説明

半導体装置の製造方法

【課題】工程数を増加させることなく、高耐圧トランジスタへのイオン注入を的確に実行することを可能にする。
【解決手段】
第1素子形成領域(AA1)のうち、第1トランジスタ(Tr1)のゲート電極が形成されるべき第1領域(R1’)の直上に位置するマスク材(M1)の第1部分(H1’)を除去する一方、第1部分(H1’)以外の第1素子形成領域(AA1)にはマスク材(M1)を残存させる。一方、第2素子形成領域(AA2)のうち、第2トランジスタ(Tr2)のゲート電極が形成されるべき第2領域(R1)の直上に位置するマスク材の少なくとも第2部分(H1)と、第2トランジスタ(Tr1)のソース/ドレイン拡散領域が形成されるべき第3領域(R2、R3)の直上に位置するマスク材の少なくとも第3部分(H2,H3)とを除去してマスク材の開口を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施の形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるNANDセル型フラッシュメモリは、メモリセル(メモリトランジスタ)が形成されたメモリセル領域と、このメモリセルを制御するための制御回路等を備えた周辺回路領域とを1つの半導体基板上に有している。周辺回路領域には、低耐圧トランジスタに加え、高電圧を制御するための高耐圧トランジスタが形成され、この高耐圧トランジスタは、メモリセルのゲート絶縁膜や低耐圧トランジスタのゲート絶縁膜に比べ膜厚の大きいゲート絶縁膜を有している。
【0003】
このため、高耐圧トランジスタにおいては、ゲート電極の加工後も、ゲート電極の両隣の基板上(ソース/ドレイン拡散層が形成されるべき領域)に厚いゲート絶縁膜が残存する。ソース/ドレイン拡散領域の形成のためのイオン注入を、このような厚いゲート絶縁膜を貫通させて実行する場合、不純物の注入が十分に行われず、所望のソース/ドレイン拡散領域の形成が困難となる。特に、コンタクト配線の接続のための高濃度拡散領域の形成は困難である。
【0004】
このような高耐圧トランジスタのゲート電極の両隣の厚いゲート絶縁膜を、ゲート電極をマスクとした自己整合的なエッチング工程により除去する場合、低耐圧トランジスタの形成領域においていわゆるオーバーエッチングが発生してしまう。従って、高耐圧トランジスタのゲート電極の両隣のゲート絶縁膜をエッチングするためには、他の領域をレジストで保護しつつエッチングを実行する必要が生じる。このような工程を追加することは、製造コストの増加につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−82925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、工程数を増加させることなく、高耐圧トランジスタへのイオン注入を的確に実行することを可能にする半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に説明する一の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、次のような工程を含む。まず、第1トランジスタが形成される半導体基板の第1素子形成領域上に、第1の膜厚を有する第1ゲート絶縁膜を形成する。これと共に、第1トランジスタよりも大きい耐圧を有する第2トランジスタが形成される半導体基板の第2素子形成領域上に第1の膜厚よりも大きい第2の膜厚を有する第2ゲート絶縁膜を形成する。続いて、第1ゲート絶縁膜及び第2ゲート絶縁膜の上に、第1ゲート電極膜、及びゲート間絶縁膜をその順に形成する。そして、ゲート間絶縁膜の上方にマスク材を形成する。この後、第1素子形成領域のうち、第1トランジスタのゲート電極が形成されるべき第1領域の直上に位置するマスク材の第1部分を除去する。一方、第1部分以外の第1素子形成領域にはマスク材を残存させる。これと共に、第2素子形成領域のうち、第2トランジスタのゲート電極が形成されるべき第2領域の直上に位置するマスク材の第2部分と、第2トランジスタのソース/ドレイン拡散領域が形成されるべき第3領域の直上に位置するマスク材の第3部分とを少なくとも除去する。このようにして第1マスクを形成する。
