説明

信号機情報報知システム及び車載機

【課題】交通信号機の点灯状態をドライバに報知するシステムを、より簡単に構成する。
【解決手段】車載機1は、GPS受信機5より取得された車両の位置,及び自身が検知した車両の進行方向に基づいて、地図データ入力器6より自車両の走行経路上にある最も近い交差点の位置を特定すると、交差点の位置情報,進行方向情報,並びに自身を特定するID情報を送信する。指定信号機決定用演算装置12は、上記各情報を受信すると車両が前記交差点で対面する信号機16を特定し、信号機16のデータをID情報と共に交通管制センタ9の信号制御用コンピュータ14に送信する。信号制御用コンピュータ14は信号機16に関する点灯制御情報を車載機1に送信し、車載機1は、上記情報を受信して信号機16の点灯制御情報を表示装置7によりドライバに報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両がこれから対面する予定の交通信号機に関する点灯状態を、ドライバに報知するための信号機情報報知システム,及びそのシステムに使用される車載機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両がこれから対面する予定の交通信号機に関する点灯状態をドライバに報知するシステムについては、従来より様々な技術が提案されており、例えば、特許文献1〜3などに開示されている。
【特許文献1】特開平11−288497号公報
【特許文献2】特開2004−258867号公報
【特許文献3】特開平11−353585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,2に開示されている技術では、何れも車載機と通信を行うための通信機を各信号機毎に設置する必要があり、実際にシステムを構築することを想定するとコストが極めて高く、実現が困難である。また、特許文献3に開示されている技術では、やはり各信号機毎に灯火時間の経過を示す表示器を設置する必要があり、同様に実現が困難であると考える。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、交通信号機の点灯状態をドライバに報知するシステムを、より簡単に構成できる信号機情報報知システム,及びそのシステムに使用される車載機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の信号機情報報知システムによれば、車載機は、位置取得手段によって取得された車両の位置,及び方向検知手段により検知された車両の進行方向に基づいて、自車両の走行経路上にある最も近い交差点の位置を地図データベースより特定すると、交差点の位置情報,進行方向情報,並びに自身を特定するID情報を送信する。信号機特定手段は、車載機より送信された各情報を受信すると、前記車両が前記交差点において対面する信号機を特定し、その信号機のデータをID情報と共に管制センタに送信する。すると、管制センタは、前記信号機に関する点灯制御情報を車載機に送信し、車載機は、上記情報を受信して、自車両が対面する信号機の点灯制御に関する情報をドライバに報知する。
【0006】
即ち、本発明の信号機情報報知システムでは、車載機が自車両の位置並びに自身のID情報を管制センタ側に伝達し、その結果、前記車両が対面する信号機が特定され、特定された信号機の点灯制御情報が前記車載機に送信される。従って、従来技術とは異なり、各信号機の点灯制御情報を車両側に伝達するため信号機毎に送信機を設置する必要がなく、センタ側通信手段は管制センタに付随して1箇所だけ設け、その管制センタが管理しているエリア内に位置する複数の車載機との間で広域通信を行うようにすれば良い。よって、システムを従来よりも極めて低いコストで構成することができる。
【0007】
請求項2記載の信号機情報報知システムによれば、管制センタは、点灯制御情報として、交通信号機の点灯パターンと、当該交通信号機に対して直前に送信した点灯指令及びその送信時刻とを送信し、車載機は、自車両が対面する信号機の次の点灯状態を報知するので、管制センタより取得した情報に基づいて、ドライバに対し、信号機の次の点灯状態を確実に報知することができる。
【0008】
請求項3記載の信号機情報報知システムによれば、車載機は、交通信号機の次の点灯状態に切替わるまでの時間も報知するので、ドライバは、信号機の点灯状態が後どれ位で次の表示に切替わるのかをより具体的に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1は、信号機情報報知システムの全体構成を示す機能ブロック図であり、図2は、同システム構成をより実態に即したイメージで示す図である。車載機1は、車両用ナビゲーション装置2に、信号機指定情報送信機(車載側通信手段)3及び指定信号機情報受信機(車載側通信手段)4を組み合わせたもので構成されている。ナビゲーション装置2については、本発明の要旨に係る部分のみを概略的に示している。
