説明

位置合わせ装置、基板貼り合わせ装置および積層半導体装置の製造方法

【課題】振動の影響を受けることなく位置合わせする。
【解決手段】定盤から支持されて、第一基板を保持する第一ステージと、定盤から支持されて、第一ステージに保持された第一基板に対向させて第二基板を保持する第二ステージと、第二ステージまたは第二ステージに保持された第二基板を観察する第一顕微鏡と、第一ステージまたは第一ステージに保持された第一基板を観察する第二顕微鏡と、定盤から第一ステージへの振動伝播を抑制する第一除振部とを備え、第一顕微鏡および第二顕微鏡による観察から検出した相対位置に基づいて第一ステージ及び第二ステージの少なくとも一方を移動させることにより、第二ステージに保持された第二基板と、第一ステージに保持された第一基板とを互いに位置合わせする位置合わせする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置合わせ装置、基板貼り合わせ装置および積層半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の基板を位置合わせする位置合わせ装置がある(特許文献1参照)。当該位置合わせ装置において、一方の基板が保持されたステージと他方の基板が保持されたステージとの相対位置は干渉計により計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−251972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記位置合わせ装置において一方または他方のステージは移動するので、当該移動に伴う振動によってステージの相対位置が正確に測れないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の第一態様として、定盤から支持されて、第一基板を保持する第一ステージと、定盤から支持されて、第一ステージに保持された第一基板に対向させて第二基板を保持する第二ステージと、第二ステージまたは第二ステージに保持された第二基板を観察する第一顕微鏡と、第一ステージまたは第一ステージに保持された第一基板を観察する第二顕微鏡と、定盤から第一ステージへの振動伝播を抑制する第一除振部とを備え、第一顕微鏡および第二顕微鏡による観察から検出した相対位置に基づいて第一ステージ及び第二ステージの少なくとも一方を移動させることにより、第二ステージに保持された第二基板と、第一ステージに保持された第一基板とを互いに位置合わせする位置合わせ装置が提供される。
【0006】
また、本発明の第二態様として、上記の位置合わせ装置を備える基板貼り合わせ装置が提供される。
【0007】
また、本発明の第三態様として、定盤から支持されて、複数の半導体装置が形成された第一基板を、前記定盤からの振動伝播を抑制する第一除振部を介して配された第一ステージに保持するステップと、前記定盤から支持されて、前記第一ステージに保持された前記第一基板に対向させて、複数の半導体素子が形成された第二基板を第二ステージ保持するステップと、前記第二ステージまたは前記第二ステージに保持された前記第二基板を第一顕微鏡で観察するステップと、前記第一ステージまたは前記第一ステージに保持された前記第一基板を第二顕微鏡で観察するステップと、前記第一顕微鏡および前記第二顕微鏡による観察から検出した相対位置に基づいて前記第一ステージ及び前記第二ステージの少なくとも一方を移動させることにより、前記第二ステージに保持された前記第二基板と、前記第一ステージに保持された前記第一基板とを互いに位置合わせするステップと、位置合わせした前記第一基板と前記第二基板とを接合して積層基板を生成するステップと、前記積層基板を個片化するステップとを備える積層半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】基板貼り合わせ装置100の平面図である。
【図2】アライナ160の縦断面図である。
【図3】アライナ160の縦断面図である。
【図4】アライナ160の縦断面図である。
【図5】加圧装置130の縦断面図である。
【図6】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図7】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図8】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図9】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図10】微動部200の縦断面図である。
【図11】アライナ160の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、基板貼り合わせ装置100の全体的な構造を模式的に示す平面図である。基板貼り合わせ装置100は、筐体110と、筐体110に収容された環境ローダ120、大気ローダ121、加圧装置130、ホルダストッカ140、プリアライナ150、アライナ160およびロードロック129を備える。更に、筐体110の外面には、複数のFOUP(Fro nt Opening Unified Pod)111が装着される。
