説明

半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、半導体装置、及びその製造方法

【課題】
保存安定性に優れ、かつフリップチップ接続をした際にボイドの発生が充分に抑制され、良好な接続信頼性を得ることができる半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いた半導体装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤、フラックス剤を必須成分とし、硬化促進剤が4級ホスホニウム塩である半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いた半導体装置及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、半導体装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化の進展に伴って、半導体装置に対して小型化、薄型化及び電気特性の向上(高周波伝送への対応など)が求められている。これに伴い、従来のワイヤーボンディングで半導体チップを基板に実装する方式から、半導体チップにバンプと呼ばれる導電性の突起電極を形成して基板電極と直接接続するフリップチップ接続方式への移行が始まっている。
半導体チップに形成されるバンプとしては、はんだや金で構成されたバンプが用いられているが、近年の微細接続化に対応するために、銅バンプの先端にはんだが形成された構造のバンプが用いられるようになってきている。
また、高信頼性化のために、金属接合による接続が求められており、はんだバンプを用いたC4接続や銅バンプの先端にはんだが形成された構造のバンプによるはんだ接合だけでなく、金バンプを用いた場合でも、基板電極側にはんだを形成して、金-はんだ接合させる接続方法が採用されている。
【0003】
さらに、フリップチップ接続方式では半導体チップと基板の熱膨張係数差に由来する熱応力が接続部に集中して接続部を破壊するおそれがあることから、この熱応力を分散して接続信頼性を高めるために、半導体チップと基板の間の空隙を樹脂で封止充てんする必要がある。一般に、樹脂の封止充てんは、半導体チップと基板をはんだなどを用いて接続した後、空隙に液状封止樹脂を毛細管現象を利用して注入する方式が採用されている。
【0004】
チップと基板を接続する際には、はんだ表面の酸化膜を還元除去して金属接合を容易にするために、ロジンや有機酸などからなるフラックスが一般的に用いられている。ここで、フラックスの残渣が残ると、液状封止樹脂を注入した場合にボイドと呼ばれる気泡発生の原因になったり、酸成分によって配線の腐食が発生し、接続信頼性が低下することから、残渣を洗浄する工程が必須であった。しかし、接続ピッチの狭ピッチ化に伴い、半導体チップと基板の間の空隙が狭くなっているため、フラックス残渣の洗浄が困難になる場合があった。さらに、半導体チップと基板の間の狭い空隙に液状封止樹脂を注入するのに長時間を要して生産性が低下するという課題があった。
【0005】
このような液状封止樹脂の課題を解決するために、はんだ表面の酸化膜を還元除去する性質(フラックス活性)を備えた封止樹脂を用いて、封止樹脂を基板に供給した後、半導体チップと基板を接続すると同時に、半導体チップと基板の間の空隙を樹脂で封止充てんし、フラックス残渣の洗浄を省略することが可能となる先供給方式と呼ばれる接続方法及び先供給方式に対応した封止樹脂が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−107006号公報
【特許文献2】特開2007−284471号公報
【特許文献3】特開2007−326941号公報
【特許文献4】特開2009−203292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、先供給方式では、はんだ接合を行う際の高温接続条件に封止樹脂がさらされるために、ボイドが発生して接続信頼性を低下させるという課題がある。
【0008】
また、高温接続条件においてはんだ接合を行った後、室温まで冷却される過程において、半導体チップと基板の熱膨張係数差によって発生する熱応力が接続部に集中して、接続部にクラックなどが発生しないように、はんだ接合時に、封止樹脂の硬化を進行させて接続部を補強する必要がある。これに対して、封止樹脂の反応性を向上させると、はんだ接合する前に封止樹脂が硬化してしまい接続不良が発生したり、封止樹脂の保存安定性が低下するという課題がある。
【0009】
そこで本発明は、保存安定性に優れ、かつフリップチップ接続をした際にボイドの発生が充分に抑制され、良好な接続信頼性を得ることができる半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いた半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤、フラックス剤を必須成分とし、硬化促進剤が4級ホスホニウム塩である半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物(以下、単に「エポキシ樹脂組成物」ともいう。)を提供する。
【0011】
かかる半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物によれば、保存安定性に優れ、かつフリップチップ接続をした際にボイドの発生が充分に抑制され、良好な接続信頼性を得ることができる。
【0012】
上記4級ホスホニウム塩は、保存安定性をより向上させることができる点から、テトラアルキルホスホニウム塩又はテトラアリールホスホニウム塩であることが好ましい。
