光モジュールの製造方法
【課題】光伝送路と光半導体素子とを光路変換用光導波路を用いて光結合させる際に、光軸の調整にかかる手間を低減し、かつ、少ない構成部品数で信頼性が高く、ローコストに製造が可能な光モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】光半導体素子21に未硬化の透明樹脂31を盛り付ける工程と、盛り付けた透明樹脂31に光伝送路22を差し込む工程と、透明樹脂31に差し込んだ光伝送路22を光半導体素子21から遠ざけ、透明樹脂31を引き伸ばす工程と、透明樹脂31を硬化させて、光伝送路22と光半導体素子21との間で光を伝送させる光路誘導部33を形成する工程とを備えたことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【解決手段】光半導体素子21に未硬化の透明樹脂31を盛り付ける工程と、盛り付けた透明樹脂31に光伝送路22を差し込む工程と、透明樹脂31に差し込んだ光伝送路22を光半導体素子21から遠ざけ、透明樹脂31を引き伸ばす工程と、透明樹脂31を硬化させて、光伝送路22と光半導体素子21との間で光を伝送させる光路誘導部33を形成する工程とを備えたことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子と、この光半導体素子に対して光学的に接続された光伝送路とを有する光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールは、基板に搭載された光半導体素子と、端部がこの基板に対して一定の角度になるように設置された光伝送路とを備えている。従来、この光半導体素子の受発光部と光伝送路の端部とを光学的に結合させるために、例えば、光路変換用のミラーと集光レンズとを組み合わせることで、光学的に接続(光結合)させる構造が一般に用いられている。
【0003】
しかしながら、こうした光路変換用のミラーや集光レンズは、製造コストが高く、また、光結合のために必要な部品点数も多いため、光モジュールのコストアップの主要因となっていた。こうした光モジュールの製造コストを低減し、よりローコストに光モジュールを提供するため、例えば、特許文献1には、一方の面から入射された複数の入射光を、進行方向を変えて他方の面から出射させる光路変換用光導波路を用いて、アレイ状面型光素子とアレイ状光ファイバとを光結合させた光モジュールが開示されている。
【0004】
特許文献1に記載された光モジュールによれば、光路変換用光導波路は、光の進行方向に沿って表裏両面に溝が設けられた第1クラッドと、この第1クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有する透明材料とからなり、溝に埋設されるコアと、このコアの表出面を含む面を覆い、第1クラッドと一体化された状態でこの第1クラッドの表裏面上にそれぞれ設けられた第2クラッドおよび第3クラッドとを有している。このような構成によって、光結合部の部品数を低減して、光モジュールの低コスト化が実現可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−91684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された従来の光モジュールでは、光路変換用光導波路を通る光を、正確にアレイ状面型光素子の受発光面に入射させるためには、光路変換用光導波路をXYZの3方向に対して全て正確に位置決めしなければならない。さらに、光路変換用光導波路を、XYZ軸を中心とする回転方向(以下θφψ方向と称する)についても正確に位置決めしなければならない。
【0007】
よって、この位置決めのために光路変換用光導波路から光を常に出射させてアレイ状面型光素子の受光信号をモニタし、光のパワーが最大となるように光路変換用光導波路をXYZ方向およびθφψ方向について調芯しなければならない。このため、光モジュールの組立作業にあたって、こうした光軸の調整に多大な時間がかかり、光モジュールの製造コストが高くなるという課題があった。
【0008】
また、こうした特許文献1に記載された従来の光モジュールでは、光路変換用光導波路のコアを形成するためにクラッドが必要となり、光路変換用光導波路の製造コストが高くなるとともに、こうしたクラッドの成形には金型が必要なため、光路変換用光導波路の製造コストが高くなるという課題もあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、光伝送路と光半導体素子とを光路変換用光導波路を用いて光結合させる際に、光軸の調整にかかる手間を低減し、かつ、少ない構成部品数で信頼性が高く、ローコストに製造が可能な光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光モジュールの製造方法は、光半導体素子に未硬化の透明樹脂を盛り付ける工程と、盛り付けた透明樹脂に光伝送路を差し込む工程と、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から遠ざけ、前記透明樹脂を引き伸ばす工程と、前記透明樹脂を硬化させて、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を伝送させる光路誘導部を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から略放物線形状に遠ざけ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を徐々に曲げながら導波させつつ伝送させる光路誘導部を形成することができる。
また、前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から斜め上方向に引き上げ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を反射させて光結合させる光路誘導部を形成することができる。
【0011】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光伝送路と前記光半導体素子とを、互いの光軸が所定の角度で交わるように配することが好ましい。
また、前記光路誘導部を、前記光伝送路と前記光半導体素子にそれぞれ密着させることが好ましい。
また、前記光路誘導部を、単一の透明樹脂のみから形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光モジュールの製造方法によれば、光半導体素子に透明樹脂を盛り付けて、この透明樹脂に光伝送路を差し込んで引き上げた後、透明樹脂を硬化させるだけで、光半導体素子と光伝送路とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部を形成することが可能になる。このため、光路誘導部の形成に際して、樹脂を象る金型等も必要なく、少ない工程、かつ少ない構成部品で極めてローコストに光モジュールを製造することが可能になる。
【0013】
本発明により得られる光モジュールは、光伝送路と光半導体素子とを光結合させるために、光路誘導部でこれら光伝送路と光半導体素子とを接続するだけでよいので、簡易な構成で光伝送路と光半導体素子との間で光を伝播させることが可能になる。
【0014】
しかも、この光路誘導部は、透明樹脂だけで構成されているので、極めてローコストに、しかも簡易な工程で光モジュールが製造可能である。光路誘導部に透明樹脂を用いることによって、透明樹脂と外気との屈折率差によって、光路誘導部に入射した光を透明樹脂内に封じつつ伝播できるので、透明樹脂の周面に更にクラッドなどの被覆層を形成する必要がなく、光モジュールの製造コストを一層低減できる。
【0015】
さらに、こうした光路誘導部は、光伝送路と光半導体素子との間で、内部に光を封じつつ伝播させるので、光伝送路と光半導体素子とを光結合させる際に、調心のトレランスが大きくパッシブ調心が可能であるので、少ない工程で、かつ短時間に光モジュールを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の光モジュールの製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す斜視図である。
【図6】光路誘導部の具体的な形状の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の光モジュールの具体例を示す断面図である。
【図8】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図9】図8の光モジュールの製造方法の一例を示す断面図である。
【図10】図8の光モジュールの要部を示す部分拡大断面図である。
【図11】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る光モジュールの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
図1は、光半導体素子の一例として発光素子を用いた、本発明の光モジュールの構成を示す側面断面図および俯瞰図である。光モジュール10は、発光素子(光半導体素子)11、光伝送路12、および光路誘導部(光路変換用光導波路)13とを有している。発光素子11は、例えば、基板14の一面に配されている。
【0019】
