説明

半導体装置の製造方法

【課題】基板に付着している大気の成分を除去する。
【解決手段】ロードロック室に基板が搬入されると、ロードロック室の中は、まず排気され、その後パージガスが導入されて圧力が上昇する。そしてロードロック室は再び排気される。これにより、基板上に付着している大気の成分は除去される。その後、基板はロードロック室から処理室に搬送され、処理室の中で処理される。基板を処理する工程は、例えば大気に含まれる成分と反応するガスを用いて基板に膜を成膜する工程である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードロック室を有する半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に気相処理を行う半導体製造装置は、基板に気相処理を行う処理室の他に、ロードロック室を有することが多い。ロードロック室は、基板を外部から半導体製造装置に搬入するための室である。ロードロック室は、基板が搬入された後、排気される。その後、基板はロードロック室から処理室に搬送される。
【特許文献1】特開2004−146781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板は、ロードロック室に搬入されるまでは大気に晒されているため、表面に大気の成分が付着していることが多い。この付着している成分は、ロードロック室を単純に排気するのみでは除去できなかった。このため、大気の成分と反応するガスを処理室で使用すると、基板の表面に異物が生成することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、基板が外部から搬入されるロードロック室と、前記基板に気相処理を行う処理室とを備える半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記ロードロック室に前記基板を搬入する工程と、
前記ロードロック室を排気する工程と、
前記ロードロック室にパージガスを導入して前記ロードロック室の圧力を上昇させる工程と、
前記ロードロック室を再び排気する工程と、
前記基板を前記ロードロック室から前記処理室に搬送する工程と、
を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0005】
本発明によれば、前記ロードロック室を排気した後、前記ロードロック室にパージガスを導入して前記ロードロック室の圧力を上昇させている。このため、パージガスの分子運動により、基板に付着している大気の成分を除去することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板を処理室に搬送する前に、基板に付着している大気の成分を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0008】
図1は、本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示すフローチャートであり、図2は図1に示した半導体装置の製造方法に用いられる半導体製造装置の構成を示す図である。この半導体製造装置は、基板10が外部から搬入されるロードロック室100と、基板10に気相処理を行う処理室140とを備える。ロードロック室100に基板が搬入されると、ロードロック室100の中は、まず排気され、その後パージガスが導入されて圧力が上昇する。そしてロードロック室100は再び排気される。これにより、基板10上に付着している大気の成分は除去される。その後、基板10はロードロック室100から処理室140に搬送され、処理室140の中で処理される。
【0009】
図2に示す半導体製造装置は、さらにゲートバルブ50,52,54、及び搬送室120を備える。ゲートバルブ50は、ロードロック室100と外部とを繋いでいる。ゲートバルブ52は、ロードロック室100と搬送室120を繋いでいる。ゲートバルブ54は、搬送室120と処理室140を繋いでいる。搬送室120の中には、搬送ロボット122が位置している。搬送ロボット122は、ロードロック室100の中の未処理の基板10を処理室140に搬送し、また処理室140内の処理済の基板10をロードロック室100に戻す。
【0010】
ロードロック室100内において、基板10はカセット102に複数保持されている。ロードロック室100内においてカセット102は、保持部101に保持されている。複数の基板10は、カセット102ごとロードロック室100に搬入され、かつロードロック室100から搬出される。
【0011】
ロードロック室100には、排気部104及びガス導入部106が繋がっている。排気部104は、真空ポンプを有しており、ロードロック室100の中を排気する。ガス導入部106は、ロードロック室100にパージガスを導入する。パージガスは、例えばN2ガス、Arガス、又はHeガスである。排気部104及びガス導入部106は、制御部108によって制御されている。制御部108は、ロードロック室100に取り付けられた圧力計(図示せず)の測定値に基づいて、排気部104及びガス導入部106を制御する。また制御部108は、ゲートバルブ50,52,54、搬送ロボット122、及び処理室140の各部分を制御する。
【0012】
