説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】高容量・高精度なMIM静電容量素子を少ない工程で製造する技術を提供する。
【解決手段】第1層間絶縁膜17上に静電容量素子の下部電極21と第2層配線22とを同時に形成した後、第1層間絶縁膜17上に堆積した第2層間絶縁膜24に開口部34を形成する。次に、開口部34内を含む第2層間絶縁膜24上に順次堆積した容量絶縁膜27、第2金属膜および保護金属膜29を順次堆積し、第2層間絶縁膜24上の保護金属膜29、第2金属膜および容量絶縁膜27をCMP法で研磨・除去することによって、開口部34内に容量絶縁膜27、第2金属膜からなる上部電極28および保護金属膜29を残す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、集積回路内にMIM(Metal Insulator Metal)構造の静電容量素子を有する半導体装置およびその製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログ−ディジタルLSI(Large Scale Integrated circuit)に内蔵される種々のフィルタ回路やアナログ−ディジタルコンバータ回路、RF(RadioFreauency)送受信LSIに内蔵される送受信回路などにおいて、高容量・高精度で、かつリーク電流の少ない静電容量素子が要求されている。また、LSIのコスト低減のために、静電容量素子の高集積化も要求されている。
【0003】
この種の静電容量素子として、半導体基板上に形成した金属膜からなる一対の電極(下部電極および上部電極)間に容量絶縁膜を配置する、いわゆるMIM構造の静電容量素子が知られている。
【0004】
例えば非特許文献1には、半導体基板上に下部電極用金属膜、容量絶縁膜および上部電極用金属膜を順次堆積した後、フォトレジスト膜をマスクにしたドライエッチングでこれらの膜をパターニングすることによって、平行平板型MIM構造の静電容量素子を形成する技術が記載されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、半導体基板上に形成した下部電極の上部の層間絶縁膜に開口部を設け、この開口部内に容量絶縁膜層と上部電極とを形成する静電容量素子の製造技術が記載されている。
【0006】
上記特許文献1に記載された静電容量素子の製造方法は、半導体基板の第1層間絶縁膜上に第1金属膜(例えばアルミニウム合金膜)を形成する工程と、上記第1金属膜上に第1上層バリア膜(例えばチタン膜と窒化チタン膜との積層膜)を形成する工程と、上記第1金属膜と第1上層バリア膜の積層膜を加工して、第1金属配線と静電容量素子の下部電極とを同時に形成する工程と、上記第1金属配線および下部電極を覆う第2層間絶縁膜を形成する工程と、上記第2層間絶縁膜を部分的に除去し、上記下部電極の一部を構成する第1上層バリア膜の上面の一部を露出する工程と、露出した上記下部電極の第1バリア膜上に静電容量素子の容量絶縁膜(例えば窒化シリコン膜)を形成する工程と、上記第2層間絶縁膜および静電容量絶縁膜上に第2金属膜(例えばアルミニウム合金膜)を形成する工程と、上記第2金属膜上に第2上層バリア膜(例えばチタン膜と窒化チタン膜との積層膜)を形成する工程と、上記第2金属膜と第2上層バリア膜の積層膜を加工して、第2金属配線と静電容量素子の上部電極とを同時に形成する工程とを有している。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された静電容量素子の製造方法は、半導体基板上の絶縁膜の表面に第1層金属膜(例えばTiN膜−AlCu膜−TiN膜)の積層膜からなる静電容量素子の第1電極(下部電極)を形成する工程と、上記第1電極上に第1層間絶縁膜を形成する工程と、上記第1層間絶縁膜の一部をエッチングし、第1電極の表面が露出する開口部を形成する工程と、上記開口部内を含む第1層間絶縁膜上に誘電体膜(例えば窒化シリコン膜)および第2層金属膜(例えばAlCu膜−TiN膜の積層膜)を堆積する工程と、上記第2層金属膜および誘電体膜を化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polish)法で研磨し、開口部内に誘電体膜および静電容量素子の第2電極(上部電極)を形成する工程とを有している。
【0008】
特許文献3は、MIS(Metal Insulator Silicide)構造の静電容量素子の形成方法に関するものであるが、半導体基板上に金属シリサイド膜(例えばNiシリサイド)からなる静電容量素子の下部電極を形成した後、上記下部電極上の凹部(周囲が酸化膜で囲まれた凹部)内に例えば窒化膜からなる容量絶縁膜と金属膜(例えばNi膜)からなる上部電極とを形成する方法を開示している。
【0009】
上記静電容量素子は、金属シリサイド膜/容量絶縁膜/金属膜の積層構造を有するN型MISトランジスタのゲート電極を形成する工程で同時に形成される。また、静電容量素子の容量絶縁膜と上部電極は、下部電極上の凹部内を含む酸化膜上に堆積した容量絶縁膜と金属膜とをCMP法で研磨し、この容量絶縁膜と金属膜とを開口部内に残すことによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−210996号公報
【特許文献2】特開2005−142435号公報
【特許文献3】特開2007−201062号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】アイビーエム ジャーナル・リサーチ・アンド・ディベロップメント2003年 47号(IBM J.RES & DEV. Vol. 47 No. 2/3 MARCH/MAY 2003) pp101-135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図29は、上述した非特許文献1に開示された技術であり、下部電極上に容量絶縁膜と上部電極用金属膜を順次積層して形成した静電容量素子構造(平行平板型MIM容量素子)である。本発明者らは、図29に示す素子構造を図30に示す製造方法を適用することで形成し、検証を行った。
【0013】
まず、図30(a)に示すように、半導体基板50上に酸化シリコン膜のような絶縁膜51を堆積した後、絶縁膜51上に下部電極用の第1金属膜52a、容量絶縁膜53、上部電極用の第2金属膜54aを順次堆積する。
【0014】
