説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】シリサイド層上に抵抗値の上昇が抑制されたコンタクトを備え、高い信頼性を有する半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10内に形成された活性領域50と、活性領域50の上面に形成されたシリサイド層45と、半導体基板10およびシリサイド層45の上に形成された第1の層間絶縁膜15と、シリサイド層45上に形成され、第1の層間絶縁膜15を貫通するコンタクトプラグ60とを備えている。コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45の面積は、コンタクトプラグの面積以上、且つ、100μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリサイド層を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の微細化に伴い、コンタクト抵抗を下げることを主な目的として、シリサイド技術が採用されている。ところが、素子分離領域により囲まれた活性領域の表面に、シリコン中の拡散係数が大きい金属を用いてシリサイド層を形成した場合、素子分離領域と活性領域との接合領域では、過剰なシリサイド反応が起こることで接合リークが発生するという課題が従来から指摘されていた。ここで、シリサイド層を有する従来の半導体装置について、図10(a)、(b)を用いて説明する。最初に、図10(a)、(b)は、従来の半導体装置の構成を示す上面図である。
【0003】
図10(a)に示すように、従来の半導体装置において、素子分離領域20により囲まれた活性領域(図示せず)の表面上に、大きな面積を有するシリサイド領域40が形成されている場合、シリサイド領域40中の金属元素が、シリサイド工程処理時に未反応のままシリコン基板中を拡散してしまうことがある。これにより、活性領域と素子分離領域20との接合領域に未反応の金属元素が集中する結果、この金属元素が接合領域で過剰なシリサイド反応を起こし、ソース・ドレイン領域として機能する不純物拡散層において接合リークが発生するという不具合があった。
【0004】
このような不具合に対して、シリサイド領域40中の金属元素がシリサイド工程処理時にシリコン基板中を拡散する特性を勘案して、図10(b)に示すように、シリサイド領域40を複数の小さな領域に分割する方法が提案されている。ここで、図10(a)と図10(b)を比べると、図10(a)に示す半導体装置の場合には、シリサイド領域40の面積が大きく、周囲長も長いため、活性領域と素子分離領域20との接合領域には、シリサイド領域40から拡散した未反応の金属元素が過剰に集中する。
【0005】
一方、図10(b)に示す半導体装置の場合には、例えば図10(b)の中心付近に位置するシリサイド領域40bに注目すると、図10(a)に示す半導体装置に比べて、シリサイド領域40bの面積は小さく、その周囲長も短い。そのため、活性領域と素子分離領域20bとの接合領域に未反応の金属元素が集中しても、その金属元素の量は比較的少ないと言える。また、各シリサイド領域40bは、素子分離領域20bによって分離されているため、隣接する他のシリサイド領域40bからの金属元素が、活性領域と素子分離領域20との接合領域に集中することはない。以上の方法により、従来の半導体装置では、活性領域と素子分離領域との接合領域に未反応の金属元素が過剰に集中するのを抑え、接合リークの発生を抑制している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−150375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、活性領域の表面上に形成されたシリサイド領域40の上には、コンタクトが形成される場合が多い。これは、上述したように、半導体装置の微細化に伴い、コンタクト抵抗を下げるために、コンタクトの下にシリサイド領域を形成することによる。しかしながら、従来の半導体装置では、シリサイド領域上にコンタクトを形成する場合、上述のように、シリサイド領域の面積と接合リークとの関連性については検討されているものの、シリサイド領域の面積とコンタクト抵抗の関係については明らかにされていない。
【0007】
また、シリサイド領域上にコンタクトを形成した後に500℃以上の熱処理を加えると、シリサイド領域の面積によっては、コンタクト抵抗が上昇して、信頼性の低下を招くという不具合も生じるおそれがある。さらに、近年、半導体装置の微細化に伴いプロセス全般の低温化が図られているが、比較的低温で形成可能なプラズマ系絶縁膜の成膜などにおいても、プラズマ放電中にウエハ基板温度が500℃以上に上昇することがあり、シリサイド領域上での安定したコンタクト形成は困難なものであった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シリサイド層上に抵抗値の上昇が抑制されたコンタクトを備え、高い信頼性を有する半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板内に形成された活性領域と、前記活性領域の上面に形成されたシリサイド層と、前記半導体基板および前記シリサイド層の上に形成された第1の層間絶縁膜と、前記シリサイド層上に形成され、前記第1の層間絶縁膜を貫通するコンタクトプラグとを備えており、前記コンタクトプラグ1個当たりの前記シリサイド層の面積は、前記コンタクトプラグの底面積以上、且つ、100μm以下である。
【0010】
この構成によれば、シリサイド層の面積を所定の範囲にすることで、コンタクトプラグの底部に加わる構造的ストレスを低減させることができるため、シリサイド層からコンタクトプラグの底部へ酸素が集中するのを抑制することができる。その結果、酸素による絶縁物の発生を抑えることができ、低抵抗なコンタクトプラグを備えた信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0011】
なお、前記半導体基板と前記第1の層間絶縁膜との間および前記シリサイド層と前記第1の層間絶縁膜との間に形成され、前記コンタクトプラグの底部を囲み、水素を含む第1のエッチングストップ膜をさらに備えており、前記コンタクトプラグは、前記第1のエッチングストップ膜を貫通していてもよい。
【0012】
また、前記コンタクトプラグ上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された容量絶縁膜と、前記容量絶縁膜上に形成された上部電極とを有するキャパシタと、前記第1の層間絶縁膜上に形成され、前記キャパシタの底部を囲み、水素を含む第2のエッチングストップ膜とをさらに備えていてもよい。
【0013】
また、前記コンタクトプラグ上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された強誘電体膜と、前記強誘電体膜上に形成された上部電極とを有する強誘電体キャパシタと、前記強誘電体キャパシタの側面および上面を覆う第2の層間絶縁膜と、前記第1の層間絶縁膜と前記第2の層間絶縁膜との間に形成され、前記強誘電体キャパシタの底部を囲み、水素を含む第1の保護膜と、前記第2の層間絶縁膜の側面上および上面上に形成され、水素を含む第2の保護膜とをさらに備えていてもよい。
【0014】
これらの構成によれば、第1のエッチングストップ膜、第2のエッチングストップ膜、並びに、第1の保護膜および第2の保護膜がそれぞれ水素を含んでいるため、シリサイド層から酸素が拡散してコンタクトプラグの底部に絶縁物が発生するのをさらに抑制することができる。その結果、より低抵抗化されたコンタクトプラグを備え、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0015】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板内に活性領域を形成した後、前記活性領域の上面上にシリサイド層を形成する工程(a)と、前記半導体基板上に第1の層間絶縁膜を形成した後、前記第1の層間絶縁膜を貫通し、前記シリサイド層の上面に達するコンタクトホールを形成する工程(b)と、前記コンタクトホールに導電膜を埋め込むことにより、コンタクトプラグを形成する工程(c)とを備えており、前記コンタクトプラグ1個当たりの前記シリサイド層の面積は、前記コンタクトプラグの底面積以上、且つ、100μm以下である。なお、前記工程(c)の後、前記半導体基板を500℃以上の温度で加熱する工程(d)をさらに備えていてもよい。
【0016】
この方法によれば、シリサイド層の面積を所定の範囲にすることで、シリサイド層から拡散する酸素量を低減させることができるため、コンタクトプラグの底部で酸素の凝集により絶縁物が発生するのを抑制できる。従って、本発明の半導体装置の製造方法を用いれば、例えばコンタクトプラグを形成した後、工程(d)のように500℃以上の熱処理が施される場合でも、コンタクトプラグの抵抗値の上昇を防ぐことができ、低抵抗なコンタクトプラグを備え、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、コンタクトプラグの底部に酸素が凝集するのを効果的に抑制することができるため、シリサイド層上に低抵抗なコンタクトプラグを備えた信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、図面を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態の半導体装置に係る評価パターンを示す上面図であり、図1(b)は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。最初に、本実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0019】
