説明

内燃機関の排ガス処理装置

【課題】排ガス中のNOxの低減効果を確保しながら、EGRガス中の未燃燃料のタール化を抑制することができ、それにより、EGR装置の機能低下を抑制することができる内燃機関の排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】1番および2番気筒#1、#2に接続され、これらの気筒#1、#2から排出された排ガスが流入する第1マニホールド8Aと、3番および4番気筒#3、#4に接続され、これらの気筒#3、#4から排出された排ガスが流入するとともに、接続通路9を介して第1マニホールド8Aに接続された第2マニホールド8Bと、接続通路9に設けられ、流入する排ガス中の未燃燃料を浄化する未燃燃料浄化触媒10と、第2マニホールド8Aと吸気マニホールド6に接続され、排ガスの一部をEGRガスとして還流させるためのEGR通路32と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の気筒から排出された排ガスを処理する内燃機関の排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用のディーゼルエンジン(以下「エンジン」という)などには、排ガス中のNOxを低減したり、浄化したりするために、EGR装置やNOx浄化触媒などが設けられている。EGR装置は、エンジンの排気系と吸気系を接続するEGR通路と、このEGR通路の途中に設けられ、EGR通路を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラと、EGRガス量を調整するためのEGRバルブなどを備えている。このEGR装置は、エンジンの気筒から排出された排ガスの一部をEGRガスとして吸気系に還流させることにより、気筒内の燃焼を緩慢にすることで燃焼温度を低下させ、それにより、NOxの発生量を低減する。ただしこの場合、EGRガスの分、吸入空気量が少なくなるため、煤などのパティキュレート(以下「PM」という)の発生量が多くなる。
【0003】
一方、NOx浄化触媒は、排ガスを外部に排出する排気管の途中に設けられており、排ガス中のNOxを吸着するとともに、吸着したNOxを還元することによって、NOxを浄化する。このようなNOx浄化触媒によるNOxの還元を促進するために、還元剤としての燃料をNOx浄化触媒に供給する技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1では、エンジンの各気筒の1燃焼サイクルにおいて、燃料を分割して噴射しており、具体的には、エンジンの出力を得るためのメイン噴射の後、膨張行程中または排気行程中にポスト噴射を実行する。これにより、排ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に制御することによって、NOx浄化触媒に吸着されていたNOxを、燃料中のHC成分によって還元する。このようなポスト噴射を実行する場合、ポスト噴射による燃料、すなわち未燃燃料が排ガスに含まれるので、前述したEGR装置を備えたエンジンでは、EGRガスを吸気系へ還流させる際に、それに含まれる未燃燃料がEGR通路に流入する。この場合、EGR装置のEGRクーラやEGRバルブなどの温度が比較的低いと、未燃燃料がそれらに付着し、特に、その未燃燃料がEGRガス中のPMと結合すると、粘性が非常に高いタール状になり、その結果、EGR装置の機能低下や故障の原因になる。
【0005】
このような問題を解決するための技術が、例えば特許文献2に開示されている。この特許文献2では、EGR通路のEGRクーラおよびEGRバルブの上流側に、EGR浄化触媒が設けられている。このEGR浄化触媒は、EGR通路に流入したEGRガス中の未燃燃料を燃焼によって除去し、それにより、EGR通路に流入した未燃燃料のタール化を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−288031号公報
【特許文献2】特開2005−264821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2では、EGRガスとして還流する排ガスは、すべての気筒から排出されたものであるので、浄化すべきEGRガス自体の量が多く、それに含まれる未燃燃料も多くなり、そのため、EGRガス中の未燃燃料を十分に除去するためには、容量が比較的大きいEGR浄化触媒が必要になる。このような大容量のEGR浄化触媒を備えたエンジンを車両に搭載する場合、エンジンのレイアウトの自由度が低くなってしまう。もちろん、EGR浄化触媒の容量を小さくすれば、エンジンのレイアウトの自由度を高めることが可能である。しかし、この場合には、EGR浄化触媒を通過するEGRガスの圧力損失が大きくなるために、EGRガス量が減ってしまい、その結果、EGRガスを吸気系に還流させることによるNOxの低減効果が損なわれてしまう。また、EGR浄化触媒に対し、その触媒性能を向上させることにより、未燃燃料の除去効果を高めることが可能であるものの、この場合には、未燃燃料の燃焼が促進されることによって、EGRガスの温度が上昇してしまう。その結果、温度の高いEGRガスが還流することで、気筒内の燃焼温度を十分に低下させることができず、やはり、NOxの低減効果が損なわれてしまう。
【0008】
さらに、低温環境下でエンジンを始動させた場合などには、タール化した未燃燃料によって、EGR浄化触媒が閉塞されるおそれがある。すなわち、低温環境下におけるエンジンの始動直後では、気筒からEGR浄化触媒までの排ガスが流れる経路上の部品などの温度が低く、それらの部品の熱容量の大きさによっては、排ガスから熱エネルギが奪われることにより、EGRガスの温度が低下する。この場合、EGRガス中の未燃燃料が凝縮することによって、活性化前のEGR浄化触媒の内部においてタール化し、特に、EGR浄化触媒の比較的高い圧力損失を有するセルが閉塞されることがある。その結果、EGR通路が閉塞されるおそれがある。もちろん、これを回避するために、低温環境下におけるエンジンの始動直後において、EGRガスの量を低減することが考えられるが、この場合には、適切な量のEGRガスを還流させることができず、NOx低減効果が損なわれてしまう。