説明

半導体ウエハの外観検査方法、及び、外観検査補助装置

【課題】 本発明は、半導体ウエハの下面の外観異常箇所が、何れの半導体素子領域に存在しているかを正確に識別することができる外観検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数の半導体素子領域52が形成された半導体ウエハ50の下面50bの外観異常を検査する方法であって、半導体ウエハ50の下面50bに各半導体素子領域52を示す映像を投影した状態で、半導体ウエハ50の下面50bの外観異常箇所56を目視で特定する検査工程を有する外観検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの外観を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、半導体素子の製造時には、目視によって半導体ウエハの外観検査が行われる。例えば、半導体ウエハの表面にキズがある箇所や、半導体ウエハの表面に異物が固着している箇所は、外観異常箇所として特定される。外観異常箇所が存在する半導体素子領域にはマーキングがされる。後にその半導体素子領域が半導体チップ(半導体素子)に分離されたときには、マーキングの有無によって半導体チップが良品であるか否かが識別可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−129383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般には、外観検査は、半導体ウエハの上面(実装時にワイヤーボンディングにより接続される面)に対して行われる。しかしながら、IGBT等の大電流が流れる半導体素子では、電極の異常による発熱の影響が大きいため、半導体ウエハの下面(実装時に導電性ペーストやハンダにより接続される面)に対しても外観検査が行われる。半導体チップは、通常、上面が視認可能な状態で取り扱われるので、下面の外観検査において外観異常箇所を特定した場合には、外観異常箇所が存在する半導体素子領域の上面(外観検査する面と反対の面)にマーキングをする必要がある。このため、外観異常箇所が存在する半導体素子領域を正確に識別し、識別した半導体素子領域の上面にマーキングを行う必要がある。
しかしながら、半導体ウエハの下面には、通常は、略全面に亘って一様に電極が形成される。このため、半導体ウエハの下面を外観検査する際には、特定した外観異常箇所が何れの半導体素子領域に存在するのかを正確に識別することが困難である。このため、従来は、外観異常箇所の周辺の半導体素子領域を不良と判断して、これらの半導体素子領域の上面にマーキングを行っていた。このため、実際には外観異常箇所が存在していない半導体素子領域にまでマーキングが行われており、製造歩留まりが低下するという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みて創作されたものであり、半導体ウエハの下面の外観異常箇所が、何れの半導体素子領域に存在しているかを正確に識別することができる外観検査方法と、その外観検査方法に用いることが可能な外観検査補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外観検査方法は、複数の半導体素子領域が形成された半導体ウエハの下面の外観異常を検査する。この外観検査方法は、半導体ウエハの下面に各半導体素子領域を示す映像を投影した状態で、半導体ウエハの下面の外観異常箇所を目視で特定する検査工程を有する。
この外観検査方法によれば、下面に投影された映像により各半導体素子領域を視認することができる。このため、外観異常箇所を目視で特定したときに、その外観異常箇所が何れの半導体素子領域に存在しているかを正確に識別することができる。したがって、外観異常箇所が存在していない半導体素子領域を不良と判断することが防止される。これにより、半導体素子の製造歩留まりを向上させることができる。
【0007】
上述した外観検査方法は、半導体ウエハの下面の画像を撮影し、その撮影した画像に基づいて外観異常のおそれがある潜在的異常箇所を抽出する抽出工程をさらに有していることが好ましい。そして、検査工程では、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域と、潜在的異常箇所が存在しない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することが好ましい。
なお、「区別する」とは、各半導体素子領域が、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域であるのか、潜在的異常箇所が存在しない半導体素子領域であるのかを識別可能な状態で投影することを意味する。