光伝送路12は、発光素子11から出射された光R1を透過させる部材、例えば、光ファイバであればよい。光路誘導部13は、光伝送路12の端部12aと、発光素子11の受発光部11aとを光学的に接続する(光結合させる)ものであり、全体が透明樹脂によって形成されている。なお、ここでいう透明樹脂とは、発光素子11と光伝送路12との間を伝播する光を透過させることが可能なものを指している。従って、必ずしも可視光下で無色透明な色調のものに限定されるものではない。
【0020】
光伝送路12と発光素子(光半導体素子)11とは、互いに一定の角度で配されていればよい。ここでいう一定の角度とは、図1に示す光伝送路12の光軸L1と発光素子(光半導体素子)11の光軸L2との成す角度θであればよい。また、光伝送路12の端部12aや発光素子11の発光部11aが平面である場合には、この端部12aと発光部11aとの成す角度であってもよい。更に、光伝送路12の端部12aにおける光の進行方向と、発光素子11の発光部11aにおける光の進行方向との成す角度であってもよい。
【0021】
光路誘導部13は、光伝送路12と発光素子11との間で、光を伝送させる。光路誘導部13の端部の幅は、発光素子11の発光部11aの幅よりも大きくなるように形成されていればよい。
このような光モジュール10は、発光素子11の発光部11aから出射した光R1が光路誘導部13に入射する。そして、光路誘導部13を構成する透明樹脂と外気との屈折率差によって、入射した光R1は透明樹脂に閉じ込められながら透明樹脂に沿って導波する。そして、光R1は光伝送路12の端部12aから光伝送路12内に入射され、光伝送路12内を伝播する。
【0022】
このような構成の本発明の光モジュール10によれば、光伝送路12と発光素子(光半導体素子)11とを光結合させるために、光路誘導部13でこれら光伝送路12と光半導体素子11とを接続するだけでよいので、簡易な構成で光伝送路12と発光素子11との間で光を伝播させることが可能になる。これにより、少ない部品数でローコストに光モジュールを提供することが可能になる。
【0023】
しかも、この光路誘導部13は、透明樹脂だけで構成されているので極めてローコストで、しかも簡易な工程で光モジュールが製造可能である。光路誘導部13に透明樹脂を用いることによって、透明樹脂と外気との屈折率差によって、光路誘導部13に入射した光を透明樹脂内に封じつつ伝播できるので、透明樹脂の周面に更にクラッドなどの被覆層を形成する必要がなく、光モジュール10の製造コストを一層低減できる。
【0024】
さらに、こうした光路誘導部13は、光伝送路12と発光素子11との間で、内部に光を封じつつ伝播させるので、光伝送路12と発光素子11とを光結合させる際に、調心のトレランスが大きく、パッシブ調心が可能であるので、少ない工程で、かつ短時間に光モジュール10を製造することが可能である。
【0025】
光モジュール10を構成する基板14上には、更に回路配線16が形成されている。また、こうした回路配線16と光半導体素子11とを電気的に接続するため、発光素子11に電力を供給するワイヤ配線(給電用配線)17が形成されるとともに、光半導体素子11の下面(裏面)と回路配線16とが、導電性接着剤(図示せず)により、電気的に接続されている。
【0026】
発光素子11は、例えば、VCSEL,LEDなどの発光素子であればよい。光伝送路12は、例えば、光ファイバ、POF、石英光導波路、高分子光導波路などが挙げられる。
【0027】
光路誘導部13を構成する透明樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。なお、この光路誘導部13は、光軸に沿った断面の輪郭(外面)が放物線を描くように形成されているのが好ましい。こうした光路誘導部13の外面形状は、後述する光モジュールの製造方法によって形成される。
【0028】
なお、光路誘導部13は、単一の透明樹脂から形成されている。ここでいう単一の透明樹脂とは、成分(組成)が均一(単一)、特定の波長の光に対する透過率が均一、物理的に2層以上ではない(界面がない)など、いずれの意味も包含するものである。
【0029】
基板14は、例えは、ガラスエポキシ基板、セラミック基板など一般的な各種絶縁基板を使用することができる。ワイヤ配線(給電用配線)17としては、例えば、金ワイヤ、アルミワイヤ、銅ワイヤなどが好ましく挙げられる。
【0030】
図2は、光半導体素子として受光素子を用いた光モジュールの構成を示す側面断面図および俯瞰図である。光モジュール70は、受光素子(光半導体素子)71、光伝送路72、および光路誘導部(光路変換用光導波路)73とを有している。受光素子71は、例えば、基板74の一面に配されている。
【0031】
光路誘導部73は、光伝送路72の端部72aと、受光素子71の受光部71aとを光学的に接続する(光結合させる)ものであり、全体が透明樹脂によって形成されている。
光伝送路72と受光素子71とは、互いに一定の角度で配されていればよい。そして、光路誘導部73は、こうした配置の光伝送路72と受光素子71との間で、光R2を伝送させる。
【0032】
このような構成の本発明の光モジュール70によれば、光伝送路72中を伝播して光伝送路72の端部72aに達した光R2は、そのまま光路誘導部73に入射する。そして、光路誘導部73を構成する透明樹脂と外気との屈折率差によって、入射した光R2は透明樹脂に閉じ込められながら透明樹脂に沿って導波する。そして、光R2は受光素子71の受光部71aに入射する。なお、受光素子71は、例えば、PDなどの受光素子であればよい。
【0033】
次に、本発明の光モジュールの製造方法について説明する。説明にあたって、前述した図1に示す構成の光モジュールの製造方法を例示する。図3は、本発明の光モジュールの製造工程を段階的に示した説明図である。図3(a)に示すように、予め配線回路26が形成され、光半導体素子21が実装された基板24を用意する。そして、この光半導体素子21の受発光部21aに対して、樹脂ディップ装置29を用いて、未硬化の透明樹脂31、例えば、UV硬化性樹脂を盛り付ける(光半導体素子に未硬化の透明樹脂を盛り付ける工程)。ここで、未硬化の透明樹脂を盛りつける工程と、光伝送路を方向Lに動かす工程の順序は、反対でも良い。ただし、順序を反対にすると、実装の最適条件は変わる。
【0034】
続いて、図3(b)に示すように、光伝送路22を基板24に沿う方向Lに動かし、光半導体素子21に対して光伝送路22の端部22aを、盛り付けた透明樹脂31に向けて差し込む(透明樹脂に光伝送路を差し込む工程)。
【0035】
そして、透明樹脂31に差し込んだ光伝送路22を光半導体素子21から遠ざけるように移動させる(透明樹脂を引き伸ばす工程)。この時、光伝送路22は光半導体素子21から略放物線形状を描く方向Rに遠ざける。即ち、光伝送路22を略放物線形状を描く方向Rに向けてゆっくりと引き上げる。これによって、粘性のある透明樹脂31は、外形が略放物線形状を成して引き伸ばされる(図3(c)参照)。
【0036】
この後、図3(c)に示すように、透明樹脂31が略放物線形状に引き伸ばされた状態で、透明樹脂31に対して、例えばUV(紫外線)を照射し、透明樹脂31を硬化させる(光路誘導部を形成する工程)。これにより、光半導体素子21と光伝送路22とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部33が形成され、光モジュール30が完成する。
【0037】
なお、光伝送路22の引き上げ量は、光モジュール30を構成する光伝送路22や光半導体素子21の構造、透明樹脂の塗布量などに応じて最適値が存在する。予めこうした最適値を調べておけば、上述した作製工程を全て自動化することが可能になり、より一層の省力化を実現できる。
【0038】
このように、本発明の光モジュールの製造方法によれば、光半導体素子21に透明樹脂31を盛り付けて、この透明樹脂31に光伝送路22を差し込んで引き上げた後、透明樹脂31を硬化させるだけで、あるいは、光伝送路22の先端を光半導体素子21上に配置してから光半導体素子21上に透明樹脂31を盛り付けた後、光半導体素子21と光伝送路22とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部13を形成することが可能になる。このため、光路誘導部13の形成に際して、樹脂を象る金型等も必要なく、少ない工程、かつ少ない構成部品で極めてローコストに光モジュールを製造することが可能になる。
【0039】
図4は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。この実施形態における光モジュール40は、基板44上に形成された光半導体素子41、光伝送路42、およびこの光半導体素子41と光伝送路42とを光結合する光路誘導部43が、保護部49によって覆われている。
【0040】
この保護部49は、光路誘導部43を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成されていれば良い。また、保護部49は、基板44上に形成された回路配線46と光半導体素子41とを電気的に接続し、光半導体素子41に電力を供給するワイヤ配線(給電用配線)47全体を封止する構成であってもよい。
【0041】
このような保護部49を形成することによって、光伝送路42の端部42a、光半導体素子41、および光伝送路42を外部の応力から保護することができる。これにより、光モジュール40の物理的な耐久性を向上させることが可能になる。また、外部の応力によって破損しやすいワイヤ配線(給電用配線)47も、確実に保護することが可能になる。
