不揮発性半導体記憶装置および不揮発性半導体記憶装置の製造方法
【課題】浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できて、読み出しエラーが起こりにくい多値型を含むNOR型のフラッシュメモリ等の不揮発性半導体記憶装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】複数のメモリセル4を、互いに一方向に間隔をおくように配置する。制御ゲート電極2のONO膜22の側面に上記一方向に重なる部分24を、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成する。制御ゲート電極2の上記一方向に重なる部分24において、多結晶シリコンの不純物濃度を、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下に設定することで、浮遊ゲート電極10間の制御ゲート電極2の空乏化を大幅に抑制でき、隣接セルの浮遊ゲート電極10間の容量結合による閾値変動を急激に小さくする事ができ、隣接セルの閾値の干渉を受けないようにできる。
【解決手段】複数のメモリセル4を、互いに一方向に間隔をおくように配置する。制御ゲート電極2のONO膜22の側面に上記一方向に重なる部分24を、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成する。制御ゲート電極2の上記一方向に重なる部分24において、多結晶シリコンの不純物濃度を、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下に設定することで、浮遊ゲート電極10間の制御ゲート電極2の空乏化を大幅に抑制でき、隣接セルの浮遊ゲート電極10間の容量結合による閾値変動を急激に小さくする事ができ、隣接セルの閾値の干渉を受けないようにできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置およびその製造方法に関する。本発明は、特に、浮遊ゲート電極を有し、電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性半導体記憶装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不揮発性半導体記憶装置としては、浮遊ゲート電極と制御ゲート電極とが積層構造になっており、かつ、電気的にデータの書き換えが可能なフラッシュメモリがある。
【0003】
フラッシュメモリは、浮遊ゲート電極中に電子を注入/放出する事でメモリセルトランジスタの閾値を変化させて、書き込み/消去の状態を記憶するものである。上記浮遊ゲート電極は絶縁されているから、浮遊ゲート電極中に蓄積した電子は、その状態を保持することができ、情報が記憶されることになる。
【0004】
フラッシュメモリには、NOR型、NAND型、DINOR型等の多数の種類がある。浮遊ゲート電極中の電荷量で閾値を制御する点は、いずれのフラッシュメモリでも基本的には同じである。
【0005】
ここでは、従来技術としてNOR型のフラッシュメモリに関してメモリセルの構造および動作について説明する。
【0006】
図10は、従来のNOR型フラッシュメモリセルアレイを模式的に示す平面図である。図10において、103は、ドレインコンタクト、104は、メモリセルを示している。
【0007】
図10に示すように、上記メモリセルアレイでは、活性領域が、ストライプ状に配列され、活性領域101上には、複数のメモリセルの制御ゲート電極102が、直行配列されている。上記活性領域101上の制御ゲート電極102下には、ビット毎に独立して浮遊ゲート電極が配置され、ソース/ドレインは、上記制御ゲート電極102に対して自己整合的に形成されている。
【0008】
図11Aは、図10のAA’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。また、図11Bは、図10のBB’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【0009】
シリコン基板105上には、トレンチ108が形成され、トレンチ108に、酸化膜109を埋込形成することにより、活性領域101を適切に分離している。また、活性領域101上には、トンネル酸化膜110が形成され、トンネル酸化膜110の上を覆うように浮遊ゲート電極111が形成されている。浮遊ゲート電極111の上面、および、側面は、ONO膜112で覆われており、ONO層112の上に制御ゲート電極102が形成されている。
【0010】
図11Bに示すように、ソース114及びドレイン115は、制御ゲート電極102に対して自己整合的に形成されたN+拡散層からなっている。上記ソース114及びドレイン115は、ドレイン側に設けられたドレインコンタクト103を介してビット線に117接続されている一方、制御ゲート電極102は、ワード線に接続されている。
【0011】
メモリセル104の読み出し(リード)は、例えば、ビット線117の電位を1V、制御ゲート電極102の電位を5V、および、ソース114の電位を0Vにすることで行う。また、メモリセル104への書き込みは、例えば、ビット線117の電位を4V、制御ゲート電極102の電位を9V、ソース114の電位を0Vにして、チャネルホットエレクトロン注入によって、電子を浮遊ゲート電極111に注入する事で行う。
【0012】
また、メモリセル104に書き込まれた情報の消去は、例えば、シリコン基板105の電位を7V、制御ゲート電極102の電位を−8Vにすることで、浮遊ゲート電極111からシリコン基板105に向けて流れるFN電流で、電子を放出して行われる。
【0013】
図12Aは、書き込み/消去状態のメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【0014】
読み出し(リード)は、リファレンスセルと各メモリセル104の電流を比較して行う。消去状態のメモリセル104に流れる電流は、リファレンスセルよりも大きい一方、書き込み状態のメモリセル104に流れる電流は、リファレンスセルよりも小さい。このことを利用すれば、2つの状態を、識別することができる。
【0015】
近年では、1つのメモリセルに多値のデータを格納する事で大容量化したメモリセルも開発されている。
【0016】
図12Bは、多値を記録できるフラッシュメモリの閾値分布の一例、正確には、4値を格納するメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【0017】
4値が書き込み可能なメモリセルの場合には、例えば、3つの異なる閾値レベルのリファレンスセルと、メモリセルの電流を比較する事で、4値を検出するようにする。この場合、各閾値とリファレンスセルの閾値の差は2値の場合に比較して小さくなる。
【0018】
ところがメモリセルを微細化していくと隣接セルの閾値の影響を受けて閾値が変動するといった不具合が発生する。この現象は隣接セルの浮遊ゲート同士の容量結合により生じる。例えば隣接した3つのメモリセルが消去状態であり、同じ閾値だった場合を考える。この状態で左右2つのセルを書き込み状態にすると、隣接した浮遊ゲートに電子が注入され浮遊ゲートの電位が上がる。この時に浮遊ゲート間の容量が大きいと、隣接した浮遊ゲートの電位の影響を受け浮遊ゲートの電位が上昇する為メモリセルの閾値が上昇してしまう。このような隣接セルとの浮遊ゲート間の容量結合による閾値上昇により、リファレンスセルとの電流差が変化し、リードエラーが生じる。特に多値フラッシュではリファレンスレベルと消去状態の閾値差が小さい為、浮遊ゲート間の容量結合による閾値上昇の影響は大きい。
【0019】
このような課題に対して例えば特表2005-530362、特開2003-188287,特開2002-57228等では隣接した浮遊ゲート間を導電層でシールドする事で改善する方法が開示されている。前記特許はNAND型のフラッシュメモリに関しての改善方法を述べているが、NOR型のフラッシュメモリセルに関しても同様に対策が可能である。すなわち浮遊ゲートと浮遊ゲートの間に制御ゲートを埋設して浮遊ゲート間をシールドしてやればよい。
【特許文献1】特表2005−530362号公報
【特許文献2】特開2003−188287号公報
【特許文献3】特開2002−57228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者は、上記従来技術について、次に説明する課題があることを見出した。
【0021】
すなわち、従来技術では、図13Aおよび図13Aの部分拡大図である13Bに示すように、隣接する第2絶縁膜に挟まれた制御ゲート電極の部分に空乏層130が発生して、上記制御ゲート電極の部分内の空乏層130により、浮遊ゲート電極間の容量Cfgが増大してしまうという課題があることを発見した。
【0022】
そこで、本発明の課題は、浮遊ゲート電極間に位置する制御ゲート電極の部分の空乏化を大幅に抑制できて、読み出しエラーが起こりにくい不揮発性半導体記憶装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、この発明の不揮発性半導体装置は、
一方向に互いに間隔をおいて配列された複数のメモリセルを備え、
上記各メモリセルは、
半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、
上記第1絶縁膜上に形成された浮遊ゲート電極と、
上記一方向と、上記半導体基板の上面に垂直な方向とを含む断面において、上記浮遊ゲート電極の上面および側面に形成された第2絶縁膜と
を備え、
上記複数のメモリセルは、