次に、図30(b)に示すように、フォトレジスト膜100をマスクにしたドライエッチングで第2金属膜54aをパターニングすることによって、上部電極54を形成する。この工程では、第2金属膜54aをパターニングする際のエッチングで下部電極用の第1金属膜52aがエッチングされないことが要求されるため、容量絶縁膜53上でエッチングの進行が止まるようにする必要がある。ここで、高容量な容量素子を形成するためには、容量絶縁膜53の膜厚を薄くすることが有効な手法であるが、容量絶縁膜53が薄くなるにつれて前述のドライエッチングが困難となる。この点が非特許文献1が内在する問題点の一つである。
【0015】
次に、図30(c)に示すように、フォトレジスト膜101をマスクにしたドライエッチングで容量絶縁膜53および第1金属膜52aをパターニングすることによって、下部電極52および第1層配線56、57を形成する。ここまでの工程で、下部電極52、容量絶縁膜53および上部電極54からなる静電容量素子55が完成する。
【0016】
一般に、LSIは、配線層数が少ない程、その製造コストを削減できるため、配線層数は出来るだけ少なくすることが要求される。また、配線層毎の集積度を上げることもLSIのコスト削減には有効である。係る点から、下部電極52は、電源配線や信号配線などの一般配線(第1層配線56、57)と同時に形成することが望ましい。また、一般配線は、高集積度も要求される。配線を高集積する手法として、配線幅と間隔を縮減すること、いわゆる微細加工技術が必要となる。微細加工を行うためには、フォトリソグラフィ技術の物理的制約から、フォトレジスト膜の厚さを薄くすることが要求される。従って、第1金属膜52aをパターニングするフォトレジスト膜101は、上部電極54を完全に覆い、エッチング中に上部電極54が露出しない程度のエッチング耐性を考慮した十分な膜厚を確保しなければならず、係る点において製造方法の確立が困難になるという問題が生じる。
【0017】
次に、図30(d)に示すように、上部電極54、下部電極52および第1層配線57を覆う層間絶縁膜58にコンタクトホール60、61、62を形成して、上部電極54、下部電極52、第1層配線57のそれぞれの表面を露出させた後、コンタクトホール60、61、62の内部に金属プラグ63を埋め込む。その後、層間絶縁膜58の上部に第2層配線64、65、66を形成することにより、図29に示す構造が完成する。
【0018】
上記した平行平板型静電容量素子構造においては、上部電極54と下部電極52との物理的距離が容量絶縁膜53の膜厚分しか確保できないので、電極端部に電界が集中し、電界強度が増大する。しかし、静電容量素子において電界強度の増加は、リーク電流の増加を引き起こし、耐圧特性を低下させる要因となる。従って、このような構造では、容量絶縁膜の薄膜化による高容量・高安定の高い静電容量素子を実現することは困難である。
【0019】
図31は、下部電極の上部の層間絶縁膜に開口部を設け、この開口部内に容量絶縁膜層と上部電極とを形成する特許文献1の静電容量素子構造(溝型MIM容量素子)である。本発明者らは、図31の構造を図32および図33に示す製造方法を適用することで形成し、検証を行った。
【0020】
まず、図32(a)に示すように、半導体基板50上に堆積した第1層間絶縁膜70上に下部電極用の第1金属膜71aを堆積した後、図32(b)に示すように、フォトレジスト膜103をマスクにしたドライエッチングで第1金属膜71aをパターニングすることによって、下部電極71および下層配線72、73、74を形成する。
【0021】
ここでは、下部電極71と下層配線72、73、74とが同時に形成されるが、下層配線72、73、74のみを形成する場合と比べてプロセスを変更する必要がないので、前述した平行平板型静電容量素子を形成する場合とは異なり、下部電極71の加工性が低下することはない。
【0022】
次に、図32(c)に示すように、下部電極71および下層配線72、73、74を覆う第2層間絶縁膜75を堆積する。ここで、第2層間絶縁膜75は、下部電極71および下層配線72、73、74を完全に覆うことができるような膜厚で堆積する必要がある。
【0023】
次に、図32(d)に示すように、フォトレジスト膜104をマスクにしたドライエッチングで第2層間絶縁膜75に開口部76を形成し、下部電極71の上面の一部を露出させる。
【0024】
次に、図33(a)に示すように、開口部76の内部を含む第2層間絶縁膜75上に容量絶縁膜77、上部電極用の第2金属膜78aを順次積層した後、図33(b)に示すように、フォトレジスト膜105をマスクにしたドライエッチングで第2金属膜78aおよび容量絶縁膜77をパターニングすることによって、開口部76を覆う上部電極78および容量絶縁膜77を形成する。ここまでの工程で、下部電極71、容量絶縁膜77および上部電極78からなる静電容量素子79が完成する。
【0025】
ここでは、フォトリソグラフィ技術を用いて第2金属膜78aおよび容量絶縁膜層77をパターニングするので、フォトレジスト膜105と開口部76との合わせずれを考慮し、フォトレジスト膜105の径を開口部76の径よりも大きくする必要がある。従って、開口部76内に形成された容量絶縁膜77および上部電極78は、それらの端部が開口部76の外側(第2層間絶縁膜75の上部)に位置することになる。
【0026】
次に、図33(c)に示すように、第2層間絶縁膜75にコンタクトホール80、81を形成して、下部電極71、下層配線74のそれぞれの表面を露出させた後、コンタクトホール80、81の内部に金属プラグ82を埋め込む。その後、層間絶縁膜58の上部に第2層配線83、84、85を形成することにより、図31に示す構造が完成する。
【0027】
上記した溝型静電容量素子の製造方法においては、開口部76の外側(第2層間絶縁膜75の上部)に位置する上部電極78の下方の層間絶縁膜58が容量絶縁膜の機能を果たし、第2層間絶縁膜75上の上部電極78とその下方の下部電極71との間に寄生容量が発生する。この寄生容量は、静電容量素子79に並列接続された容量と見なすことができるので、特に微細な静電容量素子79、すなわち開口部76の面積が小さい静電容量素子79において、単位面積あたりの静電容量(容量密度)が大きく見えることとなる。また、このような寄生容量は、フォトリソグラフィ工程での製造ばらつきに応じて変動するため、誤差精度を見積もることが不可能であり、微細な静電容量素子79を高精度に形成することは困難である。
【0028】