そして、保護部49を光路誘導部43を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成することで、光路誘導部43の中を伝播する光が保護部49の方に入射してしまい、光が散乱することを防止できる。
【0042】
図5は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す斜視図である。この実施形態における光モジュール50は、基板54上に、それぞれ複数並列して形成された光半導体素子51a,51b、光伝送路52a,52b、およびこの光半導体素子51a,51bと光伝送路52a,52bとをそれぞれ光結合する光路誘導部53a,53bが、単一の保護部59によって覆われている。このうち、例えば光半導体素子51aは受光素子、光半導体素子51bは発光素子であればよい。また、光伝送路52a,52bは、クラッドの役割を果たす被覆材58によって一体に覆われている。
【0043】
この保護部59は、光路誘導部53a,53bを構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成されていれば良い。また、保護部59は、基板54上に形成された回路配線56と光半導体素子51a,51bとをそれぞれ独立して電気的に接続し、光半導体素子51a,51bに電力を供給するワイヤ配線(給電用配線)57a,57b全体を封止する構成であってもよい。
【0044】
このような保護部59を形成することによって、被覆材58で一体にされた光伝送路52a,52bの端部、光半導体素子51a,51b、および光伝送路52a,52bを外部の応力から確実に保護することができる。これにより、光モジュール50の物理的な耐久性を向上させることが可能になる。また、外部の応力によって破損しやすいワイヤ配線(給電用配線)57a,57bも、確実に保護することが可能になる。そして、保護部59を光路誘導部53a,53bを構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成することで、光路誘導部53a,53bの中を伝播する光が保護部59の方に入射してしまい、光が散乱することを防止できる。
【0045】
図6は、本発明の光モジュールにおける、光路誘導部の形状の具体例を示す断面図である。光路誘導部63の形状は、例えば、光伝送路62の端部62aから光半導体素子61の受発光部61aに向けて、周面が湾曲面を成すように形成されていれば良い。
【0046】
また、光路誘導部63と光半導体素子61の受発光部61aとの接合部分においては、光路誘導部63の接合面の大きさと、光半導体素子61の受発光部61aの大きさが、略同一であることが好ましい。これによって、光伝送の際の光損失を最小限に抑え、光伝送路62の端部62aと光半導体素子61の受発光部61aとの間で光伝送効率の高い光路誘導部63を形成することができる。
【0047】
図7は、本発明の光モジュールの具体例を示す断面図である。この実施形態における光モジュール80は、光伝送路81と、これに接続される光路誘導部82、光半導体素子83などを備えている。光伝送路81は、光ファイバ81aを金属被覆81bで覆ったものが用いられている。この光伝送路81は、基板84に形成されたパッケージ85に、はんだ86で固定されている。
【0048】
こうした、金属被覆81bで覆われた光伝送路81は、光ファイバ81aの外側に、スパッタリング、無電解メッキ、あるいは電解メッキ等によって、金属をコートすることで得られる。こうした金属コートは、光ファイバ素線に直接形成しても、また、光ファイバ素線を保護する樹脂コートに重ねて形成しても良い。コートする金属としては、例えば、Ag,Au,Cu,Sn,Zn、またはこれら金属を複数種用いた多層コート、あるいはこれら金属の合金などが挙げられる。
【0049】
このように、光ファイバ81aを金属被覆81bで覆った光伝送路81は、形状の維持力が高く、組立工程において光ファイバの振動を抑制できるので、光伝送路81の組み込み位置での位置決めを容易にすることができる。また、製造工程における製造時間の短縮といった効果が得られる。更に、金属被覆81bで覆うことによって、光伝送路81を基板84やパッケージ85に対して、はんだによって固定することが可能になり、光ファイバの固定強度を高めることができる。
【0050】
また、金属被覆81bを電気回路と接続すれば、この金属被覆81bを電気回路の一部として使用することも可能になり、光電気複合配線を実現することができる。こうした金属被覆81bを備えた光伝送路81は、データ通信用に用いることで光と電気による片側二重通信や、双方向通信が実現可能となる。また、光半導体素子83への電源供給ラインとして用いることもできる。
【0051】
図8は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
図8に示す光モジュール5は、基板4の上面である実装面4aに実装された光半導体素子1と、基板4の実装面4aに沿い、かつ基板4の実装面4aから離間して配置された光伝送路2と、光伝送路2と光半導体素子1との間を光学的に結合する光路誘導部3とを備えている。
【0052】
光半導体素子1は、光信号を出射または入射させる部分として受発光部1aを有する。光半導体素子1が受光素子である場合は、受発光部1aは受光部である。光半導体素子1が発光素子である場合は、受発光部1aは発光部である。
【0053】
光半導体素子1は、基板4の実装面4aに形成された回路配線6に対して、接合材により電気的に接続されている。例えば、本形態例の場合は、光半導体素子1の上部(表面)に形成された電極(図示せず)とワイヤ配線7などからなる給電用配線により、回路配線6と電気的に接続されている。また、光半導体素子1の下面(裏面)と回路配線6とが、導電性接着剤(図示せず)により、電気的に接続されている。
【0054】
光半導体素子1は、その光軸1bが光伝送路2の光軸2b(特に端部2a付近における光軸2b)に所定の角度θで交差するように配置されている。光半導体素子1および光伝送路2の光軸1b,2bが互いに垂直(または略垂直)に配置されることが好ましい。
光伝送路2は、光路誘導部3に対する光の出入射の方向が一定となるように、少なくとも端部2a付近では、光軸2bが直線状であることが好ましい。
【0055】
光路誘導部3は、伝送される光に対して透明な樹脂からなる。光路誘導部3を構成する樹脂は、光半導体素子1の受発光部1aの少なくとも一部および光伝送路2の端部2aの少なくとも一部にそれぞれ密着している。
ここでいう透明樹脂とは、光半導体素子1と光伝送路2との間を伝送する光を透過させることが可能なものを指している。従って、必ずしも可視光下で無色透明な色調のものに限定されるものではない。また、光が伝送する樹脂内の光路長が短いため、ある程度透明性があれば良い。
透明樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。透明樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0056】
本形態例の光路誘導部3は、光路誘導部3の外面3aが外部の気体との界面を形成しており、光路誘導部3を構成する透明樹脂は、光伝送路2の光軸2bと光半導体素子1の光軸1bとが交差する交点Pの位置には存在せず、光路誘導部3の外面3a(光路誘導部3と外部の気体との界面)が、光半導体素子1の受発光部1aおよび光伝送路2の端部2aの側に凹んだ形状となっている。また、図10に示すように、光路誘導部3内を進行する光R3は、界面3aで反射する。
【0057】
光半導体素子1が受光素子の場合には、光伝送路2から光路誘導部3に入射した光は、光路誘導部3を構成する透明樹脂とその外部の気体(例えば空気や乾燥窒素ガスなど)との界面3aとの屈折率差により反射されて光半導体素子1に入射する。
また、光半導体素子1が発光素子の場合には、光半導体素子1から光路誘導部3に入射した光は、光路誘導部3を構成する透明樹脂と外部の気体との界面3aとの屈折率差により反射されて光伝送路2に入射する。
【0058】
光路誘導部3の形状は、図8に示すように、光伝送路2の端部2aの一部が光路誘導部3の外側に露出されてもよい。この場合、光路誘導部3を構成する透明樹脂は、図10に示すように、光伝送路2の端面2aの上端2cの高さ2dより下側の範囲内に収まることが好ましい。これにより、光半導体素子1の受発光部1aから光路誘導部3の外面3aまでの距離や、光伝送路2の端面2aから光路誘導部3の外面3aまでの距離がより短くなる。光伝送路2のコア(図示せず)の全断面積が光路誘導部3に覆われることが好ましい。
なお、上端2cの高さ2dは、基板4の実装面4aを基準とした高さ(実装面4aに垂直な方向の距離)である。
【0059】
光路誘導部3の外面3aは、それぞれ光半導体素子1の受発光部1aおよび光伝送路2の端部2aの位置に近い方が、透明樹脂の界面3aにおける反射によって光半導体素子1と光伝送路2との間を光結合する際に、光が拡散する範囲が狭くなり、損失を低減することができる。このため、光路誘導部3は、光半導体素子1の光軸1bと光伝送路2の光軸2bとが交差する交点Pの位置には前記樹脂が存在せず、樹脂の外面3aが受発光部1aに対向する位置が交点Pと受発光部1aとの間にあり、かつ、樹脂の外面3aが光伝送路2の端部2aに対向する位置が交点Pと光伝送路2の端部2aとの間にあることが好ましい。
【0060】
さらに本形態例の光路誘導部3は、透明樹脂の周囲が気体で覆われているため、透明樹脂との屈折率差が大きくなり、界面における光の反射率を高めることができる。これにより、光の結合効率をより向上することができる。
【0061】