上記断面において、上記各第2絶縁膜の上面および側面に、共通の制御ゲート電極を備え、
上記一方向に隣接する上記メモリセルの上記浮遊ゲート電極の側面に形成されて上記一方向に互いに対向している上記第2絶縁膜の部分の間に位置する上記制御ゲート電極の部分は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されていることを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、上記一方向に互いに対向している上記第2絶縁膜の部分の間に位置する上記制御ゲート電極の部分は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されているから、浮遊ゲート電極間に位置する制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できて、情報のミスリードの可能性を低くすることができる。
【0025】
また、一実施形態では、上記制御ゲート電極の上記部分の不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下である。
【0026】
上記実施形態によれば、上記多結晶シリコンの不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下であるから、微細化されたメモリセルサイズにおいて、浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を、格段に抑制することができる。そして、隣接セルの閾値に影響しないメモリセルを提供でき、読み出しエラーのない微細化に適したフラッシュメモリを提供することができる。
【0027】
また、一実施形態では、上記浮遊ゲート電極は、燐または砒素を含んでいる。
【0028】
上記実施形態によれば、読み出しエラーを抑制できる。
【0029】
また、本発明の不揮発性半導体装置の製造方法は、
半導体基板上に、互いに一方向に離間する複数の活性領域を作成すると共に、上記各活性領域上に第1絶縁膜を形成し、
上記第1絶縁膜上に浮遊ゲート電極を形成した後、上記浮遊ゲートの上面および側面に、第2絶縁膜を形成し、
上記第2絶縁膜の上面および側面に、多結晶シリコン膜を堆積した後、上記一方向において、隣接する上記第2絶縁膜の間の領域に、不純物を注入して、その後、熱処理を行うことを特徴としている。
【0030】
本発明によれば、浮遊ゲート電極間に位置する制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できて、情報のミスリードの可能性を低くすることができる。
【0031】
また、一実施形態では、上記隣接する第2絶縁膜の間の領域に、注入される不純物の体積濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下である。
【0032】
上記実施形態によれば、微細化されたメモリセルサイズにおいて、浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を、格段に抑制することができる。そして、隣接セルの閾値に影響しないメモリセルを提供でき、読み出しエラーのない微細化に適したフラッシュメモリを提供することができる。
【0033】
また、一実施形態では、上記浮遊ゲート電極は、燐またはヒ素がドープされた多結晶シリコン膜であることを特徴とする。
【0034】
上記実施形態によれば、読み出しエラーを抑制できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の不揮発性半導体装置によれば、制御ゲート電極の第2絶縁膜の側面に一方向に重なる部分が、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されているから、浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できて、読み出しを正確に行うことができる。
【0036】
また、一実施形態の不揮発性半導体装置によれば、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の不純物濃度が、1020/cm3であるから、制御ゲート電極中に広がる空乏層幅Wを、(2εSiε0(2ΦF)/qNA)1/2より約3.3nmにすることができて、浮遊ゲート電極間の容量結合比Cfg/Ctotを、約0.0025と、従来の1/10以下まで急激に小さくすることができる。したがって、浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値の上昇を、従来の1/10以下に急激に小さくすることができる。
【0037】
したがって、従来とメモリセルの構造を同一にして、レイアウト、製造プロセスを大幅に変えることなく、隣接セルの浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値変動を急激に小さくする事ができ、隣接セルの閾値の干渉を受けないメモリセルトランジタを実現することができる。そして、特に、微細化された大容量のフラッシュメモリにおいて、多値のフラッシュメモリの性能を、格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態の不揮発性半導体記憶装置であるNOR型のフラッシュメモリを複数配列してなるNOR型フラッシュメモリセルアレイの平面図である。
【0040】
このフラッシュメモリセルアレイは、複数の活性領域1と、複数のメモリセルの制御ゲート電極2とを有している。上記活性領域1は、ストライプ状に配列されており、制御ゲート電極2は、活性領域1に直交するように配列されている。上記活性領域1上かつ制御ゲート電極2下には、ビット毎に独立した浮遊ゲート電極が配置されており、ソース/ドレインは、制御ゲート電極2に対して自己整合的に形成されている。尚、図1において、参照番号4は、メモリセルであり、参照番号5は、ドレインコンタクトである。このフラッシュメモリセルアレイが有する複数のメモリセル4は、制御ゲート電極2の延在方向である一方向に、互いに間隔をおくように配置されている。
【0041】
図2Aおよび図2Bは、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。詳しくは、図2Aは、図1のAA’線断面図であり、図2Bは、図1のBB’線断面図である。尚、図2Aおよび図2Bにおいて、参照番号15は、ビット線を示している。尚、図2Aにおいて、矢印Aは、上記一方向を示している。
【0042】
図2Aに示すように、半導体基板の一例としてのシリコン基板7の上面に、トレンチ8が形成され、トレンチ8に、酸化膜を埋込形成することにより、素子分離領域9が、形成されている。素子分離領域9は、活性領域1を分離している。
【0043】
各メモリセル4は、第1絶縁膜としてのトンネル酸化膜19、浮遊ゲート電極10、および、第2絶縁膜としてのONO膜22を有し、上記一方向に配列された複数のメモリセル4は、共通の制御ゲート電極2を有している。
【0044】
トンネル酸化膜19は、活性領域1上に形成され、浮遊ゲート電極10は、トンネル酸化膜19の上を覆うように形成されている。また、ONO膜22は、図2Aに示す断面、すなわち、上記一方向およびシリコン基板7の上面に垂直な方向を含む断面(上記一方向および不揮発性半導体記憶装置の積層方向を含む断面)において、浮遊ゲート電極10の上面および側面に、浮遊ゲート電極10の上面および側面に沿うように形成されている。また、制御ゲート電極2は、図2Aに示す断面において、各ONO膜22の上面および側面に、ONO膜22を覆うように形成されている。
【0045】
上記制御ゲート電極2上に、層間膜27が位置し、層間膜27上に、メタル配線であるビット線15が位置している。また、図2Bに11で示すソース、および、図2Bに13で示すドレインは、制御ゲート電極12に対して自己整合的に形成されたN+拡散層からなっている。上記ソース11およびドレイン13は、ドレイン13側に設けられたドレインコンタクト5を介してビット線15に接続されている。また、上記制御ゲート電極12は、図示しないワード線に接続されている。
【0046】
図2Aを参照して、上記一方向に隣接するメモリセル4の浮遊ゲート電極10の側面に形成されて上記一方向に互いに対向しているONO膜22の部分25の間に位置する制御ゲート電極2の部分24は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されている。他の言葉で言うと、制御ゲート電極2のONO層11の側面に上記一方向に重なる部分24は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されている。
【0047】
上記制御ゲート電極2の部分24において、多結晶シリコンの不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下になっている。また、上記浮遊ゲート電極10は、燐または砒素を含んでいる。
【0048】
図3A〜図7Bは、本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。以下、図3A〜図7Bを用いて、本発明の不揮発性半導体装置の製造方法の一実施形態を説明する。尚、図3A〜図7Bにおいて、AA’は、図1において、AA’線断面図に相当する図であることを示し、BB’は、図1において、BB’線断面図に相当する図であることを示すものである。
【0049】