特許文献2には、上述した図33(a)に示す工程の後、化学的機械研磨法を用いて第2層間絶縁膜75上の第2金属膜78aおよび容量絶縁膜77を研磨・除去し、開口部76内に容量絶縁膜77および上部電極78を形成する技術が記載されている。しかし、この技術の場合、第2層間絶縁膜75の平坦性が不十分であったり、第2層間絶縁膜75に大きさの異なる開口部76が存在したりする場合には、第2層間絶縁膜75上に第2金属膜78aが残留したり、開口部76内の上部電極78(第2金属膜78a)が必要以上に研磨されたりするという問題が生じる。
【0029】
特許文献3に開示されたMIS構造の静電容量素子は、下部電極材料に金属シリサイド膜を用いている。しかし、この金属シリサイド膜は、多結晶シリコン膜とその上部に形成した金属膜とを反応させて形成するので、多晶質シリコン膜表面の凹凸などにより容量密度のばらつきが大きくなるという問題がある。
【0030】
本発明の目的は、高容量・高精度なMIM静電容量素子を少ない工程で製造する技術を提供することにある。
【0031】
本発明の他の目的は、高容量・高精度なMIM静電容量素子の微細化を推進する技術を提供することにある。
【0032】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0034】
本発明の好ましい一態様である半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された下部電極と容量絶縁膜と上部電極とを有するMIM構造の静電容量素子を備えた半導体装置の製造方法であって、前記静電容量素子を形成する工程は、
(a)半導体基板上の第1層間絶縁膜上に形成した第1金属膜をパターニングして前記下部電極を形成する工程と、
(b)前記第1層間絶縁膜および前記下部電極の上部に第2層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記第2層間絶縁膜の一部に開口部を形成し、前記開口部の底面に前記下部電極の表面を露出させる工程と、
(d)前記第2層間絶縁膜の上部、前記開口部の側壁および前記底面を覆うように容量絶縁膜を形成する工程と、
(e)前記容量絶縁膜の上部に第2金属膜および保護金属膜を順次形成し、前記開口部を前記保護金属膜で埋め込む工程と、
(f)前記第2層間絶縁膜の上部の前記保護金属膜、前記第2金属膜および前記容量絶縁膜を化学的機械研磨法で研磨・除去することにより、前記開口部の内部に前記容量絶縁膜、前記第2金属膜からなる前記上部電極および前記保護金属膜を残す工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0035】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0036】
本発明の好ましい一態様である半導体装置の製造方法によれば、高容量・高精度なMIM静電容量素子を少ない工程で製造することができる。
【0037】
本発明の好ましい一態様である半導体装置の製造方法によれば、高容量・高精度なMIM静電容量素子の微細化を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における半導体装置の要部を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における半導体装置の要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1における半導体装置の要部を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図17】(a)、(b)、(c)は、本発明のMIM容量素子と、比較例1および比較例2の容量素子のミスマッチ特性を示すグラフである。
【図18】平行平板型MIM容量素子と溝型MIM容量素子の絶縁破壊耐力をプロットしたグラフである。
【図19】本発明の実施の形態2における半導体装置の要部を示す断面図である。
【図20】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図25】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図29】本発明者が検討した従来の平行平板型MIM容量素子を示す断面図である。
【図30】(a)〜(d)は、本発明者が検討した従来の平行平板型MIM容量素子の製造方法を示す断面図である。
【図31】本発明者が検討した従来の溝型MIM容量素子を示す断面図である。
【図32】(a)〜(d)は、本発明者が検討した従来の溝型MIM容量素子の製造方法を示す断面図である。
【図33】(a)〜(c)は、図32に続く溝型MIM容量素子の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。また、以下の実施の形態を説明する図面においては、構成を分かり易くするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における半導体装置の要部を示す断面図である。図1に示すように、シリコン単結晶よりなる半導体基板10には、nチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effective Transistor)Qnおよびpチャネル型MISFETQpが形成されており、nチャネル型MISFETQnおよびPチャネル型MISFETQpの上部には、絶縁膜11を介して第1層配線12、13、14、15、16が形成されている。また、第1層配線12〜16の上部には第1層間絶縁膜17を介して第2層配線20、22、23および下部電極21が形成されている。
【0041】
第2層配線20、22、23および下部電極21の上部には第2層間絶縁膜24が形成されており、下部電極21の上部の第2層間絶縁膜24には、底面に下部電極21が露出する開口部34が形成されている。また、この開口部34の内部には、下層から順に容量絶縁膜27、上部電極28および保護金属膜29が埋め込まれている。
【0042】
上記開口部34の下層に形成された下部電極21、開口部34の内部に形成された容量絶縁膜27、上部電極28および保護金属膜29は、MIM構造の静電容量素子25を構成している。
【0043】
第2層間絶縁膜24および開口部34の上部には第3層間絶縁膜30が形成されており、開口部34に埋め込まれた保護金属膜29の上部の第3層間絶縁膜30には、コンタクトホール35が形成されている。保護金属膜29は、このコンタクトホール35内に形成された金属プラグ38を介して第3層間絶縁膜30上の第3層配線31に接続されている。
【0044】
