説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】 NiSiが用いられたシリサイド上ライナー窒化膜のエッチング特性を改善し、コンタクトホール底での過度のエッチングを防止する。
【解決手段】 半導体基板301の素子活性領域にシリサイド層308を形成する工程と、半導体基板上にライナーになるシリコン窒化膜309を形成する工程と、シリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程とを含み、シリコン窒化膜は、原子層蒸着法によりジクロロシランとアンモニアを用いて曝露するサイクルを繰り返すことにより成膜され、成膜段階におけるアンモニアガスの曝露時間は、表面反応が平衡状態になる緩和時間の2〜10倍である。これにより、窒化膜中の塩素濃度を低減でき、Si−N結合が増やすことができるため、ウェットエッチング耐性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にコンタクトホールの形成方法において、低温原子層蒸着によるシリコン窒化膜をドライエッチングのストッパー(以下ライナー窒化膜と言う)に用いる半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を明らかにするため、図7を用いて従来の半導体装置の一般的な製造方法及び構造を簡潔に説明する。
【0003】
まず、図7(a)に示すように、シリコン基板等の半導体基板901の表面に素子分離902を形成し、素子活性領域を形成する。次いで、ウェル形成(図示せず)、ゲート絶縁膜903、ゲート電極904、サイドウォール905及び、ソース・ドレイン領域(図示せず)を形成する。
【0004】
次に、素子活性領域には、半導体素子の微細化及び高速化に伴い、65nmノード以降、低抵抗かつ細線抵抗の小さいニッケルシリサイド(NiSi)を形成する。図7(b)に示すように、シリサイド形成領域にニッケル906を10nm程度スパッタ後、チタンナイトライド907を堆積し250℃〜350℃でアニールを行い、シリコンとニッケルを反応させる。
【0005】
次に、図7(c)に示すように、チタンナイトライド907及び未反応のニッケル906を除去した後、350℃〜550℃程度でアニールを行うことで、NiSi層908を形成する。NiSiは耐熱性に乏しく、NiSiからNiSi2への相転移温度である500度以下の熱処理でも、NiSiが高抵抗なNiSi2に転移する。
【0006】
次に、図7(d)に示すように、ドライエッチングストッパーとしてのライナー窒化膜909は、従来、低圧化学気相蒸着(LP−CVD)法を用いて形成されていたが、500℃程度が限界であるLP−CVDでの成膜温度では、NiSiが高抵抗なNiSi2に相転移するため、400度以下で成膜可能な原子層蒸着(Atomic Layer Deposition、以下ALD)、又はプラズマCVDで窒化膜を成膜する。
【0007】
次に、図7(e)に示すように、ライナー窒化膜909を形成した後、層間絶縁膜910(NSG,BPSG等)を形成する。
【0008】
次に、図7(f)に示すように、層間絶縁膜910上にフォトレジストを塗布し、露光現像処理を行い、所定の形状にパターニングする。続いて、パターニングされたフォトレジストを介して層間絶縁膜910とライナー窒化膜909の選択比の高いドライエッチングを行い、次いでライナー窒化膜909を、窒化膜とシリコン基板の選択比の高いガスでエッチングすることによってコンタクトホール911を開口する。
【0009】
次に、フォトレジストを除去した後、バリアメタルとしてMOCVDにてチタン及びチタンナイトライドを成膜し、タングステンを埋め込みソース・ドレイン領域に電気的に接続されたコンタクトを形成する。
【特許文献1】特開2004−104098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図9を参照し、従来構造の問題点を簡潔に説明する。NiSiの耐熱性を考慮して、低温成膜された窒化膜は、エッチング耐性に乏しく、コンタクト形成ドライエッチ後にポリマー除去するためにフッ酸ウェットエッチングを行った場合、ライナー窒化膜202のウェットエッチング速度が、層間絶縁膜203より速いため、図9(a)に示すように、窒化膜が後退する。コンタクトホール底が広がった形状205だと、コンタクトホール底でのバリアメタルの被覆性が悪くなるため、接合リークの増大や、信頼性や歩留まりの低下の原因になっている。
【0011】