先ず、図3Aに示すように、P型シリコン基板7上に、活性領域1および素子分離領域9を形成する。例えば、シリコン基板1上に、15nm程度の酸化膜30と、150nm程度のSiN膜31とを順次堆積し、フォトリソグラフィによりフォトレジストをストライプ状に残し、上記SiN膜31と、酸化膜30とを、フォトレジストをマスクにしてドライエッチで順次エッチングし、さらに、シリコン基板1をエッチングし、深さ約200nm程度のシャロートレンチ8を形成する。
【0050】
次に、HDP膜を堆積し(例えば、500nm)、CMPなどでSiN膜31をストッパーにしてHDP膜を研磨する。その後、SiN膜31を例えば燐酸等で除去し、活性領域1と、素子分離領域9とを形成する。このようにして、幅が200nm程度の活性領域1、および、幅が150nm程度であると共に、膜厚が350nm程度である素子分離領域9を作成する。尚、この時点において、図3Bにおいては、酸化膜30、SiN膜31が、順次形成された様子が示される。
【0051】
次に、素子分離領域9の直下及びシリコン基板1表面のP型濃度を上げるため、30keVのエネルギーのホウ素(B)を5E12/cm2注入すると共に、100keVのエネルギーのホウ素(B)を5E12/cm2注入して、熱処理を加えてドライブする。この後、シリコン基板7上に残留している酸化膜30をウェットエッチ等で除去し、図4Aに示すように、活性領域1上にトンネル酸化膜となる10nm程度の熱酸化膜40を形成し、更に、その上に浮遊ゲート電極となるリンなどがドープされた多結晶シリコン膜41(例えば膜厚:150nm)を堆積する。その後、CMPなどで多結晶シリコンを、素子分離間に埋め込む。ここで、例えば、浮遊ゲート電極の幅を、約250nm程度に設定し、浮遊ゲート電極間のスペースを、100nm程度に設定する。尚、この時点において、図4Bにおいては、熱酸化膜40、多結晶シリコン膜41が、順次形成された様子が示される。
【0052】
続いて、図5Aに示すように、ウェットエッチ法等を用いて多結晶シリコンの間に埋め込まれた酸化膜をエッチングした後、ONO膜22を形成する。酸化膜をエッチングする目的は、ゲート容量比をなるべく大きくするためである。また、酸化膜をエッチングする別の目的は、多結晶シリコンの間をエッチングしたことにより、隣接した浮遊ゲート電極間に生成された溝の部分に、後に制御ゲート電極の一部分を構成する多結晶シリコンを埋め込むための部分を形成するためである。このため、ウェットエッチ量は、浮遊ゲート電極41の側面がなるべく露出する様に実施される必要がある。尚、この時点において、図5Bにおいては、多結晶シリコン膜41、ONO膜22が、順次形成された様子が示される。
【0053】
本実施形態では、基板に垂直な方向において、酸化膜の除去量は、150nmとした。また、ONO膜は、酸化膜、SiN膜、酸化膜をこの順に積層してなる膜であり、各膜の膜厚は、例えば、6nm/5nm/7nmである。ONO膜の生成方法としては、例えば、多結晶シリコンの表面を熱酸化した後、CVD法などでSiN膜を堆積し、その後HTO膜を堆積する方法がある。
【0054】
次に、ONO膜22上に、制御ゲート電極となる多結晶シリコン膜(例えば、200nm)を堆積する。この工程により、浮遊ゲート電極41間に、制御ゲート電極となる多結晶シリコン膜61の一部が埋設される。その後、燐(P)あるいは砒素(As)〜等の不純物を注入し、熱処理を施す。ここで不純物の注入量は、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極となる多結晶シリコンの体積濃度が、1020〜1021/cm3となる様に設定する。本実施事例では、Pを、20KeV、3.5E15/cm2で注入した。
【0055】
浮遊ゲート電極41間に埋設された制御ゲート電極となる多結晶シリコン61の膜厚は、350nmであり、体積濃度は、1020/cm3である。この後、熱処理を行う。熱処理は、注入した不純物が浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極となる多結晶シリコンの底部まで十分拡散するように行われる。本実施形態では、熱処理は、900℃で30分間継続して行った。
【0056】
尚、別の手法として、多結晶シリコンは、燐(P)あるいは砒素(As)等の不純物が導入されたドープドシリコンを堆積して作成しても良い。この場合、例えば、LPCVD炉を用い、原料ガスとして、モノシラン(SiH4)、フォスフィン(PH3)を主に用い、成膜温度を、約600℃にすると共に、膜中リン濃度を、1020/cm3に設定して、膜厚200nmのドープドシリコンを作成する(図示せず)。
【0057】
その後、活性領域1と、垂直方向にフォトリソグラフィでフォトレジストをストライプ状に残し、フォトレジストをマスクにして多結晶シリコン、ONO膜、浮遊ゲート電極を連続的にドライエッチ等でエッチングすることで、図7A、図7Bに示す制御ゲート電極12を形成する。
【0058】
このとき、浮遊ゲート電極10は、制御ゲート電極12の下にメモリセル毎に分離されて形成される。続いて、砒素(As)を注入し(例えば、15KeV、1E15/cm2)、RTA等の熱処理(例えば950℃、10秒)を施すことで、ドレイン、ソースを形成する。その後、HTO膜等を堆積、エッチバックする事でサイドウォール70(図7B参照)を形成し、Coサリサイドをソース11/ドレイン13上及び制御ゲート電極12上に形成する。次に、層間膜27を堆積しCMPなどで平坦化した後に、ドレイン上にコンタクトプラグを形成する。その後、メタル配線を、制御ゲート電極と垂直方向にパターニングし、ビット線15となるメタル配線を形成する。このようにして、図7A、図7Bに示す不揮発性半導体装置を形成する。
【0059】
上記実施形態のように、隣接した浮遊ゲート電極10間に、制御ゲート電極2の一部を埋設形成し、かつ、その制御ゲート電極2の一部(制御ゲート電極2におけるONO層22に上記一方向に重なる部分)を、不純物がドーピングされた多結晶シリコンとすれば、従来技術で問題になった浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できる。
【0060】
そして、特に、上記制御ゲート電極2の一部の不純物濃度を、1020/cm3〜1021/cm3にすれば、従来技術で問題になった浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化の抑制の効果を格段に大きくすることができる。
【0061】
以下、このことについて、本発明者が見出した現象に基づいて詳しく説明する。
【0062】
浮遊ゲート電極は、制御ゲート電極、基板、ソース/ドレイン、および、隣接セルの浮遊ゲート電極と容量結合している。
【0063】
図8は、上記容量結合の様子を、等価回路で示したものである。
【0064】
浮遊ゲート電極の電位は、浮遊ゲート電極と制御ゲート電極間の容量Cono、基板間の容量Cch、ソース間の容量Cs、ドレイン間の容量Cd、隣接セルの浮遊ゲート電極との容量Cfg、制御ゲート電極の電位Vg、基板の電位Vsub、ソースの電位Vs、ドレインの電位Vd、および、隣接メモリセルの浮遊ゲート電極の電位Vfg‘およびVfg’’により決められる。
【0065】
具体的には、Vfg = (Cono/Ctot)・Vg+(Cch/Ctot)Vsub+(Cd/Ctot)・Vd+(Cs/Ctot)・Vs+(Cfg/Ctot)・Vfg’+(Cfg/Cot)・Vfg’’+Qfg/Ctotとなる。
【0066】
ここで、Ctot=Cono+Cch+Cd+Cs+2・Cfgであり、Qfgは浮遊ゲート電極中の電荷量である。
【0067】
メモリセルを微細化していくと、浮遊ゲート電極間の容量Cfgが大きくなる。浮遊ゲート電極間の容量が大きくなった場合、隣接セルの閾値が容量結合の影響を受けて変動する。
【0068】
例えば、隣接した3つのメモリセルが消去状態であり、同じ閾値だった場合を考える。この状態で左右2つのセルを書き込み状態にすると、隣接した浮遊ゲート電極に電子が注入され浮遊ゲート電極の電位が上がる。この時に浮遊ゲート電極間の容量Cfgが大きいと、隣接した浮遊ゲート電極の電位の影響を受けVfgが上昇する。すなわち、メモリセルの閾値が上昇してしまう。
【0069】
このような隣接セルとの浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値上昇により、リファレンスセルとの電流差が変化し、リードエラーが生じる。特に、多値フラッシュメモリでは、リファレンスレベルと消去状態の閾値差が小さいため、浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値上昇の影響が大きくなる。
【0070】
このことについて詳しく説明する。制御ゲート電極の材料として、多結晶シリコンを用い、多結晶シリコンへの不純物のドーピングを、ソース/ドレインへの不純物注入と同時に行い、その後の熱処理により不純物を活性化させる場合、メモリセルを微細化する際には、セルトランジスタのショートチャネル効果を抑制する要求から、ソース/ドレインのXjを、浅く形成する必要がある。
【0071】
すなわち、不純物のドーピングは、低ドーズ、低エネルギーで行い、熱処理は、RTA等を用いる事で不純物の熱拡散を抑制する様にする必要がある。このため、制御ゲート電極中に導入される不純物のドーズ量は少なく、また、多結晶シリコン中に注入された不純物の熱拡散も小さくする必要がある。
【0072】
さらに、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極部の底部は高アスペクトになっているから、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の底部の不純物濃度が低くなる。
