説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】ヒートシンクに生じる不具合を低減すること。
【解決手段】半導体装置は、第1面及び第2面を有し、第1面と第2面とを貫通するバイアホールを有する半導体基板と、第1面上に、バイアホールの開口と少なくとも部分的に重複するように形成された配線又は電極と、第2面上に形成され、バイアホールの開口と少なくとも部分的に重複する開口を有する応力緩衝層と、応力緩衝層上からバイアホールの内壁面に沿って延在し、配線又は電極と電気的に接続されたヒートシンクと、を備える。バイアホールの第2面における開口の大きさは、第1面における開口の大きさよりも大きい。応力緩衝層の熱膨張係数は、ヒートシンクの熱膨張係数未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板にバイアホールを有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaAs等の化合物半導体を用いた半導体装置においては、半導体基板表面に形成された半導体素子の接地のインダクタンスを低くすると共に、放熱性を向上させるために、半導体基板裏面にプレーティッドヒートシンク(PHS;Plated Heat Sink)が形成されている。PHSは、半導体基板表面の電極を貫通したバイアホール及び半導体基板裏面に形成した金属薄膜である。
【0003】
PHSを形成する方法としては、以下に説明する方法が知られている。
【0004】
第1のPHS形成方法は、まず、レジストマスクを用いて異方性のドライエッチングにより半導体基板をエッチング除去し、開口の大きさが均一なバイアホールを形成する。次に、レジストマスクを除去し、スパッタ法等により金属膜によるメッキ用給電層を成膜し、電解メッキによりPHSを形成する。
【0005】
第2のPHS形成方法は、レジストマスクを用いて半導体基板をウェットエッチングした後、ドライエッチングすることにより、バイアホールの入口付近を広げ、バイアホールに導電層を埋め込む。
【0006】
第3のPHS形成方法として、特許文献1半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、基板表面の素子電極形成領域の所定の部分に開口を有するマスク用レジスト膜、及び該素子電極用金属層以外のマスク用金属層を順次積層するマスク層積層工程と、レジスト膜及び金属層をマスクとして半導体基板をプラズマエッチングして、バイアホール電極用孔を形成するエッチング工程とを含む。
【0007】
第4のPHS形成方法として、特許文献2半導体装置の製造方法は、化合物半導体基体の表面に電界効果トランジスタを含む半導体素子を形成した後、第1のレジストマスクを介して異方性ドライエッチングにより化合物半導体基体の裏面から電界効果トランジスタのソース電極に達するバイアホールを形成する工程と、化合物半導体基体の裏面にバイアホールの開口より広い開口を有し、且つ一部がバイアホール内に埋め込まれた第2のレジストマスクを形成する工程と、第2のレジストマスクを介して化合物半導体基体の裏面をウェットエッチングにより所定深さまでエッチング除去し、バイアホールの開口側を緩やかな曲面に形成する工程と、メッキ用給電層を介してソース電極に接続し、バイアホール内から化合物半導体基体の裏面に延在する導電層をメッキ処理により成膜する工程とを有する。
【0008】
第5のPHS形成方法として、特許文献3半導体装置の製造方法は、(1)表面に金属膜パッドを有する半導体基板の裏面に第1の金属膜を形成する工程、(2)表面の金属膜パッド下の第1の金属膜に開口を形成し、続いて半導体基板を所定の深さまでエッチングして半導体基板に第1の金属膜の開口と同一平面形状の第1の開口を形成する工程、(3)絶縁膜の堆積とそのエッチバックにより第1の開口の側面に側壁絶縁膜を形成する工程、(4)第1の金属膜及び側壁絶縁膜をマスクとして半導体基板を所定の深さまでエッチングして半導体基板に第2の開口を形成する工程、を含み、必要に応じて第(3)及び第(4)工程に相当する工程を繰り返すことにより金属膜パッドに到達するバイアホールを形成し、該バイアホール内に第2の金属膜を形成して第1の金属膜と金属膜パッドとを接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−54937号公報
【特許文献2】特開2003−258002号公報
【特許文献3】特開平6−326064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0011】