図1(b)の右図に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10内に形成された活性領域50と、活性領域50の上面上に形成され、CoSiなどからなるシリサイド層45と、シリサイド層45および半導体基板10の上に形成され、プラズマTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜などからなる第1の層間絶縁膜15と、第1の層間絶縁膜15を貫通してシリサイド層45に接続されるコンタクトプラグ60と、コンタクトプラグ60および第1の層間絶縁膜15の上に形成され、Al等からなる配線層700と、第1の層間絶縁膜15および配線層700の上に形成された第2の層間絶縁膜16とを備えている。なお、コンタクトプラグ60は、コンタクトホールの内面に設けられた密着層70と、密着層70上に設けられ、W(タングステン)などからなり、コンタクトホールを埋める導電膜80とから構成されている。なお、活性領域50は、素子分離領域20によって取り囲まれている。
【0020】
ここで、本実施形態の半導体装置では、コンタクトプラグ1個当たりに対する面積が、コンタクトプラグの底面積以上、且つ、100μm以下となるように、シリサイド層45が設けられている。このようにシリサイド層45の面積を上記の範囲に設定する理由について、以下に説明する。
【0021】
一般的に、シリサイド層上の中央付近にコンタクトプラグを形成した場合、コンタクトプラグの底部に構造的ストレスが加わることで、このストレスをドライビングフォースとして、シリサイド層の円周方向からコンタクトプラグの底部に向かって、シリサイド層中の酸素が拡散してくると言われている。本願発明者は、コンタクトプラグの底部に酸素が集まることにより、シリサイド層中のSiが酸化されるため絶縁物が発生したり、シリサイドの凝集が加速したりするなど、シリサイド層とコンタクトプラグとの間に異常が生じると考えた。
【0022】
そこで、図1(a)に示すように、コンタクトプラグ60が中心に設けられたシリサイド層45を有する評価パターンを基に、コンタクトプラグ60の中心からシリサイド層45と素子分離領域20との境界までの最大距離100を変化させて、コンタクトプラグ60の抵抗値を測定した。なお、最大距離100を変化させて、例えば図1(b)の左図に示す面積の小さいシリサイド層45や、図1(b)の右図に示す面積の大きいシリサイド層45を形成することで、コンタクトプラグ60の抵抗評価を行った。評価結果を図1(c)に示す。
【0023】
図1(c)は、シリサイド層45(シリサイド領域)の面積に対するコンタクトプラグ60の抵抗値を示す図である。なお、横軸はコンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45の面積を示している。図1(c)に示すように、シリサイド層45の面積が1μmから100μmに増加するに従って、コンタクトプラグの抵抗値も大きくなっている。ここで、シリサイド層45の面積が100μmの時、コンタクトプラグ60の抵抗値は1μmの時と比べて20%程度高くなっている。これは、シリサイド層45の面積が増加するに連れて、コンタクトプラグ60の底部に酸素が凝集する結果、絶縁物が形成され、コンタクトプラグ60の抵抗値が上昇することを示している。なお、シリサイド層45の面積が100μm時のコンタクトプラグの抵抗値は実用可能な範囲である。
【0024】
しかしながら、シリサイド層45の面積が100μmを超えると、コンタクトプラグ60の抵抗値が急激に増加していることがわかる。具体的には、シリサイド層45の面積が100μmより大きい場合の抵抗値は、シリサイド層45の面積が1μmである場合の抵抗値に対して2倍以上も大きくなり、実用可能な範囲を超えてしまう。
【0025】
従って、正方形のシリサイド層45の面積が100μm以下となるように、言い換えれば、コンタクトプラグ60の中心から活性領域50と素子分離領域20との境界までの最大距離100(図1(a)参照)が7μm以下となるように、シリサイド層45の面積を調節すれば、該シリサイド層45上に設けられたコンタクトプラグ60の抵抗値を実用可能な範囲に設定することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置では、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45の面積をコンタクトプラグの底面積以上、且つ、100μm以下に規定することで、従来の半導体装置に比べて、シリサイド層45中から拡散する酸素量を低減させることができるため、絶縁物の発生が抑制される。従って、比較的低抵抗なコンタクトプラグを備え、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態では、例えば上述の第1の実施形態の半導体装置に熱処理を施した半導体装置およびその製造方法について、図面を用いて説明する。図2(a)は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0028】
図2(a)の左図に示すように、本実施形態の半導体装置の構成は、上述の第1の半導体装置と同様である。ここで、本実施形態の半導体装置の製造方法について図2(b)〜(d)を用いて説明する。図2(b)〜(d)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0029】
まず、図2(b)に示すように、例えばSiからなる半導体基板10内に活性領域50およびSiOなどからなる素子分離層(図示せず)を形成する。次に、半導体素子(図示せず)が設けられた半導体基板10上に、例えばCo膜を5〜30nmの膜厚で堆積する。続いて、300℃〜500℃の熱処理を加えることで、半導体基板10内に形成された活性領域50の上面上でCoとSiとが反応して、CoSiが生成される。ここで、半導体基板10内に形成された素子分離層の上面上では、CoとSiOとの反応は起こらないため、未反応のCo膜が残存する。従って、熱処理後は、硫過水で洗浄することにより、素子分離上に残存した未反応のCo膜を除去する。次に、再度300℃〜500℃の熱処理を加えることにより、活性領域50の所望の上面上に、CoSiからなるシリサイド層45を形成する。
【0030】
次に、図2(c)に示すように、半導体基板10の全面上に、例えば400〜1200nmの膜厚で、プラズマTEOSなどからなる第1の層間絶縁膜15を堆積する。次に、リソグラフィー技術によりレジストパターンを形成した後、ドライエッチング法を用いて、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45の上面に達するコンタクトホールを形成する。続いて、コンタクトホールの内面上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、5〜30nmの膜厚でTiNなどからなる密着層70を形成する。次に、半導体基板10の全面上にWなどからなる導電膜80を堆積して、コンタクトホールに埋め込む。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて、導電膜80のうち、コンタクトホール内部以外に形成された部分を除去する。これにより、シリサイド層45上に、密着層70と導電膜80とから構成されるコンタクトプラグ60を形成することができる。
【0031】
次に、図2(d)に示すように、半導体基板10の全面上に、例えばAlを主成分とする導電膜を堆積する。その後、半導体基板10の所望の領域に、リソグラフィー技術によりレジストパターンを形成した後、ドライエッチング法を用いて、導電膜の一部を除去することで、コンタクトプラグ60に接続される配線層700を形成する。続いて、第1の層間絶縁膜15および配線層700の上に、例えば膜厚が300〜700nmでHDP−NSG(High Density Plasma−Non Silicate Glass)膜からなる第2の層間絶縁膜16を堆積する。以降、所定の工程を経て、本実施形態の半導体装置を製造することができる。なお、所定の工程の中には、500℃以上の高温での熱処理工程が含まれる。ここで、本実施形態の半導体装置の製造方法では、図2(b)で示す工程で形成されるシリサイド層45の面積を5μm以下にすることが好ましい。以下、シリサイド層45の面積を上記の範囲内に設定する理由を説明する。図2(e)は、本実施形態の半導体装置に係る評価パターンを示す上面図である。
【0032】
図2(e)に示すように、シリサイド層45に対して熱処理が及ぼす影響を検討するために、コンタクトプラグ60が中心に設けられた正方形のシリサイド層45が複数個配置された評価パターンを作製した。ここで、本実施形態では、シリサイド層45が例えば4個設けられているが、各シリサイド層45の面積の合計は、上述の図1(a)に示す単一のシリサイド層45の面積と等しくなっている。なお、コンタクトプラグ60の中心からシリサイド層45と素子分離領域20との境界までの最大距離100を変化させることで、シリサイド層45の面積とコンタクトプラグ60の抵抗値との関係を調べた。なお、最大距離100を変化させて、例えば図2(a)の左図に示す面積の小さいシリサイド層45や、図2(a)の右図に示す面積の大きいシリサイド層45を形成することで、コンタクトプラグ60の抵抗評価を行った。評価結果を図2(f)に示す。
