になる。
【0100】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0101】
例えば、本実施形態では、光源部としての第1パルス光源30及び第2パルス光源32と、検出部としてのカラー二次元検出器56及び二次元検出器62と、が三次元形状測定装置12に一体的に組み込まれる構成を採っているが、光源部と検出部を別々の装置として構成してもよい。
【0102】
また、本実施形態では、チャープ光パルスと単波長光パルスとを合波させる構成を採っているが、別々の光路を設けてもよい。そうすれば、光干渉の影響についての懸念がなくなる。
【0103】
さらに、本実施形態では、第1及び第2撮像信号を合成する画像合成部57は三次元形状測定装置12に組み込まれる構成を採っているが、画像処理装置14にその画像処理を行わせてもよい。
【0104】
さらに、二次元検出器62は、モノクロセンサ(単一の受光波長特性を有する素子)でもカラーセンサ(複数種の受光波長特性を有する素子)でも構成可能である。
【0105】
さらに、本実施形態では、2つ又は3つのチャープ光パルスを直列的に配置させる構成を採っているが、4つ以上のチャープ光パルスを配置させてもよい。また、チャープ光パルスは可視領域の光波長に限定されることなく、紫外線や赤外線等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10…三次元形状測定システム 12…三次元形状測定装置
14…画像処理装置 22…撮像面
24…ワーク 26…表面
30…第1パルス光源 32…第2パルス光源
34…パルス光調整光学系 38…偏光ビームスプリッタ
40…コリメートレンズ 42…λ/4波長板
44…照射領域 46…対物レンズ
48、94、216、226…シャッタ 50、98…ダイクロイックミラー
52、88、92、96、100、102、210、218、220、222…反射ミラー
54、60…結像光学系 56…カラー二次元検出器
57…画像合成部 58、74…I/F
62…二次元検出器 64…第1パルス光射出制御部
66…第2パルス光射出制御部 68…シャッタ開閉制御部
70…タイミング制御部 76…光学系制御部
78…反射光像取得部 80…三次元情報取得部
82…チャープ導入装置
84、86、90、204、232…ビームスプリッタ
110a〜110c…チャープ光パルス
206…第1チャープ光パルス 208…第2チャープ光パルス
112、112a〜112c、118、214…単波長光パルス
116、120、124、224…合波光パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成するチャープ光パルス生成手段と、
所定の波長の単波長光パルスを生成する単波長光パルス生成手段と、
前記チャープ光パルス生成手段により生成された前記チャープ光パルスを被測定物に照射し、前記被測定物から反射された前記チャープ光パルスの第1反射光像を取得する第1の反射光像取得手段と、
前記単波長光パルス生成手段により生成された前記単波長光パルスを前記被測定物に照射し、前記被測定物から反射された前記単波長光パルスの第2反射光像を取得する第2の反射光像取得手段と、
該第2の反射光像取得手段により取得された前記第2反射光像の二次元情報を参照し、前記第1の反射光像取得手段により取得された前記第1反射光像の二次元情報及び色情報を用いて前記被測定物の三次元情報を取得する三次元情報取得手段と、
前記チャープ光パルスを前記被測定物に向けて照射するタイミングと、前記単波長光パルスを前記被測定物に向けて照射するタイミングとを調整する照射タイミング調整手段と、
を有することを特徴とする三次元形状測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の三次元形状測定装置において、
前記チャープ光パルスと前記単波長光パルスとを合波して合波光パルスを生成する光合波手段と、
前記合波光パルスを、前記第1の反射光像取得手段により取得される前記第1反射光像と前記第2の反射光像取得手段により取得される前記第2反射光像とに分波する光分波手段と、を備える
ことを特徴とする三次元形状測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の三次元形状測定装置において、
前記単波長光パルス生成手段は、波長の異なる単波長光パルスを交互に生成する
ことを特徴とする三次元形状測定装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の三次元形状測定装置において、
前記チャープ光パルスを分配する光分配手段と、
前記光分配手段により分配された各チャープ光パルスが同一光路上で互いに重複しない光路長となるように前記分配された各チャープ光パルスの光路長を調整する光路長調整手段と、を備える
ことを特徴とする三次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−13104(P2011−13104A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157649(P2009−157649)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】