【0012】
FOUP111は、筐体110に対して個別に取り外しでき、各々が複数の基板102を収容する。FOUP111を用いることにより、複数の基板102を一括して基板貼り合わせ装置100に装填できる。さらにFOUP111は、基板102を貼り合わせて作製した積層基板104を回収して一括して搬出できる。
【0013】
ここでいう基板102は、シリコン単結晶基板、化合物半導体基板等の半導体基板の他、ガラス基板等でもあり得る。貼り合わせに供される基板102は、複数の素子を含む場合、それ自体が既に複数の基板を貼り合わせた積層基板104である場合がある。
【0014】
筐体110は、環境ローダ120、加圧装置130、ホルダストッカ140、プリアライナ150およびアライナ160を包囲する。筐体110の内側は大気と連通して大気環境にある。
【0015】
大気ローダ121は、筐体110の内部においてFOUP111に対向して配される。大気ローダ121は、基板102を搭載するフォーク123を有して、FOUP111に沿って配されたガイドレール125に沿って移動しつつ基板102を搬送する。
【0016】
プリアライナ150は、大気ローダ121の近傍に配され、位置合わせ精度よりも処理速度を重視した位置合わせ機構を有する。プリアライナ150は、大気ローダ121に対する基板102の搭載位置のばらつきを、予め定められた範囲に収まるように調整する。これにより、後述するアライナ160における位置合わせに要する時間を短縮する。
【0017】
ロードロック129は、大気ローダ121を含む大気環境と、真空環境に配された環境ローダ120との間に位置して、大気環境側および真空環境側にそれぞれ面したゲートバルブ212、214を有する。これにより、真空環境の真空を破ることなく、大気環境および真空環境の間で基板102の受け渡しができる。
【0018】
大気ローダ121は、プリアライナ150で搭載位置が調整された基板102をロードロック129に搬入する。さらに大気ローダ121は、後述するアライナ160および加圧装置130で製造された積層基板104をロードロック129から搬出する。
【0019】
環境ローダ120は、ロードロック129に対して、大気ローダ121と反対側に配される、基板102、積層基板104、基板ホルダ108のいずれかを搬送する。環境ローダ120は、フォーク122、落下防止爪124およびフォールディングアーム126を有する。
【0020】
フォールディングアーム126は、一端においてフォーク122および落下防止爪124を支持する。フォールディングアーム126の他端は、筐体110に対して回転可能に支持される。フォールディングアーム126は、それ自体の屈曲と回転とを組み合わせて、フォーク122を任意の位置に移動する。
【0021】
フォーク122は、搭載した基板102または基板ホルダ108を吸着して保持する。これにより、フォーク122および落下防止爪124が上下反転した場合も、環境ローダ120は、基板102または基板ホルダ108をフォーク122の下側に保持する。
【0022】
落下防止爪124は、フォーク122が上下反転した場合に、フォーク122に保持された基板102または基板ホルダ108の下方に差し出される。これにより、基板102または基板ホルダ108の落下を防止する。フォーク122が反転しない場合、落下防止爪124は、フォーク122上の基板102および基板ホルダ108と干渉しない位置まで退避する。
【0023】
環境ローダ120の周囲には、複数の加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160が配される。隣接する加圧装置130、ホルダストッカ140、アライナ160、ロードロック129の間は、気密壁112により気密に封じられる。気密壁112の内側を排気することにより、加圧装置130およびアライナ160は真空環境で稼働する。
【0024】
加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160は、環境ローダ120に対してそれぞれ対面して配される。これにより、環境ローダ120は、ロードロック129から取り出した基板102を、加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160のいずれに対しても搬入できる。また、環境ローダ120は、加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160から搬出した基板102および基板ホルダ108をロードロック129に搬入できる。
【0025】
ホルダストッカ140は、基板102を保持する基板ホルダ108を複数収容して待機させる。基板ホルダ108は、環境ローダ120により1枚ずつ取り出され、それぞれが基板102を一枚ずつ保持する。ロードロック129に対して環境ローダ120側の真空環境において、基板ホルダ108は基板102と一体的に取り扱われる。これにより、薄く脆弱な基板102を保護して基板102の取り扱いを容易にする。