【0033】
図2(f)は、シリサイド層45の面積に対するコンタクトプラグ60の抵抗値を示す図である。なお、横軸に示すシリサイド層45の面積は、各シリサイド層45の面積の合計をコンタクトプラグの個数で割ることにより、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45の面積を表している。図2(f)に示すように、熱処理の有無にかかわらず、シリサイド層45の面積が1μmから50μmに増加するに連れ、抵抗値の上昇が見られる。ここで、500℃以上の熱処理がある場合と無い場合を比較すると、熱処理がある場合の抵抗値は、シリサイド層45の面積が増加するに伴い、著しく増大することがわかる。
【0034】
ここで、コンタクトプラグ60の形成後に例えば500℃以上の熱処理を行うと、コンタクトプラグ60の底部に加わる構造的ストレスの影響が小さくても、コンタクトプラグ60の底部に集中する酸素の拡散速度が急激に加速され、シリサイド層45とコンタクトプラグ60の間に異常が生じてしまう。その結果、コンタクトプラグ60を形成した後に、500℃以上の熱処理を行う場合は、シリサイド層45の面積を十分に小さくしなければ、比較的低抵抗なコンタクトプラグを得ることができない。具体的には、図2(f)に示すように、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45の面積を5μm以下になるように調節することで、実用可能な範囲の抵抗値を有するコンタクトプラグを形成することができる。
【0035】
以上、本実施形態の半導体装置およびその製造方法では、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45の面積を5μm以下に規定することで、500℃以上の熱処理が施されても、シリサイド層45中から拡散する酸素量を低減させることができるため、酸素の凝集による絶縁物の発生が抑制される。従って、比較的低抵抗なコンタクトプラグを備え、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0036】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について、図面を用いて説明する。なお、本実施形態の半導体装置として、強誘電体メモリ(FeRAM:Ferroelectric Random Access Memory)を例に挙げる。図3(a)は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0037】
図3(a)に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10内に形成され、SiOなどからなる素子分離領域20と、素子分離領域20によって取り囲まれ、ソース・ドレイン領域(図示せず)が設けられた活性領域50と、ソース・ドレイン領域の上面上にそれぞれ形成され、CoSiなどからなるシリサイド層45a、45bと、半導体基板10の内、平面的に見てシリサイド層45aとシリサイド層45bとの間に位置する領域上に形成されたゲート酸化膜209およびゲート電極210と、ゲート酸化膜209およびゲート電極210の側面上に形成されたサイドウォール208と、半導体基板10およびゲート電極210の上に形成され、プラズマTEOSなどからなる第1の層間絶縁膜15と、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45a、45bにそれぞれ接続されるコンタクトプラグ60a、60bとを備えている。
【0038】
さらに、本実施形態の半導体装置は、コンタクトプラグ60a上に形成され、酸素バリア膜240、下部電極250、強誘電体膜270、および上部電極280を有する強誘電体キャパシタと、例えばTiNからなり、第1の層間絶縁膜15の一部上に設けられ、強誘電体キャパシタの底部を囲む第1の水素バリア膜300と、第1の水素バリア膜300上に設けられ、強誘電体キャパシタの側面および上面を覆う第2の層間絶縁膜16と、第2の層間絶縁膜16の側面上および上面上に形成され、例えばTiNからなる第2の水素バリア膜310と、第1の層間絶縁膜15上に形成され、コンタクトプラグ60bに接続されるビット線230と、第1の層間絶縁膜15およびビット線230の上に形成された第3の層間絶縁膜17とを備えている。
【0039】
なお、コンタクトプラグ60a、60bは、コンタクトホールの内面に設けられた密着層70と、密着層70上に設けられ、Wなどからなり、コンタクトホールを埋める導電膜80とからそれぞれ構成されている。
【0040】
次に、本実施形態に係る強誘電体メモリの製造方法について、図3(b)〜(d)を用いて説明する。図3(b)〜(d)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0041】
まず、図3(b)に示すように、例えばSiからなる半導体基板10内に活性領域50およびSiOなどからなる素子分離層(図示せず)を形成する。次に、半導体素子(図示せず)が設けられた半導体基板10上に、例えばCo膜を5〜30nmの膜厚で堆積する。続いて、300℃〜500℃の熱処理を加えることで、半導体基板10内に形成されたソース・ドレイン領域の上面上でCoとSiとが反応して、CoSiが生成される。ここで、半導体基板10内に形成された素子分離領域20の上面上では、CoとSiOとの反応は起こらないため、未反応のCo膜が残存する。従って、熱処理後は、硫過水で洗浄することにより、素子分離上に残存した未反応のCo膜を除去する。次に、再度300℃〜500℃の熱処理を加えることにより、ソース・ドレイン領域の上面上に、CoSiからなるシリサイド層45a、45bをそれぞれ形成する。
【0042】
次に、半導体基板10の所定の領域上に、ゲート酸化膜209およびゲート電極210を形成した後、ゲート酸化膜209およびゲート電極210の側面上にサイドウォール208を形成する。続いて、半導体基板10の全面上に、例えば400〜1200nmの膜厚でプラズマTEOSからなる第1の層間絶縁膜15を堆積する。
【0043】
次に、リソグラフィー技術によりレジストパターンを形成した後、ドライエッチング法を用いて、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45a、45bの上面に達するコンタクトホールをそれぞれ形成する。続いて、コンタクトホールの内面上に、例えばCVD法により、5〜30nmの膜厚でTiNなどからなる密着層70を形成する。次に、半導体基板10の全面上にWなどからなる導電膜80を堆積して、コンタクトホールに埋め込む。その後、CMP法を用いて、導電膜80のうちコンタクトホール内部の領域以外に形成された部分を除去する。これにより、シリサイド層45a、45b上に、密着層70と導電膜80とから構成されるコンタクトプラグ60a、60bをそれぞれ形成することができる。
【0044】
続いて、図3(c)に示すように、半導体基板10の全面上に、例えば窒化シリコン(SiN)膜を膜厚が20〜200nmで堆積する。次に、リソグラフィー技術により、SiN膜の内、コンタクトプラグ60aの上面および第1の層間絶縁膜15の一部上に形成された部分の上にレジストを形成し、該レジストをマスクとしてSiN膜をエッチングすることで、第1の水素バリア膜300を形成する。次に、第1の層間絶縁膜15の上に、コンタクトプラグ60bに接続され、膜厚が50〜200nmで例えばWからなるビット線230を形成する。
【0045】
続いて、図3(d)に示すように、リソグラフィー技術によるレジストパターンを用いて、第1の水素バリア膜300の内、コンタクトプラグ60aの上面上および第1の層間絶縁膜15の一部上に形成された部分をドライエッチング法により除去する。次に、コンタクトプラグ60aの上面、第1の層間絶縁膜15の一部、および第1の水素バリア膜300の上に、酸素バリア膜240、下部電極250、強誘電体膜270、および上部電極280を順次堆積させる。その後、リソグラフィー技術により形成したレジストパターンをマスクとして、酸素バリア膜240、下部電極250、強誘電体膜270、および上部電極280を所定の形状にパターニングする。これにより、酸素バリア膜240、下部電極250、強誘電体膜270、および上部電極280を有し、コンタクトプラグ60aを介して、シリサイド層45aを有するソース・ドレイン領域のいずれか一方に接続される強誘電体キャパシタを形成することができる。ここで、酸素バリア膜240として、例えば膜厚が30〜100nmのIrOx膜を用い、下部電極250として、例えば膜厚が20〜200nmのPt膜を用いる。また、強誘電体膜270として、例えば膜厚が30〜200nmのSBT(SrBiTa)膜を用い、上部電極280として、例えば膜厚が20〜200nmのPt膜を用いる。
【0046】
上述の工程では、強誘電体膜270としてSBTを用いたが、これに限定されるものではなく、他にPZT、BLT、BiT、BaTiOxなどの材料でも構わない。また、上部電極280および下部電極250としてPtを用いたが、これに限定されるものではなく、他にIr、IrOx、Ta、TaOx、Ti、TiOx、Ru、RuOx、W、TiN、Ni、Coなどの材料でも同様の効果が得られる。