また、図8に示すようにコンタクトホール底を曲面にしようとするとフッ素の割合の多いエッチングガスを用いることになり、ドライエッチング速度をコントロールしにくいため、図9(b)に示すように、ALD法で成膜された窒化膜をドライエッチした際に、コンタクトホール底が角型206になる。そのため、図9(c)に示すように、続くMOCVDでのバリアメタル207形成において微細化されたコンタクトホール底208でバリアメタルのカバレッジが悪化するという課題があった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、前記課題に鑑み、ライナー窒化膜のエッチング特性を改善し、コンタクトホール底での過度のエッチングを防止することができる半導体装置の製造方法および半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の半導体装置の製造方法は、半導体基板の素子活性領域にシリサイド層を形成する工程と、前記半導体基板上にライナーになるシリコン窒化膜を形成する工程と、前記シリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程とを含み、前記シリコン窒化膜は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition)によりジクロロシランとアンモニアを用いて曝露するサイクルを繰り返すことにより成膜され、前記成膜段階における前記アンモニアガスの曝露時間は、表面反応が平衡状態になる緩和時間の2〜10倍である。
【0014】
請求項2記載の半導体装置の製造方法は、半導体基板の素子活性領域にシリサイド層を形成する工程と、前記半導体基板上にライナーになるシリコン窒化膜を形成する工程と、前記シリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程とを含み、前記シリコン窒化膜は、原子層蒸着(Atomic Layer Deposition)法によりジクロロシランとアンモニアを用いて曝露するサイクルを繰り返すことにより成膜され、前記成膜の初期段階における前記アンモニアガスの曝露時間は、表面反応が平衡状態になる緩和時間の2〜10倍である。
【0015】
請求項3記載の半導体装置の製造方法は、請求項1または2記載の半導体装置の製造方法において、前記緩和時間は、表面に吸着している前記ジクロロシラン中のシリコン−水素結合と前記アンモニアとの反応が律速するまでの時間である。
【0016】
請求項4記載の半導体装置の製造方法は、請求項2記載の半導体装置の製造方法において、前記成膜の初期段階は、前記成膜の全サイクル数の50%以下である。
【0017】
請求項5記載の半導体装置は、半導体基板の素子活性領域に形成されたシリサイド層と、前記半導体基板上に形成されたライナーになるシリコン窒化膜と、前記シリコン窒化膜上に形成された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールとを備え、前記シリコン窒化膜は膜中に塩素を含有し、前記膜中の塩素濃度より前記半導体基板側界面付近の塩素濃度が低い濃度勾配を持つ。
【0018】
請求項6記載の半導体装置は、請求項5記載の半導体装置において、前記シリコン窒化膜は、膜中の窒素/シリコンの比より前記半導体基板側界面付近の窒素/シリコンの比が高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1記載の半導体装置の製造方法によれば、シリコン窒化膜は、原子層蒸着法によりジクロロシランとアンモニアを用いて曝露するサイクルを繰り返すことにより成膜され、成膜段階におけるアンモニアガスの曝露時間は、表面反応が平衡状態になる緩和時間の2〜10倍であるので、400℃以下の低温にて、ALD法を用いてライナー窒化膜としてシリコン窒化膜を形成しても、窒化膜中の塩素濃度を低減でき、Si−N結合が増やすことができるため、ウェットエッチング耐性を向上できる。つまり、Si−Cl結合がSi−N結合へ置き換わっており、窒素/シリコン比を比較した場合、従来、400℃以下のALD法で成膜された窒化膜中に比べ窒素/シリコン比が高くなっているため、エッチングに対してSi−N結合が切れにくく、エッチング耐性を持たせることができる。そのため、ドライエッチング阻止層のライナー窒化膜をドライエッチングした後にフッ酸洗浄を行っても、コンタクトホール底のライナー窒化膜が後退することを防ぎ、接合リークの低減や信頼性や歩留まりを向上できる。
【0020】
また、ドライエッチング耐性を高めることができるので、ライナー窒化膜エッチング時に、過度のエッチングによりコンタクトホール底が角型形状になることを防ぐことができ、バリアメタルのカバレッジを改善できるため、接合リークの低減及び信頼性や歩留まりを向上することができる。
【0021】
本発明の請求項2記載の半導体装置の製造方法によれば、シリコン窒化膜は、原子層蒸着法によりジクロロシランとアンモニアを用いて曝露するサイクルを繰り返すことにより成膜され、成膜の初期段階におけるアンモニアガスの曝露時間は、表面反応が平衡状態になる緩和時間の2〜10倍であるので、請求項1の効果に加えて成膜時間を短くすることができる。すわなち、ALD法でシリコン窒化膜を形成する成膜開始時に、アンモニアプラズマ曝露時間を長くしてアンモニアラジカルと残留塩素を反応させ、NiSi/ライナー窒化膜界面付近の塩素濃度を低減させることで、ドライエッチング耐性を高めるとともにトータルの成膜時間を短くすることができる。
【0022】
請求項3では、緩和時間は、表面に吸着しているジクロロシラン中のシリコン−水素結合とアンモニアとの反応が律速するまでの時間であり、この時間を基準にアンモニアガスの曝露時間を設定する。
【0023】
