説明

位置範囲設定装置、移動物体搭載装置の制御方法および制御装置、ならびに車両用空調装置の制御方法および制御装置

【課題】特定状況に対応する移動物体の位置情報の範囲を正確に画定することが可能な位置範囲設定装置、及びその特定状況に応じて自動的に移動物体搭載装置を制御する制御方法および制御装置、ならびに車両用空調装置の制御方法および制御装置を提供する。
【解決手段】位置範囲設定装置は、移動物体の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部56と、道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部56と、位置情報を対応する道路区間情報に関連付ける区間決定部56と、複数の位置情報及び道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶する記憶部61と、学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタと第2のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部662と、第1及び第2のクラスタに含まれる道路区間情報から移動物体の位置に関する第1及び第2の範囲をそれぞれする位置範囲設定部663とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置範囲設定装置、移動物体搭載装置の制御方法および制御装置、ならびに車両用空調装置の制御方法および制御装置に関し、特に、移動物体の位置に応じて自動的に移動物体搭載装置の設定を最適化する移動物体搭載装置の制御方法および制御装置、ならびに車両の位置に応じて車内の空調状態を最適化する車両用空調装置の制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置は、設定温度、外気温、内気温、日射量などの各種パラメータに応じて、各吹き出し口から送出される空調空気の温度、風量などを自動的に決定する。しかし、乗員の温感(暑がり、寒がりなど)には個人差が存在する。そのため、自動的に決定された空調空気の温度、風量などの値が、乗員にとって最適な値とならないことがある。そのような場合、乗員は、必要に応じて、操作パネルを通じて、設定温度を高くしたり、あるいは低くしたり、あるいは、風量を増加又は減少させるように空調装置を調節する。そこで、乗員が、操作パネルを通じて、設定温度、風量などの設定値を変更した場合、そのときの各種パラメータを用いて、空調空気の温度や風量を決定する関係式を修正する学習制御を組み込んだ空調制御装置が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、乗員が空調装置の設定を変更するのは、必ずしも温感などの違いによるものではない。特定状況下における外部環境的な要因によって乗員がその設定を変更することもある。例えば、乗員が運転を行う直前に運動を行っていた場合には、通常よりも設定温度を低くすることもある。また、車がいつも渋滞する地点に差し掛かった場合に、車の排ガスが車内に充満するのを防ぐために、乗員は内気循環モードに設定することもある。しかし、特許文献1に記載された空調制御装置は、特定状況下における外部環境的要因のせいで乗員が空調装置の設定を変更したのか、空調装置によって自動調節された設定値が、乗員の温感に合わなかったため、乗員がその設定を変更したのかを区別することができない。そのため、上記のような特定状況に合わせて空調温度などを自動的に最適化することは困難であった。
【0004】
一方、走行中の自車両の位置を示すデータを学習データに加えることにより、温調学習とそれ以外の学習とを識別可能とした自動車用空気調和装置が開発されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載された自動車用空気調和装置は、自車両の位置及び日時を参照して、温調学習するか否かを決定する。しかし、特許文献2には、上記のような特定の状況に合わせて空調温度などを最適化することは開示されていない。
さらに、特定の状況に合わせて空調温度などを最適化するためには、その特定の状況に該当するか否かを正確に判定することが必要となる。そのために、例えば、特許文献2に記載された自動車用空気調和装置の例では、温調学習を行う自車両の位置及び日時の範囲を決定することが必要となる。しかし、そのような位置及び日時の範囲は、運転者によって異なるものであるから、事前に設定することは困難であった。特に、道路の特定区間に応じて空調設定を最適化しようとする場合、その特定区間の長さは、数キロメートルにも及ぶことがある。同様の問題は、空調装置以外の車載機器を特定の状況に合わせて自動的に制御する場合にも発生し得る。そこで、上記のような特定状況に対応する位置範囲を決定する方法が必要とされている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−293204号公報
【特許文献2】特開2000−62431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特定状況に対応する移動物体の位置の範囲を正確に画定することが可能な位置範囲設定装置、移動物体搭載装置の制御方法および制御装置、ならびに車両用空調装置の制御方法および制御装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、特定状況に対する最適な設定を自動的に学習することが可能な移動物体搭載装置の制御方法および制御装置、車両用空調装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の記載によれば、本発明の一つの形態として、位置範囲設定装置が提供される。係る位置範囲設定装置は、移動物体の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部(56)と、道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部(56)と、位置情報を、その位置情報が表す位置に対応する道路区間情報に関連付ける区間決定部(56)と、複数の位置情報及び道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶する記憶部(61)と、位置情報が関連付けられた複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部(662)と、第1のクラスタに含まれる道路区間情報から移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる道路区間情報から移動物体の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定部(663)とを有する。
【0009】
本発明に係る位置範囲設定装置は、道路区間情報を基準としてクラスタリングして移動物体の位置の範囲を決定するので、取得された移動物体の位置が、道路上の特定の区間に分布しているか否かを調べることができる。そして、位置範囲設定装置は、取得された移動物体の位置が道路上の特定の区間に分布している場合、その分布している区間を他の領域と正確に区別することができる。
【0010】
また、請求項4の記載によれば、本発明の他の形態として、移動物体に搭載された装置の制御装置が提供される。係る制御装置は、移動物体の位置を表わす位置情報を取得する位置情報取得部(56)と、道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部(56)と、位置情報を、その位置情報が表す位置に対応する道路区間情報に関連付ける区間決定部(56)と、複数の位置情報及び道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶する記憶部(61)と、位置情報を入力することにより、所定の設定操作を行う推薦確率を算出するための確率モデルを、学習データを用いて構築する学習部(66)と、学習部(66)で構築された確率モデルに移動物体の現在位置を表す現在位置情報を入力して推薦確率を算出し、推薦確率に応じて、ユーザの設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、修正された設定情報又は制御情報にしたがって、装置を制御する制御部(65)とを有する。そして学習部(66)は、学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部(662)と、第1のクラスタに含まれる道路区間情報から移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる道路区間情報から移動物体の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定部(663)と、第1の範囲に含まれる移動物体の位置に対する推薦確率及び第2の範囲に含まれる移動物体の位置に対する推薦確率を決定することにより、確率モデルを構築する確率モデル構築部(664)とを有する。
【0011】
本発明に係る制御装置は、特定状況に該当する移動物体の位置の範囲を最適に画定し、その結果に基づいて確率を計算する確率モデルを構築するので、その特定状況に該当する位置に移動物体が到達したときに、その特定状況に応じて移動物体搭載装置を自動的に制御することができる。特に、道路区間情報を基準としてクラスタリングして移動物体の位置の範囲を決定するので、道路上の特定の区間において、移動物体搭載装置を調整する必要のある特定状況が発生する場合でも、その特定の区間を他の領域と区別して、移動物体搭載装置を制御することができる。
【0012】
また、請求項7の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、車両用空調装置が提供される。係る空調装置は、空調空気を車両内に供給する空調部(10)と、車両の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部(56)と、道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部(56)と、位置情報を、その位置情報が表す位置に対応する道路区間情報に関連付ける区間決定部(56)と、複数の位置情報及び道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶する記憶部(61)と、位置情報を入力することにより乗員が所定の設定操作を行う推薦確率を算出するための確率モデルを、学習データを用いて構築する学習部(66)と、学習部(66)で構築された確率モデルに車両の現在位置を表す現在位置情報を入力して推薦確率を算出し、その推薦確率に応じて、乗員の設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、修正された設定情報又は制御情報にしたがって、空調部(10)の空調制御を行う空調制御部(65)とを有する。そして学習部(66)は、学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部(662)と、第1のクラスタに含まれる道路区間情報から車両の位置に関する第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる道路区間情報から車両の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定部(663)と、第1の範囲に含まれる車両の位置に対する推薦確率及び第2の範囲に含まれる車両の位置に対する推薦確率を決定することにより、確率モデルを構築する確率モデル構築部(664)とを有する。
【0013】
本発明に係る空調装置は、特定状況に該当する車両の位置の範囲を最適に画定し、その結果に基づいて確率を計算する確率モデルを構築するので、その特定状況に該当する位置に車両が到達したときに、その特定状況に応じて空調設定を自動的に最適化することができる。特に、道路区間情報を基準としてクラスタリングして車両の位置範囲を決定するので、道路上の特定の区間において、空調設定を調整する必要のある特定状況が発生する場合でも、その特定の区間に対応する空調設定を、他の領域に対応する空調設定と区別して、最適化することができる。
なお、所定の設定操作とは、設定温度の変更、風量の変更、内気循環モードに設定する、デフロスタを作動あるいは停止させるといった、車両用空調装置の動作状態を変更させる操作をいう。また、設定情報とは、設定温度、風量、内外気の吸気比、各吹出口から送出される空調空気の風量比など、車両用空調装置の動作を規定する情報をいう。さらに、制御情報とは、空調空気の温度、ブロアファンの回転数、エアミックスドアの開度など、設定情報に基づいて求められ、空調部の各部の動作を制御する情報をいう。
【0014】
また請求項2、5または8の記載のように、位置範囲設定部(663)は、第1のクラスタに含まれる道路区間情報を示す識別情報によって第1の範囲を表すことが好ましい。
【0015】
このように、第1の範囲を道路区間情報を示す識別情報によって表すことにより、特定の道路上の区間だけを他の領域と簡単に区別することができる。そのため、その特定区間が、数kmにも及ぶ長さを有していたり、直線的でない経路であっても、他の領域と容易に区別することができる。また、例えば高速道路と一般道路が平行している区間のように、複数の道路が存在する区間でも、一方の道路のみを他の道路と区別することができる。
【0016】
