説明

動力装置

【課題】小型化および製造コストの削減を実現でき、設計の自由度を高めることができる動力装置を提供する。
【解決手段】動力装置1は、エンジン3と、第1および第2回転機11,21を備え、これらの動力によって駆動輪DWを駆動する。第1回転機11は、第1ステータ13と、第1および第2ロータ14,15とを備え、ステータ13に発生する電機子磁極の数と、第1ロータ14の磁極の数と、第2ロータ15の軟磁性体コア15aの数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されている。パージ制御処理、PCV動作、触媒暖機制御処理および補機制御処理の実行条件のいずれかが成立したときに、第1回転機11および第2回転機21を制御することにより、エンジン3を始動させる(ステップ1,4,7,10〜18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力によって被駆動部を駆動する動力装置に関し、特に動力源として内燃機関および回転機を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動力装置として、特許文献1に記載されたものを本出願人は既に提案している。この動力装置は、ハイブリッド車両の駆動輪を駆動するものであり、特許文献1の図2,3に示す例では、動力源として、エンジン、第1回転機および第2回転機を備えているとともに、第1回転機および第2回転機に電気的に接続されたバッテリを備えている。
【0003】
この第1回転機は、円筒状のケースと、ケースに回転自在に支持された入力軸および出力軸と、ケースの内壁に周方向に沿って設けられたステータと、ケース内に収容された第1ロータと、第1ロータとステータの間に設けられた第2ロータなどを備えており、これらのステータ、第1ロータおよび第2ロータは、互いに同心に配置されている。この第1回転機では、その入力軸はエンジンの出力軸に機械的に連結され、出力軸は第2回転機の回転軸に直結されている。また、第1ロータは、出力軸の先端部に同心に固定されており、その外周面には、第1および第2永久磁石列が周方向に沿って互いに平行に延びている。第1および第2永久磁石列の各々は、複数の永久磁石で構成されており、これらの永久磁石は、互いに等間隔でかつ隣り合う各2つが互いに異なる極性で配置されている。
【0004】
さらに、第2ロータは、入力軸の先端部に同心に固定されており、その外周面には、第1および第2軟磁性体列が周方向に沿って互いに平行に延びている。第1および第2軟磁性体列は、周方向に沿って所定間隔で並ぶ複数の軟磁性体コアで構成されているとともに、第2軟磁性体列の軟磁性体コア(以下「第2コア」という)は、第1軟磁性体列の軟磁性体コア(以下「第1コア」という)に対して、電気角π/2ずつずれるように配置されている。また、ステータは、所定間隔で配置された複数の電機子を備えており、隣り合う各3つの電機子のコイルは、電力が供給されたときに、U相,V相,W相を示しながら回転磁界を発生する3相コイルとして構成されている。
【0005】
以上のように構成された第1回転機では、電力がステータに供給されると、ステータにおいて、第1回転磁界および第2回転磁界がステータの周方向に回転するように発生し、それに伴い、第1および第2回転磁界の磁極と、第1および第2永久磁石の磁極とによって、第1および第2コアが磁化されることで、これらの要素間に磁力線が発生する。さらに、発生した磁力線によって、第1および第2ロータが駆動され、それに起因して、動力が出力軸または入力軸から出力される。
【0006】
一方、第2回転機は、DCブラシレスモータで構成されており、その回転軸が駆動輪に機械的に連結されている。以上の動力装置では、ハイブリッド車両の運転状態に応じて、エンジン、第1回転機および第2回転機の動作状態が制御され、その結果、これらの動力源が発生する動力によって、駆動輪が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第08/018539号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の動力装置によれば、第1回転機において、2つの軟磁性体列が必要不可欠であるので、その分、第1回転機が大型化するとともに製造コストが増大し、結果的に、動力装置自体の大型化および製造コストの増大を招いてしまう。また、第1回転機の構造上の特性に起因して、第1ロータと第2ロータとの回転差が、回転磁界と第2ロータとの回転差に等しくなるような速度関係しか成立しないので、設計の自由度が低いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、小型化および製造コストの削減を実現でき、設計の自由度を高めることができる動力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、被駆動部(駆動輪DW)を駆動するための動力装置1,1A〜1Cであって、動力を出力するための出力部(クランク軸3a)と、燃料タンク91d内で発生した蒸発燃料を燃料吸着部(キャニスタ91a)に一時的に吸着し、吸気系(吸気通路3d)に送り込む蒸発燃料処理装置91とを有する内燃機関3と、不動の第1ステータ13と、第1ステータ13に対して相対的に回転自在の第1ロータ14および第2ロータ15とを有し、第1ロータ14および第2ロータ15の一方が内燃機関3の出力部に機械的に連結されるとともに、第1ロータ14および第2ロータ15の他方が被駆動部に機械的に連結された第1回転機11と、内燃機関3および第1回転機11の動作を制御するための制御装置(ECU2、第1PDU41、第2PDU42、VCU43)と、制御装置および第1回転機11に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置(メインバッテリ44)と、を備え、第1ステータ13は、円周方向に並んだ複数の第1電機子(鉄芯13a、U〜W相コイル13c〜13e)で構成され、電力の供給に伴って複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、第1ロータ14は、第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、第1磁極列は、互いに間隔を存して円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極(永久磁石14a)で構成され、第2ロータ15は、第1電機子列と第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体(コア15a)で構成され、第1電機子磁極の数と第1磁極の数と第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、制御装置は、蒸発燃料処理装置91の燃料吸着部に吸着された燃料を吸気系に送り込むパージ条件が成立したか否かを判定するパージ条件判定手段(ECU2、ステップ10,30〜35)を有し、パージ条件判定手段の判定結果に基づき、パージ条件が成立したときに、第1回転機と蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、内燃機関3を始動させる(ステップ4,7,11,18)ことを特徴とする。
【0011】
この動力装置によれば、第1回転機において、第1ロータの第1磁極列が、第1ステータの第1電機子列に対向するように配置され、第2ロータの第1軟磁性体列が、これらの第1電機子列と第1磁極列の間に配置されている。この第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体で構成されているので、第1電機子列への電力の供給に伴って回転磁界が発生した場合、複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極と、第1ロータの第1磁極とによって、各第1軟磁性体が磁化される。その際、複数の第1軟磁性体が互いに間隔を存しているので、磁力線が第1軟磁性体と第1電機子磁極と第1磁極との間に発生し、それに起因して、第1電機子への供給電力が動力に変換される。この動力は、第1ロータおよび第2ロータが不動の第1ステータに対して回転自在であることによって、第1ロータおよび/または第2ロータから出力されるとともに、第1ロータおよび第2ロータの一方が内燃機関の出力部に、他方が被駆動部にそれぞれ機械的に連結されていることによって、内燃機関および/または被駆動部が動力によって駆動される。この場合、内燃機関が停止状態にあるときには、第1回転機の動力によって内燃機関を始動することができる。
【0012】
ここで、第1電機子への電力供給によって発生した回転磁界の電気角速度および供給電力と等価なトルクを駆動用等価トルクTeとした場合、この駆動用等価トルクTeと、第1ロータに伝達されるトルクT1と、第2ロータに伝達されるトルクT2との関係、第1および第2ロータの電気角速度と回転磁界の電気角速度と関係は、以下に述べるようになる。
【0013】
まず、本発明の第1回転機を下記の条件(f1),(f2)が成立するように構成した場合、そのような第1回転機に相当する等価回路は図54に示すものとなる。なお、本明細書では、一対のN極およびS極を「極対」といい、極対の数を「極対数」という。
(f1)第1電機子がU相、V相およびW相の3相コイルを有すること。
(f2)第1電機子磁極が2個すなわち第1電機子磁極の極対数が値1であり、第1磁極が4個すなわち第1磁極の極対数が値2であるとともに、第1軟磁性体が第1〜第3コアの計3個のコアからなること。
【0014】
このような第1回転機の場合、第1コアを通過する第1磁極の磁束Ψk1は、下式(1)で表される。
【数1】

【0015】
この式(1)において、ψfは第1磁極の磁束の最大値を示しており、θ1およびθ2はそれぞれ、U相コイルに対する第1磁極の回転角度位置および第1コアの回転角度位置を示している。また、第1磁極の極対数と第1電機子磁極の極対数との比が値2である関係上、第1磁極の磁束は回転磁界に対して2倍の周期で回転(変化)するので、そのことを表すために、上式(1)では、値2が(θ2−θ1)に乗算されている。
【0016】
ここで、第1軟磁性体のうちの第1コアを介してU相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψu1は、式(1)で表される磁束Ψk1にcosθ2を乗算した値に相当するので、下式(2)が得られる。
【数2】

【0017】
上記と同様に、第1軟磁性体のうちの第2コアを通過する第1磁極の磁束Ψk2は、下式(3)で表される。
【数3】

この場合、第1電機子に対する第2コアの回転角度位置は、第1コアに対して2π/3だけ進んでいるので、上式(3)では、そのことを表すために、θ2に2π/3が加算されている。
【0018】
また、第2コアを介してU相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψu2は、式(3)で表される磁束Ψk2にcos(θ2+2π/3)を乗算した値に相当するので、下式(4)が得られる。
【数4】

【0019】
以上と同様の手法により、第1軟磁性体のうちの第3コアを介してU相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψu3の算出式として、下式(5)が得られる。
【数5】

【0020】
図54に示すような第1回転機の場合、第1軟磁性体を介してU相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψuは、以上の式(2),(4),(5)で表される磁束Ψu1〜Ψu3の和となるので、下式(6)で表される。
【数6】

【0021】
また、この式(6)を一般化すると、第1軟磁性体を介してU相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψuは、下式(7)で表される。
【数7】

この式(7)において、a、bおよびcはそれぞれ、第1磁極の極対数、第1軟磁性体の数および第1電機子磁極の極対数を示している。
【0022】
さらに、上式(7)を、三角関数の和と積の公式に基づいて変形すると、下式(8)が得られる。
【数8】

【0023】
この式(8)において、b=a+cとするとともに、cos(θ+2π)=cosθの関係を用いて整理すると、下式(9)が得られる。
【数9】

【0024】
この式(9)を三角関数の加法定理を用いて整理すると、下式(10)が得られる。
【数10】

【0025】
この式(10)において、右辺の第2項における積分項を、a−c≠0を条件として級数の総和の公式およびオイラーの公式を用いて整理すると、下式(11)が得られる。すなわち、式(10)の右辺の第2項は値0となる。
【数11】

【0026】
また、上式(10)において、右辺の第3項における積分項を、a−c≠0を条件として級数の総和の公式およびオイラーの公式を用いて整理すると、下式(12)が得られる。すなわち、式(10)の右辺の第3項も値0となる。
【数12】

【0027】
以上により、a−c≠0の場合、第1軟磁性体を介してU相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψuは、下式(13)で表される。
【数13】

【0028】
ここで、第1磁極の極対数aと第1電機子磁極の極対数cとの比を「極対数比α」とした場合、α=a/cとなるので、これを式(13)に代入すると、下式(14)が得られる。
【数14】

【0029】
さらに、この式(14)において、c・θ2=θe2とするとともに、c・θ1=θe1とすると、下式(15)が得られる。
【数15】

ここで、θe2は、U相コイルに対する第1軟磁性体の回転角度位置θ2に第1電機子磁極の極対数cを乗算した値であるので、U相コイルに対する第1軟磁性体の電気角度位置を表す。また、θe1は、U相コイルに対する第1磁極の回転角度位置θ1に第1電機子磁極の極対数cを乗算した値であるので、U相コイルに対する第1磁極の電気角度位置を表す。
【0030】
また、第1軟磁性体を介してV相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψvは、V相コイルの電気角度位置がU相コイルに対して電気角2π/3だけ遅れているので、下式(16)で表される。
【数16】

【0031】
さらに、第1軟磁性体を介してW相コイルを通過する第1磁極の磁束Ψwは、W相コイルの電気角度位置がU相コイルに対して電気角2π/3だけ進んでいるので、下式(17)で表される。
【数17】

【0032】
次いで、以上の式(15)〜(17)を時間微分すると、下式(18)〜(20)がそれぞれ得られる。
【数18】

【数19】

【数20】

ここで、ωe1は、θe1の時間微分値、すなわち第1ステータに対する第1ロータの角速度を電気角速度に換算した値(以下「第1ロータ電気角速度」という)を表しており、ωe2は、θe2の時間微分値、すなわち第1ステータに対する第2ロータの角速度を電気角速度に換算した値(以下「第2ロータ電気角速度」という)を表している。
【0033】
この場合、第1軟磁性体を介さずにU相〜W相のコイルを直接、通過する第1磁極の磁束は、極めて小さく、その影響は無視できるので、式(18)〜(20)に示される、第1軟磁性体を介してU相〜W相のコイルをそれぞれ通過する第1磁極の磁束Ψu〜Ψwの時間微分値dΨu/dt〜dΨw/dtは、第1磁極や第1軟磁性体が第1電機子列に対して回転するのに伴ってU相〜W相のコイルに発生する逆起電圧(誘導起電圧)をそれぞれ表すものになる。
【0034】
したがって、U相、V相およびW相のコイルにそれぞれ流す電流Iu,Iv,Iwは、下式(21),(22),(23)で表される。
【数21】

【数22】

【数23】

ここで、Iは、U相〜W相のコイルに流す電流の振幅(最大値)を表している。
【0035】
また、以上の式(21)〜(23)より、U相コイルに対する回転磁界のベクトルの電気角度位置θmfは、下式(24)で表されるとともに、U相コイルに対する回転磁界の電気角速度(以下「磁界電気角速度」という)ωmfは、下式(25)で表される。
【数24】

【数25】

【0036】
さらに、U相〜W相のコイルに電流Iu〜Iwがそれぞれ流れることで第1および第2ロータに出力される機械的出力(動力)Wは、リラクタンス分を除くと、下式(26)で表される。
【数26】

【0037】
この式(26)に前述した式(18)〜(23)を代入し、整理すると、下式(27)が得られる。
【数27】

【0038】
一方、機械的出力Wと、前述した第1および第2ロータ伝達トルクT1,T2と、第1および第2ロータ電気角速度ωe1,ωe2との関係は、下式(28)で表される。
【数28】

【0039】
以上の式(27),(28)を参照すると明らかなように、第1および第2ロータ伝達トルクT1,T2はそれぞれ、下式(29)および(30)で表される。
【数29】

【数30】

【0040】
また、第1電機子列に供給された電力と機械的出力Wは、損失を無視すれば互いに等しいことになるので、前述した式(25)と式(27)の関係から、前述した駆動用等価トルクTeは、下式(31)で表される。
【数31】