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、排ガス中のNOxの低減効果を確保しながら、EGRガス中の未燃燃料のタール化を抑制することができ、それにより、EGR装置の機能低下を抑制することができる内燃機関の排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各々が単一または複数の気筒で構成された第1および第2気筒部(実施形態における(以下、本項において同じ)1番〜4番気筒#1〜#4)を有する内燃機関3において、第1および第2気筒部から排出された排ガスを処理する内燃機関の排ガス処理装置1であって、第1気筒部(1番および2番気筒#1、#2)に接続され、第1気筒部から排出された排ガスが流入する第1排気通路部(第1マニホールド8A)と、第2気筒部(3番および4番気筒#3、#4)に接続され、第2気筒部から排出された排ガスが流入するとともに、接続通路9を介して第1排気通路部に接続された第2排気通路部(第2マニホールド8B)と、接続通路に設けられ、流入する排ガス中の未燃燃料を浄化する未燃燃料浄化触媒10と、第2排気通路部と内燃機関の吸気系(吸気マニホールド6)に接続され、排ガスの一部をEGRガスとして吸気系に還流させるためのEGR通路(EGR管32)と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第1および第2気筒部には、第1および第2排気通路部がそれぞれ接続されているので、第1気筒部から排出された排ガスは第1排気通路部に、第2気筒部から排出された排ガスは第2排気通路部に流入する。また、第1および第2排気通路部は、接続通路を介して互いに接続され、この接続通路に未燃燃料浄化触媒が設けられており、さらに、第2排気通路部と吸気系にEGR通路が接続されている。以上により、第1および第2気筒部から排出された排ガスの一部は、EGRガスとして、次のように吸気系に還流する。すなわち、第1気筒部から排出され、第1排気通路部に流入した排ガスの一部は、未燃燃料浄化触媒を有する接続通路を通って、第2排気通路部に流入し、さらにEGR通路に流入する。一方、第2気筒部から排出され、第2排気通路部に流入した排ガスの一部は、EGR通路に直接、流入する。そして、EGR通路に流入した排ガスであるEGRガスは、EGR通路を通って吸気系に還流し、第1および第2気筒部に導入される。これにより、各気筒部内の燃焼温度が低下することによって、NOxの低減効果を得ることができる。
【0012】
また、第1および第2気筒部から排出された排ガスに未燃燃料が含まれ、その排ガスをEGRガスとして還流させる場合、前述したように、EGRガス中の未燃燃料のタール化を抑制するために、EGR通路に流入する排ガス中の未燃燃料を、できる限り除去することが好ましい。本発明では、第1および第2気筒部から排出され、EGRガスとして還流する排ガスのうち、第1気筒部から排出された排ガス中の未燃燃料が、未燃燃料浄化触媒によって浄化(除去)される。したがって、第2気筒部から排出される排ガス中の未燃燃料が、ほとんどタール化しない程度に少なければ、第1気筒部から排出される排ガス中に未燃燃料が比較的多く含まれている場合でも、EGRガス中の未燃燃料を低減でき、EGRガスが還流する際の未燃燃料のタール化を十分に抑制することができる。それにより、EGRガスを還流させるための装置(EGR装置)の機能低下を抑制することができる。
【0013】
また、未燃燃料浄化触媒は、第1気筒部から排出され、EGRガスとして還流する排ガスのみを浄化すればよいので、すべての気筒からのEGRガスを浄化する従来のEGR浄化触媒に比べて、未燃燃料浄化触媒の容量を小さくすることができる。これにより、未燃燃料浄化触媒のコンパクト化を図ることができ、その結果、そのような未燃燃料浄化触媒を備えた内燃機関のレイアウトの自由度を高めることができる。また、容量の小さい未燃燃料浄化触媒を採用することにより、第1排気通路部から第2排気通路部へ流れる排ガスにおいて、過度の温度上昇を防止でき、それにより、EGRガスの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、第1気筒部から排出され、EGRガスとして還流する排ガスは、未燃燃料浄化触媒を通過する際に、触媒による反応熱によって昇温されるのに対し、第2気筒部から排出され、EGRガスとして還流する排ガスは、そのままEGR通路に流入するので、昇温されることがない。したがって、すべての気筒から排出され、EGRガスとして還流するすべての排ガスが昇温される従来に比べて、EGRガスの昇温を抑制することができ、それにより、EGRガスの還流によるNOxの低減効果を十分に確保することができる。加えて、第1気筒部から排出された排ガスは、未燃燃料浄化触媒を通過する際の触媒自体の抵抗により、第2排気通路部への流入が抑制される。これにより、第1気筒部から排出された排ガスのうち、未燃燃料浄化触媒によって昇温されかつEGR通路に流入するEGRガスは、第2気筒部から排出された排ガスのうちのEGRガスに比べて少なくなる。その結果、EGRガス全体の昇温が抑制され、しかも、比較的低い温度のEGRガスでは、その密度が大きいので、より多くのEGRガスを還流させることができ、上述したNOxの低減効果を効果的に得ることができる。
【0015】
さらに、未燃燃料浄化触媒は、EGR浄化触媒をEGR通路の途中に設けた従来に比べて、燃焼が行われる気筒により近い位置に設けられている。これにより、低温環境下において、内燃機関を始動させた直後であっても、第1気筒部から排出され、未燃燃料浄化触媒を通過する排ガスの温度を比較的高く維持することができる。その結果、その排ガスに未燃燃料が含まれている場合でも、その未燃燃料が未燃燃料浄化触媒においてタール化するのを抑制でき、その触媒が閉塞するのを回避することができる。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の排ガス処理装置において、内燃機関は、第1および第2気筒部にそれぞれ燃料を供給するインジェクタ(燃料噴射弁4)を、さらに有しており、第1および第2気筒部における膨張行程中または排気行程中にインジェクタから燃料を噴射するポスト噴射を制御するポスト噴射制御手段(ECU2、ステップ7、11)を、さらに備え、ポスト噴射制御手段は、第2気筒部のポスト噴射量QPOSTを、第1気筒部のポスト噴射量よりも小さくなるように制御することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1および第2気筒部にそれぞれ燃料を供給するインジェクタが、ポスト噴射制御手段によって制御されることにより、第1および第2気筒部の膨張行程中または排気行程中にポスト噴射が実行される。