このような第1マスクを用いてゲート間絶縁膜をエッチングする。続いて、第1マスクを除去した後、前記ゲート間絶縁膜の上方に第2ゲート電極膜を堆積させる。そして、少なくとも第1領域及び第2領域を含むように第2ゲート電極膜の上方を覆う第2マスクを形成する。さらに、第2マスクを用いて第2ゲート電極膜、ゲート間絶縁膜、第1ゲート電極膜及びゲート絶縁膜をエッチングして第1トランジスタ及び第2トランジスタのゲート電極を形成する。続いて、ゲート電極に対し自己整合的に第1の不純物イオンのイオン注入を行い、ゲート電極に隣接する半導体基板の表面にソース/ドレイン拡散層を形成する。
【0008】
以下に説明する別の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、次のような工程を含む。まず、半導体基板の素子形成領域上にゲート絶縁膜を形成する。続いて、そのゲート絶縁膜の上に、第1ゲート電極膜、及びゲート間絶縁膜をその順に形成する。素子形成領域内で、トランジスタのゲート電極が形成されるべき領域、及びトランジスタのソース/ドレイン拡散領域が形成されるべき領域の直上に位置する部分とがそれぞれ選択的に除去されてなる複数の開口を有する第1マスクを前記ゲート間絶縁膜の上方に形成する。次に、第1マスクを用いて前記複数の開口の下方のゲート間絶縁膜をエッチングする一方、それぞれの開口の下方周囲のゲート間絶縁膜を残存させる。第1マスクを除去した後、ゲート間絶縁膜の上方に第2ゲート電極膜を堆積させる。そして、前記トランジスタのゲート電極が形成されるべき領域と対応して前記第2ゲート電極膜の上方を覆うように第2マスクを形成し、この第2マスクを用いて第2ゲート電極膜、ゲート間絶縁膜、第1ゲート電極膜及びゲート絶縁膜をエッチングしてトランジスタのゲート電極を形成する。ゲート電極に対し自己整合的に第1の不純物イオンのイオン注入を行い、ゲート電極に隣接する半導体基板の表面にソース/ドレイン拡散層を形成する。さらに、残存したゲート間絶縁膜に由来して生じたゲート絶縁膜の段差に対し自己整合的に第2不純物イオンのイオン注入を行い、ソース/ドレイン拡散層の表面に高濃度コンタクト層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の製造方法により形成される高耐圧トランジスタの構造を示す平面図(a)、及び(a)のI−I’断面図である。
【図2A】第1の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図2B】第1の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図2C】第1の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図2D】第1の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図2E】第1の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図2F】第1の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図2G】第1の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図3】第2の実施の形態の製造方法により形成される高耐圧トランジスタの構造を示す平面図(a)、及び(a)のI−I’断面図である。
【図4A】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4B】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4C】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4D】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4E】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4F】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4G】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4H】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【図4I】第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、第1の実施の形態に係る製造方法により製造される低耐圧トランジスタTr1及び高耐圧トランジスタTr2の構造を示す平面図であり、図1(b)はそのI−I’断面図である。