基板4の実装面4aにおいて、光半導体素子1を受発光部1aが基板4の実装面4aの反対側(図8では上側)となるように実装することができるので、ダイボンディングやワイヤボンディングによる実装が可能になる。これにより、伝送特性に重要な配線を最短の線路長でつなぐことができ、ノイズが乗りにくく、良好な伝送特性が得られる。また、ボンディングの外観検査が容易であり、接続不良を発見するのが容易になる。
【0062】
図8に示す光モジュールを製造するには、図3に示す製造方法と同様である。ただし、図3(b)において光伝送路22を引き上げる方向Rが略放物線形状を描く方向であるのに対して、図9に示すように、光伝送路2は、光半導体素子1からゆっくりと斜め上方向(矢印Rの方向)に引き上げる。これにより、光路誘導部3が図8や図10に示すように凹んだ形状となる。
【0063】
この後、透明樹脂31の種類に応じて、必要に応じて例えばUV(紫外線)の照射や加熱を行い、透明樹脂31を硬化させる。これにより、光半導体素子1と光伝送路2とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部3が形成され、光モジュール5が完成する。
【0064】
図3において光伝送路2を斜め方向に引き上げた後の透明樹脂31の形状は、(1)透明樹脂31と光半導体素子1との間の界面張力、(2)透明樹脂31と光伝送路2との間の界面張力、および(3)透明樹脂31と外部の気体との間の表面張力で決定される。つまり、(A)光半導体素子1、光伝送路2、透明樹脂31の部材と、(B)光半導体素子1および光伝送路2の表面状態や透明樹脂31の粘度などの部材の状態と、(C)光半導体素子1の上面1cへの透明樹脂31の塗布量や図9における光伝送路2の差込量および引き上げ量などの実装条件などに依存する。これら(A)、(B)、(C)の条件が同じであれば、自ずと透明樹脂31の形状は同じになる。
【0065】
光伝送路2のR方向への引き上げ量は、用いる光伝送路2や光半導体素子1の構造、透明樹脂31の塗布量などに応じて最適値が存在する。こうした最適値を予め調べておけば、上述した作製工程を全て自動化することが可能になり、より一層の省力化を実現できる。また、光路誘導部3を作製する際に光半導体素子1と光伝送路2との間に光を伝送させる必要はなく、パッシブ調心が可能である。樹脂の塗布量の変化などによってパッシブ調心の位置が最適位置から多少ずれても、光半導体素子1と光伝送路2との間が透明樹脂31でつながれているので、透明樹脂31の表面が光伝送路2と一緒に変形するため、光路誘導部3の結合効率が低下しにくく、位置合わせのトレランスが大きい。光を伝送しながら行うアクティブ調心では、光硬化性樹脂を用いると光ファイバの位置合わせ中に樹脂が硬化するおそれがあるが、パッシブ調心によれば、途中で樹脂が硬化するおそれがない。
【0066】
このように、本形態例の光モジュールの製造方法によれば、光半導体素子1に透明樹脂31を盛り付けて、この透明樹脂31に光伝送路2を差し込んで斜め方向に引き上げた後、透明樹脂31を硬化させるだけで、光半導体素子1と光伝送路2とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部3を形成することが可能になる。このため、光路誘導部3の形成に際して、樹脂を象る金型等も必要なく、少ない工程かつ少ない構成部品で極めて低コストに光モジュールを製造することが可能になる。
【0067】
本形態例の光モジュールの製造方法は、透明樹脂を基板に付着させる必要がないので、光路誘導部3の形成に際して、基板4の加工工程(V溝や段差など)を追加する必要がないので、シリコン基板のように面異方性エッチングが利用可能な基板に限らず、ガラスエポキシ基板等のように加工性の低い基板であっても、低コストに基板作製が可能である。
【0068】
図11は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
図11に示す光モジュール9は、図8に示す光モジュール5において、光路誘導部3の周囲を覆うクラッド樹脂層8を設けた構成である。光半導体素子1、光伝送路2、基板4、回路配線6、ワイヤ配線7等は、図8に示す光モジュール5と同様に構成することができる。
【0069】
クラッド樹脂層8は、光路誘導部3を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成されているので、光路誘導部3の中を伝送する光がクラッド樹脂層8の方に入射し散乱してしまうことを抑制することができる。さらに、クラッド樹脂層8の周囲を、光路誘導部3よりも高い屈折率を有する樹脂(図示せず)で封止することも可能になる。
【0070】
ここでいう屈折率とは、光半導体素子1と光伝送路2との間を伝送する光の波長における屈折率を指している。第2の樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。第2の樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
クラッド樹脂層8は、光路誘導部3を形成した後に、第2の樹脂を塗布して硬化することにより形成することができる。
【0071】
さらに図11に示す例では、光伝送路2がクラッド樹脂層8によって基板4の実装面4aに固定されている。これにより、光伝送路2の端部2a付近の光軸2bの方向が動きにくく、光伝送路2に外力が作用しても光結合の悪化を抑制することができる。
また、ワイヤ配線7はクラッド樹脂層8に覆われ、保護されているので、外部の応力によって破損しやすいワイヤ配線7(給電用配線)の断線を防止することができる。
また、光伝送路2の端部2a、光路誘導部3、および光半導体素子1がクラッド樹脂層8により覆われているので、外部の応力から保護することができる。光半導体素子1と光伝送路2との光結合構造全体の機械的強度を高くすることができる。
このように、クラッド樹脂層8がワイヤ配線7の保護層、あるいは光結合構造の保護層として機能するように設けられた場合、簡便に保護層を形成することができる。
【0072】
図12は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
図12に示す光モジュール50Aは、図5に示す光モジュール50において、光路誘導部3の形状が、図8、図10、図11に示すように、凹んだ形状となっているものである。第1の光半導体素子51aが受光素子であり、第2の光半導体素子51bが発光素子であることにより、光送受信モジュール50Aを構成している。
【0073】
本形態例の光送受信モジュール50Aは、同一の基板54の実装面54aに実装された受光素子である第1の光半導体素子51aおよび発光素子である第2の光半導体素子51bと、基板54の実装面54aから離間して配置された第1の光伝送路52aおよび第2の光伝送路52bと、第1の光半導体素子51aと第1の光伝送路52aとの間を光学的に結合する第1の光路誘導部53aと、第2の光半導体素子51bと第2の光伝送路52bとの間を光学的に結合する第2の光路誘導部53bとを備えている。
【0074】
本発明の光モジュールの製造方法によれば、図3(a)および図9と同様の方法によって光路誘導部53a,53bを形成することができる。つまり、第1の光伝送路52aから受光素子である第1の光半導体素子51aへの光結合においても、発光素子である第2の光半導体素子51bから第2の光伝送路52bへの光結合においても、各光路誘導部53a,53bを、低コストに、かつ簡易な工程で作製することが可能である。
各光路誘導部53a,53bは、図10に示す光路誘導部3と同様に、界面における反射によって光伝送路と光半導体素子とを光結合させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1,11,21,41,51a,51b,61,71,83…光半導体素子、
2,12,22,42,52a,52b,62,72,81…光伝送路、
3,13,33,43,53a,53b,63,73,82…光路誘導部、
5,9,10,30,40,50,50A,70,80…光モジュール、
31…透明樹脂。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子と、この光半導体素子に対して光学的に接続された光伝送路とを有する光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールは、基板に搭載された光半導体素子と、端部がこの基板に対して一定の角度になるように設置された光伝送路とを備えている。従来、この光半導体素子の受発光部と光伝送路の端部とを光学的に結合させるために、例えば、光路変換用のミラーと集光レンズとを組み合わせることで、光学的に接続(光結合)させる構造が一般に用いられている。
【0003】
しかしながら、こうした光路変換用のミラーや集光レンズは、製造コストが高く、また、光結合のために必要な部品点数も多いため、光モジュールのコストアップの主要因となっていた。こうした光モジュールの製造コストを低減し、よりローコストに光モジュールを提供するため、例えば、特許文献1には、一方の面から入射された複数の入射光を、進行方向を変えて他方の面から出射させる光路変換用光導波路を用いて、アレイ状面型光素子とアレイ状光ファイバとを光結合させた光モジュールが開示されている。
【0004】