さらに、請求項3、6または9に記載のように、クラスタリング部(662)は、学習データに含まれる複数の位置情報のうち、互いの距離が所定値以下の位置情報を少なくとも一つの第3のクラスタにクラスタリングし、その少なくとも一つの第3のクラスタに含まれない位置情報が関連付けられた道路区間情報を、第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングすることが好ましい。
【0017】
係る構成により、ある程度近い移動物体若しくは車両の位置同士を直接クラスタリングし、残りの学習データを道路区間を基準としてクラスタリングするので、公園の駐車場など、特定の領域に対応する比較的狭い範囲と、道路に対応する細く、長い範囲とを別個に区分することができる。
【0018】
さらに、請求項10の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、記憶部(61)と、所定の設定操作と関連した少なくとも一つの確率モデルを有し、位置情報を確率モデルに入力して所定の設定操作を行う推薦確率を算出し、その推薦確率に応じて、ユーザの設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、修正された設定情報又は制御情報にしたがって、移動物体に搭載された装置を制御する制御部(65)とを有する制御装置の制御方法が提供される。
係る制御方法は、位置情報を取得するステップと、道路の特定区間を表す道路区間情報を取得するステップと、位置情報を、その位置情報が表す位置に対応する道路区間情報に関連付けるステップと、複数の位置情報及び道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶部(61)に記憶するステップと、学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングする区間クラスタリングステップと、第1のクラスタに含まれる道路区間情報から移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる道路区間情報から移動物体の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定ステップと、第1の範囲に含まれる移動物体の位置に対する推薦確率及び第2の範囲に含まれる移動物体の位置に対する推薦確率を決定することにより、確率モデルを構築するステップとを有する。
【0019】
さらに、請求項13の記載によれば、本発明のさらに他の形態として、空調空気を車両内に供給する空調部(10)と、記憶部(61)と、所定の設定操作と関連した少なくとも一つの確率モデルを有し、車両の位置を表す位置情報を確率モデルに入力して所定の設定操作を行う推薦確率を算出し、その推薦確率に応じて、乗員の設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、修正された設定情報又は制御情報にしたがって、空調部(10)の空調制御を行う空調制御部(65)とを有する車両用空調装置の制御方法が提供される。係る制御方法は、位置情報を取得するステップと、道路の特定区間を表す道路区間情報を取得するステップと、位置情報を、その位置情報が表す位置に対応する道路区間情報に関連付けるステップと、複数の位置情報及び道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶部(61)に記憶するステップと、学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングする区間クラスタリングステップと、第1のクラスタに含まれる道路区間情報から車両の位置に関する第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる道路区間情報から車両の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定ステップと、第1の範囲に含まれる車両の位置に対する推薦確率及び第2の範囲に含まれる車両の位置に対する推薦確率を決定することにより、確率モデルを構築する確率モデル構築ステップとを有する。
【0020】
また、請求項11または14に記載のように、位置範囲設定ステップは、第1のクラスタに含まれる道路区間情報を示す識別情報によって第1の範囲を表すことが好ましい。
【0021】
あるいは、請求項12または15に記載のように、学習データに含まれる複数の位置情報のうち、互いの距離が所定値以下の位置情報を少なくとも一つの第3のクラスタにクラスタリングする地点クラスタリングステップをさらに有し、区間クラスタリングステップは、少なくとも一つの第3のクラスタに含まれない位置情報が関連付けられた道路区間情報を第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングすることが好ましい。
【0022】
なお、上記の各実施態様において、位置範囲設定部(663)及び位置範囲設定ステップは、第1のクラスタに含まれる学習データを全て含み、かつ第2のクラスタに含まれる学習データを含まないように第1の範囲を決定し、第2のクラスタに含まれる学習データを全て含み、かつ第1のクラスタに含まれる学習データを含まないように第2の範囲を決定することが好ましい。
【0023】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を適用した車両用空調装置について説明する。
本発明を適用した車両用空調装置は、特定状況に合わせて学習された少なくとも一つの確率モデルに基づいて、乗員の空調設定操作を推定し、自動的に空調設定を行うものである。特に、確率モデルの生成に際して、特定状況に該当する車両の位置の範囲を、道路の特定区間を基準として画定し、その結果に基づいて確率を計算する確率モデルを構築して、その特定状況に対応した空調設定を自動的に行うことを可能とするものである。
【0025】
図1は、車両用空調装置1の全体構成を示す構成図である。図1に示すように、車両用空調装置1は、主に機械的構成からなる空調部10と、この空調部10を制御する制御部60とを有する。
【0026】
まず、空調部10の冷凍サイクルRの構成を説明する。車両用空調装置1の冷凍サイクルRは閉回路で構成され、その閉回路はコンプレッサ11より時計回りにコンデンサ15、レシーバ16、膨張弁17、およびエバポレータ18を含む。そして、コンプレッサ11は、冷媒を圧縮して高圧ガスにする。また、コンプレッサ11は、ベルト12を介して車載エンジン13より伝わる動力断続用の電磁クラッチ14を備える。コンデンサ15は、コンプレッサ11より送られてきた高温、高圧の冷媒ガスを冷却し、液化する。レシーバ16は、液化された冷媒ガスを貯蔵する。また、レシーバ16は、冷却性能の低下を防ぐため、液化された冷媒に含まれるガス状の気泡を取り除き、完全に液化された冷媒のみを膨張弁17へ送る。膨張弁17は、液化された冷媒を断熱膨張させて低温、低圧化し、エバポレータ18へ送る。エバポレータ18は、低温、低圧化された冷媒と、エバポレータ18に送り込まれた空気との間で熱交換を行ってその空気を冷却する。
【0027】
次に、空調部10の空調ケース20内の構成について説明する。エバポレータ18の上流側には、ブロワファン21が配置されている。ブロワファン21は遠心式送風ファンで構成され、駆動用モータ22により回転駆動される。ブロワファン21の吸入側には、内外気切替箱23が配置される。内外気切替箱23内には、内外気サーボモータ24で駆動される内外気切替ドア25が配置される。そして内外気切替ドア25は、内気吸込口26と外気吸込口27とを切り替えて開閉する。そして、内気吸込口26又は外気吸込口27から取り込まれた空気は、内外気切替箱23を経由して、ブロアファン21によってエバポレータ18へ送られる。なお、ブロアファン21の回転速度を調整することにより、車両用空調装置1から送出される風量を調節することができる。
【0028】
エバポレータ18の下流側には、エバポレータ18側から順に、エアミックスドア28、およびヒータコア29が配置される。ヒータコア29には、ヒータコア29を通る空気を暖めるために、車載エンジン13の冷却に使用された冷却水が循環供給される。また、空調ケース20には、ヒータコア29をバイパスするバイパス通路30が形成されている。エアミックスドア28は、温調サーボモータ31により回動され、各吹き出し口から送出される空気を所定の温度にするために、ヒータコア29を通過する通路32からの温風とバイパス通路30を通過する冷風との風量割合を調整する。
【0029】
さらに、バイパス通路30を経由した冷風と、ヒータコア29を通過する通路32からの温風とが混合される空気混合部33の下流側には、空調空気を車室内に送出するフット吹き出し口34、フェイス吹き出し口35、デフロスタ吹き出し口36が設けられている。そして、各吹き出し口には、各吹き出し口を開閉するためのフットドア37、フェイスドア38及びデフロスタドア39がそれぞれ設けられている。なお、フット吹き出し口34は、運転席または助手席の足元へ空調空気を送出する。また、フェイス吹き出し口35は、フロントパネルから運転席または助手席に向けて空調空気を送出する。さらに、デフロスタ吹き出し口36は、フロントガラスへ向けて空調空気を送出する。各ドア37、38及び39は、モードサーボモータ40により駆動される。
【0030】
次に、車両用空調装置1が有する情報取得部として機能する各種センサについて説明する。内気温センサ51は、車室内の温度Trを測定するために、ハンドル近傍のインストルメントパネルなどにアスピレータとともに設置される。また、外気温センサ52は、車室外の温度Tamを測定するために、コンデンサ15の外側前面の車両前方ラジエターグリルに設置される。さらに、車室内に照りつける日射光の強さ(日射量)Sを測定するために、日射センサ53が車室内のフロントガラス近傍に取り付けられる。なお、日射センサ53はフォトダイオードなどで構成される。
【0031】
さらに、エバポレータ18から吹き出される空気の温度(エバポレータ出口温度)を測定するためのエバポレータ出口温度センサ、ヒータコア29へのエンジン冷却水の冷却水の水温を測定するためのヒータ入口水温センサ、及び冷凍サイクルR内を循環する冷媒の圧力を測定するための圧力センサなどのセンサが設けられる。その他、車室内には、乗員情報取得部としても機能する、運転席及びその他の席にいる乗員の顔を撮影するための1台以上の車内カメラ54が設置される。また、車外の様子を撮影する車外カメラ55も設置される。
【0032】
さらに、空調装置1は、ナビゲーションシステム56から、車両の現在位置及び進行方向を表す位置情報と、その位置情報が表す車両の位置に対応した道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する。そのために、ナビゲーションシステム56は、位置情報を取得する位置情報取得部と、道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部と、位置情報を道路区間情報に関連付ける区間決定部とを有する。
【0033】
位置情報取得部は、空調装置1が搭載された車両の現在位置及び進行方向を検出する。そのために、位置情報取得部は、センサとして、地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機を有する。そして、地磁気センサは絶対方位を取得し、ジャイロスコープは相対方位を検出する。また、距離センサは、車速パルス信号に基づいて、出発点からの走行距離を算出する。さらに、GPS受信機は、GPS(全地球測位システム)を構成するGPS衛星からの情報に基づいて、車両の現在位置の緯度及び経度を得る。位置情報取得部は、これらの情報を組み合わせて、車両の現在位置及び進行方向を検出する。なお、地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機として、それぞれ周知のものを用いることができるため、ここではその詳細な説明を省略する。また、それらのセンサからの情報を組み合わせて車両の位置及び進行方向を検出する方法も、周知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0034】
道路情報取得部は、車両の現在位置周辺の道路情報を含む地図を取得し、制御部60へ送信する。そのために、道路情報取得部は、例えば、地図情報を記録したHDDなどの磁気記録媒体あるいはDVD、CDなどの光磁気記録媒体と、その記録媒体の読取装置を有する。ここで、道路情報は、各交差点を表すノードと、隣接する交差点間をつなぐ道路を表すリンクで構成される。このノード及びリンクが、道路の特定区間を表す道路区間情報に対応する。そして、ノードには、そのノード自体の識別情報、位置、ノードに接続されたリンクの識別情報などが関連付けられる。またリンクには、そのリンク自体の識別情報、リンクの位置、長さ、道路の種別(例えば、一般道路か高速道路)、一方通行情報などが関連付けられる。なお、道路情報取得部は、無線通信ネットワークを介して、車外に設置されたサーバから地図情報を取得するようにしてもよい。
【0035】
区間決定部は、位置情報取得部から位置情報を取得する度に、道路情報取得部3から取得した道路情報とマップマッチングを行い、その位置情報が表す車両の位置が、道路上に存在するか否か判定する。そして、区間決定部は、その車両の位置が道路上に存在すると判定した場合、その車両の位置に対応する位置情報を、その車両の位置と一致する道路を表す道路区間情報(すなわち、リンクまたはノード)に関連付ける。なお、マップマッチングとして、周知の方法を利用することができるので、ここではマップマッチングの詳細な説明を省略する。また、区間決定部は、その車両の位置が道路上に存在しないと判定した場合は、その車両の位置に対応する位置情報を、何れの道路区間情報とも関連付けない。