【0047】
次に、半導体基板10の全面上に、例えば膜厚が400〜800nmのプラズマTEOSからなる第2の層間絶縁膜16を堆積する。続いて、リソグラフィー技術により形成したレジストパターンをマスクとして、第1の水素バリア膜300およびキャパシタの上に設けられた部分を残して、第2の層間絶縁膜16を除去する。次に、半導体基板10の全面上に、例えば膜厚が10〜200nmのSiN膜を堆積する。その後、第2の層間絶縁膜16の上面および側面上に設けられた部分を残して、CMP法によりSiN膜を除去することで、第2の水素バリア膜310を形成する。続いて、第1の層間絶縁膜15およびビット線230の上に、例えばHDP−NSG膜からなる第3の層間絶縁膜17を形成する。その後、強誘電体膜270の強誘電体特性を発現させるため、高温(例えば500℃〜800℃)での熱処理工程などを経て、本実施形態の強誘電体メモリを製造することができる。
【0048】
ここで、本実施形態の半導体装置の製造方法においては、第1の水素バリア膜300および第2の水素バリア膜310として、枚葉式のLP−CVD(Low Pressure−Vapor Deposition)装置を用いて成膜したSiN膜を使用することが好ましい。この理由を以下に説明する。図4(a)は、各種の成膜方法で形成したSiN膜の水素含有量を示す図である。ここで、プラズマSiN膜1およびプラズマSiN膜2は、400〜600Torrの減圧状態で、プラズマエネルギーにより原料を分解して成膜する枚葉式の装置を用いて形成されたCVD膜である。また、LP−SiN膜1、LP−SiN膜2、およびLP−SiN膜3は、300〜600Torrの減圧下で、熱分解反応により原料を分解して成膜する枚葉式の装置を用いて形成されたLP−CVD膜である。さらに、LP−SiN膜4およびLP−SiN膜5は、一般的に用いられているバッチ式処理の装置を用いて形成されたLP−CVD膜である。図4(a)に示すように、LP−SiN膜1、LP−SiN膜2、およびLP−SiN膜3の水素含有量は、他の方法で成膜したSiN膜よりも少なく、6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲内である。ここで、水素含有量が少ない膜ほど、強誘電体膜が水素劣化するのを抑制することができ、水素バリア性能が高い。従って、LP−SiN膜1、LP−SiN膜2、およびLP−SiN膜3は、水素バリア性能の高い材料であると言える。
【0049】
一方、図4(b)は、水素劣化を起こしていないデバイスに設けられた水素バリア膜中の水素含有量を示す図である。なお、水素バリア膜を深さ方向においてSIMS(Secondary Ionization Mass Spectrometer)分析することにより、水素バリア膜の深さに対する水素含有量を表している。図4(a)および図4(b)に示す結果を合わせて考えると、水素含有量が6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲である水素バリア膜は、強誘電体膜に対する水素劣化の抑制効果を有することがわかる。
【0050】
さらに、本実施形態の半導体装置では、水素含有量が6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲である水素バリア膜を用いることで、熱処理によりコンタクトプラグ60aの抵抗値が上昇するのを抑制することができる。以下、その理由について、図4(c)、(d)を用いて説明する。図4(c)は、本実施形態の半導体装置に係る評価パターンを示す上面図である。
【0051】
図4(c)に示すように、水素バリア膜の効果を検討するために、コンタクトプラグ60aが中心に設けられた正方形のシリサイド層45aが複数個配置された評価パターンを作製した。ここで、本実施形態では、シリサイド層45aが例えば4個設けられているが、各シリサイド層45aの面積の合計は、上述の図1(a)に示す単一のシリサイド層45の面積と等しくなっている。なお、コンタクトプラグ60aの中心からシリサイド層45aと素子分離領域20との境界までの最大距離100を変化させることで、シリサイド層45aの面積とコンタクトプラグ60aの抵抗値との関係を調べた。
【0052】
図4(d)は、シリサイド層45a(シリサイド領域)の面積に対するコンタクトプラグ60aの抵抗値を示す図である。なお、横軸に示すシリサイド層45aの面積は、各シリサイド層45aの面積の合計をコンタクトプラグの個数で割ることにより、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層の面積を表している。図4(d)に示すように、水素バリア膜の有無にかかわらず、シリサイド層45の面積が1μm〜50μmに増加するに連れ、抵抗値の上昇が見られる。ここで、水素バリア膜がある場合と無い場合を比較すると、水素バリア膜が無い場合の抵抗値は、シリサイド層45aの面積が増加するに伴い、著しく増大することがわかる。
【0053】
ここで、第2の実施形態の半導体装置と同様にして、コンタクトプラグ60aの形成後に例えば500℃以上の熱処理を行うと、コンタクトプラグ60aの底部に加わる構造的ストレスの影響が小さくても、コンタクトプラグ60aの底部に集中する酸素の拡散速度が急激に加速され、シリサイド層45aとコンタクトプラグ60aの間に異常が生じてしまう。一方、本実施形態の半導体装置のように、水素を含有する水素バリア膜を備えていると、熱処理時に水素バリア膜中の水素が多量にシリサイド層45aの表面に供給される。その結果、コンタクトプラグ60aの底部に酸素が集中するのを抑制することができ、酸素が凝集して絶縁物が形成されるのを防止することができる。ここで、第1の水素バリア膜300および第2の水素バリア膜310の水素含有量がそれぞれ6X1021個/cm以上1X1022個/cm以下であると、強誘電体膜の水素劣化を抑制しつつ、コンタクトプラグ60aの底部に水素を供給することができるため、良好な強誘電体特性を維持し、コンタクトプラグ60aの抵抗値の上昇を抑制できる。なお、図4(d)に示すように、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45aの面積を10μm以下となるように調節すれば、コンタクトプラグ60aの抵抗値が実用可能な範囲となるため好ましい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置およびその製造方法の特徴は、水素を含有する水素バリア膜(第1の水素バリア膜300および第2の水素バリア膜310)を備えており、その水素含有量が6X1021個/cm以上1X1022個/cm以下の範囲内であることである。これにより、強誘電体膜の焼結工程など、コンタクトプラグ60aを形成した後、半導体基板10に熱処理が施されても、水素バリア膜から水素が拡散されることで、シリサイド層45中から拡散する酸素が凝集するのを抑制することができる。その結果、強誘電体キャパシタなどに接続されるコンタクトプラグ60aの底部において絶縁物の発生が抑制されるため、コンタクトプラグ60aの抵抗が上昇するのを抑えることができる。また、水素バリア膜の水素含有量を所定の範囲内にすることで、強誘電体キャパシタの水素劣化を抑制できる。従って、本実施形態の半導体装置の製造方法では、比較的低抵抗なコンタクトプラグを備え、良好な強誘電体特性などを示す信頼性の高い半導体装置を実現することが可能となる。
【0055】
また、水素バリア膜の効果により、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45aの面積を比較的大きくしても、熱処理時の抵抗値の上昇を抑えることができる。従って、本実施形態の半導体装置では、第2の実施形態の半導体装置に比べて大きな面積を有するシリサイド層45aを備えることができるため、該シリサイド層45a上により安定にコンタクトプラグ60aを形成することができる。
【0056】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について、図面を用いて説明する。なお、本実施形態の半導体装置として、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を例に挙げる。図5(a)は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0057】
図5(a)に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10内に形成され、SiOなどからなる素子分離領域20と、素子分離領域20によって取り囲まれ、ソース・ドレイン領域(図示せず)が設けられた活性領域50と、ソース・ドレイン領域の上面上にそれぞれ形成され、CoSiなどからなるシリサイド層45a、45bと、半導体基板10の内、平面的に見てシリサイド層45aとシリサイド層45bと間に位置する領域上に形成されたゲート酸化膜209およびゲート電極210と、ゲート酸化膜209およびゲート電極210の側面上に形成されたサイドウォール208と、半導体基板10およびゲート電極210の上に形成され、プラズマTEOSなどからなる第1の層間絶縁膜15と、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45a、45bにそれぞれ接続されるコンタクトプラグ60a、60bとを備えている。
【0058】
