説明

半導体装置の製造方法

【課題】反射防止膜を確実に除去して半導体装置の欠陥発生を低減する。
【解決手段】第1の層間絶縁膜の上に、絶縁膜と、反射防止膜と、レジスト膜とを順番に形成する。レジスト膜を用いて反射防止膜と絶縁膜をエッチングし、絶縁膜からハードマスクを作成する。この後、ラジカル照射によってレジスト膜と反射防止膜を除去する。ラジカル照射は、基板温度を100℃、150℃、250℃と順番に上昇させながら行う。基板温度が低い初期段階では、反射防止膜の膜材料の飛散防止と、反射防止膜の表面に残留する他の物質の除去が行われる。この後、基板温度を高くすることで、反射防止膜が確実に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、絶縁膜の上に形成したマスクを用いて絶縁膜をエッチングして配線溝を形成する。ここで、エッチングに使用されるマスクは、例えば絶縁膜の上にレジスト膜を形成した後、レジスト膜を露光及び現像することで形成される。さらに、レジスト膜を塗布する前に、絶縁膜の上にBARC膜(反射防止膜)を形成すると、下層の配線層などからの反射光の影響が除去され、高精度なマスクを形成することができる。
【0003】
従来では、BARC膜を塗布する前に、アニール処理、プラズマ処理、UV処理又は有機溶媒処理の少なくとも1つの処理を行い、露光時にレジスト中に発生する酸の触媒作用を阻害するアミン成分を除去している。これによって、レジストパターンの解像度の劣化が防止される。また、エッチングの際には、Cガスを主体とし、かつN及びOを含まないガスを用いてエッチングすることが知られている。さらに、BARC膜をCHFとCFとOの混合ガスでエッチングすると、BARC膜の側面にポリマーの保護膜が形成されるので、微細なパターンを形成できるようになる。
【0004】
ここで、半導体装置の製造工程では、基板端面の清浄度が欠陥発生に影響を与えることがある。特に、多層構造を有する半導体装置では、基板端面で発生した異物が半導体装置の性能に与え易くなる。一般に、基板周辺部は、レジスト材料やBARC膜の膜材料を塗布した後に薬液リンスによって取り除く。さらに、その後のエッチング工程でアッシング処理が実施される。基板端面を清浄にする方法として、スピンナー型の洗浄装置による基板の洗浄、薬液を用いての洗浄、あるいは研磨などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2003−229481
【特許文献2】特願2006−302924
【特許文献3】特願2006−41364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、低誘電率材料として使われるSOG(Spin On Glass)膜は、スピンナー型の塗布装置を用いて基板や薄膜の表面に塗布される。続いて、縦型炉に導入して窒素雰囲気中で約400℃の熱処理が行われる。しかしながら、前工程の影響などで、基板の端面に有機系の異物が付着していると、熱処理での高温環境により不純物成分が発生し、SOG膜の表面に特異な欠陥を形成する。基板端面に付着する異物としては、フォトリソグラフィ工程でのレジスト膜材料や、BARC膜の残りがある。特に、BARC膜は、塗布後に行われる熱処理によって膜が強化され、薬液リンスによる除去が困難になり易い。
このため、ドライエッチングによるパターン形成後にアッシングし、レジスト材料やBARC膜を除去するが、それだけでは基板端面に付着したBARC膜を完全に除去できないことがあった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、BARC膜を確実に除去して半導体装置の欠陥発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の一観点によれば、基板の上方に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜の上に、ハードマスク膜と反射防止膜とレジスト膜を順番に形成し、前記レジスト膜を用いて前記反射防止膜及び前記ハードマスク膜をパターニングして、前記ハードマスク膜からハードマスクを形成する工程と、前記ハードマスク上の前記反射防止膜及び前記レジスト膜に対して、前記基板の加熱温度を上昇させながらラジカルを照射し、前記反射防止膜及び前記レジスト膜を除去する工程と、前記ハードマスクを用いて前記層間絶縁膜をエッチングして開口部を形成する工程と、前記開口部に導電材を埋め込む工程と、を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
低い温度でのラジカル照射で、反射防止膜の膜材料の飛散や、反射防止膜の表面に付着した物質を除去し、相対的に高い温度でのラジカル照射で、反射防止膜を除去する。これによって、反射防止膜が確実に除去される。反射防止膜の残留物に起因する欠陥の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その1)である。
【図1B】図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その2)である。
【図1C】図1Cは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その3)である。