【0041】
さらに、以上の式(29)〜(31)より、下式(32)が得られる。
【数32】

【0042】
この式(32)で表されるトルクの関係、および式(25)で表される電気角速度の関係は、遊星歯車装置のサンギヤとリングギヤとキャリアにおけるトルクおよび回転速度の関係とまったく同じである。
【0043】
さらに、前述したように、b=a+cおよびa−c≠0を条件として、式(25)の電気角速度の関係および式(32)のトルクの関係が成立する。この条件b=a+cは、磁極の数をp、電機子磁極の数をqとすると、b=(p+q)/2、すなわち、b/q=(1+p/q)/2で表される。ここで、p/q=mとすると、b/q=(1+m)/2が得られることから明らかなように、上記のb=a+cという条件が成立していることは、電機子磁極の数と磁極の数と軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2であることを表す。また、上記のa−c≠0という条件が成立していることは、m≠1.0であることを表す。本発明の第1回転機によれば、電機子磁極の数と磁極の数と軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(m≠1.0)に設定されているので、式(25)に示す電気角速度の関係と式(32)に示すトルクの関係が成立し、第1回転機が適正に作動することが分かる。
【0044】
以上のように、第1回転機では、ステータへの電力の供給により回転磁界を発生させると、前述した磁極と軟磁性体と電機子磁極を結ぶような磁力線が発生し、この磁力線による磁力の作用によって、ステータに供給された電力は動力に変換され、その動力が、第1ロータや第2ロータから出力されるとともに、上述したような電気角速度やトルクの関係が成立する。このため、ステータに電力を供給していない状態で、第1および第2ロータの少なくとも一方に動力を入力することにより、この少なくとも一方のロータをステータに対して回転させると、ステータにおいて、発電が行われるとともに、回転磁界が発生し、この場合にも、磁極と軟磁性体と電機子磁極を結ぶような磁力線が発生するとともに、この磁力線による磁力の作用によって、上述した式(25)に示す電気角速度の関係と式(32)に示すトルクの関係が成立する。
【0045】
すなわち、発電した電力および磁界電気角速度ωmfと等価のトルクを「発電用等価トルク」とすると、この発電用等価トルクと、第1および第2ロータ伝達トルクT1,T2の間にも、式(32)に示すような関係が成立する。以上から明らかなように、本発明の第1回転機は、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた装置と同じ機能を有する。
【0046】
また、前述した従来の場合と異なり、単一の軟磁性体列だけで第1回転機を作動させることができるので、第1回転機の小型化および製造コストの削減を図ることができ、それにより、動力装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる。さらに、式(25)および(32)から明らかなように、α=a/c、すなわち、電機子磁極の極対数に対する磁極の極対数の比を設定することによって、磁界電気角速度ωmf、第1および第2ロータ電気角速度ωe1,ωe2の間の関係と、駆動用等価トルクTe(発電用等価トルク)、第1および第2ロータ伝達トルクT1,T2の間の関係を自由に設定できる。園結果、第1回転機の設計の自由度を高めることができ、動力装置の設計の自由度を高めることができる。この作用効果は、ステータのコイルの相数が前述した値3以外の場合にも同様に得られる。
【0047】
さらに、前述したように、第1回転機の動力によって内燃機関を始動させることができる。これに加えて、蒸発燃料処理装置の燃料吸着部に吸着された燃料を吸気系に送り込むパージ条件が成立したか否かを判定し、このパージ条件が成立したときに、内燃機関を始動させるので、内燃機関の始動に伴い、内燃機関の吸気系に負圧を発生させることができ、それにより、燃料吸着部に吸着された燃料を吸気系に確実に送り込むことができる。
【0048】
請求項2に係る発明は、被駆動部(駆動輪DW)を駆動するための動力装置1,1A〜1Cであって、動力を出力するための出力部(クランク軸3a)と、クランクケース内のブローバイガスを吸気系(吸気通路3d)に還流させるPCV装置92とを有する内燃機関3と、不動の第1ステータ13と、第1ステータ13に対して相対的に回転自在の第1ロータ14および第2ロータ15とを有し、第1ロータ14および第2ロータ15の一方が内燃機関3の出力部に機械的に連結されるとともに、第1ロータ14および第2ロータ15の他方が被駆動部に機械的に連結された第1回転機11と、内燃機関3および第1回転機11の動作を制御するための制御装置(ECU2、第1PDU41、第2PDU42、VCU43)と、制御装置および第1回転機11に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置(メインバッテリ44)と、を備え、第1ステータ13は、円周方向に並んだ複数の第1電機子(鉄芯13a、U〜W相コイル13c〜13e)で構成され、電力の供給に伴って複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、第1ロータ14は、第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、第1磁極列は、互いに間隔を存して円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極(永久磁石14a)で構成され、第2ロータ15は、第1電機子列と第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体(コア15a)で構成され、第1電機子磁極の数と第1磁極の数と第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、制御装置は、クランクケース内のブローバイガスを吸気系に還流させる還流条件が成立したか否かを判定する還流条件判定手段(ECU2、ステップ12,40〜45)を有し、還流条件判定手段の判定結果に基づき、還流条件が成立したときに、第1回転機11と蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、内燃機関3を始動させる(ステップ4,7,13,18)ことを特徴とする。
【0049】
この動力装置によれば、第1回転機が請求項1の第1回転機と同様に構成されているので、前述したように、単一の軟磁性体列だけで第1回転機を作動させることができる。それにより、第1回転機の小型化および製造コストの削減を図ることができ、動力装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる。また、第1回転機の動力によって内燃機関を始動することができる。これに加えて、クランクケース内のブローバイガスを吸気系に還流させる還流条件が成立したか否かを判定し、この還流条件が成立したときに、内燃機関を始動させるので、内燃機関の始動に伴い、内燃機関の吸気系に負圧を発生させることができ、それにより、ブローバイガスを吸気系に確実に送り込むことができる。
【0050】
請求項3に係る発明は、被駆動部(駆動輪DW)を駆動するための動力装置1,1A〜1Cであって、動力を出力するための出力部(クランク軸3a)と、排気通路3fを流れる排ガスを浄化する触媒装置3gとを有する内燃機関3と、不動の第1ステータ13と、第1ステータ13に対して相対的に回転自在の第1ロータ14および第2ロータ15とを有し、第1ロータ14および第2ロータ15の一方が内燃機関3の出力部に機械的に連結されるとともに、第1ロータ14および第2ロータ15の他方が被駆動部に機械的に連結された第1回転機11と、内燃機関3および第1回転機11の動作を制御するための制御装置(ECU2、第1PDU41、第2PDU42、VCU43)と、制御装置および第1回転機11に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置(メインバッテリ44)と、を備え、第1ステータ13は、円周方向に並んだ複数の第1電機子(鉄芯13a、U〜W相コイル13c〜13e)で構成され、電力の供給に伴って複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、第1ロータ14は、第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、第1磁極列は、互いに間隔を存して円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極(永久磁石14a)で構成され、第2ロータ15は、第1電機子列と第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体(コア15a)で構成され、第1電機子磁極の数と第1磁極の数と第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、制御装置は、触媒装置を活性化させる活性化条件が成立したか否かを判定する活性化条件判定手段(ECU2、ステップ14,50〜55)を有し、活性化条件判定手段の判定結果に基づき、活性化条件が成立したときに、第1回転機と蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、内燃機関3を始動させる(ステップ4,7,15,18)ことを特徴とする。
【0051】
この動力装置によれば、第1回転機が請求項1の第1回転機と同様に構成されているので、前述したように、単一の軟磁性体列だけで第1回転機を作動させることができる。それにより、第1回転機の小型化および製造コストの削減を図ることができ、動力装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる。また、第1回転機の動力によって内燃機関を始動することができる。これに加えて、触媒装置を活性化させる活性化条件が成立したか否かを判定し、この活性化条件が成立したときに、内燃機関を始動させるので、内燃機関の始動に伴い、内燃機関の排気通路に排ガスを供給することができ、それにより、触媒装置を確実に活性化することができる。
【0052】
請求項4に係る発明は、被駆動部(駆動輪DW)および補機(コンプレッサ51,冷却用ウォータポンプ93、オイルポンプ94、ヒータ用ウォータポンプ95)を駆動するための動力装置であって、動力を出力するための出力部(クランク軸3a)を有する内燃機関3と、不動の第1ステータ13と、第1ステータ13に対して相対的に回転自在の第1ロータ14および第2ロータ15とを有し、第1ロータ14および第2ロータ15の一方が内燃機関3の出力部に機械的に連結されるとともに、第1ロータ14および第2ロータ15の他方が被駆動部に機械的に連結された第1回転機11と、内燃機関3および第1回転機11の動作を制御するための制御装置(ECU2、第1PDU41、第2PDU42、VCU43)と、制御装置および第1回転機11に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置(メインバッテリ44)と、を備え、第1ステータ13は、円周方向に並んだ複数の第1電機子(鉄芯13a、U〜W相コイル13c〜13e)で構成され、電力の供給に伴って複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、第1ロータ14は、第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、第1磁極列は、互いに間隔を存して円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極(永久磁石14a)で構成され、第2ロータ15は、第1電機子列と第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体(コア15a)で構成され、第1電機子磁極の数と第1磁極の数と第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、制御装置は、内燃機関3の動力により補機を駆動する補機駆動条件が成立したか否かを判定する補機駆動条件判定手段(ECU2、ステップ16,60〜65)を有し、補機駆動条件判定手段の判定結果に基づき、補機駆動条件が成立したときに、第1回転機と蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、内燃機関3を始動させる(ステップ4,7,17,18)ことを特徴とする。
【0053】
この動力装置によれば、第1回転機が請求項1の第1回転機と同様に構成されているので、前述したように、単一の軟磁性体列だけで第1回転機を作動させることができる。それにより、第1回転機の小型化および製造コストの削減を図ることができ、動力装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる。また、第1回転機の動力によって内燃機関を始動することができる。これに加えて、内燃機関の動力により補機を駆動する補機駆動条件が成立したか否かを判定し、この補機駆動条件が成立したときに、内燃機関を始動させるので、内燃機関の始動に伴い、内燃機関の動力によって補機を確実に駆動することができる。
【0054】
請求項5に係る発明は、被駆動部(駆動輪DW)を駆動するための動力装置1,1A〜1Cであって、動力を出力するための出力部(クランク軸3a)と、吸気弁および排気弁の少なくとも一方における最大揚程およびバルブタイミングの少なくとも一方を変更することにより、気筒内への吸入空気の充填効率を変更する充填効率変更機構(リフト切換機構90)と、を有する内燃機関3と、不動の第1ステータ13と、第1ステータ13に対して相対的に回転自在の第1ロータ14および第2ロータ15とを有し、第1ロータ14および第2ロータ15の一方が内燃機関3の出力部に機械的に連結されるとともに、第1ロータ14および第2ロータ15の他方が被駆動部に機械的に連結された第1回転機11と、内燃機関3、第1回転機11および充填効率変更機構の動作を制御するための制御装置(ECU2、第1PDU41、第2PDU42、VCU43)と、制御装置および第1回転機11に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置(メインバッテリ44)と、を備え、第1ステータ13は、円周方向に並んだ複数の第1電機子(鉄芯13a、U〜W相コイル13c〜13e)で構成され、電力の供給に伴って複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、第1ロータ14は、第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、第1磁極列は、互いに間隔を存して円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極(永久磁石14a)で構成され、第2ロータ15は、第1電機子列と第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体(コア15a)で構成され、第1電機子磁極の数と第1磁極の数と第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、制御装置は、内燃機関3の始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段(ECU2、ステップ1,10〜19)と、内燃機関3の回転数を機関回転数として検出する機関回転数検出手段(ECU2、クランク角センサ61)と、を有し、始動条件判定手段の判定結果に基づき、始動条件が成立している場合において、検出された機関回転数NEが所定回転数(判定値NEref)以下のときに、所定回転数(判定値NEref)を上回っているときよりも、気筒内への吸入空気の充填効率が高くなるように、充填効率変更機構を制御する(ステップ91〜94,103〜105)とともに、始動条件が成立しているときに、第1回転機と蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、内燃機関3を始動させる(ステップ4,7)ことを特徴とする。
【0055】
この動力装置によれば、第1回転機が請求項1の第1回転機と同様に構成されているので、前述したように、単一の軟磁性体列だけで第1回転機を作動させることができる。それにより、第1回転機の小型化および製造コストの削減を図ることができ、動力装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる。また、始動条件が成立しているときに、第1回転機制御を実行することにより、内燃機関を始動させるので、第1回転機の動力によって内燃機関を始動することができる。これに加えて、始動条件が成立している場合において、検出された機関回転数が所定回転数以下のときに、所定回転数を上回っているときよりも、気筒内への吸入空気の充填効率が高くなるように、充填効率変更機構が制御されるので、内燃機関を始動する際、機関回転数が低いことで、内燃機関を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときでも、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保でき、内燃機関の始動性を向上させることができる(なお、本明細書における「内燃機関の回転数を検出」などの「検出」は、センサなどにより内燃機関の回転数を直接検出することに限らず、これを他のパラメータに基づいて算出・推定することを含む)。
【0056】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の動力装置1,1A〜1Cにおいて、制御装置は、内燃機関3の温度を表す機関温度パラメータ(エンジン水温TW)を検出する機関温度パラメータ検出手段(ECU2、水温センサ67)と、検出された機関温度パラメータが表す内燃機関3の温度が第1所定温度TW1以下であるときに、所定回転数(判定値NEref)を、第1所定温度TW1を上回っているときよりも低い値に設定する所定回転数設定手段(ECU2、ステップ100〜102)と、をさらに有することを特徴とする。
【0057】
この動力装置によれば、内燃機関の温度が第1所定温度以下のときに、所定回転数が、第1所定温度を上回っているときよりも低い値に設定されるので、内燃機関の温度が低く、その回転抵抗が大きいことで、内燃機関を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときでも、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保でき、寒冷時における内燃機関の始動性を向上させることができる。
【0058】
請求項7に係る発明は、被駆動部(駆動輪DW)を駆動するための動力装置1,1A〜1Cであって、動力を出力するための出力部(クランク軸3a)と、吸気弁および排気弁の少なくとも一方における最大揚程およびバルブタイミングの少なくとも一方を変更することにより、気筒内への吸入空気の充填効率を変更する充填効率変更機構(リフト切換機構90)と、を有する内燃機関3と、不動の第1ステータ13と、第1ステータ13に対して相対的に回転自在の第1ロータ14および第2ロータ15とを有し、第1ロータ14および第2ロータ15の一方が内燃機関3の出力部に機械的に連結されるとともに、第1ロータ14および第2ロータ15の他方が被駆動部に機械的に連結された第1回転機11と、内燃機関3、第1回転機11および充填効率変更機構の動作を制御するための制御装置(ECU2、第1PDU41、第2PDU42、VCU43)と、制御装置および第1回転機11に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置(メインバッテリ44)と、を備え、第1ステータ13は、円周方向に並んだ複数の第1電機子(鉄芯13a、U〜W相コイル13c〜13e)で構成され、電力の供給に伴って複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、第1ロータ14は、第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、第1磁極列は、互いに間隔を存して円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極(永久磁石14a)で構成され、第2ロータ15は、第1電機子列と第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体(コア15a)で構成され、第1電機子磁極の数と第1磁極の数と第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、制御装置は、内燃機関3の始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段(ECU2、ステップ1,10〜19)と、内燃機関3の温度を表す機関温度パラメータ(エンジン水温TW)を検出する機関温度パラメータ検出手段(ECU2、水温センサ67)と、を有し、始動条件判定手段の判定結果に基づき、始動条件が成立している場合において、検出された機関温度パラメータが表す内燃機関3の温度が第2所定温度TW2以下のときに、第2所定温度TW2を上回っているときよりも、気筒内への吸入空気の充填効率が高くなるように、充填効率変更機構を制御する(ステップ91〜94,110〜112)とともに、始動条件が成立しているときに、第1回転機と蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、内燃機関3を始動させる(ステップ4,7)ことを特徴とする。
【0059】
この動力装置によれば、第1回転機が請求項1の第1回転機と同様に構成されているので、前述したように、単一の軟磁性体列だけで第1回転機を作動させることができる。それにより、第1回転機の小型化および製造コストの削減を図ることができ、動力装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる。また、始動条件が成立しているときに、第1回転機制御を実行することにより、内燃機関を始動させるので、第1回転機の動力によって内燃機関を始動することができる。これに加えて、始動条件が成立している場合において、検出された機関温度パラメータが表す内燃機関の温度が第2所定温度以下のときに、第2所定温度を上回っているときよりも、気筒内への吸入空気の充填効率が高くなるように、充填効率変更機構が制御されるので、内燃機関を始動する際、内燃機関の温度が低いことで、内燃機関を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときでも、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保でき、寒冷時における内燃機関の始動性を向上させることができる(なお、本明細書における「機関温度パラメータを検出」などの「検出」は、センサなどにより機関温度パラメータを直接検出することに限らず、これを他のパラメータに基づいて算出・推定することを含む)。
【0060】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の動力装置1,1Aにおいて、制御装置および蓄電装置に電気的に接続され、蓄電装置から供給された電力を動力に変換し、被駆動部に機械的に連結されたロータ23から出力するとともに、ロータ23に入力された動力を電力に変換可能な第2回転機21をさらに備え、制御装置は、第1回転機制御の実行中、出力部への駆動力の伝達に起因する被駆動部の速度変化が発生しないように、第1回転機11および第2回転機21の動作を制御する(ステップ7,71,72,131,132)ことを特徴とする。
【0061】
この動力装置によれば、第1回転機制御の実行中、出力部への駆動力の伝達に起因する被駆動部の速度変化が発生しないように、第1回転機および第2回転機の動作が制御される。したがって、例えば、被駆動部の停止中の場合には、電力回生制御を第2回転機で実行し、かつ力行制御を第1回転機で実行することによって、被駆動部を停止したままで、駆動力を熱機関に伝達することができる。また、例えば、被駆動部の駆動中の場合には、電力回生制御を第1回転機で実行し、かつ力行制御を第2回転機で実行することによって、被駆動部の速度を保持したままで、駆動力を熱機関に伝達することができる。以上のように、被駆動部の駆動中および停止中のいずれの場合においても、熱機関を確実に始動することができるとともに、被駆動部の速度変化を抑制でき、商品性を向上させることができる。
【0062】
請求項9に係る発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の動力装置1Bにおいて、不動の第2ステータ83と、第2ステータ83に対して相対的に回転自在の第3ロータ84および第4ロータ85とを有し、第3ロータ84が熱機関の出力部に機械的に連結され、第4ロータ85が被駆動部に機械的に連結されるとともに、第2ステータ83が制御装置および蓄電装置に電気的に接続された第2回転機81をさらに備え、第2ステータ83は、円周方向に並んだ複数の第2電機子(鉄芯83a、U相〜W相コイル83b)で構成され、電力の供給に伴って複数の第2電機子に発生する第2電機子磁極により、円周方向に回転する回転磁界を発生させる第2電機子列を有し、第3ロータ84は、第2電機子列に対向するように配置された第2磁極列を有し、第2磁極列は、互いに間隔を存して円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第2磁極(永久磁石84a)で構成され、第4ロータ85は、第2電機子列と第2磁極列の間に配置された第2軟磁性体列を有し、第2軟磁性体列は、互いに間隔を存して円周方向に並んだ複数の第2軟磁性体(コア85a)で構成され、第2電機子磁極の数と第2磁極の数と第2軟磁性体の数との比が、1:n:(1+n)/2(ただしn≠1)となるように設定されており、制御装置は、熱機関の始動時、第1回転機制御を実行するときには、出力部への駆動力の伝達に起因する被駆動部の速度変化が発生しないように、第1回転機11および第2回転機81の動作を制御する(ステップ7,141,142)ことを特徴とする。
【0063】
この動力装置によれば、請求項8に係る発明と同じ作用効果を得ることができる。
【0064】
請求項10に係る発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の動力装置1Cにおいて、制御装置および蓄電装置に電気的に接続され、蓄電装置から供給された電力を動力に変換し、被駆動部に機械的に連結されたロータ23から出力するとともに、ロータ23に入力された動力を電力に変換可能な第2回転機21と、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように構成された第1要素、第2要素および第3要素を有する動力伝達機構(遊星歯車装置PG)と、をさらに備え、第1ロータ14および第2要素ならびに第2ロータ15および第1要素の一方が、熱機関の出力部に機械的に連結され、第1ロータ14および第2要素ならびに第2ロータ15および第1要素の他方が、被駆動部に機械的に連結されるとともに、第3要素がロータ23に機械的に連結されており、制御装置は、第1回転機制御の実行中、出力部への駆動力の伝達に起因する被駆動部の速度変化が発生しないように、第1回転機11および第2回転機21の動作を制御する(ステップ7,161,162)ことを特徴とする。
【0065】
この動力装置によれば、請求項8または9に係る発明と同じ作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動力装置の概略構成を示す図である。
【図2】動力装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】動力装置における各種の電器機器間の接続を示すブロック図である。
【図4】第1回転機の拡大断面図である。
【図5】第1回転機の第1ステータ、第1および第2ロータを周方向に展開し、概略的に示す図である。
【図6】第1回転機における第1磁界電気角速度、第1および第2ロータ電気角速度の間の関係の一例を示す速度共線図である。
【図7】第1回転機の第1ロータを回転不能に保持した状態で、第1ステータに電力を供給した場合における動作を説明するための図である。
【図8】図7の続きの動作を説明するための図である。
【図9】図8の続きの動作を説明するための図である。
【図10】図7に示す状態から、第1電機子磁極が電気角2πだけ回転したときにおける第1電機子磁極やコアの位置関係を説明するための図である。
【図11】第1回転機の第2ロータを回転不能に保持した状態で、第1ステータに電力を供給した場合における動作を説明するための図である。
【図12】図11の続きの動作を説明するための図である。
【図13】図12の続きの動作を説明するための図である。
【図14】第1回転機のU相〜W相逆起電圧の推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第1ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。
【図15】第1回転機の第1駆動用等価トルク、第1および第2ロータ伝達トルクの推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁石磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第1ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。
【図16】第1回転機のU相〜W相逆起電圧の推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁石磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第2ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。
【図17】第1回転機の第1駆動用等価トルク、第1および第2ロータ伝達トルクの推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁石磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第2ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。
【図18】内燃機関の概略構成を模式的に示す図である。
【図19】エンジン始動制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図20】エンジン始動判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図21】パージ判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図22】PCV判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図23】触媒暖機判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図24】補機判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図25】第1始動モード制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図26】第2始動モード制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図27】第1始動モード制御処理を実行したときの、動力装置における各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図28】第2始動モード制御処理を実行したときの、動力装置における各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図29】リフト制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図30】始動時リフト判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図31】始動時リフト判定処理の変形例を示すフローチャートである。
【図32】第2始動モード制御処理の変形例を示すフローチャートである。
【図33】第2始動モード制御処理の変形例を実行したときの、動力装置における各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図34】第2実施形態に係る動力装置の概略構成を示す図である。
【図35】第2実施形態の動力装置における第1始動モード制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図36】図35の第1始動モード制御処理を実行したときの、各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図37】第2実施形態の動力装置において、図26の第2始動モード制御処理を実行したときの、各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図38】第2実施形態の動力装置において、図32の第2始動モード制御処理を実行したときの、各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図39】第3実施形態に係る動力装置の概略構成を示す図である。
【図40】第3実施形態の動力装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図41】第3実施形態の動力装置における各種の電器機器間の接続を示すブロック図である。
【図42】第3実施形態の動力装置における第1回転機の拡大断面図である。
【図43】第3実施形態の動力装置における第2回転機の拡大断面図である。
【図44】第3実施形態の動力装置における第1始動モード制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図45】第3実施形態の動力装置における第2始動モード制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図46】図44の第1始動モード制御処理を実行したときの、各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図47】図45の第2始動モード制御処理を実行したときの、各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図48】第4実施形態に係る動力装置の概略構成を示す図である。
【図49】第4実施形態の動力装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図50】第4実施形態の動力装置における第1始動モード制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図51】第4実施形態の動力装置における第2始動モード制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図52】図50の第1始動モード制御処理を実行したときの、各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図53】図51の第2始動モード制御処理を実行したときの、各種の回転要素間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
【図54】本発明の第1回転機の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る動力装置について説明する。図1に示すように、第1実施形態の動力装置1は、図示しないハイブリッド車両(以下「車両」という)の左右の駆動輪DW,DW(被駆動部)を駆動するものであり、動力源としての内燃機関3、第1回転機11および第2回転機21と、これらを制御するためのECU2(図2参照)などを備えている。なお、図1および後述する図4,5などにおいては、理解の容易化のために断面部分のハッチングが省略されている。
【0068】
この車両では、内燃機関(以下「エンジン」という)3が第1回転機11に連結されているとともに、第1回転機11および第2回転機21が、3つのギヤG1〜G3、差動装置DGおよび左右の駆動軸6,6を介して、左右の駆動輪DW,DWに連結されている。それにより、後述するように、エンジン3の動力や、第1回転機11および第2回転機21の動力が駆動輪DW,DWに伝達される。
【0069】
エンジン3は、ガソリンを燃料とする多気筒内燃機関であり、動力を出力するためのクランク軸3a(出力部)と、気筒ごとに設けられた燃料噴射弁3bおよび点火プラグ3c(いずれも図2参照)などを有している。これらの燃料噴射弁3bおよび点火プラグ3cはいずれもECU2に電気的に接続されており、ECU2によって、燃料噴射弁3bによる燃料の噴射時期と、点火プラグ3cによる混合気の点火時期とが制御される。
【0070】
また、クランク軸3aには、エンジン3の始動用のスタータ31が、ワンウェイクラッチおよびギヤ機構(いずれも図示せず)を介して機械的に連結されている。このワンウェイクラッチによって、スタータ31の動力がクランク軸3a側に伝達される一方、クランク軸3aの動力はスタータ31側に伝達されることなく、遮断される。
【0071】
さらに、図3に示すように、スタータ31には、リレー32を介して、蓄電池である補助バッテリ33が電気的に接続されている。このリレー32は、図2に示すように、ECU2に電気的に接続されており、ECU2によって、リレー32がON/OFF制御されることにより、補助バッテリ33からスタータ31への電力の供給が制御され、その結果、スタータ31の動作が制御される。さらに、クランク軸3aには、第1回転軸4が、フライホイール(図示せず)を介して同軸状に直結されており、この第1回転軸4は、図示しない軸受によって回転自在に支持されている。
【0072】
一方、図1および図4に示すように、第1回転機11は、2ロータタイプのものであり、不動の第1ステータ13と、第1ステータ13に対向するように設けられた第1ロータ14と、両者の間に設けられた第2ロータ15とを備えている。これらの第1ロータ14、第2ロータ15およびステータ13は、第1回転軸4の径方向の内側から外側に向かって、この順に並ぶようにかつ互いに同心に配置されている。
【0073】
第1ステータ13は、第1回転磁界を発生させるものであり、図4および図5に示すように、鉄芯13aと、この鉄芯13aに設けられたU相、V相およびW相コイル13c,13d,13eを有している。なお、図4では、便宜上、U相コイル13cのみを示している。鉄芯13aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、第1回転軸4の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に延びており、移動不能のケースCAに固定されている。
【0074】
また、鉄芯13aの内周面には、12個のスロット13bが形成されており、これらのスロット13bは、軸線方向に延びるとともに、第1回転軸4の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相コイル13c〜13eは、スロット13bに分布巻き(波巻き)で巻回されている。なお、本実施形態では、鉄芯13aおよびU相〜W相コイル13c〜13eが第1電機子に相当する。
【0075】
また、図3に示すように、U相〜W相コイル13c〜13eを含む第1ステータ13は、第1パワードライブユニット(以下「第1PDU」という)41およびボルテージコントロールユニット(以下「VCU」という)43を介して、充電・放電可能な蓄電池であるメインバッテリ44に電気的に接続されている。この第1PDU41は、インバータなどの電気回路で構成されており、メインバッテリ44から供給された直流電力を3相交流電力に変換した状態で、第1ステータ13に出力する。また、上記のVCU43は、DC/DCコンバータなどの電気回路で構成されており、メインバッテリ44からの電力を昇圧した状態で、第1PDU41に出力するとともに、第1PDU41からの電力を降圧した状態で、メインバッテリ44に出力する。さらに、第1PDU41およびVCU43はそれぞれ、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。なお、本実施形態では、第1PDU41およびVCU43が制御装置に相当する。
【0076】
以上の構成の第1ステータ13では、メインバッテリ44からVCU43および第1PDU41を介して電力が供給されたときに、または、後述するように発電したときに、鉄芯13aの第1ロータ14側の端部に、4個の磁極が周方向に等間隔で発生する(図7参照)とともに、これらの磁極による第1回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯13aに発生する磁極を「第1電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの第1電機子磁極の極性は、互いに異なっている。なお、図7や後述する他の図面では、第1電機子磁極を、鉄芯13aやU相〜W相コイル13c〜13eの上に、(N)および(S)で表記している。
【0077】
図5に示すように、第1ロータ14は、8個の永久磁石14a(第1磁極)から成る第1磁極列を有している。これらの永久磁石14aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第1磁極列は、第1ステータ13の鉄芯13aに対向している。各永久磁石14aは、軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、第1ステータ13の鉄芯13aのそれと同じに設定されている。
【0078】
また、永久磁石14aは、リング状の取付部14bの外周面に取り付けられている。この取付部14bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、円板状のフランジ14cの外周面に取り付けられている。このフランジ14cは、軸受(図示せず)に回転自在に支持された第2回転軸5に一体に設けられており、それにより、永久磁石14aを含む第1ロータ14は、第2回転軸5に同軸状に直結されている。また、第2回転軸5は、クランク軸3aおよび第1回転軸4と同軸状に配置されている。さらに、上記のように軟磁性体で構成された取付部14bの外周面に永久磁石14aが取り付けられているので、各永久磁石14aには、第1ステータ13側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。なお、図5や後述する他の図面では、永久磁石14aの磁極を(N)および(S)で表記している。また、周方向に隣り合う各2つの永久磁石14aの極性は、互いに異なっている。
【0079】
第2ロータ15は、6個のコア15a(第1軟磁性体)から成る単一の軟磁性体列を有している。これらのコア15aは、周方向に等間隔で並んでおり、この軟磁性体列は、第1ステータ13の鉄芯13aと第1ロータ14の磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア15aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、軸線方向に延びている。また、コア15aの軸線方向の長さは、永久磁石14aと同様、第1ステータ13の鉄芯13aのそれと同じに設定されている。さらに、コア15aは、円板状のフランジ15bの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部15cを介して取り付けられており、このフランジ15bは、前述した第1回転軸4に一体に設けられている。以上により、コア15aを含む第2ロータ15は、第1回転軸4およびフライホイールを介して、クランク軸3aに同軸状に直結されている。また、第1回転軸4には、エンジン3と第2ロータ15の間に、第1プーリPU1が一体に設けられている。なお、図5や図7では、便宜上、連結部15cおよびフランジ15bを省略している。
【0080】
次に、以上の構成の第1回転機11の動作について説明する。前述したように、第1回転機11では、第1電機子磁極が4個、永久磁石14aの磁極(以下「第1磁石磁極」という)が8個、コア15aが6個である。すなわち、第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比は、1:2.0:(1+2.0)/2に設定されており、第1電機子磁極の極対数に対する第1磁石磁極の極対数の比(以下「第1極対数比α」という)は、値2.0に設定されている。このことと、前述した式(18)〜(20)から明らかなように、第1ステータ13に対して第1ロータ14や第2ロータ15が回転するのに伴ってU相〜W相コイル13c〜13eにそれぞれ発生する逆起電圧(以下、それぞれ「U相逆起電圧Vcu」「V相逆起電圧Vcv」「W相逆起電圧Vcw」という)は、下式(33)、(34)および(35)で表される。
【数33】