【0026】
基板ホルダ108は、積層基板104が真空環境から搬出される場合に、積層基板104から分離されてホルダストッカ140に戻される。これにより、少なくとも基板貼り合わせ装置100が稼働している期間は、基板ホルダ108は真空環境に留まる。
【0027】
アライナ160は、それぞれが基板ホルダ108に保持された一対の基板102を相互に位置合わせした後に重ね合わせる。アライナ160の位置合わせ精度は高く、例えば、素子が形成された半導体基板を位置合わせする場合にはサブミクロンレベルの精度が求められる。
【0028】
加圧装置130は、アライナ160において位置合わせして重ね合わされた一対の基板102を加圧して、基板102どうしを接着する。これにより基板102は恒久的に積層された積層基板104となる。作製された積層基板104は、環境ローダ120によりロードロック129に搬送され、更に、大気ローダ121によりロードロック129から搬出されてFOUP111に回収される。さらに積層基板104が個片化されて積層半導体装置が製造される。
【0029】
図2は、アライナ160の構造と動作を示す模式的な縦断面図である。アライナ160は、枠体162と、枠体162の内側に配された粗動部180、下ステージ170および上ステージ190とを備える。
【0030】
枠体162は、それぞれが水平で互いに平行な底板161および天板165と、底板161および天板165を結合する複数の支柱163とを有する。底板161、支柱163および天板165はそれぞれ高い剛性を有して、アライナ160の動作に伴う反力が作用した場合も変形しない。
【0031】
底板161の上面には、粗動部180が載置される。粗動部180は、底板161に固定されたガイドレール182に案内されつつX方向に移動するX駆動部184と、X駆動部184の上でY方向に移動するY駆動部186とを有する。これにより、粗動部180は、XY平面上の任意の位置に向かって高速に移動する。
【0032】
Y駆動部186は、微動部200を搭載する。微動部200は、ベース部176、球面座420および下ステージ170と、複数の上下アクチュエータ702、703および水平アクチュエータ730とを有する。
【0033】
ベース部176は、Y駆動部186から支持されると共に、微動部200の他の部材を支持する。即ち、下ステージ170は、球面座420を介してベース部176上に支持される。下ステージ170は基板102および基板ホルダ108を保持する。なお、下ステージ170の搭載面は、例えば真空吸着、静電吸着等による吸着機構を有して、搭載された基板ホルダ108を吸着して保持する。
【0034】
下ステージ170およびベース部176の間には、水平または垂直に配された複数のアクチュエータが配される。下ステージ170は、水平アクチュエータ730の動作によりX方向およびY方向に移動する。また、下ステージ170は、複数の水平アクチュエータ730を異なる動作量で動作させることにより、鉛直な軸の回りに回転する。
【0035】
更に、下ステージ170は、上下アクチュエータ702、703を動作させることにより昇降する。また更に、下ステージ170は、複数の上下アクチュエータ702、703の動作量を相互に変えることにより水平面に対する傾きも変化させる。図2の向きでは他のアクチュエータが見えていないが、アクチュエータが水平な向きに三つ設けられるとともに垂直な向きに三つ設けられることにより、下ステージ170は六自由度で移動することができる。
【0036】
このように、粗動部180は、下ステージ170を、迅速にX方向またはY方向に移動させる。さらに微動部200は、粗動部180を停止させた状態で、下ステージ170を精密に位置合わせする。
【0037】
顕微鏡171は、ベース部176に搭載されて、下ステージ170に対する相対位置が固定されている。これにより顕微鏡171は、微動部200と共にX方向およびY方向に移動する。顕微鏡171および下ステージ170の相対位置は予め正確に知ることができるので、下ステージ170に対向する上ステージ190の下ステージ170に対する相対位置を、顕微鏡171を用いて正確に検出できる。
【0038】
図示の状態では、上ステージ190に吸着された基板ホルダ108に保持された基板102のアライメントマークMの位置を正確に検出できる。図中では、三角形の記号によりアライメントマークMを表す。ただし、相対位置の検出は、アライメントマークMを用いるとは限らない。例えば、基板102に形成されたパターン等を指標に用いる場合もある。
【0039】
下ステージ170の側面には、ミラー324が配される。さらに下ステージ170の下面には、ミラー326が配される。Y駆動部186の上面にはミラー325が配される。
【0040】
アライナ160において、天板165の下面には、上ステージ190および顕微鏡191が懸下される。上ステージ190および顕微鏡191は、天板165に対して固定されて移動しない。
【0041】