またこの場合、第2気筒部のポスト噴射量が、第1気筒部のポスト噴射量よりも小さくなるように制御される。これにより、第2気筒部から排出された排ガスには、未燃燃料が非常に少なく、一方、第1気筒部から排出され、EGRガスとして還流する排ガスは、未燃燃料浄化触媒を通過することによって浄化されることにより、ポスト噴射による排ガス中の未燃燃料が浄化(除去)される。したがって、上記のようなポスト噴射を実行する場合でも、EGRガスに含まれる未燃燃料が非常に少ないので、前述した請求項1と同様の作用、効果を得ることができる。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の内燃機関の排ガス処理装置において、ポスト噴射制御手段は、第2気筒部に対するポスト噴射を禁止するように制御することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第2気筒部に対するポスト噴射を禁止するように制御するので、第2気筒部から排出され、EGRガスとして還流する排ガスには、ポスト噴射による未燃燃料が含まれることがない。これにより、EGRガスには未燃燃料がほとんど存在しないので、ポスト噴射を実行する場合でも、前述した請求項1の作用、効果をより効果的に得ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の排ガス処理装置において、内燃機関は、第1および第2気筒部にそれぞれ燃料を供給するインジェクタを、さらに有しており、第1および第2気筒部における膨張行程中または排気行程中にインジェクタから燃料を噴射するポスト噴射を制御するポスト噴射制御手段を、さらに備え、ポスト噴射制御手段は、第2排気通路部とEGR通路との接続部32aからの距離が遠い気筒部ほど、ポスト噴射量をより大きくなるように制御することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、前記請求項2と同様、インジェクタがポスト噴射制御手段によって制御されることにより、ポスト噴射が実行される。この場合、第2排気通路部とEGR通路との接続部からの距離が遠い気筒部ほど、ポスト噴射量がより大きくなるように制御される。具体的には、第2排気通路部が第2気筒部に接続されているので、第2排気通路部とEGR通路部との接続部からの距離については、第1気筒部が第2気筒部よりも遠い位置に配置されており、したがって、第1気筒部のポスト噴射量が、第2気筒部のそれよりも大きくなるように制御される。逆に言うと、第2気筒部のポスト噴射量が、第1気筒部のそれよりも小さくなるように制御される。したがって、上記の構成によれば、請求項2と同様の作用、効果を得ることができる。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の内燃機関の排ガス処理装置において、第1気筒部(第1気筒群#1_#2)は、複数の気筒(1番および2番気筒#1、#2)で構成され、ポスト噴射制御手段は、第1気筒部の複数の気筒に対し、接続部からの距離が遠い気筒ほど、ポスト噴射量をより大きくなるように制御することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、第1気筒部が複数の気筒(以下、これらの気筒をまとめて適宜、「第1気筒群」という)で構成され、この第1気筒群に対するポスト噴射については、第2排気通路部とEGR通路との接続部からの距離が遠い気筒ほど、ポスト噴射量がより大きくなるように制御される。その結果、第1気筒群のうち、前記接続部から遠い気筒ほど、排出される排ガスに含まれる未燃燃料がより多くなる。逆に言うと、第1気筒群のうち、前記接続部に近い気筒ほど、排ガスに含まれる未燃燃料がより少なくなる。通常、前記接続部に近い位置に存在する排ガスほど、EGRガスとして還流しやすく、逆に、前記接続部から遠い位置に存在する排ガスほど、EGRガスとして還流しにくい。したがって、第1気筒群に対する上記のポスト噴射制御により、未燃燃料が少ない排ガスがEGRガスとして還流しやすく、逆に、未燃燃料が多い排ガスがEGRガスとして還流しにくい。その結果、第1気筒群に対するポスト噴射による未燃燃料が、EGRガスに含まれるのを大幅に低減することができる。
【0024】
請求項6に係る発明は、請求項2ないし5のいずれかに記載の内燃機関の排ガス処理装置において、第1排気通路部に接続され、第1排気通路部内の排ガスを外部に排出するためのメイン排気通路(排気管7)と、このメイン排気通路に設けられ、排ガスを浄化するとともに、ポスト噴射によって供給された排ガス中の未燃燃料を用いて再生動作が実行される排ガス浄化装置11と、第1排気通路部内の排ガスの圧力である排気圧を調整するための排気圧調整機構(ターボチャージャ21)と、ポスト噴射の実行時には、ポスト噴射の実行時以外のときよりも、排気圧を低下させるように排気圧調整機構を制御する制御手段(ECU2、ステップ25)と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、第1排気通路部にメイン排気通路が接続され、このメイン排気通路に、排ガス浄化装置が設けられている。この排ガス浄化装置は、排ガスを浄化するとともに、ポスト噴射によって供給された排ガス中の未燃燃料を用いて再生動作が実行されるように構成されている。また、第1排気通路部内の排ガスの圧力である排気圧を調整するための排気圧調整機構が設けられている。この排気圧調整機構は、制御手段により、ポスト噴射の実行時には、ポスト噴射の実行時以外のときよりも、排気圧を低下させるように制御される。これにより、第1排気通路部内の圧力が第2排気通路部内のそれに比べて低くなり、その結果、第1および第2気筒部から排出された排ガスは、メイン排気通路側に流れやすくなる一方、EGR通路側に流れにくくなる。
【0026】
以上により、ポスト噴射によって排ガスに含まれた未燃燃料を、排ガス浄化装置に適切に供給することができ、それにより、排ガス浄化装置の再生を効率よく行うことができる。また、未燃燃料を含む排ガスが、EGR通路側に流れにくいので、ポスト噴射を実行する場合でも、前述した請求項1の作用、効果をより効果的に得ることができる。