【数34】

【数35】

【0081】
ここで、ψFは、第1磁石磁極の磁束の最大値である。また、θER1は、第1ロータ電気角であり、特定のU相コイル13c(以下「基準コイル」という)に対する第1ロータ14の特定の永久磁石14aの回転角度位置を、電気角度位置に換算した値である。すなわち、第1ロータ電気角θER1は、この特定の永久磁石14aの回転角度位置に、第1電機子磁極の極対数、すなわち値2を乗算した値である。さらに、θER2は、第2ロータ電気角であり、上記の基準コイルに対する第2ロータ15の特定のコア15aの回転角度位置を、電気角度位置に換算した値である。すなわち、第2ロータ電気角θER2は、この特定のコア15aの回転角度位置に、第1電機子磁極の極対数(値2)を乗算した値である。
【0082】
また、上記の式(33)〜(35)におけるωER1は、第1ロータ電気角速度であり、第1ロータ電気角θER1の時間微分値、すなわち、第1ステータ13に対する第1ロータ14の角速度を電気角速度に換算した値である。さらに、ωER2は、第2ロータ電気角速度であり、第2ロータ電気角θER2の時間微分値、すなわち、第1ステータ13に対する第2ロータ15の角速度を電気角速度に換算した値である。
【0083】
また、前述した第1極対数比αと前述した式(21)〜(23)から明らかなように、U相、V相およびW相コイル13c,13d,13eをそれぞれ流れる電流(以下、それぞれ「U相電流Iu」「V相電流Iv」「W相電流Iw」という)は、下式(36)、(37)および(38)で表される。
【数36】

【数37】

【数38】

【0084】
ここで、Iは、U相〜W相電流Iu〜Iwの振幅(最大値)である。さらに、第1極対数比α(=2.0)と前述した式(24)および(25)から明らかなように、基準コイルに対する第1ステータ13の第1回転磁界のベクトルの電気角度位置θMFRは、下式(39)で表され、第1ステータ13に対する第1回転磁界の電気角速度(以下「第1磁界電気角速度ωMFR」という)は、下式(40)で表される。
【数39】

【数40】

【0085】
このため、第1磁界電気角速度ωMFRと第1ロータ電気角速度ωER1と第2ロータ電気角速度ωER2の関係をいわゆる速度共線図で表すと、例えば図6のように示される。図6および後述する他の速度共線図において、値0を示す横線に交わる縦線は、各回転要素の回転数を表すためのものであり、この横線から縦線上の白丸までの距離が、縦線の上下端に表記された回転要素の角速度(回転数)に相当する。
【0086】
また、第1ステータ13に供給された電力および第1磁界電気角速度ωMFRと等価のトルクを第1駆動用等価トルクTSE1とすると、この第1駆動用等価トルクTSE1と、第1ロータ14に伝達されるトルク(以下「第1ロータ伝達トルクTR1」という)と、第2ロータ15に伝達されるトルク(以下「第2ロータ伝達トルクTR2」という)との関係は、第1極対数比α(=2.0)と前述した式(32)から明らかなように、下式(41)で表される。
【数41】