【0036】
また、車両用空調装置1は、車両操作機器57から、アクセル開度、ハンドル、ブレーキ、パワーウインドウ開度、ワイパー、ターンレバー若しくはカーオーディオのON/OFFなどの各種操作情報及び車速、車両挙動情報などを取得する。さらに、車両用空調装置1は、車載時計58より、曜日、現在時刻などの時間情報を取得する。また、車両用空調装置1は、運転席などに心電検出センサ、心拍・呼吸センサ、体温センサ若しくは皮膚温センサなどを設置して、乗員の生体情報を取得するようにしてもよい。
このように、ナビゲーションシステム56、車両操作機器57及び車載時計58もまた、情報取得部として機能する。
【0037】
図2は、車両用空調装置1の制御部60の機能ブロック図である。
制御部60は、図示していないCPU,ROM,RAM等からなる1個もしくは複数個の図示してないマイクロコンピュータ及びその周辺回路と、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ等からなる記憶部61と、各種センサ、ナビゲーションシステム56又は車両操作機器57などとコントロールエリアネットワーク(CAN)のような車載通信規格に従って通信を行う通信部62を有する。
【0038】
さらに、制御部60は、このマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、照合部63、制御情報修正部64、空調制御部65及び学習部66を有する。
【0039】
制御部60は、各種のセンサ、ナビゲータシステム、車両操作機器などから取得した上記のセンシング情報、位置情報、車両挙動情報などの状態情報を、それらをRAMに一時的に記憶する。同様に、制御部60は、操作部であるA/C操作パネル59から取得された操作信号もRAMに一時的に記憶する。そして制御部60は、それら状態情報及び操作信号に基づいて空調部10を制御する。例えば、制御部60は、電磁クラッチ14を制御してコンプレッサ11のON/OFF切り換えを行ったり、ブロアファン21の回転数調整のために駆動用モータ22を制御する。また制御部60は、内外気サーボモータ24、温調サーボモータ31及びモードサーボモータ40を制御して各ドアの開度を調節する。制御部60は、これらの制御を実行することによって、車室内の温度を、乗員の設定した温度に近づけるように、各吹き出し口から送出される空調空気の風量比、全体の風量及び温度を調節する。ここで制御部60は、空調空気の温度や風量などを決定するために、利用可能な確率モデルに、所定の状態情報を入力し、乗員が所定の操作(例えば、設定温度を下げる、風量を最大にする、内気循環モードに設定する等)を実行する確率を推定する。制御部60は、その確率が所定閾値以上の場合には、自動的にその所定の操作を実行する。
【0040】
制御部60は、上記の状態情報などを定期的に蓄積する。あるいは、乗員が車両用空調装置1を操作した場合には、その操作内容及びその操作時の各種情報を蓄積する。そして、そのような情報が所定数蓄積されると、統計的学習処理を行って確率モデルを生成する。以下、これらの動作を行う各機能モジュールについて説明する。
【0041】
照合部63は、エンジンスイッチをONすると、車内カメラ54で撮影された画像と、車両用空調装置1に予め登録された登録済利用者に関する照合情報に基づいて、乗員の照合及び認証を行い、乗員が何れかの登録済利用者に該当するか否か判定する。そして、照合部63は、乗員と判定された登録済利用者の識別情報(ID)及び登録済利用者に関連する個人情報を記憶部61から読み出す。
【0042】
ここで、照合部63は、例えば以下の方法によって乗員を照合し、認証する。照合部63は、車内カメラ54で撮影された画像を2値化したり、エッジを検出して乗員の顔に相当する領域を識別する。そして、照合部63は、識別された顔領域から、目、鼻、唇など特徴的な部分をエッジ検出等の手段によって検出し、その特徴的な部分の大きさ、相対的な位置関係などを特徴量の組として抽出する。次に、照合部63は、抽出された特徴量の組を、予め記憶部61に記憶されている、各登録済利用者に関して求められた特徴量の組と比較し、相関演算などを用いて一致度を算出する。そして、最も高い一致度が、所定の閾値以上となる場合、照合部63は、乗員を、その最も高い一致度となった登録済利用者として認証する。なお、上記の照合方法は、一例に過ぎず、照合部63は、他の周知の照合方法を使用して、乗員を照合し、認証することができる。例えば、照合部63は、特開2005−202786号公報に記載された車両用顔認証システムを用いることができる。また、照合部63は、画像認証以外の方法を用いることも可能である。例えば、照合部63は、スマートキーシステムを用いて乗員を照合し、認証するようにしてもよい。さらに、特開2005−67353号公報に記載された車両用盗難防止装置のように、スマートキーシステムと画像認証を組み合わせて乗員を照合し、認証するようにしてもよい。さらに、照合部63は、手の平や指の静脈パターン、指紋などをセンサで読み取って、乗員を照合するために使用してもよい。
【0043】
制御情報修正部64は、確率モデルに基づいて、設定温度Tset、風量Wなど、乗員が設定可能な設定情報である、空調装置1の設定パラメータを自動調整するか否かを決定する。すなわち、制御情報修正部64は、所定の設定操作と関連した少なくとも一つの確率モデルを有し、状態情報を確率モデルに入力して所定の設定操作を行う推薦確率を算出し、推薦確率と、確率モデルに関連付けられた修正情報に基づいて所定の設定操作に関連する設定情報を修正する。なお、確率モデルに関連付けられた修正情報とは、その確率モデルによって規定される修正において、設定情報の修正後の値、あるいは、設定情報を所望の修正値に変更するために設定情報に加えられ、若しくは乗じられる修正量をいう。
本実施態様では、確率モデルとして、ベイジアンネットワークを用いた。ベイジアンネットワークは、複数の事象の確率的な因果関係をモデル化する。またベイジアンネットワークは、各ノード間の伝播を条件付き確率で求める、非循環有向グラフで表されるネットワークである。なお、ベイジアンネットワークの詳細については、本村陽一、岩崎弘利著、「ベイジアンネットワーク技術」、初版、電機大出版局、2006年7月、繁桝算男他著、「ベイジアンネットワーク概説」、初版、培風館、2006年7月、又は尾上守夫監修、「パターン識別」、初版、新技術コミュニケーションズ、2001年7月などに開示されている。
【0044】
本実施形態では、確率モデルは、車両用空調装置1に登録された利用者毎に生成される。また、確率モデルは、設定操作の種類ごと(例えば、設定温度Tsetを下げる若しくは上げる、風量Wを調節する、内気循環モードにする等)に生成される。そして、記憶部61には、確率モデルの構造情報が、各利用者情報及び設定操作と関連付けて記憶される。具体的には、確率モデルを構成する各ノード間の接続関係を表すグラフ構造、入力ノードに与えられる入力情報のタイプ、各ノードの条件付き確率表(以下、CPTという)が、各確率モデルごとに規定され、記憶部61に記憶される。さらに、利用者の識別番号(ID)、設定操作の内容と一意に対応する設定操作番号k、その設定操作で修正される設定パラメータ及びその修正値(例えば、設定温度Tsetが3℃下げられる場合には、(Tset,-3)、風量Wを最大値Wmaxにする場合には、(W,Wmax)など)も各確率モデルごとに規定され、確率モデルに関連付けて記憶部61に記憶される。
【0045】
制御情報修正部64は、照合部63によって乗員として特定された登録済み利用者に関連付けられた確率モデルを記憶部61から読み出す。制御情報修正部64は、読み出された1以上の確率モデルのそれぞれに、所定の状態情報を入力して、乗員が各確率モデルに関連付けられた設定操作を行う推薦確率を求める。すなわち、制御情報修正部64は、各確率モデルについて一意に規定され、各確率モデルとともに記憶部61に記憶された設定操作番号kで表される設定操作を実行する確率を求める。その確率は、例えば確率伝播法を用いて計算することができる。そして、制御情報修正部64は、求めた確率が第1の閾値Th1(例えば、Th1=0.9)以上の場合(すなわち、乗員がその設定操作を実行することがほぼ確実であると考えられる場合)、その設定操作を自動的に実行する。具体的には、制御情報修正部64は、その設定操作に関連する設定パラメータの値を、確率モデルに関連付けられた設定パラメータの修正値、すなわち、その確率モデルに対して一意に規定され、その確率モデルとともに記憶部61に記憶された設定パラメータの修正値を用いて修正する。
【0046】
また、求めた確率が第1の閾値Th1未満であるものの、第2の閾値Th2(例えば、Th2=0.6)以上である場合(すなわち、乗員がその設定操作を実行する可能性が高いと考えられる場合)には、制御情報修正部64は、A/C操作パネル59あるいはナビゲーションシステム56などの表示部を通じてその設定操作内容を表示して、その設定操作内容を乗員に知らせる。そして、制御情報修正部64は、乗員にその設定操作を行うか否かを確認する。そして、乗員がその設定操作を行うことを承認する操作(例えば、所定の操作ボタンを押す)をA/C操作パネル59などを通じて行った場合、制御情報修正部64は、その設定操作を実行する。なお、制御情報修正部64は、A/C操作パネル59あるいはナビゲーションシステム56を通じて設定操作内容を音声で乗員に知らせてもよい。また、制御情報修正部64は、車両用空調装置1にマイクロフォンを接続し、制御部60に音声認識プログラムを搭載することにより、乗員の音声に反応して設定操作を実行するか否かを確認してもよい。
【0047】
以下、設定温度Tsetを3℃下げることを例として説明する。ここで、上記の第1の閾値Th1は0.9とし、第2の閾値Th2は0.6とする。
図3に、このような特定状況の一例を示す。ここで示される状況は、乗員(Aさん)が、土曜日の午後はいつも運動公園でテニスを行い、その後、4時ごろ自家用車に乗ったという状況である。Aさんは、この状況下では、車両用空調装置の設定温度を普段よりも下げることを好むとする。一方、それ以外の場合、例えば、職場からの帰宅時などでは、そのような設定操作を実行しない。
【0048】
図4に、車両用空調装置1の設定パラメータを自動調節するために使用される確率モデルの一例のグラフ構造を示す。図4に示す確率モデル101では、3個の入力ノード102、103、104がそれぞれ出力ノード105に接続されている。また、各入力ノード102、103、104には、それぞれ入力される状態情報として曜日(x1)、時間帯(x2)、現在位置(x3)が与えられる。そして、出力ノード105は、設定温度Tsetを3℃下げる確率を出力とする。
【0049】
図5(a)〜(d)に、図4に示した確率モデル101の各ノードについてのCPT106〜109を示す。CPT106〜108は、それぞれ入力ノード102〜104に対応する。そして、CPT106〜108は、入力される状態情報に対する事前確率を規定する。また、CPT109は、出力ノード105に対応し、各入力ノードの情報の値ごとに割り当てられた条件付き確率分布を規定する。
【0050】
ここで、曜日が土曜日(x1=1)、時間帯が昼(x2=1)、現在位置が公園(x3=1)と各入力ノードに与えられる情報が全て既知の場合、設定温度Tsetを3℃下げる確率P(x4=1|x1=1,x2=1,x3=1)は、図5(d)を参照すれば、0.95となることがわかる。したがって、得られた推薦確率は、第1の閾値Th1以上であるため、制御情報修正部64は、設定温度Tsetを3℃下げるよう設定パラメータを修正する。
【0051】
また、曜日が土曜日(x1=1)、時間帯が昼(x2=1)であるものの、例えば、ナビゲーションシステム56の電源が入っておらず、現在位置を知ることができない場合、図5(c)に示した現在位置が公園である場合の事前確率P(x3)を用いて、P(x4=1|x1=1,x2=1,x3)が計算される。この場合、
P(x4=1|x1=1,x2=1,x3)
= P(x4=1|x1=1,x2=1,x3=1)・P(x3=1)
+ P(x4=1|x1=1,x2=1,x3=0)・P(x3=0)
= 0.95・0.15 + 0.55・0.85 = 0.61
となる。したがって、得られた確率は、第1の閾値Th1よりも小さいが、第2の閾値Th2以上であるため、制御情報修正部64は、設定温度Tsetを3℃下げるか否か、A/C操作パネル59などを通じて乗員に確認する。
【0052】
さらに、曜日が月曜日(x1=0)、時間帯が夜(x2=0)、現在位置が職場(x3=0)の場合、設定温度を3℃下げる確率P(x4=1|x1=0,x2=0,x3=0)は、図5(d)を参照して、0.1となることが分かる。したがって、得られた確率は、第1の閾値Th1及び第2の閾値Th2よりも小さいため、制御情報修正部64は、設定温度Tsetを変更せず、設定温度Tsetを変更することについて、乗員に確認することもしない。
【0053】
なお、上記の例では、簡単化のために、確率モデルを2層のネットワーク構成としたが、中間層を含む、3層以上のネットワーク構成としてもよい。また、入力ノードに与えられる状態情報の区分も、上記の例に限られない。なお、状態情報の区分については、後述する学習部66において説明する。
【0054】