【0027】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の内燃機関の排ガス処理装置において、排気圧調整機構は、メイン排気通路に配置されたタービン(タービンブレード23)を有し、過給圧を変更可能なターボチャージャ21で構成されており、制御手段は、ポスト噴射の実行時には、ポスト噴射の実行時以外のときよりも、過給圧を低下させるように制御することを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、排気圧調整機構が、過給圧を変更可能なターボチャージャで構成されており、このターボチャージャは、ポスト噴射の実行時には、ポスト噴射の実行時以外のときよりも、過給圧が低下するように制御される。ターボチャージャによって過給圧を低下させる場合、通常、メイン排気通路に配置されたタービンに吹き付けられる排ガスの吹出し口の開度が、より大きくなるように制御される。このように、上記吹出し口の開度が大きくなると、メイン排気通路内の排ガスが流れやすくなるために、メイン排気通路内の排気圧が低下し、それに伴い、メイン排気通路が接続する第1排気通路部内の圧力も低下する。これにより、前記請求項6と同様、第1および第2気筒部から排出された排ガスが、メイン排気通路側に流れやすくなることで、ポスト噴射によって排ガスに含まれた未燃燃料を、排ガス浄化装置に適切に供給することができる。以上のように、ターボチャージャを排気圧調整機構として利用でき、請求項6の作用、効果を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態による排ガス処理装置を適用した内燃機関を概略的に示す図である。
【図2】排ガス処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】ポスト噴射制御処理を示すフローチャートである。
【図4】ターボチャージャの可変ベーンの開度制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による排ガス処理装置1を適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3を示しており、図2は、排ガス処理装置1の概略構成を示している。図1に示すように、このエンジン3は、例えば車両用のディーゼルエンジンであり、1番〜4番の気筒#1〜#4を有する直列4気筒タイプのものである。また、エンジン3は、気筒#1〜#4に対応して、それぞれの燃焼室に臨む燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)4を有している。各インジェクタ4による燃料の噴射量および噴射タイミングは、ECU2からの駆動信号によって制御される。
【0031】
エンジン3の吸気管5は、吸気マニホールド6(吸気系)を介して、4つの気筒#1〜#4に接続されている。吸気マニホールド6は、4つの分岐部6aを有しており、これらの分岐部6aが、対応する気筒#1〜#4の吸気ポート(図示せず)にそれぞれ接続されている。なお、吸気管5の途中には、インタークーラ5aが設けられており、このインタークーラ5aにより、後述するターボチャージャ21による過給動作によって温度上昇した吸入空気が冷却される。
【0032】
一方、エンジン3の排気管7(メイン排気通路)は、排気マニホールド8を介して、4つの気筒#1〜#4に接続されている。排気マニホールド8は、第1マニホールド8A(第1排気通路部)および第2マニホールド8B(第2排気通路部)を有している。これらのマニホールド8Aおよび8Bはそれぞれ、2つの分岐部8a、8aを有しており、第1マニホールド8Aの2つの分岐部8a、8aがそれぞれ、1番および2番気筒#1、#2の排気ポート(図示せず)に、第2マニホールド8Bの2つの分岐部8a、8aがそれぞれ、3番および4番気筒#3、#4の排気ポート(図示せず)に、接続されている。したがって、1番および2番気筒#1、#2から排出された排ガスは、第1マニホールド8Aに流入し、3番および4番気筒#3および#4から排出された排ガスは、第2マニホールド8Bに流入する。
【0033】
なお、本実施形態では、1番および2番気筒#1、#2が、本発明の第1気筒部に相当し、3番および4番気筒#3、#4が、本発明の第2気筒部に相当する。また、1番〜4番気筒#1〜#4は、図1の左右方向に互いに並んだ状態で配置されており、気筒番号の小さい気筒ほど、第2マニホールド8Bと後述するEGR管32との接続部32aからの距離が遠くなっている。なお、以下の説明では、本発明の第1気筒部に相当する1番および2番気筒#1、#2について、両気筒を特に区別しないときには、これらの気筒#1、#2をまとめて適宜、「第1気筒群#1_#2」と称呼するものとする。
【0034】
また、第1マニホールド8Aおよび第2マニホールド8Bは、接続通路9を介して接続されており、この接続通路9に未燃燃料浄化触媒10が設けられている。この未燃燃料浄化触媒10は、表面にゼオライトを担持した金属製のハニカムコアを有する酸化触媒などで構成されている。したがって、第1マニホールド8Aおよび第2マニホールド8Bの一方の排ガスが他方に流れる場合、その排ガスが未燃燃料浄化触媒10を通過する際に、排ガス中の未燃燃料(HC成分)が燃焼(酸化反応)によって除去される。
【0035】
また、第1マニホールド8Aには、前記排気管7が接続されており、この排気管7の途中に排ガス浄化装置11が設けられている。この排ガス浄化装置11は、上流側から順に、酸化触媒12、フィルタ13およびNOx浄化触媒14を備えている。酸化触媒12は、前記未燃燃料浄化触媒10と同様、ゼオライトを担持した金属製のハニカムコアを有している。後述するように、ポスト噴射が実行されることにより、排ガス中に未燃燃料が含まれ、その排ガスが排気管7内を流れ、酸化触媒12を通過する際に、排ガス中の未燃燃料に含まれるHC成分が酸化される。この酸化反応による反応熱によって、排ガスの温度が高められ、この排ガスで下流側のフィルタ13が昇温される。
【0036】
フィルタ13は、多孔質セラミックなどで構成されたハニカムコアを有しており、排ガス中の煤などのパティキュレート(以下「PM」という)を捕集することにより、PMが外部に排出されるのを低減する。フィルタ13の温度が所定温度(例えば600℃)以上のときに、フィルタ13に堆積したPMが燃焼し、それにより、フィルタ13の捕集能力が回復し、フィルタ13が再生される。