この低耐圧トランジスタTr1及び高耐圧トランジスタTr2は、一例としてNANDセル型フラッシュメモリの周辺回路領域に形成されるn型のトランジスタであり、図示しないメモリセル領域には、積層ゲート構造(浮遊ゲート、制御ゲート)を有するメモリセルトランジスタが形成されている。
【0012】
図1(b)に示すように、n型の低耐圧トランジスタTr1は、p型の半導体基板11、又はp型のウエルが設けられた半導体基板11に形成された素子分離絶縁膜12により画定される第1素子形成領域AA1に形成される。また、n型の高耐圧トランジスタTr2は、半導体基板11に形成される素子分離絶縁膜12により画定される第2素子形成領域AA2に形成される。
低耐圧トランジスタTr1は、ゲート絶縁膜13’、第1ゲート電極膜14、ゲート間絶縁膜15、第2ゲート電極膜16、n型のソース/ドレイン拡散層17’を備えている。一方、高耐圧トランジスタTr2は、ゲート絶縁膜13、第1ゲート電極膜14、ゲート間絶縁膜15、第2ゲート電極膜16、n型のソース/ドレイン拡散層17、及びn型の高濃度コンタクト領域18を備えている。
ゲート絶縁膜13’、13は、それぞれ第1素子形成領域AA1、第2素子形成領域AA2の半導体基板11上に形成され、例えば酸化シリコンから形成される。ゲート絶縁膜13’は、ゲート絶縁膜13に比べ、膜厚が小さい。第1ゲート電極膜14、及び第2ゲート電極膜16は、例えばポリシリコンから形成される。ゲート間絶縁膜15は、例えばONO膜から形成される。
ゲート絶縁膜13’は、第1ゲート電極膜14とそのI−I´断面方向の端部が整合され、ソース/ドレイン拡散層17’の上にはゲート電極膜13’は形成されていない。一方、ゲート絶縁膜13は、第1ゲート電極膜14、第2ゲート電極膜16の下方だけでなく、ソース/ドレイン拡散層17及び高濃度コンタクト領域18が形成される領域の上方にも形成されている。ただし、高濃度コンタクト領域18の上方のゲート絶縁膜13A(薄膜部)は、第1ゲート電極膜14、第2ゲート電極膜16の下方のゲート絶縁膜13に比べ、その膜厚が小さくされている。一例として、第1ゲート電極膜14及び第2ゲート電極膜16の下方に位置するゲート絶縁膜13は、例えば40nm程度の膜厚を有しており、一方、ゲート絶縁膜13A(薄膜部)は、それよりも小さい10nm程度の膜厚を有している。
【0013】
ソース/ドレイン拡散層17の表面には、図示しないコンタクト配線をオーミック接続するための高濃度コンタクト領域18が形成される。この高濃度コンタクト領域18の上方に、前述のゲート絶縁膜13Aが位置している。
ゲート絶縁膜13’、13の上方には、第1ゲート電極膜14、ゲート間絶縁膜15、及び第2ゲート電極膜16が形成されている。第1ゲート電極膜14は、図示しないメモリセルトランジスタにおいて浮遊ゲート電極として機能する電極である。また、ゲート間絶縁膜15は、例えばONO膜からなり、メモリセルトランジスタにおいて、浮遊ゲート電極と制御ゲート電極との間に形成され浮遊ゲート電極をフローティング状態にするための絶縁膜である。第2ゲート電極膜16は、メモリセルトランジスタにおいて制御ゲート電極として機能する電極である。図1に示すように、本実施の形態の低耐圧トランジスタTr1、高耐圧トランジスタTr2においては、このゲート間絶縁膜15には開口15A’、15Aが形成され、これにより第1ゲート電極膜14と第2ゲート電極膜16とは電気的に短絡され、1つのゲート電極として機能するようにされている。
【0014】
次に、図1(a),(b)に示す低耐圧トランジスタTr1、高耐圧トランジスタTr2の製造方法を、図2A〜図2Gを参照して説明する。
まず、図2Aに示すように、熱酸化法等を用いて素子形成領域AA1、AA2の半導体基板11上に、それぞれ20nm程度の膜厚を有するゲート絶縁膜13’、及び40nm程度の膜厚を有するゲート絶縁膜13を形成する。図示は省略するが、図示しないメモリセル領域には、これよりもさらに膜厚の小さいゲート絶縁膜を形成する。更に、図示しないメモリセル領域も含めた半導体基板11の全面に、第1ゲート電極膜14を堆積させる。