また、同一の操作グループ(例えば、各グループは、設定温度の修正、風量の変更、内外気の切り替え若しくは風量比の設定などに分類される)に関連する確率モデルが複数存在する場合、すなわち、特定の設定パラメータを修正する確率を出力とする確率モデルが複数存在する場合、制御情報修正部64は、それら複数の確率モデルそれぞれについてその確率を計算する。なお、特定の設定パラメータとは、風量、内外気の切り替え、風量比なども含む。そして、制御情報修正部64は、得られた確率のうち、最大となるものを選択して上記の処理を実行する。例えば、風量設定に関する確率モデルM1(風量Wを最大にする)とM2(風量Wを中程度にする)が存在する場合を考える。この場合、制御情報修正部64は、確率モデルM1に基づいて風量Wを最大にする確率PM1を求め、同様に、確率モデルM2に基づいて風量Wを中程度にする確率PM2を算出する。そして、制御情報修正部64は、PM1>PM2であれば、PM1を上記の閾値Th1、Th2と比較して、風量Wを最大にするか否かを決定する。逆に、PM2>PM1であれば、制御情報修正部64は、PM2を上記の閾値Th1、Th2と比較して、風量Wを中程度にするか否かを決定する。
【0055】
なお、上記では、理解を容易にするために、確率モデルM1とM2が、異なる設定操作に関連付けられるように規定した。しかし、確率モデルM1とM2は、同じ設定操作(例えば、ともに風量Wを最大にする)に関連付けられてもよい。このことは、例えば、乗員が異なる2以上の状況(一方は、日中で晴天の場合、他方は、スポーツジムの帰り道の場合等)で、同一の操作を行う場合があることに対応する。それぞれの状況に対応する確率モデルが生成されていれば、それらの確率モデルは、同一の操作グループに属する設定操作が関連付けられることになる。
制御情報修正部64は、上記の処理によって、設定温度Tset、風量Wなどの各設定パラメータを必要に応じて修正すると、それらの設定パラメータを制御部60の各部で利用可能なように、制御部60のRAMに一時記憶する。
【0056】
空調制御部65は、各設定パラメータの値及び各センサから取得したセンシング情報をRAMから読み出し、それらの値に基づいて、空調部10を制御する。そのために、空調制御部65は、温度調節部651、コンプレッサ制御部652、吹出口制御部653、吸込口制御部654及び送風量設定部655を有する。また、空調制御部65は、制御情報修正部64において修正された設定パラメータがRAMに記憶されている場合には、その修正されたパラメータを読み出して使用する。
【0057】
温度調節部651は、設定温度Tset及び各温度センサ及び日射センサ53の測定信号に基づいて、各吹き出し口から送出される空調空気の必要吹出口温度(空調温度Tao)を決定する。温度調節部651は、その空調空気の温度が空調温度Taoとなるように、エアミックスドア28の開度を決定する。そして温度調節部651は、温調サーボモータ31へ、エアミックスドア28の開度が設定された位置になるように制御信号を送信する。例えば、エアミックスドア28の開度は、内気温Trと設定温度Tsetの差を、外気温Tam、日射量Sなどで補正した値を入力とし、エアミックスドア28の開度を出力とする制御式に基づいて決定される。ここで、温度調節部651は、エアミックスドア28の開度を、一定の時間間隔(例えば、5秒間隔)毎に判定する。そのようにエアミックスドア28を制御するための各測定値とエアミックスドア28の開度の関係式を以下に示す。
【数1】

ここで、Doは、エアミックスドア28の開度を表す。また、係数kset、kr、kam、ks、C、a、bは定数であり、Tset、Tr、Tam、Sは、それぞれ、設定温度、内気温、外気温及び日射量を表す。ここで、制御情報修正部64が設定温度Tsetを修正している場合、温度調節部651は、その修正された設定温度Tsetを使用する。また、エアミックスドア28の開度Doは、ヒータコア29を経由する通路32を閉じた状態(すなわち、冷房のみが動作する状態)を0%、バイパス通路30を閉じた状態(すなわち、暖房のみが動作する状態)を100%として設定される。温調制御式の各係数kset、kr、kam、ks、C及びエアミックスドアの開度を求める関係式の係数a、bは、温調制御パラメータとして、登録済利用者ごとに設定され、登録済利用者の個人設定情報に含まれる。
なお、温度調節部651は、空調温度Tao及びエアミックスドア28の開度を、ニューラルネットワークを用いた制御やファジイ制御など、他の周知の制御方法を用いて決定してもよい。算出された空調温度Taoは、制御部60の他の部で参照できるように、記憶部61に記憶される。
【0058】
コンプレッサ制御部652は、温度調節部651で求められた空調温度(必要吹出口温度)Tao、設定温度Tset及びエバポレータ出口温度などに基づいて、コンプレッサ11のON/OFFを制御する。コンプレッサ制御部652は、車室内を冷房する場合、デフロスタを作動させる場合には、原則としてコンプレッサ11を作動させ、冷凍サイクルRを作動させる。ただし、エバポレータ18がフロストすることを避けるために、エバポレータ出口温度が、エバポレータ18がフロストする温度近くまで低下すると、コンプレッサ制御部652は、コンプレッサ11を停止する。そして、エバポレータ出口温度がある程度上昇すると、コンプレッサ制御部652は、再度コンプレッサ11を作動させる。なお、コンプレッサ11の制御は、可変容量制御など周知の方法を用いて行えるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
吹出口制御部653は、A/C操作パネル59を通じて乗員が設定した風量比の設定値、温度調節部651で求められた空調温度Tao、設定温度Tsetなどに基づいて、各吹き出し口から送出される空調空気の風量比を求める。そして吹出口制御部653は、その風量比に対応するように、フットドア37、フェイスドア38及びデフロスタドア39の開度を決定する。吹出口制御部653は、風量比の設定値、空調温度Tao、設定温度Tsetなどと各ドア37〜39の開度との関係を表す関係式にしたがって各ドア37〜39の開度を決定する。このような関係式は予め規定され、制御部60において実行されるコンピュータプログラムに組み込まれている。なお、吹出口制御部653は、他の周知の方法を用いて、各ドア37〜39の開度を決定することもできる。そして、吹出口制御部653は、各ドア37〜39が決定された開度となるように、モードサーボモータ40を制御する。
また、吹出口制御部653は、制御情報修正部64が風量比の設定値又は設定温度Tsetを修正している場合には、その修正された設定値又は設定温度Tsetを使用して各ドア37〜39の開度を決定する。
【0060】
吸込口制御部654は、A/C操作パネル59から取得した吸込口設定、設定温度Tset、空調温度Tao、内気温Trなどに基づいて、車両用空調装置1が内気吸気口26から吸気する空気と外気吸気口27から吸気する空気の比率を設定する。吸込口制御部654は、外気温Tam、内気温Trと設定温度Tsetとの差などと吸気比との関係を表す関係式にしたがって内外気切替ドア25の開度を決定する。このような関係式は予め設定され、制御部60において実行されるコンピュータプログラムに組み込まれている。なお、吸込口制御部654は、他の周知の方法を用いて、内外気切替ドア25の開度を決定することもできる。吸込口制御部654は、内外気サーボモータ24を制御し、内外気切替ドア25を求めた吸気比となるように回動させる。また、吸込口制御部654は、制御情報修正部64が吸気設定値又は設定温度Tsetを修正している場合には、その修正された吸気設定値又は設定温度Tsetを使用して内外気切替ドア25の開度を決定する。
【0061】
送風量設定部655は、A/C操作パネル59から取得した風量W、設定温度Tset、空調温度Tao、内気温Tr、外気温Tam及び日射量Sに基づいて、ブロアファン21の回転速度を決定する。そして送風量設定部655は、駆動用モータ22へ、ブロアファン21の回転速度が設定値になるように制御信号を送信する。例えば、風量設定が手動設定になっている場合には、送風量設定部655は、A/C操作パネル59から取得した風量Wとなるようにブロアファン21の回転速度を決定する。また、風量設定が自動設定になっている場合には、送風量設定部655は、内気温Tr、空調温度Taoなどと風量Wとの関係を表す風量制御式にしたがってブロアファン21の回転速度を決定する。あるいは、送風量設定部655は、設定温度Tset及び空調情報(内気温Tr、外気温Tam及び日射量S)と、風量Wの関係を直接的に表す風量制御式を使用してもよい。送風量設定部655は、このような風量制御式として、周知の様々なものを用いることができる。なお、このような風量制御式は予め設定され、制御部60において実行されるコンピュータプログラムに組み込まれている。あるいは、送風量設定部655は、空調情報と風量Wの関係を定めたマップを予め準備しておき、そのマップを参照して測定された空調情報に対応する風量Wを決定するマップ制御に基づいてブロアファン21の回転速度を決定してもよい。さらに、送風量設定部655は、他の周知の方法を用いて、ブロアファン21の回転速度を決定することもできる。また、送風量設定部655は、制御情報修正部64が風量W又は設定温度Tsetを修正している場合には、その修正された風量W又は設定温度Tsetを使用してブロアファン21の回転速度を決定する。
【0062】
学習部66は、乗員が車両用空調装置1を操作した場合に、新しい確率モデルを生成するか否か、又は既存の確率モデルを更新するか否かを判定する。そして学習部66は、確率モデルの生成または更新が必要と判定した場合、確率モデルを生成するか、更新する。そのために、学習部66は、学習情報蓄積部661と、クラスタリング部662と、位置範囲設定部663と、確率モデル構築部664と、確率モデル評価部665とを有する。以下、学習部66に含まれる各部について詳細に説明する。
【0063】
学習情報蓄積部661は、取得した状態情報に乗員が行った設定操作を関連付け、そしてその状態情報を乗員の設定操作を推定する確率モデルの構築に必要な学習情報として記憶部61に蓄積する。
一般的に、乗員は、車室内が乗員にとって適切な空調状態となっていない場合、車両用空調装置1の設定操作を実行する。そのため、乗員が車両用装置1の設定操作を頻繁に実行する場合、乗員の設定操作を推定する確率モデルを構築することが必要と考えられる。しかし、適切な確率モデルを構築するためには、統計的に正しい推定を行うために十分なデータが必要となる。そこで、学習情報蓄積部661は、車両用空調装置1の設定操作が行われる度に、その操作時に取得した各状態情報(外気温Tamなどの空調情報、車両の現在位置などの位置情報、車速などの車両挙動情報、心拍数などの生体情報)を学習情報DAkとして記憶部61に記憶する。さらに、学習情報DAkには、上述した設定操作番号k及び乗員のIDが関連付けられる。あるいは、車両用空調装置1の設定操作とは無関係に、定期的に収集された各状態情報のうち、その設定操作時に最も近い時点、または設定操作の直前若しくは直後に収集された状態情報を学習情報DAkとして、上述した設定操作番号k及び乗員のIDに関連付けて、記憶部61に記憶してもよい。さらに、この車両用空調装置1の設定操作とは無関係に、定期的(例えば、5秒間隔)に収集された各状態情報に、現在の設定状態(例えば、風量最大)に対応する設定操作番号k及び乗員IDを関連付けて記憶部61に記憶してもよい。あるいはその定期的に収集された各状態情報の内のさらに定期的に(例えば、1分あるいは5分間隔)にサンプリングされた各状態情報に、現在の設定状態に対応する設定操作番号k及び乗員IDを関連付けて記憶部61に記憶してもよい。そして、このような定期的に収集された各状態情報も、確率モデルの構築に使用してもよい。
また、乗員Aが、設定操作番号kに対応する設定操作α(例えば、設定温度を3℃下げる、風量Wを最大にする、内気循環に切り換えるなど)を行った操作回数iAkも記憶部61に記憶する。なお、上記の学習情報DAkは、例えば次式のように表される。
【数2】

ここで、dijkは、各状態情報の値である。iは、上記の操作回数iAkを示す。また、jは、状態情報の各値に対して便宜的に指定される状態項目番号であり、本実施形態では、j=1に対して内気温Tr、j=2に対して外気温Tam、j=3に対して日射量Sが割り当てられる。そして、j=4以降に、位置情報、車両挙動情報、生体情報などが割り当てられる。また、kは設定操作番号である。なお、位置情報に関連付けられた道路区間情報も、その位置情報とともに学習情報として記憶部61に記憶される。
これら学習情報DAk及び操作回数iAkは、登録済み利用者及び設定操作ごとに別個に記憶部61に記憶される。
【0064】
クラスタリング部662は、確率モデルの各ノードについてのCPTを求めるために、学習情報DAkに含まれる各状態情報のうち、予め複数の区分に分類できない位置情報をクラスタリングする。そして位置範囲設定部663は、クラスタリング部662によって求められた複数のクラスタに基づいて、車両の位置の区分を決定する。
【0065】
確率モデルの入力ノードに与えられる状態情報として、車両の現在位置情報など、取り得る値を予め限られたパターンに限定することができない情報、または連続的に変化するような情報が用いられる場合がある。このような情報を入力パラメータとするCPTを設定するためには、入力される状態情報の値をどのように区分するかが重要となる。例えば、図3に示した例のように、運動後の公園の駐車場にいるという特定状況において、設定温度を3℃下げるという設定操作に対応する確率モデルを構築する場合を想定する。この場合、確率モデルの入力ノードに与えられる状態情報の一つとして上記のように車両の位置情報を用いるためには、車両の位置情報を、少なくともその公園の駐車場にいる場合とその他の場所にいる場所にいる場合とで区分することが重要となる。同様に、ある国道の特定区間を走行中に、内気循環にするという設定操作に対応する確率モデルを構築する場合を想定する。この場合、確率モデルの入力ノードに与えられる状態情報の一つとして車両の位置情報を用いるためには、車両がその国道の特定区間内を走行している場合とそれ以外の場所にいる場合とを区分することが重要となる。この二つの例に示されるように、車両の位置情報に関して、公園の駐車場という範囲と国道上という範囲とでは、その位置も範囲も異なり、事前に車両の位置に応じた区分を決定できないことが明らかである。