【0037】
NOx浄化触媒14は、排ガス中のNOxを捕捉するとともに、捕捉したNOxを還元することにより、NOxを浄化する。具体的には、NOx浄化触媒14は、排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン側であるときには、排ガス中のNOxを捕捉し、逆に、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側であるときには、排ガス中のHC成分などを還元剤として、捕捉したNOxを還元する。したがって、後述するように、ポスト噴射が実行されることにより、排ガス中に未燃燃料が含まれ、その未燃燃料のHC成分が還元剤として作用することで、NOx浄化触媒14に捕捉していたNOxが還元される。それにより、NO浄化触媒14におけるNOx捕捉能力が回復し、NOx浄化触媒14が再生される。
【0038】
また、エンジン3は、ターボチャージャ21(排気圧調整機構)を備えている。このターボチャージャ21は、可変容量タイプのものであり、吸気管5に設けられた回転自在のコンプレッサブレード22と、排気管7の酸化触媒12よりも上流側に設けられた回転自在のタービンブレード23(タービン)および回動自在の可変ノズル24と、両ブレード22および23を一体に連結するシャフト25と、ECU2からの制御信号によって制御され、可変ノズル24を駆動するノズルアクチュエータ26などを有している。
【0039】
ターボチャージャ21は、排気管7内を流れる排ガスによってタービンブレード23が回転駆動されるのに伴い、これと一体のコンプレッサブレード22が回転駆動されることにより、吸気管5内の吸入空気を加圧する過給動作を行う。また、可変ノズル24は、複数の可変ベーン24a(2つのみ図示)を有しており、ノズルアクチュエータ26で可変ノズル24が回動駆動されることにより、各可変ベーン24aの開度が変化し、それに伴い、タービンブレード23に吹き付けられる排ガスの流量が変化する。
【0040】
具体的には、可変ベーン24aの開度を小さくすると、タービンブレード23に吹き付けられる排ガスの流量が絞られ、それにより、その排ガスの流速が速くなるとともに圧力が高くなることで、タービンブレード23の回転速度が上昇し、それに伴い、コンプレッサブレード22の回転速度も上昇する。これにより、コンプレッサブレード22による過給圧が上昇する。またこの場合、排ガスの流量が絞られるために、排気管7内の排ガスが流れにくくなり、それにより、排気管7のタービンブレード23の上流側の排ガスの圧力(以下「排気圧」という)が高くなり、それに伴い、第1マニホールド8A内の排気圧も上昇する。
【0041】
逆に、可変ベーン24aの開度を大きくすると、タービンブレード23に吹き付けられる排ガスの流速が遅くなるとともに圧力が低くなることで、タービンブレード23の回転速度が低下し、それに伴い、コンプレッサブレード22の回転速度も低下する。これにより、コンプレッサブレード22による過給圧が低減する。またこの場合、可変ベーン24aの開度が大きくなるために、排気管7内の排ガスが流れやすくなり、それにより、排気圧が低くなり、それに伴い、第1マニホールド8Aの排気圧も低下する。
【0042】
また、エンジン3は、EGR装置31を備えている。このEGR装置31は、排気マニホールド8の第2マニホールド8Bと吸気マニホールド6に接続されたEGR管32(EGR通路)と、このEGR管32の途中に設けられ、EGR管32内を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラ33と、EGR管32の下流端部に設けられたEGRバルブ34などを有している。EGRバルブ34は、リニア電磁弁などで構成されており、そのリフト量がECU2からの駆動信号で制御されることにより、EGRガス量を制御する。
【0043】
また、エンジン3には、クランク角センサ41および気筒判別センサ42が設けられている。クランク角センサ41は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、クランクシャフト(図示せず)の回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。CRK信号は、所定のクランク角(例えば1°)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。一方、TDC信号は、気筒#1〜#4の各ピストン(図示せず)が吸気行程開始時の上死点よりも若干、手前の所定クランク角位置にあることを表す信号であり、4気筒のエンジン3では、クランク角180°ごとに出力される。
【0044】
気筒判別センサ42は、燃料を噴射すべき気筒#1〜#4を判別するために、パルス信号であるCYL信号をECU2に出力する。ECU2は、このCYL信号に基づき、燃料を噴射すべき気筒#1〜#4に対応するインジェクタ4を制御する。
【0045】
また、ECU2には、アクセル開度センサ43が接続されている。このアクセル開度センサ43は、図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APを検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。
【0046】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。このECU2は、前述した各種センサ41〜43からの検出信号に応じて、ポスト噴射を含むインジェクタ4の燃料噴射制御などを行う。なお、本実施形態では、ECU2が、本発明のポスト噴射制御手段および制御手段に相当する。
【0047】
次に、図3を参照しながら、ECU2によって実行されるポスト噴射の制御処理について説明する。このポスト噴射制御処理は、TDC信号の入力に同期して実行される。このポスト噴射は、フィルタ13および/またはNOx浄化触媒14を再生するために実行されるものである。具体的には、気筒#1〜#4のうちの所定の気筒の燃焼室に対し、メイン噴射後の膨張行程中または排気行程中にインジェクタ4から所定のポスト噴射量QPOSTの燃料を噴射する。これにより、未燃燃料が排ガスに含まれ、その排ガスが、排気マニホールド8の第1マニホールド8Aを介して、排気管7に流入し、その排気管7内を流れることにより、フィルタ13およびNOx浄化触媒14の前述した再生が行われる。