特許文献1に記載された光モジュールによれば、光路変換用光導波路は、光の進行方向に沿って表裏両面に溝が設けられた第1クラッドと、この第1クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有する透明材料とからなり、溝に埋設されるコアと、このコアの表出面を含む面を覆い、第1クラッドと一体化された状態でこの第1クラッドの表裏面上にそれぞれ設けられた第2クラッドおよび第3クラッドとを有している。このような構成によって、光結合部の部品数を低減して、光モジュールの低コスト化が実現可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−91684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された従来の光モジュールでは、光路変換用光導波路を通る光を、正確にアレイ状面型光素子の受発光面に入射させるためには、光路変換用光導波路をXYZの3方向に対して全て正確に位置決めしなければならない。さらに、光路変換用光導波路を、XYZ軸を中心とする回転方向(以下θφψ方向と称する)についても正確に位置決めしなければならない。
【0007】
よって、この位置決めのために光路変換用光導波路から光を常に出射させてアレイ状面型光素子の受光信号をモニタし、光のパワーが最大となるように光路変換用光導波路をXYZ方向およびθφψ方向について調芯しなければならない。このため、光モジュールの組立作業にあたって、こうした光軸の調整に多大な時間がかかり、光モジュールの製造コストが高くなるという課題があった。
【0008】
また、こうした特許文献1に記載された従来の光モジュールでは、光路変換用光導波路のコアを形成するためにクラッドが必要となり、光路変換用光導波路の製造コストが高くなるとともに、こうしたクラッドの成形には金型が必要なため、光路変換用光導波路の製造コストが高くなるという課題もあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、光伝送路と光半導体素子とを光路変換用光導波路を用いて光結合させる際に、光軸の調整にかかる手間を低減し、かつ、少ない構成部品数で信頼性が高く、ローコストに製造が可能な光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光モジュールの製造方法は、光半導体素子に未硬化の透明樹脂を盛り付ける工程と、盛り付けた透明樹脂に光伝送路を差し込む工程と、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から遠ざけ、前記透明樹脂を引き伸ばす工程と、前記透明樹脂を硬化させて、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を伝送させる光路誘導部を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から略放物線形状に遠ざけ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を徐々に曲げながら導波させつつ伝送させる光路誘導部を形成することができる。
また、前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から斜め上方向に引き上げ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を反射させて光結合させる光路誘導部を形成することができる。
【0011】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光伝送路と前記光半導体素子とを、互いの光軸が所定の角度で交わるように配することが好ましい。
また、前記光路誘導部を、前記光伝送路と前記光半導体素子にそれぞれ密着させることが好ましい。
また、前記光路誘導部を、単一の透明樹脂のみから形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光モジュールの製造方法によれば、光半導体素子に透明樹脂を盛り付けて、この透明樹脂に光伝送路を差し込んで引き上げた後、透明樹脂を硬化させるだけで、光半導体素子と光伝送路とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部を形成することが可能になる。このため、光路誘導部の形成に際して、樹脂を象る金型等も必要なく、少ない工程、かつ少ない構成部品で極めてローコストに光モジュールを製造することが可能になる。
【0013】
本発明により得られる光モジュールは、光伝送路と光半導体素子とを光結合させるために、光路誘導部でこれら光伝送路と光半導体素子とを接続するだけでよいので、簡易な構成で光伝送路と光半導体素子との間で光を伝播させることが可能になる。
【0014】
しかも、この光路誘導部は、透明樹脂だけで構成されているので、極めてローコストに、しかも簡易な工程で光モジュールが製造可能である。光路誘導部に透明樹脂を用いることによって、透明樹脂と外気との屈折率差によって、光路誘導部に入射した光を透明樹脂内に封じつつ伝播できるので、透明樹脂の周面に更にクラッドなどの被覆層を形成する必要がなく、光モジュールの製造コストを一層低減できる。
【0015】
さらに、こうした光路誘導部は、光伝送路と光半導体素子との間で、内部に光を封じつつ伝播させるので、光伝送路と光半導体素子とを光結合させる際に、調心のトレランスが大きくパッシブ調心が可能であるので、少ない工程で、かつ短時間に光モジュールを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の光モジュールの製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す斜視図である。
【図6】光路誘導部の具体的な形状の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の光モジュールの具体例を示す断面図である。
【図8】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図9】図8の光モジュールの製造方法の一例を示す断面図である。
【図10】図8の光モジュールの要部を示す部分拡大断面図である。
【図11】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明の光モジュールの別な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る光モジュールの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
図1は、光半導体素子の一例として発光素子を用いた、本発明の光モジュールの構成を示す側面断面図および俯瞰図である。光モジュール10は、発光素子(光半導体素子)11、光伝送路12、および光路誘導部(光路変換用光導波路)13とを有している。発光素子11は、例えば、基板14の一面に配されている。
【0019】
光伝送路12は、発光素子11から出射された光R1を透過させる部材、例えば、光ファイバであればよい。光路誘導部13は、光伝送路12の端部12aと、発光素子11の受発光部11aとを光学的に接続する(光結合させる)ものであり、全体が透明樹脂によって形成されている。なお、ここでいう透明樹脂とは、発光素子11と光伝送路12との間を伝播する光を透過させることが可能なものを指している。従って、必ずしも可視光下で無色透明な色調のものに限定されるものではない。
【0020】
光伝送路12と発光素子(光半導体素子)11とは、互いに一定の角度で配されていればよい。ここでいう一定の角度とは、図1に示す光伝送路12の光軸L1と発光素子(光半導体素子)11の光軸L2との成す角度θであればよい。また、光伝送路12の端部12aや発光素子11の発光部11aが平面である場合には、この端部12aと発光部11aとの成す角度であってもよい。更に、光伝送路12の端部12aにおける光の進行方向と、発光素子11の発光部11aにおける光の進行方向との成す角度であってもよい。
【0021】
光路誘導部13は、光伝送路12と発光素子11との間で、光を伝送させる。光路誘導部13の端部の幅は、発光素子11の発光部11aの幅よりも大きくなるように形成されていればよい。
このような光モジュール10は、発光素子11の発光部11aから出射した光R1が光路誘導部13に入射する。そして、光路誘導部13を構成する透明樹脂と外気との屈折率差によって、入射した光R1は透明樹脂に閉じ込められながら透明樹脂に沿って導波する。そして、光R1は光伝送路12の端部12aから光伝送路12内に入射され、光伝送路12内を伝播する。
【0022】
このような構成の本発明の光モジュール10によれば、光伝送路12と発光素子(光半導体素子)11とを光結合させるために、光路誘導部13でこれら光伝送路12と光半導体素子11とを接続するだけでよいので、簡易な構成で光伝送路12と発光素子11との間で光を伝播させることが可能になる。これにより、少ない部品数でローコストに光モジュールを提供することが可能になる。
【0023】
しかも、この光路誘導部13は、透明樹脂だけで構成されているので極めてローコストで、しかも簡易な工程で光モジュールが製造可能である。光路誘導部13に透明樹脂を用いることによって、透明樹脂と外気との屈折率差によって、光路誘導部13に入射した光を透明樹脂内に封じつつ伝播できるので、透明樹脂の周面に更にクラッドなどの被覆層を形成する必要がなく、光モジュール10の製造コストを一層低減できる。
【0024】
さらに、こうした光路誘導部13は、光伝送路12と発光素子11との間で、内部に光を封じつつ伝播させるので、光伝送路12と発光素子11とを光結合させる際に、調心のトレランスが大きく、パッシブ調心が可能であるので、少ない工程で、かつ短時間に光モジュール10を製造することが可能である。