上ステージ190は、水平で下向きの搭載面を有して、基板102を保持した基板ホルダ108を保持する。即ち、上ステージ190は、例えば真空吸着、静電吸着等による吸着機構を有して、基板ホルダ108を吸着して保持する。これにより、基板ホルダ108に吸着された基板102と、基板ホルダ108に保持された基板とを対向させることができる。上ステージ190の側面にはミラー322が固定される。さらに天板165にはミラー328が固定される。
【0042】
上ステージ190および顕微鏡191の相対位置は予め正確に知ることができるので、顕微鏡191を用いて、上ステージ190に対向する物の相対位置を正確に検出できる。この実施形態では、下ステージ170に搭載された基板ホルダ108に保持された基板102のアライメントマークMを観察して、基板ホルダ108に保持された基板102の位置を正確に検出できる。
【0043】
底板161の上面と支柱163の下端との間には、除振部340が配される。除振部340は、粗動部180等に生じた振動が底板161から支柱163に伝播することを抑制する。除振部340は、振動を能動的に抑制するアクチュエータ344、および、支柱163と当該アクチュエータ344とを連結する連結部342を有する。アクチュエータ344は、エアアクチュエータ、VCMまたはそれらの組み合わせであってよい。この場合に、アクチュエータ344は、フィードバック制御、フィードフォワード制御またはそれらの組み合わせにより制御されてよい。これにより、アクチュエータ344は、粗動部180による下ステージ170の移動の反作用として底板161に生じた揺動を打ち消す。
【0044】
天板165にはAFセンサ330が配される。AFセンサ330は、一方から複数の光線を照射し、他方のイメージセンサで受光する。これにより、光線を照射した対象物までの絶対的な距離、および、対象物の反射面の傾きを計測する。図2においてAFセンサ330は、基板102に光線を照射することにより当該基板102のZ方向の絶対位置および基板102の上面の傾きを計測する。
【0045】
支柱163にはレーザ干渉計323が配される。レーザ干渉計323は、ミラー322、324、325、326にレーザを照射して反射光を受光する。これにより、レーザ干渉計323は、固定されたミラー322、328に対する、移動側のミラー324、326の位置を干渉により計測する。よって、レーザ干渉計323は、上ステージ190に対する下ステージ170の相対位置を正確に計測することができる。
【0046】
なお、基板102をアライナ160内に搬送して上ステージ190に保持させる場合に、除振部340のアクチュエータ344を駆動して、上ステージ190を固定している天板165および支柱163を上げることにより上ステージ190に下ステージ170から離間する方向の補正力を作用させてもよい。これにより上下アクチュエータ702、703を小型化することができる。
【0047】
図3は、図2に続いてアライナ160の動作を示す図である。既に説明した通り、顕微鏡171、191により対向する基板102のアライメントマークMの位置を検出することにより、上ステージ190に保持された基板102に対する下ステージ170に保持された基板102の正確な相対位置を知ることができる。
【0048】
そこで、基板102相互の相対位置のずれが無くなるように粗動部180および微動部200を順次動作させることにより、一対の基板102を正対させることができる。この場合にアラインメントマークM同士を重なるように位置合わせてもよいし、これに代えて基板102上に形成された複数の半導体装置の相互のずれが統計的に小さくなるように、アラインメントマークMを互いに位置決めすることにより一対の基板102を位置合わせしてもよい。
【0049】
この場合にまずAFセンサ330等を用いてレーザ干渉計323を初期化する。その後に、レーザ干渉計323を用いて上ステージ190に対する下ステージ170の相対位置を計測して、上ステージ190に対して下ステージ170を位置決めする。この場合に、レーザ干渉計323は除振部340により除振された支柱163に配されており、かつ、上ステージ190も除振部340により除振された天板165に固定されているので、正確な位置決めをすることができる。
【0050】
図4は、図3に続いてアライナ160の動作を示す図である。図3に示す状態から、上下アクチュエータ702、703を同時に動作させて下ステージ170を上昇させる。これにより、一対の基板102を位置合わせした状態で積層して仮接合させることができる。この場合に、除振部340のアクチュエータ344を駆動して、上ステージ190を固定している天板165および支柱163を下げることにより一対の基板102を近接および当接させる補正力としてもよい。これにより上下アクチュエータ702、703を小型化することができる。
【0051】
図5は、加圧装置130単独の構造を模式的に示す縦断面図である。加圧装置130は、筐体132の底部から順次積層された定盤138および加熱プレート136と、筐体132の天井面から垂下された圧下部134および加熱プレート136とを有する。加熱プレート136の各々はヒータを内蔵する。また、筐体132の側面のひとつには装入口131が設けられる。
【0052】