【0013】
上記エポキシ樹脂組成物は、低熱膨張化を図るために、無機フィラをさらに含むことが好ましい。
【0014】
上記エポキシ樹脂組成物は、取り扱い性を向上させることができる点から、フィルム状に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記エポキシ樹脂を半導体チップ又は基板上に供給する第一工程と、半導体チップと基板とを位置合わせした後、半導体チップと基板とをフリップチップ接続するとともに、半導体チップと基板との間の空隙をエポキシ樹脂組成物によって封止充てんする第二工程とを備える半導体装置の製造方法を提供する。
【0016】
さらに本発明は、基板と、該基板と電気的に接続された半導体チップと、上記エポキシ樹脂組成物の硬化物からなり基板と半導体チップとの間の空隙を封止する封止樹脂と、を備える半導体装置を提供する。
【0017】
かかる半導体装置は、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いているので、接続信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保存安定性に優れ、かつフリップチップ接続をした際にボイドの発生が充分に抑制され、良好な接続信頼性を得ることができる半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いた半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物、フラックス剤、硬化促進剤を必須成分とする。
【0021】
エポキシ樹脂としては、2官能以上であれば特に限定されず、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド骨格含有エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型多官能エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有多官能エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格含有多官能エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、その他各種多官能エポキシ樹脂を用いることができる。これらの中でも、低粘度化、低吸水率、高耐熱性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有多官能エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格含有多官能エポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂の性状は25℃で液状でも固形でも構わないが、固形のエポキシ樹脂では、例えばはんだを加熱溶融させて接続する場合、その融点又は軟化点がはんだの融点よりも低いものを用いることが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
酸無水物としては、例えば、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ポリアゼライン酸無水物、アルキルスチレン−マレイン酸無水物共重合体、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを用いることができる。これらの中でも、特に、耐熱性や耐湿性の観点から、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを用いることが好ましい。これらは単独又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0023】
酸無水物の配合量としては、エポキシ樹脂との当量比(エポキシ基の数と酸無水物から発生するカルボキシル基の数との比:エポキシ基の数/カルボキシル基の数)が0.5〜1.5となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2である。当量比が0.5より小さい場合、カルボキシル基が過剰に残存し、吸水率が上昇したり、耐湿信頼性が低下するおそれがあり、当量比が1.5より大きい場合、硬化が十分進行しないおそれがある。
【0024】
フラックス剤としてはアルコール類、フェノール類、カルボン酸類の中から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。
【0025】
アルコール類は、分子内に少なくとも2個以上のアルコール性水酸基を有する化合物であると好ましい。その具体例としては、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール、1,5−ペンタンジオール、2,5−フランジメタノール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、リビトール、ソルビトール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、N−ブチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソプロパノールアミン、ビス(2−ヒドロキシメチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,1’,1’’,1’’’−(エチレンジニトリロ)テトラキス(2−プロパノール)が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
