説明

光電変換装置、撮像システム、及び光電変換装置の製造方法

【課題】光電変換部へ向けて入射した光の反射を低減するとともに、光電変換部の受光表面におけるダングリングボンドを減少させる。
【解決手段】光電変換装置は、受光表面を有する光電変換部と、前記光電変換部の上方における開口領域を規定する多層配線構造とを備え、前記多層配線構造は、前記開口領域における輪郭辺を規定する最上の配線層と、前記最上の配線層と同一のパターンを有し且つ前記受光表面に垂直な方向から見た場合に前記最上の配線層に完全に重なるように前記最上の配線層の上に配され、水素を含む水素含有層と、少なくとも前記開口領域を満たす層間絶縁膜と、前記最上の配線層、前記水素含有層、及び前記層間絶縁膜を覆うように延びており、前記水素含有層より水素の含有率が低い保護膜とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、撮像システム、及び光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された固体撮像装置では、特許文献1の図1に示すように、フォトダイオードを含む基板の上に、複数の層数の配線部を形成し、最上の配線部の上に、基板保護のためのパッシベーション膜を形成している。ここで、パッシベーション膜は、プラズマCVD法により水素を多く含むガス雰囲気で形成されるので、水素を多く含んでいる。これにより、特許文献1によれば、シリコン基板の表面におけるシリコンの未終端部(ダングリングボンド)を水素で終端しやすくし、(フォトダイオードにおける)暗電流発生源となるダングリングボンドを減少させることができるとされている。
【0003】
一方、特許文献2に記載された固体撮像素子では、デュアルダマシンプロセスにより形成された銅配線が用いられている。このデュアルダマシンプロセスでは、層間絶縁膜を形成し、その層間絶縁膜に配線溝を形成し、その配線溝の内壁面(底壁面及び側壁面)にバリア膜を形成した後、バリア膜の上に銅を被覆する。そして、被覆された銅における配線溝以外の部分がCMP法により除去された後、配線溝に残った配線となるべき銅の拡散を防止するためその銅(銅配線)の上にCVD法により拡散防止膜を形成する。
【特許文献1】特開2006−210685号公報
【特許文献2】特開2003−324189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された固体撮像装置では、特許文献1の図1に示すように、シリコン基板を保護するため、水素を多く含んだパッシベーション膜がシリコン基板の全面を覆うように形成されている。
【0005】
一方、特許文献2には、固体撮像素子において、シリコン基板におけるシリコンのダングリングボンドを水素で終端しやすくするための層を設けることについて開示がない。
【0006】
特許文献2では、銅配線の上面部のみに、銅の拡散を防止するための拡散防止膜を形成しても良いことが、特許文献2の図9を用いて説明されている。
【0007】
ここで、銅配線と拡散防止膜とは、特許文献2の図10に示されるように、異なるマスクパターンを用いて形成される。すなわち、銅配線のパターンに対してアライメントずれなどを考慮したプロセスマージンがとられるので、拡散防止膜のパターンは銅配線のパターンよりも幅の広いものとなる。また、この拡散防止膜は、その形成後の熱処理において銅配線の拡散を確実に防止するために、特許文献2の図9に示されるように、銅配線よりも広い幅で形成されものと考えられる。
【0008】
この場合、銅配線で規定される開口領域へ向けて入射した光が、拡散防止膜における銅配線よりも開口領域側へ突出した部分で反射される可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、光電変換部へ向けて入射した光の反射を低減するとともに、光電変換部の受光表面におけるダングリングボンドを減少させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面に係る光電変換装置は、受光表面を有する光電変換部と、前記光電変換部の上方における開口領域を規定する多層配線構造とを備え、前記多層配線構造は、前記開口領域における輪郭辺を規定する最上の配線層と、前記最上の配線層と同一のパターンを有し且つ前記受光表面に垂直な方向から見た場合に前記最上の配線層に完全に重なるように前記最上の配線層の上に配され、水素を含む水素含有層と、少なくとも前記開口領域を満たす層間絶縁膜と、前記最上の配線層、前記水素含有層、及び前記層間絶縁膜を覆うように延びており、前記水素含有層より水素の含有率が低い保護膜とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2側面に係る撮像システムは、本発明の第1側面に係る光電変換装置と、前記光電変換装置の撮像面へ像を形成する光学系と、前記光電変換装