その後、図2Bに示すように、周知の方法により素子分離絶縁膜12を形成し、第1素子形成領域AA1、第2素子形成領域AA2を画定した後、この素子分離絶縁膜12上も含めた半導体基板11の全面に、ゲート間絶縁膜15、及び第2ゲート電極膜16Aを堆積させる。この第2ゲート電極膜16Aは、最終的に形成される第2ゲート電極膜16の膜厚よりも小さな膜厚に形成される。
【0015】
続いて、図2Cに示すように、第2ゲート電極膜16A上にマスク材としてのレジストM1を堆積させる。その後、第1素子形成領域AA1中の領域R1’(第1領域)の直上に位置するレジストM1の一部分H1’(第1部分)を、フォトリソグラフィ法を用いて除去する。領域R1’は、トランジスタTr1の開口15A’が形成される領域である。一部分H1’以外の素子形成領域AA1中の領域は、レジストM1を残存させたままとする。
これと同時に、第2素子形成領域AA2中の領域R1(第2領域)の直上に位置するレジストM1の一部分H1(第2部分)、及びこの領域R1とは所定距離だけ素子分離絶縁膜12の方向に離間した領域R2、R3(第3領域)の直上に位置するレジストM1の一部分H2、H3(第3部分)を、フォトリソグラフィ法を用いて除去する。領域R1は、トランジスタTr2の開口15Aが形成される領域である。また、領域R2、R3は、トランジスタTr2のソース/ドレイン拡散層17、薄膜部13A、及び高濃度コンタクト領域18が形成される領域である。
なお、この実施の形態では、第2ゲート電極膜16Aを薄く堆積させた後、その上にレジストM1を形成する工程を採用している。このような工程とするのは、ゲート間絶縁膜15上に直接レジストM1を形成すると、剥離されず残存したレジストM1がゲート絶縁膜15の特性を劣化させる場合があり、それを避けるためである。もっとも、そのようなレジストM1の残渣や、ゲート間絶縁膜15の特性の劣化の虞がなければ、このような薄い第2ゲート電極膜16Aを形成することなく、レジストM1を直接ゲート間絶縁膜15の上に形成することも可能である。
【0016】
続いて、図2Dに示すように、このレジストM1(第1マスク)をマスクとして、第2ゲート電極膜16A、及びゲート間絶縁膜15をエッチングする。これにより、領域R1’、R1〜R3の第2ゲート電極膜16A、及びゲート間絶縁膜15が除去され、前述の開口15A’、15Aが形成される。
【0017】
次に、図2Eに示すように、レジストM1をアッシングにより剥離した後、第2ゲート電極膜16A上に更にポリシリコンからなるゲート電極膜16Bを堆積させる
【0018】
続いて、図2Fに示すように、領域R1’、R1を含む領域にレジストM2(第2マスク)を形成する。第2素子形成領域AA2において、レジストM2は、その両端の位置が、それぞれ領域R1と領域R2との間の位置、及び領域R1と領域R3との間に位置するように形成される。
その後、図2Gに示すように、このレジストM2をマスクとしたエッチングを行って、ゲート絶縁膜13’、13、第1ゲート電極膜14、ゲート間絶縁膜15、及び第2ゲート電極膜16を加工する。このとき、ゲート絶縁膜13’が全て剥離され、かつその下の半導体基板11にオーバーエッチングが生じない程度までエッチングを継続する。
ここで、第1素子形成領域AA1及び第2素子形成領域AA1の領域R2、R3以外の領域においては、ゲート絶縁膜13’、13、第1ゲート電極膜14、ゲート間絶縁膜15、及び第2ゲート電極膜16の全てがエッチングの対象とされるのに対し、領域R2、R3では、ゲート間絶縁膜15が存在していない。従って、エッチング対象の一部を形成するゲート間絶縁膜15のエッチングが行われる間、領域R2、R3においてエッチングが過度に進行する。その結果、領域R2、R3におけるゲート絶縁膜13が膜厚10nm以下程度になるまでエッチングされ薄膜部13Aを有するようになる一方、それ以外の領域ではゲート絶縁膜13の膜厚が厚いまま残存することになる。
【0019】