【0087】
上記の式(40)および(41)でそれぞれ表される電気角速度およびトルクの関係は、サンギヤおよびリングギヤのギヤ比が1:2である遊星歯車装置のサンギヤ、リングギヤおよびキャリアにおける回転速度およびトルクの関係とまったく同じである。
【0088】
次に、第1ステータ13に供給された電力が、具体的にどのようにして動力に変換され、第1ロータ14や第2ロータ15から出力されるかについて説明する。まず、図7〜図9を参照しながら、第1ロータ14を回転不能に保持した状態で第1ステータ13に電力を供給した場合について説明する。なお、図7〜図9では、便宜上、複数の構成要素の符号を省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。また、理解の容易化のために、図7〜図9に示される同じ1つの第1電機子磁極およびコア15aに、ハッチングを付している。
【0089】
まず、図7(a)に示すように、ある1つのコア15aの中心と、ある1つの永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア15aから3つ目のコア15aの中心と、その永久磁石14aから4つ目の永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、第1回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの第1電機子磁極の位置を、中心がコア15aと一致している各永久磁石14aの中心と周方向に一致させるとともに、この第1電機子磁極の極性をこの永久磁石14aの第1磁石磁極の極性と異ならせる。
【0090】
前述したように第1ステータ13による第1回転磁界が第1ロータ14との間に発生することと、コア15aを有する第2ロータ15が第1ステータ13と第1ロータ14の間に配置されていることから、第1電機子磁極および第1磁石磁極により、各コア15aは磁化される。このことと、隣り合う各コア15aの間に間隔が空いていることから、第1電機子磁極とコア15aと第1磁石磁極を結ぶような磁力線MLが発生する。なお、図7〜図9では、便宜上、鉄芯13aや取付部14bにおける磁力線MLを省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
【0091】
図7(a)に示す状態では、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結び、かつ、これらの第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、コア15aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
【0092】
そして、第1回転磁界の回転に伴って第1電機子磁極が図7(a)に示す位置から図7(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、コア15aに磁力が作用する。この場合、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極および第1磁石磁極を結ぶ直線に対して、磁力線MLが、このコア15aにおいて第1回転磁界の回転方向(以下「磁界回転方向」という)と逆方向に凸に曲がった状態になるため、上記の磁力は、コア15aを磁界回転方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、コア15aは、磁界回転方向に駆動され、図7(c)に示す位置に回転し、コア15aが設けられた第2ロータ15も、磁界回転方向に回転する。なお、図7(b)および(c)における破線は、磁力線MLの磁束量が極めて小さく、第1電機子磁極とコア15aと第1磁石磁極の間の磁気的なつながりが弱いことを表している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
【0093】
また、第1回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLがコア15aにおいて磁界回転方向と逆方向に凸に曲がる→磁力線MLが直線状になるようにコア15aに磁力が作用する→コア15aおよび第2ロータ15が、磁界回転方向に回転する」という動作が、図8(a)〜(d)、図9(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第1ロータ14を回転不能に保持した状態で、第1ステータ13に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ13に供給された電力は動力に変換され、その動力が第2ロータ15から出力される。
【0094】
また、図10は、図7(a)の状態から第1電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図10と図7(a)の比較から明らかなように、コア15aは、第1電機子磁極に対して1/3の回転角度だけ、同方向に回転していることが分かる。この結果は、前述した式(40)において、ωER1=0とすることによって、ωER2=ωMFR/3が得られることと合致する。
【0095】
次に、図11〜図13を参照しながら、第2ロータ15を回転不能に保持した状態で、第1ステータ13に電力を供給した場合の動作について説明する。なお、図11〜図13では、図7〜図9と同様、理解の容易化のために、同じ1つの第1電機子磁極および永久磁石14aに、ハッチングを付している。まず、図11(a)に示すように、前述した図7(a)の場合と同様、ある1つのコア15aの中心と、ある1つの永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア15aから3つ目のコア15aの中心と、その永久磁石14aから4つ目の永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、第1回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの第1電機子磁極の位置を、中心がコア15aと一致している各永久磁石14aの中心と周方向に一致させるとともに、この第1電機子磁極の極性をこの永久磁石14aの第1磁石磁極の極性と異ならせる。
【0096】
図11(a)に示す状態では、図7(a)の場合と同様、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結び、かつ、これらの第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、永久磁石14aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
【0097】
そして、第1回転磁界の回転に伴って第1電機子磁極が図11(a)に示す位置から図11(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、永久磁石14aに磁力が作用する。この場合、この永久磁石14aが、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極およびコア15aの延長線上よりも磁界回転方向に進んだ位置にあるため、上記の磁力は、この延長線上に永久磁石14aを位置させるように、すなわち、永久磁石14aを磁界回転方向と逆方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、永久磁石14aは、磁界回転方向と逆方向に駆動され、図11(c)に示す位置に回転し、永久磁石14aが設けられた第1ロータ14も、磁界回転方向と逆方向に回転する。
【0098】
また、第1回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLが曲がり、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極およびコア15aの延長線上よりも、永久磁石14aが磁界回転方向に進んだ位置に位置する→磁力線MLが直線状になるように永久磁石14aに磁力が作用する→永久磁石14aおよび第1ロータ14が、磁界回転方向と逆方向に回転する」という動作が、図12(a)〜(d)、図13(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第2ロータ15を回転不能に保持した状態で、第1ステータ13に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ13に供給された電力は動力に変換され、その動力が第1ロータ14から出力される。
【0099】
また、図13(b)は、図11(a)の状態から第1電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図13(b)と図11(a)の比較から明らかなように、永久磁石14aは、第1電機子磁極に対して1/2の回転角度だけ、逆方向に回転していることが分かる。この結果は、前述した式(40)において、ωER2=0とすることによって、−ωER1=ωMFR/2が得られることと合致する。
【0100】
また、図14および図15は、第1電機子磁極、コア15aおよび永久磁石14aの数を、値16、値18および値20にそれぞれ設定し、第1ロータ14を回転不能に保持するとともに、第1ステータ13への電力の供給により第2ロータ15から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図14は、第2ロータ電気角θER2が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
【0101】
この場合、第1ロータ14が回転不能に保持されていることと、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前述した式(25)から、第1磁界電気角速度ωMFR、第1および第2ロータ電気角速度ωER1,ωER2の間の関係は、ωMFR=2.25・ωER2で表される。図14に示すように、第2ロータ電気角θER2が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ2.25周期分、発生している。また、図14は、第2ロータ15から見たU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第2ロータ電気角θER2を横軸として、W相逆起電圧Vcw、V相逆起電圧VcvおよびU相逆起電圧Vcuの順に並んでおり、このことは、第2ロータ15が磁界回転方向に回転していることを表す。以上のような図14に示すシミュレーション結果は、上述した式(25)に基づくωMFR=2.25・ωER2の関係と合致する。
【0102】
さらに、図15は、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の推移の一例を示している。この場合、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前述した式(32)から、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25で表される。図15に示すように、第1駆動用等価トルクTSE1は、ほぼ−TREFに、第1ロータ伝達トルクTR1は、ほぼ1.25・(−TREF)に、第2ロータ伝達トルクTR2は、ほぼ2.25・TREFになっている。このTREFは所定のトルク値(例えば200Nm)である。このような図15に示すシミュレーション結果は、上述した式(32)に基づくTSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25の関係と合致する。
【0103】
また、図16および図17は、第1電機子磁極、コア15aおよび永久磁石14aの数を図14および図15の場合と同様に設定し、第1ロータ14に代えて第2ロータ15を回転不能に保持するとともに、第1ステータ13への電力の供給により第1ロータ14から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図16は、第1ロータ電気角θER1が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
【0104】
この場合、第2ロータ15が回転不能に保持されていることと、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前述した式(25)から、第1磁界電気角速度ωMFR、第1および第2ロータ電気角速度ωER1,ωER2の間の関係は、ωMFR=−1.25・ωER1で表される。図16に示すように、第1ロータ電気角θER1が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ1.25周期分、発生している。また、図16は、第1ロータ14から見たU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第1ロータ電気角θER1を横軸として、U相逆起電圧Vcu、V相逆起電圧VcvおよびW相逆起電圧Vcwの順に並んでおり、このことは、第1ロータ14が磁界回転方向と逆方向に回転していることを表す。以上のような図16に示すシミュレーション結果は、上述した式(25)に基づくωMFR=−1.25・ωER1の関係と合致する。
【0105】
さらに、図17は、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の推移の一例を示している。この場合にも、図15の場合と同様、式(32)から、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25で表される。図17に示すように、第1駆動用等価トルクTSE1は、ほぼTREFに、第1ロータ伝達トルクTR1は、ほぼ1.25・TREFに、第2ロータ伝達トルクTR2は、ほぼ−2.25・TREFになっている。このような図17に示すシミュレーション結果は、上述した式(32)に基づくTSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25の関係と合致する。
【0106】
以上のように、第1回転機11では、第1ステータ13への電力供給により第1回転磁界を発生させると、前述した第1磁石磁極とコア15aと第1電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生し、この磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ13に供給された電力は動力に変換され、その動力が、第1ロータ14や第2ロータ15から出力される。この場合、第1磁界電気角速度ωMFR、第1および第2ロータ電気角速度ωER1,ωER2の間に、前述した式(40)に示す関係が成立するとともに、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間に、前述した式(41)に示す関係が成立する。
【0107】
このため、第1ステータ13に電力を供給していない状態で、第1および第2ロータ14,15の少なくとも一方に動力を入力することにより、この少なくとも一方を第1ステータ13に対して回転させると、第1ステータ13において、発電が行われるとともに、第1回転磁界が発生し、この場合にも、第1磁石磁極と軟磁性体と第1電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生するとともに、この磁力線MLによる磁力の作用によって、式(40)に示す電気角速度の関係と式(41)に示すトルクの関係が成立する。
【0108】
すなわち、発電した電力および第1磁界電気角速度ωMFRと等価のトルクを第1発電用等価トルクTGE1とすると、この第1発電用等価トルクTGE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間にも、式(41)に示す関係が成立する。以上から明らかなように、第1回転機11は、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機とを組み合わせた装置と同じ機能を有する。
【0109】
また、ECU2は、第1PDU41およびVCU43を制御することによって、第1ステータ13に供給される電流、第1ステータ13で発電される電流、および第1回転磁界の回転数(以下「第1磁界回転数」という)NMF1を制御する。
【0110】
また、図1に示すように、前述した第2回転機21は、一般的なブラシレスDCモータであり、不動のステータ22と、回転自在のロータ23を有している。ステータ22は、3相コイルなどで構成されており、ケースCAに固定されている。また、図3に示すように、ステータ22は、第2パワードライブユニット(以下「第2PDU」という)42および前述したVCU43を介して、メインバッテリ44に電気的に接続されている。さらに、ロータ23は、複数の磁石などで構成されており、ステータ22に対向するように配置されている。
【0111】
上記の第2PDU42(制御装置)は、前述した第1PDU41と同様、インバータなどの電気回路で構成されており、メインバッテリ44から供給された直流電力を3相交流電力に変換した状態で、ステータ22に出力する。また、第2PDU42は、第1PDU41に電気的に接続されており、それにより、第1回転機11の第1ステータ13および第2回転機21のステータ22は、第1および第2PDU41,42を介して、互いに電気的に接続されている。さらに、第2PDU42は、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。また、VCU43は、メインバッテリ44からの電力を昇圧した状態で、第2PDU42に出力するとともに、第2PDU42からの電力を降圧した状態で、メインバッテリ44に出力する。
【0112】
以上の構成の第2回転機21では、メインバッテリ44からVCU43および第2PDU42を介してステータ22に電力が供給されると、供給された電力は動力に変換され、ロータ23から出力される。また、ステータ22への電力の非供給時、ロータ23に動力が入力されることによりロータ23がステータ22に対して回転すると、ロータ23に入力された動力が、ステータ22において電力に変換され(発電)、ステータ22から出力される。ECU2は、第2PDU42およびVCU43を制御することによって、ステータ22に供給される電流、ステータ22で発電される電流、およびロータ23の回転数(以下「第2回転機回転数」という)NM2を制御する。
【0113】
また、ロータ23は、前述した第2回転軸5に一体に設けられており、それにより、ロータ23は、第1回転機11の第1ロータ14に同軸状に直結されている。さらに、第2回転軸5には、ギヤG1が一体に設けられている。
【0114】
また、前述した差動装置DGは、動力を左右の駆動輪DW,DWに分配するためのものであり、歯数が互いに等しい左右のサイドギヤDS,DSと、両ギヤDS,DSに噛み合う複数のピニオンギヤDPと、これらのピニオンギヤDPを回転自在に支持するデフケースDCを有している。左右のサイドギヤDS,DSはそれぞれ、左右の車軸6,6を介して、左右の駆動輪DW,DWに連結されている。
【0115】
以上の構成の差動装置DSでは、デフケースDCに伝達された動力は、ピニオンギヤDPを介して、左右のサイドギヤDS,DSに分配され、さらに、左右の車軸6,6を介して、左右の駆動輪DW,DWに分配される。また、デフケースDCには、ギヤG2が一体に設けられており、このギヤG2は、中間ギヤG3を介して、上述したギヤG1に噛み合っている。
【0116】
また、車両には、エアコンディショナの冷媒を圧縮するためのコンプレッサ51(補機)が搭載されている。このコンプレッサ51は、入力軸52を有しており、入力軸52に動力が伝達されることによって、駆動される。また、入力軸52には、クラッチCLを介して、第2プーリPU2が直結されており、この第2プーリPU2と、前述した第1回転軸4に設けられた第1プーリPU1には、ベルトBEが巻き掛けられている。このクラッチCLは、電磁クラッチであり、ECU2の制御により、締結・解放されることによって、入力軸52と第2プーリPU2の間を接続・遮断する。
【0117】
以上のように、動力装置1では、第1回転機11の第2ロータ15が、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、コンプレッサ51が、クラッチCLを介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。さらに、第1回転機11の第1ロータ14および第2回転機21のロータ23が、互いに機械的に連結されるとともに、ギヤG1、ギヤG3、差動装置DG、および車軸6,6を介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。
【0118】
また、図18に示すように、エンジン3は、リフト切換機構90、蒸発燃料処理装置91およびPCV装置92を備えている。このリフト切換機構90(充填効率変更機構)は、本出願人が特開2000−227013号公報などで既に提案したものと同様に構成されているので、その詳細な説明はここでは省略するが、図示しない吸気弁の最大揚程(以下「リフト」という)およびバルブタイミングを2段階に変更するものであり、吸気カムシャフトに一体に設けられた低速カムおよび高速カム(いずれも図示せず)と、吸気ロッカアームシャフトに回動自在に取り付けられた低速ロッカアームおよび高速ロッカアーム(いずれも図示せず)と、ECU2に接続されたリフト制御弁90a(図2参照)などを備えている。
【0119】
このリフト切換機構90では、ECU2によってリフト制御弁90aが制御されるのに伴い、リフト切換機構90の動作モードが低リフトモードまたは高リフトモードに切り換えられる。この低リフトモードでは、吸気カムシャフトの回転中、吸気弁は、低速ロッカアームのみによって開閉駆動されることにより、所定のリフトでかつ所定のバルブタイミングで開閉する。一方、高リフトモードでは、吸気カムシャフトの回転中、吸気弁は、高速カムのみによって駆動されることで、低リフトモードと比べて、より高いリフトでかつより長いバルブタイミングで開閉し、それにより、空気がより高い充填効率で気筒内に吸入される。
【0120】
また、前述した蒸発燃料処理装置91は、燃料タンク91dで発生した蒸発燃料が大気側に放出されるのを防止するためのものであり、キャニスタ91a、パージ通路91bおよびパージ制御弁91cなどを備えている。キャニスタ91a(燃料吸着部)は、蒸発燃料中の燃料成分を一時的に吸着するものであり、パージ通路91bを介して、エンジン3の吸気通路3d(吸気系)のスロットル弁3eよりも下流側の部分に接続されている。また、パージ制御弁91cは、パージ通路91bを開閉するものであり、ECU2に電気的に接続されている。
【0121】
この蒸発燃料処理装置91では、蒸発燃料中の燃料成分は、キャニスタ91aに一時的に吸着されるとともに、エンジン3の運転中、ECU2によってパージ制御弁91cが開弁状態に制御されたときに、吸気通路3d内の負圧によってキャニスタ91aから脱離し、パージ通路91bを介して吸気通路3d内に送り込まれる。なお、以下の説明では、エンジン運転中、パージ制御弁91cが開弁することによって、キャニスタ91a内の燃料成分が吸気通路3d内に送り込まれることを「パージ動作」という。また、エンジン運転中、パージ動作を行うために、パージ制御弁91cを制御することを「パージ制御」といい、その処理を「パージ制御処理」という。
【0122】
一方、前述したPCV装置92は、エンジン3の図示しないクランクケース内に溜まったブローバイガスを吸気通路3dに還流させるためのものであり、新気導入路92aおよびガス排出路92bなどを備えている。この新気導入路92aは、一端部が吸気通路3dのスロットル弁3eよりも上流側に接続され、他端部がクランクケースに連通するブリーザ通路(図示せず)に接続されている。また、ガス排出路92bは、一端部が吸気通路3dのスロットル弁3eよりも下流側に接続され、他端部がブリーザ通路に接続されている。
【0123】
以上の構成により、このPCV装置92では、エンジン3の運転中、吸気通路3d内の新気が新気導入路92aおよびブリーザ通路を介して、クランクケース内に導入されるとともに、クランクケース内のブローバイガスがブリーザ通路およびガス排出路92bを介して吸気通路3dに還流される。なお、以下の説明では、PCV装置92によって、ブローバイガスが吸気通路3dに還流されることを、「PCV動作」という。
【0124】
さらに、エンジン3は、冷却用ウォータポンプ93、オイルポンプ94およびヒータ用ウォータポンプ95を備えている。なお、本実施形態では、これらのポンプ93〜95が補機に相当する。この冷却用ウォータポンプ93は、2つの回転機11,21、2つのPDU41,42およびVCU43を冷却するためのものであり、冷却用WPクラッチ93a(図2参照)を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。
【0125】
この冷却用WPクラッチ93aは、ECU2に電気的に接続されており、ECU2によって、締結・解放されることで、冷却用ウォータポンプ93とクランク軸3aの間を接続・遮断する。後述するように、冷却用WPクラッチ93aがECU2によって締結されると、エンジン運転中、冷却用ウォータポンプ93がエンジン3の動力によって駆動されることで、図示しない冷却回路内の冷却水を循環させる。その結果、上記の機器が冷却される。
【0126】
また、オイルポンプ94は、クランク軸3aに機械的に連結されており、エンジン運転中、エンジン3の動力によって駆動されることで、図示しないオイルパン内のオイルを、潤滑油および作動油として、潤滑系および油圧駆動系にそれぞれ供給する。
【0127】
さらに、ヒータ用ウォータポンプ95は、エアコンディショナによる暖房を実行するためのものであり、ヒータ用WPクラッチ95a(図2参照)を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。このヒータ用WPクラッチ95aは、ECU2に電気的に接続されており、ECU2によって、締結・解放されることで、ヒータ用ウォータポンプ95とクランク軸3aの間を接続・遮断する。後述するように、車両内をエアコンディショナによって暖房する必要がある場合、ヒータ用WPクラッチ95aがECU2によって締結され、それにより、エンジン運転中、ヒータ用ウォータポンプ95がエンジン3の動力によって駆動されることで、図示しないヒータ回路内の熱交換水を循環させる。その結果、エアコンディショナによる暖房が実行される。
【0128】
一方、エンジン3の排気通路3fには、触媒装置3gが設けられており、この触媒装置3gによって、排気通路3f内を流れる排ガスが浄化される。
【0129】
また、図2に示すように、ECU2には、クランク角センサ61および第1回転角センサ62が接続されている。このクランク角センサ61(機関回転数検出手段)は、クランク軸3aの回転角度位置を検出するとともに、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、クランク角センサ61の検出信号に基づいて、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、前述したように第2ロータ15がクランク軸3aに直結されているので、ECU2は、クランク角センサ61の検出信号に基づいて、ステータ13に対する第2ロータ15の回転角度位置を算出するとともに、第2ロータ15の回転数(以下「第2ロータ回転数」という)NR2を算出する。
【0130】
また、上述した第1回転角センサ62は、ステータ13に対する第1ロータ14の回転角度位置を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、第1回転角センサ62の検出信号に基づいて、第1ロータ14の回転数(以下「第1ロータ回転数」という)NR1を算出する。また、前述したように第1ロータ14およびロータ23が互いに直結されているので、ECU2は、第1回転角センサ62の検出信号に基づいて、ステータ22に対するロータ23の回転角度位置を算出するとともに、第2回転機回転数NM2(ロータ23の回転数)を算出する。
【0131】
さらに、図2に示すように、ECU2には、回転数センサ63、電流電圧センサ64、アクセル開度センサ65、ブレーキ開度センサ66、水温センサ67、LAFセンサ68、LAF温センサ69、油温センサ70および触媒温センサ71が電気的に接続されている。
【0132】
回転数センサ63は、駆動輪DW,DWの回転数(以下「駆動輪回転数」という)NDWを表す検出信号をECU2に出力し、電流電圧センサ64は、メインバッテリ44に入出力される電流・電圧値を表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この電流電圧センサ64の検出信号に基づき、メインバッテリ44における電力の蓄積量すなわち充電残量SOCを算出する。
【0133】
また、アクセル開度センサ65は、車両のアクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号をECU2に出力し、ブレーキ開度センサ66は、車両のブレーキペダル(図示せず)の操作量(以下「ブレーキ開度」という)BPを表す検出信号を出力する。
【0134】
さらに、水温センサ67は、エンジン3のシリンダブロック(図示せず)内を循環する冷却水の温度であるエンジン水温TWを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。一方、LAFセンサ68は、排気通路3fの触媒装置3gよりも上流側に設けられており(図18参照)、理論空燃比よりもリッチなリッチ領域から極リーン領域までの広範囲な空燃比の領域において、排気管の排気通路内を流れる排ガス中の酸素濃度をリニアに検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。
【0135】
また、LAF温センサ69は、LAFセンサ68に内蔵されており、LAFセンサ68の温度(以下「LAF温」という)TLAFを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。さらに、油温センサ70は、エンジン3の潤滑油の温度である油温Toilを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。これに加えて、触媒温センサ71は、排気通路3fの触媒装置3gの近傍に設けられており(図18参照)、触媒装置3gの温度(以下「触媒温」という)Tcatを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
【0136】
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ61〜71の検出信号に基づいて、以下に述べるように、エンジン始動制御処理などの各種の制御処理を実行する。その結果、エンジン3、第1および第2回転機11,21が制御されることによって、車両は、EV走行モードやHV走行モードなどの走行モードで運転される。このEV走行モードは、エンジン3を停止した状態で、2つの回転機11,21を制御しながら、車両を走行させるモードであり、HV走行モードは、エンジン3を運転した状態で、第1および第2回転機11,21を制御しながら、車両を走行させるモードである。
【0137】
なお、本実施形態では、ECU2が、制御装置、パージ条件判定手段、還流条件判定手段、活性化条件判定手段、補機駆動条件判定手段、始動条件判定手段、機関回転数検出手段、機関温度パラメータ検出手段、および所定回転数設定手段に相当する。
【0138】
以下、図19を参照しながら、ECU2によって実行されるエンジン始動制御処理について説明する。この処理は、以下に述べるように、第1回転機11、第2回転機21およびスタータ31の動作を制御することによって、エンジン3を始動するものであり、所定の制御周期(例えば10msec)で実行される。
【0139】
まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、エンジン始動判定処理を実行する。この処理は、エンジン3の始動条件が成立しているか否かを判定するものであり、具体的には、図20に示すように実行される。同図に示すように、まず、ステップ10で、パージ判定処理を実行する。
【0140】
このパージ判定処理は、前述したパージ制御処理の実行条件が成立しているか否かを判定するものであり、具体的には、図21に示すように実行される。すなわち、まず、ステップ30で、破過余裕度Bcanを算出する。この破過余裕度Bcanは、キャニスタ91aにおける、蒸発燃料を吸着可能な余裕度合を表すものであり、具体的には、車両の走行停止時間およびエンジン3の温度履歴などに応じて、図示しないマップを検索することにより算出される。
【0141】
次に、ステップ31に進み、破過余裕度Bcanが所定値Bcan1以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、キャニスタ91aにおける、蒸発燃料を吸着可能な余裕度合が小さい状態にあり、パージ制御処理の実行条件が成立したと判定して、それを表すために、ステップ35に進み、パージ制御フラグF_PURGEを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0142】
一方、ステップ31の判別結果がNOのときには、ステップ32に進み、パージ深度Pdepを算出する。このパージ深度Pdepは、上記破過余裕度Bcanと同様に、キャニスタ91aにおいて、蒸発燃料を吸着可能な余裕度合を表すものであり、具体的には、車両のEV走行時間の積算値および車両走行中のエンジン運転時間の積算値などに応じて、図示しないマップを検索することにより算出される。
【0143】
次いで、ステップ33に進み、パージ深度Pdepが所定値Pdep1以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、パージ制御処理の実行条件が成立したと判定して、前述したように、ステップ35を実行した後、本処理を終了する。
【0144】
一方、ステップ33の判別結果がNOのとき、すなわち、Bcan>Bcan1,Pdep>Pdep1がいずれも成立しているときには、パージ制御処理の実行条件が成立していないと判定して、それを表すために、ステップ34に進み、パージ制御フラグF_PURGEを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0145】
図20に戻り、ステップ10で、パージ判定処理を以上のように実行した後、ステップ11に進み、パージ制御フラグF_PURGEが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、パージ制御処理の実行条件が成立しているときには、エンジン3を始動すべきであると判定して、それを表すために、ステップ18に進み、エンジン始動フラグF_ENGSTRTを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0146】
一方、ステップ11の判別結果がNOのときには、ステップ12に進み、PCV判定処理を実行する。このPCV判定処理は、前述したPCV動作の実行条件が成立しているか否かを判定するものであり、具体的には、図22に示すように実行される。
【0147】
すなわち、まず、ステップ40で、ブリージング率Rbrを算出する。このブリージング率Rbrは、エンジン3におけるPCV動作の実行割合を表すものであり、具体的には、所定期間(例えば1週間)毎の、エンジン3の運転頻度およびエンジン3の運転時間の積算値などに応じて、図示しないマップを検索することにより算出される。
【0148】
次に、ステップ41に進み、ブリージング率Rbrが所定値Rbr1以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、PCV動作の必要性が高く、PCV動作の実行条件が成立したと判定して、それを表すために、ステップ45に進み、PCV動作フラグF_PCVを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0149】
一方、ステップ41の判別結果がNOのときには、ステップ42に進み、ガスリーク量Vleを算出する。このガスリーク量Vleは、クランクケース内への燃焼ガスのリーク量を表すものであり、具体的には、エンジン運転中の負荷率、油温Toilおよびその履歴に応じて、図示しないマップを検索することにより算出される。
【0150】
次いで、ステップ43に進み、ガスリーク量Vleが所定値Vle1以上であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、PCV動作の実行条件が成立したと判定して、前述したように、ステップ45を実行した後、本処理を終了する。
【0151】
一方、ステップ43の判別結果がNOのとき、すなわち、Rbr>Rbr1,Vle<Vle1がいずれも成立しているときには、PCV動作の実行条件が成立していないと判定して、それを表すために、ステップ44に進み、PCV動作フラグF_PCVを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0152】
図20に戻り、ステップ12で、PCV判定処理を以上のように実行した後、ステップ13に進み、PCV動作フラグF_PCVが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、PCV動作の実行条件が成立しているときには、前述したように、ステップ18を実行した後、本処理を終了する。
【0153】
一方、ステップ13の判別結果がNOのときには、ステップ14に進み、触媒暖機判定処理を実行する。この触媒暖機判定処理は、図示しない触媒装置を暖機するために、排ガスを触媒装置に供給する制御処理、すなわち触媒暖機制御処理の実行条件が成立しているか否かを判定するものであり、具体的には、図23に示すように実行される。
【0154】
すなわち、まず、ステップ50で、排気積算量Vexを算出する。この排気積算量Vexは、EV走行中、停止中のエンジン3から触媒装置3g側に排出されたガスの積算量であり、具体的には、EV走行時間の積算値およびエンジン回転数NEに応じて算出される。
【0155】
次に、ステップ51に進み、排気積算量Vexが所定値Vex1以上であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、触媒装置3gの温度が活性化温度よりも低下しており、触媒暖機制御処理の実行条件が成立したと判定して、それを表すために、ステップ55に進み、触媒暖機制御フラグF_FIREを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0156】
一方、ステップ51の判別結果がNOのときには、ステップ52に進み、LAF温TLAFが所定値TLAF1以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、触媒暖機制御処理の実行条件が成立したと判定して、上述したように、ステップ55を実行した後、本処理を終了する。
【0157】
一方、ステップ52の判別結果がNOのときには、ステップ53に進み、触媒温Tcatが所定値Tcat1以下である否かを判別する。この判別結果がYESのときには、触媒暖機制御処理の実行条件が成立したと判定して、上述したように、ステップ55を実行した後、本処理を終了する。
【0158】
一方、ステップ53の判別結果がNOのとき、すなわち、Vex<Vex1,TLAF>TLAF1,Tcat>Tcat1がいずれも成立しているときには、触媒暖機制御処理の実行条件が成立していないと判定して、それを表すために、ステップ54に進み、触媒暖機制御フラグF_FIREを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0159】
図20に戻り、ステップ14で、触媒暖機判定処理を以上のように実行した後、ステップ15に進み、触媒暖機制御フラグF_FIREが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、触媒暖機制御処理の実行条件が成立しているときには、前述したように、ステップ18を実行した後、本処理を終了する。
【0160】
一方、ステップ15の判別結果がNOのときには、ステップ16に進み、補機判定処理を実行する。この補機判定処理は、コンプレッサ51や前述した3つのポンプ93〜95などの補機をエンジン3の動力によって駆動する制御処理、すなわち補機制御処理の実行条件が成立しているか否かを判定するものであり、具体的には、図24に示すように実行される。
【0161】
すなわち、まず、ステップ60で、エアコン駆動要求フラグF_ACONが「1」であるか否かを判別する。このエアコン駆動要求フラグF_ACONは、エアコンディショナの駆動が要求されているか否かを表すものであり、図示しない判定処理において、エアコンディショナの駆動が要求されていると判定されたときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0162】
ステップ60の判別結果がYESで、エアコンディショナの駆動が要求されているときには、補機制御処理の実行条件が成立したと判定して、それを表すために、ステップ65に進み、補機制御フラグF_ACCSを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0163】
一方、ステップ60の判別結果がNOのときには、ステップ61に進み、冷却用ポンプ駆動要求フラグF_CLWPONが「1」であるか否かを判別する。この冷却用ポンプ駆動要求フラグF_CLWPONは、冷却用ウォータポンプ93の駆動が要求されているか否かを表すものであり、図示しない判定処理において、冷却用ウォータポンプ93の駆動が要求されていると判定されたときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0164】
このステップ61の判別結果がYESで、冷却用ウォータポンプ93の駆動が要求されているときには、補機制御処理の実行条件が成立したと判定して、前述したように、ステップ65を実行した後、本処理を終了する。
【0165】
一方、ステップ61の判別結果がNOのときには、ステップ62に進み、オイルポンプ駆動要求フラグF_OPONが「1」であるか否かを判別する。このオイルポンプ駆動要求フラグF_OPONは、オイルポンプ94の駆動が要求されているか否かを表すものであり、図示しない判定処理において、オイルポンプ94の駆動が要求されていると判定されたときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0166】
このステップ62の判別結果がYESで、オイルポンプ94の駆動が要求されているときには、補機制御処理の実行条件が成立したと判定して、前述したように、ステップ65を実行した後、本処理を終了する。
【0167】
一方、ステップ62の判別結果がNOのときには、ステップ63に進み、ヒータ用ポンプ駆動要求フラグF_HTWPONが「1」であるか否かを判別する。このヒータ用ポンプ駆動要求フラグF_HTWPONは、ヒータ用ウォータポンプ95の駆動が要求されているか否かを表すものであり、図示しない判定処理において、ヒータ用ウォータポンプ95の駆動が要求されていると判定されたときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0168】
このステップ63の判別結果がYESで、ヒータ用ウォータポンプ95の駆動が要求されているときには、補機制御処理の実行条件が成立したと判定して、前述したように、ステップ65を実行した後、本処理を終了する。
【0169】
一方、ステップ63の判別結果がNOのとき、すなわち補機制御処理の実行条件が不成立であるときには、それを表すために、ステップ64に進み、補機制御フラグF_ACCSを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0170】
図20に戻り、ステップ16で、補機判定処理を以上のように実行した後、ステップ17に進み、補機制御フラグF_ACCSが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、補機制御処理の実行条件が成立しているときには、前述したように、ステップ18を実行した後、本処理を終了する。
【0171】
一方、ステップ17の判別結果がNOのときには、エンジン3の始動条件が不成立であると判定して、それを表すために、ステップ19に進み、エンジン始動フラグF_ENGSTRTを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。なお、このエンジン始動フラグF_ENGSTRTは、図示しない判定処理において、エンジン3のクランキングが終了し、エンジン3がアイドル運転状態になったタイミングで「0」にリセットされる。
【0172】
図19に戻り、ステップ1のエンジン始動判定処理を以上のように実行した後、ステップ2に進み、充電残量判定処理を実行する。この充電残量判定処理では、メインバッテリ44の充電残量SOCが、メインバッテリ44から2つの回転機11,21への電力供給によってエンジン3を始動可能な状態にあるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、残量条件成立フラグF_SOCOKの値が設定される。具体的には、残量条件成立フラグF_SOCOKは、充電残量SOCが2つの回転機11,21によるエンジン始動を実行可能な状態にあるときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0173】
次に、ステップ3に進み、温度判定処理を実行する。この温度判定処理では、油温Toil、2つの回転機11,21の温度およびメインバッテリ44の温度が、2つの回転機11,21によってエンジン3を始動するのに適した状態にあるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、温度条件成立フラグF_TEMPOKの値が設定される。具体的には、温度条件成立フラグF_TEMPOKは、上記各種の温度がいずれも2つの回転機11,21によってエンジン3を始動するのに適した状態にあるときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0174】
次いで、ステップ4に進み、前述したエンジン始動フラグF_ENGSTRTが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、エンジン始動条件が不成立であるときには、そのまま本処理を終了する。
【0175】
一方、このステップ4の判別結果がYESで、エンジン始動条件が成立しているときには、ステップ5に進み、前述した残量条件成立フラグF_SOCOKが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、充電残量SOCが2つの回転機11,21によるエンジン始動を実行可能な状態にあるときには、ステップ6に進み、前述した温度条件成立フラグF_TEMPOKが「1」であるか否かを判別する。
【0176】
この判別結果がYESで、前述した各種の温度がいずれも2つの回転機11,21によってエンジン3を始動するのに適した状態にあるときには、2つの回転機11,21によってエンジン3を始動すべきであると判定して、ステップ7に進み、第1始動モード制御処理を実行する。この第1始動モード制御処理は、以下に述べるように、第1回転機11および第2回転機21などを制御することによって、エンジン3を始動するものであり、具体的には、図25に示すように実行される。
【0177】
同図に示すように、まず、ステップ70で、クラッチCLを解放する。それにより、コンプレッサ51の入力軸52と第2プーリPU2の間が遮断される。
【0178】
次に、ステップ71に進み、第1回転機11の制御処理を実行する。この制御処理は、メインバッテリ44から第1ステータ13に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第1ステータ13に供給される電流を制御するものであり、具体的には、以下のように実行される。
【0179】
すなわち、まず、エンジン回転数NEが所定の始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、第2ロータ伝達トルクTR2の目標値TR2OBJを算出する。この始動時用回転数NESTは、エンジン3を始動可能な所定の回転数(例えば500〜700rpmの範囲内の値)に設定されている。
【0180】
次いで、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように、第1ステータ13に供給される電流を制御する。以上により、第1駆動用等価トルクTSE1が発生するとともに、発生した第1駆動用等価トルクTSE1は、第2ロータ15およびクランク軸3aを正転させるように作用し、第2ロータ伝達トルクTR2が目標値TR2OBJになるように制御される。
【0181】
ステップ71に続くステップ72で、第2回転機21の制御処理を実行する。具体的には、まず、第2回転機21の出力トルクの目標値TM2OBJを、下式(42)によって算出する。次いで、メインバッテリ44からステータ22に電力を供給するとともに、目標値TM2OBJに相当するトルクがロータ23に対して正転方向に作用するように、ステータ22への供給電流を制御する。
TM2OBJ=α・TR2OBJ/(1+α) ……(42)
【0182】
次に、ステップ73に進み、エンジン3の始動処理を実行する。具体的には、エンジン3の燃料噴射弁3bおよび点火プラグ3cの動作を制御することによって、停止状態のエンジン3を始動する。その後、本処理を終了する。
【0183】
図19に戻り、ステップ7で、第1始動モード制御処理を以上のように実行した後、本処理を終了する。
【0184】
一方、前述したステップ5,6のいずれかの判別結果がNOのとき、すなわち充電残量SOCが2つの回転機11,21によるエンジン始動を実行可能な状態にないか、または前述した各種の温度のいずれかがエンジン始動に適した状態にないときには、ステップ8に進み、第2始動モード制御処理を実行する。この第2始動モード制御処理は、第1回転機11を制御することなく、スタータ31および第2回転機21を制御することによって、エンジン3を始動するものであり、具体的には、図26に示すように実行される。
【0185】
同図に示すように、まず、ステップ80で、前述したステップ70と同様に、クラッチCLを解放する。それにより、コンプレッサ51の入力軸52と第2プーリPU2の間が遮断される。
【0186】
次に、ステップ81に進み、補助バッテリ33からスタータ31に電力を供給することによって、スタータ31を作動させる。それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。
【0187】
次いで、ステップ82に進み、第2回転機の制御処理を実行する。この制御処理では、まず、算出された駆動輪回転数NDWが値0になるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、第2力行トルクTM2の目標値TM2OBJを算出する。次いで、目標値TM2OBJに相当するトルクがロータ23に作用するように、ステータ22に供給される電流を制御する。
【0188】
ステップ82に続くステップ83で、前述したステップ73と同様に、エンジン3の始動処理を実行する。すなわち、エンジン3の燃料噴射弁3bおよび点火プラグ3cの動作を制御することによって、停止状態のエンジン3を始動する。その後、本処理を終了する。
【0189】
図19に戻り、ステップ8で、第2始動モード制御処理を以上のように実行した後、本処理を終了する。
【0190】
次に、図27を参照しながら、前述した第1始動モード制御処理の動作例について説明する。同図は、車両が停車中の場合の動作例を示している。この動力装置1の場合、前述した各種の回転要素間の連結関係から明らかなように、エンジン回転数NEおよび第2ロータ回転数NR2は、互いに等しく、第1ロータ回転数NR1および第2回転機回転数NM2は、互いに等しい。また、ギヤG1や差動装置DGによる変速を無視すれば、第1ロータ回転数NR1および第2回転機回転数NM2は、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2は、前述した式(40)で表されるような所定の共線関係にある。
【0191】
以上により、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図27に示すような速度共線図で表される。なお、図27および後述する他の速度共線図では、前述した図6の速度共線図と同様、値0を示す横線から縦線上の白丸までの距離が、縦線の上下端に表記された回転要素の回転数に相当し、便宜上、この白丸の付近に、各回転要素の回転数を表す符号を表記している。また、図27において、TEFは、エンジン3の回転抵抗に起因してクランク軸3aに作用するトルク(以下「フリクショントルク」という)であり、TM2は、ステータ22への電力の供給に伴ってロータ23に作用する第2回転機21の出力トルク(以下「第2力行トルク」という)である。
【0192】
図27から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2力行トルクTM2を反力として、第2ロータ15およびクランク軸3aに伝達され、それにより、両者15,3aが駆動され、正転する。この場合、第2ロータ伝達トルクTR2が目標値TR2OBJになるように、第1ステータ13への供給電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
【0193】
また、図27から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、フリクショントルクTEFを反力として、第1ロータ14、ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ14などを逆転させるように作用するトルク(以下「第1ロータ逆転トルク」という)は、前述した式(41)から明らかなように、第2ロータ伝達トルクTR2および第1極対数比αを用いて、−α・TR2/(1+α)で表される。
【0194】
これに対して、前述した第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクがロータ23に対して正転方向に作用するように、ステータ22に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TM2OBJが、前述した式(42)、すなわち、TM2OBJ=α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、第1ロータ逆転トルクが第2力行トルクTM2により相殺され、結果的に、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0195】
なお、前述した第1始動モード制御処理は、2つの回転機11,21を制御することによって、エンジン3を始動した例であるが、図27の共線関係を参照すると明らかなように、停車中の駆動輪DW側の回転抵抗が大きい場合には、第2回転機21を制御することなく、第1回転機11のみを制御することによって、エンジン3を始動することができる。
【0196】
次に、図28を参照しながら、前述した第2始動モード制御処理の動作例について説明する。同図も、車両が停車中の場合の動作例を示しており、同図において、TSTは、スタータ31の出力トルクである。図28に示すように、クランク軸3aが、スタータ31で駆動されることによって正転し、エンジン回転数NEが前述した始動用回転数NESTを上回る。その状態で、前述したステップ83が実行されることによって、エンジン3が始動される。
【0197】
この場合、上記のようにクランク軸3aが回転し、それにより第2ロータ15が回転するのに伴い、第1ステータ13において、電力供給および発電が行われていなくても、第1回転磁界が発生する。その結果、この第1回転磁界による回転抵抗を反力として、スタータ31のトルクTSTの一部が、第2および第1ロータ15,14を介して、駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。図28において、DMF1は、上記の第1回転磁界による回転抵抗(以下「第1磁界回転抵抗」という)である。
【0198】
これに対して、第2力行トルクTM2は、前述した第2回転機21の動作の制御によって、駆動輪回転数NDWが値0になるように、制御される。これにより、第2力行トルクTM2は、上述した第1磁界回転抵抗DMF1に起因して駆動輪DW,DWに作用するトルクを相殺するように作用し、その結果、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0199】
次に、図29を参照しながら、ECU2によって実行されるリフト制御処理について説明する。このリフト制御処理は、リフト制御弁90aを駆動することによって、リフト切換機構90の動作モードを制御するものであり、所定の制御周期(例えば10msec)で実行される。
【0200】
同図に示すように、まず、ステップ90で、前述したエンジン始動フラグF_ENGSTRTが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、エンジン3の始動条件が成立しているときには、ステップ91に進み、始動時リフト判定処理を実行する。この始動時リフト判定処理は、具体的には、図30に示すように実行される。
【0201】
まず、ステップ100で、エンジン水温TWが第1所定温度TW1(例えば−25℃)以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、エンジン水温TWが極低温域にあると判定して、ステップ101に進み、判定値NEref(所定回転数)を所定の極低温用値NE1(例えば100rpm)に設定する。
【0202】
一方、ステップ100の判別結果がNOのときには、エンジン水温TWが極低温域にないと判定して、ステップ102に進み、判定値NErefを所定の通常用値NE2(例えば200rpm)に設定する。
【0203】
ステップ101または102に続くステップ103で、エンジン回転数NEが判定値NEref以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きい状態にあり、気筒内への吸入空気の充填効率を高めるために、高リフトモード制御処理を実行する必要があると判定して、それを表すために、ステップ104に進み、高リフトモードフラグF_HiLIFTを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0204】
一方、ステップ103の判別結果がNOのときには、高リフトモード制御処理を実行する必要がないと判定して、それを表すために、ステップ105に進み、高リフトモードフラグF_HiLIFTを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0205】
図29に戻り、ステップ91の始動時リフト判定処理を以上のように実行した後、ステップ92に進み、高リフトモードフラグF_HiLIFTが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、ステップ93に進み、高リフトモード制御処理を実行する。この高リフトモード制御処理では、ECU2からの制御入力信号がリフト制御弁90aに供給されることにより、リフト切換機構90が、その動作モードが高リフトモードになるように制御される。以上のように、ステップ93を実行した後、本処理を終了する。
【0206】
一方、ステップ92の判別結果がNOのときには、ステップ94に進み、低リフトモード制御処理を実行する。この低リフトモード制御処理では、ECU2からの制御入力信号がリフト制御弁90aに供給されることにより、リフト切換機構90が、その動作モードが低リフトモードになるように制御される。以上のように、ステップ94を実行した後、本処理を終了する。
【0207】
一方、ステップ90の判別結果がNOで、エンジン3の始動条件が不成立であるときには、ステップ95に進み、エンジン運転中フラグF_ENGONが「1」であるか否かを判別する。このエンジン運転中フラグF_ENGONは、図示しない判定処理において、エンジン3が運転中であると判定されたときに「1」に、停止中であると判定されたときに「0」にそれぞれ設定される。
【0208】
ステップ95の判別結果がNOで、エンジン停止中のときには、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ95の判別結果がYESで、エンジン運転中のときには、ステップ96に進み、通常制御処理を実行する。この通常制御処理では、エンジン3の運転状態に応じて、高リフトモードフラグF_HiLIFTの値が設定され、それにより、リフト切換機構90は、その動作モードが低リフトモードまたは高リフトモードになるように制御される。以上のようにステップ96を実行した後、本処理を終了する。
【0209】
以上のように、第1実施形態の動力装置1によれば、単一の軟磁性体列だけで第1回転機11を作動させることができるので、第1回転機11の小型化および製造コストの削減を図ることができ、動力装置1の小型化および製造コストの削減を図ることができる。また、第1極対数比αを設定することによって、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2の間の関係と、第1駆動用等価トルクTSE1(第1発電用等価トルクTGE1)、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係を自由に設定でき、したがって、第1回転機11の設計の自由度を高めることができ、動力装置1の設計の自由度を高めることができる。
【0210】
また、図20のエンジン始動判定処理では、4つのフラグF_PURGE,F_PCV,F_FIRE,F_ACCSのいずれかが「1」であるとき、すなわち、パージ制御処理の実行条件、PCV動作の実行条件、触媒暖機制御処理の実行条件および補機制御処理の実行条件のいずれかが成立したときに、エンジン始動フラグF_ENGSTRTが「1」に設定されるとともに、図19のエンジン始動制御処理では、F_ENGSTRT=1のときに、エンジン3が始動される。それにより、パージ制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、蒸発燃料処理装置91のキャニスタ91a内に吸着された燃料を吸気通路3dに確実に送り込むことができる。
【0211】
また、PCV動作の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、クランクケース内のブローバイガスを吸気通路3dに確実に還流させることができる。さらに、触媒暖機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、高温の排ガスを排気通路3fに供給することができ、それにより、触媒装置3gを確実に活性化することができる。これに加えて、補機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、その動力によって、コンプレッサ51および3つのポンプ93〜95を確実に駆動することができる。
【0212】
さらに、図29のリフト制御処理では、エンジン始動フラグF_ENGSTRT=1のときに、ステップ91の始動時リフト判定処理が実行され、この始動時リフト判定処理では、NE≦NErefのときに、高リフトモードフラグF_HiLIFTが「1」に設定される。すなわち、エンジン回転数NEが低いことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。
【0213】