請求項4では、請求項2記載の半導体装置の製造方法において、前記成膜の初期段階は、前記成膜の全サイクル数の50%以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の請求項5記載の半導体装置によれば、シリコン窒化膜は膜中に塩素を含有し、膜中の塩素濃度より半導体基板側界面付近の塩素濃度が低い濃度勾配を持つので、請求項2記載の半導体装置の製造方法により製造することができ、同様の効果が得られる。
【0025】
請求項6では、請求項5記載の半導体装置において、シリコン窒化膜は、膜中の窒素/シリコンの比より半導体基板側界面付近の窒素/シリコンの比が高いことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の半導体装置の製造方法の工程を示した断面図である。
【0027】
まず、図1(a)に示すように、シリコン基板等の半導体基板301の表面に、素子分離302を形成し、素子活性領域を形成する。次いで、ウェル形成(図示せず)、ゲート絶縁膜303、ゲート電極304、サイドウォール305及び、ソース・ドレイン領域(図示せず)を形成する。
【0028】
次に、図1(b)に示すように、2層の金属膜306及び307を順次堆積させる。好ましくは、下層の金属膜306はニッケル(Ni)であり、上層の金属膜307はチタンナイトライド(TiN)である。
【0029】
続いて、250℃〜350℃で第1アニールを行い、Ni膜306とシリコン基板301を反応させる。この結果、図1(c)に示すように、シリコン基板301の表面に、半導体と金属との化合物(シリサイド)308が形成される。
【0030】
その後、Ni膜306の未反応部分及びTiN膜307を除去し、第2アニールを350℃〜550℃程度で行いNiSi層308を形成する。
【0031】
尚、NiSiは耐熱性に乏しく、相転移温度である500℃以下の熱処理でもNiSiが高抵抗のNiSi2に相転移する可能性がある。そのため、後工程であるコンタクトや配線工程でのプロセスを低温化する必要がある。
【0032】
特に、シリサイド形成後のドライエッチストッパーとしてのライナー窒化膜形成でのプロセス温度は、NiSiの耐熱性を考慮すれば、450℃以下の低温プロセスが必須となるため、従来のLP−CVDで成膜することは困難である。本発明の実施形態では、図1(d)に示すように、400℃以下で成膜可能なALD法によるシリコン窒化膜を用いてライナー窒化膜309を形成する。この後、前記図7(e)、(f)と同様にシリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程とを行う。
【0033】
ALD法でシリコン窒化膜を形成する場合、シリコンソースには、例えば、ジクロロシランを使用し、およそ3秒曝露した後、反応管内を窒素ガスで、およそ5秒パージし残留ジクロロシラン及び塩化水素等を取り除く。窒素ソースには、ウェハから隔離された場所でプラズマ処理されたアンモニアガス(アンモニアラジカル)を用い、約4秒曝露した後、再び窒素ガスを5秒パージする。図2(a)に示すように、これを1サイクルとし、所望の膜厚に達するまでサイクルを繰り返す。
【0034】
アンモニアラジカルの曝露時間tは、図2(b)に示すように、デポレートが飽和する時間より決定され、炉内温度に依存するため、350℃での曝露時間tは、5秒である。また、この曝露時間tは、アンモニアをラジカル化するプラズマパワーなどによっても変化する。
【0035】
シリコン基板上での反応を図3に示す。まず、熱分解されたジクロロシランがシリコン基板上に吸着、及び反応する(図3(a)〜(c))。続いて、チューブ内を窒素ガスにてパージし残留ジクロロシラン及び、ジクロロシラン由来の塩化水素を取り除いた後、アンモニアラジカルを、曝露し表面に吸着反応しているジクロロシランと反応させる(図3(d))。この時、表面での反応平衡状態は図3(e)のようになる。400℃以下の非常に低温でジクロロシランとアンモニアを反応させる場合、アンモニアラジカルは、ジクロロシラン中のSi−ClよりSi−Hと反応しやすい。これは、350℃成膜されたALDのシリコン窒化膜のFTIR吸収スペクトルを観察すると、波数2174cm−1付近の強度がほとんどないことから、シリコン窒化膜中のSi−H結合がほとんどアンモニアラジカルと反応していることを示している。
【0036】
このため、400℃以下で成膜されたALDのシリコン窒化膜には多量に塩素が含まれる(図3(g))。これは、塩素がシリコンと結合した状態であって、従来のシリコン窒化膜と比較して窒素−シリコンの結合が少なくなり、膜密度を低下するため、エッチングに対して耐性が低下する主因と考えられる。
【0037】
特に400℃以下で成膜されたALDのシリコン窒化膜のフッ酸に対する耐性は、層間絶縁膜であるHDP−NSGよりエッチング速度が速いため、コンタクトホール形成後にポリマー除去するためにフッ酸洗浄すると、図9(a)に示すように、コンタクトホール底のシリコン窒化膜が後退する。
【0038】