フェノール類は、少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であると好ましい。その具体例としては、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシハイドロキノン、ピロガロール、メチリデンビフェノール(ビスフェノールF)、イソプロピリデンビフェノール(ビスフェノールA)、エチリデンビフェノール(ビスフェノールAD)、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシアセトフェノン、ポリp−ビニルフェノールが挙げられる。さらに、少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として、フェノール性水酸基を分子内に少なくとも1個以上有する化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物とハロメチル基、アルコキシメチル基又はヒドロキシルメチル基を分子内に2個有する芳香族化合物、ジビニルベンゼン及びアルデヒド類から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物との重縮合物も用いることができる。
フェノール性水酸基を分子内に少なくとも1個以上有する化合物としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール、ナフトール、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシハイドロキノン、ピロガロール、メチリデンビフェノール(ビスフェノールF)、イソプロピリデンビフェノール(ビスフェノールA)、エチリデンビフェノール(ビスフェノールAD)、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシアセトフェノン、ポリp−ビニルフェノールが挙げられる。
また、ハロメチル基、アルコキシメチル基又はヒドロキシルメチル基を分子内に2個有する芳香族化合物としては、例えば、1,2−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ビス(クロロメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニルが挙げられる。
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド(その水溶液としてホルマリン)、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。
重縮合物としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドの重縮合物であるフェノールノボラック樹脂、クレゾールとホルムアルデヒドとの重縮合物であるクレゾールノボラック樹脂、ナフトール類とホルムアルデヒドとの重縮合物であるナフトールノボラック樹脂、フェノールと1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼンとの重縮合物であるフェノールアラルキル樹脂、ビスフェノールAとホルムアルデヒドの重縮合物、フェノールとジビニルベンゼンとの重縮合物、クレゾールとナフトールとホルムアルデヒドの重縮合物が挙げられ、これらの重縮合物をゴム変性したものや分子骨格内にアミノトリアジン骨格やジシクロペンタジエン骨格を導入したものでもよい。
また、これらの化合物の性状としては、室温において固体状でも液状でも構わないが、金属表面の酸化膜を均一に還元除去し、はんだの濡れ性を阻害しないために、液状のものを用いることが好ましく、例えば、これらのフェノール性水酸基を有する化合物をアリル化することによって液状したものとして、アリル化フェノールノボラック樹脂、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビフェノールが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
カルボン酸類としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよく、25℃で固体状のものが好ましい。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、アリルマロン酸、2,2’−チオジ酢酸、3,3’−チオジプロピオン酸、2,2’−(エチレンジチオ)ジ酢酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、2−エチル−2−ヒドロキシ酪酸、ジチオジグリコール酸、ジグリコール酸、アセチレンジカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、2−イソプロピルリンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、1,3−アセトンジカルボン酸、トリカルバリン酸、ムコン酸、β−ヒドロムコン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、クエン酸、アジピン酸、3−tert−ブチルアジピン酸、ピメリン酸、フェニルシュウ酸、フェニル酢酸、ニトロフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ニトロフェノキシ酢酸、フェニルチオ酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