さらに、本実施形態の半導体装置は、第1の層間絶縁膜15上に形成され、SiNなどからなるエッチングストップ膜450と、コンタクトプラグ60a上に形成された下部電極400と、下部電極400の側面上および上面上に形成された容量絶縁膜410と、容量絶縁膜410の側面上および上面上に形成された上部電極420と、上部電極420およびエッチングストップ膜450の上に形成され、例えばBPSG(Borophosphosilicate Glass)膜からなる第2の層間絶縁膜16と、第2の層間絶縁膜16を貫通し、コンタクトプラグ60bの上面に接続されるコンタクトプラグ60cと、コンタクトプラグ60cに接続されるビット線230と、第2の層間絶縁膜16およびビット線230の上に形成された第3の層間絶縁膜17とを備えている。なお、下部電極400、容量絶縁膜410、および上部電極420からDRAMのキャパシタが構成されている。
【0059】
また、コンタクトプラグ60a、60b、60cは、コンタクトホールの内面に設けられた密着層70と、Wなどからなり、コンタクトホールを埋める導電膜80とからそれぞれ構成されている。
【0060】
次に、図5(b)〜(d)を用いて、本実施形態に係るDRAMの製造方法について説明する。図5(b)〜(d)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0061】
まず、図5(b)に示すように、例えばSiからなる半導体基板10内に活性領域50およびSiOなどからなる素子分離層(図示せず)を形成する。次に、半導体素子(図示せず)が設けられた半導体基板10上に、例えばCo膜を5〜30nmの膜厚で堆積する。続いて、300℃〜500℃の熱処理を加えることで、半導体基板10内に形成されたソース・ドレイン領域の上面上でCoとSiとが反応して、CoSiが生成される。ここで、半導体基板10内に形成された素子分離領域20の上面上では、CoとSiOとの反応は起こらないため、未反応のCo膜が残存する。従って、熱処理後は、硫過水で洗浄することにより、素子分離上に残存した未反応のCo膜を除去する。次に、再度300℃〜500℃の熱処理を加えることにより、ソース・ドレイン領域の上面上に、CoSiからなるシリサイド層45a、45bをそれぞれ形成する。
【0062】
次に、半導体基板10の所定の領域上に、ゲート酸化膜209およびゲート電極210を形成した後、ゲート酸化膜209およびゲート電極210の側面上にサイドウォール208を形成する。続いて、半導体基板10の全面上に、例えば400〜1200nmの膜厚でプラズマTEOSからなる第1の層間絶縁膜15を堆積する。
【0063】
次に、リソグラフィー技術によりレジストパターンを形成した後、ドライエッチング法を用いて、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45a、45bの上面に達するコンタクトホールをそれぞれ形成する。続いて、コンタクトホールの内面上に、CVD法により、例えば5〜30nmの膜厚で、TiNなどからなる密着層70を形成する。次に、半導体基板10の全面上にWなどからなる導電膜80を堆積して、コンタクトホールに埋め込む。その後、CMP法を用いて、導電膜80のうちコンタクトホール内部の領域以外に形成された部分を除去する。これにより、シリサイド層45a、45b上に、密着層70と導電膜80とから構成されるコンタクトプラグ60a、60bをそれぞれ形成することができる。
【0064】
続いて、図5(c)に示すように、半導体基板10の全面上に、枚様式のLP−CVD装置を用いて、例えば膜厚が20〜200nmのSiN膜などからなるエッチングストップ膜450を堆積する。ここで、エッチングストップ膜450として、6X1021個/cm以上1X1022個/cm以下の水素を含有していることが好ましい。なお、次に、リソグラフィー技術とドライエッチング法を用いて、エッチングストップ膜450の内、コンタクトプラグ60a上に形成された部分を除去し、コンタクトプラグ60aの上面を露出させる。
【0065】
次に、半導体基板10の全面上に、例えば膜厚が200〜400nmでポリシリコン膜を堆積する。その後、リソグラフィー技術とドライエッチング法を用いて、ポリシリコン膜の内、コンタクトプラグ60aの上面に形成された部分以外を除去することで、下部電極400を形成する。次いで、例えば膜厚が20〜50nmのTaOxなどからなる容量絶縁膜410を堆積した後、容量絶縁膜410上に例えば膜厚が200〜400nmのポリシリコン膜を堆積する。その後、リソグラフィー技術とドライエッチング法を用いて、下部電極400の側面上および上面上に形成された部分を残して、容量絶縁膜410およびポリシリコン膜を除去することで、下部電極400と容量絶縁膜410と上部電極420とから構成されるキャパシタを形成することができる。なお、エッチングストップ膜450が設けられているため、容量絶縁膜410およびポリシリコン膜を除去する際に、第1の層間絶縁膜15がエッチングされるのを防止することができる。
【0066】
次に、図5(d)に示すように、エッチングストップ膜450およびキャパシタの上に例えば膜厚が400〜1200nmのBPSG(Borophosphosilicate Glass)膜からなる第2の層間絶縁膜16を堆積する。その後、第2の層間絶縁膜16を平坦化するために、半導体基板10を例えば500℃以上の高温で熱処理を行う。次に、リソグラフィー技術とドライエッチング法を用いて、第2の層間絶縁膜16を貫通し、コンタクトプラグ60bの上面に達するコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホールの内面上に、例えばCVD法により、密着層70を形成する。続いて、半導体基板10の全面上に例えばWからなる導電膜80を堆積し、コンタクトホールに埋め込むことで、密着層70と導電膜80とから構成されるコンタクトプラグ60cを形成する。
【0067】
次に、リソグラフィー技術とドライエッチング法を用いて、例えば膜厚が50〜200nmでWからなり、コンタクトプラグ60cの上面を覆うビット線230を形成する。その後、第2の層間絶縁膜16およびビット線230の上に、第3の層間絶縁膜17を形成する。以降、所定の工程を経て、本実施形態に係るDRAMを製造することができる。
【0068】
ここで、本実施形態の半導体装置の製造方法では、半導体装置としてDRAMを一例として挙げたが、第3の実施形態の半導体装置と同様に、水素含有量が6X1021個/cm以上1X1022個/cm以下の範囲内であるエッチングストップ膜450が備えられている。このため、シリサイド層上に形成したコンタクトプラグの抵抗値とシリサイド層の面積とは、上述の図4(d)に示す結果と同様な関係が得られる。
【0069】
従って、例えば第2の層間絶縁膜16を平坦化するための熱処理のように、コンタクトプラグを形成した後に、500℃以上の高温で熱処理が施されても、水素含有量が6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲内であるエッチングストップ膜450を用いることで、該エッチングストップ膜450から多量の水素がシリサイド層の表面へ供給されるため、シリサイド層の表面に酸素が集中するのを抑制することができる。その結果、絶縁物の発生によるコンタクトプラグの抵抗値の上昇が抑えられ、比較的低抵抗なコンタクトを備え、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0070】
なお、本実施形態の半導体装置およびその製造方法において、エッチングストップ膜450の材料としてSiNを用いたが、これに限定されるものではなく、水素を6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲で含む他の材料を用いてもよい。
【0071】
また、本実施形態の製造方法において、容量絶縁膜410の材料としてTaOxを用いた場合、TaOx膜の表面を酸化するために600℃以上の熱処理を行う。さらに、下部電極400および上部電極420のを形成する際に、減圧CVD法を用いてポリシリコン膜を堆積する場合も、600℃以上の熱処理を行う。このような熱処理工程を行う場合においても、水素を所定の範囲内で含有するエッチングストップ膜450を備えていることで、上述と同様な効果が得られる。
【0072】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について、図面を用いて説明する。図6(a)は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0073】
図6(a)に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10内に形成され、SiOなどからなる素子分離領域20と、素子分離領域20によって取り囲まれ、ソース・ドレイン領域(図示せず)が設けられた活性領域50と、ソース・ドレイン領域の上面上にそれぞれ形成され、CoSiなどからなるシリサイド層45a、45bと、シリサイド層45a上に形成されたゲート酸化膜209およびゲート電極210と、ゲート酸化膜209およびゲート電極210の側面上に形成されたサイドウォール208と、半導体基板10の上面上およびサイドウォール208の側面上に形成され、SiNなどからなるエッチングストップ膜450と、エッチングストップ膜450の上に設けられ、BPSG膜などからなる層間絶縁膜600と、ゲート電極210上に設けられ、層間絶縁膜600およびエッチングストップ膜450を貫通するコンタクトプラグ60aと、シリサイド層45b上に形成され、層間絶縁膜600およびエッチングストップ膜450を貫通するコンタクトプラグ60bと、コンタクトプラグ60a、60bの上面上に形成された配線層700とを備えている。