また、第3層間絶縁膜30の上部には、上記第3層配線31と共に第3層配線32、33が形成されている。静電容量素子25の上部電極28および保護金属膜29は、第2層間絶縁膜24によって第3層配線31と隔てられているため、静電容量素子25の上方に第3層配線31以外の配線(第3層配線32、33)が配置されていても支障はない。
【0045】
第3層配線32の下層の第3層間絶縁膜30および第2層間絶縁膜24には2個のコンタクトホール36、37が形成されている。第3層配線32は、コンタクトホール36内の金属プラグ38を介して静電容量素子25の下部電極21に接続され、かつコンタクトホール37の金属プラグ38を介して第2層配線に接続されている。
【0046】
以下の図においては、上記第1層間絶縁膜17よりも下層の領域の図示を省略し、第1層間絶縁膜17およびその上層の領域のみを図示するものとする。
【0047】
図2は、上記第2層配線21、静電容量素子25および第3層配線31、32を上方から見た平面図である。図2には、上記静電容量素子25と同一の構造を有する3個の静電容量素子25が示されており、図1は、そのうちの1個が形成された領域を示している。静電容量素子25が形成される開口部34の平面形状は、正方形あるいは長方形など、第2層配線20〜23のレイアウトに応じて適宜変更することができる。また、図3は、上記第2層配線21、静電容量素子25、コンタクトホール35および第3層配線31を上方から見た斜視図、図4は、図1の一部を拡大して示す断面図である。
【0048】
次に、上記静電容量素子25を有する半導体装置の製造方法について、図5〜図16を参照しながら工程順に説明する。なお、前記図1に示したnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpの形成工程から第1層配線12〜16の形成工程までは常法に従って行えばよいので、その説明は省略する。
【0049】
図5は、前記図1に示した第1層配線12〜16の上部に第1層間絶縁膜17を堆積した状態を示している。第1層間絶縁膜17は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法で堆積した酸化シリコン膜からなる。
【0050】
次に、図6に示すように、第1層間絶縁膜17上に第1金属膜40を堆積した後、第1金属膜40上にBARL(Bottom Anti Reflection Layer)膜41を堆積する。第1金属膜40は、例えばスパッタリング法で堆積した窒化チタン膜、アルミニウム合金膜および窒化チタン膜からなる。BARL膜41は、次の工程で第1金属膜40上に形成するフォトレジスト膜を露光する際、フォトレジスト膜を透過して第1金属膜40の表面で反射した露光光によるフォトレジスト膜の異常露光を防ぐための反射防止膜である。BARL膜41は、例えばCVD法で堆積した酸窒化シリコン膜からなる。また、BARL膜41に代えて、もしくはBARL膜41と共にBARC(Bottom Anti Refelction Coat)膜やTARC(Top Anti Reflection Coat)膜などを使用しても同様の効果が得られる。また、上記したフォトレジスト膜の異常露光が無視できる場合は、これらの反射防止膜を使用しなくともよい。
【0051】
次に、図7に示すように、BARL膜41の上部に塗布したフォトレジスト膜106を露光・現像することによって、第1層配線形成領域および下部電極形成領域にフォトレジスト膜106を残す。続いて、図8に示すように、フォトレジスト膜106をマスクにしたドライエッチングでBARL膜41および第1金属膜40をパターニングすることによって、下部電極21および第2層配線22を形成する。
【0052】
次に、フォトレジスト膜106を除去した後、図9に示すように、下部電極21および第2層配線22の上部に第2層間絶縁膜24を堆積し、続いて、CMP法を用いて第2層間絶縁膜24の表面を平坦化する。第2層間絶縁膜24は、例えばCVD法で堆積した酸化シリコン膜からなる。
【0053】
次に、図10に示すように、第2層間絶縁膜24の上部に形成したフォトレジスト膜107をマスクにして下部電極21の上部の第2層間絶縁膜24およびBARL膜41をドライエッチングすることにより、下部電極21の表面が露出する開口部34を形成する。開口部34は上に開いた略U字型の断面形状を有する窪みであり、その深さは、下部電極21の表面から平坦な第2層間絶縁膜24の表面までの高さに等しい。ここまでの工程で、半導体基板10の表面は、開口部34が形成された領域のみに窪みを有する平坦な構造になっている。
【0054】
次に、フォトレジスト膜107を除去した後、図11に示すように、第2層間絶縁膜24の上部、開口部34の底面および側面を覆うように容量絶縁膜27を堆積する。容量絶縁膜27は、例えばCVD法で堆積した窒化シリコン膜からなる。また、容量絶縁膜27は、窒化シリコン膜よりも誘電率の高い絶縁膜、例えば酸化タンタル膜や酸化ハフニウム膜などで構成してもよい。
【0055】
次に、図12に示すように、容量絶縁膜27の上部に上部電極用の第2金属膜42を堆積し、続いて、第2金属膜42の上部に保護金属膜29を堆積する。第2金属膜42は、例えばスパッタリング法で堆積した窒化チタン膜からなり、保護金属膜29は、例えばCVD法で堆積したタングステン膜からなる。また、保護金属膜29は、開口部34の内部を完全に埋め込むような厚い膜厚で堆積する。
【0056】
上部電極用の第2金属膜42は、窒化チタン膜に代えて、窒化タンタルなどの金属化合物膜、あるいは銅、アルミニウム、タングステンなどの金属膜を用いてもよいが、高精度なMIM容量素子を形成するためには、下部電極21と同程度の抵抗率を有する材料を用いることが望ましい。また、保護金属膜29は、タングステン膜に代えて、アルミニウム、銅などの金属膜、あるいは窒化チタンなど金属化合物膜を用いてもよいが、次のCMP処理工程で第2金属膜42と共に研磨・除去できる性質を有する材料を使用する。
【0057】
次に、図13に示すように、CMP法を用いて第2層間絶縁膜24の上部の保護金属膜29、第2金属膜42および容量絶縁膜27を研磨・除去し、これらの膜を開口部34の内部のみに残す。このとき、開口部34の内部に残った保護金属膜29、第2金属膜42および容量絶縁膜27は、それぞれの上面が第2層間絶縁膜24の表面と同じ高さになる。ここまでの工程で、開口部34の下層に形成された下部電極21、開口部34の内部に形成された容量絶縁膜27、上部電極28(第2金属膜42)および保護金属膜29からなるMIM構造の静電容量素子25が完成する。
【0058】