、マンデル酸、ヒドロキシマンデル酸、ジヒドロキシマンデル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、4,4’−ジチオジ酪酸、けい皮酸、ニトロけい皮酸、ヒドロキシけい皮酸、ジヒドロキシけい皮酸、クマリン酸、フェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、カフェ酸、ホモフタル酸、トリル酢酸、フェノキシプロピオン酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ベンジルオキシ酢酸、フェニル乳酸、トロパ酸、3−(フェニルスルホニル)プロピオン酸、3,3−テトラメチレングルタル酸、5−オキソアゼライン酸、アゼライン酸、フェニルコハク酸、1,2−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジ酢酸、ベンジルマロン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、ジシクロヘキシル酢酸、テトラデカン二酸、2,2−ジフェニルプロピオン酸、3,3−ジフェニルプロピオン酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、ピマール酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、アガト酸が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2-ナフトエ酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−フェノキシ安息香酸、ビフェニル−4−カルボン酸、ビフェニル−2−カルボン酸、2−ベンゾイル安息香酸が挙げられる。
これらの中でも、保存安定性や入手容易さの観点から、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、アジピン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、セバシン酸、フェニルコハク酸、ドデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、アビエチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸を用いることが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
これらフラックス剤の配合量は、エポキシ樹脂と酸無水物の総量100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部であり、さらに好ましいのは1〜10質量部である。配合量が0.1質量部より少ない場合には、はんだ表面の酸化膜除去効果が充分に発現されない傾向があり、15質量部を超える場合には、フラックス剤のカルボキシル基とエポキシ樹脂が反応して、保存安定性が低下するおそれがある。
【0029】
硬化促進剤としては、4級ホスホニウム塩であれば特に制限はなく、例えばテトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩のようなテトラアルキルホスホニウム塩やテトラフェニルホスホニウム塩のようなテトラアリールホスホニウム塩、トリアリールホスフィン類やトリアルキルホスフィン類と1,4−ベンゾキノンの付加体を用いることができる。例えば、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムブロマイド、テトラ(4−メチルフェニル)ホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、n−ヘキサドデシルトリ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムジエチルホスホトジチオエート、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加体、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加体、トリ(n−ブチル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加体、トリ(シクロヘキシル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加体が挙げられる。これらの中でも、不純物イオンや保存安定性の観点から、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、n−ヘキサドデシルトリ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレートが好適である。なお、硬化促進剤として広く用いられている、3級アミン類やイミダゾール類を用いた場合には、4級ホスホニウム塩を用いた場合よりも保存安定性が低下する。
【0030】
これら4級ホスホニウム塩の配合量は、エポキシ樹脂と酸無水物の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。配合量が0.01質量部より少ないと硬化性が低下して接続信頼性が低下するおそれがあり、10質量部より多いと保存安定性が低下するおそれがある。
【0031】