置から出力された信号を処理して画像データを生成する信号処理部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3側面に係る光電変換装置の製造方法は、受光表面を有する光電変換部と、前記光電変換部の上方に層間絶縁膜とを有する光電変換装置の製造方法であって、前記層間絶縁膜の上に、金属膜を形成する第1の工程と、前記金属膜の上に、水素を含む誘電体膜を形成する第2の工程と、1つのマスクパターンを用いて、前記金属膜をパターニングすることにより、前記光電変換部の上方の開口領域における輪郭辺を規定する最上の配線層を形成することと、前記誘電体膜をパターニングすることにより、前記最上の配線層と同一のパターンを有し且つ前記受光表面に垂直な方向から見た場合に前記最上の配線層に完全に重なるように前記最上の配線層の上に配された水素含有層を形成することとを、連続的に行う第3の工程と、前記最上の配線層、前記水素含有層、及び前記層間絶縁膜を覆うように、前記水素含有層より水素の含有率が低い保護膜を形成する第4の工程と、前記第4の工程の後に、熱処理する第5の工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光電変換部へ向けて入射した光の反射を低減できるとともに、光電変換部の受光表面におけるダングリングボンドを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1実施形態に係る光電変換装置1を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る光電変換装置1の断面構成を示す図である。
【0015】
光電変換装置1は、光電変換部201a、多層配線構造ML、平坦化膜220、カラーフィルタ221、及びマイクロレンズ222を備える。
【0016】
光電変換部201aは、半導体基板201におけるキャリア(例えば、電子)に対応した導電型(例えば、N型)の不純物を含む領域として形成されている。光電変換部201aは、半導体基板201における反対の導電型(例えば、P型)の領域との間に形成された空乏層で光電変換を行い、生じた信号電荷を蓄積する。光電変換部201aは、受光表面201a1を有する。半導体基板201は、例えば、シリコンで形成されている。光電変換部201aは、例えば、フォトダイオードである。
【0017】
なお、光電変換部201aで発生した電荷は、転送MOSトランジスタ(図示せず)により、所定のタイミングで電荷電圧変換部201b(図3参照)へ転送される。電荷電圧変換部201bは、転送された電荷を電圧に変換する。電荷電圧変換部201bは、半導体基板201におけるキャリア(例えば、電子)に対応した導電型(例えば、N型)の不純物を含む領域として形成されている。電荷電圧変換部201bの電圧は、コンタクトプラグ205(図3参照)及び後述の第1の配線層206などを介して増幅MOSトランジスタ(図示せず)のゲートへ入力される。これにより、増幅MOSトランジスタは、電荷電圧変換部201bの電圧に応じた信号を第1の配線層206などを介して列信号線(図示せず)へ出力する。
【0018】
多層配線構造MLは、第1の層間絶縁膜202、第1の配線層206、ビアプラグ210、第2の層間絶縁膜207、第2の配線層208、ビアプラグ215、第3の層間絶縁膜212、第3の配線層211、水素含有層217、及び保護膜219を含む。
【0019】
第1の層間絶縁膜202は、半導体基板201と第1の配線層206とを絶縁するように、半導体基板201の上に配されている。第1の層間絶縁膜202は、開口領域OAを満たしている。第1の層間絶縁膜202は、例えば、シリコン酸化物で形成されている。
【0020】
第1の配線層206は、第1の層間絶縁膜202の上に配されている。第1の配線層206は、開口領域OAにおける輪郭辺OAS1,OAS2を規定する(図2参照)。第1の配線層206は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属間化合物で形成されている。
【0021】
ビアプラグ210は、第1の配線層206と第2の配線層208とを接続する。ビアプラグ210は、例えば、タングステンを主成分とする金属間化合物で形成されている。
【0022】
第2の層間絶縁膜207は、第1の配線層206と第2の配線層208とを絶縁するように、両者の間に配されている。第2の層間絶縁膜207は、開口領域OAを満たしている。第2の層間絶縁膜207は、例えば、シリコン酸化物で形成されている。
【0023】
第2の配線層208は、第2の層間絶縁膜207の上に配されている。第2の配線層208は、開口領域OAにおける輪郭辺OAS1,OAS2を規定する(図2参照)。第2の配線層208は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属間化合物で形成されている。