次に、図14に示すように、第2層間絶縁膜24および静電容量素子25の上部に第3層間絶縁膜30を堆積する。第3層間絶縁膜30は、例えばCVD法で堆積した酸化シリコン膜からなる。第3層間絶縁膜30は、平坦な第2層間絶縁膜24の上部に堆積されるので、CMP処理を施さなくともその表面が平坦になる。
【0059】
次に、図15に示すように、第3層間絶縁膜30の上部に形成したフォトレジスト膜108をマスクにして保護金属膜29の上部の第3層間絶縁膜30をドライエッチングし、コンタクトホール35を形成する。また、このとき、下部電極21の上部の第3層間絶縁膜30、第2層間絶縁膜およびBARL膜41をドライエッチングしてコンタクトホール36を形成し、第2層配線22の上部の第3層間絶縁膜30、第2層間絶縁膜およびBARL膜41をドライエッチングしてコンタクトホール37を形成する。その後、コンタクトホール35、36、37の内部に金属プラグ38を形成する。金属プラグ38を形成するには、例えば第3層間絶縁膜30の上部およびコンタクトホール35、36、37の内部にスパッタリング法またはCVD法でタングステン膜または窒化チタン膜からなる金属膜を堆積し、続いて第3層間絶縁膜30の上部の金属膜をCMP法で研磨、除去する。
【0060】
次に、図16に示すように、第3層間絶縁膜30の上部に第3層配線31、32を形成する。第3層配線31、32の材料および形成方法は、下部電極21および第2層配線22と同じでよい。第3層間絶縁膜30の表面は十分に平坦であるため、微細なエッチングを行う際に障害となる凹凸がない。従って、第3層配線31、32の配線密度を高めることができる。ここまでの工程により、前記図1に示した半導体装置が完成する。
【0061】
次に、本発明の効果を説明する。図17は、上記の方法で製造した本発明のMIM容量素子、比較例1(図29、図30を用いて説明した平行平板型MIM容量素子)および比較例2(図31〜図33を用いて説明した溝型MIM容量素子)のミスマッチ特性を示すグラフである。グラフ(a)は比較例1のミスマッチ係数、グラフ(b)は比較例2のミスマッチ係数、グラフ(c)は、本発明のMIM容量素子のミスマッチ係数である。
【0062】
各グラフ(a)、(b)、(c)において、横軸は、MIM容量素子の設計上の面積の自乗根の逆数である。また、縦軸は、隣接するMIM容量素子の静電容量の差分をその平均値で除した値(容量ミスマッチ)をプロットしたものである。すなわち、隣接するMIM容量素子のばらつきが小さいほど容量ミスマッチは小さくなる。各グラフ内の点は、種々の面積のMIM容量素子において、容量ミスマッチを測定し、プロットした値を示している。また、各グラフにおいて、横軸(面積の自乗根の逆数)に対する縦軸(容量ミスマッチ)の傾きを容量ミスマッチ係数と称する。容量ミスマッチ係数は、容量素子のばらつき精度の評価指標として一般的に用いられ、前述の容量ミスマッチ係数が小さい値である程ばらつきが小さい高性能な容量素子であることを意味する。
【0063】
グラフ(a)、(b)、(c)に示すように、比較例1(平行平板型MIM容量素子)のミスマッチ係数は0.48、比較例2(溝型MIM容量素子)のミスマッチ係数は0.74、本発明に係るMIM容量素子のミスマッチ係数は0.41である。比較例2のミスマッチ係数が著しく大きい理由は、前述したように、フォトリソグラフィー技術とドライエッチング技術で形成することにより生じるマスク位置精度のばらつきによって、上部電極の端部が開口部の外側の層間絶縁膜上に位置し、層間絶縁膜を介して下層の配線との間に寄生容量が発生するためである、(図33参照)。そして、溝(開口部)の径が小さくなるにつれてMIM容量素子の容量値は小さくなり、相対的にMIM容量素子の容量値に対する寄生容量の影響が大きくなるため、寄生容量のばらつきが無視できない大きな値となる。
【0064】
従来の溝型MIM容量素子における寄生容量値は、製造するMIM容量素子の面積、すなわち溝(開口部)の低面積と上部電極の加工精度によるが、本発明者らが検討した構造では、最大3〜4%程度の影響を持つことが分かった。
【0065】
これに対し、MIM容量素子を形成する領域以外の領域で上部電極と下部電極とが対向しない平行平板型MIM容量素子および本発明構造では、上記のような寄生容量が生じないため、ばらつきの小さい高精度なMIM容量素子を形成することが可能となる。
【0066】
図18は、平行平板型MIMと溝型MIM容量素子の絶縁破壊耐力をプロットしたグラフである。横軸は、MIM容量素子に印加された容量絶縁膜厚1cmあたりの電界強度を示している。縦軸は、MIM容量素子に直流電圧を印加した際に容量絶縁膜が絶縁破壊に至ったMIM容量素子面積の累積値である。横軸は破壊電圧と称し、縦軸は累積欠陥密度と称する。すなわち、図18は、電圧が印加されたときに破壊に至るMIM容量素子の面積をプロットした図であり、同じ破壊電圧において累積欠陥密度が小さい素子ほど、高い安定性を有するMIM容量素子であることを示している。
【0067】
図18に示すように、破壊電圧が5.5MV/cm以下の場合において、平行平板MIM容量素子と本発明の溝型MIM容量素子とで累積欠陥密度に大きな差がある。例えば、破壊電圧5.0Vで比較した場合、平行平板MIM容量素子の累積欠陥密度は1.74/cmであるのに対して、本発明の溝型MIM容量素子は0.42/cmである。
【0068】
図29に示すように、平行平板型MIM容量素子において、電界集中を起こし得る上部電極54の端部と下部電極層52の表面との物理的な距離は、容量絶縁膜53の膜厚分しか確保できない。また、静電容量素子55を層間絶縁膜58で被覆したとき、上部電極54の端部と下部電極52の表面は、絶縁性に劣る同一の絶縁膜界面に接しているので、リーク電流が増える一因となる。
【0069】
一方、本発明の構造においては、図4に示すように、上部電極28の端部が下部電極21と接することはなく、両者の物理的距離は、開口部34の段差分、すなわち上部電極28の表面と層間絶縁膜24の上面の高さ分だけ確保されている。絶縁破壊に至り易い電極端部が物理的に十分に離れる構造となるため、絶縁破壊耐力は良好であるといえる。
【0070】
以上の2点が本発明における容量素子構造の効果である。さらに、付加的な効果として、次の2点も挙げることができる。
【0071】
溝型MIM容量素子の容量絶縁膜は、その製造方法から明らかなように、膜厚、膜質に対する制約が少ない。一方、本発明者らが検討した前記平行平板型MIM容量素子は、上部電極の端部での電界集中、および前述した上部電極の加工時の制約があるため、容量絶縁膜の膜厚に制約が生じる。この点から、溝型MIM容量素子の方が高い静電容量を有する容量素子を形成することが可能である。