【0073】
このため、浮遊ゲート電極間に制御ゲート電極間を埋設して浮遊ゲート電極間の電位をシールドしようとしても、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の下部は、不純物濃度が低いため、多結晶シリコン中に空乏層が発生して、この多結晶シリコン中の空乏層により、浮遊ゲート電極間の容量Cfgが増大してしまう。
【0074】
このことを分かり易く説明するため、0.13μmルールのNOR型のメモリセルについて、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の底部の不純物濃度が1018/cm3である場合について、隣接セルの浮遊ゲート電極間容量結合による閾値変動を、具体的に、数値を用いて説明する。
【0075】
図8を参照して、各種容量を、実際の設定値付近の値、具体的には、浮遊ゲート電極制御ゲート電極間の容量Conoを、約0.18fF、浮遊ゲート電極ドレイン間の容量Cdを、約0.008fF、浮遊ゲート電極ソース間の容量Csを、約0.008fF、浮遊ゲート電極基板間の容量Cchを、0.08fFとする。
【0076】
この場合、不純物濃度NAが1018/cm3である制御ゲート電極中に広がる空乏層幅Wは、(2εSiε0(2ΦF)/qNA)1/2により約33nmとなり、この空乏層による浮遊ゲート電極間の容量Cfgは、約0.007fFになる。したがって、浮遊ゲート電極間の容量結合比Cfg/Ctotは、約0.025であるから、消去状態のメモリセルの閾値を3Vとし、この状態から左右に隣接した2つのメモリセルの閾値を3Vから6Vに上げた場合について考えると、閾値の上昇分ΔVthは、ΔVth=(6−3)×0.025×2=0.15Vと非常に大きな値になる。
【0077】
したがって、従来と比較して、読み出しエラーが改善されてはいるが、いまだに、読み出しエラーが起こる可能性が存在することになる。
【0078】
不純物濃度を、1020/cm3以上の濃度にすれば、読み出しエラーの可能性が非常に低い不揮発性半導体装置を構築することができる理由は、次のように説明することができる。
【0079】
図9に、上記制御ゲート電極の一部の多結晶シリコンの不純物濃度と、左右に隣接した2つのメモリセルの閾値を3Vから6Vに上げた場合における、メモリセルの閾値の上昇分(ΔVth)の関係を示す。
【0080】
尚、図9において、ΔVthは、上記容量Conoを、0.18fF、浮遊ゲート電極ドレイン間の上記容量Cdを、0.008fF、浮遊ゲート電極ソース間の上記容量Csを、0.008fF、浮遊ゲート電極基板間の上記容量Cchを、0.08fFとして、(2εSiε0(2ΦF)/qNA)1/2を用いて計算した。
【0081】
図9に示すように、不純物濃度を、1020/cm3以上の濃度にすれば、ΔVthを、0.015V以下にでき、不純物濃度が1018/cm3程度である装置と比して、ΔVthを、1/10以下に急激に小さくすることができる。
【0082】
したがって、本実施形態のように、上記制御ゲート電極2の一部(制御ゲート電極2におけるONO層22に上記一方向に重なる部分)の不純物濃度を、1020/cm3〜1021/cm3にすれば、隣接セルの閾値に殆ど影響しないメモリセルを構築することができて、読み出しエラーの可能性が非常に低くて、微細化に適した不揮発性半導体装置(例えば、フラッシュメモリ)を構築することができるのである。
【0083】
尚、上記実施形態では、不揮発性半導体装置が、NOR型のフラッシュメモリであったが、この発明では、不揮発性半導体装置は、NAND型フラッシュメモリ、DINOR型フラッシュメモリ等、NOR型のフラッシュメモリ以外の不揮発性半導体装置であっても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、不純物の注入量は、浮遊ゲート電極10間に埋設された制御ゲート電極2の多結晶シリコンの体積濃度が、1020〜1021/cm3となる様に設定されたが、この発明では、不純物の注入量は、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の部分の多結晶シリコンの体積濃度が、1020/cm3よりも小さい値であっても良いし、1021/cm3よりも大きい値であっても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、浮遊ゲート電極10間に埋設された制御ゲート電極2に、燐(P)を注入したが、燐の代わりに砒素(As)を注入しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態の不揮発性半導体記憶装置であるNOR型のフラッシュメモリを複数配列してなるNOR型フラッシュメモリセルアレイの平面図である。
【図2A】フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図2B】フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図3A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図3B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図4A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図4B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図5A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図5B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図6A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図6B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図7A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図7B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図8】容量結合の様子を、等価回路で示したものである。
【図9】制御ゲート電極の一部の多結晶シリコンの不純物濃度と、左右に隣接した2つのメモリセルの閾値を3Vから6Vに上げた場合における、メモリセルの閾値の上昇分(ΔVth)の関係を示す。
【図10】従来のNOR型フラッシュメモリセルアレイを模式的に示す平面図である。
【図11A】図10のAA’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図11B】図10のBB’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図12A】書き込み/消去状態のメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【図12B】多値を記録できるフラッシュメモリの閾値分布の一例、正確には、4値を格納するメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【図13A】多結晶シリコン中での空乏層の発生を説明する図である。
【図13B】多結晶シリコン中での空乏層の発生を説明する図である。
【符号の説明】
【0087】
1 活性領域
2 制御ゲート電極
4 メモリセル
5 ドレインコンタクト
7 シリコン基板
8 トレンチ
9 素子分離領域
10 浮遊ゲート電極
11 ソース
13 ドレイン
15 ビット線
19 トンネル酸化膜
22 ONO膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置およびその製造方法に関する。本発明は、特に、浮遊ゲート電極を有し、電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性半導体記憶装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不揮発性半導体記憶装置としては、浮遊ゲート電極と制御ゲート電極とが積層構造になっており、かつ、電気的にデータの書き換えが可能なフラッシュメモリがある。
【0003】
フラッシュメモリは、浮遊ゲート電極中に電子を注入/放出する事でメモリセルトランジスタの閾値を変化させて、書き込み/消去の状態を記憶するものである。上記浮遊ゲート電極は絶縁されているから、浮遊ゲート電極中に蓄積した電子は、その状態を保持することができ、情報が記憶されることになる。
【0004】
フラッシュメモリには、NOR型、NAND型、DINOR型等の多数の種類がある。浮遊ゲート電極中の電荷量で閾値を制御する点は、いずれのフラッシュメモリでも基本的には同じである。
【0005】
ここでは、従来技術としてNOR型のフラッシュメモリに関してメモリセルの構造および動作について説明する。
【0006】
図10は、従来のNOR型フラッシュメモリセルアレイを模式的に示す平面図である。図10において、103は、ドレインコンタクト、104は、メモリセルを示している。
【0007】
図10に示すように、上記メモリセルアレイでは、活性領域が、ストライプ状に配列され、活性領域101上には、複数のメモリセルの制御ゲート電極102が、直行配列されている。上記活性領域101上の制御ゲート電極102下には、ビット毎に独立して浮遊ゲート電極が配置され、ソース/ドレインは、上記制御ゲート電極102に対して自己整合的に形成されている。