【図1D】図1Dは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その4)であって、(a)は、基板の内周部分を示し、(b)は、基板の周辺部分の断面構造を示す。
【図1E】図1Eは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その5)であって、(a)は、基板の内周部分を示し、(b)は、基板の周辺部分の断面構造を示す。
【図1F】図1Fは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その6)であって、(a)は、基板の内周部分を示し、(b)は、基板の周辺部分の断面構造を示す。
【図1G】図1Gは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その7)である。
【図1H】図1Hは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その8)である。
【図1I】図1Iは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その9)であって、(a)は、基板の内周部分を示し、(b)は、基板の周辺部分の断面構造を示す。
【図1J】図1Jは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その10)である。
【図1K】図1Kは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その11)であって、(a)は、基板の内周部分を示し、(b)は、基板の周辺部分の断面構造を示す。
【図1L】図1Lは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その12)である。
【図1M】図1Mは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その13)である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法におけるマスク及び反射防止膜の除去工程のラジカル照射条件の一例を工程毎にまとめた図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法におけるマスク及び反射防止膜の除去工程の温度シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の目的および利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素および組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、典型例および説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0011】
(第1の実施の形態)
図面を参照して第1の実施の形態について詳細に説明する。
最初に、図1Aに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、n型又はp型のシリコン(半導体)基板1の一方の面である表面を熱酸化することにより素子分離絶縁膜2を例えば30nmの深さに形成し、この素子分離絶縁膜2でトランジスタの活性領域を画定する。このような素子分離構造は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)と呼ばれる。素子分離領域2には、STI(Shallow Trench Isolation)を用いても良い。
【0012】
次いで、シリコン基板1の活性領域にイオン注入法により、ドーパント不純物を導入してウェルを形成する。ドーパント不純物としてp型不純物、例えばボロンを導入すると、シリコン基板1にpウェル3が形成される。pウェル3を形成した後、その活性領域の表面を熱酸化してゲート絶縁膜5を形成する。ゲート絶縁膜5は、例えば熱酸化膜を約6nm〜7nmの厚さに形成する。なお、以下においては、pウェル3を形成した場合について説明するが、シリコン基板1にnウェルを形成した場合も同様の工程が実施される。
【0013】
続いて、シリコン基板1の上側全面に、ポリシリコン膜を例えばCVD法を用いて200nmの膜厚に形成する。その後に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてポリシリコン膜をパターニングして、シリコン基板1上にゲート電極6を形成する。ゲート電極6は、pウェル3上に互いに平行に複数形成され、その各々はゲート線の一部を構成する。
【0014】
さらに、ゲート電極6をマスクにしてpウェル3にイオンを注入し、pウェル3のゲート電極6の両側の領域に、n型不純物としてリンを導入する。これにより、第1、第2ソース/ドレインエクステンション8が形成される。第1、第2ソース/ドレインエクステンション8は、エクステンションソース/ドレイン領域の浅い領域を構成する。その後に、シリコン基板1の上側全面に、絶縁膜としてシリコン酸化膜を例えばCVD法を用いて300nmの厚さに形成する。その後、絶縁膜を異方性エッチングする。絶縁膜がエッチバックされ、ゲート電極6の側部に絶縁性サイドウォール10が形成される。
【0015】
続いて、ゲート電極6及び絶縁性サイドウォール10をマスクとして用い、シリコン基板1に砒素等のn型のドーパント不純物を再びイオン注入する。これにより、ゲート電極6の側方のpウェル3に、ソース/ドレイン拡散層11が形成される。ソース/ドレイン拡散層11は、エクステンションソース/ドレインの深い領域を構成する。