【0048】
本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、ポスト噴射の実行条件成立フラグF_POSTOKが「1」であるか否かを判別する。この実行条件成立フラグF_POSTOKは、フィルタ13および/またはNOx浄化触媒14を再生すべきであるときに、「1」にセットされるものである。この判別結果がNOのときには、ポスト噴射を実行すべき条件が成立していないので、本処理をそのまま終了する。一方、ステップ1の判別結果がYESのときには、ステップ2へ進み、ポスト噴射量QPOSTを算出する。
【0049】
このステップ2では、エンジン回転数NEおよび要求トルクに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって、ポスト噴射量QPOSTを算出する。なお、要求トルクは、エンジン3に要求されるトルクであり、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じ、マップ(図示せず)を検索することなどによって算出される。
【0050】
次いで、今回のループが第1気筒群#1_#2への燃料噴射であるか否かを判別する(ステップ3)。この判別結果がNOで、第1気筒群#1_#2への燃料噴射でないとき、すなわち3番気筒#3または4番気筒#4への燃料噴射であるときには、これらの気筒#3、#4に対するポスト噴射を禁止するために、ポスト噴射量QPOSTとして、値0を設定し(ステップ4)、本処理をそのまま終了する。このように、ポスト噴射量QPOSTが0に制御されることにより、3番および4番気筒#3、#4では、ポスト噴射が実行されない。
【0051】
一方、ステップ3の判別結果がYESのときには、ステップ5へ進み、前記ステップ2において算出されたポスト噴射量QPOSTが、所定のしきい値QREF以下であるか否かを判別する。なお、このしきい値QREFは、ポスト噴射量QPOSTの上限値の1/2よりも大きい値に設定されている。ステップ5の判別結果がYESのときには、ステップ6に進み、今回のループが、第1気筒群#1_#2のうちの1番気筒#1への燃料噴射であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、1番気筒#1への燃料噴射でないときには、本処理をそのまま終了する。一方、ステップ6の判別結果がYESのときには、1番気筒#1において、ポスト噴射を実行し(ステップ7)、本処理を終了する。
【0052】
一方、前記ステップ5の判別結果がNOのとき、すなわち、ステップ2において算出されたポスト噴射量QPOSTが、しきい値QREFよりも大きいときには、ステップ8に進み、前記ステップ6と同様、今回のループが1番気筒#1への燃料噴射であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、1番気筒#1への燃料噴射であるときには、しきい値QREFをポスト噴射量QPOSTとして設定し(ステップ9)、前記ステップ7を実行して、本処理を終了する。一方、ステップ8の判別結果がNOのとき、すなわち、今回のループが、第1気筒群#1_#2のうちの2番気筒#2への燃料噴射であるときには、前記ステップ2で算出されたポスト噴射量QPOSTからしきい値QREFを減じた値を、ポスト噴射量QPOSTとして設定する(ステップ10)。そして、2番気筒#2においてポスト噴射を実行し(ステップ11)、本処理を終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態の排ガス処理装置1では、ポスト噴射が、第1気筒群#1_#2である1番および2番気筒#1、#2のみで実行される。この場合、ステップ2において算出されたポスト噴射量QPOSTがしきい値QREF以下であるときには、1番気筒#1のみでポスト噴射が実行される。一方、ポスト噴射量QPOSTがしきい値QREFよりも大きいときには、1番および2番気筒#1、#2でポスト噴射が実行され、この場合、1番気筒#1において、2番気筒#2よりもより多く燃料が噴射される。
【0054】
また、上述したポスト噴射の実行時には、過給圧を低下させるように、ターボチャージャ21が制御される。具体的には、ターボチャージャ21の可変ベーン24aの開度を、ポスト噴射の実行時以外のときよりも大きくすることによって、過給圧を低下させる。図4は、ポスト噴射の実行時における可変ベーン24aの開度VNTの制御処理を示している。
【0055】
同図に示すように、本処理ではまず、ステップ21において、前述した図3のステップ1と同様、ポスト噴射の実行条件成立フラグF_POSTOKが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、ポスト噴射が実行されないので、可変ベーン24aの開度VNTを変更することなく、本処理をそのまま終了する。一方、ステップ21の判別結果がYESのときには、図3のステップ2と同様にして、ポスト噴射量QPOSTを算出する(ステップ22)。
【0056】
次いで、ステップ23において、可変ベーン24aの基本開度VNT_BASEを算出する。このステップ23では、エンジン回転数NEおよび要求トルクに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって、基本開度VNT_BASEを算出する。次いで、要求トルク、および前記ステップ22において算出されたポスト噴射量QPOSTに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって、補正開度VNT_MAPを算出する(ステップ24)。この補正開度VNT_MAPを算出するためのマップでは、ポスト噴射量QPOSTが大きいほど、補正開度VNT_MAPの値が大きくなるように設定されている。
【0057】
そして、基本開度VNT_BASEに補正開度VNT_MAPを加算した値を、ポスト噴射実行時における可変ベーン24aの開度VNTとして設定し(ステップ25)、本処理を終了する。これにより、可変ベーン24aの開度VNTは、開方向に制御され、ポスト噴射の実行時以外のときよりも大きくなる。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、第1気筒群#1_#2から排出され、第1マニホールド8Aに流入した排ガスの一部は、未燃燃料浄化触媒10を有する接続通路9を通って、第2マニホールド8Bに流入し、さらにEGR管32に流入する。一方、3番および4番気筒#3、#4から排出され、第2マニホールド8Bに流入した排ガスの一部は、EGR管32に直接、流入する。そして、EGR管32に流入したEGRガスは、EGRクーラ33によって冷却され、吸気マニホールド6に還流し、1番〜4番気筒#1〜#4に導入される。それにより、これらの気筒#1〜#4内の燃焼温度が低下することによって、NOxの低減効果を得ることができる。