【0008】
図11Aは、図10のAA’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。また、図11Bは、図10のBB’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【0009】
シリコン基板105上には、トレンチ108が形成され、トレンチ108に、酸化膜109を埋込形成することにより、活性領域101を適切に分離している。また、活性領域101上には、トンネル酸化膜110が形成され、トンネル酸化膜110の上を覆うように浮遊ゲート電極111が形成されている。浮遊ゲート電極111の上面、および、側面は、ONO膜112で覆われており、ONO層112の上に制御ゲート電極102が形成されている。
【0010】
図11Bに示すように、ソース114及びドレイン115は、制御ゲート電極102に対して自己整合的に形成されたN+拡散層からなっている。上記ソース114及びドレイン115は、ドレイン側に設けられたドレインコンタクト103を介してビット線に117接続されている一方、制御ゲート電極102は、ワード線に接続されている。
【0011】
メモリセル104の読み出し(リード)は、例えば、ビット線117の電位を1V、制御ゲート電極102の電位を5V、および、ソース114の電位を0Vにすることで行う。また、メモリセル104への書き込みは、例えば、ビット線117の電位を4V、制御ゲート電極102の電位を9V、ソース114の電位を0Vにして、チャネルホットエレクトロン注入によって、電子を浮遊ゲート電極111に注入する事で行う。
【0012】
また、メモリセル104に書き込まれた情報の消去は、例えば、シリコン基板105の電位を7V、制御ゲート電極102の電位を−8Vにすることで、浮遊ゲート電極111からシリコン基板105に向けて流れるFN電流で、電子を放出して行われる。
【0013】
図12Aは、書き込み/消去状態のメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【0014】
読み出し(リード)は、リファレンスセルと各メモリセル104の電流を比較して行う。消去状態のメモリセル104に流れる電流は、リファレンスセルよりも大きい一方、書き込み状態のメモリセル104に流れる電流は、リファレンスセルよりも小さい。このことを利用すれば、2つの状態を、識別することができる。
【0015】
近年では、1つのメモリセルに多値のデータを格納する事で大容量化したメモリセルも開発されている。
【0016】
図12Bは、多値を記録できるフラッシュメモリの閾値分布の一例、正確には、4値を格納するメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【0017】
4値が書き込み可能なメモリセルの場合には、例えば、3つの異なる閾値レベルのリファレンスセルと、メモリセルの電流を比較する事で、4値を検出するようにする。この場合、各閾値とリファレンスセルの閾値の差は2値の場合に比較して小さくなる。
【0018】
ところがメモリセルを微細化していくと隣接セルの閾値の影響を受けて閾値が変動するといった不具合が発生する。この現象は隣接セルの浮遊ゲート同士の容量結合により生じる。例えば隣接した3つのメモリセルが消去状態であり、同じ閾値だった場合を考える。この状態で左右2つのセルを書き込み状態にすると、隣接した浮遊ゲートに電子が注入され浮遊ゲートの電位が上がる。この時に浮遊ゲート間の容量が大きいと、隣接した浮遊ゲートの電位の影響を受け浮遊ゲートの電位が上昇する為メモリセルの閾値が上昇してしまう。このような隣接セルとの浮遊ゲート間の容量結合による閾値上昇により、リファレンスセルとの電流差が変化し、リードエラーが生じる。特に多値フラッシュではリファレンスレベルと消去状態の閾値差が小さい為、浮遊ゲート間の容量結合による閾値上昇の影響は大きい。
【0019】
このような課題に対して例えば特表2005-530362、特開2003-188287,特開2002-57228等では隣接した浮遊ゲート間を導電層でシールドする事で改善する方法が開示されている。前記特許はNAND型のフラッシュメモリに関しての改善方法を述べているが、NOR型のフラッシュメモリセルに関しても同様に対策が可能である。すなわち浮遊ゲートと浮遊ゲートの間に制御ゲートを埋設して浮遊ゲート間をシールドしてやればよい。
【特許文献1】特表2005−530362号公報
【特許文献2】特開2003−188287号公報
【特許文献3】特開2002−57228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者は、上記従来技術について、次に説明する課題があることを見出した。
【0021】
すなわち、従来技術では、図13Aおよび図13Aの部分拡大図である13Bに示すように、隣接する第2絶縁膜に挟まれた制御ゲート電極の部分に空乏層130が発生して、上記制御ゲート電極の部分内の空乏層130により、浮遊ゲート電極間の容量Cfgが増大してしまうという課題があることを発見した。
【0022】
そこで、本発明の課題は、浮遊ゲート電極間に位置する制御ゲート電極の部分の空乏化を大幅に抑制できて、読み出しエラーが起こりにくい不揮発性半導体記憶装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、この発明の不揮発性半導体装置は、
一方向に互いに間隔をおいて配列された複数のメモリセルを備え、
上記各メモリセルは、
半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、
上記第1絶縁膜上に形成された浮遊ゲート電極と、
上記一方向と、上記半導体基板の上面に垂直な方向とを含む断面において、上記浮遊ゲート電極の上面および側面に形成された第2絶縁膜と
を備え、
上記複数のメモリセルは、
上記断面において、上記各第2絶縁膜の上面および側面に、共通の制御ゲート電極を備え、
上記一方向に隣接する上記メモリセルの上記浮遊ゲート電極の側面に形成されて上記一方向に互いに対向している上記第2絶縁膜の部分の間に位置する上記制御ゲート電極の部分は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されていることを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、上記一方向に互いに対向している上記第2絶縁膜の部分の間に位置する上記制御ゲート電極の部分は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されているから、浮遊ゲート電極間に位置する制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できて、情報のミスリードの可能性を低くすることができる。
【0025】
また、一実施形態では、上記制御ゲート電極の上記部分の不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下である。
【0026】
上記実施形態によれば、上記多結晶シリコンの不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下であるから、微細化されたメモリセルサイズにおいて、浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を、格段に抑制することができる。そして、隣接セルの閾値に影響しないメモリセルを提供でき、読み出しエラーのない微細化に適したフラッシュメモリを提供することができる。
【0027】
また、一実施形態では、上記浮遊ゲート電極は、燐または砒素を含んでいる。
【0028】
上記実施形態によれば、読み出しエラーを抑制できる。
【0029】
また、本発明の不揮発性半導体装置の製造方法は、
半導体基板上に、互いに一方向に離間する複数の活性領域を作成すると共に、上記各活性領域上に第1絶縁膜を形成し、
上記第1絶縁膜上に浮遊ゲート電極を形成した後、上記浮遊ゲートの上面および側面に、第2絶縁膜を形成し、
上記第2絶縁膜の上面および側面に、多結晶シリコン膜を堆積した後、上記一方向において、隣接する上記第2絶縁膜の間の領域に、不純物を注入して、その後、熱処理を行うことを特徴としている。
【0030】
本発明によれば、浮遊ゲート電極間に位置する制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できて、情報のミスリードの可能性を低くすることができる。
【0031】
また、一実施形態では、上記隣接する第2絶縁膜の間の領域に、注入される不純物の体積濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下である。
【0032】
上記実施形態によれば、微細化されたメモリセルサイズにおいて、浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を、格段に抑制することができる。そして、隣接セルの閾値に影響しないメモリセルを提供でき、読み出しエラーのない微細化に適したフラッシュメモリを提供することができる。
【0033】
また、一実施形態では、上記浮遊ゲート電極は、燐またはヒ素がドープされた多結晶シリコン膜であることを特徴とする。
【0034】