加圧装置130には、既に位置合わせして重ね合わされた基板102が、基板ホルダ108および基板ホルダ108と共に搬入される。搬入された基板102および基板ホルダ108は、定盤138の加熱プレート136上面に載置される。
【0053】
加圧装置130は、加熱プレート136を昇温させると共に、圧下部134を降下させて上側の加熱プレート136を押し下げる。これにより、加熱プレート136の間に挟まれた基板102並びに基板ホルダ108および基板ホルダ108が加熱および加圧され、基板102は恒久的に接着される。
【0054】
図示は省いたが、加熱、加圧した後に、基板102を冷却する冷却部を加圧装置130に設けてもよい。これにより、室温までに至らなくても、ある程度冷却した基板102を搬出して、迅速にFOUP111に戻すことができる。
【0055】
図6、図7、図8および図9は、基板貼り合わせ装置100における基板102の状態の変遷を示す図である。以下、図6、図7、図8および図9を参照しつつ、図1に示す基板貼り合わせ装置100の動作を説明する。
【0056】
貼り合わせに供される基板102は、FOUP111に収容された状態で基板貼り合わせ装置100に装填される。基板貼り合わせ装置100においては、まず、大気ローダ121が、ホルダストッカ140から搬出した基板ホルダ108を、プリアライナ150に載置する。
【0057】
次に、大気ローダ121は、FOUP111から1枚ずつ搬出した基板102を、プリアライナ150に置かれた基板ホルダ108に搭載する。搭載された基板102は、静電吸着等により、基板ホルダ108に保持される。
【0058】
基板102を保持した基板ホルダ108は、少なくとも2組用意される。以下の工程において、基板102および基板ホルダ108が一体的に取り扱われる。こうして、図6に示すように、基板102を保持した基板ホルダ108が用意される。
【0059】
環境ローダ120は、基板102を保持した基板ホルダ108を、アライナ160に順次搬送する。例えば最初に搬送された基板ホルダ108は、環境ローダ120により反転されて上ステージ190に保持される。次に搬入された基板ホルダ108は、そのままの向きで下ステージ170に保持される。これら基板ホルダ108に保持された基板102は、図7に示すように、相互に位置合わせして仮接合される。
【0060】
ここで、アライナ160において仮接合された一対の基板102はまだ接着されていないので、図8に示すように、基板ホルダ108の溝109にクリップ204が嵌められる。これにより、アライナ160による位置合わせを保持したまま、位置合わせした基板102を挟んだ一対の基板ホルダ108を一体的に搬送できる。
【0061】
続いて、ローダ120は、仮接合された1対の基板102を挟んだ基板ホルダ108を、加圧装置130に搬送する。加圧装置130において加熱、加圧された1対の基板102は恒久的に接着され、図9に示すように、積層基板104となる。
【0062】
更に、環境ローダ120は、基板ホルダ108および積層基板104を分離する。基板ホルダ108はホルダストッカ140に搬送される。積層基板104は、FOUP111に回収される。
【0063】
図10は、微動部200の詳細な構造を示す断面図である。なお、図2から図4と共通の要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省く。微動部200は、ベース部176、上下アクチュエータ702、703、水平アクチュエータ730、下ステージ170、エアベアリング300および重力打消部400を備える。
【0064】
ベース部176は、エアベアリング300が形成するギャップ301を介してY駆動部186から支持される。エアベアリング300は、エアベアリング駆動部321および流体室310を含む。
【0065】
エアベアリング駆動部321は、ベース部176に搭載される。流体室310は、ベース部176の下面に、Y駆動部186に向かって開口して形成される。流体室310には、エアベアリング駆動部321から空気、窒素ガス等の作動流体が供給される。これにより、Y駆動部186の上面とベース部176の下面との間に作動流体の層が形成され、Y駆動部186およびベース部176は直接に摺動しなくなる。従って、ベース部176は、Y駆動部186上を極めて円滑に移動する。
【0066】
下ステージ170は、反射鏡178およびテーブル部179を上面に有する。反射鏡178は、微動部200の外部に固定された干渉計から出射されたレーザ光を反射する。これにより、下ステージ170の正確な位置および移動量を検出できる。テーブル部179は、真空吸着、静電吸着等による吸着機構を有して、搭載された基板ホルダ108を保持する。
【0067】
重力打消部400は、球面座420を介して、下ステージ170を下方から支持する。重力打消部400は、下ステージ170の昇降を検出して、下ステージ170およびその搭載物の重量を打ち消すように重力方向に伸縮する。これにより、下ステージ170を移動させる場合の慣性を抑制して正確な位置合わせができる。
【0068】
球面座420は、下ステージ170を揺動可能に支持する。さらに球面座420は、流体軸受け等を介して、下ステージ170を低摩擦に支持する。これにより、上下アクチュエータ702、703を個別に動作させた場合、下ステージ170は円滑に揺動する。