図7に、上記の第1及び第3の形成方法において形成される半導体装置の概略断面図を示す。上記の第1及び第3の形成方法においては、バイアホール96は、一定の開口径で形成される。このようなバイアホール96にPHSメッキ95を形成すると、図7に示すように、バイアホール96の内壁上部のPHSメッキ95bが厚くなってしまう。すなわち、PHSメッキ95は、バイアホール96の開口を狭めるように形成されるので、バイアホール96底部のPHSメッキ95aの厚さは薄くなってしまう。このため、組立時や高温保管の信頼性評価時にバイアホール96からマウント剤が漏れ出し、特性劣化してしまうことになる。
【0012】
特に、例えば、アスペクト比(深さ/開口の大きさ)が1.5以上のバイアホールや開口の大きさが50μm以下のバイアホールにおいては、メッキ液はバイアホールの底までいきわたり難いと共に、循環しにくいので、均一なPHSメッキを形成することが困難となる。
【0013】
図8に、上記の第2の形成方法において形成されるバイアホールの概略断面図を示す。上記の第2の形成方法においては、同一のフォトレジスト98でウェットエッチングとドライエッチングが行われる。ウェットエッチングにおいては、バイアホール96の開口上部96aがサイドエッチングされる。このとき、サイドエッチングされた開口上部96a上にフォトレジスト98が張り出すようになる。張り出したフォトレジスト98は、ポストベークやドライエッチングにおける加熱により、図8に示すように、バイアホール96の開口に垂れ広がることになる。このため、フォトレジスト98の貫通孔の大きさが変化し、バイアホール96の開口径の制御が困難となってしまう。
【0014】
上記の第4の形成方法においては、異方性ドライエッチングにより開口径が一定のバイアホールが形成され、このバイアホールにレジストが埋め込まれる。しかしながら、バイアホールのアスペクト比が高い場合、バイアホールにレジストを完全に埋め込むことは困難であり、バイアホール内に気泡が形成される。この気泡により、レジストがバイアホールを覆わない箇所が生じる。このため、この後のウェットエッチングにより、レジストが形成されていない領域でサイドエッチングが生じ、バイアホールの形状が異常になる。これにより、バイアホールにPHSが存在しない領域が形成され、導通が得られない問題が生じる。また、組み立て時に、マウント剤が漏れ出す問題も生じる。
【0015】
上記の第5の形成方法においては、絶縁膜を形成する工程と、開口を形成する工程とが繰り返される。このため、工程数が多くならざるを得ず、製造コストが増大する問題が生ずる。また、特許文献3に記載の第1に金属膜にはPtが含有されているので、その加工性が低くなってしまう。
【0016】
上記の方法によって製造された半導体装置において、PHSを熱膨張係数の大きい材料(例えば金属)で形成した場合、通常、PHSの熱膨張係数は、半導体基板の熱膨張係数の熱膨張係数よりも大きくなる。この場合、熱負荷が掛かると、熱膨張係数の差に起因して、半導体基板におけるクラックの発生、PHSと半導体基板との剥離等の不具合が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1視点によれば、半導体装置は、第1面及び第2面を有し、第1面と第2面とを貫通するバイアホールを有する半導体基板と、第1面上に、バイアホールの開口と少なくとも部分的に重複するように形成された配線又は電極と、第2面上に形成され、バイアホールの開口と少なくとも部分的に重複する開口を有する応力緩衝層と、応力緩衝層上からバイアホールの内壁面に沿って延在し、配線又は電極と電気的に接続されたヒートシンクと、を備える。バイアホールの第2面における開口の大きさは、第1面における開口の大きさよりも大きい。応力緩衝層の熱膨張係数は、ヒートシンクの熱膨張係数未満である。応力緩衝層はPtを含有しない。
【0018】
本発明の第2視点によれば、半導体装置の製造方法は、半導体基板の第1面上に配線又は電極を形成する工程と、半導体基板の第2面上に応力緩衝層を形成する工程と、応力緩衝層上に、開口を有するマスクを形成する工程と、マスクをマスクとして用いて応力緩衝層に貫通孔を形成する工程と、マスク及び応力緩衝層をマスクとして用いて、貫通孔から半導体基板を部分的にかつ等方的にエッチングして凹部を形成する工程と、マスク及び応力緩衝層をマスクとして用いて、凹部を異方的にエッチングして半導体基板を貫通するバイアホールを形成する工程と、応力緩衝層の貫通孔を少なくともバイアホールの開口まで拡張する工程と、応力緩衝層上からバイアホールの内壁面に沿って延在し、配線又は電極と電気的に接続されたヒートシンクを形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0020】