【0010】
ナビゲーション装置2は、GPS(Global Positioning System)受信機5,地図データ入力器(地図データベース)6,表示装置(報知手段)7及び制御装置(方向検知手段)8などを備えている。GPS受信機(位置取得手段)5は、GPS衛星からの送信電波(GPS信号)に基づいて車両の現在位置を検出する。また、一般的なナビゲーション装置のように、その他、車両の回転角速度を検出するジャイロスコープや、車両の走行距離を検出する距離センサ、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を備え、それらのセンサ情報に基づいてGPS信号を受信できない期間に車両の位置を補完するようにしても良い。
【0011】
地図データ入力器6は、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種データを記録した地図データ記録メディアからデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。地図データ記録メディアには、DVD等の大容量記憶媒体を用いるのが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク装置等の媒体を用いてもよい。
【0012】
上記道路地図データは、道路形状、道路幅、道路名、信号、踏切、建造物、各種施設、地名、地形等のデータを含むとともに、その道路地図を表示装置7の画面上に表示するためのデータを含んでいる。また、目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなり、このデータにはそれらの電話番号や住所、緯度および経度等のデータが含まれるとともに、施設を示すランドマーク等を、表示装置7の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータを含んで構成されている。
【0013】
制御装置8を構成するマイコンは、CPU、メモリ(RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等)、I/Oなどを備えている。CPUがROM(またはフラッシュメモリ)に記憶されたプログラムを実行することにより、制御装置8は、目的地設定手段、経路探索手段、表示制御手段、経路案内手段、通過経路特定手段、機能制御手段、現在位置修正手段として機能する。経路探索手段としての機能は、車両の出発地(現在位置)から目的地までの推奨する走行経路を自動計算するものであり、その手法としては例えばダイクストラ法が用いられている。
【0014】
経路案内手段としての機能は、走行経路に沿って移動可能なように、表示装置7の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両の現在位置と進行方向を示す現在地マークを道路地図に重ね合わせて表示する機能である。この場合、車両の走行に伴って現在地の表示は地図上を移動し、地図は車両の位置に応じてスクロール表示される。このとき、車両の現在地を道路上にのせるマップマッチングが行われる。
【0015】
信号機指定情報送信機3及び指定信号機情報受信機4は、交通管制センタ9に付随して設置されている信号機指定情報受信機(センタ側通信手段)10及び指定信号機情報送信機(センタ側通信手段)11との間で広域通信を行うもので、例えば、電波信号を用いて両者間で直接通信を行うものや、自動車電話網等のインフラを介して通信を行うものでも良い。そして、制御装置8と車両側の送信機3及び受信機4との間で送信データ及び受信データが転送され、送信機3は、与えられた送信データに基づき変調処理を行なうと信号を送信し、受信機4は、受信した信号を復調して受信データを出力する。
【0016】
一方、交通管制センタ9側において、受信機10が受信し復調したデータは、指定信号機決定用演算装置(信号機特定手段)12に出力される。この演算装置12は、交通管制センタ9が管理している所定のエリア内に設置されている交通信号機の位置データが記録されている信号機リストデータベース(信号機データベース)13にアクセスして、上記位置データを取得可能となっている。また、演算装置12は、取得した信号機の位置データを信号制御用コンピュータ14に出力する。
【0017】
信号制御用コンピュータ14は、通信装置15を介し、管理しているエリア内に設置されている各交通信号機16(実際は複数存在するが、図示の都合上1つのみ示す)に対して点灯制御指令を送信する。また、信号制御用コンピュータ14は、各交通信号機16に車両感知器17が設置されている場合は、その車両感知器17による車両感知状況も参照して点灯制御指令を決定する。更に、信号制御用コンピュータ14は、指定信号機情報送信機11を介して、車両側の指定信号機情報受信機4に各種情報を送信するようになっている。