【0074】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について、図6(b)〜(d)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。なお、図6(b)に示すシリサイド層45a、45bを形成する工程は、上述の第2の実施形態の製造方法と同様であるため、簡単に説明する。
【0075】
まず、図6(a)に示すように、例えばSiからなる半導体基板10内に、活性領域50および素子分離層(図示せず)を形成した後、半導体基板10上に、例えばCo膜を5〜30nmの膜厚で堆積する。続いて、300℃〜500℃の熱処理を複数回行うことで、半導体基板10内に形成されたソース・ドレイン領域の上面上にシリサイド層45a、45bをそれぞれ形成する。なお、素子分離領域20の上面上に残存した未反応のCo膜は、硫過水で洗浄することにより除去される。
【0076】
次に、シリサイド層45a上に、ゲート酸化膜209およびゲート電極210を形成した後、ゲート酸化膜209およびゲート電極210の側面上に、サイドウォール208を形成する。続いて、半導体基板10、ゲート電極210、およびサイドウォール208の上面を覆うように、例えば膜厚が30〜100nmで、SiNからなるエッチングストップ膜450を形成する。ここで、エッチングストップ膜450は、6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲内の水素を含有していることが好ましい。
【0077】
次に、図6(c)に示すように、エッチングストップ膜450上に、例えば膜厚が400〜1200nmのBPSG膜からなる層間絶縁膜600を堆積する。その後、層間絶縁膜60を平坦化するために、500℃以上の熱処理を行う。続いて、リソグラフィー技術をドライエッチング法を用いて、半導体基板10およびエッチングストップ膜450を貫通し、それぞれコンタクトプラグ60a、60bの上面に達する2つのコンタクトホールを形成する。続いて、2つのコンタクトホールの内面上に、例えばTiNからなる密着層70を形成した後、Wなどからなる導電膜80をコンタクトホールに埋め込むことで、密着層70と導電膜80とから構成されるコンタクトプラグ60a、60bを同時に形成することができる。
【0078】
続いて、図6(d)に示すように、半導体基板10の全面上に、例えば膜厚が50〜200nmのW膜を堆積し、リソグラフィー技術とドライエッチング法を用いて、コンタクトプラグ60a、60bに接続される配線層700をそれぞれ形成する。その後、所定の工程を経て、本実施形態の半導体装置を製造することができる。なお、所定の工程の中には、500℃以上の高温での熱処理工程が含まれる。
【0079】
本実施形態の半導体装置およびその製造方法の特徴は、水素含有量が6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲内であるエッチングストップ膜450を備えていることにある。このため、シリサイド層45b上に形成したコンタクトプラグ60の抵抗値とシリサイド層45bの面積とは、上述の図4(d)に示す結果と同様な関係が得られる。従って、本実施形態の半導体装置の製造方法を用いれば、コンタクトプラグの形成後に、例えば500℃以上の高温での熱処理が施されても、エッチングストップ膜450からシリサイド層45の表面に水素が供給されることで、シリサイド層の表面に酸素が集中するのを抑制することができる。その結果、絶縁物の発生によるコンタクトプラグの抵抗値の上昇が抑えられ、比較的低抵抗なコンタクトを備え、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。なお、図4(d)より、コンタクトプラグ1個当たりのシリサイド層45の面積は、10μm以下であれば、コンタクトプラグの抵抗値が実用可能な範囲となるため好ましい。
【0080】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法では、層間絶縁膜600の下にエッチングストップ膜450を備えていることで、本実施形態の半導体装置のように、ゲート電極210上に設けられるコンタクトプラグ60aとシリサイド層45b上に設けられるコンタクトプラグ60bの各コンタクトホールの深さが異なる場合でも、同時に各コンタクトホールを形成することが可能となる。従って、低抵抗なコンタクトプラグを備えた半導体装置をより容易に製造することができる。
【0081】
また、本実施形態の半導体装置では、エッチングストップ膜450の材料としてSiN膜を用いたが、これに限定されるものではなく、水素を6×1021個/cm以上1×1022個/cm以下の範囲内で含んでいる材料であれば、効果的に使用できる。
【0082】
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について、図面を用いて説明する。図7(a)は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0083】
図7(a)の右図に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10内に形成された活性領域50と、活性領域50の上面上に形成され、CoSiなどからなるシリサイド層45と、シリサイド層45および半導体基板10の上に形成され、プラズマTEOS膜などからなる第1の層間絶縁膜15と、第1の層間絶縁膜15を貫通してシリサイド層45に接続されるコンタクトプラグ60と、コンタクトプラグ60および第1の層間絶縁膜15の上に形成された第2の層間絶縁膜16とを備えている。なお、コンタクトプラグ60は、コンタクトホールの内面に設けられた密着層70と、密着層70上に設けられ、Wなどからなり、コンタクトホールを埋める導電膜80とから構成されている。なお、図示はしていないが、活性領域50は、素子分離領域20により取り囲まれている。また、図7(a)の左図には、上記の半導体装置よりも面積が小さいシリサイド層45bを備えた半導体装置の一例を示している。
【0084】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について、図7(b)〜(d)を用いて説明する。
【0085】
まず、図7(b)に示すように、例えばSiからなる半導体基板10内に、活性領域50および素子分離層(図示せず)を形成した後、半導体基板10上に、例えばCo膜を5〜30nmの膜厚で堆積する。続いて、300℃〜500℃の熱処理を複数回行うことで、半導体基板10内に形成されたソース・ドレイン領域の上面上にシリサイド層45を形成する。なお、素子分離領域20の上面上に残存した未反応のCo膜は、硫過水で洗浄することにより除去される。
【0086】
次に、図7(c)に示すように、半導体基板10の全面上に、例えば400〜1200nmの膜厚でプラズマTEOSからなる第1の層間絶縁膜15を堆積する。続いて、リソグラフィー技術とドライエッチング法により、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45の上面に達するコンタクトホールを形成する。次に、コンタクトホールの内面上に、ロングスロースパッタ法により、膜厚が5〜30nmのTiN膜からなる密着層70を形成する。その後、半導体基板10上にW膜を形成し、コンタクトホールに埋め込む。
【0087】
次に、図7(d)に示すように、第1の層間絶縁膜15およびコンタクトプラグ60の上に、例えば膜厚が300〜700nmで、HDP−NSG膜からなる第2の層間絶縁膜16を形成する。以降、所定の工程を経て、本実施形態の半導体装置を製造することができる。
【0088】
ここで、一般的に、微細な半導体装置のプロセスでは、コンタクトプラグ60の密着層70を形成する際は、コンタクトホールの内面上での密着層70の良好なカバレッジを得るために、CVD法を用いられることが多い。ところが、CVD法では、成膜の過程でシリサイド層へ不純物が混入し、該不純物の影響によりコンタクト底部で酸素が凝集する結果、コンタクト抵抗が上昇する不具合を引き起こすことがあった。そこで、CVD法の代わりに、スパッタ法により密着層70を成膜するための検討を行い、スパッタ法の中でもロングスロースパッタ法が最適であることがわかった。ここで、通常のスパッタ法では、基板表面に対して斜めに入射するスパッタ粒子が含まれるため、コンタクトホールの底部まで十分に膜が堆積する前に、コンタクトホールの入り口付近を成膜物質が塞いでしまい、カバレッジ良く成膜することが難しい場合があった。一方、ロングスロースパッタ法は、通常のスパッタ法よりもガス圧を下げて、半導体基板と成膜を行うターゲットとを、プロセス圧力時の原子や分子の平均自由工程に相当する距離分だけ離して成膜する方法である。この方法を用いることで、微細化に伴ってアスペクト比の高いコンタクトホールを用いた場合でも、カバレッジ良く、コンタクトホールの内面上に密着層70を形成することができる。
【0089】
また、スパッタを行う装置を用い、基板にバイアスをかけてイオン化した原子を基板表面に対して真っ直ぐに導入することで、カバレッジ性を向上させる方法においても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0090】