【0059】
また、ポスト噴射の制御処理により、第1気筒群#1_#2においてポスト噴射が実行される一方、3番および4番気筒#3、#4にはポスト噴射が実行されない。この場合、第1気筒群#1_#2から排出された排ガスには、ポスト噴射による未燃燃料が含まれるものの、この排ガスのうち、EGRガスとして還流する排ガスの一部は、未燃燃料浄化触媒10を通過することによって浄化されることにより、その排ガス中の未燃燃料が除去される。一方、3番および4番気筒#3、#4から排出された排ガスには、ポスト噴射による未燃燃料が含まれることがない。以上により、EGRガス中の未燃燃料を大幅に低減できるので、EGRガスが還流する際の未燃燃料のタール化を十分に抑制することができる。それにより、EGR装置31の機能低下を抑制することができる。
【0060】
また、未燃燃料浄化触媒10は、第1気筒群#1_#2から排出され、EGRガスとして還流する排ガスのみを浄化すればよいので、すべての気筒からのEGRガスを浄化する従来のEGR浄化触媒に比べて、未燃燃料浄化触媒10の容量を小さくすることができる。これにより、未燃燃料浄化触媒10のコンパクト化を図ることができ、その結果、未燃燃料浄化触媒10を備えたエンジン3のレイアウトの自由度を高めることができる。また、容量の小さい未燃燃料浄化触媒10を採用することにより、第1マニホールド8Aから第2マニホールド8Bへ流れる排ガスにおいて、過度の温度上昇を防止でき、それにより、EGRガスの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、第1気筒群#1_#2から排出され、EGRガスとして還流する排ガスは、未燃燃料浄化触媒10を通過する際に、この触媒10による反応熱によって昇温されるのに対し、3番および4番気筒#3、#4から排出され、EGRガスとして還流する排ガスは、そのままEGR管32に流入するので、昇温されることがない。したがって、すべての気筒から排出され、EGRガスとして還流するすべての排ガスが昇温される従来に比べて、EGRガスの昇温を抑制することができ、それにより、EGRガスの還流によるNOxの低減効果を十分に確保することができる。加えて、第1気筒群#1_#2から排出された排ガスは、未燃燃料浄化触媒10を通過する際の触媒10自体の抵抗により、第2マニホールド8Bへの流入が抑制される。これにより、第1気筒群#1_#2から排出された排ガスのうち、未燃燃料浄化触媒10によって昇温されかつEGR管32に流入するEGRガスは、3番および4番気筒#3、#4から排出された排ガスのうちのEGRガスに比べて少なくなる。その結果、EGRガス全体の昇温が抑制され、しかも、比較的低い温度のEGRガスでは、その密度が大きいので、より多くのEGRガスを還流させることができ、上述したNOxの低減効果を効果的に得ることができる。
【0062】
さらに、未燃燃料浄化触媒10は、EGR浄化触媒をEGR通路の途中に設けた従来に比べて、燃焼が行われる気筒#1〜#4により近い位置に設けられている。これにより、低温環境下において、エンジン3を始動させた直後であっても、第1気筒群#1_#2から排出され、未燃燃料浄化触媒10を通過する排ガスの温度を比較的高く維持することができる。その結果、その排ガス中の未燃燃料が未燃燃料浄化触媒10においてタール化するのを抑制でき、その触媒10が閉塞するのを回避することができる。
【0063】
また、1番気筒#1は、第2マニホールド8BとEGR管32との接続部32aからの距離や、未燃燃料浄化触媒10からの距離が、2番気筒#2に比べて遠いので、1番気筒#1から排出された排ガスは、2番気筒#2から排出された排ガスに比べて、EGRガスとして還流しにくい。また、第1気筒群#1_#2におけるポスト噴射では、1番気筒#1のポスト噴射量QPOSTが、2番気筒#2のそれよりも大きくなるように制御される。以上により、第1気筒群#1_#2におけるポスト噴射による未燃燃料が、EGRガスに含まれるのを大幅に低減することができる。
【0064】
また、ターボチャージャ21は、ポスト噴射の実行時には、ポスト噴射の実行時以外のときよりも、過給圧が低下するように制御される。この場合、ターボチャージャ21の可変ベーン24aの開度が、ポスト噴射の実行時以外のときよりも大きくなるように制御されるので、排気管7内のタービンブレード23の上流側の排気圧が低下し、それに伴い、第1マニホールド8A内の排気圧も低下する。これにより、1番〜4番気筒#1〜#4から排出された排ガスは、排気管7側に流れやすくなる一方、EGR管32側に流れにくくなる。以上により、ポスト噴射によって排ガスに含まれた未燃燃料を、排ガス浄化装置11に適切に供給することができ、それにより、排ガス浄化装置11の再生を効率よく行うことができる。
【0065】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、本発明の排気圧調整機構として、可変容量タイプのターボチャージャ21を採用したが、例えば、定容量タイプのターボチャージャとともにウェイストゲートバルブを採用してもよい。この場合、ポスト噴射の実行時に、ウェイストゲートバルブを開放するように制御することにより、過給圧および排気圧が低下するので、前記可変ベーン24aの開度を大きくした場合と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、本発明の排気圧調整機構として、排気管7内を流れる排ガスの流量を調整可能な可変流量サイレンサーを利用することも可能である。一般に、可変流量サイレンサーは、エンジン3の高負荷(高回転)時における高出力と、低負荷(低回転)時における排気音の低減とを両立するために、高負荷時と低負荷時において排気通路が切替え可能であり、具体的には、高負荷時用の排気通路は、排ガスの圧力損失を低減し、排ガスを流れやすくするように構成されている。したがって、ポスト噴射の実行時に、高負荷時用の排気通路に切り替えることにより、排気圧が低下し、前記可変ベーン24aの開度を大きくした場合と同様の効果を得ることができる。