本発明においては、応力緩衝層の熱膨張係数は、ヒートシンクの熱膨張係数よりも小さく、半導体基板の熱膨張係数よりも大きい。これにより、熱負荷が掛かった場合であっても、ヒートシンクが剥離したり、半導体基板にクラックが生じたりすることを防止することができる。
【0021】
本発明においては、バイアホールの開口は、ヒートシンクを形成する側が広くなっている。これにより、バイアホールの底部までヒートシンクの厚さを確保することができ、電気的接続の遮断やマウント剤の漏出などの不具合の発生を防止することができる。
【0022】
本発明においては、応力緩衝層をバイアホールを形成するためのマスクとして使用することもできる。これにより、加熱によるマスクの開口の大きさの変化を抑制することができるので、バイアホールを精度良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略断面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図。
【図7】背景技術に係る第1及び第3の形成方法において形成される半導体装置の概略断面図。
【図8】背景技術に係る第2の形成方法において形成されるバイアホールの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記第1視点及び第2視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0025】
上記第1視点の好ましい形態によれば、応力緩衝層は、バイアホール形成時にハードマスクとしても利用される。
【0026】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ヒートシンクはAuを含有する。応力緩衝層はTi又はTiWを含有する。
【0027】
上記第1視点の好ましい形態によれば、応力緩衝層は、Auを含有する層及びTi又はTiWを含有する層を有する。
【0028】
上記第1視点の好ましい形態によれば、バイアホールは、第1面側に、開口の大きさが一定である第1領域を有すると共に、第2面側に、第1領域から第2面に向かって開口の大きさが拡張する第2領域を有する。
【0029】
上記第1視点の好ましい形態によれば、バイアホールの第2面における開口の長さは、バイアホールの第1面における開口の長さの1.5倍以上である。
【0030】
上記第1視点の好ましい形態によれば、バイアホールの第2領域の深さは、バイアホールの全体の3分の1以上である。
【0031】
上記第1視点の好ましい形態によれば、バイアホールにおいて、第1領域は異方性エッチングにより形成され、第2領域は等方性エッチングにより形成されている。
【0032】
上記第2視点の好ましい形態によれば、応力緩衝層は、凹部上のマスクが加熱時にマスクの形状を維持するような厚さを有する。
【0033】
上記第2視点の好ましい形態によれば、応力緩衝層の熱膨張係数は、半導体基板の熱膨張係数とヒートシンクの熱膨張係数の間にある。
【0034】
上記第2視点の好ましい形態によれば、応力緩衝層は、Ti又はTiWを含有する。
【0035】
上記第2視点の好ましい形態によれば、半導体装置の製造方法は、応力緩衝層上からバイアホールの内壁面に沿って延在し、配線又は電極と電気的に接続された給電層を形成する工程をさらに含む。給電層を用いてヒートシンクを電解メッキにより形成する。
【0036】
上記第2視点の好ましい形態によれば、応力緩衝層を形成する工程は、Ti又はTiW層を形成する工程と、その上にAu層を形成する工程を含む。
【0037】
上記第2視点の好ましい形態によれば、給電層は無電解メッキにより形成する。
【0038】
本発明の第1実施形態に係る半導体装置について説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略断面図を示す。
【0039】
半導体装置10は、半導体基板12と、半導体基板12の第1面12aに形成された配線又は電極(以下「配線」と表記する)11と、第1面12aの反対側の面である半導体基板12の第2面12bに形成された応力緩衝層13と、半導体基板12の第1面12aと第2面12bとを貫通するバイアホール16と、応力緩衝層13上からバイアホール16を経由して配線11まで延在し、配線11と電気的に接続されている給電層14及びプレーティッドヒートシンク(PHS;Plated Heat Sink、以下「PHS」と表記する)15と、を備える。
【0040】
PHS15は、低抵抗の材料で形成すると好ましい。PHS15は、複数の材料を含有する複数の層で形成することもできる。
【0041】