そこで、ALD法でシリコン窒化膜を形成する成膜時のアンモニアプラズマ曝露時間を、表面反応が平衡に達する時間(緩和時間)tより、2〜10倍程度延ばすことによって、残留塩素とアンモニアラジカルを反応させる(図4の200サイクルまでの部分参照)。緩和時間tは、表面に吸着しているジクロロシラン中のシリコン−水素結合とアンモニアとの反応が律速するまでの時間である。なお、図4において、第1の実施形態では全サイクルでアンモニアプラズマ曝露時間を2×tとする。表面上での反応は式(1)に示すとおりであり、アンモニアラジカルの曝露時間を延ばすことによって、平衡を右に傾け、シリコン窒化膜中の塩素濃度を低減させる。
【0039】
Si(NH)Cl+NH3*→Si(NH2)2+HCl …(1)
従来、400℃以下のALD法で成膜された窒化膜中の塩素濃度と比較して1/10〜1/100の塩素濃度を持つALD窒化膜が形成される。つまり、図3(f)、(h)に示すように、Si−Cl結合がSi−N結合へ置き換わっており、窒素/シリコン比を比較した場合、従来、400℃以下のALD法で成膜された窒化膜中に比べ窒素/シリコン比が高くなっているため、エッチングに対してSi−N結合が切れにくく、エッチング耐性を持たせることができる。
【0040】
以上のようにして、シリコン窒化膜中の塩素濃度を低減し、シリコン−窒素結合を増やすことによって、400℃以下の低温で成膜されたALDのシリコン窒化膜のウェットエッチング耐性を向上させることができ、コンタクトホール底のシリコン窒化膜が後退することを防ぐことができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図4〜図6に基づいて説明する。
【0041】
基本的には、図1に示した、第1の実施形態と同様な構造をしている。異なる点は、過度のドライエッチングにより、コンタクトホール底が角型になり、バリアメタルのカバレッジが悪化することを防止するために、シリコン窒化膜中でのドライエッチング速度を変化させている点である。
【0042】
第1の実施形態を用いて、ALD法でライナー窒化膜を形成すれば、ドライエッチングに対して耐性を持つことができるが、この方法は成膜速度が遅く、30nm成膜するには500回程度サイクルを繰り返すことになり、成膜時間が長時間になるためスループットが落ちる。
【0043】
さらに、耐熱性の低いNiSiを高温に曝す時間は、できるだけ短縮したいため、図2(b)で示したようにソースガスの曝露時間を最適化し、トータルの成膜時間を短くしている。
【0044】
しかし、従来の方法では、ドライエッチング耐性が乏しいので、ドライエッチング時にNiSi表面に損傷を与え、接合リークが増大したり、コンタクトホール底が角型になりバリアメタルのカバレッジが悪化するため、NiSi/ライナー窒化膜界面付近でのドライエッチング耐性を高める必要がある。
【0045】
そこで、図4に示すように、ALD法でシリコン窒化膜を形成する成膜開始時、例えば、200サイクルまでアンモニアプラズマ曝露時間を、表面反応が平衡に達する時間tより、2〜10倍程度延ばすことによって、アンモニアラジカルと残留塩素を反応させ、NiSi/ライナー窒化膜界面付近の塩素濃度を低減させる。この場合、アンモニアプラズマ曝露時間を200までのサイクルで2×tとし、200以降のサイクルでtとする。
【0046】
以上のようにして、図5(a)に示すように、塩素濃度が窒化膜中よりNiSi/窒化膜界面付近で低い濃度プロファイルを持ったシリコン窒化膜702が形成される。
【0047】
次に、図5(b)に示すように、塩素濃度に勾配を持った前記シリコン窒化膜を形成された半導体基板701に、層間絶縁膜703を堆積した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)で平坦化する。層間絶縁膜703は、シリコン酸化膜であって、BPSG、NSGなどを、単層あるいは多層膜として形成する。
【0048】
次に、図5(c)に示すように、所定の領域にフォトレジストをパターニングし、層間絶縁膜703をドライエッチングする。エッチングガスは、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜に対して高選択比を持つものであり、例えば、ヘキサフルオロブタジエンと酸素、アルゴンの混合ガスを用い、窒化膜でエッチングが阻止されたコンタクトホール704を形成する。
【0049】
続いて、図5(d)に示すように、シリコン窒化膜702をドライエッチングする。エッチングガスは、例えば、トリフルオロメタンと酸素の混合ガスを用い、シリコン窒化膜/シリコン基板に対して高選択比を持たせ、シリコン基板まで続くコンタクトホール705を形成する。
【0050】
窒化膜は、深さ方向に対して、塩素の濃度、及び窒素−シリコンの結合数が異なり、膜中でのエッチング速度が異なるため、NiSi表面に損傷を与えることなく、また、コンタクトホール底の形状が角型になることを防ぐ。
【0051】
次に、図5(e)に示すように、バリアメタル層706を形成する。バリアメタル層706は、例えば、MOCVDにて、チタン、チタンナイトライド等を用い、単層及び多層膜で形成する。コンタクトホール底が角型になっていれば、図9(c)に示すように、バリアメタルのカバレッジが悪化する。しかしながら、第2の実施形態では、NiSi/シリコン窒化膜界面に高いドライエッチング耐性があり、エッチング面を曲面にするために、エッチング速度の速いフッ素の割合が大きいエッチングガスを用いても、容易に丸底のコンタクトホールを形成することができ、バリアメタルの良好なカバレッジを実現できる。