【0072】
また、上述の通り、下部電極は、同層の配線を加工する工程で形成することができるので、特別な配線層などを形成する必要がない。そのため、LSIの高集積化、および配線層数の抑制が期待でき、LSIの製造コストの低減を図ることができる。
【0073】
アナログ−ディジタル回路を搭載した半導体措置には、一般的によく知られているパイプライン型アナログ−ディジタルコンバータ回路や、逐次比較型アナログ−ディジタルコンバータ回路が搭載されるが、このようなアナログ−ディジタルコンバータ回路の性能改善には、高精度で高容量な静電容量素子が不可欠である。従って、本発明の容量素子構造は、このような回路に搭載する容量素子に適用することが有効といえる。
【0074】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、第1金属膜40(例えば窒化チタン膜、アルミニウム合金膜、窒化チタン膜の積層膜)を同時に加工して静電容量素子25の下部電極21と第2層配線22を形成したが、本発明の特徴の一つは、静電容量素子25を形成するに際して、下部電極21と同層の配線(第2層配線22)および上層の配線(第3層配線31、32)の形成過程に影響を与えないことにある。従って、下部電極21、第2層配線22および第3層配線31、32を第1金属膜40と異なる金属材料で形成してもよい。
【0075】
図19は、CMP法を利用した、いわゆるダマシンプロセスによって下部電極21、第2層配線22および第3層配線31、32を形成した断面図である。以下、図20〜図24を参照しながら、ダマシンプロセスによって配線を形成する方法を説明する。前記実施の形態1と同様、以下の図においては、第1層間絶縁膜17よりも下層の領域の図示を省略し、第1層間絶縁膜17およびその上層の領域のみを図示するものとする。
【0076】
まず、図20に示すように、第1層間絶縁膜17に配線溝43、44を形成した後、第1層間絶縁膜17の上部および配線溝43、44の内部にバリア金属膜45を堆積し、続いてバリア金属膜45の上部にメッキ法を用いて銅膜46を形成する。配線溝43、44は、図示しないフォトレジスト膜をマスクにして第1層間絶縁膜17をドライエッチングすることによって形成する。バリア金属膜45は、例えばスパッタリング法で堆積した窒化タンタル膜からなる。また、銅膜46は、配線溝43、44の内部を完全に埋め込むような厚い膜厚で形成する。
【0077】
次に、図21に示すように、CMP法を用いて第1層間絶縁膜17の上部の銅膜46およびバリア金属膜45を研磨・除去し、これらの膜を配線溝43、44の内部のみに残す。このとき、配線溝43、44の内部に残った銅膜46およびバリア金属膜45は、それぞれの上面が第1層間絶縁膜17の表面と同じ高さになる。これにより、配線溝43の内部にバリア金属膜45と銅膜46の積層膜からなる下部電極21が形成され、配線溝44の内部にバリア金属膜45と銅膜46の積層膜からなる第2層配線22が形成される。
【0078】
次に、図22に示すように、第1層間絶縁膜17、下部電極21および第2層配線22の上部に拡散防止膜47を堆積した後、拡散防止膜47の上部に第2層間絶縁膜24を堆積する。拡散防止膜47は、下部電極21および第2層配線22のそれぞれの一部を構成する銅成分が第2層間絶縁膜24中に拡散するのを防ぐ絶縁膜であり、例えばCVD法で堆積した窒化シリコン膜や、酸素を添加した炭化シリコン膜などからなる。第2層間絶縁膜24は、例えばCVD法で堆積した酸化シリコン膜や、炭素を添加した酸化シリコン膜などからなる。第2層間絶縁膜24は、平坦な第1層間絶縁膜17の上部に堆積されるので、CMP処理を施さなくともその表面が平坦になる。
【0079】
次に、図23に示すように、下部電極21の上部の第2層間絶縁膜24および拡散防止膜47に開口部34を形成した後、開口部34の内部に容量絶縁膜27、上部電極28および保護金属膜29からなるMIM構造の静電容量素子25を形成する。開口部34を形成する方法および静電容量素子25を形成する方法は、前記実施の形態1で説明した方法と同じでよい(図10〜図13参照)。静電容量素子25の容量絶縁膜27は、前記実施の形態1で例示した材料を用いるが、下部電極21中の銅成分の拡散を防止できる材料が望ましい。上部電極28および保護金属膜29は、前記実施の形態1で例示した材料を用いる。
【0080】
次に、図24に示すように、第2層間絶縁膜24および静電容量素子25の上部に第3層間絶縁膜30を堆積した後、第3層間絶縁膜30に配線溝48、49を形成する。また、配線溝48の下部の第3層間絶縁膜30にコンタクトホール35を形成し、配線溝49の下部の第3層間絶縁膜30、第2層間絶縁膜24および拡散防止膜47にコンタクトホール36、37を形成する。配線溝48、49およびコンタクトホール35、36、37は、それぞれ図示しないフォトレジスト膜をマスクにしたドライエッチングで形成する。また、配線溝48、49とコンタクトホール35、36、37は、いずれを先に形成してもよい。また、静電容量素子25の保護金属膜29を銅で構成した場合は、銅成分が第3層間絶縁膜30中に拡散するのを防ぐため、第3層間絶縁膜30の下層に前記拡散防止膜47と同じ組成の拡散防止膜を堆積する。
【0081】
その後、ダマシンプロセスによって配線溝48、49およびコンタクトホール35、36、37の内部に第3層配線31、32を埋め込むことにより、前記図19に示した配線構造が完成する。第3層配線31、32の材料および形成方法は、前述した下部電極21、第2層配線22の材料および形成方法と同じでよい。
【0082】
(実施の形態3)
前記実施の形態1、2では、静電容量素子25の容量絶縁膜27、上部電極28および保護金属膜29を開口部34の内部に埋め込んだが、本実施の形態では、容量絶縁膜27の一部を開口部34の外側(第2層間絶縁膜24の表面)に残すプロセスを説明する。
【0083】
まず、図25に示すように、下部電極21の上部の第2層間絶縁膜24に開口部34を形成した後、第2層間絶縁膜24の上部、開口部34の底面および側面を覆うように容量絶縁膜27を堆積し、続いて容量絶縁膜27の上部に上部電極用の第2金属膜42を堆積した後、第2金属膜42の上部に保護金属膜29を堆積する。ここまでの工程は、前記実施の形態1の図5〜図12に示した工程と同じである。
【0084】
次に、図26に示すように、CMP法を用いて第2層間絶縁膜24の上部の保護金属膜29および第2金属膜42を研磨・除去する。このCMP処理では、第2層間絶縁膜24上の第2金属膜42が研磨・除去された時点で研磨を停止し、容量絶縁膜27を第2層間絶縁膜24上に残す。ここまでの工程で、開口部34の内部に容量絶縁膜27、上部電極28(第2金属膜42)および保護金属膜29が埋め込まれ、MIM構造の静電容量素子25が完成する。