バイアホール16は、第1面12aの開口が配線11と少なくとも部分的に重複するように形成されている。バイアホール16の開口の大きさは、第1面12aの開口よりも第2面12bの開口のほうが大きくなっている。図1に示す形態においては、バイアホール16は、第1面12a側に、開口の大きさがほぼ一定に形成された第1領域16aを有し、第2面12b側に、第1領域16aから第2面12bに向けて開口の大きさを拡張する第2領域16bを有する。第2領域16bは、第1面12a方向に凸となるような曲面状に形成されている。図1に示す断面において、バイアホール16の形状は、第1領域16aと第2領域16bとを合わせてワイングラス状となっている。
【0042】
バイアホール16の最も広い開口の大きさ(例えば第2面12bにおける大きさ)は、最も狭い開口の大きさ(例えば第1面12aにおける大きさ)の1.5倍以上であると好ましい。バイアホール16の第2領域16bの深さは、バイアホール16の全体の深さの3分の1以上であると好ましい。これにより、PHS15をメッキにより形成する場合に、第2面12b側からバイアホール16の第1領域16aへメッキ液を行き渡らせやすくなると共に、メッキ液を循環させやすくなる。したがって、より均一なPHSを形成できるようになる。
【0043】
応力緩衝層13は、バイアホール16の開口と少なくとも部分的に重複する貫通孔13aを有する。貫通孔13aの開口の大きさは、バイアホール16の第2面12b側の開口よりも大きいと好ましい。貫通孔13aの大きさがバイアホール16の第2面12bにおける開口よりも狭いと、応力緩衝層13が第1領域16aのメッキを妨げることになるからである。
【0044】
応力緩衝層13は、バイアホール16を形成する際にマスクとして機能すると共に、熱負荷が掛かったときに、PHS15に生じる応力を緩和する。応力緩衝層13の熱膨張係数は、0℃〜300℃の温度範囲において、半導体基板12の熱膨張係数とPHS15の熱膨張係数の間に設定すると好ましい。例えば、半導体基板12としてガリウムヒ素(GaAs)(熱膨張係数(室温)6.9ppm/K)を用い、PHSとして金(Au)(熱膨張係数(室温)14.2ppm/K)を用いた場合、応力緩衝層13としては、チタン(Ti)(熱膨張係数(室温)8.6ppm/K)やチタンとタングステンの合金(TiW)などを用いることができる。PHS15、応力緩衝層13及び半導体基板12の熱膨張係数(線膨張係数)は、0℃〜300℃の範囲において、JISZ2285に準拠して測定する。
【0045】
応力緩衝層13は、白金(Pt)を含有しないと好ましい。これにより、応力緩衝層13をマスクとして利用する際に容易に加工することができるようになる。
【0046】
応力緩衝層13の厚さは、応力緩衝層13の材料に応じて、PHS15に発生する応力を緩和できるような厚さにすると好ましい。例えば、半導体基板12がGaAsであり、PHS15の主たる層がAuであり、応力緩衝層13がTiである場合、応力緩衝層13の厚さはPHS15のAuの厚さ(例えば5μm)の10%(例えば0.5μm)以上であると好ましい。
【0047】
また、応力緩衝層13の厚さは、応力緩衝層13の材料に応じて、後述する半導体装置の製造方法において、バイアホール16の開口を覆うマスクが熱ダレしないような厚さにすると好ましい。例えば、熱負荷をかけた状態のマスクの開口の大きさ(長さ)が、熱負荷をかけていない状態のマスクの開口の大きさ(長さ)よりも5%以上変化しないような厚さであると好ましい。
【0048】
半導体基板12としては、活性層又は拡散領域(不図示)を含むGaAs等の化合物半導体を用いることができる。半導体基板12の厚さは、バイアホール16形成のため、50μm〜100μmに薄化することができる。
【0049】
次に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図2及び図3に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図を示す。
【0050】
まず、半導体基板12の第1面12a上に配線11を形成する。次に、半導体基板12を所望の厚さまで薄化する。次に、半導体基板12の第2面12b上に、例えばスパッタ法等により、応力緩衝層13を形成する(図2(a))。
【0051】
次に、応力緩衝層13上に、バイアホールを形成する位置に、貫通孔18aを有するフォトレジスト等のマスク18を形成する(図2(b))。
【0052】
次に、例えばドライエッチングにより、マスク18をマスクとして用いて、応力緩衝層13に貫通孔13bを形成する(図2(c))。
【0053】