上記実施形態によれば、読み出しエラーを抑制できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の不揮発性半導体装置によれば、制御ゲート電極の第2絶縁膜の側面に一方向に重なる部分が、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されているから、浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できて、読み出しを正確に行うことができる。
【0036】
また、一実施形態の不揮発性半導体装置によれば、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の不純物濃度が、1020/cm3であるから、制御ゲート電極中に広がる空乏層幅Wを、(2εSiε0(2ΦF)/qNA)1/2より約3.3nmにすることができて、浮遊ゲート電極間の容量結合比Cfg/Ctotを、約0.0025と、従来の1/10以下まで急激に小さくすることができる。したがって、浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値の上昇を、従来の1/10以下に急激に小さくすることができる。
【0037】
したがって、従来とメモリセルの構造を同一にして、レイアウト、製造プロセスを大幅に変えることなく、隣接セルの浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値変動を急激に小さくする事ができ、隣接セルの閾値の干渉を受けないメモリセルトランジタを実現することができる。そして、特に、微細化された大容量のフラッシュメモリにおいて、多値のフラッシュメモリの性能を、格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態の不揮発性半導体記憶装置であるNOR型のフラッシュメモリを複数配列してなるNOR型フラッシュメモリセルアレイの平面図である。
【0040】
このフラッシュメモリセルアレイは、複数の活性領域1と、複数のメモリセルの制御ゲート電極2とを有している。上記活性領域1は、ストライプ状に配列されており、制御ゲート電極2は、活性領域1に直交するように配列されている。上記活性領域1上かつ制御ゲート電極2下には、ビット毎に独立した浮遊ゲート電極が配置されており、ソース/ドレインは、制御ゲート電極2に対して自己整合的に形成されている。尚、図1において、参照番号4は、メモリセルであり、参照番号5は、ドレインコンタクトである。このフラッシュメモリセルアレイが有する複数のメモリセル4は、制御ゲート電極2の延在方向である一方向に、互いに間隔をおくように配置されている。
【0041】
図2Aおよび図2Bは、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。詳しくは、図2Aは、図1のAA’線断面図であり、図2Bは、図1のBB’線断面図である。尚、図2Aおよび図2Bにおいて、参照番号15は、ビット線を示している。尚、図2Aにおいて、矢印Aは、上記一方向を示している。
【0042】
図2Aに示すように、半導体基板の一例としてのシリコン基板7の上面に、トレンチ8が形成され、トレンチ8に、酸化膜を埋込形成することにより、素子分離領域9が、形成されている。素子分離領域9は、活性領域1を分離している。
【0043】
各メモリセル4は、第1絶縁膜としてのトンネル酸化膜19、浮遊ゲート電極10、および、第2絶縁膜としてのONO膜22を有し、上記一方向に配列された複数のメモリセル4は、共通の制御ゲート電極2を有している。
【0044】
トンネル酸化膜19は、活性領域1上に形成され、浮遊ゲート電極10は、トンネル酸化膜19の上を覆うように形成されている。また、ONO膜22は、図2Aに示す断面、すなわち、上記一方向およびシリコン基板7の上面に垂直な方向を含む断面(上記一方向および不揮発性半導体記憶装置の積層方向を含む断面)において、浮遊ゲート電極10の上面および側面に、浮遊ゲート電極10の上面および側面に沿うように形成されている。また、制御ゲート電極2は、図2Aに示す断面において、各ONO膜22の上面および側面に、ONO膜22を覆うように形成されている。
【0045】
上記制御ゲート電極2上に、層間膜27が位置し、層間膜27上に、メタル配線であるビット線15が位置している。また、図2Bに11で示すソース、および、図2Bに13で示すドレインは、制御ゲート電極12に対して自己整合的に形成されたN+拡散層からなっている。上記ソース11およびドレイン13は、ドレイン13側に設けられたドレインコンタクト5を介してビット線15に接続されている。また、上記制御ゲート電極12は、図示しないワード線に接続されている。
【0046】
図2Aを参照して、上記一方向に隣接するメモリセル4の浮遊ゲート電極10の側面に形成されて上記一方向に互いに対向しているONO膜22の部分25の間に位置する制御ゲート電極2の部分24は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されている。他の言葉で言うと、制御ゲート電極2のONO層11の側面に上記一方向に重なる部分24は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されている。
【0047】
上記制御ゲート電極2の部分24において、多結晶シリコンの不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下になっている。また、上記浮遊ゲート電極10は、燐または砒素を含んでいる。
【0048】
図3A〜図7Bは、本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。以下、図3A〜図7Bを用いて、本発明の不揮発性半導体装置の製造方法の一実施形態を説明する。尚、図3A〜図7Bにおいて、AA’は、図1において、AA’線断面図に相当する図であることを示し、BB’は、図1において、BB’線断面図に相当する図であることを示すものである。
【0049】
先ず、図3Aに示すように、P型シリコン基板7上に、活性領域1および素子分離領域9を形成する。例えば、シリコン基板1上に、15nm程度の酸化膜30と、150nm程度のSiN膜31とを順次堆積し、フォトリソグラフィによりフォトレジストをストライプ状に残し、上記SiN膜31と、酸化膜30とを、フォトレジストをマスクにしてドライエッチで順次エッチングし、さらに、シリコン基板1をエッチングし、深さ約200nm程度のシャロートレンチ8を形成する。
【0050】
次に、HDP膜を堆積し(例えば、500nm)、CMPなどでSiN膜31をストッパーにしてHDP膜を研磨する。その後、SiN膜31を例えば燐酸等で除去し、活性領域1と、素子分離領域9とを形成する。このようにして、幅が200nm程度の活性領域1、および、幅が150nm程度であると共に、膜厚が350nm程度である素子分離領域9を作成する。尚、この時点において、図3Bにおいては、酸化膜30、SiN膜31が、順次形成された様子が示される。
【0051】
次に、素子分離領域9の直下及びシリコン基板1表面のP型濃度を上げるため、30keVのエネルギーのホウ素(B)を5E12/cm2注入すると共に、100keVのエネルギーのホウ素(B)を5E12/cm2注入して、熱処理を加えてドライブする。この後、シリコン基板7上に残留している酸化膜30をウェットエッチ等で除去し、図4Aに示すように、活性領域1上にトンネル酸化膜となる10nm程度の熱酸化膜40を形成し、更に、その上に浮遊ゲート電極となるリンなどがドープされた多結晶シリコン膜41(例えば膜厚:150nm)を堆積する。その後、CMPなどで多結晶シリコンを、素子分離間に埋め込む。ここで、例えば、浮遊ゲート電極の幅を、約250nm程度に設定し、浮遊ゲート電極間のスペースを、100nm程度に設定する。尚、この時点において、図4Bにおいては、熱酸化膜40、多結晶シリコン膜41が、順次形成された様子が示される。
【0052】
続いて、図5Aに示すように、ウェットエッチ法等を用いて多結晶シリコンの間に埋め込まれた酸化膜をエッチングした後、ONO膜22を形成する。酸化膜をエッチングする目的は、ゲート容量比をなるべく大きくするためである。また、酸化膜をエッチングする別の目的は、多結晶シリコンの間をエッチングしたことにより、隣接した浮遊ゲート電極間に生成された溝の部分に、後に制御ゲート電極の一部分を構成する多結晶シリコンを埋め込むための部分を形成するためである。このため、ウェットエッチ量は、浮遊ゲート電極41の側面がなるべく露出する様に実施される必要がある。尚、この時点において、図5Bにおいては、多結晶シリコン膜41、ONO膜22が、順次形成された様子が示される。
【0053】
本実施形態では、基板に垂直な方向において、酸化膜の除去量は、150nmとした。また、ONO膜は、酸化膜、SiN膜、酸化膜をこの順に積層してなる膜であり、各膜の膜厚は、例えば、6nm/5nm/7nmである。ONO膜の生成方法としては、例えば、多結晶シリコンの表面を熱酸化した後、CVD法などでSiN膜を堆積し、その後HTO膜を堆積する方法がある。
【0054】
次に、ONO膜22上に、制御ゲート電極となる多結晶シリコン膜(例えば、200nm)を堆積する。この工程により、浮遊ゲート電極41間に、制御ゲート電極となる多結晶シリコン膜61の一部が埋設される。その後、燐(P)あるいは砒素(As)〜等の不純物を注入し、熱処理を施す。ここで不純物の注入量は、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極となる多結晶シリコンの体積濃度が、1020〜1021/cm3となる様に設定する。本実施事例では、Pを、20KeV、3.5E15/cm2で注入した。
【0055】