【0066】
そこで、クラスタリング部662は、車両の位置情報を、狭域のクラスタに分類する段階と広域のクラスタに分類する段階に分けてクラスタリングして、特定状況に対応する車両の位置が、狭い範囲に分布している場合にも、広い範囲に分布している場合にも対応できるように車両の位置の区分を決定する。特に、クラスタリング部662は、広域のクラスタに分類する段階において、学習情報として記憶された位置情報に関連付けられた道路区間情報に対してクラスタリングすることにより、特定状況がある道路の特定区間において生じる場合、その特定区間を他の領域と区分することができる。
【0067】
以下、フローチャートを参照しつつ、クラスタリング部662及び位置範囲設定部663による処理を説明する。
図6は、クラスタリングの手順を示す動作フローチャートである。
まず、クラスタリング部662は、学習情報DAkから、位置情報を抽出する。そして、各位置情報に示された車両の位置間のユークリッド距離Udijを算出する(ステップS201)。本実施形態の場合、ユークリッド距離Udijは、各車両の位置間の直線距離である。次に、ユークリッド距離の最小値Udijminが、第1の距離Td1以下か否かを調べる(ステップS202)。ステップS202において、ユークリッド距離の最小値Udijminが、第1の距離Td1以下の場合、その最小値となった位置情報同士を一つのクラスタとする(ステップS203)。なお、第1の距離Td1は、例えば300mに設定することができる。その後、ステップS201に制御を戻す。そして、クラスタリング部662は、再度ステップS201の処理を行う。この場合、クラスタリング部662は、一つのクラスタと他のクラスタとのユークリッド距離を、最短距離法に基づいて算出する。すなわち、二つのクラスタC1、C2間のユークリッド距離D(C1,C2)は、以下の式で表される。
【数3】

ここで、x、yは、それぞれクラスタC1、C2に含まれる位置情報であり、Udxyは、xとyとのユークリッド距離を表す。なお、各位置情報自体も、内包される位置情報の数が1のクラスタと見做すことができる。
一方、ステップS202において、ユークリッド距離の最小値Udijminが、第1の距離Td1よりも大きい場合、クラスタリング部662は、各クラスタについて、クラスタ内に含まれる位置情報の数の多い方から順に、二つのクラスタを選択し、C1、C2とナンバリングする(ステップS204)。なお、2個以上の位置情報を含むクラスタが一つしかない場合、クラスタリング部662は、最も位置情報を多く含むクラスタのみを選択するようにしてもよい。同様に、2個以上の位置情報含むクラスタが存在しない場合には、クラスタリング部662は、何れのクラスタも選択しない。
【0068】
次に、クラスタリング部662は、クラスタC1、C2に含まれない位置情報のうち、道路区間情報と関連付けられたものを選択する(ステップS205)。そして、クラスタリング部662は、道路区間情報ごとに、関連付けられた位置情報の数を求め、その数を記憶部61に記憶する(ステップS206)。その後、クラスタリング部662は、関連付けられた位置情報を含む道路区間情報間の最短経路をダイクストラ法を用いて決定し、その最短経路に沿って道路区間情報間の距離Ldijを算出する(ステップS207)。なお、クラスタリング部662は、ダイクストラ法以外の最短経路決定手法を用いて、各道路区間情報間の最短経路を決定してもよい。また、クラスタリング部662は、各道路区間の混み具合、道の広さなどを考慮したリンクコストに基づいて、道路区間情報間の最短経路を決定し、道路区間情報間の距離Ldijの代わりに、その最短経路に沿って求めたリンクコストの合計を用いてもよい。
【0069】
クラスタリング部662は、次に、道路区間情報間の距離の最小値Ldijminが、第2の距離Td2以下か否かを調べる(ステップS208)。ステップS208において、その最小値Ldijminが、第2の距離Td2以下の場合、その最小値となった道路区間情報同士を一つのクラスタとする(ステップS209)。なお、第2の距離Td2は、例えば1.5kmに設定することができる。その後、ステップS207に制御を戻す。そして、クラスタリング部662は、再度ステップS207の処理を行う。この場合、クラスタリング部662は、各クラスタ間の距離Ldijを、上記のように、それらのクラスタに含まれる道路区間情報間の最短経路に沿って算出する。
【0070】
一方、ステップS208において、道路区間情報間の距離の最小値Ldijminが、第2の距離Td2よりも大きい場合、クラスタリング部662は、ステップS205〜S209で求められた、道路区間情報のクラスタについて、クラスタ内に含まれる位置情報の数の多い方から順に、二つのクラスタを選択し、C3、C4とナンバリングする(ステップS210)。各クラスタに含まれる位置情報の数は、道路区間情報に関連付けられた位置情報の数を参照することにより、求められる。そして、クラスタリング部662は、クラスタC1〜C4の何れにも含まれない位置情報を一つのクラスタC5としてまとめる(ステップS211)。なお、2個以上の位置情報を含むクラスタが一つしかない場合、クラスタリング部662は、最も位置情報を多く含むクラスタのみを選択するようにしてもよい。同様に、2個以上の位置情報を含むクラスタが存在しない場合には、クラスタリング部662は、何れのクラスタも選択しない。
【0071】
位置範囲設定部663は、ステップS201〜S204で実行される、狭域クラスタリングで求めたクラスタに対応する車両の位置の範囲を、緯度及び経度に基づいて決定する(ステップS212)。具体的には、位置範囲設定部663は、上記で求めたクラスタC1及びC2について、それぞれ緯度及び経度で表される重心G1及びG2を算出し、さらに重心G1及びG2からそのクラスタに含まれる最も離れた位置までの距離r1及びr2を求める。そして、クラスタC1及びC2に対応する位置情報の値の範囲を、それぞれ重心G1及びG2を中心とした半径r1及びr2の円形領域として決定する。あるいは、位置範囲設定部663は、クラスタC1及びC2に対応する車両の位置の範囲を、それぞれそのクラスタに含まれる位置情報から、東西南北の各端点を求め、それらの端点を境界とする矩形領域としてもよい。
【0072】
次に、位置範囲設定部663は、ステップS205〜S210で実行される、広域クラスタリングで求めたクラスタに対応する車両の位置の範囲を決定する(ステップS213)。具体的には、位置判定設定部663は、道路区間情報についてクラスタリングされたクラスタC3及びC4に対応する車両の位置の範囲を、それぞれクラスタC3及びC4に含まれる道路区間情報の識別情報で表す。すなわち、位置情報に関連付けられた道路区間情報(ノードまたはリンク)の識別情報が、クラスタC3(またはC4)に含まれる何れかの道路区間情報の識別情報と一致する場合、その位置情報は、クラスタC3(またはC4)に対応する車両の位置の範囲に含まれる。その後、位置範囲設定部663は、クラスタC5に対応する車両の位置の範囲を、クラスタC1〜C4の何れにも含まれない範囲として設定する。
【0073】
最後に、位置範囲設定部663は、各クラスタに対応する位置情報の値の範囲を表すデータ(例えば、クラスタC1及びC2に関して求めた重心G1、G2及び半径r1、r2と、クラスタC3及びC4のそれぞれに含まれる道路区間情報の識別情報)を、記憶部61に記憶する(ステップS214)。
【0074】
以下、車両用空調装置1を内気循環にするという設定操作を行った場合に関連する学習情報に含まれる車両の位置情報(操作地点)をクラスタリングすることを例として、クラスタリング部662の処理を説明する。この場合において、上記の第1の距離Td1は300mであり、第2の距離Td2は1.5kmとする。
【0075】
図7(a)は、操作地点の分布の模式図を示す。図7(a)において、領域701及び702は、自宅、会社、または公園などの施設の駐車場を表し、それぞれ直径300m以下の大きさであるとする。また、領域701と領域702を結ぶ、複数の矢印は、それぞれ、一つのリンクで表された道路の特定区間である。なお、通常、隣接する二つのリンク間には、交差点などに対応するノードが存在するが、ここでは、説明の簡単化のために、ノードを省略する。また、各点721〜726は、それぞれ、乗員が車両用空調装置1を内気循環にするという設定操作を行った操作地点を表す。また、図7(b)、図7(c)は、それぞれ領域701及び702の拡大図であり、各領域内に示された複数の点は、それぞれ操作地点を示す。
【0076】
この場合において、クラスタリング部662は、まず狭域クラスタリング(ステップS201〜S204)を行うことによって、領域702、701内に存在する操作地点を、それぞれクラスタC1及びC2に含めることができる。このことは、領域701及び702の直径が第1の距離Td1以下であるため、各領域内の操作地点間の距離が第1の距離Td1以下になることから明らかである。
【0077】
次に、狭域クラスタリングでクラスタに区分されなかった操作地点は、関連付けられた道路区間情報に基づいてクラスタリングされる。ここで、領域701から702を結ぶリンクのうち、リンク711、712、714及び718は、それぞれ、3個(操作地点721〜723)、1個(操作地点724)、1個(操作地点725)、1個(操作地点726)の操作地点が関連付けられている。したがって、この4個のリンクについて、広域クラスタリング(ステップS205〜S210)が行われる。
クラスタリング部662は、例えば、各リンクを結ぶ最短経路に含まれるリンクの長さの合計を、各リンク間の距離として算出する。したがって、リンク711と712は隣接しているので、リンク711と712との距離は0となる。また、リンク712と714との距離は、リンク713の長さとなり、リンク714と718との距離は、リンク715〜717の長さの合計となる。そのため、クラスタリング部662は、リンク711と712を、同一のクラスタに区分する。またリンク713の長さが、第2の距離Td2である1.5km未満であれば、クラスタリング部662は、リンク714も、リンク711、712が含まれるクラスタに区分する。しかし、リンク713の長さが、1.5kmよりも長ければ、クラスタリング部662は、リンク714と711、712を異なるクラスタに区分する。同様に、リンク715〜717の長さの合計が、1.5km未満であれば、クラスタリング部662は、リンク718とリンク714を同じクラスタに区分する。しかし、その長さの合計が、1.5kmよりも長ければ、クラスタリング部662は、リンク718と714を異なるクラスタに区分する。
【0078】
このように、クラスタリング部662及び位置範囲設定部663は、国道を走っているという特定状況、あるいは会社の駐車場にいるという特定状況に対応するように、車両の位置の範囲を設定することができる。特に、道路の特定区間において乗員が所定の設定操作を行う場合、クラスタリング部662は、その特定区間だけを他の領域と区分することができる。そのため、例えば、高速道路と一般道路とが平行している区間において、高速道路走行時のみ、乗員が車両用空調装置1について所定の設定操作を行うといった場合でも、高速道路と一般道路を区別して、車両の位置の範囲を設定することができる。
【0079】
また、ステップS205以降の処理において、クラスタリング部662は、再度全てのデータを対象としてクラスタリングを行ってもよい。この場合、狭域のクラスタC1、C2に含まれる範囲と、広域のクラスタC3、C4に含まれる範囲の一部又は全てが重複している場合、どちらか一方のクラスタを優先し、他方のクラスタからはその重複範囲を除外する。
【0080】
さらに、上記の実施形態では、クラスタリングを狭域と広域の2段階に分けて行ったが、クラスタリング部662は、3段階以上に分けてクラスタリングを行い、各段階ごとに内包するデータ数の最も多いクラスタを1個又は2個選択するようにしてもよい。あるいは、段階数、あるいは各段階で作成するクラスタ数を予め定めず、過半数以上のデータが、所定個数(例えば、5個)のクラスタに含まれた時点で、クラスタリングを終了し、残りのデータを一つのクラスタとしてもよい。
【0081】
さらに、クラスタリング部662は、位置情報に含まれる、全ての情報を用いてユークリッド距離を算出してもよく、あるいは、そのうちの一部の情報を用いてユークリッド距離を算出してもよい。例えば、位置情報が緯度、経度、車両の進行方向を表す方位の3次元の情報で表される場合、車両の位置間のユークリッド距離を、上記のように緯度、経度のみを用いて算出する代わりに、緯度、経度、方位の全てを用いて算出してもよい。このように、方位も用いて位置情報をクラスタリングすることにより、同じ道路において、進行方向によって異なる空調設定が行われる場合でも、その進行方向ごとに異なる空調設定を自動的に実行するための確率モデルを構築することができる。あるいは、イグニッションキーのON/OFF情報から、車両を駐車した状態とそれ以外の状態に区別できるので、狭域のクラスタについては、イグニッションキーがOFFとなる直前のデータだけを含むようにクラスタリングしてもよい。さらに、位置情報に、車両が位置した場所の高さを表す高度情報が含まれる場合には、その高度情報も用いて、位置情報をクラスタリングしてもよい。
【0082】