この外観検査方法では、検査工程の前に、撮影した画像に基づいて潜在的異常箇所を抽出する抽出工程が行われる。潜在的異常箇所の抽出は、画像処理等によって短時間で行うことができる。但し、抽出工程(すなわち、画像に基づく検査)では、全ての外観異常箇所を抽出することができるが、外観異常箇所ではない箇所まで抽出されてしまう。すなわち、抽出工程で抽出される潜在的異常箇所には、外観異常箇所と、外観異常箇所でない箇所が含まれる。このため、抽出工程の後の検査工程において、作業者の目視によって、潜在的異常箇所が外観異常箇所であるか否かを最終的に判断する。検査工程においては、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域に他の半導体素子領域と区別した映像が投影される。このため、検査工程において、作業者は、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域を容易に識別することができ、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域だけを検査することができる。このように、この外観検査方法では、抽出工程で潜在的異常箇所を抽出し、抽出された潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域を目視により検査する。全ての半導体素子領域を目視により検査する必要がないので、より短時間で外観検査を行うことができる。また、外観異常箇所は最終的に目視により特定するので、正確に外観異常箇所を特定することができる。
【0008】
上述した外観検査方法は、検査工程で特定された外観異常箇所が存在する半導体素子領域の上面にマーキングするマーキング工程をさらに有することが好ましい。
この方法によれば、外観異常箇所が存在する半導体素子領域の上面のみにマーキングをすることができる。
【0009】
上述した外観検査方法では、検査工程において、外観異常箇所を特定すると、外観異常箇所が存在する半導体素子領域と、外観異常箇所が存在しない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することが好ましい。
このような構成によれば、外観異常箇所が存在する半導体素子領域を容易に識別することができる。
【0010】
上述した外観検査方法では、検査工程において、半導体ウエハの上面に形成されているアライメントマークを基準として位置決めして、各半導体素子領域を示す映像を投影することが好ましい。
このような構成によれば、半導体ウエハの上面に形成されている各半導体素子領域の構造に正確に対応させて、半導体ウエハの下面に各半導体素子領域を示す映像を投影することができる。
【0011】
また、本発明は、上述した外観検査方法を好適に実施することができる外観検査補助装置を提供する。この外観検査補助装置は、複数の半導体素子領域が形成された半導体ウエハの下面の外観異常の検査を補助する。この外観検査補助装置は、半導体ウエハの下面に各半導体素子領域を示す映像を投影する投影手段を有する。
この外観検査補助装置を用いることで、外観異常箇所を特定したときに、その外観異常箇所が何れの半導体素子領域に存在しているかを正確に識別することができる。
【0012】
上述した外観検査補助装置は、半導体ウエハの下面の画像を撮影する撮影手段と、撮影された画像に基づいて外観異常のおそれがある潜在的異常箇所を抽出する抽出手段をさらに有することが好ましい。そして、投影手段が、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域と、潜在的異常箇所が存在しない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することが好ましい。
このような構成によれば、外観異常を検査する際に、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域に他の半導体素子領域と区別した映像を投影することができる。このため、作業者は、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域を容易に識別することができ、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域だけを検査することができる。
【0013】
上述した外観検査補助装置は、半導体素子領域を選択する選択手段と、半導体ウエハの上面のうち、選択された半導体素子領域にマーキングするマーキング手段をさらに有することが好ましい。
このような外観検査補助装置では、外観異常の検査において外観異常箇所を特定したときに、作業者が、外観異常箇所が存在する半導体素子領域を選択手段によって選択する。そして、選択された半導体素子領域には、マーキング手段によってマーキングがされる。このため、外観異常箇所が存在する半導体素子領域に正確にマーキングすることができる。
【0014】
上述した外観検査補助装置は、投影手段が、選択された半導体素子領域と、選択されていない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することが好ましい。
このような構成によれば、選択された半導体素子領域が半導体ウエハの下面に区別して投影されるので、例えば、誤って外観異常箇所が存在しない半導体素子領域を選択してしまった場合等に、作業者がその誤りに即座に気づくことができる。
【0015】
上述した外観検査補助装置は、投影手段が、半導体基板の下面にアイコンを投影することが好ましい。そして、選択手段の移動操作によって、アイコンの投影位置を移動可能であり、選択手段の選択操作によって、選択操作時にアイコンが重なっている半導体素子領域が選択されることが好ましい。
このような構成によれば、作業者は、半導体ウエハから視点を動かすことなく、半導体素子領域を選択することができる。したがって、作業者が、誤って外観異常箇所が存在しない半導体素子領域を選択してしまうことが防止される。
【0016】