【0016】
さらに、シリコン基板1の全面に、例えば、スパッタリング法によりコバルト膜等の高融点金属膜を10nmの厚さに形成する。この後、高融点金属膜を例えば、500℃で30秒加熱してシリコンと反応させる。これにより、ソース/ドレイン拡散層11におけるシリコン基板1上にコバルトシリサイド層等の高融点金属シリサイド層が形成され、各ソース/ドレイン拡散層11が低抵抗化する。この後、素子分離絶縁膜2の上などに未反応のまま残っている高融点金属膜を例えば硫酸と過酸化水素水の混合液によってウエットエッチングして除去する。この後、窒素雰囲気中、800℃で30秒のアニールを行う。こ
れにより、ソース/ドレイン拡散層11上に、例えばコバルトシリサイドで形成されるソース/ドレイン電極12Aが形成される。また、ゲート電極6の上部に、例えばコバルトシリサイドからなるシリサイド層12Bが形成される。
【0017】
ここまでの工程により、シリコン基板1の活性領域には、ゲート絶縁膜5、ゲート電極6、及びソース/ドレイン電極12A等から構成される半導体素子であるトランジスタT1,T2が形成される。
【0018】
次に、図1Bに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
シリコン基板1の上側の全面に、酸化膜14として、例えば酸化シリコン膜(SIO膜)をプラズマCVD法によって1000nmの厚さに形成する。この後、CMP法によって酸化膜14の表面を研磨して平坦化する。
【0019】
続いて、不図示のレジスト膜をマスクに用いて酸化膜14をエッチングして、コンタクトホール15を形成する。コンタクトホール15の径は、例えば0.25μmとし、ソース/ドレイン電極12Aに到達するまでとする。
【0020】
そして、コンタクトホール15を用いてソース/ドレイン電極12Aに電気的に接続される導電性プラグ16を形成する。具体的には、コンタクトホール15の内面に密着膜として、例えばTi/TiN膜をTiClガスを用いたCVD法によって形成する。さらに、密着膜上にW膜を成長させる。W膜は、例えば、WFガスとSiHガス、又はWFガスとHガスを用いたCVD法によって形成する。W膜は、酸化膜14上で例えば300nmに達する厚さとする。これにより、W膜でコンタクトホール15の空隙が埋まる。この後、酸化膜14の上面上に成長した余分なW膜及び密着膜をCMP法で除去する。これにより、各コンタクトホール15に、導電性プラグ16が1つずつ形成される。
【0021】
図1Cに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
酸化膜14上及び導電性プラグ16上に、第1層間絶縁膜20として、第1のSOG膜21と第1のSIO膜22とを順番に形成する。第1の第1のSOG膜21は、最初にスピンナー型の塗布装置を用いて例えば、300nmの厚さに塗布する。塗布材料は、例えばシクロヘキサンなどの溶剤にSiOを溶かして形成される。
続いて、エッジカット工程を実施し、基板1の周辺部分の第1のSOG膜21の膜材料を所定の幅で洗い流す。これによって、基板1の周辺部分では、下地の酸化膜14が露出する。この後、縦型炉に基板1を導入して、地窒素ガス雰囲気中で、400℃、30分の熱処理を行う。
【0022】
さらに、第1のSOG膜21の上に、第1のSIO膜22がSiHガスを用いたプラズマCVD法によって300nmの厚さに形成する。さらに、第1のSIO膜22の上には、絶縁膜(ハードマスク膜)23としてSIN膜を例えばSiHガスを用いたプラズマCVD法によって100nmの厚さに形成する。
【0023】
続いて、絶縁膜23の上にBARC膜(反射防止膜)24を形成する。BARC膜は、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテルや、2-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノ−ル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを含む膜材料をスピンナー型の塗布装置を用いて、100nm以上の厚さに塗布する。この後、基板1を加熱炉に導入し、例えば窒素雰囲気中で150℃以上の温度で60秒加熱処理する。これによって、膜材料が硬化してBARC膜24が形成される。
【0024】
次に、図1Dに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。図1D(a)は、基板1の内周部分であって、半導体回路が形成される領域の断面構造を示している。また、
図1D(b)は、基板1の周辺部分の断面構造を示している。
最初に、BARC膜24の上にレジスト膜25を塗布する。フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト膜25をパターニングしてマスク25Aを形成する。さらに、マスク25Aを用いてBARC膜24と絶縁膜23を順番にエッチングする。これによって、絶縁膜23がパターニングされて、ハードマスク23Aが形成される。図1D(b)に示すように、基板1の周辺部分1Aでは、エッジカット工程によって露出させられた酸化膜14の上に、第1のSIO膜22と、絶縁膜23、BARC膜24、レジスト膜25が順番に積層される。ドライエッチングの際には、エッチング装置内に例えば、Arガスを400sccm、Oガスを15sccm、CFガスを10sccm、CHガスを2sccm、それぞれ流し、高周波電源のパワーは上部電極を1750W、下部電極を200Wとする。