さらに、クラスタリング部662は、車両の位置を表す他の情報が利用できる場合、その情報を用いて車両の位置の範囲を規定してもよい。例えば、上記の位置情報に関連して、ナビゲーションシステムからその位置情報に対応する施設(例えば、コンビニエンスストア、レストランなど)を表す周辺地域情報あるいはGbook情報を取得できる場合、それらの情報を用いてクラスタに対応する車両の位置の範囲を規定することができる。具体的には、クラスタ内の全てのデータが同一の施設(例えば、会社の駐車場など)を表すものである場合、そのクラスタに対応する車両の位置の範囲を、上記の重心と半径で規定する代わりに、あるいは、上記の重心と半径に加えて、その施設に含まれる範囲を表す情報によって、その車両の位置の範囲を規定することができる。このように、一度求めた車両の位置の範囲にこれらの情報を別途追加することで、位置情報をより正確に区分することができる。
【0083】
確率モデル構築部664は、予めグラフ構造が決定された複数の標準モデルに対し、学習情報及び位置範囲設定部663で規定された車両の位置の区分に基づいて、各標準モデルに含まれるノードのCPTを作成することにより、仮の確率モデルを生成する。
様々な状況に対応可能な、汎用的な確率モデルを構築するためには、多数のノードを含む、非常に大きな確率モデルを構築する必要がある。しかし、そのような確率モデルの学習には、非常に長い計算時間を要し、また、学習に必要なハードウェアリソースも膨大なものとなる。そこで、本実施形態では、状態情報のうち、設定操作と特に関連が深そうなものを幾つか入力ノードに与えられるパラメータとして選択し、それら入力パラメータの組み合わせに対する条件付き確率によって設定操作を行う確率を求める2層構成のグラフ構造を標準モデルとして15種類準備した。しかし、標準モデルの数は、15種類に限られない。標準モデルの数は、得られる状態情報の数や、学習対象とする設定操作の種類に応じて、適宜最適化できる。また、標準モデルは、入力パラメータを1個だけとするものや、取得可能な全ての状態情報を入力パラメータとするものであってもよい。さらに、標準モデルは、2層構成のグラフ構造に限られず、制御部60を構成するCPUの能力に応じて、3層以上のグラフ構造のものを標準モデルとして使用してもよい。
それらの標準モデルは、記憶部61に記憶される。そして、確率モデル構築部664は、各標準モデルについて、その標準モデルに含まれる各ノード間の条件付き確率を決定して仮の確率モデルを構築する。すなわち、仮の確率モデルでは、入力パラメータとして用いられる状態情報の値の区分に基づいて、その仮の確率モデルに関連付けられた設定操作を行う確率が決定される。
【0084】
以下、図を用いて詳細に説明する。
図8(a)〜(d)に、15個の標準モデルのうちの4個を例として示す。図8(a)〜(d)に示す標準モデル501〜504は、何れも入力ノードと出力ノードからなる2層構成のベイジアンネットワークである。各標準モデル501〜504は、入力ノードに与えられるパラメータが異なる。
【0085】
確率モデル構築部664は、記憶部61から読み出した学習情報DAkから、各ノードについて、各状態情報の値の区分ごとに該当する数nを数える。そして、その数nを全事象数Nで除した値を、事前確率及び条件付き確率の値とする。その際、クラスタリング部662及び位置範囲設定部663によって入力パラメータとして用いられる車両の位置の区分が求められている場合には、記憶部61からその区分、すなわち、各クラスタの重心及び半径あるいは各クラスタに含まれた道路区間情報の識別情報を読み出し、その区分に従って状態情報を分類する。一方、クラスタリングがなされていない入力パラメータについては、予め定められた区分に従ってその状態情報を分類する。例えば、図8(b)の標準モデル502を例として説明する。ここで、30個のデータの組を含む学習情報DAkがあり、このうち、入力ノードの一つに割り当てられている車両の現在位置情報について調べる。ここで、現在位置情報は、クラスタリング部662により、国道(会社近辺)、国道(自宅近辺)、職場の駐車場、スポーツジムの駐車場、その他、の5個にクラスタリングされたものとする。この場合、確率モデル構築部664は、現在位置情報に含まれる緯度及び経度、あるいはその位置情報に関連付けられた道路区間情報の識別情報に基づいて、現在位置情報がどのクラスタに対応する位置の範囲に含まれるかを調べる。そして、国道(会社近辺)である回数(y11=0)が8回、国道(自宅近辺)である回数(y11=1)が6回、職場の駐車場である回数(y11=2)が6回、スポーツジムの駐車場である回数(y11=3)が5回、その他(y11=4)が5回とすると、現在位置情報に対する事前確率P(y11)は、それぞれ、P(y11=0)=0.27、P(y11=1)=0.2、P(y11=2)=0.2、P(y11=3)=0.17、P(y11=4)=0.17となる。同様に、出力ノードについては、親ノードである各入力ノードに与えられる状態情報の現在位置(y11)、曜日(y12)、時間帯(y13)の取り得る値の組み合わせのそれぞれについて、学習情報DAk中に出現する数を計算し、それを全データ数である30で割ることによって、条件付き確率が求められる。このように、確率モデル構築部664は、事前確率及び条件付き確率を求めることにより、各ノードに対応するCPTを決定する。
【0086】
なお、確率モデル構築部664は、学習に用いるデータ数が十分でないと考えられる場合には、ベータ分布を用いて確率分布を推定し、CPTとして用いてもよい。また、学習情報DAkの中に、一部の入力情報の値の組み合わせが存在しない、すなわち、未観測データがある場合、未観測データに対する確率分布を推定し、その分布に基づいて期待値を計算することで、対応する条件付き確率を計算する。このような条件付き確率の学習については、例えば、繁桝算男他著、「ベイジアンネットワーク概説」、初版、培風館、2006年7月、p.35-38、p.85-87に記載された方法を用いることができる。
同様に、確率モデル構築部664は、出力ノードに対して、入力ノードに与えられた情報に基づく条件付き確率の分布を示すCPTを設定する。なお、初期状態では、CPTは、全ての状態に対して等しい値となるように設定される。
【0087】
確率モデル評価部665は、確率モデル構築部664において構築された全ての仮の確率モデルに対して情報量基準を用いて、最も適切なグラフ構造を有する仮の確率モデルを選択する。
本実施形態では、情報量基準として、AIC(赤池情報量基準)を用いた。AICは、確率モデルの最大対数尤度と、パラメータ数に基づいて、以下の式に基づいて求めることができる。
【数4】

ここで、AICmは、確率モデルMに対するAICを表す。また、θmは、確率モデルMのパラメータ集合を、lmm|X)は、データXを所与としたときの確率モデルMにおけるそのデータの最大対数尤度の値を、kmは確率モデルMのパラメータ数をそれぞれ表す。ここでlmm|X)は、以下の手順で計算できる。まず、各ノードにおいて、親ノードの変数の各組み合わせについて、学習情報DAkから出現頻度を求める。その出現頻度に条件付き確率の対数値を乗じた値を求める。最後にそれらの値を足し合わせることでlmm|X)が算出される。また、kmは、各ノードにおける、親ノード変数の組み合わせの数を足し合わせることで求められる。
【0088】
確率モデル評価部665は、全ての確率モデルについてAICを求めると、AICの値が最も小さい仮の確率モデルを選択する。
なお、情報量基準を用いた確率モデルの選択(言い換えれば、グラフ構造の学習)については、ベイズ情報量基準(BIC)、竹内情報量基準(TIC)、最小記述長(MDL)基準など他の情報量基準を用いてもよい。さらに、これらの情報量基準の算出式の正負を反転させたものを、情報量基準として用いてもよい。この場合には、情報量基準の値が最大となる仮の確率モデルを選択する。
【0089】
確率モデル評価部665は、選択された仮の確率モデルを、記憶部61に保存し、制御情報修正部64で使用する確率モデルとして追加する。そして、学習情報DAkに関連付けられた乗員のID、設定操作番号kを取得し、追加された確率モデルに関連付けて記憶部61に記憶する。さらに、その確率モデルに基づいて修正される設定パラメータ及び修正値を、設定操作番号kに基づいて特定し、その確率モデルに関連付けて記憶部61に記憶する。なお、設定操作番号kと、修正される設定パラメータ及び修正値の関係は、例えばルックアップテーブルとして予め規定され、記憶部61に保持される。
【0090】
以下、図9及び図10に示したフローチャートを参照しつつ、本発明を適用した車両用空調装置1の空調制御動作について説明する。なお、空調制御動作は、制御部60により、制御部60に組み込まれたコンピュータプログラムにしたがって行われる。
【0091】
図9に示すように、まず、エンジンスイッチがONとなると、制御部60は、車両用空調装置1を始動させる。そして制御部60は、通信部62を通じて、各センサ、ナビゲーションシステム56、車両操作機器57などから各状態情報を取得する(ステップS101)。以後、各状態情報の取得は、定期的(例えば、5秒間間隔)に行われる。同様に、記憶部61から各設定情報を取得する。次に、制御部60の照合部63は、乗員の照合・認証を行う(ステップS102)。そして、乗員と判定された登録済利用者の個人設定情報を記憶部61から読み出す(ステップS103)。
【0092】
次に、制御部60は、乗員が車両用空調装置1の設定操作を行ったか否かを判定する(ステップS104)。なお、制御部60は、A/C操作パネル59から操作信号を受信すると、設定操作が行われたと判断する。乗員が設定操作を行っていない場合、制御部60の制御情報修正部64は、その乗員及び何れかの操作グループ関連する設定パラメータ(例えば、設定温度Tset)の修正に関連付けられている確率モデルMAqkのうち、現在の設定と異なる設定に変更するものを選択する(ステップS105)。なお、確率モデルMAqkは、乗員Aの設定操作番号kの設定操作についてq番目に構築された確率モデルであることを表す。そして、選択された確率モデルに、観測された状態情報を入力する。そして、その確率モデルに関連付けられている設定操作を行う確率を算出する(ステップS106)。そして、その設定パラメータに関連する同一操作グループ内の設定操作について算出された確率のうち、最も高い確率を推薦確率Pとして求める。
【0093】
次に、推薦確率Pを、第1の所定値Th1と比較する(ステップS107)。推薦確率Pが第1の所定値Th1(例えば、0.9)以上の場合、制御情報修正部64は、推薦確率Pを出力した確率モデル(以下、選択確率モデルという)に関連付けられた修正情報に基づいて、対応する車両用空調装置1の設定パラメータを修正する(ステップS108)。一方、推薦確率Pが、第1の所定値Th1未満の場合、制御情報修正部64は、推薦確率Pを、第2の所定値Th2(例えば、0.6)と比較する(ステップS109)。そして、推薦確率Pが第2の所定値Th2以上であれば、制御情報修正部64は、A/C操作パネル59の表示部などを通じて、選択確率モデルに関連付けられた設定操作番号kに対応する設定操作を行うか否かを表示し、確認する(ステップS110)。そして、乗員がその設定操作を行うことを承認した場合、選択確率モデルに関連付けられた修正情報に基づいて設定パラメータを修正する(ステップS108)。一方、乗員が承認しなかった場合には、その設定パラメータを修正しない。すなわち、選択確率モデルに関連付けられた設定パラメータに関連する設定操作は行わない。また、ステップS109において、推薦確率Pが第2の所定値Th2未満の場合も、その設定パラメータを修正しない。
【0094】
その後、制御情報修正部64は、全ての確率モデルに関して確率を算出したか否かを確認することにより、全ての設定パラメータの調節が終わったか否かを判定する(ステップS111)。まだ確率を算出していない確率モデルがある場合、すなわち、設定情報の修正の有無を調べていない操作グループがある場合には、制御をステップS105の前に戻す。一方、全ての確率モデルについて、確率算出を終了している場合には、空調制御部65は、必要に応じて修正された設定パラメータに基づいて、所望の空調温度、風量などが得られるように、エアミックスドア、ブロアファンの回転数、各吹き出し口のドアの開度を調節する(ステップS112)。
【0095】
図10に示すように、ステップS104において、乗員が車両用空調装置1の設定操作を行った場合、設定信号を参照してどの設定操作が行われたかを特定する(ステップS113)。そして、乗員のIDと、行われた設定操作に対応する設定操作番号kと、その設定操作が行われた操作回数iAkと関連付けて、各状態情報のうち、その設定操作の前後の一定期間(例えば、設定操作時が行われた時点から±10秒間)内に取得された状態情報を学習情報DAkの要素として記憶部61に記憶する(ステップS114)。
【0096】
その後、制御部60の学習部66は、操作回数iAkが所定回数n1*j(j=1,2,3)と等しいか否か判定する(ステップS115)。なお、所定回数n1は、例えば10回である。そして、学習部66は、iAk=n1*jと判定した場合、学習部66のクラスタリング部662は、その乗員及び設定操作番号kに関連付けられて記憶部61に記憶されている学習情報DAkのうち、位置情報について、クラスタリングを行う(ステップS116)。そして、位置範囲設定部663が、クラスタリングによって求められた各クラスタに対応する車両の位置の範囲を決定する。なお、学習情報のクラスタリングは、図6のフローチャートに示した手順に従って行われる。