その後、第1ゲート電極膜14、第2ゲート電極膜16に対し自己整合的に、例えばリン(P)等の不純物イオンをイオン注入し、ソース/ドレイン拡散層17、17’を第1ゲート電極膜14,及び第2ゲート電極膜16に隣接する半導体基板11の表面に形成する。前述のように、第2素子形成領域AA2においてはゲート絶縁膜13がゲート電極の側部にも残存しているが、その一部には厚さの薄い薄膜部13Aが形成されているため、従来に比べイオン注入が行われ易くなっている。その後、同様に、第1ゲート電極膜14、及び第2ゲート電極膜16に対し自己整合的に、例えばヒ素(As)の不純物イオンをイオン注入する。ヒ素(As)は原子量が大であるため、厚さが大であるゲート絶縁膜13を通過することができず、厚さが小である薄膜部13Aのみを通過し得る。このため、高濃度コンタクト領域18は、薄膜部13Aの直下にのみ選択的に、ゲート絶縁膜13の段差と自己整合的に形成され得る。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態では、高耐圧トランジスタTr2が形成される第2素子形成領域AA2において、ゲート間絶縁膜15の開口15Aの形成の際、領域R2、R3におけるゲート間絶縁膜15もエッチングにより除去する一方、その他の領域のゲート間絶縁膜15は残存させる。このようなエッチングされず残存されたゲート間絶縁膜15に由来して、ゲート絶縁膜13において薄膜部13Aを自己整合的に形成することができる。従来は、このような薄膜部13Aあるいは開口部を作るために、特別なマスクの形成及びエッチング工程が必要であったが、本実施の形態によれば、薄膜部13Aを作るための特別な工程が必要でない。薄膜部13Aの存在により、高濃度コンタクト層18のイオン注入を容易に行うことができると共に、原子量が大であるヒ素等のイオン注入を、この薄膜部13Aを通して行うことができる。原子量が大きいため、ヒ素は薄膜部13A以外のゲート絶縁膜13を通過することはできず、従って、薄膜部13Aの下部にのみ自己整合的に高濃度コンタクト領域18を形成することができる。すなわち、本実施の形態によれば、工程数を増加させることなく、高耐圧トランジスタへのイオン注入を的確に実行することができる。
なお、高濃度コンタクト領域18は、薄膜部13Aへの自己整合的なイオン注入により実行してもよいが、マスクを別途形成して、そのマスクを用いたイオン注入により高濃度コンタクト領域18を形成してもよい。
また、以上の説明では、周辺回路領域にn型のトランジスタを形成する例を説明したが、同様の形成方法により、p型のトランジスタを形成することもできる。その場合には、例えば、リン(P)の代わりに、ホウ素(B)を、ヒ素(As)の代わりにフッ化ホウ素(BF2)等をイオン注入すればよい。
【0021】
[第2の実施の形態]
図3(a)は、第2の実施の形態に係る製造方法により製造される低耐圧トランジスタTr1、高耐圧トランジスタTr2の構造を示す平面図であり、図3(b)はそのI−I’断面図である。この低耐圧トランジスタTr1、高耐圧トランジスタTr2は、第1の実施の形態と同様、例えばNANDセル型フラッシュメモリの周辺回路領域に形成されるものである。なお、図3(a)、(b)において、第1の実施の形態と同様の構成要素に関しては、図1と同一の符号を付し、以下ではその詳細な説明は省略する。
【0022】
低耐圧トランジスタTr1の構造は、第1の実施の形態と略同一である。高耐圧トランジスタTr2は、第1の実施の形態と異なり、第1ゲート電極膜14と第2ゲート電極膜16との間にゲート間絶縁膜15を有していない。これは、後述するように、ゲート間絶縁膜15を、第2素子形成領域AA2の略全面において完全に剥離する工程を実行しているためである。
また、薄膜部13Aは、その端部が第1ゲート電極膜14、及び第2ゲート電極膜16の端部と一致するように形成されている。
【0023】
次に、この図3(a),(b)に示す高耐圧トランジスタの製造方法を、図4A〜図4Iを参照して説明する。なお、第1素子形成領域AA1における低耐圧トランジスタTr1の形成方法は第1の実施の形態と全く同一であるので、以下ではその詳細な説明は省略する。
まず、図4Aに示すように、第1の実施の形態と同様(図2A)にしてゲート絶縁膜13、13’、第1ゲート電極膜14を形成する。更に、図4Bに示すように、素子分離絶縁膜12を形成して第1素子形成領域AA1、第2素子形成領域AA2を画定した後、その上も含めた半導体基板11の全面にゲート間絶縁膜15、及び第2ゲート電極膜16Aを形成する。
【0024】
続いて、第2ゲート電極膜16上にマスク材としてのレジストM1’を堆積させた後、図4Cに示すように、第2素子形成領域AA2においては、レジストM1’を、第2素子形成領域AA2の端部と素子分離絶縁膜12上を除いて除去する。