次に、図1及び図3を用いて本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を詳細に説明する。図3は、図1に示した半導体装置の製造方法におけるロードロック室100の圧力変動を示す図である。まず制御部108は、ゲートバルブ50を開いて、ロードロック室100の中にカセット102を搬入させる(S10)。次いで制御部108は、排気部104を動作させることにより、ロードロック室100の中を排気する(S20)。
【0013】
ロードロック室100の中の圧力が所定値(例えば1×10-6Torr)以下になると、制御部108は、排気部104の動作を停止する。次いで制御部108は、ガス導入部106を動作させて、ロードロック室100の中を所定の圧力まで昇圧する。このときの昇圧速度は、ロードロック室100の中のパーティクルを舞い上げないように、ある程度ゆっくりした速度になる。また所定の圧力は、好ましくは1気圧超、さらに好ましくは1.5気圧以上である。なお、所定の圧力は、好ましくは2気圧以下である。そして制御部108は、ガス導入部106の動作を停止して、ロードロック室100の圧力を一定時間(例えば120秒以上180秒以下)、所定の圧力に維持する(S30)。この一定時間は、半導体装置の生産性と後述する大気の成分の除去効果とのバランスにより定められる。
【0014】
なお、S20及びS30に示した工程は、複数回繰り返して行われても良い。
【0015】
その後制御部108は、排気部104を再び動作させ、ロードロック室100の中を排気する(S40)。制御部108は、ロードロック室100の中の圧力が所定値(例えば1×10-6Torr)以下になると、ゲートバルブ52,54、搬送ロボット122、及び処理室140の各部分を制御して、基板10の処理を開始する。具体的には、まず搬送ロボット122に、カセット102が保持する未処理の基板10を処理室140へ搬送させる(S50)。次いで、処理室140に基板10を処理させる(S60)。ここでの処理は、大気に含まれる成分(例えば酸素)と反応するガス、例えば有機金属ガスを用いて基板に膜を成膜する処理である。次いで、搬送ロボット122に、処理済の基板10を処理室140からカセット102に戻す(S70)。
【0016】
なお図3の点線で示すように、S50〜S70において制御部108は、ロードロック室100の中の圧力を、処理室140の中の圧力に合わせる。具体的には、制御部108は、処理室140で行われる処理が減圧で行われる場合はロードロック室100を減圧状態に維持し、処理室140で行われる処理が常圧で行われる場合は、ガス導入部106を動作させてロードロック室100を常圧に戻す。
【0017】
制御部108は、カセット102が保持するすべての基板を処理するまで、上記したS50〜S70の処理を繰り返す(S80)。その後制御部108は、排気部104の動作を終了して、ガス導入部106を動作させてロードロック室100を大気圧まで昇圧する(S90)。そして制御部108は、ゲートバルブ50を開いて、カセット102をロードロック室100から搬出させる(S100)。
【0018】
図4及び図5の各図は、図1のS60で行われる処理の一例を示す断面図である。本図に示す例において、製造される半導体装置は、電流狭窄構造を有する半導体レーザである。
【0019】
図4(a)は、図2に示した半導体製造装置の中に搬入される前の基板10の断面図である。本図に示す例において、基板10は、n型のGaAs基板である。そして基板10上には、n型クラッド層12、多重量子井戸構造の活性層14、p型クラッド層16、及びキャップ層22がこの順に積層されている。n型クラッド層12は、n型AlGalnP膜であり、p型クラッド層16はp型AlGalnP膜である。キャップ層22はp型GaAs層である。そして、キャップ層22の上には、ハードマスクとなる酸化シリコン膜24が選択的に形成されている。
【0020】
そして図4(b)に示すように、処理室140の中で、酸化シリコン膜24をマスクとしてエッチングを行う。これにより、キャップ層22は選択的に除去され、かつp型クラッド層16のうち酸化シリコン膜24に覆われていない領域は途中まで除去される。
【0021】
次いで図5(a)に示すように、酸化シリコン膜24を選択成長のマスクとして、電流狭窄層18,20を選択的に成長させる。電流狭窄層18は不純物をドーピングしていないAllnP膜であり、電流狭窄層20はn型GaAs膜である。電流狭窄層18,20を形成するときの原料ガスには、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、トリメチルガリウム(TMG)、ホスフィン(PH3)、及びアルシン(AsH3)が用いられる。次いで、酸化シリコン膜24を除去する。
【0022】
次いで図5(b)に示すように、コンタクト層26を成膜する。コンタクト層26は、p型GaAs膜である。コンタクト層26を成膜するとき、原料ガスにはトリメチルガリウム及びアルシンが用いられる。