【0024】
ビアプラグ215は、第2の配線層208と第3の配線層211とを接続する。ビアプラグ215は、例えば、タングステンを主成分とする金属間化合物で形成されている。
【0025】
第3の層間絶縁膜212は、第2の配線層208と第3の配線層211とを絶縁するように、両者の間に配されている。第3の層間絶縁膜212は、開口領域OAを満たしている。第3の層間絶縁膜212は、例えば、シリコン酸化物で形成されている。
【0026】
第3の配線層211は、第3の層間絶縁膜212の上に配されている。第3の配線層211は、多層配線構造MLにおける最上の配線層である。第3の配線層211は、開口領域OAにおける輪郭辺OAS3,OAS4を規定する(図2参照)。第2の配線層208は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属間化合物で形成されている。
【0027】
水素含有層217は、第3の配線層211と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第3の配線層211に完全に重なるように第3の配線層211の上に配されている(図2参照)。水素含有層217は、水素を含む。水素含有層217は、例えば、水素を含むシリコン窒化物で形成される。
【0028】
保護膜219は、第3の配線層211、水素含有層217、及び第3の層間絶縁膜212を覆うように延びている。保護膜219の水素の含有率は、水素含有層217の水素の含有率より低くすることが可能となる。保護膜219は、例えば、シリコン酸窒化物で形成される。
【0029】
平坦化膜220は、カラーフィルタ221に対して平坦な表面を提供するように、保護膜219の上に配されている。
【0030】
カラーフィルタ221は、平坦化膜220の上に配されている。カラーフィルタ221は、入射光における所定の波長の光が光電変換部201aに入射するように、その波長の光を選択的に透過する。
【0031】
マイクロレンズ222は、入射光が光電変換部201aへ導かれるように、入射光を屈折させる。
【0032】
仮に、保護膜219における水素の含有率を水素含有層217における水素の含有率より高くすると、保護膜219の屈折率と第3の層間絶縁膜212の屈折率との差が、水素含有層217の屈折率と第3の層間絶縁膜212の屈折率との差より大きくなる。
【0033】
それに対して、本実施形態では、水素終端化のための水素含有層217を別途有するため、保護膜219における水素の含有率が水素含有層217における水素の含有率より低くすることが可能となる。これにより、保護膜219の屈折率と第3の層間絶縁膜212の屈折率との差は、水素含有層217の屈折率と第3の層間絶縁膜212の屈折率との差より小さくなる。この結果、保護膜219と第3の層間絶縁膜212との界面における光の反射を低減できる。
【0034】
また、水素含有層217では光の反射を考慮する必要がないため、水素含有率を高くすることが可能であり、光電変換部201aの受光表面201a1におけるダングリングボンドをより減少させることができる。
【0035】
したがって、光電変換部へ向けて入射した光の反射を低減できるとともに、光電変換部の受光表面におけるダングリングボンドを減少させることができる。
【0036】
次に、光電変換装置1の製造方法を、図3(a)〜(i)を用いて説明する。図3(a)〜(i)は、光電変換装置1の製造方法を示す工程断面図である。なお、図3(a)〜(i)に示される断面は、図1に示される断面と異なる箇所の断面であり、上記の電荷電圧変換部201bが形成された箇所の断面である。
【0037】
図3(a)の工程では、半導体基板201にキャリアに対応した導電型(例えば、N型)の不純物イオンを注入することにより、光電変換部201a(図1参照)と電荷電圧変換部201bとを形成する。そして、光電変換部201aと電荷電圧変換部201bとの間に、転送MOSトランジスタのゲート電極(図示せず)をポリシリコンなどにより形成する。
【0038】
その後、半導体基板201及びゲート電極の上に、第1の層間絶縁膜202をCVD法により形成する。第1の層間絶縁膜202の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨する。そして、フォトリソグラフィ工程とそれに続く反応性イオンエッチング法を用いたエッチング工程とにより、第1の層間絶縁膜202にコンタクトホール203を形成する。これにより、電荷電圧変換部201bの表面の少なくとも一部を露出する。
【0039】
図3(b)の工程では、コンタクトホール203を埋めるとともに第1の層間絶縁膜202を覆うように、ブランケットタングステン(以降、W膜と表記)をCVD法により成長させる。ここで、W膜は、例えば、タングステンを主成分とする金属間化合物で形成されている。
【0040】