その後、学習部66は、学習情報DAkを用いて、その設定操作に関する確率モデルMAqkを構築する(ステップS117)。具体的には、上述したように、学習部66の確率モデル構築部664が、各標準モデルに対して、CPTを作成して仮の確率モデルを構築し、学習部66の確率モデル評価部665が、それぞれの仮の確率モデルについて情報量基準を算出し、情報量基準の値が最も小さい仮の確率モデルを、使用する確率モデルMAqkとして選択する。そして、その確率モデルMAqkを乗員のIDなどと関連付けて記憶部61に記憶する。一方、ステップS115において、iAkがn1*jと等しくない場合、制御をステップS118に移行する。
【0097】
次に、学習部66は、操作回数iAkが所定回数n2(例えば、n2=30)と等しいか否か判定する(ステップS118)。iAkがn2と等しくなければ、iAkを1だけインクリメントし(ステップS119)、制御をステップS112へ移行する。一方、ステップS118において、iAk=n2であれば、学習部66は、記憶部61に記憶されている、その乗員及び設定操作番号kに関連付けられて記憶部61に記憶されている学習情報DAkを消去する(ステップS120)。
さらに、その時点で記憶部61に記憶されている確率モデルMAqkを確立されたものとし、以後その確率モデルMAqkの更新は行わない。学習部66は、確立された確率モデルMAqkに対して、更新されないことを示すフラグ情報を付す。例えば、更新フラグfを確率モデルに関連付けて記憶部61に記憶し、その更新フラグfが'1'の場合は、更新(すなわち、書き換え)禁止、更新フラグfが'0'の場合は更新可能として、更新可否を判別可能とすることができる。また、iAkを初期化し、iAk=0とする。その後、制御をステップS112に移行する。
【0098】
なお、所定回数n2は、n1よりも大きな数で、統計的に十分正確な確率モデルを構築可能と考えられるデータ数に対応する。所定回数n1及びn2は、経験的、実験的に最適化することができる。
また、上記のフローチャートのステップS115において、学習部66は、確率モデルの構築を行うか否かを判定するために、操作回数iAkと所定回数n1*j(j=1,2,3)を比較する代わりに、同一の設定操作に関連する確率モデルを前回構築したときからの経過時間が第1の所定時間(例えば、1週間、1ヶ月)経過したか否かを判定するようにしてもよい。この場合、学習部66は、その経過時間が第1の所定時間以上となったとき、確率モデルの構築を行う。すなわち、学習部66は、上記のステップS116〜S120の処理を実行する。このように、経過時間に基づいて確率モデルの構築を行うか否かを判定するために、制御部60は、確率モデルが構築された時の作成日時をその確率モデルに関連付けて記憶部61に記憶しておく。そして、学習部66は、経過時間を算出する際に、設定操作αに関連する確率モデルのうち、最新の確率モデルに関連付けられた作成日時を記憶部61から取得し、現在の時間との差を求めることによって経過時間を算出する。
さらに、学習部66が経過時間に基づいて確率モデルの構築を行うか否かを判定する場合、上記のステップS118では、学習部66は、経過時間を第1の所定時間よりも長い第2の所定時間(例えば、4週間、6ヶ月)と比較するようにしてもよい。そして、経過時間が第2の所定時間よりも長い場合、学習部66は、学習情報DAkの消去、更新フラグfの書き換えを行う。
以後、車両用空調装置1は、稼動停止となるまで上記のステップS101〜S120の制御を繰り返す。
【0099】
以上説明してきたように、本発明を適用した車両用空調装置は、確率モデルの生成に際して、乗員が所定の設定操作を行ったときの車両の位置の範囲を、道路区間に基づいて画定し、その結果に基づいて確率を計算する確率モデルを構築するので、その所定の設定操作が道路の特定区間において行われる場合でも、最適な空調設定を自動的に行うことができる。
【0100】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、クラスタリング部662は、広域クラスタリングの段階のみ、道路区間情報に対してクラスタリングを行ったが、狭域クラスタリングの段階においても、道路区間情報に対してクラスタリングを行うようにしてもよい。また、クラスタリング部662は、上記のような最短距離法の他、最長距離法、群平均法、ウォード法などの階層的クラスタリング手法を用いて、道路区間情報をクラスタリングしてもよい。あるいは、クラスタリング部662は、k平均法のような、非階層的クラスタリング手法を用いて、道路区間情報をクラスタリングしてもよい。また、上記の実施形態では、位置情報取得部、道路情報取得部、区間決定部は、ナビゲーションシステムに含まれていたが、これらを、ナビゲーションシステムとは別個に準備してもよい。
【0101】
また、学習部66は、時間情報など、連続的な値で表される情報についてもクラスタリングを行って、その値の範囲を設定してもよい。
【0102】
また、乗員は運転者に限られない。車両用空調装置の設定操作を誰が行ったかを判別することにより、運転者以外の同乗者が操作する場合にも好適に用いることができる。例えば、車両用空調装置のA/C操作パネル59が、運転席用と助手席用の二つ準備されている場合、制御部60は、どちらのA/C操作パネル59が操作されたかによって、運転者が操作したのか、同乗者が操作したのかを判定してもよい。また、制御部60は、特開2002−29239号公報に記載されているように、A/C操作パネル59上に赤外線温度センサなどで構成される操作乗員検出センサを設けて、運転者か同乗者のどちらが操作を行ったかを判定するようにしてもよい。
そして、同乗者が操作を行った場合には、運転者の照合及び認証と同様に、車内カメラ54で撮影した画像データに基づいて、同乗者の照合及び認証も行い、その操作時の各センサ値などの状態情報を、運転者ではなく、その同乗者に関連付けて記憶する。
【0103】
また、乗員が特定人に限定されるような場合、あるいは、誰が運転する場合でも行うような設定操作について確率モデルを構築する場合には、照合部63を省略してもよい。この場合、確率モデル及び確率モデルの学習に用いる学習情報は、乗員が誰であっても共通して使用される。
【0104】
また、確率モデルの構築及び確率モデルを用いた設定操作に用いる状態情報として、状態情報取得時の車両用空調装置の設定情報(設定温度、風量など)を含んでもよい。
さらに、上記の実施形態では、制御情報修正部64において修正されるパラメータは、設定温度や風量など、A/C操作パネル59を通じて乗員が直接設定できる設定情報に関するパラメータとした。しかし、制御情報修正部64は、温調制御式を用いて算出される空調温度Tao若しくは風量制御式を用いて算出されるブロアファン21の回転数、エアミックスドア28の開度など、空調部10の各部の動作を制御する制御情報に関するパラメータを、確率モデルを用いて修正するようにしてもよい。
【0105】
また、確率モデルの構築において、上記の実施形態では、予めグラフ構造を規定した標準モデルを準備したが、そのような標準モデルを準備する代わりにK2アルゴリズムや遺伝的アルゴリズムを用いてグラフ構造の探索を行うようにしてもよい。例えば遺伝的アルゴリズムを用いる場合には、各ノード間の接続の有無を各要素とする遺伝子を複数準備する。そして、上記の情報量基準を用いて各遺伝子の適応度を計算する。適応度が所定以上の遺伝子を選択し、交叉、突然変異などの操作を行って次の世代の遺伝子を作成する。このような操作を複数回繰り返して、最も適合度の高い遺伝子を選択する。選択された遺伝子で記述されるグラフ構造を確率モデルの構築に使用する。さらに、これらのアルゴリズムと、標準モデルからの確率モデルの構築とを組み合わせて用いてもよい。
さらに、上記の実施形態では、確率モデルとしてベイジアンネットワークを用いたが、例えば、隠れマルコフモデルのような、他の確率モデルを用いてもよい。
【0106】
なお、本発明を適用する空調装置は、フロントシングル、左右独立、リア独立、4席独立、上下独立の何れのタイプのものであってもよい。何れかの独立タイプの空調装置に本発明を適用する場合には、内気温センサ、日射センサなどが複数搭載されてもよい。
【0107】
さらに本発明は、空調装置以外にも適用することが可能である。複数の状態情報を取得し、それらの状態情報を所定の制御と関連した確率モデルに入力してその所定の制御を行う推薦確率を求め、推薦確率が一定以上の場合に、その所定の制御を行う制御装置にも本発明を適用することができる。例えば、本発明を、カーオーディオの制御装置に適用することができる。図11に、本発明を適用したカーオーディオの制御装置600の機能ブロック図を示す。図11において、制御装置600は、図2に示した車両用空調装置1の制御部60と比較して、空調制御部65の代わりにオーディオ制御部650を有している。制御装置600のその他の各部の機能は、図2に示した車両用空調装置1の制御部60と同じである。
【0108】
この場合において、例えば、乗員が、渋滞情報を知らせるAM放送が受信できる地点に近づく度に、そのAM放送を選局する操作を行うとする。このとき、制御装置600は、ナビゲーションシステム(図示せず)から、通信部62を介して、乗員が選局操作を行った操作地点の位置情報及び位置情報が関連付けられた道路区間情報を取得し、学習情報として、記憶部61に蓄積する。また制御装置600は、カーオーディオの操作部(図示せず)から、乗員が行った設定操作の内容を表す信号も取得する。さらに、時間情報など、その他の情報も、通信部62を介して取得してもよい。そして制御装置600の学習部66は、本発明に従って、選局操作を自動的に実行するための確率モデルを構築する。そのために、クラスタリング部662は、学習情報として蓄積された各操作地点について、上記のように、操作地点間の距離に基づく狭域クラスタリングあるいは、各操作地点が関連付けられた特定道路区間に基づく広域クラスタリングを行う。そして、位置範囲設定部663が、操作地点の座標値あるいは、操作地点が関連付けられた特定道路区間の識別情報に基づいて、各クラスタに対応する操作地点の値の範囲を決定することにより、選局操作を行うべき地点の範囲を画定する。そして、確率モデル構築部664により、車両の位置情報に基づいて、AM放送を選局する確率を算出する確率モデルが生成される。制御情報修正部64は、生成された確率モデルに、定期的に取得される位置情報を入力することにより、選局操作を行う確率を求める。そして制御情報修正部64は、その確率が所定の閾値を上回ると、カーオーディオの設定情報を、渋滞情報を受信するAM局を選局する設定操作に対応するものに修正する。そして、オーディオ制御部650は、その設定情報にしたがって、AM局を選局する。このように、本発明を適用したカーオーディオの制御装置は、渋滞情報を知らせるAM放送が受信できる地点に近づくと自動的にそのAM放送を選局するようになる。
【0109】
さらに本発明は、車両におけるボディー制御、例えば、パワーウィンドウ、キーロック、ヘッドライト、ハザードランプ、ミラー、給油口、サンルーフ、ワイパー、車間自動制御システム(ACC)、電子制御サスペンション(AVS)、シフトなどの制御装置に使用することができる。また、本発明は、車両の走行制御系、例えば、ブレーキ、アクセルあるいはハンドルの制御にも適用することができる。これらの装置に本発明を適用する場合、上記のカーオーディオの制御装置と同様に、図2に示した制御部60のうち、空調制御部65を、制御対象となる装置にあわせて変更すればよい。
【0110】
さらに、所定の地点に近づくといつも所定の操作を行うユーザに対して、その地点に到達すると自動的にその所定の操作を行う携帯電話機にも適用できる。
上記のように、本発明の範囲内で様々な修正を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明を適用した車両用空調装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】車両用空調装置の制御部の機能ブロック図である。
【図3】特定状況の一例を示す図である。
【図4】車両用空調装置の設定値の自動調節に用いられる確率モデルの一例のグラフ構造を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は、それぞれ図4に示した確率モデルの各ノードについての条件付き確率表を示す図である。
【図6】本発明を適用した車両用空調装置の学習情報のクラスタリング手順を示すフローチャートである。
【図7】特定の設定操作を行った場合の現在位置の分布の一例を示す図である。
【図8】(a)〜(d)は、それぞれ確率モデルの基礎となるグラフ構造を有する標準モデルを示す図である。
【図9】本発明を適用した車両用空調装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明を適用した車両用空調装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明を適用したカーオーディオの制御装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0112】
1 車両用空調装置
10 空調部
11 コンプレッサ
21 ブロアファン
22 駆動用モータ
24 内外気サーボモータ
25 内外気切替ドア
28 エアミックスドア
31 温調サーボモータ
37 フットドア
38 フェイスドア
39 デフロスタドア
40 モードサーボモータ
51 内気温センサ
52 外気温センサ
53 日射センサ
54 車内カメラ
55 車外カメラ
56 ナビゲーションシステム
57 車両操作機器
58 車載時計
59 A/C操作パネル
60 制御部
61 記憶部
62 通信部
63 照合部
64 制御情報修正部
65 空調制御部
651 温度調節部
652 コンプレッサ制御部
653 吹出口制御部
654 吸込口制御部
655 送風量設定部
66 学習部
661 学習情報蓄積部
662 クラスタリング部
663 位置範囲設定部
664 確率モデル構築部
665 確率モデル評価部