上述した外観検査補助装置は、半導体ウエハの上面に形成されているアライメントマークを基準として位置決めして、投影手段が各半導体素子領域を示す映像を投影する位置を調整する投影位置調整手段をさらに有していることが好ましい。
このような構成によれば、半導体ウエハの上面に形成されている各半導体素子領域の構造に正確に対応させて、半導体ウエハの下面に各半導体素子領域を示す映像を投影することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体ウエハの下面に外観異常箇所が存在する半導体素子領域を正確に特定することができる。また、外観検査の作業効率を向上させることができるとともに、外観検査の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】検査工程における第1実施例の外観検査補助装置10の概略構成を示す図。
【図2】第1実施例の外観検査補助装置10によって映像が投影された状態における半導体ウエハ50の下面50bの平面図。
【図3】マーキング工程における第1実施例の外観検査補助装置10の概略構成を示す図。
【図4】検査工程における第2実施例の外観検査補助装置110の概略構成を示す図。
【図5】第2実施例の外観検査補助装置10によって映像が投影された状態における半導体ウエハ50の下面50bの平面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
第1実施例に係る半導体ウエハの外観検査工程及び外観検査補助装置について説明する。図1は、外観検査補助装置10の概略構成を示している。外観検査補助装置10は、半導体ウエハ50の外観検査を行う際に用いられる。図示していないが、半導体ウエハ50の上面50aと下面50bには、電極が形成されている。上面50aには、半導体素子領域ごとに区分して電極が形成されている。下面50bには、全面に亘って電極が形成されている。また、上面50aには、2つのアライメントマークが形成されている。
図1に示すように、外観検査補助装置10は、ステージ12、プロジェクタ14、位置調整機構16、位置調整用カメラ18a、18b、制御装置20、マウス24、記憶装置26、ステージ28、及び、インクジェットプリンタ30を備えている。
【0020】
ステージ12には、半導体ウエハ50が載置される。図1に示すように、半導体ウエハ50は、上面50aがステージ12に接触し、下面50bが上方を向くように載置される。ステージ12には、貫通孔12a、12bが形成されている。半導体ウエハ50は、上面50aのアライメントマークが貫通孔12a、12b内に位置するように載置される。
【0021】
位置調整用カメラ18aは、貫通孔12aを通して、半導体ウエハ50の上面50aに形成されているアライメントマークの一方を撮影する。位置調整用カメラ18bは、貫通孔12bを通して、半導体ウエハ50の上面50aに形成されているアライメントマークの他方を撮影する。位置調整用カメラ18a、18bで撮影された画像データは、位置調整機構16に入力される。
【0022】
位置調整機構16は、ステージ12を水平面内で平行移動、及び、回転移動させる。位置調整機構16は、位置調整用カメラ18a、18bに接続されている。位置調整機構16は、位置調整用カメラ18a、18bで撮影されるアライメントマークが予め定められた位置に存在するように、ステージ12(すなわち、半導体ウエハ50)を移動させる。
【0023】
プロジェクタ14は、ステージ12の上方に設置されている。プロジェクタ14は、ステージ12上の半導体ウエハ50の下面50bに、映像を投影する。図2は、プロジェクタ14により映像が投影された状態における半導体ウエハ50の下面50bの平面図を示している。なお、図2では、投影されている映像を点線で示している。図2に示すように、プロジェクタ14は、半導体ウエハ50の下面50bに、各半導体素子領域52の範囲を示す映像(すなわち、各半導体素子領域52の境界を示す映像)を投影する。また、プロジェクタ14は、半導体ウエハ50の下面50bにアイコン54を投影する。図1に示すように、プロジェクタ14は、制御装置20に接続されている。プロジェクタ14の動作は、制御装置20により制御される。
【0024】
ステージ28には、半導体ウエハ50が載置される。図3に示すように、半導体ウエハ50は、下面50bがステージ28に接触し、上面50aが上方を向くように載置される。
【0025】
インクジェットプリンタ30は、ステージ28の上方に設置されている。インクジェットプリンタ30は、ステージ28上の半導体ウエハ50の上面50aにインクを塗布する。インクジェットプリンタ30は、制御装置20に接続されている。インクジェットプリンタ30の動作は、制御装置20により制御される。
【0026】
制御装置20は、プロジェクタ14、インクジェットプリンタ30、マウス24、及び、記憶装置26に接続されている。
制御装置20は、プロジェクタ14の動作を制御する。プロジェクタ14により映像を投影している際にマウス24が移動されると、制御装置20は、アイコン54の投影位置を移動させる。したがって、作業者は、マウス24を操作してアイコン54を移動させることができる。作業者は、半導体素子領域52上にアイコン54を移動させ、マウス24をクリックすることで、その半導体素子領域52を選択することができる。半導体素子領域52が選択されると(すなわち、マウス24がクリックされると)、制御装置20は、図2に示すように、選択された半導体素子領域52aに特定の色(選択されていない半導体素子領域52に投影される色と異なる色)を投影する。また、制御装置20は、選択された半導体素子領域52aの位置データを、記憶装置26に記憶させる。