図3(c)の工程では、W膜をCMP法により研磨する。これにより、コンタクトホール203を除く部分のW膜が除去されて、コンタクトプラグ205が形成される。このとき、W膜の表面におけるコンタクトプラグ205上とそれ以外の部分との段差(1500Å程度)以上に研磨する。なぜなら、CMP法による研磨量が半導体基板201の面内で均一ではないため、一部過剰に研磨せざるをえないからである。
【0041】
図3(d)の工程では、図3(c)の工程による研磨面の上、すなわち、第1の層間絶縁膜202の上に、PVD法により、面内均一に、金属膜を形成する。金属膜は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属間化合物により形成されている。そして、その金属膜を、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程とによりパターンニングし、第1の配線層206を形成する。
【0042】
そして、第1の層間絶縁膜202及び第1の配線層206を覆うように、第2の層間絶縁膜207をCVD法により形成する。第2の層間絶縁膜207の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨する。そして、フォトリソグラフィ工程とそれに続く反応性イオンエッチング法を用いたエッチング工程とにより、第2の層間絶縁膜207にビアホール228を形成する。これにより、第1の配線層206の表面の少なくとも一部を露出する。
【0043】
図3(e)の工程では、ビアホール228を埋めるとともに第2の層間絶縁膜207を覆うように、W膜をCVD法により成長させる。ここで、W膜は、例えば、タングステンを主成分とする金属間化合物で形成されている。このときの成長条件は、図3(b)の工程と同様である。
【0044】
図3(f)の工程では、W膜をCMP法により研磨する。これにより、ビアホール228を除く部分のW膜が除去されて、ビアプラグ210が形成される。このとき、W膜の表面におけるビアプラグ210上とそれ以外の部分との段差(1500Å程度)以上に研磨する。なぜなら、CMP法による研磨量が半導体基板201の面内で均一ではないため、一部過剰に研磨せざるをえないからである。
【0045】
図3(g)の工程では、図3(f)の工程による研磨面の上、すなわち、第2の層間絶縁膜207の上に、PVD法により、面内均一に、金属膜を形成する。金属膜は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属間化合物により形成されている。そして、その金属膜を、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程とによりパターンニングし、第2の配線層208を形成する。
【0046】
そして、第2の層間絶縁膜207及び第2の配線層208を覆うように、第3の層間絶縁膜212をCVD法により形成する。第3の層間絶縁膜212の上面をCMP法により研磨する。そして、フォトリソグラフィ工程とそれに続く反応性イオンエッチング法を用いたエッチング工程とにより、第3の層間絶縁膜212にビアホール213を形成する。これにより、第2の配線層208の表面の少なくとも一部を露出する。
【0047】
図3(h)の工程では、ビアホール213を埋めるとともに第3の層間絶縁膜212を覆うように、W膜をCVD法により成長させる。ここで、W膜は、例えば、タングステンを主成分とする金属間化合物で形成されている。このときの成長条件は、図3(b)の工程と同様である。
【0048】
図3(i)の工程では、W膜をCMP法により研磨する。これにより、ビアホール213を除く部分のW膜が除去されて、ビアプラグ215が形成される。このとき、W膜の表面におけるビアプラグ215上とそれ以外の部分との段差(1500Å程度)以上に研磨する。なぜなら、CMP法による研磨量が半導体基板201の面内で均一ではないため、一部過剰に研磨せざるをえないからである。
【0049】
図3(j)の工程では、まず(第1の工程)、図3(i)の工程による研磨面の上、すなわち、第3の層間絶縁膜212の上に、PVD法により、面内均一に、金属膜を形成する。金属膜は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属間化合物により形成されている。
【0050】
さらに(第2の工程)、金属膜の上に、水素を含む誘電体膜を形成する。ここで、誘電体膜としてシリコン窒化膜を、プラズマCVD法を用いて形成する。このときの形成条件は、基板温度400℃、RF Power560W、処理ガスをSiH/N/NHとし、各ガスの流量をそれぞれ215/3000/70 cc/minとする。形成されたシリコン窒化膜の屈折率は2.0である。
【0051】
そして(第3の工程)、その金属膜及び誘電体膜(シリコン窒化膜)を、同一のマスクパターンを用いて、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程とによりパターンニングする。