エポキシ樹脂組成物の250℃におけるゲル化時間は、3〜30秒であることが好ましく、より好ましくは3〜20秒であり、さらに好ましくは3〜15秒である。3秒より短いと、はんだが溶融する前に硬化するおそれがあり、30秒より長いと生産性が低下したり、硬化が不充分になるおそれがある。なお、ゲル化時間は、エポキシ樹脂組成物を250℃に設定した熱板上に置き、スパチュラなどで攪拌し、攪拌不能になるまでの時間を指す。
【0032】
エポキシ樹脂組成物は、室温においてペースト状であってもフィルム状であってもよいが、取り扱い性の観点からフィルム状をしていることが好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂組成物は、フィルム状に形成するために、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、アクリルゴムが挙げられ、その中でも耐熱性及びフィルム形成性に優れるフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、アクリルゴムが好ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。重量平均分子量としては5000より大きいことが好ましいが、より好ましくは10000以上であり、さらに好ましくは20000以上であり、5000以下の場合にはフィルム形成能が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて、ポリスチレン換算で測定した値である。また、これらの熱可塑性樹脂は単独又は2種以上の混合体や共重合体として使用することもできる。
【0034】
これら熱可塑性樹脂の配合量は、エポキシ樹脂と酸無水物の総量100質量部に対して、5〜200質量部であることが好ましく、より好ましいのは、15〜175質量部であり、さらに好ましいのは、25〜150質量部である。5質量部より少ないと、フィルム形成性が低下し、取り扱いが困難になるおそれがあり、200質量部を超えると耐熱性や信頼性が低下するおそれがある。
【0035】
さらに、エポキシ樹脂組成物は粘度調整や硬化物の物性制御のためにフィラを含んでいてもよい。フィラは有機フィラ、無機フィラのいずれでも構わないが、特に半導体封止充てん用樹脂組成物として使用する場合、低熱膨張化を図るために無機フィラを含んでいることが好ましい。
【0036】
無機フィラとしては、例えば、ガラス、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、カーボンブラック、マイカ、硫酸バリウムが挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用してもよい。また、無機フィラは、2種類以上の金属酸化物を含む複合酸化物(2種類以上の金属酸化物が単に混合されてなるものではなく、金属酸化物同士が化学的に結合して分離不能な状態となっているもの)であってもよい。その具体例としては、二酸化ケイ素と酸化チタン、二酸化ケイ素と酸化アルミニウム、酸化ホウ素と酸化アルミニウム、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムと酸化マグネシウムなどからなる複合酸化物が挙げられる。
【0037】
フィラの形状は破砕状、針状、リン片状、球状と特に限定されないが、分散性や粘度制御の観点から、球状のものを用いることが好ましい。また、フィラのサイズは、フリップチップ接続した際の半導体チップと基板の間の空隙よりも平均粒径が小さいものであればよいが、充てん密度や粘度制御の観点から、平均粒径10μm以下のものが好ましく、5μm以下のものがより好ましく、3μm以下のものが特に好ましい。さらに、粘度や硬化物の物性を調整するために、粒径の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
フィラの配合量は、エポキシ樹脂と酸無水物の総量100質量部に対して、200質量部以下とすることが好ましく、175質量部以下とすることがより好ましい。この配合量が200質量部より多いと、樹脂組成物の粘度が高くなる傾向がある。
【0039】
さらに、エポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸化防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤などの添加剤を配合してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。配合量については、各添加剤の効果が発現するように調整すればよい。
【0040】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物、フラックス剤、硬化促進剤をプラネタリーミキサー、らいかい機、ビーズミルなどを用いて攪拌混合して使用することができる。また、フィラを配合する場合、3本ロールを用いて混練し、フィラを樹脂組成物中に分散させることができる。
【0041】
エポキシ樹脂組成物は、例えば以下に示す方法によりフィルム状(フィルム状樹脂組成物)とすることができる。
熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、酸無水物、フラックス剤、硬化促進剤、フィラ及びその他添加剤をトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒中でプラネタリーミキサーやビーズミルを用いて混合することによってワニスを調製する。得られたワニスを、ナイフコーターやロールコーターを用いて、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート樹脂などのフィルム基材上に塗布した後、有機溶媒を乾燥除去することによってフィルム状樹脂組成物が得られる。