続いて、図4Dに示すように、このレジストM1’(第1マスク)をマスクとして、第2ゲート電極膜16A、及びゲート間絶縁膜15をエッチングする。これにより、第2素子形成領域AA2中の第2ゲート電極膜16A、及びゲート間絶縁膜15は、その端部を除き全て除去される。換言すれば、第2素子形成領域AA2において、第2ゲート電極膜16A及びゲート間絶縁膜15は、領域R1〜R3に亘って連続的に除去される。
【0025】
次に、図4Eに示すように、レジストM1’をアッシングにより剥離した後、第2素子形成領域AA2上の第1ゲート電極膜14上、及び第1素子形成領域AA1上の第2ゲート電極膜16A上に更にポリシリコンからなるゲート電極膜16Bを堆積させる。
【0026】
続いて、図4Fに示すように、第2の素子形成領域AA2の中心付近(第1領域)にレジストM2’(第2マスク)を形成し、このレジストM2’をマスクとして第1ゲート電極膜14、第2ゲート電極膜16を加工する。このとき、ゲート絶縁膜13は、素子形成領域AAの端部においては、ゲート間絶縁膜15が残存しているためあまりエッチングが進まないが、それ以外の素子形成領域AAの中心付近では、図4Gに示すように薄膜部13Aが形成される。
【0027】
次に、必要に応じて第1ゲート電極膜14、及び第2ゲート電極膜16の側壁にスペーサとなる膜を形成した後、第1ゲート電極膜14、及び第2ゲート電極膜16に対し自己整合的に、例えばリン(P)等の不純物イオンをイオン注入し、ソース/ドレイン拡散層17を、第1ゲート電極膜14、及び第2ゲート電極膜16に隣接する半導体基板11の表面に形成する。前述のように、厚さの薄い薄膜部13Aが形成されているため、従来に比べイオン注入が行われ易くなっている。
その後、同様に、図4Hに示すように、レジストM3を堆積させ、図4Iに示すように、高濃度コンタクト領域18を形成すべき領域に開口H4を形成し、この開口H4を介して例えばヒ素(As)等の不純物イオンをイオン注入する。これにより、高濃度コンタクト領域18を半導体基板11の表面に形成する。
この実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、マスクM2’によるゲート電極の加工と同時に、ゲート絶縁膜13の薄膜部13Aを形成することができる。薄膜部13Aを形成するための追加的な工程が不要である点で、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
11・・・半導体基板、 12・・・素子分離絶縁膜、 13・・・ゲート絶縁膜、 14・・・第1ゲート電極膜、 15・・・ゲート間絶縁膜、 15A・・・開口、 16・・・第2ゲート電極膜、 17・・・ソース/ドレイン拡散層、 18・・・高濃度コンタクト領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタが形成される半導体基板の第1素子形成領域上に第1の膜厚を有する第1ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第1トランジスタよりも大きい耐圧を有する第2トランジスタが形成される前記半導体基板の第2素子形成領域上に前記第1の膜厚よりも大きい第2の膜厚を有する第2ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1ゲート絶縁膜及び前記第2ゲート絶縁膜の上に、第1ゲート電極膜、及びゲート間絶縁膜をその順に形成する工程と、
前記ゲート間絶縁膜の上方にマスク材を形成する工程と、
前記第1素子形成領域のうち、前記第1トランジスタのゲート電極が形成されるべき第1領域の直上に位置する前記マスク材の第1部分を除去する一方前記第1部分以外の前記第1素子形成領域には前記マスク材を残存させると共に、前記第2素子形成領域のうち、前記第2トランジスタのゲート電極が形成されるべき第2領域の直上に位置する前記マスク材の第2部分と、前記第2トランジスタのソース/ドレイン拡散領域が形成されるべき第3領域の直上に位置する前記マスク材の第3部分とを少なくとも除去して前記第1マスクを形成する工程と、
前記第1マスクを用いて前記ゲート間絶縁膜をエッチングする工程と、