【0052】
エッチング工程では、2段階のステップ(第1のステップ、第2のステップ)にて処理する。第1のステップでは、RF Power1000WでAr/CHF/CFガスをそれぞれ700/30/25sccmの流量で供給しながらRIE処理を行う。第2のステップでは、DC Power 150WでCl/BCl/CHFガスをそれぞれ700/30/25 sccmの流量で供給しながらRIE処理を行う。
【0053】
第1のステップにより金属膜がエッチングされて水素含有層217が形成され、第2のステップにより誘電体膜がエッチングされて第3の配線層211が形成される。すなわち、1つのマスクパターンを用いて、第1のステップおける処理と第2のステップにおける処理とを連続的に行う。これにより、水素含有層217は、第3の配線層211と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第3の配線層211に完全に重なったものとなる。
【0054】
図3(k)の工程では、まず(第4の工程)、第3の配線層211、水素含有層217、及び層間絶縁膜212を覆うように、水素含有層217より水素の含有率が低い保護膜219を形成する。このときの形成条件は、基板温度400℃、RF Power535W、処理ガスをSiH/N/NH/NOガスとし、各ガスの流量をそれぞれ85/3000/70/130 cc/minとする。形成された保護膜(シリコン酸窒化膜)219の屈折率は、例えば、1.60である。
【0055】
その後(第5の工程)、熱処理する。この熱処理により、第3の配線層211と水素含有層217とを形成するためのエッチング処理による光電変換部201aの受光表面201a1のエッチングダメージを除去する。より具体的には、この熱処理により、水素含有層217から光電変換部201aの受光表面201a1へ水素が供給(拡散)されるので、その受光表面201a1におけるダングリングボンドが低減する。このとき熱処理条件は、窒素雰囲気で450℃である。
【0056】
次に、カラーフィルタ221と同系の材料を保護膜219の上に塗布することにより、保護膜219の上に平坦化膜220を形成する。その後、平坦化膜220の上に、カラーフィルタ221を形成する。
【0057】
カラーフィルタ221及び平坦化膜220の屈折率は、保護膜(シリコン酸窒化膜)219と同じ1.60である。カラーフィルタ221は、赤、緑、青の三原色がそれぞれ各光電変換部201aの上方に位置するように形成される。カラーフィルタ221を通過した光(各色感度を示す波長へ選択的に分光された光)は、反射と透過とを繰り返し各光電変換部201aの受光表面201a1へ到達する。
【0058】
さらに、カラーフィルタ221の上に、マイクロレンズ222を形成する。
【0059】
このように、本実施形態では、同一のマスクを用いて第3の配線層211と水素含有層217とをパターニングする。これにより、第3の配線層211と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第3の配線層211に完全に重なるように水素含有層217を形成することが容易である。また、第3の配線層211と水素含有層217とのアライメントずれもない。さらに、第3の配線層における輪郭辺OAS3を規定する側面211aと水素含有層217の側面217aとによって形成される面は連続している。これにより、図1に示すように、受光表面201a1の中心を通る法線PLに対して第3の配線層211より近い領域に入射した光PBが水素含有層217により反射されにくい。すなわち、光電変換部201aの受光表面201a1への集光効率を高めるのに有利な構造をしている。
【0060】
また、カラーフィルタ221、平坦化膜220、及び保護膜219の屈折率の差が小さいため、それらの界面における反射がほとんど無い。さらに、保護膜219の屈折率と第3の層間絶縁膜212の屈折率との差は、水素含有層217の屈折率と第3の層間絶縁膜212の屈折率との差より小さい。これにより、保護膜219と第3の層間絶縁膜212との界面における反射も抑制されている。これにより、光電変換部201aへ向けて入射した光PBの反射を低減できるので、光電変換装置1の光感度を高くすることができる。 なお、図3(j)の工程における第1の工程及び第2の工程の後であって第3の工程の前に、熱処理する第6の工程を設けても良い。この場合、光電変換部201aの上方における全面に水素を含む誘電体膜(シリコン窒化膜)が存在する状態で熱処理を加えることにより、光電変換部201aの受光表面201a1におけるダングリングボンドを容易に水素で終端させることができる。すなわち、第3の工程の前における第6の工程と第4の工程の後における第5の工程とのの二段階の熱処理により、更に暗電流を低減した光電変換装置を実現することができる。ここで、第6の工程における熱処理条件は、第4の工程における熱処理条件と同様である。