【0025】
続いて、Oラジカル、CFラジカルを用いてマスク25A及びBARC膜24を除去する。マスク25A及びBARC膜24の除去方法の詳細について、図2及び図3を参照して説明する。
【0026】
図2は、マスク25A及びBARC膜24の除去工程におけるラジカル照射条件を工程毎にまとめた図であり、縦軸が温度、横軸が時間を示す。また、図3は、図2のラジカル照射条件の温度シーケンスを示す。
図2及び図3に示すように、第1のステップS1は、処理開始から5秒までの間とし、処理装置のチャンバ内圧を200Pa(1.5Torr)とし、基板温度をランプ照射によって100℃まで昇温させる。この間、高周波電源はオフとし、チャンバ内にはOガスを2100sccm、NとHの混合ガスを400sccm、CFガスを100sccm、それぞれ流す。ガスは、チャンバ内の上部から下部に向けて流す。これによって、チャンバ内には、基板1にガスを吹き付けられるような、ダウンフローが形成される。
【0027】
次の第2のステップS2では、基板温度100℃を30秒間保持する。このときのチャンバ内圧は200Paとし、高周波電源はオフとする。チャンバ内にはOガスを2100sccm、NとHの混合ガスを400sccm、CFガスを100sccm、それぞれ流す。
【0028】
第3のステップS3では、基板温度100℃で、高周波電源の出力を1700Wにする。処理時間は、40秒間とする。チャンバ内圧は200Pa、チャンバ内にはOガスを2100sccm、NとHの混合ガスを400sccm、CFガスを100sccm、それぞれ流す。高周波電源から印加された電力によって、チャンバ内のガスを構成する元素に起因するラジカルが形成され、これらラジカルによってマスク25AやBARC膜24がエッチングされる。基板温度が低いことから、低いエッチングレート(第1のエッチングレート)になる。これによって、絶縁膜23のパターニング時にエッチング生成物、例えばカーボンやカーボンの化合物などがBARC膜24の表面から除去される。
【0029】
第4のステップS4では、基板温度を150℃にして40秒間保持する。このときのチャンバ内圧は200Paとし、高周波電源の出力は1700Wにする。チャンバ内にはOガスを2100sccm、NとHの混合ガスを400sccm、CFガスを100sccm、それぞれ流す。高周波電源から印加された電力によって、チャンバ内のガスを構成する元素に起因するラジカルが形成され、これらラジカルによってマスク25AやBARC膜24がエッチングされる。基板温度を150℃にしたので、第4のステップS4のエッチングレートは、第3のステップS3より高い第2のエッチングレートになる。
【0030】
第5のステップS5では、5秒間で基板温度を250℃まで上昇させる。このとき、高周波電源の出力はオフにする。チャンバ内圧は200Pa、チャンバ内にはOガスを2
500sccm、NとHの混合ガスを450sccm、CFガスを25sccm、それぞれ流す。
第6のステップS6では、基板温度を150℃にして5秒間保持する。このときのチャンバ内圧は200Paとし、高周波電源の出力はオフにする。チャンバ内にはOガスを2500sccm、NとHの混合ガスを450sccm、CFガスを25sccm、それぞれ流す。
【0031】
第7のステップS7では、基板温度を150℃にし、高周波電源の出力を1700Wにする。処理時間は45秒、チャンバ内圧は200Paとする。チャンバ内にはOガスを2500sccm、NとHの混合ガスを450sccm、CFガスを25sccm、それぞれ流す。高周波電源から印加された電力によって、OやCFなどのラジカルが形成され、これらラジカルによってマスク25AやBARC膜24がエッチングされる。高周波電源から印加された電力によって、チャンバ内のガスを構成する元素に起因するラジカルが形成される。これらラジカルによってマスク25AやBARC膜24が相対的に高い第3のエッチングレートでエッチングされる。
【0032】
ラジカル照射の初期段階は、基板温度が低いので、マスク25A及びBARC膜24のエッチングレートは低い。これは、ラジカルによってエッチングされたBARC膜24の飛散防止と、BARC膜24の表面に付着しているエッチング生成物を除去することを目的とする。この段階で通常の早いエッチングレートでラジカル照射を行うと、BARC膜24の表面に付着したエッチング生成物が残留した状態でエッチングが行われる。その結果、エッチング生成物がマスクとなって、BARC膜24が十分に除去されないことがある。このため、ラジカル照射の初期段階は基板温度を低く設定して、エッチングレートを低くする。さらに、チャンバ内に流すOガスに対してCFガスの流量比を大きくして、よりエッチング生成物を除去し易くする。その後は、基板温度を250℃程度にしてエッチングレートを高くする。さらに、チャンバ内に流すCFガスに対してOガスの流量比を大きくして、よりBARC膜24を除去し易くする。これによって、マスク25A及びBARC膜24が確実に除去される。
【0033】
ラジカル照射の結果、図1Eに示すように、マスク25A及びBARC膜24が除去される。図1E(b)に示すように、基板1の周辺部分1AにおけるBARC膜24が確実に除去され、BARC膜24に起因する残留物がなくなる。