これに加えて、判定値NErefは、TW≦TW1のときに所定の極低温用値NE1に、TW>TW1のときに、所定の極低温用値NE1よりも高い通常用値NE2に設定されるので、エンジン水温TWが極低温域にあり、エンジン3の回転抵抗が大きいことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。以上により、寒冷時における内燃機関の始動性を向上させることができる。
【0214】
さらに、第1始動モード制御処理中、第2回転機21の動作を制御することにより駆動輪DW,DWが静止状態に保持されるので、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪DW,DWの速度変動を防止でき、商品性を向上させることができる。
【0215】
なお、第1実施形態は、充填効率変更機構として、リフト切換機構90を用いた例であるが、本発明の充填効率変更機構はこれに限らず、吸気弁および排気弁の少なくとも一方における最大揚程およびバルブタイミングの少なくとも一方を変更することにより、気筒内への吸入空気の充填効率を変更するものであればよい。
【0216】
例えば、充填効率変更機構として、吸気弁の最大揚程を所定範囲内で無段階に変更する可変リフト機構や、吸気弁を開閉駆動するカムシャフトの、クランク軸に対する位相を所定範囲内で無段階に変更することにより、バルブタイミングを所定範囲内で無段階に変更する可変バルブタイミング機構を用いてもよく、これらの可変リフト機構および可変バルブタイミング機構を併用したり、吸気弁の最大揚程およびバルブタイミングの双方を変更可能な充填効率変更機構を用いたりしてもよい。これに加えて、充填効率変更機構として、可変リフト機構および可変バルブタイミング機構の少なくとも一方を排気弁に適用してもよく、排気弁の最大揚程およびバルブタイミングの双方を変更可能なものを用いてもよい。
【0217】
また、第1実施形態は、機関温度パラメータとして、エンジン水温TWを用いた例であるが、本発明の機関温度パラメータはこれに限らず、内燃機関の温度を表すものであればよい。例えば、機関温度パラメータとして、オイルパン内の潤滑油の温度を用いてもよい。
【0218】
さらに、前述した図29のステップ91の始動時リフト判定処理を、前述した図30の処理に代えて、図31に示す処理のように実行してもよい。同図に示すように、この始動時リフト判定処理では、まず、ステップ110で、エンジン水温TWが第2所定温度TW2(例えば−10℃)以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、エンジン水温TWが極低温域にあり、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きい状態にあることで、気筒内への吸入空気の充填効率を高めるために、高リフトモード制御処理を実行する必要があると判定して、それを表すために、ステップ111に進み、高リフトモードフラグF_HiLIFTを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0219】
一方、ステップ110の判別結果がNOのときには、高リフトモード制御処理を実行する必要がないと判定して、それを表すために、ステップ112に進み、高リフトモードフラグF_HiLIFTを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0220】
以上のように、図31に示す始動時リフト判定処理を実行した場合でも、前述した図30の始動時リフト判定処理を実行した場合と同様に、エンジン水温TWが極低温域にあることで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きい状態にあるときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることができ、それにより、寒冷時におけるエンジン始動性を向上させることができる。
【0221】
なお、上記図31の処理では、第2所定温度TW2を、第1所定温度TW1に対してTW1<TW2が成立するように設定したが、これらの温度をTW1>TW2またはTW1=TW2が成立するように設定してもよい。
【0222】
また、前述した図19のステップ8の第2始動モード制御処理を、前述した図26の制御処理に代えて、図32に示す制御処理のように実行してもよい。両図を参照すると明らかなように、図32の制御処理は、図26の制御処理と比較して、ステップ122の内容のみが異なっているので、以下、このステップ122を中心として説明する。
【0223】
この処理では、まず、ステップ120,121を前述したステップ80,81と同様に実行した後、ステップ122で、第1回転機11の制御処理を実行する。具体的には、メインバッテリ44から第1ステータ13に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第1ステータ13に供給される電流を、第1駆動用等価トルクTSE1が前述した第1磁界回転抵抗DMF1と等しくなるように制御する。次いで、ステップ123を前述したステップ83と同様に実行した後、本処理を終了する。
【0224】
なお、この場合、メインバッテリ44から第1ステータ13に供給される電力は、クランク軸3aを駆動するのに必要な電力よりも小さいため、メインバッテリ44の充電残量SOCが少なく、F_SOCOK=0のときでも、上述したステータ15による第1回転機11の動作の制御を支障なく行うことができる。
【0225】
次に、図33を参照しながら、図32の第2始動モード制御処理を実行した場合の動作例について説明する。同図に示すように、前述した図28の場合と同様、クランク軸3aは、スタータ31で駆動されることによって正転し、エンジン回転数NEが始動用回転数NESTを上回る。また、その状態で、エンジン3が始動される。
【0226】
この場合、上述した第1回転機11の動作の制御により、第1駆動用等価トルクTSE1が、前述した第1磁界回転抵抗DMF1と等しくなるように制御され、それにより、第1磁界回転抵抗DMF1が相殺される。これにより、スタータ31のトルクTSTの一部が第1磁界回転抵抗DMF1を反力として駆動輪DW,DWに伝達されることはなく、その結果、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0227】
なお、補助バッテリ33の充電状態は、エンジン3の動力などを用いた発電機(図示せず)による充電によって、比較的大きな値に常に保持されており、それにより、第2始動モード制御処理によるスタータ31を用いたエンジン3の始動を確実に行うことができる。以上のように、図32に示す第2始動モード制御処理を実行した場合でも、図26の第2始動モード制御処理を実行した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0228】
さらに、図26の第2始動モード制御処理を実行した場合、前述した図28に示すトルクの関係から明らかなように、スタータ31に対して、フリクショントルクTEFに加え、第1磁界回転抵抗DMF1に基づく反力が作用する。このため、その分、エンジン3の始動に必要なスタータ31のトルクTSTが大きくなり、結果的に、スタータ31の大型化を招くおそれがある。これに対して、図32に示す第2始動モード制御処理を実行した場合、第1回転機11の動作を制御することにより第1磁界回転抵抗DMF1が相殺されるので、スタータ31には、フリクショントルクTEFのみが作用する。したがって、上述したスタータ31の大型化を回避することができる。
【0229】
なお、第1実施形態では、第2ロータ15をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。また、第1実施形態では、第1ロータ14およびロータ23は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。さらに、第1実施形態では、第1ロータ14およびロータ23を駆動輪DW,DWに、差動装置DGなどを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。
【0230】
また、第1実施形態の動力装置1では、前述した連結関係から明らかなように、エンジン3を停止した状態で、第2回転機21のみを動力源として、駆動輪DW,DWを駆動し、車両を走行させることができる。すなわち、EV走行モードが実行される。さらに、このEV走行モード中においても、スタータ31や、第1回転機11、第2回転機21の動作を制御することによって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、クランク軸3aを駆動でき、エンジン3を始動することができる。以下、この場合において、第1回転機11を用いてクランク軸3aを駆動する際の第1および第2回転機11,21の動作の制御について、簡単に説明する。
【0231】
すなわち、メインバッテリ44の電力をステータ22に供給し、ロータ23を正転させることによって、第2力行トルクTM2が駆動輪DW,DWに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWが正転し、上記のEV走行モードが実行される。また、EV走行モード中、第1回転機11の動作を制御することによりクランク軸3aを駆動するには、ロータ23から第1ロータ14に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ13で発電を行うとともに、発電した電力をステータ22に供給する。これにより、第1ロータ14に伝達された動力の一部が、第2ロータ15を介してクランク軸3aに伝達され、クランク軸3aが正転する。
【0232】
この場合、第2ロータ伝達トルクTR2が前述した目標値TR2OBJになるように、第1ステータ13で発電される電流を制御する。また、第2力行トルクTM2が前述した目標値TM2OBJに要求トルクを加算した値になるように、ステータ22に供給される電流を制御する。この要求トルクは、運転者から駆動輪DW,DWに要求されるトルクである。以上により、要求トルク分のトルクを駆動輪DW,DWに適切に伝達しながら、クランク軸3aを適切に駆動することができ、したがって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、エンジン3を始動することができる。
【0233】
また、EV走行モード中におけるエンジン3の始動時において、スタータ31を用いてクランク軸3aを駆動する際、駆動輪回転数NDWの変動を抑制するために、第2回転機21が以下のように制御される。すなわち、駆動輪回転数NDWが変化しないように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TM2OBJを算出するとともに、第2力行トルクTM2が目標値TM2OBJになるように、ステータ22に供給される電流を制御する。以上により、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、スタータ31によりクランク軸3aを適切に駆動でき、エンジン3を始動することができる。
【0234】
さらに、スタータ31を用いてクランク軸3aを駆動する際、駆動輪回転数NDWの変動を抑制するために、第1回転機11が前述したステップ122で説明した手法によって制御される。それにより、この場合にも、上記の作用効果を同様に得ることができる。
【0235】
次に、図34〜図38を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る動力装置1Aについて説明する。図34に示すように、この動力装置1Aは、第1実施形態の動力装置1と比較して、エンジン3および駆動輪DW,DWに対する第1および第2ロータ14,15の連結関係が逆になっている点が主に異なっているので、以下、第1実施形態の動力装置1と異なる点を中心に説明する。なお、図34において、第1実施形態の動力装置1と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、その説明は適宜、省略する。
【0236】
図34に示すように、この動力装置1Aでは、動力装置1と異なり、第1ロータ14は、前述した第2回転軸5ではなく、第1回転軸4に一体に設けられている。これにより、第1ロータ14は、クランク軸3aに機械的に直結されている。また、第2ロータ15は、動力装置1と異なり、第1回転軸4ではなく、第2回転軸5に一体に設けられている。これにより、第2ロータ15は、ロータ23に機械的に直結されているとともに、差動装置DGなどを介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。
【0237】
また、前述した第1回転角センサ62は、前述した動力装置1の場合と異なり、第1ロータ14の回転角度位置ではなく、第2ロータ15の回転角度位置を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、第1回転角センサ62の検出信号に基づいて、第2ロータ回転数NR2を算出する。また、上述したように第2ロータ15およびロータ23が互いに直結されているので、ECU2は、第1回転角センサ62の検出信号に基づいて、ロータ23の回転角度位置を算出するとともに、第2回転機回転数NM2を算出する。さらに、上述したように第1ロータ14がクランク軸3aに直結されているので、ECU2は、前述したクランク角センサ61の検出信号に基づいて、第1ロータ14の回転角度位置を算出するとともに、第1ロータ回転数NR1を算出する。
【0238】
また、ECU2は、前述した各種のセンサ61〜71の検出信号に基づいて、以下に述べるように、各種の制御処理を実行する。それにより、クラッチCL、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機11,21の動作が制御されることで、車両が各種の走行モードで運転される。
【0239】
この動力装置1Aの場合、エンジン始動制御処理は、第1実施形態の前述した図19の制御処理とほぼ同じ制御手法で実行されるものの、第1実施形態の動力装置1に対して前述した構成上の差異を有している関係上、その一部が前述した図19の制御処理と異なる制御手法で実行される。具体的には、前述したステップ7の第1始動モード制御処理のみが異なる制御手法で実行されるので、以下、図35を参照しながら、本実施形態の第1始動モード制御処理について説明する。
【0240】
この第1始動モード制御処理の場合、前述した図25の第1始動モード制御処理と比べると、ステップ131,132における第1および第2回転機制御処理の内容のみが異なっているので、以下、この点を中心として説明する。まず、ステップ130を前述したステップ70と同様に実行した後、ステップ131で、第1回転機11の制御処理を実行する。すなわち、メインバッテリ44から第1ステータ13に電力を供給し、第1回転磁界を逆転させるとともに、第1ステータ13に供給される電流を制御する。
【0241】
より具体的には、まず、エンジン回転数NEが前述した始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、第1ロータ伝達トルクTR1の目標値TR1OBJを算出する。次いで、第1ロータ伝達トルクTR1が算出された目標値TR1OBJになるように、第1ステータ13に供給される電流を制御する。以上により、第1駆動用等価トルクTSE1が発生するとともに、発生した第1駆動用等価トルクTSE1は、第1ロータ14およびクランク軸3aを正転させるように作用し、第1ロータ伝達トルクTR1が目標値TR1OBJになるように制御される。
【0242】
また、上記ステップ131に続くステップ132で、第2回転機21の制御処理を実行する。具体的には、まず、第2回転機21の出力トルクの目標値TM2OBJを、下式(43)によって算出する。次いで、メインバッテリ44からステータ22に電力を供給するとともに、目標値TM2OBJに相当するトルクがロータ23に対して正転方向に作用するように、ステータ22に供給される電流を制御する。
TM2OBJ=(α+1)TR1OBJ/α ……(43)
【0243】
以上のようにステップ132を実行した後、ステップ133を前述したステップ73と同様に実行する。その後、本処理を終了する。
【0244】
次に、図36を参照しながら、上述した図35の第1始動モード制御処理を実行した場合の動作例について説明する。この動力装置1Aの場合、前述した各種の回転要素間の連結関係から明らかなように、エンジン回転数NEおよび第1ロータ回転数NR1は、互いに等しく、第2ロータ回転数NR2および第2回転機回転数NM2は、互いに等しい。また、ギヤG1や差動装置DGによる変速を無視すれば、第2ロータ回転数NR2および第2回転機回転数NM2は、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2は、前述した式(40)で表されるような所定の共線関係にある。以上により、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図36に示すような速度共線図で表される。
【0245】
図36から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2力行トルクTM2を反力として、第1ロータ14およびクランク軸3aに伝達され、それにより、両者14,3aが駆動され、正転する。この場合、第1ロータ伝達トルクTR1が目標値TR1OBJになるように、第1ステータ13に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態でエンジン3が始動される。
【0246】
また、図36から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、フリクショントルクTEFを反力として、第2ロータ15、ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第2ロータ15などを逆転させるように作用するトルク(以下「第2ロータ逆転トルク」という)は、前述した式(41)から明らかなように、第1ロータ伝達トルクTR1および第1極対数比αを用いて、−(α+1)TR1/αで表される。
【0247】
これに対して、前述した第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクがロータ23に対して正転方向に作用するように、ステータ22に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TM2OBJが、前述した式(43)、すなわち、TM2OBJ=(α+1)TR1OBJ/αにより算出される。このことと、上記のように第2ロータ逆転トルクが−(α+1)TR1/αで表されることから明らかなように、第2ロータ逆転トルクが第2力行トルクTM2によって相殺され、結果的に、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0248】
また、本実施形態の動力装置1Aでは、第2始動モード制御処理は、第1実施形態の動力装置1と同様に、前述した図26の制御手法で実行される。この場合、前述した動力装置1との構成の差異に起因して、第2始動モード制御処理を実行したときの各機器の動作が、動力装置1と異なっているので、以下、この点について、図37を参照しながら説明する。
【0249】
図37に示すように、動力装置1と同様、クランク軸3aが、スタータ31で駆動されることによって正転し、エンジン回転数NEが始動用回転数NESTを上回る。その状態で、エンジン3が始動される。この場合、図37から明らかなように、前述した第1磁界回転抵抗DMF1を反力として、スタータ31のトルクTSTの一部が、第1および第2ロータ14,15を介して、駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。
【0250】
これに対して、動力装置1と同様、第2力行トルクTM2が、駆動輪回転数NDWが値0になるように、制御される。これにより、上述した第1磁界回転抵抗DMF1に起因して駆動輪DW,DWに作用するトルクは、第2力行トルクTM2により相殺され、その結果、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0251】
以上のように構成された第2実施形態の動力装置1Aによれば、第1実施形態の動力装置1と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、動力装置1Aの小型化および製造コストの削減を図ることができるとともに、動力装置1Aの設計の自由度を高めることができる。また、パージ制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、蒸発燃料処理装置91のキャニスタ91a内に吸着された燃料を吸気通路3dに確実に送り込むことができる。さらに、PCV動作の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、クランクケース内のブローバイガスを吸気通路3dに確実に還流させることができる。さらに、触媒暖機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、高温の排ガスを排気通路3fに供給することができ、それにより、触媒装置3gを確実に活性化することができる。これに加えて、補機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、その動力によって、コンプレッサ51および3つのポンプ93〜95を確実に駆動することができる。
【0252】
さらに、エンジン回転数NEが低いことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。これに加えて、エンジン水温TWが極低温域にあり、エンジン3の回転抵抗が大きいことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。以上により、寒冷時における内燃機関の始動性を向上させることができる。また、第1始動モード制御処理中、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪DW,DWの速度変動を防止でき、商品性を向上させることができる。
【0253】
なお、本実施形態の動力装置1Aにおいて、第2始動モード制御処理を前述した図32に示す制御手法で実行してもよい。以下、そのようにした場合の各機器の動作例を、図38を参照しながら説明する。同図に示すように、前述した図33の場合と同様に、クランク軸3aは、スタータ31で駆動されることによって正転し、エンジン回転数NEが始動用回転数NESTを上回る。また、その状態で、エンジン3が始動される。
【0254】
さらに、動力装置1と同様に、第1回転機11の動作が制御されることによって、第1磁界回転抵抗DMF1が、第1駆動用等価トルクTSE1により相殺される。これにより、スタータ31のトルクTSTの一部が第1磁界回転抵抗DMF1を反力として駆動輪DW,DWに伝達されることはなく、その結果、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0255】
なお、第2実施形態では、第1ロータ14をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。また、第2実施形態では、第2ロータ15およびロータ23は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。さらに、第2実施形態では、第2ロータ15およびロータ23を駆動輪DW,DWに、差動装置DGなどを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。
【0256】
また、動力装置1Aでは、第1実施形態と同様に、車両をEV走行モードで走行させることができる。さらに、EV走行モード中においても、第1および第2回転機11,21の動作を制御することによって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、エンジン3を始動することができる。以下、この場合において、第1回転機11を用いてクランク軸3aを駆動する際の第1および第2回転機11,21の動作の制御について、簡単に説明する。
【0257】
すなわち、第1実施形態で述べたように第2回転機21の動作を制御することによって、EV走行モードが実行される。また、EV走行モード中、第1回転機11の動作の制御によりクランク軸3aを駆動するには、ロータ23から第2ロータ15に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ13で発電を行うとともに、発電した電力をステータ22に供給する。これにより、第2ロータ15に伝達された動力の一部が、第1ロータ14を介してクランク軸3aに伝達され、クランク軸3aが正転する。この場合、第1ロータ伝達トルクTR1が前述した目標値TR1OBJになるように、第1ステータ13で発電される電流を制御する。また、第2力行トルクTM2が前述した目標値TM2OBJに要求トルクを加算した値になるように、ステータ22に供給される電流を制御する。
【0258】
以上により、要求トルク分のトルクを駆動輪DW,DWに適切に伝達しながら、クランク軸3aを適切に駆動することができ、したがって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、エンジン3を始動することができる。
【0259】
また、EV走行モード中におけるエンジン3の始動時において、スタータ31を用いてクランク軸3aを駆動する際、駆動輪回転数NDWの変動を抑制するために、第2回転機21が以下のように制御される。すなわち、駆動輪回転数NDWが変化しないように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TM2OBJを算出するとともに、第2力行トルクTM2が目標値TM2OBJになるように、ステータ22に供給される電流を制御する。以上により、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、スタータ31によりクランク軸3aを適切に駆動でき、エンジン3を始動することができる。
【0260】
さらに、スタータ31を用いてクランク軸3aを駆動する際、第1回転機11の制御により駆動輪回転数NDWの変動を抑制するには、第1回転機11は、前述したステップ122で説明した制御手法によって制御される。これにより、この場合にも、上記の作用効果を同様に得ることができる。
【0261】
次に、図39〜図47を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る動力装置1Bについて説明する。この動力装置1Bは、第1実施形態の動力装置1と比較して、前述した第2回転機21に代えて、第1回転機11と同様に構成された第2回転機81を備えている点が主に異なっているので、以下、動力装置1と異なる点を中心に説明する。なお、図39〜図42において、第1実施形態の動力装置1と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、その説明は適宜、省略する。
【0262】
図39に示すように、クランク軸3aには、第1回転軸7が、フライホイール(図示せず)を介して同軸状に直結されており、この第1回転軸7は、軸受B1,B2に回転自在に支持されている。また、図42に示すように、前述した第1回転機11の第2ロータ15は、そのフランジ15bが第1回転軸7に一体に設けられており、それにより、クランク軸3aに同軸状に直結されている。また、第1回転機11の第1ロータ14の取付部14bは、ドーナツ板状のフランジ14dを介して、中空の第2回転軸8に一体に設けられている。この第2回転軸8は、軸受B3に回転自在に支持されるとともに、第1回転軸7と同軸状に配置されており、その内側には、第1回転軸7が回転自在に嵌合している。
【0263】
上記の第2回転機81は、第1回転機11と同様に構成されているので、その構成および動作について簡単に説明する。図39および図43に示すように、第2回転機81は、エンジン3と第1回転機11の間に配置されており、第2ステータ83と、第2ステータ83に対向するように設けられた第3ロータ84と、両者83,84の間に設けられた第4ロータ85を有している。これらの第3ロータ84、第4ロータ85および第2ステータ83は、上述した第1回転軸7と同軸状に配置されており、第1回転軸7の径方向に、内側からこの順で並んでいる。
【0264】
上記の第2ステータ83は、第2回転磁界を発生させるものであり、鉄芯83aと、この鉄芯83aに設けられたU相、V相およびW相コイル83bを有している。鉄芯83aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、第1回転軸7の軸線方向に延びており、ケースCAに固定されている。また、鉄芯83aの内周面には、12個のスロット(図示せず)が形成されており、これらのスロットは、第1回転軸7の軸線方向に延びるとともに、第1回転軸7の周方向に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相コイル83bは、スロットに分布巻き(波巻き)で巻回されている。なお、本実施形態では、鉄芯83aおよびU相〜W相コイル83bが第2電機子に相当する。
【0265】
図41に示すように、U相〜W相コイル83bを含む第2ステータ83は、前述した第2PDU42およびVCU43を介して、メインバッテリ44に電気的に接続されている。すなわち、第1および第2ステータ13,83は、第1および第2PDU41,42を介して、互いに電気的に接続されている。
【0266】
以上の構成の第2ステータ83では、メインバッテリ44から電力が供給され、U相〜W相コイル83bに電力が供給されたときに、または、後述するように発電が行われたときに、鉄芯83aの第3ロータ84側の端部に、4個の磁極が第1回転軸7の周方向に等間隔で発生するとともに、これらの磁極による第2回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯83aに発生する磁極を「第2電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの第2電機子磁極の極性は、互いに異なっている。
【0267】
第3ロータ84は、8個の永久磁石84a(2つのみ図示)から成る第2磁極列を有している。これらの永久磁石84a(第2磁極)は、第1回転軸7の周方向に等間隔で並んでおり、この第2磁極列は、第2ステータ83の鉄芯83aに対向している。各永久磁石84aは、第1回転軸7の軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、第2ステータ83の鉄芯83aのそれと同じに設定されている。
【0268】
また、永久磁石84aは、リング状の取付部84bの外周面に取り付けられている。この取付部84bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、円板状のフランジ84cの外周面に取り付けられている。このフランジ84cは、前述した第1回転軸7に一体に設けられている。以上により、永久磁石84aを含む第3ロータ84は、第2ロータ15およびクランク軸3aに同軸状に直結されている。
【0269】
さらに、上記のように軟磁性体で構成された取付部84bの外周面に永久磁石84aが取り付けられているので、各永久磁石84aには、第2ステータ83側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。また、第1回転軸7の周方向に隣り合う各2つの永久磁石84aの極性は、互いに異なっている。
【0270】