【0085】
上記した容量素子25の形成方法では、第2層間絶縁膜24の表面に容量絶縁膜27が残留するが、第2層間絶縁膜24の表面の保護金属膜29および第2金属膜42は除去されるので、前述した特許文献1の溝型MIM容量素子構造において生じるような寄生容量の問題は生じない。従って、第2層間絶縁膜24の表面に容量絶縁膜27を残したまま、その後の工程(前記実施の形態1の図14以降の工程)を進めてもよい。
【0086】
しかし、第2層間絶縁膜24の表面に容量絶縁膜27が残留していると、その後、コンタクトホール36、37を形成する工程(図15参照)で第2層間絶縁膜24のエッチングが煩雑になる。また、2層間絶縁膜24の表面に誘電率の高い容量絶縁膜27が残留していると、第2層配線22と第3層配線32との間の寄生容量が増加する。
【0087】
そこで、このような問題が懸念される場合は、図27に示すように、フォトレジスト膜108をマスクにしたドライエッチングで第2層間絶縁膜24上の容量絶縁膜27を除去した後、その後の工程を進めればよい。ただし、この場合は、フォトリソグラフィ技術を用いて第2層間絶縁膜24上の容量絶縁膜27を除去するので、フォトレジスト膜108と開口部34との合わせずれを考慮し、フォトレジスト膜108の径を開口部34の径よりも大きくする必要がある。そのため、開口部34の周囲の第2層間絶縁膜24上に僅かに容量絶縁膜27が残留するが、コンタクトホール36、37の形成が煩雑になることはない。また、第2層配線22と第3層配線32との間の寄生容量の増加は、極めて僅かである。
【0088】
その後、図28に示すように、前記実施の形態1と同じ方法で第3層間絶縁膜30、コンタクトホール35、36、37および金属プラグ38を形成した後、第3層間絶縁膜30上に第3層配線31、32を形成する。
【0089】
上記の容量素子構造において、第2層間絶縁膜24の表面に残る容量絶縁膜27は、開口部34の近傍のみであるため、大きな寄生容量は発生せず、寄生容量を小さくできるという本発明の特徴は維持されている。
【0090】
近年は、より高容量なMIM容量素子の開発が望まれており、容量絶縁膜材料として、ハフニウム酸化物やタンタル酸化物のような低誘電率の材料を用いる場合、上部電極材料(第2金属膜42)や保護金属膜29と共に研磨・除去することが困難なため、層間絶縁膜24上に容量絶縁膜が残存する場合がある。
【0091】
この場合、容量素子25の上層にコンタクトホール35〜37を形成する際に、第2層配線22および下部電極21を露出させるためには、第3層間絶縁膜30、容量絶縁膜27、第2層間絶縁膜24からなる積層膜を加工しなくてはならない。また、上下の配線層間に形成する層間絶縁膜は、一般に、配線層間の寄生容量を低減する目的で低誘電率の材料を選択するのが一般的である。他方、MIM容量素子の容量増加を実現するためには、高誘電率の層間絶縁膜を選択することが望ましい。従って、多くの場合、上層の層間絶縁膜、容量絶縁膜、下層の層間絶縁膜からなる積層膜は、異なった絶縁材料が積層されることになる。そのため、ドライエッチング技術を用いてコンタクトホール35〜37を形成する工程において、ドライエッチングに用いるガスなどを加工途中で変更する手法や、異なった膜を同時にドライエッチングできる手法を用いる必要が生じ、加工が著しく煩雑になる。
【0092】
本実施の形態の上記容量素子構造は、このような不具合を解消する効果を有する。また、前述した上下の配線層間の寄生容量を低減するためには、配線層間に設ける層間絶縁膜の誘電率を下げることが効果的であるが、上記容量素子構造においては、第2層間絶縁膜24の表面の容量絶縁膜27を開口部34の近傍のみに残すので、配線層間の寄生容量を低減できる効果もある。前記実施の形態1の場合、係る効果を求めるためには、CMP法を用いて保護金属膜29、上部電極用の第2金属膜42および容量絶縁膜27を研磨する際、保護金属膜29および第2金属膜42と同時に研磨可能な容量絶縁膜27を選択しなければならないので、容量絶縁膜27の材料選択の自由度が狭められる。従って、本実施の形態の上記容量素子構造は、このような問題を解消できる効果もある。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、例えばアナログ−ディジタルLSIのように、高容量・高精度なMIM静電容量素子を必要とする半導体装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
10 半導体基板、
11 絶縁膜、
12、13、14、15、16 第1層配線、
17 第1層間絶縁膜、
20、22、23 第2層配線、
24 第2層間絶縁膜、
21 下部電極、
25 静電容量素子、
27 容量絶縁膜、
28 上部電極、
29 保護金属膜、
30 第3層間絶縁膜、
31、32、33 第3層配線、
34 開口部、
35、36、37 コンタクトホール、
38 金属プラグ、
40 第1金属膜、
41 BARL膜、
42 第2金属膜、
43、44 配線溝、
45 バリア金属膜、
46 銅膜、
47 拡散防止膜、
48、49 配線溝、
50 半導体基板、
51 絶縁膜、
52a 第1金属膜、
52 下部電極、
53 容量絶縁膜、
54a 第2金属膜、
54 上部電極、
55 静電容量素子、
56、57 第1層配線、
58 層間絶縁膜、
60、61、62 コンタクトホール、
63 金属プラグ、
64、65、66 第1層配線、
70 第1層間絶縁膜、
71a 第1金属膜、
71 下部電極、
72、73、74 下層配線、
75 第2層間絶縁膜、
76 開口部、
77 容量絶縁膜、
78a 第2金属膜、
78 上部電極、
79 静電容量素子、
80、81 コンタクトホール、
82 金属プラグ、
83、84、85 第2層配線、
100〜108 フォトレジスト膜、
Qn nチャネル型MISFET、
Qp pチャネル型MISFET。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成されたMIM構造の静電容量素子を備えた半導体装置であって、
半導体基板上の第1層間絶縁膜上に形成された第1金属膜を有してなる下部電極と、
前記第1層間絶縁膜および前記下部電極の上部に形成された第2層間絶縁膜と、
前記第2層間絶縁膜の一部に形成され、その底面に前記下部電極の表面が露出する開口部と、
前記開口部の側壁および前記底面を覆うように形成された容量絶縁膜と、