また、制御装置20は、インクジェットプリンタ30の動作を制御する。制御装置20は、記憶装置26に記憶されている位置データをインクジェットプリンタ30に入力する。インクジェットプリンタ30は、入力された位置データに対応する半導体素子領域52の上面50aにインクを塗布する。
【0027】
次に、外観検査補助装置10を用いた外観検査方法について説明する。
最初に、図1に示すように、半導体ウエハ50をステージ12上に載置する。次に、位置調整用カメラ18a、18bで半導体ウエハ50のアライメントマークを撮影しながら、アライメントマークが所定位置に存在するように位置調整機構16によってステージ12を移動させる。これによって、プロジェクタ14と半導体ウエハ50の相対位置関係が所定の位置関係とされる。
【0028】
(検査工程)
次に、プロジェクタ14によって、半導体ウエハ50の下面50bに、図2に示す映像(半導体素子領域52の範囲を示す映像とアイコン54)を投影する。上述したように、半導体ウエハ50の上面50aに形成されているアライメントマークを基準として半導体ウエハ50が位置決めされているので、半導体素子領域52の範囲を示す映像が、半導体ウエハ50の上面50a側の構造に対応した位置に正確に投影される。
半導体ウエハ50の下面50bに映像を投影したら、作業者の目視によって、半導体ウエハ50の下面50bの外観を検査する。すなわち、下面50bに異物の固着やキズ等の外観異常箇所がないかを検査する。下面50bに半導体素子領域52の範囲を示す映像が投影されているので、外観異常箇所を特定した場合に、作業者は特定した外観異常箇所が何れの半導体素子領域52に存在しているかを正確に認識することができる。このため、外観異常箇所が存在していないにもかかわらず、外観異常箇所に近い位置の半導体素子領域52が不良として認識されることが防止される。作業者は、外観異常箇所を特定したら、マウス24を操作することによって、特定した外観異常箇所が存在する半導体素子領域52を選択する(すなわち、アイコン54をその半導体素子領域52上に移動させてマウス24をクリックする)。これによって、選択された半導体素子領域52に特定の色が投影される。例えば、図2に示すように、キズ56が存在する半導体素子領域52aを選択すると、半導体素子領域52aに他の半導体素子領域52と異なる色が投影される。このため、作業者は、外観異常箇所が存在する半導体素子領域52が選択されたことを半導体ウエハ50の下面50bを視認することで確認することができる。また、半導体素子領域52が選択されると、制御装置20は、選択された半導体素子領域52の位置データを記憶装置26に記憶させる。全ての半導体素子領域52の検査が終了すると、外観異常箇所が存在する全ての半導体素子領域52の位置データが、記憶装置26に記憶された状態となる。
【0029】
(マーキング工程)
検査工程が終了したら、図3に示すように、半導体ウエハ50をステージ28上に載置する。次に、半導体ウエハ50の上面50aに形成されているアライメントマークを図示しない位置調整用カメラで撮影しながら、アライメントマークが所定位置に存在するようにステージ28を移動させる。これによって、インクジェットプリンタ30と半導体ウエハ50の相対位置関係が所定の位置関係とされる。
次に、インクジェットプリンタ30を作動させる。インクジェットプリンタ30の作動時には、制御装置20が、記憶装置26に記憶されている位置データ(すなわち、外観異常箇所が存在している半導体素子領域52の位置データ)を読み出し、インクジェットプリンタ30に入力する。インクジェットプリンタ30は、入力された位置データに対応する半導体素子領域52の上面50aにインクを吹き付けて、マーキングを行う。これによって、下面50bに外観異常箇所が存在する半導体素子領域52の上面50aにマークが付される。
【0030】
以上に説明したように、この外観検査方法では、半導体ウエハ50の下面50bに各半導体素子領域52を示す映像を投影した状態で、半導体ウエハ50の下面50bの外観を目視により検査する。したがって、作業者は、特定した外観異常箇所が何れの半導体素子領域52に存在しているかを正確に認識することができる。外観異常箇所が存在しない半導体素子領域52が不良として認識され、その半導体素子領域52の上面50aにマーキングがされることが防止される。
また、この外観検査方法では、半導体ウエハ50の下面50bにアイコン54を投影し、マウス24によってアイコン54を操作することで、外観異常箇所が存在する半導体素子領域52を選択する。作業者は、半導体ウエハ50の下面50bから視点を動かすことなく外観異常箇所が存在する半導体素子領域52を選択することができる。これにより、作業者の作業効率が向上する。また、誤って、外観異常箇所が存在しない半導体素子領域52を選択してしまうことが防止される。
また、この外観検査方法では、選択された半導体素子領域52に、選択されていない半導体素子領域52とは異なる色を投影する。このため、作業者は、半導体ウエハ50の下面50bから視点を動かすことなく、外観異常箇所が存在する半導体素子領域52が選択されたことを確認することができる。これにより、作業者の作業効率が向上する。また、誤って、外観異常箇所が存在しない半導体素子領域52を選択してしまうことが防止される。