【0025】
光モジュール10を構成する基板14上には、更に回路配線16が形成されている。また、こうした回路配線16と光半導体素子11とを電気的に接続するため、発光素子11に電力を供給するワイヤ配線(給電用配線)17が形成されるとともに、光半導体素子11の下面(裏面)と回路配線16とが、導電性接着剤(図示せず)により、電気的に接続されている。
【0026】
発光素子11は、例えば、VCSEL,LEDなどの発光素子であればよい。光伝送路12は、例えば、光ファイバ、POF、石英光導波路、高分子光導波路などが挙げられる。
【0027】
光路誘導部13を構成する透明樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。なお、この光路誘導部13は、光軸に沿った断面の輪郭(外面)が放物線を描くように形成されているのが好ましい。こうした光路誘導部13の外面形状は、後述する光モジュールの製造方法によって形成される。
【0028】
なお、光路誘導部13は、単一の透明樹脂から形成されている。ここでいう単一の透明樹脂とは、成分(組成)が均一(単一)、特定の波長の光に対する透過率が均一、物理的に2層以上ではない(界面がない)など、いずれの意味も包含するものである。
【0029】
基板14は、例えは、ガラスエポキシ基板、セラミック基板など一般的な各種絶縁基板を使用することができる。ワイヤ配線(給電用配線)17としては、例えば、金ワイヤ、アルミワイヤ、銅ワイヤなどが好ましく挙げられる。
【0030】
図2は、光半導体素子として受光素子を用いた光モジュールの構成を示す側面断面図および俯瞰図である。光モジュール70は、受光素子(光半導体素子)71、光伝送路72、および光路誘導部(光路変換用光導波路)73とを有している。受光素子71は、例えば、基板74の一面に配されている。
【0031】
光路誘導部73は、光伝送路72の端部72aと、受光素子71の受光部71aとを光学的に接続する(光結合させる)ものであり、全体が透明樹脂によって形成されている。
光伝送路72と受光素子71とは、互いに一定の角度で配されていればよい。そして、光路誘導部73は、こうした配置の光伝送路72と受光素子71との間で、光R2を伝送させる。
【0032】
このような構成の本発明の光モジュール70によれば、光伝送路72中を伝播して光伝送路72の端部72aに達した光R2は、そのまま光路誘導部73に入射する。そして、光路誘導部73を構成する透明樹脂と外気との屈折率差によって、入射した光R2は透明樹脂に閉じ込められながら透明樹脂に沿って導波する。そして、光R2は受光素子71の受光部71aに入射する。なお、受光素子71は、例えば、PDなどの受光素子であればよい。
【0033】
次に、本発明の光モジュールの製造方法について説明する。説明にあたって、前述した図1に示す構成の光モジュールの製造方法を例示する。図3は、本発明の光モジュールの製造工程を段階的に示した説明図である。図3(a)に示すように、予め配線回路26が形成され、光半導体素子21が実装された基板24を用意する。そして、この光半導体素子21の受発光部21aに対して、樹脂ディップ装置29を用いて、未硬化の透明樹脂31、例えば、UV硬化性樹脂を盛り付ける(光半導体素子に未硬化の透明樹脂を盛り付ける工程)。ここで、未硬化の透明樹脂を盛りつける工程と、光伝送路を方向Lに動かす工程の順序は、反対でも良い。ただし、順序を反対にすると、実装の最適条件は変わる。
【0034】
続いて、図3(b)に示すように、光伝送路22を基板24に沿う方向Lに動かし、光半導体素子21に対して光伝送路22の端部22aを、盛り付けた透明樹脂31に向けて差し込む(透明樹脂に光伝送路を差し込む工程)。
【0035】
そして、透明樹脂31に差し込んだ光伝送路22を光半導体素子21から遠ざけるように移動させる(透明樹脂を引き伸ばす工程)。この時、光伝送路22は光半導体素子21から略放物線形状を描く方向Rに遠ざける。即ち、光伝送路22を略放物線形状を描く方向Rに向けてゆっくりと引き上げる。これによって、粘性のある透明樹脂31は、外形が略放物線形状を成して引き伸ばされる(図3(c)参照)。
【0036】
この後、図3(c)に示すように、透明樹脂31が略放物線形状に引き伸ばされた状態で、透明樹脂31に対して、例えばUV(紫外線)を照射し、透明樹脂31を硬化させる(光路誘導部を形成する工程)。これにより、光半導体素子21と光伝送路22とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部33が形成され、光モジュール30が完成する。
【0037】
なお、光伝送路22の引き上げ量は、光モジュール30を構成する光伝送路22や光半導体素子21の構造、透明樹脂の塗布量などに応じて最適値が存在する。予めこうした最適値を調べておけば、上述した作製工程を全て自動化することが可能になり、より一層の省力化を実現できる。
【0038】
このように、本発明の光モジュールの製造方法によれば、光半導体素子21に透明樹脂31を盛り付けて、この透明樹脂31に光伝送路22を差し込んで引き上げた後、透明樹脂31を硬化させるだけで、あるいは、光伝送路22の先端を光半導体素子21上に配置してから光半導体素子21上に透明樹脂31を盛り付けた後、光半導体素子21と光伝送路22とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部13を形成することが可能になる。このため、光路誘導部13の形成に際して、樹脂を象る金型等も必要なく、少ない工程、かつ少ない構成部品で極めてローコストに光モジュールを製造することが可能になる。
【0039】
図4は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。この実施形態における光モジュール40は、基板44上に形成された光半導体素子41、光伝送路42、およびこの光半導体素子41と光伝送路42とを光結合する光路誘導部43が、保護部49によって覆われている。
【0040】
この保護部49は、光路誘導部43を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成されていれば良い。また、保護部49は、基板44上に形成された回路配線46と光半導体素子41とを電気的に接続し、光半導体素子41に電力を供給するワイヤ配線(給電用配線)47全体を封止する構成であってもよい。
【0041】
このような保護部49を形成することによって、光伝送路42の端部42a、光半導体素子41、および光伝送路42を外部の応力から保護することができる。これにより、光モジュール40の物理的な耐久性を向上させることが可能になる。また、外部の応力によって破損しやすいワイヤ配線(給電用配線)47も、確実に保護することが可能になる。
そして、保護部49を光路誘導部43を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成することで、光路誘導部43の中を伝播する光が保護部49の方に入射してしまい、光が散乱することを防止できる。
【0042】
図5は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す斜視図である。この実施形態における光モジュール50は、基板54上に、それぞれ複数並列して形成された光半導体素子51a,51b、光伝送路52a,52b、およびこの光半導体素子51a,51bと光伝送路52a,52bとをそれぞれ光結合する光路誘導部53a,53bが、単一の保護部59によって覆われている。このうち、例えば光半導体素子51aは受光素子、光半導体素子51bは発光素子であればよい。また、光伝送路52a,52bは、クラッドの役割を果たす被覆材58によって一体に覆われている。
【0043】
この保護部59は、光路誘導部53a,53bを構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成されていれば良い。また、保護部59は、基板54上に形成された回路配線56と光半導体素子51a,51bとをそれぞれ独立して電気的に接続し、光半導体素子51a,51bに電力を供給するワイヤ配線(給電用配線)57a,57b全体を封止する構成であってもよい。
【0044】
このような保護部59を形成することによって、被覆材58で一体にされた光伝送路52a,52bの端部、光半導体素子51a,51b、および光伝送路52a,52bを外部の応力から確実に保護することができる。これにより、光モジュール50の物理的な耐久性を向上させることが可能になる。また、外部の応力によって破損しやすいワイヤ配線(給電用配線)57a,57bも、確実に保護することが可能になる。そして、保護部59を光路誘導部53a,53bを構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成することで、光路誘導部53a,53bの中を伝播する光が保護部59の方に入射してしまい、光が散乱することを防止できる。
【0045】
図6は、本発明の光モジュールにおける、光路誘導部の形状の具体例を示す断面図である。光路誘導部63の形状は、例えば、光伝送路62の端部62aから光半導体素子61の受発光部61aに向けて、周面が湾曲面を成すように形成されていれば良い。
【0046】