【0052】
尚、第2の実施形態は、当業者によって、多くの変形が可能であり、図6(a)に示すように、アンモニアラジカルの曝露時間が連続的に変化していてもよい。
【0053】
あるいは、図6(b)のように、アンモニアラジカルの曝露時間だけに限らず、ジクロロシランの曝露時間を変化させ、相対的にアンモニアラジカルの曝露時間を増やすことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、ニッケルシリサイド上にコンタクトを形成する方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体素子の製造工程の断面図である。
【図2】(a)はALD窒化膜の形成方法についてガスサイクルを示した図、(b)はアンモニアラジカルの曝露時間を最適化するためのグラフである。
【図3】ALD窒化膜における従来の原子結合状態と本発明に係る原子結合状態を表した模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るガスサイクルを示した図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体素子の製造工程の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る補足資料でアンモニアラジカルの曝露時間を増やす説明図である。
【図7】従来の技術に係る半導体素子のコンタクトホール形成までの断面図である。
【図8】コンタクトホールの説明図である。
【図9】コンタクトホール形成工程の課題について説明した図である。
【符号の説明】
【0056】
301,701 半導体基板
306 Ni
307 TiN
308 NiSi
309,702 ライナー窒化膜
703 層間絶縁膜
704,705 コンタクトホール
706 バリアメタル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の素子活性領域にシリサイド層を形成する工程と、
前記半導体基板上にライナーになるシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程とを含み、
前記シリコン窒化膜は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition)によりジクロロシランとアンモニアを用いて曝露するサイクルを繰り返すことにより成膜され、
前記成膜段階における前記アンモニアガスの曝露時間は、表面反応が平衡状態になる緩和時間の2〜10倍であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板の素子活性領域にシリサイド層を形成する工程と、
前記半導体基板上にライナーになるシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程とを含み、
前記シリコン窒化膜は、原子層蒸着(Atomic Layer Deposition)法によりジクロロシランとアンモニアを用いて曝露するサイクルを繰り返すことにより成膜され、
前記成膜の初期段階における前記アンモニアガスの曝露時間は、表面反応が平衡状態になる緩和時間の2〜10倍であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記緩和時間は、表面に吸着している前記ジクロロシラン中のシリコン−水素結合と前記アンモニアとの反応が律速するまでの時間である請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記成膜の初期段階は、前記成膜の全サイクル数の50%以下である請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板の素子活性領域に形成されたシリサイド層と、
前記半導体基板上に形成されたライナーになるシリコン窒化膜と、
前記シリコン窒化膜上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールとを備え、
前記シリコン窒化膜は膜中に塩素を含有し、前記膜中の塩素濃度より前記半導体基板側界面付近の塩素濃度が低い濃度勾配を持つことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記シリコン窒化膜は、膜中の窒素/シリコンの比より前記半導体基板側界面付近の窒素/シリコンの比が高い請求項5記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−253248(P2006−253248A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64820(P2005−64820)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】