【0067】
さらに、実施形態では、排ガス浄化装置11のフィルタ13およびNOx浄化触媒14を再生させるために、ポスト噴射を実行しているが、排ガス浄化用の酸化型の他の触媒が排気管7に設けられる場合に、その触媒の浄化性能をより向上させるべく、触媒温度を上昇させるためにポスト噴射を実行してもよい。
【0068】
また、実施形態では、ポスト噴射の制御処理において、3番気筒#3または4番気筒#4への燃料噴射時に、これらの気筒#3、#4に対するポスト噴射を禁止するために、ポスト噴射量QPOSTを値0に設定したが(図3のステップ4)、本発明のポスト噴射の禁止制御はこれに限定されるものではなく、例えば、ステップ4を実行せずに、ポスト噴射の制御処理をそのまま終了したり、3番気筒#3または4番気筒#4への燃料噴射時に、ポスト噴射の制御処理自体を実行しないようにしたりしてもよい。
【0069】
また、実施形態では、本発明を車両用のディーゼルエンジンに適用した例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガソリンエンジンにはもちろん、他の用途のエンジン、例えばクランク軸を鉛直方向に配置した船外機のような船舶推進機用エンジンなどにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 排ガス処理装置
2 ECU(ポスト噴射制御手段、制御手段)
3 内燃機関
4 燃料噴射弁(インジェクタ)
5 吸気管
6 吸気マニホールド(吸気系)
7 排気管(メイン排気通路)
8 排気マニホールド
8A 第1マニホールド(第1排気通路部)
8B 第2マニホールド(第2排気通路部)
9 接続通路
10 未燃燃料浄化触媒
11 排ガス浄化装置
21 ターボチャージャ(排気圧調整機構)
23 タービンブレード(タービン)
24 可変ノズル
24a 可変ベーン
31 EGR装置
32 EGR管(EGR通路)
32a 接続部
33 EGRクーラ
34 EGRバルブ
#1 1番気筒(第1気筒部)
#2 2番気筒(第1気筒部)
#3 3番気筒(第2気筒部)
#4 4番気筒(第2気筒部)
QPOST ポスト噴射量
QREF しきい値
VNT_BASE 可変ベーンの基本開度
VNT_MAP 可変ベーンの補正開度
VNT 可変ベーンの開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が単一または複数の気筒で構成された第1および第2気筒部を有する内燃機関において、当該第1および第2気筒部から排出された排ガスを処理する内燃機関の排ガス処理装置であって、
前記第1気筒部に接続され、当該第1気筒部から排出された排ガスが流入する第1排気通路部と、
前記第2気筒部に接続され、当該第2気筒部から排出された排ガスが流入するとともに、接続通路を介して前記第1排気通路部に接続された第2排気通路部と、
前記接続通路に設けられ、流入する排ガス中の未燃燃料を浄化する未燃燃料浄化触媒と、
前記第2排気通路部と前記内燃機関の吸気系に接続され、排ガスの一部をEGRガスとして前記吸気系に還流させるためのEGR通路と、
を備えていることを特徴とする内燃機関の排ガス処理装置。
【請求項2】
前記内燃機関は、前記第1および第2気筒部にそれぞれ燃料を供給するインジェクタを、さらに有しており、
前記第1および第2気筒部における膨張行程中または排気行程中に前記インジェクタから燃料を噴射するポスト噴射を制御するポスト噴射制御手段を、さらに備え、
当該ポスト噴射制御手段は、前記第2気筒部のポスト噴射量を、前記第1気筒部のポスト噴射量よりも小さくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記ポスト噴射制御手段は、前記第2気筒部に対するポスト噴射を禁止するように制御することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、前記第1および第2気筒部にそれぞれ燃料を供給するインジェクタを、さらに有しており、
前記第1および第2気筒部における膨張行程中または排気行程中に前記インジェクタから燃料を噴射するポスト噴射を制御するポスト噴射制御手段を、さらに備え、
当該ポスト噴射制御手段は、前記第2排気通路部と前記EGR通路との接続部からの距離が遠い気筒部ほど、ポスト噴射量をより大きくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記第1気筒部は、複数の気筒で構成され、
前記ポスト噴射制御手段は、前記第1気筒部の前記複数の気筒に対し、前記接続部からの距離が遠い気筒ほど、ポスト噴射量をより大きくなるように制御することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記第1排気通路部に接続され、当該第1排気通路部内の排ガスを外部に排出するためのメイン排気通路と、
このメイン排気通路に設けられ、排ガスを浄化するとともに、ポスト噴射によって供給された排ガス中の未燃燃料を用いて再生動作が実行される排ガス浄化装置と、
前記第1排気通路部内の排ガスの圧力である排気圧を調整するための排気圧調整機構と、
前記ポスト噴射の実行時には、前記ポスト噴射の実行時以外のときよりも、前記排気圧を低下させるように前記排気圧調整機構を制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の内燃機関の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記排気圧調整機構は、前記メイン排気通路に配置されたタービンを有し、過給圧を変更可能なターボチャージャで構成されており、
前記制御手段は、前記ポスト噴射の実行時には、前記ポスト噴射の実行時以外のときよりも、前記過給圧を低下させるように制御することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−99335(P2011−99335A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252788(P2009−252788)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】