浮遊ゲート電極41間に埋設された制御ゲート電極となる多結晶シリコン61の膜厚は、350nmであり、体積濃度は、1020/cm3である。この後、熱処理を行う。熱処理は、注入した不純物が浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極となる多結晶シリコンの底部まで十分拡散するように行われる。本実施形態では、熱処理は、900℃で30分間継続して行った。
【0056】
尚、別の手法として、多結晶シリコンは、燐(P)あるいは砒素(As)等の不純物が導入されたドープドシリコンを堆積して作成しても良い。この場合、例えば、LPCVD炉を用い、原料ガスとして、モノシラン(SiH4)、フォスフィン(PH3)を主に用い、成膜温度を、約600℃にすると共に、膜中リン濃度を、1020/cm3に設定して、膜厚200nmのドープドシリコンを作成する(図示せず)。
【0057】
その後、活性領域1と、垂直方向にフォトリソグラフィでフォトレジストをストライプ状に残し、フォトレジストをマスクにして多結晶シリコン、ONO膜、浮遊ゲート電極を連続的にドライエッチ等でエッチングすることで、図7A、図7Bに示す制御ゲート電極12を形成する。
【0058】
このとき、浮遊ゲート電極10は、制御ゲート電極12の下にメモリセル毎に分離されて形成される。続いて、砒素(As)を注入し(例えば、15KeV、1E15/cm2)、RTA等の熱処理(例えば950℃、10秒)を施すことで、ドレイン、ソースを形成する。その後、HTO膜等を堆積、エッチバックする事でサイドウォール70(図7B参照)を形成し、Coサリサイドをソース11/ドレイン13上及び制御ゲート電極12上に形成する。次に、層間膜27を堆積しCMPなどで平坦化した後に、ドレイン上にコンタクトプラグを形成する。その後、メタル配線を、制御ゲート電極と垂直方向にパターニングし、ビット線15となるメタル配線を形成する。このようにして、図7A、図7Bに示す不揮発性半導体装置を形成する。
【0059】
上記実施形態のように、隣接した浮遊ゲート電極10間に、制御ゲート電極2の一部を埋設形成し、かつ、その制御ゲート電極2の一部(制御ゲート電極2におけるONO層22に上記一方向に重なる部分)を、不純物がドーピングされた多結晶シリコンとすれば、従来技術で問題になった浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化を大幅に抑制できる。
【0060】
そして、特に、上記制御ゲート電極2の一部の不純物濃度を、1020/cm3〜1021/cm3にすれば、従来技術で問題になった浮遊ゲート電極間の制御ゲート電極の空乏化の抑制の効果を格段に大きくすることができる。
【0061】
以下、このことについて、本発明者が見出した現象に基づいて詳しく説明する。
【0062】
浮遊ゲート電極は、制御ゲート電極、基板、ソース/ドレイン、および、隣接セルの浮遊ゲート電極と容量結合している。
【0063】
図8は、上記容量結合の様子を、等価回路で示したものである。
【0064】
浮遊ゲート電極の電位は、浮遊ゲート電極と制御ゲート電極間の容量Cono、基板間の容量Cch、ソース間の容量Cs、ドレイン間の容量Cd、隣接セルの浮遊ゲート電極との容量Cfg、制御ゲート電極の電位Vg、基板の電位Vsub、ソースの電位Vs、ドレインの電位Vd、および、隣接メモリセルの浮遊ゲート電極の電位Vfg‘およびVfg’’により決められる。
【0065】
具体的には、Vfg = (Cono/Ctot)・Vg+(Cch/Ctot)Vsub+(Cd/Ctot)・Vd+(Cs/Ctot)・Vs+(Cfg/Ctot)・Vfg’+(Cfg/Cot)・Vfg’’+Qfg/Ctotとなる。
【0066】
ここで、Ctot=Cono+Cch+Cd+Cs+2・Cfgであり、Qfgは浮遊ゲート電極中の電荷量である。
【0067】
メモリセルを微細化していくと、浮遊ゲート電極間の容量Cfgが大きくなる。浮遊ゲート電極間の容量が大きくなった場合、隣接セルの閾値が容量結合の影響を受けて変動する。
【0068】
例えば、隣接した3つのメモリセルが消去状態であり、同じ閾値だった場合を考える。この状態で左右2つのセルを書き込み状態にすると、隣接した浮遊ゲート電極に電子が注入され浮遊ゲート電極の電位が上がる。この時に浮遊ゲート電極間の容量Cfgが大きいと、隣接した浮遊ゲート電極の電位の影響を受けVfgが上昇する。すなわち、メモリセルの閾値が上昇してしまう。
【0069】
このような隣接セルとの浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値上昇により、リファレンスセルとの電流差が変化し、リードエラーが生じる。特に、多値フラッシュメモリでは、リファレンスレベルと消去状態の閾値差が小さいため、浮遊ゲート電極間の容量結合による閾値上昇の影響が大きくなる。
【0070】
このことについて詳しく説明する。制御ゲート電極の材料として、多結晶シリコンを用い、多結晶シリコンへの不純物のドーピングを、ソース/ドレインへの不純物注入と同時に行い、その後の熱処理により不純物を活性化させる場合、メモリセルを微細化する際には、セルトランジスタのショートチャネル効果を抑制する要求から、ソース/ドレインのXjを、浅く形成する必要がある。
【0071】
すなわち、不純物のドーピングは、低ドーズ、低エネルギーで行い、熱処理は、RTA等を用いる事で不純物の熱拡散を抑制する様にする必要がある。このため、制御ゲート電極中に導入される不純物のドーズ量は少なく、また、多結晶シリコン中に注入された不純物の熱拡散も小さくする必要がある。
【0072】
さらに、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極部の底部は高アスペクトになっているから、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の底部の不純物濃度が低くなる。
【0073】
このため、浮遊ゲート電極間に制御ゲート電極間を埋設して浮遊ゲート電極間の電位をシールドしようとしても、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の下部は、不純物濃度が低いため、多結晶シリコン中に空乏層が発生して、この多結晶シリコン中の空乏層により、浮遊ゲート電極間の容量Cfgが増大してしまう。
【0074】
このことを分かり易く説明するため、0.13μmルールのNOR型のメモリセルについて、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の底部の不純物濃度が1018/cm3である場合について、隣接セルの浮遊ゲート電極間容量結合による閾値変動を、具体的に、数値を用いて説明する。
【0075】
図8を参照して、各種容量を、実際の設定値付近の値、具体的には、浮遊ゲート電極制御ゲート電極間の容量Conoを、約0.18fF、浮遊ゲート電極ドレイン間の容量Cdを、約0.008fF、浮遊ゲート電極ソース間の容量Csを、約0.008fF、浮遊ゲート電極基板間の容量Cchを、0.08fFとする。
【0076】
この場合、不純物濃度NAが1018/cm3である制御ゲート電極中に広がる空乏層幅Wは、(2εSiε0(2ΦF)/qNA)1/2により約33nmとなり、この空乏層による浮遊ゲート電極間の容量Cfgは、約0.007fFになる。したがって、浮遊ゲート電極間の容量結合比Cfg/Ctotは、約0.025であるから、消去状態のメモリセルの閾値を3Vとし、この状態から左右に隣接した2つのメモリセルの閾値を3Vから6Vに上げた場合について考えると、閾値の上昇分ΔVthは、ΔVth=(6−3)×0.025×2=0.15Vと非常に大きな値になる。
【0077】
したがって、従来と比較して、読み出しエラーが改善されてはいるが、いまだに、読み出しエラーが起こる可能性が存在することになる。
【0078】
不純物濃度を、1020/cm3以上の濃度にすれば、読み出しエラーの可能性が非常に低い不揮発性半導体装置を構築することができる理由は、次のように説明することができる。
【0079】
図9に、上記制御ゲート電極の一部の多結晶シリコンの不純物濃度と、左右に隣接した2つのメモリセルの閾値を3Vから6Vに上げた場合における、メモリセルの閾値の上昇分(ΔVth)の関係を示す。
【0080】
尚、図9において、ΔVthは、上記容量Conoを、0.18fF、浮遊ゲート電極ドレイン間の上記容量Cdを、0.008fF、浮遊ゲート電極ソース間の上記容量Csを、0.008fF、浮遊ゲート電極基板間の上記容量Cchを、0.08fFとして、(2εSiε0(2ΦF)/qNA)1/2を用いて計算した。
【0081】
図9に示すように、不純物濃度を、1020/cm3以上の濃度にすれば、ΔVthを、0.015V以下にでき、不純物濃度が1018/cm3程度である装置と比して、ΔVthを、1/10以下に急激に小さくすることができる。
【0082】
したがって、本実施形態のように、上記制御ゲート電極2の一部(制御ゲート電極2におけるONO層22に上記一方向に重なる部分)の不純物濃度を、1020/cm3〜1021/cm3にすれば、隣接セルの閾値に殆ど影響しないメモリセルを構築することができて、読み出しエラーの可能性が非常に低くて、微細化に適した不揮発性半導体装置(例えば、フラッシュメモリ)を構築することができるのである。
【0083】