【0061】
次に、本発明の光電変換装置を適用した撮像システムの一例を図4に示す。
【0062】
撮像システム90は、図4に示すように、主として、光学系、撮像装置86及び信号処理部を備える。光学系は、主として、シャッター91、撮影レンズ92及び絞り93を備える。撮像装置86は、光電変換装置1を含む。信号処理部は、主として、撮像信号処理回路95、A/D変換器96、画像信号処理部97、メモリ部87、外部I/F部89、タイミング発生部98、全体制御・演算部99、記録媒体88及び記録媒体制御I/F部94を備える。なお、信号処理部は、記録媒体88を備えなくても良い。
【0063】
シャッター91は、光路上において撮影レンズ92の手前に設けられ、露出を制御する。
【0064】
撮影レンズ92は、入射した光を屈折させて、撮像装置86の光電変換装置1の撮像面に被写体の像を形成する。
【0065】
絞り93は、光路上において撮影レンズ92と光電変換装置1との間に設けられ、撮影レンズ92を通過後に光電変換装置1へ導かれる光の量を調節する。
【0066】
撮像装置86の光電変換装置1は、光電変換装置1の撮像面に形成された被写体の像を画像信号に変換する。撮像装置86は、その画像信号を光電変換装置1から読み出して出力する。
【0067】
撮像信号処理回路95は、撮像装置86に接続されており、撮像装置86から出力された画像信号を処理する。
【0068】
A/D変換器96は、撮像信号処理回路95に接続されており、撮像信号処理回路95から出力された処理後の画像信号(アナログ信号)をデジタル信号へ変換する。
【0069】
画像信号処理部97は、A/D変換器96に接続されており、A/D変換器96から出力された画像信号(デジタル信号)に各種の補正等の演算処理を行い、画像データを生成する。この画像データは、メモリ部87、外部I/F部89、全体制御・演算部99及び記録媒体制御I/F部94などへ供給される。
【0070】
メモリ部87は、画像信号処理部97に接続されており、画像信号処理部97から出力された画像データを記憶する。
【0071】
外部I/F部89は、画像信号処理部97に接続されている。これにより、画像信号処理部97から出力された画像データを、外部I/F部89を介して外部の機器(パソコン等)へ転送する。
【0072】
タイミング発生部98は、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97に接続されている。これにより、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97へタイミング信号を供給する。そして、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97がタイミング信号に同期して動作する。
【0073】
全体制御・演算部99は、タイミング発生部98、画像信号処理部97及び記録媒体制御I/F部94に接続されており、タイミング発生部98、画像信号処理部97及び記録媒体制御I/F部94を全体的に制御する。
【0074】
記録媒体88は、記録媒体制御I/F部94に取り外し可能に接続されている。これにより、画像信号処理部97から出力された画像データを、記録媒体制御I/F部94を介して記録媒体88へ記録する。
【0075】
以上の構成により、光電変換装置1において良好な画像信号が得られれば、良好な画像(画像データ)を得ることができる。
【0076】
本発明の第2実施形態に係る光電変換装置300を、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る光電変換装置300の断面構成を示す図である。以下では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の部分の説明を省略する。
【0077】
光電変換装置300は、多層配線構造ML300を備える点で第1実施形態と異なる。多層配線構造ML300は、水素含有層(他の水素含有層)316及び水素含有層(他の水素含有層)318をさらに含む。
【0078】
水素含有層316は、第1の配線層(他の配線層)206と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第1の配線層206に完全に重なるように、第1の配線層206の上に配されている。水素含有層316は、水素を含む。水素含有層316における水素含有率は、保護膜219における水素含有率より高い。水素含有層316は、例えば、水素を含むシリコン窒化物で形成される。
【0079】
水素含有層318は、第2の配線層(他の配線層)208と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第2の配線層208に完全に重なるように第2の配線層208の上に配されている。水素含有層318は、水素を含む。水素含有層318における水素含有率は、保護膜219における水素含有率より高い。水素含有層318は、例えば、水素を含むシリコン窒化物で形成される。