次に、マスク18及び応力緩衝層13をマスクとして用いて、半導体基板12を部分的かつ等方的にエッチングする(図2(d))。例えば、半導体基板12にGaAs基板を用いた場合、硫酸と過酸化水素水の水溶液によるウェットエッチングにより、GaAS基板12に、第2領域16bとなる凹部を形成する。
【0054】
次に、マスク18及び応力緩衝層13をマスクとして用いて、例えば100℃以上に加熱して、半導体基板12の凹部16bを異方的にエッチングして、第1領域16aを形成し、半導体基板12を貫通するバイアホール16を形成する(図3(e))。例えば、半導体基板12にGaAs基板を用いた場合、塩素ガス(Cl)と四塩化シリコン(SiCl)の混合ガスを用いたドライエッチングにより、凹部(第2領域)16bの底部から配線11が露出するまで異方的にエッチングして第1領域16aを形成する。これにより、半導体基板12の第2面12b方向に開口が部分的に拡張したバイアホール16が形成される。
【0055】
このとき、マスク18及び応力緩衝層13は、庇のように凹部の開口を部分的に覆うことになる。マスク18は、応力緩衝層13によって支持されているので、エッチング工程において、例えば100℃〜300℃に加熱されても開口部分のマスク18が垂れてしまうことが抑制されている。これにより、バイアホール16(特に第1領域16a)の開口の大きさの制御性を高めることができる。
【0056】
次に、応力緩衝層13の貫通孔13bを少なくともバイアホール16の開口まで拡張する。例えば、応力緩衝層13にTiを用いた場合、SFガスを用いたドライエッチングにより、応力緩衝層13を等方的にエッチングする。このとき、イオンエネルギーを低く抑えることにより、バイアホール16のエッチングを抑制することができる。これにより、バイアホール16の開口の大きさを確保することができる。次に、マスク18を除去する(図3(f))。
【0057】
次に、応力緩衝層13の露出面、バイアホール16の内壁面、及びバイアホール16からの配線11の露出面上に、PHSを電解めっきにより形成するための給電層14を形成する。給電層14は、例えばスパッタ法によりAuで形成することができる。次に、フォトレジスト等のマスク(不図示)を用いて、給電層14上の所定の領域にPHS15を形成する(図3(g))。PHS15は、例えば、Auめっきとして形成することができる。このとき、PHS15は、半導体基板12の第2面12b上方から配線11上まで連続的に延在している。PHS15は、配線11と電気的に接続される。第2領域16bによってバイアホール16の入り口が拡張されているので、配線11まで十分な厚さのPHS15を形成することができる。以上より、半導体装置10が製造される。
【0058】
本発明によれば、バイアホール16を形成する際に、応力緩衝層13をハードマスクとして用いている。これにより、製造工程中におけるマスクの変形を防止することができ、バイアホール16の寸法精度を向上させることができる。また、応力緩衝層13の熱膨張率を半導体基板12とPHS15との中間に設定することにより、組立時や温度サイクル、高温通電の信頼性評価等における熱ストレスを緩和することができる。さらに、バイアホール16の開口が拡大されているので、バイアホール16の底面(配線11)上及びバイアホール16の内壁面上にも十分な厚さのPHS15を形成することができる。これにより、PHS15の被覆に欠損が生じたり、組み立て時にマウント剤が漏出したりすることを抑制することができる。さらに、上記のようなPHSを工程数を特に増大させることなく形成することができる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置について説明する。図4に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略断面図を示す。図4において、第1実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。第1実施形態においては、応力緩衝層は、1つの材料で形成されていたが、第2実施形態においては、複数の材料で複数の層に形成されている。
【0060】
半導体装置20は、応力緩衝層21を備える。応力緩衝層21は、例えば、第1層22と、第2層23とを有する。第1層22及び第2層23の熱膨張係数は、熱負荷が掛かったときにPHS15に生じる応力を緩和するために、0℃〜300℃の温度範囲において、半導体基板12の熱膨張係数とPHS15の熱膨張係数の間に設定すると好ましい。第1層22及び第2層23は、PHS15が有する層の材料と異なる材料で形成すると好ましい。
【0061】
第1層22及び第2層23の合計の厚さは、PHS15に発生する応力を緩和できるように、またハードマスクとして機能するように、PHS15の厚さの10%以上であると好ましい。例えば、第1層22の厚さを500nmとし、第2層23の厚さを30nmとすることができる。