尚、上記実施形態では、不揮発性半導体装置が、NOR型のフラッシュメモリであったが、この発明では、不揮発性半導体装置は、NAND型フラッシュメモリ、DINOR型フラッシュメモリ等、NOR型のフラッシュメモリ以外の不揮発性半導体装置であっても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、不純物の注入量は、浮遊ゲート電極10間に埋設された制御ゲート電極2の多結晶シリコンの体積濃度が、1020〜1021/cm3となる様に設定されたが、この発明では、不純物の注入量は、浮遊ゲート電極間に埋設された制御ゲート電極の部分の多結晶シリコンの体積濃度が、1020/cm3よりも小さい値であっても良いし、1021/cm3よりも大きい値であっても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、浮遊ゲート電極10間に埋設された制御ゲート電極2に、燐(P)を注入したが、燐の代わりに砒素(As)を注入しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態の不揮発性半導体記憶装置であるNOR型のフラッシュメモリを複数配列してなるNOR型フラッシュメモリセルアレイの平面図である。
【図2A】フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図2B】フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図3A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図3B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図4A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図4B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図5A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図5B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図6A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図6B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図7A】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図7B】本発明の一実施形態の不揮発性半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図8】容量結合の様子を、等価回路で示したものである。
【図9】制御ゲート電極の一部の多結晶シリコンの不純物濃度と、左右に隣接した2つのメモリセルの閾値を3Vから6Vに上げた場合における、メモリセルの閾値の上昇分(ΔVth)の関係を示す。
【図10】従来のNOR型フラッシュメモリセルアレイを模式的に示す平面図である。
【図11A】図10のAA’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図11B】図10のBB’線断面図であり、フラッシュメモリセルアレイの模式断面図である。
【図12A】書き込み/消去状態のメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【図12B】多値を記録できるフラッシュメモリの閾値分布の一例、正確には、4値を格納するメモリセルの閾値分布の一例を示す図である。
【図13A】多結晶シリコン中での空乏層の発生を説明する図である。
【図13B】多結晶シリコン中での空乏層の発生を説明する図である。
【符号の説明】
【0087】
1 活性領域
2 制御ゲート電極
4 メモリセル
5 ドレインコンタクト
7 シリコン基板
8 トレンチ
9 素子分離領域
10 浮遊ゲート電極
11 ソース
13 ドレイン
15 ビット線
19 トンネル酸化膜
22 ONO膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に互いに間隔をおいて配列された複数のメモリセルを備え、
上記各メモリセルは、
半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、
上記第1絶縁膜上に形成された浮遊ゲート電極と、
上記一方向と、上記半導体基板の上面に垂直な方向とを含む断面において、上記浮遊ゲート電極の上面および側面に形成された第2絶縁膜と
を備え、
上記複数のメモリセルは、
上記断面において、上記各第2絶縁膜の上面および側面に、共通の制御ゲート電極を備え、
上記一方向に隣接する上記メモリセルの上記浮遊ゲート電極の側面に形成されて上記一方向に互いに対向している上記第2絶縁膜の部分の間に位置する上記制御ゲート電極の部分は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されていることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
上記制御電極の上記部分の不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下である事を特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項1に記載された不揮発性半導体記憶装置において、
上記浮遊ゲート電極は、燐または砒素を含んでいることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
半導体基板上に、互いに一方向に離間する複数の活性領域を作成すると共に、上記各活性領域上に第1絶縁膜を形成し、
上記第1絶縁膜上に浮遊ゲート電極を形成した後、上記浮遊ゲートの上面および側面に、第2絶縁膜を形成し、
上記第2絶縁膜の上面および側面に、多結晶シリコン膜を堆積した後、上記一方向において、隣接する上記第2絶縁膜の間の領域に、不純物を注入して、その後、熱処理を行うことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の不揮発性半導体記憶装置の製造方法において、
上記隣接する第2絶縁膜の間の領域に、注入される不純物の体積濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下であることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の不揮発性半導体記憶装置の製造方法において、
上記浮遊ゲート電極は、燐またはヒ素がドープされた多結晶シリコン膜であることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【請求項1】
一方向に互いに間隔をおいて配列された複数のメモリセルを備え、
上記各メモリセルは、
半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、
上記第1絶縁膜上に形成された浮遊ゲート電極と、
上記一方向と、上記半導体基板の上面に垂直な方向とを含む断面において、上記浮遊ゲート電極の上面および側面に形成された第2絶縁膜と
を備え、
上記複数のメモリセルは、
上記断面において、上記各第2絶縁膜の上面および側面に、共通の制御ゲート電極を備え、
上記一方向に隣接する上記メモリセルの上記浮遊ゲート電極の側面に形成されて上記一方向に互いに対向している上記第2絶縁膜の部分の間に位置する上記制御ゲート電極の部分は、不純物がドープされた多結晶シリコンで形成されていることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
上記制御電極の上記部分の不純物濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下である事を特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項1に記載された不揮発性半導体記憶装置において、
上記浮遊ゲート電極は、燐または砒素を含んでいることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
半導体基板上に、互いに一方向に離間する複数の活性領域を作成すると共に、上記各活性領域上に第1絶縁膜を形成し、
上記第1絶縁膜上に浮遊ゲート電極を形成した後、上記浮遊ゲートの上面および側面に、第2絶縁膜を形成し、
上記第2絶縁膜の上面および側面に、多結晶シリコン膜を堆積した後、上記一方向において、隣接する上記第2絶縁膜の間の領域に、不純物を注入して、その後、熱処理を行うことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の不揮発性半導体記憶装置の製造方法において、
上記隣接する第2絶縁膜の間の領域に、注入される不純物の体積濃度は、1020/cm3以上かつ1021/cm3以下であることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の不揮発性半導体記憶装置の製造方法において、
上記浮遊ゲート電極は、燐またはヒ素がドープされた多結晶シリコン膜であることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【公開番号】特開2008−205187(P2008−205187A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39564(P2007−39564)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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