600 制御装置
650 オーディオ制御部
101 確率モデル
102〜105 ノード
106〜109 条件付き確率表(CPT)
501〜504 標準モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部(56)と、
道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部(56)と、
前記位置情報を、該位置情報が表す位置に対応する前記道路区間情報に関連付ける区間決定部(56)と、
複数の前記位置情報及び前記道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶する記憶部(61)と、
前記学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタ又は第2のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部(662)と、
前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報から前記移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、前記第2のクラスタに含まれる道路区間情報から前記移動物体の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定部(663)と、
を有することを特徴とする位置範囲設定装置。
【請求項2】
前記位置範囲設定部(663)は、前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報を示す識別情報によって前記第1の範囲を表す、請求項1に記載の位置範囲設定装置。
【請求項3】
前記クラスタリング部(662)は、前記学習データに含まれる複数の位置情報のうち、互いの距離が所定値以下の位置情報を少なくとも一つの第3のクラスタにクラスタリングし、前記少なくとも一つの第3のクラスタに含まれない位置情報が関連付けられた道路区間情報を、前記第1のクラスタまたは前記第2のクラスタにクラスタリングする、請求項1または2に記載の位置範囲設定装置。
【請求項4】
移動物体に搭載された装置の制御装置であって、
前記移動物体の位置を表わす位置情報を取得する位置情報取得部(56)と、
道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部(56)と、
前記位置情報を、該位置情報が表す位置に対応する前記道路区間情報に関連付ける区間決定部(56)と、
複数の前記位置情報及び前記道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶する記憶部(61)と、
前記位置情報を入力することにより、所定の設定操作を行う推薦確率を算出するための確率モデルを、前記学習データを用いて構築する学習部(66)と、
前記学習部(66)で構築された確率モデルに前記移動物体の現在位置を表す現在位置情報を入力して前記推薦確率を算出し、該推薦確率に応じて、ユーザの設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、前記所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、
前記修正された設定情報又は制御情報にしたがって、前記装置を制御する制御部(65)とを有し、
前記学習部(66)は、
前記学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部(662)と、
前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報から前記移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、前記第2のクラスタに含まれる道路区間情報から前記移動物体の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定部(663)と、
前記第1の範囲に含まれる前記移動物体の位置に対する前記推薦確率及び前記第2の範囲に含まれる前記移動物体の位置に対する前記推薦確率を決定することにより、前記確率モデルを構築する確率モデル構築部(664)と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
前記位置範囲設定部(663)は、前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報を示す識別情報によって前記第1の範囲を表す、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記クラスタリング部(662)は、前記学習データに含まれる複数の位置情報のうち、互いの距離が所定値以下の位置情報を少なくとも一つの第3のクラスタにクラスタリングし、前記少なくとも一つの第3のクラスタに含まれない位置情報が関連付けられた道路区間情報を、前記第1のクラスタまたは前記第2のクラスタにクラスタリングする、請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
車両用空調装置であって、
空調空気を車両内に供給する空調部(10)と、
前記車両の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部(56)と、
道路の特定区間を表す道路区間情報を取得する道路情報取得部(56)と、
前記位置情報を、該位置情報が表す位置に対応する前記道路区間情報に関連付ける区間決定部(56)と、
複数の前記位置情報及び前記道路区間情報をそれぞれ学習データとして記憶する記憶部(61)と、
前記位置情報を入力することにより乗員が所定の設定操作を行う推薦確率を算出するための確率モデルを、前記学習データを用いて構築する学習部(66)と、
前記学習部(66)で構築された確率モデルに前記車両の現在位置を表す現在位置情報を入力して前記推薦確率を算出し、該推薦確率に応じて、乗員の設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、前記所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、
前記修正された設定情報又は制御情報にしたがって、前記空調部(10)の空調制御を行う空調制御部(65)とを有し、
前記学習部(66)は、
前記学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部(662)と、
前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報から前記車両の位置に関する第1の範囲を決定し、前記第2のクラスタに含まれる道路区間情報から前記車両の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定部(663)と、
前記第1の範囲に含まれる前記車両の位置に対する前記推薦確率及び前記第2の範囲に含まれる前記車両の位置に対する前記推薦確率を決定することにより、前記確率モデルを構築する確率モデル構築部(664)と、
を有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
前記位置範囲設定部(663)は、前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報を示す識別情報によって前記第1の範囲を表す、請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記クラスタリング部(662)は、前記学習データに含まれる複数の位置情報のうち、互いの距離が所定値以下の位置情報を少なくとも一つの第3のクラスタにクラスタリングし、前記少なくとも一つの第3のクラスタに含まれない位置情報が関連付けられた道路区間情報を、前記第1のクラスタまたは前記第2のクラスタにクラスタリングする、請求項7または8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
移動物体に搭載された装置を制御する制御装置の制御方法であって、
前記制御装置は、記憶部(61)と、所定の設定操作と関連した少なくとも一つの確率モデルを有し、移動物体の位置を表す位置情報を前記確率モデルに入力して前記所定の設定操作を行う推薦確率を算出し、前記推薦確率に応じて、ユーザの設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、前記所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、前記修正された設定情報又は制御情報にしたがって、前記装置を制御する制御部(65)とを有し、
前記制御方法は、
前記位置情報を取得するステップと、
道路の特定区間を表す道路区間情報を取得するステップと、
前記位置情報を、該位置情報が表す位置に対応する前記道路区間情報に関連付けるステップと、
複数の前記位置情報及び前記道路区間情報をそれぞれ学習データとして前記記憶部(61)に記憶するステップと、
前記学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングする区間クラスタリングステップと、
前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報から前記移動物体の位置に関する第1の範囲を決定し、前記第2のクラスタに含まれる道路区間情報から前記移動物体の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定ステップと、
前記第1の範囲に含まれる前記移動物体の位置に対する前記推薦確率及び前記第2の範囲に含まれる前記移動物体の位置に対する前記推薦確率を決定することにより、前記確率モデルを構築するステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
前記位置範囲設定ステップは、前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報を示す識別情報によって前記第1の範囲を表す、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記学習データに含まれる複数の位置情報のうち、互いの距離が所定値以下の位置情報を少なくとも一つの第3のクラスタにクラスタリングする地点クラスタリングステップをさらに有し、
前記区間クラスタリングステップは、前記少なくとも一つの第3のクラスタに含まれない位置情報が関連付けられた道路区間情報を前記第1のクラスタまたは前記第2のクラスタにクラスタリングする、請求項10または11に記載の制御方法。
【請求項13】
空調空気を車両内に供給する空調部(10)と、記憶部(61)と、所定の設定操作と関連した少なくとも一つの確率モデルを有し、車両の位置を表す位置情報を前記確率モデルに入力して前記所定の設定操作を行う推薦確率を算出し、前記推薦確率に応じて、乗員の設定操作に関連する設定情報又は制御情報を、前記所定の設定操作となるように修正する制御情報修正部(64)と、前記修正された設定情報又は制御情報にしたがって、前記空調部(10)の空調制御を行う空調制御部(65)とを有する車両用空調装置の制御方法であって、
前記位置情報を取得するステップと、
道路の特定区間を表す道路区間情報を取得するステップと、
前記位置情報を、該位置情報が表す位置に対応する前記道路区間情報に関連付けるステップと、
複数の前記位置情報及び前記道路区間情報をそれぞれ学習データとして前記記憶部(61)に記憶するステップと、
前記学習データに含まれる複数の道路区間情報を、少なくとも第1のクラスタまたは第2のクラスタにクラスタリングする区間クラスタリングステップと、
前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報から前記車両の位置に関する第1の範囲を決定し、前記第2のクラスタに含まれる道路区間情報から前記車両の位置に関する第2の範囲を決定する位置範囲設定ステップと、
前記第1の範囲に含まれる前記車両の位置に対する前記推薦確率及び前記第2の範囲に含まれる前記車両の位置に対する前記推薦確率を決定することにより、前記確率モデルを構築する確率モデル構築ステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項14】
前記位置範囲設定ステップは、前記第1のクラスタに含まれる道路区間情報を示す識別情報によって前記第1の範囲を表す、請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
前記学習データに含まれる複数の位置情報のうち、互いの距離が所定値以下の位置情報を少なくとも一つの第3のクラスタにクラスタリングする地点クラスタリングステップをさらに有し、
前記区間クラスタリングステップは、前記少なくとも一つの第3のクラスタに含まれない位置情報が関連付けられた道路区間情報を前記第1のクラスタまたは前記第2のクラスタにクラスタリングする、請求項13または14に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−139231(P2009−139231A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316079(P2007−316079)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】