【0023】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態では、ロードロック室100の中に基板10を挿入した後、処理室140に基板10を搬送する前に、ロードロック室100を排気する工程(図1のS20)とロードロック室100を昇圧して一定時間保持する工程(図1のS30)をそれぞれ少なくとも1回行っている。このようにロードロック室100を少なくとも一回昇圧しているため、パージガスの分子運動により基板10に付着している大気の成分(例えば酸素)が除去される。この効果は、ロードロック室100の中を昇圧したまま一定時間保持することにより大きくなり、またロードロック室100の中の圧力を1気圧超、特に1.5気圧以上にすることにより大きくなる。このため、大気の成分と反応するガスを処理室140で使用しても、基板10の表面に異物、例えば絶縁性の異物が生成することを抑制できる。また、ロードロック室100の中を昇圧したのち再度ロードロック室100を排気している(図1のS40)ため、基板10から除去された大気の成分が基板10に再付着することを抑制できる。
【0024】
例えば図4及び図5に示した例において、電流狭窄層18を形成するときにはトリメチルアルミニウムが用いられている。このため、酸化シリコン膜24上に大気中の酸素が残留していると、この酸素とトリメチルアルミニウムが反応して、酸化シリコン膜24上に酸化アルミニウムが生成してしまう。この酸化アルミニウムが生成すると、酸化シリコン膜24をエッチングするときに酸化アルミニウムがマスクとなり、キャップ層22上に酸化シリコン膜24が部分的に残ってしまう。この場合、コンタクト層26から活性層14に電流が流れにくくなり、半導体レーザの閾値にばらつきを生じさせてしまう。
【0025】
これに対して本実施形態では、図1のS20及びS30に示した工程を行うことにより、酸化シリコン膜24上に大気中の酸素が残留することが抑制される。従って、酸化シリコン膜24上に酸化アルミニウムが生成することが抑制される。
【0026】
また、ロードロック室100の中において圧力を変化させるのみでよいため、半導体装置の生産性が低下することを抑制できる。また、制御部108が行う制御を変更するのみでよいため、半導体製造装置の改良コストは低い。
【0027】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図1に示した半導体装置の製造方法に用いられる半導体製造装置の構成を示す図である。
【図3】図1に示した半導体装置の製造方法におけるロードロック室100の圧力変動を示す図である。
【図4】各図は図1のS60で行われる処理の一例を示す断面図である。
【図5】各図は図4の次の工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 基板
12 n型クラッド層
14 活性層
16 p型クラッド層
18 電流狭窄層
20 電流狭窄層
22 キャップ層
24 酸化シリコン膜
26 コンタクト層
50 ゲートバルブ
52 ゲートバルブ
54 ゲートバルブ
100 ロードロック室
101 保持部
102 カセット
104 排気部
106 ガス導入部
108 制御部
120 搬送室
122 搬送ロボット
140 処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が外部から搬入されるロードロック室と、前記基板に気相処理を行う処理室とを備える半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記ロードロック室に前記基板を搬入する工程と、
前記ロードロック室を排気する工程と、
前記ロードロック室にパージガスを導入して前記ロードロック室の圧力を上昇させる工程と、
前記ロードロック室を再び排気する工程と、
前記基板を前記ロードロック室から前記処理室に搬送する工程と、
前記処理室の中で前記基板を処理する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ロードロック室の圧力を上昇させる工程において前記ロードロック室を1気圧超にする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ロードロック室の圧力を上昇させる工程において前記ロードロック室を1.5気圧以上にする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記ロードロック室の圧力を上昇させる工程と前記ロードロック室を再び排気する工程の間に、前記ロードロック室の圧力を上昇させたまま維持する工程を備える半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板を処理する工程は、大気に含まれる成分と反応するガスを用いて前記基板に膜を成膜する工程である半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記膜を成膜する工程において有機金属ガスを用いる半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置は半導体レーザを有しており、
前記膜を成膜する工程は前記半導体レーザの電流狭窄層を成膜する工程である半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−267220(P2009−267220A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117063(P2008−117063)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】