前記容量絶縁膜の上部に形成された第2金属膜を有してなる上部電極と、
前記上部電極の上部に形成され、かつ前記開口部を埋め込むように形成された保護金属膜と、
を備え、
前記開口部内に形成された前記容量絶縁膜、前記上部電極および前記保護金属膜は、それぞれの上面が前記第2層間絶縁膜の表面と同じ高さになるように平坦化されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記下部電極を構成する前記第1金属膜は、前記第1層間絶縁膜に形成された配線溝の内部に埋め込まれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記配線溝の内部に埋め込まれた前記第1金属膜は、銅を含む金属膜を有してなり、
前記開口部の前記底面を除く前記第1層間絶縁膜上には、前記銅の拡散を防止する絶縁膜がさらに形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2層間絶縁膜の上部に形成された第3層間絶縁膜と、前記第3層間絶縁膜の上部に形成された第1上層配線とをさらに備え、
前記第1上層配線は、前記第3層間絶縁膜に形成された第1コンタクトホール内の金属プラグを介して、前記開口部内の前記保護金属膜に電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記第3層間絶縁膜の上部に形成された第2上層配線をさらに備え、
前記第2上層配線は、前記第3層間絶縁膜および前記第2層間絶縁膜に形成された第2コンタクトホール内の金属プラグを介して、前記下部電極に電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、
前記開口部の近傍の前記第2層間絶縁膜の表面には、前記開口部の内部に埋め込まれた前記容量絶縁膜の一部は、前記開口部の周囲の前記第2層間絶縁膜の表面に延在していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
半導体基板上に形成された下部電極と容量絶縁膜と上部電極とを有するMIM構造の静電容量素子を備えた半導体装置の製造方法であって、
前記静電容量素子を形成する工程は、
(a)半導体基板上の第1層間絶縁膜上に形成した第1金属膜をパターニングして前記下部電極を形成する工程と、
(b)前記第1層間絶縁膜および前記下部電極の上部に第2層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記第2層間絶縁膜の一部に開口部を形成し、前記開口部の底面に前記下部電極の表面を露出させる工程と、
(d)前記第2層間絶縁膜の上部、前記開口部の側壁および前記底面を覆うように前記容量絶縁膜を形成する工程と、
(e)前記容量絶縁膜の上部に第2金属膜および保護金属膜を順次形成し、前記開口部を前記保護金属膜で埋め込む工程と、
(f)前記第2層間絶縁膜の上部の前記保護金属膜、前記第2金属膜および前記容量絶縁膜を化学的機械研磨法で研磨・除去することにより、前記開口部の内部に前記容量絶縁膜、前記第2金属膜を有してなる前記上部電極および前記保護金属膜を残す工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)の工程で前記開口部内に残された前記容量絶縁膜、前記上部電極および前記保護金属膜は、それぞれの上面が前記第2層間絶縁膜の表面と同じ高さになるように平坦化されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)の工程は、前記第1金属膜をパターニングすることによって、前記第1層間絶縁膜上に下層配線を形成する工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)の工程では、前記第2層間絶縁膜の上部の前記保護金属膜および前記第2金属膜を化学的機械研磨法で研磨・除去し、前記第2層間絶縁膜の上部に前記容量絶縁膜を残すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置の製造方法において、
前記開口部の上部を覆うフォトレジスト膜をマスクにして、前記第2層間絶縁膜の上部に残った前記容量絶縁膜をエッチングする工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)の工程は、
(a−1)前記第1層間絶縁膜の一部に配線溝を形成する工程と、
(a−2)前記第1層間絶縁膜の上部および前記配線溝の内部に前記第1金属膜を堆積し、前記配線溝の内部を前記第1金属膜で埋め込む工程と、
(a−3)前記第1層間絶縁膜の上部の前記第1金属膜を化学的機械研磨法で研磨・除去することにより、前記配線溝の内部に前記第1金属膜を有してなる前記下部電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1金属膜は、銅を含む金属膜を有してなり、
前記(a−3)の工程の後、前記第1層間絶縁膜の上部に前記銅の拡散を防止する絶縁膜を形成する工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)の工程の後、
(g)前記第2層間絶縁膜の上部に第3層間絶縁膜を形成する工程と、
(h)前記第3層間絶縁膜に第1コンタクトホールを形成し、前記第1コンタクトホールの内部に金属プラグを形成する工程と、
(i)前記第3層間絶縁膜上に第1上層配線を形成し、前記第1コンタクトホールの内部の前記金属プラグを介して前記第1上層配線と前記開口部内の前記保護金属膜とを電気的に接続する工程と、
をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)の工程は、前記第3層間絶縁膜および前記第2層間絶縁膜に第2コンタクトホールを形成し、前記第2コンタクトホールの内部に金属プラグを形成する工程をさらに含み、
前記(i)の工程は、前記第3層間絶縁膜上に第2上層配線を形成し、前記第2コンタクトホールの内部の前記金属プラグを介して前記第2上層配線と前記下部電極とを電気的に接続する工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−181627(P2011−181627A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43192(P2010−43192)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】