【0080】
このように、各配線層の上に水素含有層が配されているので、光電変換部201aの受光表面201a1におけるダングリングボンドを容易に減少させることができる。
【0081】
また、光電変換装置300の製造方法が、図6に示すように、次の点で第1実施形態と異なる。図6は、光電変換装置300の製造方法を示す工程断面図である。
【0082】
図6(d1)の工程では、次の点で図3(d)の工程と異なる処理が行われる。
【0083】
金属膜を形成した後、金属膜の上に、金属膜の上に、水素を含む誘電体膜を形成する。このときの形成条件は、図3(j)の工程における第1の工程及び第2の工程と同様である。
【0084】
そして、その金属膜及び誘電体膜(シリコン窒化膜)を、同一のマスクパターンを用いて、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程とによりパターンニングする。このときの形成条件は、図3(j)の工程における第3の工程と同様である。これにより、第1の配線層206と、第1の配線層206と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第1の配線層206に完全に重なるように第1の配線層206の上に配された水素含有層316とを形成する。
【0085】
そして、第1の層間絶縁膜202、第1の配線層206、及び水素含有層316を覆うように、第2の層間絶縁膜207をCVD法により形成する。
【0086】
また、第2の層間絶縁膜207にビアホール228を形成する際のエッチング条件は、RF Power 2000W、処理ガスがC/O/Arであり、各ガスの流量が20/20/800sccmである。これにより、ビアホール228内から水素含有層316が無くなるようにして、第1の配線層206の表面の少なくとも一部を露出する。
【0087】
図6(g1)の工程では、次の点で図3(g)の工程と異なる処理が行われる。
【0088】
金属膜を形成した後、金属膜の上に、金属膜の上に、水素を含む誘電体膜を形成する。このときの形成条件は、図3(j)の工程における第1の工程及び第2の工程と同様である。
【0089】
そして、その金属膜及び誘電体膜(シリコン窒化膜)を、同一のマスクパターンを用いて、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程とによりパターンニングする。このときの形成条件は、図3(j)の工程における第3の工程と同様である。これにより、第2の配線層208と、第2の配線層208と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第2の配線層208に完全に重なるように第2の配線層208の上に配された水素含有層318とを形成する。
【0090】
そして、第2の層間絶縁膜207、第2の配線層208、及び水素含有層318を覆うように、第3の層間絶縁膜212をCVD法により形成する。
【0091】
また、第3の層間絶縁膜212にビアホール213を形成する際のエッチング条件は、RF Power 2000W、処理ガスがC/O/Arであり、各ガスの流量が20/20/800sccmである。これにより、ビアホール213内から水素含有層318が無くなるようにして、第2の配線層208の表面の少なくとも一部を露出する。
【0092】
このように、本実施形態では、同一のマスクを用いて第1の配線層206と水素含有層316とをパターニングする。これにより、第1の配線層206と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第1の配線層206に完全に重なるように水素含有層316を形成することが容易である。また、第1の配線層206と水素含有層316とのアライメントずれもない。さらに、第1の配線層における輪郭辺OAS1(図2参照)を規定する側面と水素含有層316の側面とによって形成される面は連続したものとなる。これにより、受光表面201a1の中心を通る法線PL(図1参照)に対して第1の配線層206より近い領域に入射した光が水素含有層316により反射されにくい。すなわち、光電変換部201aの受光表面201a1への集光効率を高めるのに有利な構造をしている。
【0093】