【0018】
次に、本実施例の作用について図2乃至図4も参照して説明する。ナビゲーション装置2の制御装置8は、GPS受信機5より自車両の位置を取得し、その位置情報の履歴から進行方向の方位(a)を計測する。そして、その計測結果と、地図データ入力器6より取得した道路地図データより、自車両が走行している経路上において最も近い位置にある交差点の位置情報(b)を算出する。
【0019】
すると、制御装置8は、自車両の方位(a),交差点の位置情報(b),並びに車載機1に付与されているID情報(x)を、信号機指定情報送信機3を介して送信する。送信された上記の各情報は、信号機指定情報受信機10を介して指定信号機決定用演算装置12に受信される。すると、演算装置12は、信号機リストデータベース13にアクセスして位置情報(c)を取得し、方位(a),位置情報(b)から、これらの情報を送信した車載機1の車両が、以降に走行経路上で最初に遭遇する交通信号機がどれになるかを決定し、その位置データ(d)を、車載機1のID情報(x)と共に信号制御用コンピュータ14に送信する。
【0020】
即ち、図2に示すように、車載機1を搭載した車両18が、位置情報(b)の交差点に向っている場合、当該交差点が十字路であれば、通常四方の進入方向に応じて4つの信号機が配置されている。そのため、演算装置12は、車両の進行方位(a)と交差点の位置情報(b)に基づいて、車両18が対面する交通信号機16の位置(d)を特定する。そして、信号制御用コンピュータ14は、位置データ(d)に対応する信号機16について、点灯パターン(e)のデータと、その直前に信号機16に送信していた点灯指令(f)及びその送信時刻(g)のデータとを、指定信号機情報送信機11を介して車載機1に送信する。
【0021】
ここで、図3には、信号制御用コンピュータ14が各信号機に出力する制御データである、点灯パターン(e)のフォーマットの一例を示す。各信号機については、青,黄,赤を夫々何秒ずつ点灯させて切り替えるかが、制御パターンとして決まっている。また、一部の信号機は、前述した車両感知器による車両感知状態に応じて、制御パターンの一部を変更する場合もある。
【0022】
車両側の指定信号機情報受信機4は、点灯パターン(e),点灯指令(f)及びその送信時刻(g)を、指定信号機情報送信機11を介して受信すると、それらのデータを制御装置8に出力する。すると、制御装置8は、その時点の現在時刻(h)を、内蔵しているリアルタイムクロックICやGPS受信機5より取得し、最初に遭遇する信号機16が次に切替わる点灯状態(i)、及び次の点灯状態に遷移するまでの残り時間(j)を求めて表示装置7に出力し、それらの情報を表示させる。
図4には、表示装置7による表示例を示す。点灯状態(i)として、「目の前の信号機は、現在[赤]です。」を表示し、残り時間(j)として、「約30秒後に[青]に切替わります。」を表示する。そして、残り時間の表示は、時間経過に応じて1秒毎にカウントダウンさせるよう表示を切り替える。
【0023】
以上のように本実施例によれば、車載機1は、GPS受信機5によって取得された車両の位置,及び自身が検知した車両18の進行方向に基づいて、自車両18の走行経路上にある最も近い交差点の位置を地図データ入力器6より特定すると、交差点の位置情報,進行方向情報,並びに自身を特定するID情報を送信する。指定信号機決定用演算装置12は、車載機1より送信された各情報を受信すると、車両18が前記交差点において対面する信号機16を特定し、その信号機16に関する情報を前記ID情報と共に交通管制センタ9の信号制御用コンピュータ14に送信する。
【0024】
すると、信号制御用コンピュータ14は、信号機16の点灯制御情報を車載機1に送信し、車載機1は、上記情報を受信して信号機16の点灯制御に関する情報を表示装置7によりドライバに報知する。従って、従来技術とは異なり、各信号機の点灯制御情報を車両側に伝達するため、信号機毎に送信機を設置する必要がなく、信号機指定情報受信機10及び指定信号機情報送信機11は、交通管制センタ9に付随して1箇所だけ設け、その交通管制センタ9が管理しているエリア内に位置する複数の車載機との間で広域通信を行うようにすれば良い。よって、システムを従来よりも極めて低いコストで構成することができる。
【0025】
また、交通管制センタ9は、点灯制御情報として、信号機16の点灯パターンと、当該交通信号機に対して直前に送信した点灯指令及びその送信時刻とを送信し、車載機1は、信号機16の次の点灯状態を報知するので、交通管制センタ9より取得した情報に基づいて、ドライバに対し、次に切替わる点灯状態を確実に報知することができる。