第4ロータ85は、6個のコア85a(2つのみ図示)から成る第2軟磁性体列を有している。これらのコア85a(第2軟磁性体)は、第1回転軸7の周方向に等間隔で並んでおり、この第2軟磁性体列は、第2ステータ83の鉄芯83aと第3ロータ84の第1磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア85aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、第1回転軸7の軸線方向に延びている。また、コア85aの軸線方向の長さは、永久磁石84aと同様、第2ステータ83の鉄芯83aのそれと同じに設定されている。
【0271】
さらに、コア85aの第1回転機11側の端部は、ドーナツ板状のフランジ85bの外端部に、第1回転軸7の軸線方向に若干延びる筒状の連結部85cを介して取り付けられている。このフランジ85bは、前述した第2回転軸8に一体に設けられている。以上により、コア85aを含む第4ロータ85は、第1ロータ14に同軸状に直結されている。また、コア85aのエンジン3側の端部は、ドーナツ板状のフランジ85dの外端部に、第1回転軸7の軸線方向に若干延びる筒状の連結部85eを介して取り付けられている。このフランジ85dには、中空の第1スプロケットSP1が同軸状に一体に設けられている。
【0272】
以上のように、第2回転機81では、第2電機子磁極が4個、永久磁石84aの磁極(以下「第2磁石磁極」という)が8個、コア85aが6個である。すなわち、第2電機子磁極の数と第2磁石磁極の数とコア85aの数との比は、第1回転機11の第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比と同様、1:2.0:(1+2.0)/2に設定されている。また、第2電機子磁極の極対数に対する第2磁石磁極の極対数の比(以下「第2極対数比β」という)は、第1回転機11の第1極対数比αと同様、値2.0に設定されている。以上のように、第2回転機81は、第1回転機11と同様に構成されているので、第1回転機11と同じ機能を有している。
【0273】
すなわち、第2ステータ83に供給された電力を動力に変換し、第3ロータ84や第4ロータ85から出力するとともに、第3ロータ84や第4ロータ85に入力された動力を電力に変換し、第2ステータ83から出力する。また、そのような電力および動力の入出力中、第2回転磁界、第3および第4ロータ84,85が、前述した第1回転機11に関する式(40)に示すような回転数に関する共線関係を保ちながら回転する。すなわち、この場合、第2回転磁界の回転数(以下「第2磁界回転数NMF2」という)、第3および第4ロータ84,85の回転数(以下、それぞれ「第3ロータ回転数NR3」「第4ロータ回転数NR4」という)の間には、下式(44)が成立する。
NMF2=(β+1)NR4−β・NR3
=3・NR4−2・NR3 ……(44)
【0274】
また、第2ステータ83に供給された電力および第2磁界回転数NMF2と等価のトルクを第2駆動用等価トルクTSE2とすると、第2駆動用等価トルクTSE2、第3および第4ロータ84,85に伝達されるトルク(以下、それぞれ「第3ロータ伝達トルクTR3」「第4ロータ伝達トルクTR4」という)の間には、下式(45)が成立する。
TSE2=TR3/β=−TR4/(β+1)
=TR3/2=−TR4/3 ……(45)
【0275】
さらに、第2ステータ83で発電した電力および第2磁界回転数NMF2と等価のトルクを第2発電用等価トルクTGE2とすると、第2発電用等価トルクTGE2、第3および第4ロータ伝達トルクTR3,TR4の間には、下式(46)が成立する。以上のように、第2回転機81は、第1回転機11と同様、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機とを組み合わせた装置と同じ機能を有する。
TGE2=TR3/β=−TR4/(1+β)
=TR3/2=−TR4/3 ……(46)
【0276】
また、ECU2は、第2PDU42およびVCU43を制御することによって、第2ステータ83に供給される電流、第2ステータ83で発電される電流、および第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を制御する。
【0277】
さらに、前述した差動装置DGのデフケースDCには、遊星歯車装置PGSが設けられている。この遊星歯車装置PGSは、一般的なシングルピニオンタイプのものであり、サンギヤPSと、サンギヤPSの外周に設けられたリングギヤPRと、両ギヤPS,PRに噛み合う複数のプラネタリギヤPPと、これらのプラネタリギヤPPを回転自在に支持するキャリアPCを有している。このキャリアPCは、デフケースDCに一体に設けられており、リングギヤPRは、ケースCAに固定されている。また、サンギヤPSは、中空の第3回転軸9に一体に設けられており、この第3回転軸9の内側には、右側の車軸6が回転自在に嵌合している。さらに、第3回転軸9には、第2スプロケットSP2が一体に設けられており、第2スプロケットSP2と、上述した第1スプロケットSP1には、チェーンCHが巻き掛けられている。以上の構成により、第2スプロケットSP2に伝達された動力は、遊星歯車装置PGSによって減速された状態で、差動装置DGに伝達される。
【0278】
以上のように、動力装置1Bでは、第1回転機11の第2ロータ15および第2回転機81の第3ロータ84が、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、第1回転機11の第1ロータ14および第2回転機81の第4ロータ85が、第1スプロケットSP1、チェーンCH、第2スプロケットSP2、遊星歯車装置PGS、差動装置DG、および車軸6,6を介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。さらに、コンプレッサ51が、クラッチCLを介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。
【0279】
また、図40に示すように、ECU2には、前述したセンサ61〜71に加えて、第2回転角センサ72が電気的に接続されている。この第2回転角センサ72は、第1ステータ13に対する第2ロータ15の回転角度位置を検出するとともに、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、第2回転角センサ72の検出信号に基づき、第2ロータ回転数NR2を算出する。
【0280】
また、第3ロータ84が第2ロータ15に直結されているので、ECU2は、第2回転角センサ72の検出信号に基づいて、第2ステータ83に対する第3ロータ84の回転角度位置を算出するとともに、第3ロータ回転数NR3を算出する。さらに、第1および第4ロータ14,85が互いに直結されているので、ECU2は、前述した第1回転角センサ62の検出信号に基づいて、第2ステータ83に対する第4ロータ85の回転角度位置を算出するとともに、第4ロータ回転数NR4を算出する。
【0281】
さらに、ECU2は、前述した各種のセンサ61〜72の検出信号に基づいて、以下に述べるように、エンジン始動制御処理などの各種の制御処理を実行する。それにより、エンジン3、第1および第2回転機11,81の動作が制御されることで、車両が各種の走行モードで運転される。
【0282】
次に、ECU2によって実行される本実施形態のエンジン始動制御処理について説明する。本実施形態の動力装置1Bの場合、第1実施形態の動力装置1と比較して、第2回転機21に代えて、第2回転機81が設けられている点が異なっている関係上、エンジン始動制御処理は、その一部が前述した図19のエンジン始動制御処理と異なる制御手法で実行され、それ以外は図19の処理と同じ制御手法で実行される。具体的には、前述したステップ7の第1始動モード制御処理およびステップ8の第2始動モード制御処理のみが、図19の制御処理のものと異なる制御手法で実行されるので、以下、図44,45を参照しながら、本実施形態の第1始動モード制御処理および第2始動モード制御処理について説明する。
【0283】
まず、図44に示す第1始動モード制御処理について説明する。この制御処理を、前述した図25の第1始動モード制御処理と比較した場合、前述した構成上の差異に起因して、ステップ142における第2回転機制御処理の内容のみが異なっているので、以下、この点を中心として説明する。
【0284】
まず、ステップ140,141を前述したステップ70,71と同様に実行した後、ステップ142で、第2回転機制御処理を以下のように実行する。すなわち、まず、第4ロータ伝達トルクTR4の目標値TR4OBJを、下式(47)によって算出する。次いで、第2ステータ83で発電を行うとともに、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、第2ステータ83で発電される電流を制御する。
TR4OBJ=α・TR2OBJ/(1+α) ……(47)
【0285】
次いで、ステップ143を前述したステップ73と同様に実行した後、本処理を終了する。
【0286】
次に、図45に示す第2始動モード制御処理について説明する。この制御処理を、前述した図26の第2始動モード制御処理と比較した場合、前述した構成上の差異に起因して、ステップ152における第2回転機制御処理の内容のみが異なっているので、以下、この点を中心として説明する。
【0287】
まず、ステップ150,151を前述したステップ80,81と同様に実行した後、ステップ152で、第2回転機制御処理を以下のように実行する。すなわち、まず、駆動輪回転数NDWが値0になるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、第4ロータ伝達トルクTR4の目標値TR4OBJを算出する。次いで、第2ステータ83に電力を供給するとともに、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に作用するように、第2ステータ83に供給される電流を制御する。
【0288】
次いで、ステップ153を前述したステップ83と同様に実行した後、本処理を終了する。
【0289】
次に、図46を参照しながら、図44の第1始動モード制御処理を実行したときの動作例について説明する。この動力装置1Bの場合、前述した各種の回転要素間の連結関係から明らかなように、エンジン回転数NE、第2および第3ロータ回転数NR2,NR3は、互いに等しく、第1および第4ロータ回転数NR1,NR4は、互いに等しい。また、遊星歯車装置PGSなどによる変速を無視すれば、第1および第4ロータ回転数NR1,NR4は、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2は、前述した式(40)で表されるような所定の共線関係にあり、第2磁界回転数NMF2、第3および第4ロータ回転数NR3,NR4は、前述した式(44)で表される所定の共線関係にある。以上により、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2磁界回転数NMF2の間の関係は、図46に示すような速度共線図で表される。
【0290】
図46から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2発電用等価トルクTGE2を反力として、第2ロータ15を介してクランク軸3aに伝達され、それにより、両者15,3aが駆動され、正転する。この場合、第1実施形態と同様、第2ロータ伝達トルクTR2が目標値TR2OBJになるように、第1ステータ13に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
【0291】
また、図46から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、フリクショントルクTEFを反力として、第1ロータ14、第4ロータ85および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ14などを逆転させるように作用するトルク(第1ロータ逆転トルク)は、前述した式(41)から明らかなように、第2ロータ伝達トルクTR2および第1極対数比αを用いて、−α・TR2/(1+α)で表される。
【0292】
これに対して、前述した第2回転機81の動作の制御によって、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、第2ステータ83で発電される電流が制御されるとともに、この目標値TR4OBJが、前述した式(47)、すなわち、TR4OBJ=α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、第2発電用等価トルクTGE2により第4ロータ85に作用するトルクによって、第1ロータ逆転トルクが相殺され、結果的に、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0293】
次に、図47を参照しながら、図45の第2始動モード制御処理を実行したときの動作例について説明する。図47に示すように、第1実施形態と同様、クランク軸3aが、スタータ31で駆動されることによって正転し、エンジン回転数NEが始動用回転数NESTを上回る。また、その状態で、エンジン3が始動される。この場合、図47から明らかなように、前述した第1磁界回転抵抗DMF1を反力として、スタータ31のトルクTSTが、第2および第1ロータ15,14を介して、駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。
【0294】
これに対して、前述した第2回転機81の動作の制御によって、第4ロータ伝達トルクTR4が、駆動輪回転数NDWが値0になるように、制御される。これにより、上述した第1磁界回転抵抗DMF1に起因して駆動輪DW,DWに作用するトルクは、第2駆動用等価トルクTSE2により第4ロータ85に作用するトルクによって相殺され、その結果、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0295】
以上のように構成された第3実施形態の動力装置1Bによれば、第1実施形態の動力装置1と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、動力装置1Bの小型化および製造コストの削減を図ることができるとともに、動力装置1Bの設計の自由度を高めることができる。また、パージ制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、蒸発燃料処理装置91のキャニスタ91a内に吸着された燃料を吸気通路3dに確実に送り込むことができる。さらに、PCV動作の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、クランクケース内のブローバイガスを吸気通路3dに確実に還流させることができる。さらに、触媒暖機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、高温の排ガスを排気通路3fに供給することができ、それにより、触媒装置3gを確実に活性化することができる。これに加えて、補機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、その動力によって、コンプレッサ51および3つのポンプ93〜95を確実に駆動することができる。
【0296】
さらに、エンジン回転数NEが低いことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。これに加えて、エンジン水温TWが極低温域にあり、エンジン3の回転抵抗が大きいことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。以上により、内燃機関の始動性を向上させることができる。また、第1始動モード制御処理中、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪DW,DWの速度変動を防止でき、商品性を向上させることができる。
【0297】
なお、第3実施形態では、第2および第3ロータ15,84は、互いに直結されているが、クランク軸3aに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよく、また、第1および第4ロータ14,85は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。また、第3実施形態では、第2および第3ロータ15,84をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。さらに、第3実施形態では、第1および第4ロータ14,85を駆動輪DW,DWに、チェーンCHや差動装置DGを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。また、第3実施形態では、第1および第2回転機11,81を、互いに同軸状に配置しているが、これに代えて、それらの軸線が互いに直交するように、あるいは、平行になるように、配置してもよい。
【0298】
さらに、動力装置1Bは、エンジン3を停止した状態で、第2回転機81を動力源として、車両をEV走行モードで走行させることができる。さらに、このEV走行モード中においても、スタータ31や、第1回転機11、第2回転機81の動作を制御することによって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、クランク軸3aを駆動でき、エンジン3を始動することができる。以下、この場合において、第1回転機11を用いてクランク軸3aを駆動する際の第1および第2回転機11,81の動作の制御について、簡単に説明する。
【0299】
すなわち、メインバッテリ44から第2ステータ83に電力を供給し、第2回転磁界を正転させるとともに、駆動輪回転数NDWおよびエンジン回転数NEによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1ステータ13で発電を行う。これにより、前述した図46に示すトルクの関係から明らかなように、第2駆動用等価トルクTSE2が、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、駆動輪DW,DWに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWが正転し、上記のEV走行モードが実行される。この場合、第2駆動用等価トルクTSE2は、駆動輪DW,DWだけでなく、クランク軸3aにも伝達され、また、第1ステータ13で発電される電流を制御することによって、そのようにクランク軸3aに伝達される動力を制御することができる。
【0300】
より具体的には、第1ステータ13で発電される電流を、第2ロータ伝達トルクTR2が前述した目標値TR2OBJになるように制御する。また、前述した目標値TR4OBJに要求トルクを加算した値に相当するトルクが第4ロータ85に対して作用するように、第2ステータ83に供給される電流を制御する。以上により、要求トルク分のトルクを駆動輪DW,DWに適切に伝達しながら、クランク軸3aを駆動することができ、したがって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、エンジン3を始動することができる。
【0301】
また、EV走行モード中におけるエンジン3の始動時において、スタータ31を用いてクランク軸3aを駆動する際、駆動輪回転数NDWの変動を抑制するために、第2回転機81が以下のように制御される。すなわち、駆動輪回転数NDWが変化しないように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR4OBJを算出するとともに、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に作用するように、第2ステータ83に供給される電流を制御する。以上により、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、スタータ31によりクランク軸3aを適切に駆動でき、エンジン3を始動することができる。
【0302】
次に、図48〜図53を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る動力装置1Cについて説明する。この動力装置1Cは、前述した第3実施形態の動力装置1Bと比較して、第2回転機81に代えて、前述した第2回転機21および遊星歯車装置PGを備える点が主に異なっているので、以下、動力装置1Bと異なる点を中心に説明する。なお、図48および図49において、第3実施形態の動力装置1Bと同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、その説明は適宜、省略する。
【0303】
図48に示すように、遊星歯車装置PG(動力伝達機構)は、前述した遊星歯車装置PGSと同様、一般的なシングルピニオンタイプのものであり、サンギヤSと、リングギヤRと、両ギヤS,Rに噛み合う複数のプラネタリギヤPと、これらのプラネタリギヤPを回転自在に支持するキャリアCを有している。周知のように、これらのサンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRは、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように、構成されている。また、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRは、前述した第1回転軸7と同軸状に配置されている。
【0304】
さらに、サンギヤSは、第1回転軸7に一体に設けられている。また、キャリアCは、前述した第2回転軸8に一体に設けられており、キャリアCには、第1スプロケットSP1が取り付けられている。また、リングギヤRには、第2回転機21のロータ23が同軸状に取り付けられている。
【0305】
以上のように、動力装置1Cでは、第2ロータ15およびサンギヤSは、互いに機械的に直結されるとともに、クランク軸3aに機械的に直結されている。また、第1ロータ14およびキャリアCは、互いに機械的に直結されるとともに、第1スプロケットSP1や、チェーンCH、第2スプロケットSP2、遊星歯車装置PGS、差動装置DGなどを介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。さらに、リングギヤRは、ロータ23に機械的に直結されている。
【0306】
また、図49に示すように、ECU2には、前述した各種のセンサ61〜72に加えて、第3回転角センサ73が電気的に接続されている。この第3回転角センサ73は、ステータ22に対するロータ23の回転角度位置を検出するとともに、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、第3回転角センサ73の検出信号に基づいて、第2回転機回転数NM2を算出する。
【0307】
さらに、ECU2は、各種のセンサ61〜73の検出信号に基づいて、以下に述べるように、各種の制御処理を実行する。それにより、エンジン3、第1および第2回転機11,21の動作が制御されることで、車両が各種の走行モードで運転される。
【0308】
次に、ECU2によって実行される本実施形態のエンジン始動制御処理について説明する。本実施形態の動力装置1Cの場合、第3実施形態の動力装置1Bと比較して、第2回転機81に代えて、第2回転機21および遊星歯車装置PGが設けられている点のみが異なっている関係上、エンジン始動制御処理は、第1始動モード制御処理および第2始動モード制御処理のみが第3実施形態のものと異なる手法で実行されるので、以下、図50,51を参照しながら、本実施形態の第1始動モード制御処理および第2始動モード制御処理について説明する。
【0309】
まず、図50に示す第1始動モード制御処理について説明する。この制御処理を前述した動力装置1Bにおける図44の第1始動モード制御処理と比較した場合、前述した構成上の差異に起因して、ステップ162における第2回転機制御処理の内容のみが異なっているので、以下、この点を中心として説明する。
【0310】
まず、ステップ160,161を前述したステップ140,141と同様に実行した後、ステップ162で、第2回転機制御処理を以下のように実行する。すなわち、まず、キャリアCに作用させるトルクの目標値TCOBJを、下式(48)によって算出する。次いで、ステータ22で発電を行うとともに、目標値TCOBJに相当するトルクがキャリアCに対して正転方向に作用するように、ステータ22で発電される電流を制御する。
TCOBJ=α・TR2OBJ/(1+α) ……(48)
【0311】
次いで、ステップ163を前述したステップ143と同様に実行した後、本処理を終了する。
【0312】
次に、図51に示す第2始動モード制御処理について説明する。この制御処理を前述した動力装置1Bにおける図45の第2始動モード制御処理と比較した場合、前述した構成上の差異に起因して、ステップ172における第2回転機制御処理の内容のみが異なっているので、以下、この点を中心として説明する。
【0313】
まず、ステップ170,171を前述したステップ150,151と同様に実行した後、ステップ172で、第2回転機制御を以下のように実行する。すなわち、まず、駆動輪回転数NDWが値0になるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TCOBJを算出する。次いで、ステータ22に電力を供給するとともに、目標値TCOBJに相当するトルクがキャリアCに作用するように、ステータ22に供給される電流を制御する。
【0314】
次いで、ステップ173を前述したステップ153と同様に実行した後、本処理を終了する。
【0315】
次に、図52を参照しながら、図50の第1始動モード制御処理を実行したときの動作例について説明する。まず、この動力装置1Cの場合、前述した各種の回転要素間の連結関係から明らかなように、エンジン回転数NE、第2ロータ回転数NR2およびサンギヤSの回転数は、互いに等しく、第2回転機回転数NM2およびリングギヤRの回転数は、互いに等しい。また、第1ロータ回転数NR1およびキャリアCの回転数は、互いに等しく、遊星歯車装置PGSなどによる変速を無視すれば、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2は、前述した式(40)で表されるような所定の共線関係にあり、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRの回転数は、サンギヤSの歯数およびリングギヤRの歯数で定まる所定の共線関係にある。
【0316】
以上から、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図52に示すような速度共線図で表される。なお、同図において、TG2は、ステータ22での発電に伴ってロータ23に作用する第2回転機21の制動トルク(以下「第2発電トルク」という)である。また、Xは、リングギヤRの歯数に対するサンギヤSの歯数の比である。さらに、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRを、遊星歯車装置PGSのサンギヤPS、キャリアPCおよびリングギヤPRとそれぞれ識別するために、三者S,C,Rの符号をカッコ書きで表記している。
【0317】
図52から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2発電トルクTG2を反力として、第2ロータ15を介してクランク軸3aに伝達され、それにより、両者15,3aが駆動され、正転する。この場合、第3実施形態と同様、第2ロータ伝達トルクTR2が目標値TR2OBJになるように、第1ステータ13に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
【0318】
また、図52から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、フリクショントルクTEFを反力として、第1ロータ14、キャリアCおよび駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ14などを逆転させるように作用するトルク(第1ロータ逆転トルク)は、前述した式(41)から明らかなように、第2ロータ伝達トルクTR2および第1極対数比αを用いて、−α・TR2/(1+α)で表される。
【0319】
これに対して、前述した第2回転機21の動作の制御によって、目標値TCOBJに相当するトルクがキャリアCに対して正転方向に作用するように、ステータ22で発電される電流が制御されるとともに、この目標値TCOBJが、前述した式(48)、すなわち、TCOBJ=α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、第2発電トルクTR2によりキャリアCに作用するトルクによって、第1ロータ逆転トルクが相殺され、結果的に、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0320】
次に、図53を参照しながら、図51の第2始動モード制御処理を実行したときの動作例について説明する。図53に示すように、第1実施形態と同様、クランク軸3aが、スタータ31で駆動されることによって正転し、エンジン回転数NEが始動用回転数NESTを上回る。また、その状態で、エンジン3が始動される。この場合、図53から明らかなように、前述した第1磁界回転抵抗DMF1を反力として、スタータ31のトルクTSTが、第2および第1ロータ15,14を介して、駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。
【0321】
これに対して、前述した第2回転機21の動作の制御によって、キャリアCに作用するトルクが、駆動輪回転数NDWが値0になるように、制御される。これにより、上述した第1磁界回転抵抗DMF1に起因して駆動輪DW,DWに作用するトルクは、第2力行トルクTM2によりキャリアCに作用するトルクによって相殺され、その結果、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
【0322】
以上のように構成された第4実施形態の動力装置1Cによれば、前述した動力装置1と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、動力装置1Cの小型化および製造コストの削減を図ることができるとともに、動力装置1Cの設計の自由度を高めることができる。また、パージ制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、蒸発燃料処理装置91のキャニスタ91a内に吸着された燃料を吸気通路3dに確実に送り込むことができる。さらに、PCV動作の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、吸気通路3dに負圧を発生させることができるので、クランクケース内のブローバイガスを吸気通路3dに確実に還流させることができる。さらに、触媒暖機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、高温の排ガスを排気通路3fに供給することができ、それにより、触媒装置3gを確実に活性化することができる。これに加えて、補機制御処理の実行条件が成立したときには、エンジン3の始動に伴い、その動力によって、コンプレッサ51および3つのポンプ93〜95を確実に駆動することができる。
【0323】
さらに、エンジン回転数NEが低いことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。これに加えて、エンジン水温TWが極低温域にあり、エンジン3の回転抵抗が大きいことで、エンジン3を始動させるのに必要な燃焼エネルギが大きいときには、気筒内への吸入空気の充填効率を高めることによって、始動に必要な燃焼エネルギを確保することができる。以上により、寒冷時における内燃機関の始動性を向上させることができる。また、第1始動モード制御処理中、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪DW,DWの速度変動を防止でき、商品性を向上させることができる。