【0034】
さらに、図1Fに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、ハードマスク23Aを用いて第1のSIO膜22と第1のSOG膜21をドライエッチングして配線溝27(開口部)を形成する。第1のSIO膜22のドライエッチングの条件は、例えば、エッチング装置のチャンバ内にArガスを400sccm、Oガスを10sccm、CFガスを10sccm、それぞれ流し、高周波電源のパワーは上部電極を490W、下部電極を1860Wとする。さらに、第1のSOG膜21のドライエッチングの条件は、例えば、チャンバ内にNガスを500sccm、Hガスを150sccm、CHガスを2sccm、それぞれ流し、高周波電源のパワーは上下の電極共に350Wとする。これによって、配線溝27が形成される。さらに、配線溝27の底部には、下層の導電性プラグ16が露出する。
【0035】
次に、図1Gに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
配線溝27の内壁および基板1の表面を含む全面に、バリア膜28を例えばPVD法によって10nmの厚さに形成する。バリア膜28としては、Ta膜、Ti膜、TaN膜、TiN膜、WN膜、又はこれらの積層を用いることができる。
【0036】
続いて、バリア膜28上に、不図示のシード層を例えばPVD法により形成した後、電
解メッキ法によって導電膜として銅(Cu)膜29を成長させる。銅膜29は、配線溝27に埋め込まれると共に、第1層間絶縁膜20上にも形成される。配線用の銅膜29は、この他に、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)を含む導体膜でも良い。
【0037】
次に、図1Hに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
第1のSIO膜22の上の余分な銅膜29をCMP法による研磨で除去する。研磨によって余分な銅膜29を除去すると共に、第1のSIO膜22上のバリア膜28及びハードマスク23Aを除去する。これによって、第1層間絶縁膜20に配線30(回路パターン)が埋め込まれた第1の配線層31が形成される。
【0038】
続いて、図1Iに示すように、第1の配線層31の上に酸化防止絶縁膜41として、例えば、SIN膜をCVD法によって約30nmの厚さに形成する。酸化防止絶縁膜41の上には、第2のSIO膜42を例えばプラズマCVD法によって形成する。
【0039】
さらに、第2のSIO膜42の上に、第2のSOG膜43を形成する。第2のSOG膜43は、最初にスピンナー型の塗布装置を用いて例えば、300nmの厚さに塗布する。続いて、エッジカット工程を実施し、基板1の周辺部分の第2のSOG膜43の膜材料を所定の幅で洗い流す。この後、縦型炉に基板1を導入して、窒素ガス雰囲気中で、400℃、30分の熱処理を行う。これによって、第2層間絶縁膜40が形成される。
【0040】
このとき、第1の配線層31の形成時に使用したBARC膜24は、ラジカル照射によって基板1の周辺部分1Aから除去されているので、BARC膜24の残留物が第2のSOG膜43の表面に付着することはない。
【0041】
さらに、第2のSOG膜43の上に、絶縁膜(ハードマスク膜)44としてSIN膜を例えばSiHガスを用いたプラズマCVD法によって100nmの厚さに形成する。絶縁膜44の上には、BARC膜(反射防止膜)45を形成する。この後、BARC膜45の上にレジスト膜46を塗布する。ここで、図1I(b)に示すように、基板1の周辺部分1Aでは、第1の配線層31の第1のSIO膜22の上に、酸化防止絶縁膜41、第2のSIO膜42、絶縁膜44、BARC膜45、レジスト膜46が順番に積層される。
【0042】
次に、図1Jに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト膜46をパターニングしてマスク46Aを形成する。マスク46Aを用いてBARC膜45と絶縁膜44を順番にエッチングする。これによって、絶縁膜44がパターニングされて、ハードマスク44Aが形成される。ドライエッチングの条件は、例えば、チャンバ内にArガスを400sccm、Oガスを15sccm、CFガスを10sccm、CHガスを2sccm、それぞれ流し、高周波電源のパワーは上部電極を1750W、下部電極を200Wとする。
【0043】
続いて、図1Kに示すように、Oラジカル、CFラジカルを用いてマスク46A及びBARC膜45を除去する。BARC膜45の除去方法は、図2及び図3に示すステップにより実施される。即ち、基板温度を段階的に上昇させながら、低い温度領域では、エッチング生成物を除去し、その後、温度を上昇させると共に、Oガス、N−Hガス、CFガスの流量を多くすることでBARC膜45を確実に除去する。その結果、図1K(b)に示すように、基板1の周辺部分1AにおけるBARC膜45が確実に除去され、BARC膜45に起因する残留物がなくなる。
【0044】
次に、図1Lに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
ハードマスク44Aを用いて第2のSOG膜43、第2のSIO膜42、酸化防止絶縁