【0062】
第1層22として例えばTi又はTiWを用いた場合、第2層23としては、例えばAuを用いることができる。このとき、給電層14としては、例えばAu、Ni/Au、Ti/Auを用いることができる。例えば、PHS15の主たる層を厚さ5μmのAuメッキとする場合、給電層14は、Ti層厚さ25nm、Au層厚さ25nmとすることができる。TiやNiは、密着性を高めるために用いられる。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図5及び図6に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための概略工程図を示す。主として第1実施形態と異なる点について説明する。
【0064】
半導体基板12の第2面12b上に、例えばスパッタ法等により、TiW、Ti等の第1層22及びAuなどの第2層23を積層し、応力緩衝層21を形成する(図5(a))。
【0065】
次に、応力緩衝層21上にマスク18を形成した(図5(b))後、第1層22及び第2層23に貫通孔22b,23bを形成する(図5(c))。
【0066】
次に、第1実施形態と同様にして、マスク18及び応力緩衝層21(第1層22及び第2層23)をマスクとして用いて、半導体基板12を部分的かつ等方的にエッチングして、第2領域16bを形成する(図5(d))。次に、半導体基板12の第2領域16bを異方的にエッチングして、第1領域16aを形成し、半導体基板12を貫通するバイアホール16を形成する(図6(e))。
【0067】
次に、応力緩衝層21の貫通孔22b,23bを少なくともバイアホール16の開口まで拡張する。例えば、第1層22にTiを用い、第2層23にAuを用いた場合、SFガスを用いたドライエッチングにより第1層22を等方的にエッチングし、ヨウ素(I)とヨウ化カリウム(KI)の混合液を用いたウェットエッチングにより第2層23を等方的にエッチングする(図6(f))。
【0068】
次に、PHSを電解めっきにより形成するための給電層14を形成する。給電層14は、例えば無電解メッキ又はスパッタ法によりAu又はNi/Auで形成することができる。次に、フォトレジスト等のマスク(不図示)を用いて、給電層14上の所定の領域にPHS15を形成する(図6(g))。PHS15は、例えば、Auめっきとして形成することができる。以上より、半導体装置20が製造される。
【0069】
第2実施形態によれば、給電層14をスパッタ法のみならず無電解メッキでも形成することができる。すなわち、第1層22にTiやTiWを用いた場合、TiやTiWは表面が酸化されやすいので、TiやTiW上に無電解メッキで給電層を形成することはできない。しかし、第1層22上に、例えばAuの第2層23を形成すれば、無電解メッキでも給電層14を形成することができるようになる。無電解メッキを用いると、バイアホールの内壁が荒れている場合にも給電層14及びPHS15をバイアホール16の開口を狭めることなく形成することができる。
【0070】
第2実施形態における上記以外の形態は、第1実施形態と同様である。
【0071】
上記第1実施形態及び第2実施形態における各要素の熱膨張係数は、その材料に応じたJIS規格によって測定すると好ましい。
【0072】
本発明の半導体装置及びその製造方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0073】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【符号の説明】
【0074】
10,20 半導体装置
11 配線
12 半導体基板
12a 第1面
12b 第2面
13,21 応力緩衝層
13a,13b 貫通孔
14 給電層
15 PHS
16 バイアホール
16a 第1領域
16b 第2領域
18 マスク
18a 貫通孔
22 第1層
22a,22b 貫通孔
23 第2層
23a,23b 貫通孔
91 配線
92 半導体基板
95 PHS
95a バイアホール底部のPHS
95b バイアホール上部のPHS
96 バイアホール
96a 開口上部
98 フォトレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有し、前記第1面と前記第2面とを貫通するバイアホールを有する半導体基板と、
前記第1面上に、前記バイアホールの開口と少なくとも部分的に重複するように形成された配線又は電極と、
前記第2面上に形成され、前記バイアホールの開口と少なくとも部分的に重複する開口を有する応力緩衝層と、