【0324】
なお、第4実施形態では、動力伝達機構として、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置PGを用いているが、互いの間で回転数に関する共線関係を保ちながら動力を伝達可能な第1〜第3要素を有する機構であれば、他の機構、例えばダブルピニオンタイプの遊星歯車装置、または差動装置DGを用いてもよい。あるいは、遊星歯車装置のギヤに代えて、表面間の摩擦によって動力を伝達する複数のローラを有し、遊星歯車装置と同等の機能を有するような機構を用いてもよい。また、詳細な説明は省略するが、特開2008−39045号公報に開示されるような複数の磁石や軟磁性体の組み合わせで構成された機構を用いてもよい。
【0325】
また、第4実施形態では、第2ロータ15およびサンギヤSは、互いに直結されているが、クランク軸3aに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよく、また、第1ロータ14およびキャリアCは、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。さらに、第4実施形態では、第2ロータ15およびサンギヤSをクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。
【0326】
また、第4実施形態では、第1ロータ14およびキャリアCを駆動輪DW,DWに、チェーンCHや差動装置DGを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。さらに、第4実施形態では、リングギヤRをロータ23に直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。
【0327】
また、第4実施形態では、リングギヤRをロータ23に、サンギヤSをクランク軸3aに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、リングギヤRをクランク軸3aに、サンギヤSをロータ23に、それぞれ機械的に連結してもよい。この場合において、当然のことながら、リングギヤRとクランク軸3aの間、および、サンギヤSとロータ23の間をそれぞれ、機械的に直結してもよく、あるいは、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを用いて機械的に連結してもよい。
【0328】
さらに、動力装置1Cは、エンジン3を停止した状態で、第2回転機21を動力源として、車両をEV走行モードで走行させることができる。さらに、このEV走行モード中においても、スタータ31や、第1回転機11、第2回転機21の動作を制御することによって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、クランク軸3aを駆動でき、エンジン3を始動することができる。以下、この場合において、第1回転機11を用いてクランク軸3aを駆動する際の第1および第2回転機11,21の動作の制御について、簡単に説明する。
【0329】
すなわち、メインバッテリ44からステータ22に電力を供給し、ロータ23を正転させるとともに、駆動輪回転数NDWおよびエンジン回転数NEによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1ステータ13で発電を行う。これにより、前述した図52に示す速度共線図から明らかなように、第2力行トルクTM2が、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、駆動輪DW,DWに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWが正転し、上記のEV走行モードが実行される。この場合、第2力行トルクTM2は、駆動輪DW,DWだけでなく、クランク軸3aにも伝達され、また、第1ステータ13で発電される電流を制御することによって、そのようにクランク軸3aに伝達される動力を制御することができる。
【0330】
より具体的には、第3実施形態の動力装置1Bと同様に、第1ステータ13で発電される電力を、第2ロータ伝達トルクTR2が前述した目標値TR2OBJになるように制御する。また、前述した目標値TCOBJに要求トルクを加算した値に相当するトルクがキャリアCに対して作用するように、ステータ22に供給される電流を制御する。以上により、要求トルク分のトルクを駆動輪DW,DWに適切に伝達しながら、クランク軸3aを駆動することができ、したがって、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、エンジン3を始動することができる。
【0331】
また、EV走行モード中におけるエンジン3の始動時において、スタータ31を用いてクランク軸3aを駆動する際、駆動輪回転数NDWの変動を抑制するために、第2回転機21が以下のように制御される。すなわち、駆動輪回転数NDWが変化しないように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TCOBJを算出するとともに、目標値TCOBJに相当するトルクがキャリアCに作用するように、ステータ22に供給される電流を制御する。以上により、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制した状態で、スタータ31によりクランク軸3aを適切に駆動でき、エンジン3を始動することができる。
【0332】
また、第4実施形態において、第1回転機11に代えて、第2回転機21および遊星歯車装置PGを設けるとともに、第2回転機21および遊星歯車装置PGに代えて、第2回転機81を設けてもよい。この場合、キャリアCおよび第1ロータ14がクランク軸3aに、サンギヤS(またはリングギヤR)および第2ロータ15が駆動輪DW,DWに、それぞれ機械的に連結される。さらに、この場合、第1始動モード制御処理において、クランク軸3aを駆動するように第2回転機21の動作が制御されるとともに、第1および第2始動モード制御処理において、クランク軸3aへの駆動力の伝達に起因する駆動輪回転数NDWの変動を抑制するように、第1回転機11の動作が制御される。この場合にも、当然のことながら、第4実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0333】
さらに、第1、第2および第4実施形態では、第2回転機21は、同期型のブラシレスDCモータであるが、供給された電力を動力に変換し、出力するとともに、入力された動力を電力に変換可能な装置であれば、他の装置、例えば、同期型または誘導機型のACモータなどでもよい。
【0334】
なお、前述した各実施形態は、本発明の動力装置1,1A〜1Cを被駆動部としての駆動輪DWを備える車両に適用した例であるが、本発明の動力装置はこれに限らず、例えば、船舶および航空機などの様々な産業機器に適用可能である。ここで、本発明の動力装置を船舶に適用した場合には、スクリューなどの推進力を生じる部分が被駆動部に相当し、動力装置を航空機に適用した場合には、プロペラやロータなどの推進力を生じる部分が被駆動部に相当する。
【0335】
また、各実施形態は、内燃機関として、ガソリンを燃料とする内燃機関3を用いた例であるが、本発明の熱機関はこれに限らず、熱エネルギを継続的に機械的エネルギに変えるものであればよい。例えば、熱機関として、軽油または天然ガスを燃料とする内燃機関やスターリングエンジンなどの外燃機関を用いてもよい。
【0336】
さらに、各実施形態は、蓄電装置として、メインバッテリ44を用いた例であるが、本発明の蓄電装置はこれに限らず、電力を蓄積可能なものであればよい。例えば、蓄電装置として、キャパシタを用いてもよい。また、各実施形態は、電源として、補助バッテリ33を用いた例であるが、本発明の電源はこれに限らず、スタータに電力を供給できるものであればよい。例えば、電源として、キャパシタや、電気回路、発電機などを用いてもよい。
【0337】
一方、各実施形態は、第1回転機11における第1電機子磁極が4個、第1磁石磁極が8個、コア15aが6個であり、すなわち、第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比が、1:2:1.5の例であるが、これらの数の比が1:m:(1+m)/2(m≠1.0)を満たすものであれば、第1電機子磁極、第1磁石磁極およびコア15aの数として、任意の数を採用可能である。さらに、各実施形態では、コア15aを鋼板で構成しているが、他の軟磁性体で構成してもよい。また、各実施形態では、第1ステータ13および第1ロータ14を、径方向の外側および内側にそれぞれ配置しているが、これとは逆に、径方向の内側および外側にそれぞれ配置してもよい。
【0338】
さらに、各実施形態は、第1ステータ13、第1および第2ロータ14,15を径方向に並ぶように配置し、いわゆるラジアルタイプとして第1回転機11を構成した例であるが、第1ステータ13、第1および第2ロータ14,15を軸線方向に並ぶように配置し、いわゆるアキシャルタイプとして第1回転機11を構成してもよい。また、各実施形態では、1つの第1磁石磁極を、単一の永久磁石14aの磁極で構成しているが、複数の永久磁石の磁極で構成してもよい。例えば、2つの永久磁石の磁極が第1ステータ13側で近づき合うように、これらの2つの永久磁石を逆V字状に並べることにより、1つの第1磁石磁極を構成することによって、前述した磁力線MLの指向性を高めることができる。さらに、各実施形態において、永久磁石14aに代えて、電磁石を用いてもよい。
【0339】
また、各実施形態では、コイル13c〜13eを、U相〜W相の3相コイルで構成しているが、第1回転磁界を発生できれば、このコイルの相数はこれに限らず、任意である。さらに、各実施形態において、スロット13bの数として、各実施形態で示した以外の任意の数を採用してもよいことはもちろんである。また、各実施形態では、U相〜W相コイル13c〜13eをスロット13bに分布巻きで巻回しているが、これに限らず、集中巻きでもよい。さらに、各実施形態では、スロット13bや、永久磁石14a、コア15aを、等間隔に配置しているが、不等間隔に配置してもよい。以上の第1回転機11に関する変形例は、第3実施形態における第2回転機81についても、同様に当てはまる。
【0340】
また、各実施形態では、エンジン3、第1および第2回転機11,21,81の動作を制御するための制御装置を、ECU2、VCU43、第1および第2PDU41,42で構成しているが、制御装置を他の電気回路や、マイクロコンピュータと電気回路の組み合わせなどで構成してもよい。
【符号の説明】
【0341】
1 動力装置
1A 動力装置
1B 動力装置
1C 動力装置
2 ECU(制御装置、パージ条件判定手段、還流条件判定手段、活性化条件判定手 段、補機駆動条件判定手段、始動条件判定手段、機関回転数検出手段、機関温度 パラメータ検出手段、所定回転数設定手段)
3 内燃機関
3a クランク軸(出力部)
3d 吸気通路(吸気系)
3f 排気通路
3g 触媒装置
11 第1回転機
13 第1ステータ
13a 鉄芯(第1電機子)
13c U相コイル(第1電機子)
13d V相コイル(第1電機子)
13e W相コイル(第1電機子)
14 第1ロータ
14a 永久磁石(第1磁極)
15 第2ロータ
15a コア(第1軟磁性体)
21 第2回転機
23 ロータ
41 第1PDU(制御装置)
42 第2PDU(制御装置)
43 VCU(制御装置)
44 メインバッテリ(蓄電装置)
51 コンプレッサ(補機)
61 クランク角センサ(機関回転数検出手段)
67 水温センサ(機関温度パラメータ検出手段)
81 第2回転機
83 第2ステータ
83a 鉄芯(第2電機子)
83b U相〜W相コイル(第2電機子)
84 第3ロータ
84a 永久磁石(第2磁極)
85 第4ロータ
85a コア(第2軟磁性体)
90 リフト切換機構(充填効率変更機構)
91 蒸発燃料処理装置
91a キャニスタ(燃料吸着部)
91d 燃料タンク
92 PCV装置
93 冷却用ウォータポンプ(補機)
94 オイルポンプ(補機)
95 ヒータ用ウォータポンプ(補機)
DW 駆動輪(被駆動部)
PG 遊星歯車装置(動力伝達機構)
NE 内燃機関の回転数
NEref 判定値(所定回転数)
TW エンジン水温(機関温度パラメータ)
TW1 第1所定温度
TW2 第2所定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部を駆動するための動力装置であって、
動力を出力するための出力部と、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を燃料吸着部に一時的に吸着し、吸気系に送り込む蒸発燃料処理装置とを有する内燃機関と、
不動の第1ステータと、当該第1ステータに対して相対的に回転自在の第1ロータおよび第2ロータとを有し、当該第1ロータおよび当該第2ロータの一方が前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結されるとともに、当該第1ロータおよび当該第2ロータの他方が前記被駆動部に機械的に連結された第1回転機と、
前記内燃機関および前記第1回転機の動作を制御するための制御装置と、
当該制御装置および前記第1回転機に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置と、
を備え、
前記第1ステータは、円周方向に並んだ複数の第1電機子で構成され、電力の供給に伴って当該複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、前記円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、
前記第1ロータは、前記第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、当該第1磁極列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極で構成され、
前記第2ロータは、前記第1電機子列と前記第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、当該第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体で構成され、
前記第1電機子磁極の数と前記第1磁極の数と前記第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、
前記制御装置は、
前記蒸発燃料処理装置の前記燃料吸着部に吸着された燃料を前記吸気系に送り込むパージ条件が成立したか否かを判定するパージ条件判定手段を有し、
当該パージ条件判定手段の判定結果に基づき、当該パージ条件が成立したときに、前記第1回転機と前記蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、前記内燃機関を始動させることを特徴とする動力装置。
【請求項2】
被駆動部を駆動するための動力装置であって、
動力を出力するための出力部と、クランクケース内のブローバイガスを吸気系に還流させるPCV装置とを有する内燃機関と、
不動の第1ステータと、当該第1ステータに対して相対的に回転自在の第1ロータおよび第2ロータとを有し、当該第1ロータおよび当該第2ロータの一方が前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結されるとともに、当該第1ロータおよび当該第2ロータの他方が前記被駆動部に機械的に連結された第1回転機と、
前記内燃機関および前記第1回転機の動作を制御するための制御装置と、
当該制御装置および前記第1回転機に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置と、
を備え、
前記第1ステータは、円周方向に並んだ複数の第1電機子で構成され、電力の供給に伴って当該複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、前記円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、
前記第1ロータは、前記第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、当該第1磁極列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極で構成され、
前記第2ロータは、前記第1電機子列と前記第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、当該第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体で構成され、
前記第1電機子磁極の数と前記第1磁極の数と前記第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、
前記制御装置は、
前記クランクケース内のブローバイガスを前記吸気系に還流させる還流条件が成立したか否かを判定する還流条件判定手段を有し、
当該還流条件判定手段の判定結果に基づき、当該還流条件が成立したときに、前記第1回転機と前記蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、前記内燃機関を始動させることを特徴とする動力装置。
【請求項3】
被駆動部を駆動するための動力装置であって、
動力を出力するための出力部と、排気通路を流れる排ガスを浄化する触媒装置とを有する内燃機関と、
不動の第1ステータと、当該第1ステータに対して相対的に回転自在の第1ロータおよび第2ロータとを有し、当該第1ロータおよび当該第2ロータの一方が前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結されるとともに、当該第1ロータおよび当該第2ロータの他方が前記被駆動部に機械的に連結された第1回転機と、
前記内燃機関および前記第1回転機の動作を制御するための制御装置と、
当該制御装置および前記第1回転機に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置と、
を備え、
前記第1ステータは、円周方向に並んだ複数の第1電機子で構成され、電力の供給に伴って当該複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、前記円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、
前記第1ロータは、前記第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、当該第1磁極列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極で構成され、
前記第2ロータは、前記第1電機子列と前記第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、当該第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体で構成され、
前記第1電機子磁極の数と前記第1磁極の数と前記第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、
前記制御装置は、
前記触媒装置を活性化させる活性化条件が成立したか否かを判定する活性化条件判定手段を有し、
当該活性化条件判定手段の判定結果に基づき、当該活性化条件が成立したときに、前記第1回転機と前記蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、前記内燃機関を始動させることを特徴とする動力装置。
【請求項4】
被駆動部および補機を駆動するための動力装置であって、
動力を出力するための出力部を有する内燃機関と、
不動の第1ステータと、当該第1ステータに対して相対的に回転自在の第1ロータおよび第2ロータとを有し、当該第1ロータおよび当該第2ロータの一方が前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結されるとともに、当該第1ロータおよび当該第2ロータの他方が前記被駆動部に機械的に連結された第1回転機と、
前記内燃機関および前記第1回転機の動作を制御するための制御装置と、
当該制御装置および前記第1回転機に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置と、
を備え、
前記第1ステータは、円周方向に並んだ複数の第1電機子で構成され、電力の供給に伴って当該複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、前記円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、
前記第1ロータは、前記第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、当該第1磁極列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極で構成され、
前記第2ロータは、前記第1電機子列と前記第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、当該第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体で構成され、
前記第1電機子磁極の数と前記第1磁極の数と前記第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、
前記制御装置は、
前記内燃機関の動力により前記補機を駆動する補機駆動条件が成立したか否かを判定する補機駆動条件判定手段を有し、
当該補機駆動条件判定手段の判定結果に基づき、当該補機駆動条件が成立したときに、前記第1回転機と前記蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、前記内燃機関を始動させることを特徴とする動力装置。
【請求項5】
被駆動部を駆動するための動力装置であって、
動力を出力するための出力部と、吸気弁および排気弁の少なくとも一方における最大揚程およびバルブタイミングの少なくとも一方を変更することにより、気筒内への吸入空気の充填効率を変更する充填効率変更機構と、を有する内燃機関と、
不動の第1ステータと、当該第1ステータに対して相対的に回転自在の第1ロータおよび第2ロータとを有し、当該第1ロータおよび当該第2ロータの一方が前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結されるとともに、当該第1ロータおよび当該第2ロータの他方が前記被駆動部に機械的に連結された第1回転機と、
前記内燃機関、前記第1回転機および前記充填効率変更機構の動作を制御するための制御装置と、
当該制御装置および前記第1回転機に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置と、
を備え、
前記第1ステータは、円周方向に並んだ複数の第1電機子で構成され、電力の供給に伴って当該複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、前記円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、
前記第1ロータは、前記第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、当該第1磁極列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極で構成され、
前記第2ロータは、前記第1電機子列と前記第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、当該第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体で構成され、
前記第1電機子磁極の数と前記第1磁極の数と前記第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、
前記制御装置は、
前記内燃機関の始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段と、
前記内燃機関の回転数を機関回転数として検出する機関回転数検出手段と、
を有し、
前記始動条件判定手段の判定結果に基づき、前記始動条件が成立している場合において、前記検出された機関回転数が前記所定回転数以下のときに、当該所定回転数を上回っているときよりも、前記気筒内への吸入空気の充填効率が高くなるように、前記充填効率変更機構を制御するとともに、前記始動条件が成立しているときに、前記第1回転機と前記蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、前記内燃機関を始動させることを特徴とする動力装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記内燃機関の温度を表す機関温度パラメータを検出する機関温度パラメータ検出手段と、
前記検出された機関温度パラメータが表す前記内燃機関の温度が前記第1所定温度以下であるときに、前記所定回転数を、前記第1所定温度を上回っているときよりも低い値に設定する所定回転数設定手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の動力装置。
【請求項7】
被駆動部を駆動するための動力装置であって、
動力を出力するための出力部と、吸気弁および排気弁の少なくとも一方における最大揚程およびバルブタイミングの少なくとも一方を変更することにより、気筒内への吸入空気の充填効率を変更する充填効率変更機構と、を有する内燃機関と、
不動の第1ステータと、当該第1ステータに対して相対的に回転自在の第1ロータおよび第2ロータとを有し、当該第1ロータおよび当該第2ロータの一方が前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結されるとともに、当該第1ロータおよび当該第2ロータの他方が前記被駆動部に機械的に連結された第1回転機と、
前記内燃機関、前記第1回転機および前記充填効率変更機構の動作を制御するための制御装置と、
当該制御装置および前記第1回転機に電気的に接続され、電力を蓄積可能な蓄電装置と、
を備え、
前記第1ステータは、円周方向に並んだ複数の第1電機子で構成され、電力の供給に伴って当該複数の第1電機子に発生する第1電機子磁極により、前記円周方向に回転する回転磁界を発生させる第1電機子列を有し、
前記第1ロータは、前記第1電機子列に対向するように配置された第1磁極列を有し、当該第1磁極列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第1磁極で構成され、
前記第2ロータは、前記第1電機子列と前記第1磁極列の間に配置された第1軟磁性体列を有し、当該第1軟磁性体列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並んだ複数の第1軟磁性体で構成され、
前記第1電機子磁極の数と前記第1磁極の数と前記第1軟磁性体の数との比が、1:m:(1+m)/2(ただしm≠1)となるように設定されており、
前記制御装置は、
前記内燃機関の始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段と、
前記内燃機関の温度を表す機関温度パラメータを検出する機関温度パラメータ検出手段と、
を有し、
前記始動条件判定手段の判定結果に基づき、前記始動条件が成立している場合において、前記検出された機関温度パラメータが表す前記内燃機関の温度が第2所定温度以下のときに、当該第2所定温度を上回っているときよりも、前記気筒内への吸入空気の充填効率が高くなるように、前記充填効率変更機構を制御するとともに、前記始動条件が成立しているときに、前記第1回転機と前記蓄電装置との間における電力の授受を制御する第1回転機制御を実行することにより、前記内燃機関を始動させることを特徴とする動力装置。
【請求項8】
前記制御装置および前記蓄電装置に電気的に接続され、当該蓄電装置から供給された電力を動力に変換し、前記被駆動部に機械的に連結されたロータから出力するとともに、当該ロータに入力された動力を電力に変換可能な第2回転機をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1回転機制御の実行中、前記出力部への駆動力の伝達に起因する前記被駆動部の速度変化が発生しないように、前記第1回転機および前記第2回転機の動作を制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の動力装置。
【請求項9】
不動の第2ステータと、当該第2ステータに対して相対的に回転自在の第3ロータおよび第4ロータとを有し、当該第3ロータが前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結され、当該第4ロータが前記被駆動部に機械的に連結されるとともに、当該第2ステータが前記制御装置および前記蓄電装置に電気的に接続された第2回転機をさらに備え、
前記第2ステータは、円周方向に並んだ複数の第2電機子で構成され、電力の供給に伴って当該複数の第2電機子に発生する第2電機子磁極により、前記円周方向に回転する回転磁界を発生させる第2電機子列を有し、
前記第3ロータは、前記第2電機子列に対向するように配置された第2磁極列を有し、当該第2磁極列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並ぶとともに隣り合う各2つが互いに異なる極性を有する複数の第2磁極で構成され、
前記第4ロータは、前記第2電機子列と前記第2磁極列の間に配置された第2軟磁性体列を有し、当該第2軟磁性体列は、互いに間隔を存して前記円周方向に並んだ複数の第2軟磁性体で構成され、
前記第2電機子磁極の数と前記第2磁極の数と前記第2軟磁性体の数との比が、1:n:(1+n)/2(ただしn≠1)となるように設定されており、
前記制御装置は、前記第1回転機制御の実行中、前記出力部への駆動力の伝達に起因する前記被駆動部の速度変化が発生しないように、前記第1回転機および前記第2回転機の動作を制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の動力装置。
【請求項10】
前記制御装置および前記蓄電装置に電気的に接続され、当該蓄電装置から供給された電力を動力に変換し、前記被駆動部に機械的に連結されたロータから出力するとともに、当該ロータに入力された動力を電力に変換可能な第2回転機と、
互いの間で動力を伝達可能で、当該動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように構成された第1要素、第2要素および第3要素を有する動力伝達機構と、をさらに備え、
前記第1ロータおよび前記第2要素ならびに前記第2ロータおよび前記第1要素の一方が、前記内燃機関の前記出力部に機械的に連結され、前記第1ロータおよび前記第2要素ならびに前記第2ロータおよび前記第1要素の他方が、前記被駆動部に機械的に連結されるとともに、前記第3要素が前記ロータに機械的に連結されており、
前記制御装置は、前記第1回転機制御の実行中、前記出力部への駆動力の伝達に起因する前記被駆動部の速度変化が発生しないように、前記第1回転機および前記第2回転機の動作を制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の動力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2011−84114(P2011−84114A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236701(P2009−236701)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】