【0031】
なお、上述した外観検査方法では、マウス24の操作によって、半導体ウエハ50の下面50bに投影したアイコン54を移動させて、外観異常箇所が存在する半導体素子領域52を選択した。しかしながら、半導体素子領域52の選択は種々の方法により行うことができる。例えば、別途ディスプレイを用意し、そのディスプレイに各半導体素子領域52と同様に区画された画像を表示し、対象の半導体素子領域52に対応する区画をマウス等でクリックすることでその半導体素子領域52を選択するようにしてもよい。また、作業者が目視により選択する半導体素子領域52の位置を確認し、確認した位置をインクジェットプリンタ30に入力するようにしてもよい。
【0032】
また、上述した外観検査方法では、半導体ウエハ50の下面50bに各半導体素子領域52の境界を投影した。しかしながら、投影する映像は、各半導体素子領域52の範囲を認識できる映像であれば何れの映像であってもよい。
【実施例2】
【0033】
次に、第2実施例の外観検査方法、及び、外観検査補助装置について説明する。図4は、第2実施例の外観検査補助装置110の概略構成を示している。第2実施例の外観検査補助装置110は、第1実施例の外観検査補助装置10の構成に加えて、カメラ40を備えている。
【0034】
第2実施例の外観検査補助装置110では、プロジェクタ14が、ステージ12の上方の投影位置とステージ12外の待機位置の間で移動可能とされている。また、カメラ40は、ステージ12の上方の撮影位置とステージ12外の待機位置の間で移動可能とされている。カメラ40は、ステージ12上に載置される半導体ウエハ50の下面50bの画像を撮影する。カメラ40は、制御装置20に接続されている。カメラ40が撮影した画像データは、制御装置20に入力される。
【0035】
次に、第2実施例の外観検査方法について説明する。
最初に、図4に示すように、半導体ウエハ50をステージ12上に載置する。次に、第1実施例と同様にして、位置調整機構16によってステージ12の位置(すなわち、半導体ウエハ50の位置)を調整する。
【0036】
(抽出工程)
次に、カメラ40を撮影位置に移動させる。そして、カメラ40によって、半導体ウエハ50の下面50bの画像を撮影する。カメラ40が撮影した画像データは、制御装置20に入力される。制御装置20は、カメラ40から入力された画像データの中から、各画素が示す光学的特性値の分布が、正常に電極が形成されている場合に得られる分布となっていない箇所(以下では、潜在的異常箇所という)を抽出する。画像データから得られる潜在的異常箇所は、外観異常箇所である場合と、外観異常箇所でない場合(エアブロー等で除去可能な異物が付着している場合等)とがある。すなわち、潜在的異常箇所は、外観異常箇所であるおそれがある箇所である。潜在的異常箇所を抽出すると、制御装置20は、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域52を識別する。画像の撮影時に、アライメントマークを基準として半導体ウエハ50が位置決めされているので、制御装置20は、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域52を正確に識別することができる。制御装置20は、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域52の位置データを記憶装置26に記憶させる。
【0037】
(検査工程)
次に、カメラ40を待機位置に移動させ、プロジェクタ14を投影位置に移動させる。そして、プロジェクタ14によって、半導体ウエハ50の下面50bに、映像(半導体素子領域52の範囲を示す映像とアイコン54)を投影する。このとき、制御装置20は、記憶装置26が記憶している位置データ(潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域52の位置データ)を用いて、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域52を明るく投影し、潜在的異常箇所が存在しない半導体素子領域52を暗く投影するようにプロジェクタ14に指令する。したがって、半導体ウエハ50の下面50bには、例えば図5に示すように、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域52bが他の半導体素子領域52より明るく投影される。
半導体ウエハ50の下面50bに映像を投影したら、作業者の目視によって、半導体ウエハ50の下面50bの外観を検査する。このとき、暗く投影されている半導体素子領域52には潜在的異常箇所が存在しない(すなわち、外観異常箇所が存在する可能性がない)ので、作業者は明るく投影されている半導体素子領域52のみを検査すればよい。これによって、作業者の負担が軽減され、作業効率が向上する。作業者は、外観異常箇所を特定したら、第1実施例と同様にして、その外観異常箇所が存在する半導体素子領域52を選択する。これによって、選択された半導体素子領域52に特定の色が投影されるとともに、選択された半導体素子領域52の位置データが記憶装置26に記憶される。明るく投影されている半導体素子領域52の全ての検査が終了すると、外観異常箇所が存在する全ての半導体素子領域52の位置データが、記憶装置26に記憶された状態となる。
【0038】
(マーキング工程)