また、光路誘導部63と光半導体素子61の受発光部61aとの接合部分においては、光路誘導部63の接合面の大きさと、光半導体素子61の受発光部61aの大きさが、略同一であることが好ましい。これによって、光伝送の際の光損失を最小限に抑え、光伝送路62の端部62aと光半導体素子61の受発光部61aとの間で光伝送効率の高い光路誘導部63を形成することができる。
【0047】
図7は、本発明の光モジュールの具体例を示す断面図である。この実施形態における光モジュール80は、光伝送路81と、これに接続される光路誘導部82、光半導体素子83などを備えている。光伝送路81は、光ファイバ81aを金属被覆81bで覆ったものが用いられている。この光伝送路81は、基板84に形成されたパッケージ85に、はんだ86で固定されている。
【0048】
こうした、金属被覆81bで覆われた光伝送路81は、光ファイバ81aの外側に、スパッタリング、無電解メッキ、あるいは電解メッキ等によって、金属をコートすることで得られる。こうした金属コートは、光ファイバ素線に直接形成しても、また、光ファイバ素線を保護する樹脂コートに重ねて形成しても良い。コートする金属としては、例えば、Ag,Au,Cu,Sn,Zn、またはこれら金属を複数種用いた多層コート、あるいはこれら金属の合金などが挙げられる。
【0049】
このように、光ファイバ81aを金属被覆81bで覆った光伝送路81は、形状の維持力が高く、組立工程において光ファイバの振動を抑制できるので、光伝送路81の組み込み位置での位置決めを容易にすることができる。また、製造工程における製造時間の短縮といった効果が得られる。更に、金属被覆81bで覆うことによって、光伝送路81を基板84やパッケージ85に対して、はんだによって固定することが可能になり、光ファイバの固定強度を高めることができる。
【0050】
また、金属被覆81bを電気回路と接続すれば、この金属被覆81bを電気回路の一部として使用することも可能になり、光電気複合配線を実現することができる。こうした金属被覆81bを備えた光伝送路81は、データ通信用に用いることで光と電気による片側二重通信や、双方向通信が実現可能となる。また、光半導体素子83への電源供給ラインとして用いることもできる。
【0051】
図8は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
図8に示す光モジュール5は、基板4の上面である実装面4aに実装された光半導体素子1と、基板4の実装面4aに沿い、かつ基板4の実装面4aから離間して配置された光伝送路2と、光伝送路2と光半導体素子1との間を光学的に結合する光路誘導部3とを備えている。
【0052】
光半導体素子1は、光信号を出射または入射させる部分として受発光部1aを有する。光半導体素子1が受光素子である場合は、受発光部1aは受光部である。光半導体素子1が発光素子である場合は、受発光部1aは発光部である。
【0053】
光半導体素子1は、基板4の実装面4aに形成された回路配線6に対して、接合材により電気的に接続されている。例えば、本形態例の場合は、光半導体素子1の上部(表面)に形成された電極(図示せず)とワイヤ配線7などからなる給電用配線により、回路配線6と電気的に接続されている。また、光半導体素子1の下面(裏面)と回路配線6とが、導電性接着剤(図示せず)により、電気的に接続されている。
【0054】
光半導体素子1は、その光軸1bが光伝送路2の光軸2b(特に端部2a付近における光軸2b)に所定の角度θで交差するように配置されている。光半導体素子1および光伝送路2の光軸1b,2bが互いに垂直(または略垂直)に配置されることが好ましい。
光伝送路2は、光路誘導部3に対する光の出入射の方向が一定となるように、少なくとも端部2a付近では、光軸2bが直線状であることが好ましい。
【0055】
光路誘導部3は、伝送される光に対して透明な樹脂からなる。光路誘導部3を構成する樹脂は、光半導体素子1の受発光部1aの少なくとも一部および光伝送路2の端部2aの少なくとも一部にそれぞれ密着している。
ここでいう透明樹脂とは、光半導体素子1と光伝送路2との間を伝送する光を透過させることが可能なものを指している。従って、必ずしも可視光下で無色透明な色調のものに限定されるものではない。また、光が伝送する樹脂内の光路長が短いため、ある程度透明性があれば良い。
透明樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。透明樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0056】
本形態例の光路誘導部3は、光路誘導部3の外面3aが外部の気体との界面を形成しており、光路誘導部3を構成する透明樹脂は、光伝送路2の光軸2bと光半導体素子1の光軸1bとが交差する交点Pの位置には存在せず、光路誘導部3の外面3a(光路誘導部3と外部の気体との界面)が、光半導体素子1の受発光部1aおよび光伝送路2の端部2aの側に凹んだ形状となっている。また、図10に示すように、光路誘導部3内を進行する光R3は、界面3aで反射する。
【0057】
光半導体素子1が受光素子の場合には、光伝送路2から光路誘導部3に入射した光は、光路誘導部3を構成する透明樹脂とその外部の気体(例えば空気や乾燥窒素ガスなど)との界面3aとの屈折率差により反射されて光半導体素子1に入射する。
また、光半導体素子1が発光素子の場合には、光半導体素子1から光路誘導部3に入射した光は、光路誘導部3を構成する透明樹脂と外部の気体との界面3aとの屈折率差により反射されて光伝送路2に入射する。
【0058】
光路誘導部3の形状は、図8に示すように、光伝送路2の端部2aの一部が光路誘導部3の外側に露出されてもよい。この場合、光路誘導部3を構成する透明樹脂は、図10に示すように、光伝送路2の端面2aの上端2cの高さ2dより下側の範囲内に収まることが好ましい。これにより、光半導体素子1の受発光部1aから光路誘導部3の外面3aまでの距離や、光伝送路2の端面2aから光路誘導部3の外面3aまでの距離がより短くなる。光伝送路2のコア(図示せず)の全断面積が光路誘導部3に覆われることが好ましい。
なお、上端2cの高さ2dは、基板4の実装面4aを基準とした高さ(実装面4aに垂直な方向の距離)である。
【0059】
光路誘導部3の外面3aは、それぞれ光半導体素子1の受発光部1aおよび光伝送路2の端部2aの位置に近い方が、透明樹脂の界面3aにおける反射によって光半導体素子1と光伝送路2との間を光結合する際に、光が拡散する範囲が狭くなり、損失を低減することができる。このため、光路誘導部3は、光半導体素子1の光軸1bと光伝送路2の光軸2bとが交差する交点Pの位置には前記樹脂が存在せず、樹脂の外面3aが受発光部1aに対向する位置が交点Pと受発光部1aとの間にあり、かつ、樹脂の外面3aが光伝送路2の端部2aに対向する位置が交点Pと光伝送路2の端部2aとの間にあることが好ましい。
【0060】
さらに本形態例の光路誘導部3は、透明樹脂の周囲が気体で覆われているため、透明樹脂との屈折率差が大きくなり、界面における光の反射率を高めることができる。これにより、光の結合効率をより向上することができる。
【0061】
基板4の実装面4aにおいて、光半導体素子1を受発光部1aが基板4の実装面4aの反対側(図8では上側)となるように実装することができるので、ダイボンディングやワイヤボンディングによる実装が可能になる。これにより、伝送特性に重要な配線を最短の線路長でつなぐことができ、ノイズが乗りにくく、良好な伝送特性が得られる。また、ボンディングの外観検査が容易であり、接続不良を発見するのが容易になる。
【0062】
図8に示す光モジュールを製造するには、図3に示す製造方法と同様である。ただし、図3(b)において光伝送路22を引き上げる方向Rが略放物線形状を描く方向であるのに対して、図9に示すように、光伝送路2は、光半導体素子1からゆっくりと斜め上方向(矢印Rの方向)に引き上げる。これにより、光路誘導部3が図8や図10に示すように凹んだ形状となる。
【0063】
この後、透明樹脂31の種類に応じて、必要に応じて例えばUV(紫外線)の照射や加熱を行い、透明樹脂31を硬化させる。これにより、光半導体素子1と光伝送路2とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部3が形成され、光モジュール5が完成する。
【0064】
図3において光伝送路2を斜め方向に引き上げた後の透明樹脂31の形状は、(1)透明樹脂31と光半導体素子1との間の界面張力、(2)透明樹脂31と光伝送路2との間の界面張力、および(3)透明樹脂31と外部の気体との間の表面張力で決定される。つまり、(A)光半導体素子1、光伝送路2、透明樹脂31の部材と、(B)光半導体素子1および光伝送路2の表面状態や透明樹脂31の粘度などの部材の状態と、(C)光半導体素子1の上面1cへの透明樹脂31の塗布量や図9における光伝送路2の差込量および引き上げ量などの実装条件などに依存する。これら(A)、(B)、(C)の条件が同じであれば、自ずと透明樹脂31の形状は同じになる。
【0065】
光伝送路2のR方向への引き上げ量は、用いる光伝送路2や光半導体素子1の構造、透明樹脂31の塗布量などに応じて最適値が存在する。こうした最適値を予め調べておけば、上述した作製工程を全て自動化することが可能になり、より一層の省力化を実現できる。また、光路誘導部3を作製する際に光半導体素子1と光伝送路2との間に光を伝送させる必要はなく、パッシブ調心が可能である。樹脂の塗布量の変化などによってパッシブ調心の位置が最適位置から多少ずれても、光半導体素子1と光伝送路2との間が透明樹脂31でつながれているので、透明樹脂31の表面が光伝送路2と一緒に変形するため、光路誘導部3の結合効率が低下しにくく、位置合わせのトレランスが大きい。光を伝送しながら行うアクティブ調心では、光硬化性樹脂を用いると光ファイバの位置合わせ中に樹脂が硬化するおそれがあるが、パッシブ調心によれば、途中で樹脂が硬化するおそれがない。