【0042】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて製造される半導体装置について説明する。
【0043】
図1は、本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される半導体装置10は、回路基板7と、半導体チップ5と、回路基板7と半導体チップ5との間に配置された封止樹脂6とを備える。封止樹脂6は、本発明の半導体封止充てん用樹脂組成物の硬化物からなり回路基板7と半導体チップ5との間の空隙を封止している。回路基板7は、インターポーザー等の基板と、この基板の一方の面上に設けられた配線4とを備える。回路基板7の配線4と半導体チップ5とは、複数のバンプ3によって電気的に接続されている。また、回路基板7は、配線4が設けられた面と反対側の面に電極パッド2と、電極パッド2上に設けられたはんだボール1とを有しており、他の回路部材との接続が可能となっている。
【0044】
回路基板7は、通常の回路基板でもよく、また、半導体チップでもよい。回路基板の場合、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミックなどの絶縁基板表面に形成された銅などの金属層の不要な個所をエッチング除去して配線パターンが形成されたもの、絶縁基板表面に銅めっきなどによって配線パターンを形成したもの、絶縁基板表面に導電性物質を印刷して配線パターンを形成したものなどを用いることができる。配線パターンの表面には、低融点はんだ、高融点はんだ、スズ、インジウム、金、ニッケル、銀、銅、パラジウムなどからなる金属層が形成されていてもよく、この金属層は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、複数の金属層が積層された構造をしていてもよい。
【0045】
半導体チップ5としては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウムなどの元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体等、各種半導体を用いることができる。
【0046】
バンプ3は導電性を有する突起部である。その材料としては、低融点はんだ、高融点はんだ、スズ、インジウム、金、銀、銅などからなるものが用いられ、単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、これらの金属が積層された構造をなすように形成されていてもよい。特に広く用いられているものとしては、はんだバンプ、銅バンプ、銅ピラーの先端にはんだが形成されたバンプ、金バンプなどが挙げられる。なお、バンプは半導体チップに形成されていてもよいし、基板に形成されていてもよいし、半導体チップと基板の両方に形成されていてもよい。
【0047】
本発明に係る半導体装置としては、図1に示す半導体パッケージのように、インターポーザーと呼ばれる基板上に半導体チップが搭載され、樹脂封止されたものが挙げられ、具体的には、CSP(チップサイズパッケージ)やBGA(ボールグリッドアレイ)などが挙げられる。また、別の半導体パッケージとしては、半導体チップの電極部を半導体チップ表面上で再配線することによって、インターポーザーを用いないで基板に搭載可能としたものが挙げられ、具体的には、ウエハーレベルパッケージと呼ばれるものが挙げられる。本発明に係る半導体パッケージを搭載する基板としては、通常の回路基板が挙げられ、この基板は、インターポーザーに対してマザーボードと呼ばれるものを指す。
【0048】
次に、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態について、はんだバンプが形成された半導体チップを用いた一例に基づいて以下に示す。
【0049】
(1)エポキシ樹脂組成物を供給する第一工程
エポキシ樹脂組成物がペースト状である場合は、ディスペンサーを用いて、半導体チップ又は基板の所定の位置に塗布する。エポキシ樹脂組成物の供給量は、半導体チップの大きさ、バンプ高さなどによって規定され、半導体チップと基板の間の空隙を隙間なく充てん可能で、かつフリップチップ接続時に半導体チップの側壁を樹脂が伝わって接続装置に付着しないような量に適宜設定される。
また、フィルム状樹脂組成物を用いた場合は、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネートなどによって、半導体チップ又は基板に貼り付ける。また、フィルム状樹脂組成物は半導体チップに貼り付けられてもよく、半導体ウエハにフィルム状樹脂組成物を貼り付けた後、ダイシングして、半導体チップに個片化することによって、フィルム状樹脂組成物を貼り付けた半導体チップを作製することができる。
【0050】
(2)半導体チップと基板をフリップチップ接続する第二工程
半導体チップと基板をフリップチップボンダーなどの接続装置を用いて位置合わせした後、半導体チップと基板をはんだバンプの融点以上の温度で加熱しながら押し付けて、半導体チップと基板を接続するとともに、溶融したエポキシ樹脂組成物によって半導体チップと基板の間の空隙を封止充てんする。この際、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれるフラックス剤によって、はんだバンプ表面の酸化膜が還元除去され、はんだバンプが溶融し、金属接合による接続部が形成される。
また、半導体チップと基板を位置合わせしてはんだバンプの融点より低い温度で半導体チップと基板を押し付けて仮固定した後、リフロー炉で加熱処理することによってはんだバンプを溶融させて半導体チップと基板を接続することによって半導体装置を製造してもよい。