前記第1マスクを除去した後、前記ゲート間絶縁膜の上方に第2ゲート電極膜を堆積させる工程と、
少なくとも前記第1領域及び前記第2領域を含むように前記第2ゲート電極膜の上方を覆う第2マスクを形成する工程と、
前記第2マスクを用いて第2ゲート電極膜、ゲート間絶縁膜、第1ゲート電極膜及びゲート絶縁膜をエッチングして前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極に対し自己整合的に第1の不純物イオンのイオン注入を行い、前記ゲート電極に隣接する前記半導体基板の表面にソース/ドレイン拡散層を形成する工程と
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート間絶縁膜をエッチングする工程では、前記第2素子形成領域のうち、前記第1マスクにおける前記第2部分及び前記第3部分と対応した領域のゲート間絶縁膜が除去される一方、
前記第1マスクにおける前記第2部分及び前記第3部分以外の部分に対応した領域のゲート間絶縁膜が残存し、
前記ゲート電極を形成する工程では、残存した前記前記ゲート絶縁膜に由来して前記第2素子形成領域における前記ゲート絶縁膜に段差が生じると共に、
前記ゲート絶縁膜の段差に対し自己整合的に第2不純物イオンのイオン注入を行い、前記ソース/ドレイン拡散層の表面に高濃度コンタクト層を形成する工程を更に備えた請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1不純物イオンはリン(P)又はホウ素(B)であり、前記第2不純物イオンはヒ素(As)又はフッ化ホウ素(BF)である請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート間絶縁膜をエッチングする工程では、前記第2素子形成領域の前記ゲート間絶縁膜が前記第2領域及び前記第3領域で連続的に除去される請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板の素子形成領域上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜の上に、第1ゲート電極膜、及びゲート間絶縁膜をその順に形成する工程と、
前記素子形成領域の内で、トランジスタのゲート電極が形成されるべき領域、及び前記トランジスタのソース/ドレイン拡散領域が形成されるべき領域の直上に位置する部分がそれぞれ選択的に除去されてなる複数の開口を有する第1マスクを前記ゲート間絶縁膜の上方に形成する工程と、
前記第1マスクを用いて前記複数の開口の下方の前記ゲート間絶縁膜をエッチングする一方、それぞれの前記開口の下方の周囲の前記ゲート間絶縁膜を残存させる工程と、
前記第1マスクを除去した後、前記ゲート間絶縁膜の上方に第2ゲート電極膜を堆積させる工程と、
前記トランジスタのゲート電極が形成されるべき領域と対応して前記第2ゲート電極膜の上方を覆うように第2マスクを形成する工程と、
前記第2マスクを用いて第2ゲート電極膜、ゲート間絶縁膜、第1ゲート電極膜及びゲート絶縁膜をエッチングして前記トランジスタのゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極に対し自己整合的に第1の不純物イオンのイオン注入を行い、前記ゲート電極に隣接する前記半導体基板の表面にソース/ドレイン拡散層を形成する工程と、
残存した前記ゲート間絶縁膜に由来して生じた前記ゲート絶縁膜の段差に対し自己整合的に第2不純物イオンのイオン注入を行い、前記ソース/ドレイン拡散層の表面に高濃度コンタクト層を形成する工程と
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate

【図2G】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate

【図4G】
image rotate

【図4H】
image rotate

【図4I】
image rotate


【公開番号】特開2012−59776(P2012−59776A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199105(P2010−199105)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】