【0069】
また、重力打消部400は、ベース部176に対して垂直に配されたシリンダ412と、シリンダ412の内部を垂直に変位するピストン414とを含む垂直駆動部410を有する。シリンダ412およびピストン414の間に作動流体を供給することにより下ステージ170等の重量を打ち消して、下ステージ170を円滑且つ精密に移動させることができる。
【0070】
なお、重力打消部400の下端でもあるシリンダ412の下面は、ベース部176を貫通して、Y駆動部186の上面に、エアベアリング450を介して支持される。また、シリンダ412の側面は、ベース部176の内側に配されたジンバルサポート430により側方から支持される。これにより、重力打消部400は、ベース部176に対して相対的に変位することなく、ベース部176と共にY駆動部186上を水平に移動する。
【0071】
上下アクチュエータ702、703および水平アクチュエータ730のそれぞれは、支持部174を介して下ステージ170側に固定された軸状のマグネット173と、ヨーク175によりベース部176側に固定されたコイル177とを有する。これにより、コイル177に流れる駆動電流を変化させることによりマグネット173が進退して、ベース部176に対する下ステージ170の間隔を、それぞれのアクチュエータが配置された位置において短縮または拡大できる。このように、コイル177を下ステージ170側に配することにより、下ステージ170が移動する場合に、コイル177に駆動電流を供給するケーブルを下ステージ170が引きずることが避けられる。
【0072】
なお、微動部200において、下ステージ170の水平移動量および垂直移動量は小さい。従って、上下アクチュエータ702、703が動作した場合、水平アクチュエータ730のマグネット173はコイル177の内側で変位するに過ぎず、マグネット173およびコイル177が接触することはない。同様に、水平アクチュエータ730が動作した場合に、上下アクチュエータ702、703において、マグネット173およびコイル177が接触することもない。
【0073】
以上、本実施形態によれば、レーザ干渉計323は除振部340により除振された支柱163に配されているので、上ステージ190および下ステージ170の相対位置をより正確に計測することができる。さらに、上ステージ190も除振部340により除振された天板165に固定されおり、下ステージ170も球面座420等によって粗動部180からの振動伝播が抑制されているので、上ステージ190および下ステージ170をより正確に位置合わせすることができる。
【0074】
図11は、アライナ160の他のレイアウトを示す図である。図11において図2のアライナ160と同じ構成には同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0075】
図11のアライナ160は、レーザ干渉計323が支柱163とは別体の干渉計用フレーム352に支持されている点が、図2のアライナ160と異なる。干渉計用フレーム352は、除振部350を介して底板161に支持される。除振部350の構成は除振部340の構成と同様であってよい。除振部350は、粗動部180による下ステージ170の移動の反作用として底板161に生じた揺動がレーザ干渉計323に伝播するのを抑制する。
【0076】
なお、上記実施形態において、除振部340は、上ステージに基板102が保持されていない場合に、アクチュエータ344の動作を停止させるとともに、アクチュエータ344に代わって底板161から上ステージ190への振動の伝播を遮断する受動的な除振機構を更に含んでもよい。この場合にアクチュエータ344がエアアクチュエータであるときにエアの出し入れを停止することで受動的な除振機構としてもよい。また、振動を能動的に除振する除振部340、350に代えて、振動を受動的に除振する除振部340、350を用いてもよい。また、除振部340は、底板161の上面と支柱163の下端との間に配されるのに代えて、天板165の下面と支柱163の上端との間に配されてもよいし、支柱163の途中に配されてもよい。また、上ステージ190と顕微鏡191とが相対的に動いてもよく、下ステージ170と顕微鏡171とが相対的に移動してもよい。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0078】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を、後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現しうることに留意されたい。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0079】