前記応力緩衝層上から前記バイアホールの内壁面に沿って延在し、前記配線又は電極と電気的に接続されたヒートシンクと、を備え、
前記バイアホールの前記第2面における開口の大きさは、前記第1面における開口の大きさよりも大きく、
前記応力緩衝層の熱膨張係数は、前記ヒートシンクの熱膨張係数未満であり、
前記応力緩衝層の熱膨張係数は、前記半導体基板の熱膨張係数より大きく、
前記応力緩衝層はPtを含有しないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記応力緩衝層は、前記バイアホール形成時にハードマスクとしても利用されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクはAuを含有し、
前記応力緩衝層はTi又はTiWを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記応力緩衝層は、Auを含有する層及びTi又はTiWを含有する層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バイアホールは、前記第1面側に、開口の大きさが一定である第1領域を有すると共に、前記第2面側に、前記第1領域から前記第2面に向かって開口の大きさが拡張する第2領域を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記バイアホールの前記第2面における開口の長さは、前記バイアホールの前記第1面における開口の長さの1.5倍以上であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記バイアホールの前記第2領域の深さは、前記バイアホールの全体の3分の1以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記バイアホールにおいて、前記第1領域は異方性エッチングにより形成され、前記第2領域は等方性エッチングにより形成されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体基板の第1面上に配線又は電極を形成する工程と、
前記半導体基板の第2面上に応力緩衝層を形成する工程と、
前記応力緩衝層上に、開口を有するマスクを形成する工程と、
前記マスクをマスクとして用いて前記応力緩衝層に貫通孔を形成する工程と、
前記マスク及び前記応力緩衝層をマスクとして用いて、前記貫通孔から前記半導体基板を部分的にかつ等方的にエッチングして凹部を形成する工程と、
前記マスク及び前記応力緩衝層をマスクとして用いて、前記凹部を異方的にエッチングして前記半導体基板を貫通するバイアホールを形成する工程と、
前記応力緩衝層の前記貫通孔を少なくとも前記バイアホールの開口まで拡張する工程と、
前記応力緩衝層上から前記バイアホールの内壁面に沿って延在し、前記配線又は電極と電気的に接続されたヒートシンクを形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記応力緩衝層は、前記凹部上の前記マスクが加熱時に前記マスクの形状を維持するような厚さを有することを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記応力緩衝層の熱膨張係数は、前記半導体基板の熱膨張係数と前記ヒートシンクの熱膨張係数の間にあることを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記応力緩衝層は、Ti又はTiWを含有することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記応力緩衝層上から前記バイアホールの内壁面に沿って延在し、前記配線又は電極と電気的に接続された給電層を形成する工程をさらに含み、
前記給電層を用いて前記ヒートシンクを電解メッキにより形成することを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記応力緩衝層を形成する工程は、Ti又はTiW層を形成する工程と、その上にAu層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記給電層は無電解メッキにより形成することを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164711(P2012−164711A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21897(P2011−21897)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】