膜41をエッチングして複数のビアホール47を形成する。ビアホール47は、第1の配線層31の配線30の上方に形成される。ビアホール47は、配線30に到達する深さまで形成される。さらに、ビアホール47及びハードマスク44Aの全面にレジストマスクを形成し、第2のSOG膜43をエッチングして複数の配線溝48(開口部)を形成する。
【0045】
さらに、図1Mに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
配線溝48及びビアホール47及びハードマスク44Aの全面に、バリアメタル膜であるTaN膜49を例えばスパッタ法にて約8nmの厚さに形成する。さらに、TaN膜49上にCu膜50をメッキ法によって形成する。Cu膜50の膜厚は、例えば800nmとする。この後、表面のCu膜50と、TaN膜49と、ハードマスク44AをCMP法による研磨で順番に除去する。これによって、ビアホール47に導電性プラグ51が形成されると共に、配線溝48に配線52が形成される。これによって、低誘電体膜である第2層間絶縁膜40に配線52及び導電性プラグ51を有する回路パターンが埋め込まれた第2の配線層61が形成される。そして、2層の配線構造を有する半導体装置62が形成される。ここで、半導体装置62の配線は2層に限定されない。
【0046】
以上、説明したように、この実施の形態では、SOG膜21,43をエッチングする前に、ハードマスク23A,44Aの上のBARC膜24,45をラジカル照射によって除去するようにした。ラジカル照射は、段階的に基板温度を上昇させるようにしたので、初期段階が相対的に低いエッチングレートになり、BARC膜24,45の膜材料の飛散が防止される。さらに、BARC膜24,45の表面に他の物質が残留してマスクとなることが防止される。これによって、BARC膜24,45をハードマスク23A,44Aから確実に除去できる。
【0047】
従来では、第1の配線層31の形成時に、裏面を含む基板1の周辺部分1Aに残留したBARC膜24が、第2の配線層61の第2のSOG膜43の形成時の熱処理によって蒸発したり、拡散したりして、第2のSOG膜43の表面に再付着して欠陥を形成することがあった。このような欠陥は、基板1の全面に広い範囲で多数形成される。これに対し、この実施の形態では、基板1の周辺部分1Aを含めてBARC膜24,45を確実に除去できる。このために、第2のSOG膜43の形成時の加熱工程で、BARC膜24,45の残留物が蒸発等して、第2のSOG膜43の表面に再付着することが防止される。これによって、第1の配線層31の形成時に使用したBARC膜24に起因して第2のSOG膜43の表面に形成される欠陥を防止できる。
【0048】
ここで挙げた全ての例および条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明および概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例および条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換および変形を施すことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 シリコン基板
20 第1層間絶縁膜
23 絶縁膜(ハードマスク膜)
23A ハードマスク
24 BARC膜(反射防止膜)
25 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜の上に、ハードマスク膜と反射防止膜とレジスト膜を順番に形成し、前記レジスト膜を用いて前記反射防止膜及び前記ハードマスク膜をパターニングして、前記ハードマスク膜からハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスク上の前記反射防止膜及び前記レジスト膜に対して、前記基板の加熱温度を上昇させながらラジカルを照射し、前記反射防止膜及び前記レジスト膜を除去する工程と、
前記ハードマスクを用いて前記層間絶縁膜をエッチングして開口部を形成する工程と、
前記開口部に導電材を埋め込む工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ラジカルを照射して前記反射防止膜及び前記レジスト膜を除去する工程は、処理装置のチャンバ内にOガス、CFガス、Nガス、Hガスを流しつつ高周波電圧を印加することを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ラジカルを照射して前記反射防止膜及び前記レジスト膜を除去する工程は、温度の上昇と共に、Oガスの流量比を増加させ、かつCFガスの流量比を減少させる工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板温度は、複数の段階に分けて上昇させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記層間絶縁膜は、塗布材料を前記基板の上方に塗布した後に、加熱することで形成され、前記層間絶縁膜は、前記基板の上方に複数積層されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−248599(P2012−248599A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117742(P2011−117742)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】