100 基板貼り合わせ装置、102 基板、104 積層基板、108 基板ホルダ、109 溝、110、132 筐体、111 FOUP、120 環境ローダ、121 大気ローダ、122、123 フォーク、124 落下防止爪、125 ガイドレール、126 フォールディングアーム、129 ロードロック、130 加圧装置、131 装入口、134 圧下部、136 加熱プレート、138 定盤、140 ホルダストッカ、150 プリアライナ、160 アライナ、161 底板、162 枠体、163 支柱、165 天板、170 下ステージ、171、191 顕微鏡、173 マグネット、174 支持部、175 ヨーク、176 ベース部、177 コイル、178 反射鏡、179 テーブル部、180 粗動部、182 ガイドレール、184 X駆動部、186 Y駆動部、190 上ステージ、200 微動部、204 クリップ、212、214 ゲートバルブ、300、450 エアベアリング、301 ギャップ、310 流体室、321 エアベアリング駆動部、322、324、325、326、328 ミラー、323 レーザ干渉計、330 AFセンサ、340 除振部、342 連結部、344 アクチュエータ、350 除振部、352 干渉計用フレーム、400 重力打消部、410 垂直駆動部、412 シリンダ、414 ピストン、420 球面座、702、703 上下アクチュエータ、730 水平アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤から支持されて、第一基板を保持する第一ステージと、
前記定盤から支持されて、前記第一ステージに保持された前記第一基板に対向させて第二基板を保持する第二ステージと、
前記第二ステージまたは前記第二ステージに保持された前記第二基板を観察する第一顕微鏡と、
前記第一ステージまたは前記第一ステージに保持された前記第一基板を観察する第二顕微鏡と、
前記定盤から前記第一ステージへの振動伝播を抑制する第一除振部と
を備え、
前記第一顕微鏡および前記第二顕微鏡による観察から検出した相対位置に基づいて前記第一ステージ及び前記第二ステージの少なくとも一方を移動させることにより、前記第二ステージに保持された前記第二基板と、前記第一ステージに保持された前記第一基板とを互いに位置合わせする位置合わせ装置。
【請求項2】
前記第一除振部は、前記第二ステージの移動の反作用として前記定盤に生じた揺動を打ち消すアクチュエータを含む請求項1に記載の位置合わせ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、位置合わせされた前記第二基板に対して前記第一基板を近接および当接させる請求項2に記載の位置合わせ装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記第一基板を前記第一ステージに保持させる場合に、前記第二ステージから離間する方向の補正力を前記第一ステージに作用させる請求項2または請求項3に記載の位置合わせ装置。
【請求項5】
前記第一除振部は、前記第一ステージに前記第一基板が保持されていない場合に、動作を停止した前記アクチュエータに代わって前記定盤から前記第一ステージへの振動の伝播を遮断する受動的除振機構を更に含む請求項2から請求項4までのいずれかに記載の位置合わせ装置。
【請求項6】
前記定盤から前記第二ステージへの振動の伝播を抑制する第二除振部を更に備える請求項1から請求項5までのいずれかに記載の位置合わせ装置。
【請求項7】
前記第一ステージに対する前記第二ステージの変位量を計測する変位計測部と、
前記定盤から前記変位計測部への振動の伝播を抑制する第三除振部と
を更に備える請求項1から請求項6までのいずれかに記載の位置合わせ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の位置合わせ装置を備える基板貼り合わせ装置。
【請求項9】
定盤から支持されて、複数の半導体装置が形成された第一基板を、前記定盤からの振動伝播を抑制する第一除振部を介して配された第一ステージに保持するステップと、
前記定盤から支持されて、前記第一ステージに保持された前記第一基板に対向させて、複数の半導体素子が形成された第二基板を第二ステージ保持するステップと、
前記第二ステージまたは前記第二ステージに保持された前記第二基板を第一顕微鏡で観察するステップと、
前記第一ステージまたは前記第一ステージに保持された前記第一基板を第二顕微鏡で観察するステップと、
前記第一顕微鏡および前記第二顕微鏡による観察から検出した相対位置に基づいて前記第一ステージ及び前記第二ステージの少なくとも一方を移動させることにより、前記第二ステージに保持された前記第二基板と、前記第一ステージに保持された前記第一基板とを互いに位置合わせするステップと、
位置合わせした前記第一基板と前記第二基板とを接合して積層基板を生成するステップと、
前記積層基板を個片化するステップと
を備える積層半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−49450(P2011−49450A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198175(P2009−198175)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】