このように、本実施形態の半導体装置およびその製造方法の特徴は、コンタクトプラグ60を構成する密着層70をコンタクトホールの内面上に形成する際に、ロングスロースパッタ法を用いることにある。この方法では、コンタクトホールの底部に露出するシリサイド層45が反応性ガスに晒されるのを防止することができるため、不純物が混入するのを抑制しつつ、カバレッジ良く密着層70を形成することができる。その結果、不純物の影響によるコンタクトプラグの上昇を抑制することができ、微細化されても低抵抗なコンタクトプラグを備え、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0091】
また、図7(a)の右図に示すように、シリサイド層45の面積が比較的大きく、コンタクトプラグの底部にかかる構造的ストレスが大きくなる場合でも、ロングスロースパッタ法の効果により、コンタクトプラグの底部に酸素が凝集するのを抑制することができる。従って、比較的面積の大きいシリサイド層45上にコンタクトプラグを形成することが可能となり、微細化されても歩留まり良く安定にコンタクトプラグを形成できる。
【0092】
なお、上述の第2〜第5の実施形態の半導体装置の製造方法においては、密着層70の形成方法として、CVD法を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、本実施形態の半導体装置の製造方法にように、ロングスロースパッタ法を用いてもよい。この場合、コンタクトプラグの抵抗値の上昇をより抑制することが可能となる。
【0093】
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を用いて説明する。本実施形態の半導体装置の製造方法では、上述の第2の〜第6の半導体装置の製造方法におけるコンタクトプラグの形成工程の変形例を示している。図8(a)、(b)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。なお、図8(a)、(b)の右には、比較的面積が大きいシリサイド層45を備えている場合の製造方法の例を示している。一方、同図の左には、比較的面積が小さいシリサイド層45bを備えている半導体装置の製造方法を示している。
【0094】
まず、図8(a)に示すように、例えばSiからなる半導体基板10内に、活性領域50および素子分離層(図示せず)を形成した後、半導体基板10上に、例えばCo膜を5〜30nmの膜厚で堆積する。続いて、300℃〜500℃の熱処理を複数回行うことで、半導体基板10内に形成されたソース・ドレイン領域の上面上にシリサイド層45を形成する。なお、素子分離領域20の上面上に残存した未反応のCo膜は、硫過水で洗浄することにより除去される。
【0095】
次に、図8(b)に示すように、半導体基板10の全面上に、例えば400〜1200nmの膜厚でプラズマTEOSからなる第1の層間絶縁膜15を堆積する。続いて、リソグラフィー技術とドライエッチング法により、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45の上面に達するコンタクトホールを形成する。次に、半導体基板10の上方から、加速電圧を5keV以上30keV以下とし、ドーズ量を1×1012cm−2以上1×1015cm−2以下として、イオン注入法により水素イオン(H)を打ち込む。これにより、コンタクトホールの底部に露出したシリサイド層45中に水素イオン(H)が供給される。以降、上述の実施形態のコンタクトプラグの形成工程と同様にして、コンタクトホールに密着層および導電膜を埋め込むことで、シリサイド層45上にコンタクトプラグを形成することができる。
【0096】
本実施形態の半導体装置の製造方法の特徴は、コンタクトプラグを形成する工程で、コンタクトホールの底部に露出したシリサイド層45へ、イオン注入法により所定の条件で水素イオンを導入することにある。この方法によれば、コンタクトプラグの底部にかかる構造的ストレスが大きくなっても、シリサイド層45中に水素が存在するために、シリサイド層45中からコンタクトプラグの底部へと拡散される酸素量を低減させることができる。そのため、絶縁物の発生によるコンタクトプラグの抵抗値の上昇を抑制でき、比較的低抵抗なコンタクトプラグを備え、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0097】
(第8の実施形態)
以下、本発明の第8の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を用いて説明する。本実施形態の半導体装置の製造方法では、上述の第2の〜第6の半導体装置の製造方法おけるコンタクトプラグの形成工程の変形例を示している。図9(a)、(b)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。なお、図9(a)、(b)の右には、比較的面積が大きいシリサイド層45を備えている場合の工程例を示している。一方、同図の左には、比較的面積が小さいシリサイド層45bを備えている半導体装置の製造方法を示している。
【0098】
まず、図9(a)に示すように、例えばSiからなる半導体基板10内に、活性領域50および素子分離層(図示せず)を形成した後、半導体基板10上に、例えばCo膜を5〜30nmの膜厚で堆積する。続いて、300℃〜500℃の熱処理を複数回行うことで、半導体基板10内に形成されたソース・ドレイン領域の上面上にシリサイド層45を形成する。なお、素子分離領域20の上面上に残存した未反応のCo膜は、硫過水で洗浄することにより除去される。
【0099】
次に、図9(b)に示すように、半導体基板10の全面上に、例えば400〜1200nmの膜厚でプラズマTEOSからなる第1の層間絶縁膜15を堆積する。続いて、リソグラフィー技術とドライエッチング法により、第1の層間絶縁膜15を貫通し、シリサイド層45の上面に達するコンタクトホールを形成する。次に、水素の占める割合が例えば95%以上である水素雰囲気中で、300〜500℃の温度を加えて、2〜30分のアニール処理を行う。以降、上述の実施形態のコンタクトプラグの形成工程と同様にして、コンタクトホールに密着層および導電膜を埋め込むことで、シリサイド層45上にコンタクトプラグを形成することができる。
【0100】
本実施形態の半導体装置の製造方法の特徴は、コンタクトプラグ60を形成する工程で、コンタクトホールの底部に露出したシリサイド層45に対して、水素雰囲気中でアニール処理することで、シリサイド層45中に水素イオンを供給することにある。この方法により、シリサイド層45中からコンタクト底部へと拡散される酸素量を低減させることができるため、絶縁物の発生によるコンタクトプラグの抵抗値の上昇を抑制できる。その結果、比較的低抵抗なコンタクトプラグを備え、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0101】
また、図9(a)の右図に示すように、シリサイド層45の面積が比較的大きく、コンタクトプラグの底部にかかる構造的ストレスが大きくなる場合でも、シリサイド層45中に水素イオンが存在することで、コンタクトプラグの底部に酸素が凝集しにくくなる。従って、比較的面積の大きいシリサイド層45上にコンタクトプラグを形成することが可能となり、微細化されても歩留まり良く安定にコンタクトプラグを形成できる。
【0102】
なお、上述の本発明の各実施形態に係る半導体装置およびその製造方法において、シリサイド層45の材料としては、CoSi以外に、Ni、Fe、V、Nb、Mo、およびReのうちいずれか1つの金属と、シリコンとの化合物から構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、DRAMやFeRAMなどの半導体装置の微細化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】(a)は、第1の実施形態の半導体装置に係る評価パターンを示す上面図であり、(b)は、第1の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図であり、(c)は、シリサイド層の面積に対するコンタクトプラグの抵抗値を示す図である。
【図2】(a)は、第2の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図であり、(b)〜(d)は、第2の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。図2(e)は、第2の実施形態の半導体装置に係る評価パターンを示す上面図であり、(f)は、第2の実施形態の半導体装置に係るコンタクトプラグの抵抗値を示す図である。
【図3】(a)は、第3の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図であり、(b)〜(d)は、第3の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】(a)、(b)は、第3の実施形態の半導体装置に係る水素含有量を示す図であり、(c)は、第3の実施形態の半導体装置に係る評価パターンを示す図であり、(d)は、第3の実施形態の半導体装置に係るコンタクトプラグの抵抗値を示す図である。