【0066】
このように、本形態例の光モジュールの製造方法によれば、光半導体素子1に透明樹脂31を盛り付けて、この透明樹脂31に光伝送路2を差し込んで斜め方向に引き上げた後、透明樹脂31を硬化させるだけで、光半導体素子1と光伝送路2とを光学的に接続する(光結合する)光路誘導部3を形成することが可能になる。このため、光路誘導部3の形成に際して、樹脂を象る金型等も必要なく、少ない工程かつ少ない構成部品で極めて低コストに光モジュールを製造することが可能になる。
【0067】
本形態例の光モジュールの製造方法は、透明樹脂を基板に付着させる必要がないので、光路誘導部3の形成に際して、基板4の加工工程(V溝や段差など)を追加する必要がないので、シリコン基板のように面異方性エッチングが利用可能な基板に限らず、ガラスエポキシ基板等のように加工性の低い基板であっても、低コストに基板作製が可能である。
【0068】
図11は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
図11に示す光モジュール9は、図8に示す光モジュール5において、光路誘導部3の周囲を覆うクラッド樹脂層8を設けた構成である。光半導体素子1、光伝送路2、基板4、回路配線6、ワイヤ配線7等は、図8に示す光モジュール5と同様に構成することができる。
【0069】
クラッド樹脂層8は、光路誘導部3を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂で形成されているので、光路誘導部3の中を伝送する光がクラッド樹脂層8の方に入射し散乱してしまうことを抑制することができる。さらに、クラッド樹脂層8の周囲を、光路誘導部3よりも高い屈折率を有する樹脂(図示せず)で封止することも可能になる。
【0070】
ここでいう屈折率とは、光半導体素子1と光伝送路2との間を伝送する光の波長における屈折率を指している。第2の樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。第2の樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
クラッド樹脂層8は、光路誘導部3を形成した後に、第2の樹脂を塗布して硬化することにより形成することができる。
【0071】
さらに図11に示す例では、光伝送路2がクラッド樹脂層8によって基板4の実装面4aに固定されている。これにより、光伝送路2の端部2a付近の光軸2bの方向が動きにくく、光伝送路2に外力が作用しても光結合の悪化を抑制することができる。
また、ワイヤ配線7はクラッド樹脂層8に覆われ、保護されているので、外部の応力によって破損しやすいワイヤ配線7(給電用配線)の断線を防止することができる。
また、光伝送路2の端部2a、光路誘導部3、および光半導体素子1がクラッド樹脂層8により覆われているので、外部の応力から保護することができる。光半導体素子1と光伝送路2との光結合構造全体の機械的強度を高くすることができる。
このように、クラッド樹脂層8がワイヤ配線7の保護層、あるいは光結合構造の保護層として機能するように設けられた場合、簡便に保護層を形成することができる。
【0072】
図12は、本発明の光モジュールの別な実施形態を示す断面図である。
図12に示す光モジュール50Aは、図5に示す光モジュール50において、光路誘導部3の形状が、図8、図10、図11に示すように、凹んだ形状となっているものである。第1の光半導体素子51aが受光素子であり、第2の光半導体素子51bが発光素子であることにより、光送受信モジュール50Aを構成している。
【0073】
本形態例の光送受信モジュール50Aは、同一の基板54の実装面54aに実装された受光素子である第1の光半導体素子51aおよび発光素子である第2の光半導体素子51bと、基板54の実装面54aから離間して配置された第1の光伝送路52aおよび第2の光伝送路52bと、第1の光半導体素子51aと第1の光伝送路52aとの間を光学的に結合する第1の光路誘導部53aと、第2の光半導体素子51bと第2の光伝送路52bとの間を光学的に結合する第2の光路誘導部53bとを備えている。
【0074】
本発明の光モジュールの製造方法によれば、図3(a)および図9と同様の方法によって光路誘導部53a,53bを形成することができる。つまり、第1の光伝送路52aから受光素子である第1の光半導体素子51aへの光結合においても、発光素子である第2の光半導体素子51bから第2の光伝送路52bへの光結合においても、各光路誘導部53a,53bを、低コストに、かつ簡易な工程で作製することが可能である。
各光路誘導部53a,53bは、図10に示す光路誘導部3と同様に、界面における反射によって光伝送路と光半導体素子とを光結合させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1,11,21,41,51a,51b,61,71,83…光半導体素子、
2,12,22,42,52a,52b,62,72,81…光伝送路、
3,13,33,43,53a,53b,63,73,82…光路誘導部、
5,9,10,30,40,50,50A,70,80…光モジュール、
31…透明樹脂。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子に未硬化の透明樹脂を盛り付ける工程と、盛り付けた透明樹脂に光伝送路を差し込む工程と、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から遠ざけ、前記透明樹脂を引き伸ばす工程と、前記透明樹脂を硬化させて、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を伝送させる光路誘導部を形成する工程とを備えたことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から略放物線形状に遠ざけ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を導波させつつ伝送させる光路誘導部を形成することを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から斜め上方向に引き上げ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を反射させて光結合させる光路誘導部を形成することを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光伝送路と前記光半導体素子とを、互いの光軸が所定の角度で交わるように配することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光路誘導部を、前記光伝送路と前記光半導体素子にそれぞれ密着させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光路誘導部を、単一の透明樹脂のみから形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項1】
光半導体素子に未硬化の透明樹脂を盛り付ける工程と、盛り付けた透明樹脂に光伝送路を差し込む工程と、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から遠ざけ、前記透明樹脂を引き伸ばす工程と、前記透明樹脂を硬化させて、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を伝送させる光路誘導部を形成する工程とを備えたことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から略放物線形状に遠ざけ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を導波させつつ伝送させる光路誘導部を形成することを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記透明樹脂を引き伸ばす工程において、前記透明樹脂に差し込んだ光伝送路を前記光半導体素子から斜め上方向に引き上げ、その後、前記透明樹脂を硬化させることで、前記光伝送路と前記光半導体素子との間で光を反射させて光結合させる光路誘導部を形成することを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光伝送路と前記光半導体素子とを、互いの光軸が所定の角度で交わるように配することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光路誘導部を、前記光伝送路と前記光半導体素子にそれぞれ密着させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記光路誘導部を形成する工程において、前記光路誘導部を、単一の透明樹脂のみから形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−9019(P2010−9019A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105194(P2009−105194)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]