更に、車載機1は、信号機16が次の点灯状態に切替わるまでの残り時間も報知するので、ドライバは、信号機16の点灯状態が後どれ位で次の表示に切替わるのかをより具体的に知ることができる。
【0026】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
ドライバに対する報知は、スピーカより音声信号を出力して行っても良い。その場合、残り時間の報知は、例えば5秒毎や10秒毎に行うようにすれば良い。
また、次の点灯状態に切替わるまでの残り時間の報知は、必要に応じて行えば良い。
また、車両が最初に遭遇する信号機の現在の点灯状態を報知しても良い。更に、その点灯状態が後何秒継続するかを報知しても良い。
ナビゲーション装置2がジャイロスコープやGセンサ,傾斜センサ等を備えている場合は、それらを方向検知手段として使用すれば良い。
車載機は、ナビゲーション装置2を利用して構成するものに限らず、必要な機能のみを備えることで、本発明のシステムに対応した専用の機器を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例であり、信号機情報報知システムの全体構成を示す機能ブロック図
【図2】図1のシステム構成をより実態に即したイメージで示す図
【図3】各信号機に出力する点灯パターンのフォーマットの一例を示す図
【図4】車載機の表示装置による表示例を示す図
【符号の説明】
【0028】
図面中、1は車載機、2は車両用ナビゲーション装置、3は信号機指定情報送信機(車載側通信手段)、4は指定信号機情報受信機(車載側通信手段)、5はGPS受信機(位置取得手段)、6は地図データ入力器(地図データベース)、7は表示装置(報知手段)、8は制御装置(方向検知手段)、9は交通管制センタ、10は信号機指定情報受信機(センタ側通信手段)、11は指定信号機情報送信機(センタ側通信手段)、12は指定信号機決定用演算装置(信号機特定手段)、13は信号機リストデータベース(信号機データベース)、14は信号制御用コンピュータ、16は交通信号機、18は車両を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両の位置情報を取得する位置取得手段と、前記車両の進行方向を検知する方向検知手段と、地図データベースと、外部と無線通信を行う車載側通信手段と、前記車両のドライバに報知を行うための報知手段とを備えてなる車載機と、
複数の交通信号機の点灯を集中制御する管制センタと、
前記複数の交通信号機が設置されている位置のデータが記録されている信号機データベースと、
前記管制センタに対して情報の送信が可能に構成されると共に、外部より与えられる車両の走行情報に基づいて前記信号機データベースにアクセスし、前記走行中の車両がこれから対面すると推定される信号機を特定する信号機特定手段と、
前記車載機の通信手段と無線通信を行うセンタ側通信手段とで構成される信号機情報報知システムにおいて、
前記車載機は、前記位置取得手段によって取得された車両の位置,及び前記方向検知手段により検知された車両の進行方向に基づいて、前記地図データベースより、自車の走行経路上にある最も近い交差点の位置を特定すると、前記交差点の位置情報,前記進行方向情報,並びに自身を特定するID情報を前記車載側通信手段を介して送信し、
前記信号機特定手段は、前記センタ側通信手段を介して前記各情報を受信すると、当該情報に基づき前記車両が前記交差点において対面する信号機を特定し、その信号機のデータを前記ID情報と共に前記管制センタに送信し、
前記管制センタは、前記信号機に関する点灯制御情報を、前記センタ側通信手段を介して前記車載機に送信し、
前記車載機は、前記車載側通信手段を介して前記情報を受信すると、前記報知手段により当該情報に基づく報知を行なうことを特徴とする信号機情報報知システム。
【請求項2】
前記管制センタは、前記点灯制御情報として、交通信号機の点灯パターンと、当該交通信号機に対して直前に送信した点灯指令及びその送信時刻とを送信し、
前記車載機は、前記交通信号機の次の点灯状態を報知することを特徴とする請求項1記載の信号機情報報知システム。
【請求項3】
前記車載機は、前記交通信号機が次の点灯状態に切替わるまでの時間も報知することを特徴とする請求項2記載の信号機情報報知システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の信号機情報報知システムに使用されることを特徴とする車載機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−33774(P2008−33774A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208347(P2006−208347)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】