目視による外観検査が終了したら、第1実施例と同様にしてマーキング工程を行う。これによって、下面50bに外観異常箇所が存在する半導体素子領域52の上面50aにマークが付される。
【0039】
以上に説明したように、第2実施例の外観検査方法では、抽出工程によって潜在的異常箇所が抽出される。そして、検査工程において、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域52が、潜在的異常箇所が存在しない半導体素子領域52とは区別して投影される。したがって、作業者は、目視による検査が必要な半導体素子領域52を容易に認識することができる。このように、第2実施例の外観検査方法では、目視による外観検査を必要最小限の半導体素子領域52に対してのみ行うので、作業効率を向上させることができる。また、外観異常箇所の最終的な特定は作業者の目視により行うので、確実に外観異常箇所を特定することができる。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
10:外観検査補助装置
12:ステージ
12a:貫通孔
12b:貫通孔
14:プロジェクタ
16:位置調整機構
18a:位置調整用カメラ
18b:位置調整用カメラ
20:制御装置
24:マウス
26:記憶装置
28:ステージ
30:インクジェットプリンタ
40:カメラ
50:半導体ウエハ
50a:上面
50b:下面
52:半導体素子領域
54:アイコン
56:キズ
110:外観検査補助装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子領域が形成された半導体ウエハの下面の外観異常を検査する方法であって、半導体ウエハの下面に各半導体素子領域を示す映像を投影した状態で、半導体ウエハの下面の外観異常箇所を目視で特定する検査工程を有する外観検査方法。
【請求項2】
半導体ウエハの下面の画像を撮影し、その撮影した画像に基づいて外観異常のおそれがある潜在的異常箇所を抽出する抽出工程をさらに有し、
検査工程では、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域と、潜在的異常箇所が存在しない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することを特徴とする請求項1に記載の外観検査方法。
【請求項3】
検査工程で特定された外観異常箇所が存在する半導体素子領域の上面にマーキングするマーキング工程をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の外観検査方法。
【請求項4】
検査工程では、外観異常箇所を特定すると、外観異常箇所が存在する半導体素子領域と、外観異常箇所が存在しない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の外観検査方法。
【請求項5】
検査工程では、半導体ウエハの上面に形成されているアライメントマークを基準として位置決めして、各半導体素子領域を示す映像を投影することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の外観検査方法。
【請求項6】
複数の半導体素子領域が形成された半導体ウエハの下面の外観異常の検査を補助する外観検査補助装置であって、
半導体ウエハの下面に各半導体素子領域を示す映像を投影する投影手段を有する外観検査補助装置。
【請求項7】
半導体ウエハの下面の画像を撮影する撮影手段と、
撮影された画像に基づいて外観異常のおそれがある潜在的異常箇所を抽出する抽出手段、
をさらに有し、
投影手段が、潜在的異常箇所が存在する半導体素子領域と、潜在的異常箇所が存在しない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することを特徴とする請求項6に記載の外観検査補助装置。
【請求項8】
半導体素子領域を選択する選択手段と、
半導体ウエハの上面のうち、選択された半導体素子領域にマーキングするマーキング手段、
をさらに有することを特徴とする請求項6または7に記載の外観検査補助装置。
【請求項9】
投影手段が、選択された半導体素子領域と、選択されていない半導体素子領域とを区別して、各半導体素子領域を示す映像を投影することを特徴とする請求項8に記載の外観検査補助装置。
【請求項10】
投影手段が、半導体基板の下面にアイコンを投影し、
選択手段の移動操作によって、アイコンの投影位置を移動可能であり、
選択手段の選択操作によって、選択操作時にアイコンが重なっている半導体素子領域が選択されることを特徴とする請求項8または9に記載の外観検査補助装置。
【請求項11】
半導体ウエハの上面に形成されているアライメントマークを基準として位置決めして、投影手段が各半導体素子領域を示す映像を投影する位置を調整する投影位置調整手段をさらに有していることを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の外観検査補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−169470(P2010−169470A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10915(P2009−10915)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】