さらに、半導体チップと基板を位置合わせして、はんだバンプが溶融しない温度かつフラックス剤の活性温度以上の温度で加熱しながら押し付けることによって、半導体チップのバンプと基板電極の間の樹脂を排除して半導体チップと基板間の空隙を封止充てんするとともに、はんだ表面の酸化膜を除去した後、再度はんだの融点以上の温度に加熱してはんだバンプを溶融させて半導体チップと基板を接続してもよい。再度はんだの融点以上の温度に加熱する際には、フリップチップボンダーを用いてもよいし、リフロー炉で加熱処理を行ってもよい。
なお、フラックス剤の活性温度とは、はんだ又はスズなどの金属表面の酸化膜を還元する効果を発現し始める温度のことを指す。室温で液状のフラックス剤では、室温以上であれば活性を示す。室温で固形のフラックス剤では、その融点や軟化点以上の温度で液状又は低粘度状態になった際にはんだ又はスズなどの金属表面に均一に濡れて活性を示すことから、活性温度は融点又は軟化点となる。
【0051】
さらに、接続信頼性を高めるために、第二工程で得られた半導体装置を加熱オーブンなどで加熱処理し、エポキシ樹脂組成物の硬化をさらに進行させてもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0053】
[実施例1〜5及び比較例1〜3]
表1に示す組成に基づいて、各材料をトルエン−酢酸エチル溶媒中に固形分濃度が50〜70%になるように溶解混合してワニスを作製し、このワニスをセパレータフィルム(PETフィルム)上にナイフコーターを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させることによって、厚さ25〜30μmのフィルム状樹脂組成物を作製した。
【0054】
【表1】

【0055】
(原材料)
フェノキシ樹脂:ε−カプロラクトン変性フェノキシ樹脂 PKCP80(Inchem Corporation製、製品名)
エポキシ樹脂:トリスフェノールメタン型多官能エポキシ樹脂 EP1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)
酸無水物:3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物と1−イソプロピル−4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物 YH307(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)
フラックス剤1:アジピン酸(シグマアルドリッチ製、製品名、融点152℃)
フラックス剤2:ジフェノール酸(シグマアルドリッチ製、製品名、融点167℃)
硬化促進剤1:テトラ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート PX−4FB(日本化学工業株式会社製、製品名)
硬化促進剤2:n−ヘキサドデシルトリ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート PX−416FB(日本化学工業株式会社製、製品名)
硬化促進剤3:テトラ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフェニルボレート PX−4PB(日本化学工業株式会社製、製品名)
硬化促進剤4:テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート TPP−K(北興化学工業株式会社製、製品名)
硬化促進剤5:トリフェニルホスフィン TPP(北興化学工業株式会社製、製品名)
硬化促進剤6:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール 2PHZ(四国化成工業株式会社製、製品名)
フィラ:球状シリカ SE2050(アドマテックス株式会社製、製品名)
【0056】
[フィルム状樹脂組成物の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたフィルム状樹脂組成物について下記の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0057】
(粘度測定)
粘度は、平行板プラストメータ法に基づき、式(1)及び式(2)に従って、以下の手順で測定した。
15mm角(厚さ0.7mm)のガラス板の上に直径6mmの円形に打ち抜いたフィルム状樹脂組成物を貼り付け、セパレータフィルムをはく離した後、酸化膜付きシリコンチップ(サイズ12mm角、厚さ0.55mm)の酸化膜面がフィルム状樹脂組成物に接するように配置したものを準備した。これを、フリップチップボンダーFCB3(パナソニックファクトリーソリューションズ製、製品名)に配置し、ヘッド温度290℃、ステージ温度50℃、荷重14N、加圧時間5秒(到達250℃)の条件で熱圧着した。樹脂体積を一定と仮定すると式(2)の関係が成立することから、加圧後の半径を顕微鏡で測定し、式(1)に従い、250℃での粘度を算出した。
【0058】
【数1】


η:粘度(Pa・s)
F:荷重(N)
t:加圧時間(s)
Z:加圧後の樹脂厚み(m)
:加圧前の樹脂厚み(m)
V:樹脂の体積(m
【0059】
Z/Z=(r/r) …式(2)
:加圧前の樹脂厚み
Z:加圧後の樹脂厚み
:加圧前の樹脂の半径(直径6mmで打ち抜いているので、3mm)
r:加圧後の樹脂の半径
【0060】
(保存安定性)
40℃の恒温槽にフィルム状樹脂組成物を放置し、72時間後の250℃での粘度が初期粘度の3倍以下であるものを合格(○)として、3倍未満であるものを不合格(×)として評価した。なお、粘度測定は上述の方法で測定した。