同様に、本実施形態では、同一のマスクを用いて第2の配線層208と水素含有層318とをパターニングする。これにより、第2の配線層208と同一のパターンを有し且つ受光表面201a1に垂直な方向から見た場合に第2の配線層208に完全に重なるように水素含有層318を形成することが容易である。また、第2の配線層208と水素含有層318とのアライメントずれもない。さらに、第2の配線層における輪郭辺OAS1(図2参照)を規定する側面と水素含有層318の側面とによって形成される面は連続したものとなる。これにより、受光表面201a1の中心を通る法線PL(図1参照)に対して第2の配線層208より近い領域に入射した光が水素含有層318により反射されにくい。すなわち、光電変換部201aの受光表面201a1への集光効率を高めるのに有利な構造をしている。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光電変換装置1の断面構成を示す図。
【図2】光電変換装置1における開口領域を示す図
【図3】光電変換装置1の製造方法を示す工程断面図。
【図4】第1実施形態に係る光電変換装置を適用した撮像システムの構成図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る光電変換装置300の断面構成を示す図。
【図6】光電変換装置300の製造方法を示す工程断面図。
【符号の説明】
【0095】
1、300 光電変換装置
90 撮像システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光表面を有する光電変換部と、
前記光電変換部の上方における開口領域を規定する多層配線構造と、
を備え、
前記多層配線構造は、
前記開口領域における輪郭辺を規定する最上の配線層と、
前記最上の配線層と同一のパターンを有し且つ前記受光表面に垂直な方向から見た場合に前記最上の配線層に完全に重なるように前記最上の配線層の上に配され、水素を含む水素含有層と、
少なくとも前記開口領域を満たす層間絶縁膜と、
前記最上の配線層、前記水素含有層、及び前記層間絶縁膜を覆うように延びており、前記水素含有層より水素の含有率が低い保護膜と、
を含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記最上の配線層は、アルミニウムを主成分とする
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記保護膜の屈折率と前記層間絶縁膜の屈折率との差は、前記水素含有層の屈折率と前記層間絶縁膜の屈折率との差より小さい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記多層配線構造は、
前記開口領域における他の輪郭辺を規定する他の配線層と、
前記他の配線層と同一のパターンを有し且つ前記受光表面に垂直な方向から見た場合に前記他の配線層に完全に重なるように前記他の配線層の上に配され、水素を含む他の水素含有層と、
をさらに含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記他の配線層における前記他の輪郭辺を規定する側面と前記他の水素含有層の側面とによって形成される面は連続している
ことを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置の撮像面へ像を形成する光学系と、
前記光電変換装置から出力された信号を処理して画像データを生成する信号処理部と、
を備えたことを特徴とする撮像システム。
【請求項7】
受光表面を有する光電変換部と、前記光電変換部の上方に層間絶縁膜とを有する光電変換装置の製造方法であって、
前記層間絶縁膜の上に、金属膜を形成する第1の工程と、
前記金属膜の上に、水素を含む誘電体膜を形成する第2の工程と、
1つのマスクパターンを用いて、前記金属膜をパターニングすることにより、前記光電変換部の上方の開口領域における輪郭辺を規定する最上の配線層を形成することと、前記誘電体膜をパターニングすることにより、前記最上の配線層と同一のパターンを有し且つ前記受光表面に垂直な方向から見た場合に前記最上の配線層に完全に重なるように前記最上の配線層の上に配された水素含有層を形成することとを、連続的に行う第3の工程と、
前記最上の配線層、前記水素含有層、及び前記層間絶縁膜を覆うように、前記水素含有層より水素の含有率が低い保護膜を形成する第4の工程と、
前記第4の工程の後に、熱処理する第5の工程と、
を備えたことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の工程及び前記第2の工程の後であって前記第3の工程の前に、熱処理する第6の工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項7に記載の光電変換装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−16242(P2010−16242A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175905(P2008−175905)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】