【図5】(a)は、第4の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図であり、(b)〜(d)は、第4の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】(a)は、第5の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図であり、(b)〜(d)は、第5の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】(a)は、第6の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図であり、(b)〜(d)は、第6の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】(a)、(b)は、第7の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】(a)、(b)は、第8の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】(a)、(b)は、従来の半導体装置の構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0105】
10 半導体基板
15 第1の層間絶縁膜
16 第2の層間絶縁膜
17 第3の層間絶縁膜
20、20b 素子分離領域
40、40b シリサイド領域
45、45a、45b シリサイド層
50 活性領域
60、60a、60b、60c コンタクトプラグ
70 密着層
80 導電膜
100 最大距離
208 サイドウォール
209 ゲート酸化膜
210 ゲート電極
230 ビット線
240 酸素バリア膜
250 下部電極
270 強誘電体膜
280 上部電極
300 第1の水素バリア膜
310 第2の水素バリア膜
400 下部電極
410 容量絶縁膜
420 上部電極
450 エッチングストップ膜
600 層間絶縁膜
700 配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板内に形成された活性領域と、
前記活性領域の上面に形成されたシリサイド層と、
前記半導体基板および前記シリサイド層の上に形成された第1の層間絶縁膜と、
前記シリサイド層上に形成され、前記第1の層間絶縁膜を貫通するコンタクトプラグとを備えており、
前記コンタクトプラグ1個当たりの前記シリサイド層の面積は、前記コンタクトプラグの底面積以上、且つ、100μm以下である半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板と前記第1の層間絶縁膜との間および前記シリサイド層と前記第1の層間絶縁膜との間に形成され、前記コンタクトプラグの底部を囲み、水素を含む第1のエッチングストップ膜をさらに備えており、
前記コンタクトプラグは、前記第1のエッチングストップ膜を貫通する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記コンタクトプラグ上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された容量絶縁膜と、前記容量絶縁膜上に形成された上部電極とを有するキャパシタと、
前記第1の層間絶縁膜上に形成され、前記キャパシタの底部を囲み、水素を含む第2のエッチングストップ膜とをさらに備えている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記コンタクトプラグは、前記シリサイド層上に複数個設けられており、前記コンタクトプラグ1個当たりの前記シリサイド層の面積は、10μm以下である請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記コンタクトプラグ上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された強誘電体膜と、前記強誘電体膜上に形成された上部電極とを有する強誘電体キャパシタと、
前記強誘電体キャパシタの側面および上面を覆う第2の層間絶縁膜と、
前記第1の層間絶縁膜と前記第2の層間絶縁膜との間に形成され、前記強誘電体キャパシタの底部を囲み、水素を含む第1の保護膜と、
前記第2の層間絶縁膜の側面上および上面上に形成され、水素を含む第2の保護膜とをさらに備えている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記コンタクトプラグは、前記シリサイド層上に複数個設けられており、前記コンタクトプラグ1個当たりの前記シリサイド層の面積は、10μm以下である請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記シリサイド層は、Co、Ni、Fe、V、Nb、Mo、およびReのうち少なくともいずれか1つをさらに含む請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板内に活性領域を形成した後、前記活性領域の上面上にシリサイド層を形成する工程(a)と、
前記半導体基板上に第1の層間絶縁膜を形成した後、前記第1の層間絶縁膜を貫通し、前記シリサイド層の上面に達するコンタクトホールを形成する工程(b)と、
前記コンタクトホールに導電膜を埋め込むことにより、コンタクトプラグを形成する工程(c)とを備えており、
前記コンタクトプラグ1個当たりの前記シリサイド層の面積は、前記コンタクトプラグの底面積以上、且つ、100μm以下である半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記工程(c)の後、前記半導体基板を500℃以上の温度で加熱する工程(d)をさらに備えている請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(a)の後、且つ、前記工程(b)の前に、前記半導体基板上に、水素を含む第1のエッチングストップ膜を形成する工程(e)をさらに備えており、
前記工程(b)では、前記第1の層間絶縁膜および前記第1のエッチングストップ膜を貫通する前記コンタクトホールを形成し、
前記工程(e)において、前記第1のエッチングストップ膜中の水素の含有量は、6X1021個/cm以上1X1022個/cm以下である請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(c)の後、且つ、前記工程(d)の前に、前記コンタクトプラグおよび前記第1の層間絶縁膜の上に、水素を含む第2のエッチングストップ膜を形成する工程(f)と、
前記工程(f)の後、且つ、前記工程(d)の前に、前記第2のエッチングストップ膜を貫通して前記コンタクトプラグに接続され、下部電極と容量絶縁膜と上部電極とを有するキャパシタを形成する工程(g)とをさらに備えており、
前記工程(f)において、前記第2のエッチングストップ膜中の水素の含有量は、6X1021個/cm以上1X1022個/cm以下である請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記工程(c)の後、且つ、前記工程(d)の前に、前記コンタクトプラグおよび前記第1の層間絶縁膜の上に、水素を含む第1の保護膜を形成する工程(h)と、
前記工程(h)の後、且つ、前記工程(d)の前に、前記第1の保護膜を貫通して前記コンタクトプラグに接続され、下部電極と強誘電体膜と上部電極とを有する強誘電体キャパシタを形成する工程(i)と、
前記工程(i)の後、且つ、前記工程(d)の前に、前記第1の保護膜の上に、前記強誘電体キャパシタの側面および上面を覆う第2の層間絶縁膜を形成した後、前記第2の層間絶縁膜の側面上および上面上に、水素を含む第2の保護膜を形成する工程(j)とをさらに備えており、
前記工程(h)における前記第1の保護膜中の水素の含有量および前記工程(j)における前記第2の保護膜中の水素の含有量は、それぞれ6X1021個/cm以上1X1022個/cm以下である請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程(c)は、ロングスロースパッタ法により、前記コンタクトホールの内面上に密着層を形成する工程をさらに含んでいる請求項8〜12のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(b)は、イオン注入法により、前記コンタクトホールの底面に設けられた前記シリサイド層へ水素イオンを注入する工程をさらに含んでいる請求項8〜13のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程(b)では、加速電圧を5keV以上30keV以下とし、ドーズ量を1×1012cm−2以上1×1015cm−2以下として、水素イオンを注入する請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記工程(b)は、前記コンタクトホールを形成した後、水素雰囲気中で前記半導体基板をアニール処理する工程をさらに含んでいる請求項8〜13のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−270663(P2008−270663A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114548(P2007−114548)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】