【0061】
(ゲル化時間の測定)
250℃の熱板上にセパレーターをはく離したフィルム状樹脂組成物を配置し、スパチュラで攪拌不能になるまでの時間をゲル化時間とした。
【0062】
(半導体チップと基板の接続)
銅ピラー先端に鉛フリーはんだ層(Sn−3.5Ag:融点221℃)を有する構造のバンプが形成された半導体チップとして、日立超LSIシステムズ製JTEG PHASE11_80(サイズ7.3mm×7.3mm、バンプピッチ80μm、バンプ数328、厚み0.55mm、商品名)、基板としてプリフラックス処理によって防錆皮膜を形成した銅配線パターンを表面に有するガラスエポキシ基板を準備した。続いて、フィルム状樹脂組成物を9mm×9mmに切り出し、基板上の半導体チップが搭載される領域に80℃/0.5MPa/5秒の条件で貼り付けた後、セパレータフィルムをはく離した。フリップチップボンダーFCB3(パナソニックファクトリーソリューションズ製、製品名)の40℃に設定したステージ上にフィルム状樹脂組成物が貼り付けられた基板を吸着固定し、半導体チップと位置合わせした後、仮固定工程として、荷重25N、ヘッド温度100℃で5秒間圧着を行い(到達90℃)、半導体チップを基板上に仮固定した。次いで、第一工程として、フリップチップボンダーのヘッド温度を210℃に設定し、荷重25Nで10秒間圧着を行った(到達180℃)。さらに、第二工程として、フリップチップボンダーのヘッド温度を290℃に設定し、荷重25Nで10秒間圧着を行い(到達250℃)、半導体チップと基板とを接続した半導体装置を得た。
【0063】
(導通検査)
半導体チップと基板を接続した半導体装置について、328バンプのデイジーチェーン接続が確認できたものを合格(○)として、デイジーチェーン接続が確認できなかったものを不合格(×)として評価した。
【0064】
(ボイド評価)
半導体チップと基板を接続した半導体装置を超音波探傷装置(日立建機製FineSAT)で観察し、チップ面積に対してボイドが占める面積が1%以下となるものを合格(○)として、1%未満となるものを不合格(×)として評価した。
【0065】
(接続状態評価)
半導体チップと基板を接続した半導体装置の接続部を断面研磨することによって露出させ、光学顕微鏡で観察した。接続部にトラッピングが見られず、はんだが配線に十分濡れているものを合格(○)として、それ以外のものを不合格(×)として評価した。
【0066】
【表2】

【0067】
表2の結果から、3級のリン化合物であるトリフェニルホスフィンを配合した比較例1やイミダゾール類を配合した比較例2及び3では保存安定性が低下しているのに対して、4級ホスホニウム塩を配合した実施例1〜5では、比較例1〜3と同等の反応性を維持しつつ、良好な保存安定性を実現できることが分かる。また、フラックス剤を配合していない比較例3では、良好な金属接合による接続部を形成することができないが、フラックス剤を配合した実施例1〜5では、ボイドが少なく、良好な金属接合による接続部が形成可能であることが分かる。
【0068】
以上に説明したとおり、本発明の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物を用いることによって、良好な保存安定性の確保とともに、ボイドの抑制と金属接合による接続部の形成が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…はんだボール、2…電極パッド、3…バンプ、4…配線、5…半導体チップ、6…封止樹脂、7…回路基板、10…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤、フラックス剤を必須成分とし、硬化促進剤が4級ホスホニウム塩である半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
4級ホスホニウム塩が、テトラアルキルホスホニウム塩又はテトラアリールホスホニウム塩である、請求項1に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
さらに無機フィラを含む、請求項1又は2に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
フィルム状に形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物を半導体チップ又は基板上に供給する第一工程と、
半導体チップと基板とを位置合わせした後、半導体チップと基板とをフリップチップ接続するとともに、半導体チップと基板との間の空隙を前記半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物によって封止充てんする第二工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【請求項6】
基板と、該基板と電気的に接続された半導体チップと、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物の硬化物からなり前記基板と前記半導体チップとの間の空隙を封止する封止樹脂と、を備える半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−190395(P2011−190395A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59462(P2010−59462)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】