説明

半導体装置

【課題】パワーMOSFETを備える半導体装置のコストの低減を図る。
【解決手段】半導体装置1では、P型の半導体基板2上に、N型の半導体層3が積層されている。そして、半導体装置1は、LDMOS領域5に、ボディ領域8、ドレインバッファ領域9、ソース領域11およびゲート電極14などからなるLDMOSFETを備えている。すなわち、半導体装置1は、LDMOSFETを備えながら、厚膜SOI基板ではなく、N型の半導体層3が直上に設けられたP型の半導体基板2を採用している。そして、フィールド絶縁膜13上に7つのフィールドプレート15が設けられ、そのフィールドプレート15の間隔がボディ領域8側(ソース領域11側)ほど小さくされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータドライバや電源回路に備えられるパワーMOSFETとして、たとえば、LDMOSFET(Lateral Double diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が知られている。
図7は、LDMOSFETを備える半導体装置の模式的な断面図である。
半導体装置101は、厚膜SOI(Silicon On Insulator)基板102を備えている。厚膜SOI基板102は、シリコン基板103上に、SiO(酸化シリコン)からなるBOX(Buried Oxide)層104を介して、Si(シリコン)からなるN型のエピタキシャル層105を積層した構造を有している。
【0003】
エピタキシャル層105には、環状のディープトレンチ106がその表面から掘り下げて形成されている。ディープトレンチ106の最深部は、BOX層104に達している。ディープトレンチ106内は、シリコン酸化膜107を介して、ポリシリコン108で埋め尽くされている。これにより、ディープトレンチ106に囲まれる領域は、その周囲から絶縁分離(誘電体分離)され、LDMOSFETが形成される素子形成領域となっている。
【0004】
素子形成領域において、エピタキシャル層105の表層部には、N型のドレインバッファ領域109が形成されている。ドレインバッファ領域109の表層部には、ドレインバッファ領域109よりも高いN型不純物濃度を有するN型のドレインコンタクト領域110が選択的に形成されている。
ドレインバッファ領域109の周囲には、P型のドリフト領域111が形成されている。ドリフト領域111は、ドレインバッファ領域109に接している。ドリフト領域111の全域上には、LOCOS酸化膜112が形成されている。
【0005】
また、エピタキシャル層105の表層部には、ディープトレンチ106とドリフト領域111との間に、それらと間隔を空けて、P型のボディ領域113が形成されている。ボディ領域113の表層部には、N型のソース領域114と、ボディ領域113よりも高いP型不純物濃度を有するP型のボディコンタクト領域115とが互いに隣接して形成されている。
【0006】
エピタキシャル層105の表面上には、ソース領域114とLOCOS酸化膜112との間に、ゲート酸化膜116が形成されている。ゲート酸化膜116上には、ゲート電極117が形成されている。
厚膜SOI基板102上は、SiOからなる層間絶縁膜118で覆われている。層間絶縁膜118上には、ソース配線119およびドレイン配線120が形成されている。ソース配線119は、層間絶縁膜118に形成されたコンタクトホール121を介して、ソース領域114およびボディコンタクト領域115に接続されている。ドレイン配線120は、層間絶縁膜118に形成されたコンタクトホール122を介して、ドレインコンタクト領域110に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−341018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、LDMOSFETなどのパワーMOSFETを備える半導体装置には、厚膜SOI基板102が用いられている。しかしながら、厚膜SOI基板102は、1枚あたりの価格が数万円程度であるため、厚膜SOI基板102を用いた半導体装置は、コストが高いという問題を有している。
本発明の目的は、コストの低減を図ることができる、半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ、前記半導体基板に接する第2導電型の半導体層と、前記半導体層の表層部に形成された第1導電型のボディ領域と、前記半導体層の表層部に、前記ボディ領域と間隔を空けて形成された第2導電型の第1不純物領域と、前記ボディ領域の表層部に、前記ボディ領域の周縁と間隔を空けて形成された第2導電型の第2不純物領域と、前記半導体層上に形成され、前記ボディ領域の周縁と前記第2不純物領域の周縁との間の部分に対向するゲート電極と、前記半導体層の表面における前記ボディ領域と前記第1不純物領域との間の部分に形成されたフィールド絶縁膜と、前記フィールド絶縁膜上に、互いに間隔を空けて形成された3つ以上のフィールドプレートとを備えている。
【0010】
この半導体装置では、第1導電型の半導体基板上に、第2導電型の半導体層が半導体基板に接して形成されている。そして、半導体装置は、半導体層に形成されたボディ領域、第1不純物領域および第2不純物領域ならびに半導体層上に形成されたゲート電極を含むLDMOSFETを備えている。すなわち、本発明に係る半導体装置は、LDMOSFETを備えながら、厚膜SOI基板ではなく、第2導電型の半導体層が直上に設けられた第1導電型の半導体基板を採用している。
【0011】
単一層からなる半導体基板は、1枚あたりの価格が数千円程度であり、厚膜SOI基板よりもはるかに安価である。そして、半導体層は、たとえば、エピタキシャル成長法により、安価かつ容易に形成することができる。よって、本発明に係る半導体装置では、厚膜SOI基板を採用した半導体装置と比較して、コストの低減を図ることができる。
本願発明者は、本発明に至る過程において、半導体層の比抵抗を上げることにより、LDMOSFETの素子耐圧を高めることができることを見出した。しかしながら、半導体層の比抵抗を上げると、第1不純物領域および第2不純物領域間に高電圧が印加されたときに、半導体層の第2不純物領域に近い部分に電界集中が生じ、この電界集中によるリークが発生することが判った。
【0012】
そこで、本発明に係る半導体装置では、フィールド絶縁膜上に3つ以上のフィールドプレートが設けられ、そのフィールドプレートの間隔がボディ領域側(第2不純物領域側)ほど小さくされている。これにより、互いに隣り合うフィールドプレートにより構成されるキャパシタの容量がボディ領域側ほど大きくなる。その結果、半導体層の第2不純物領域に近い部分での電界の集中を抑制することができ、その電界集中によるリークの発生を抑制することができる。
【0013】
複数のフィールドプレートは、互いに長さの異なる複数の環状プレートを含んでいてもよく、その場合、複数の環状プレートは、相対的に長い環状プレートが相対的に短い環状プレートを取り囲むように配置されていることが好ましい。この場合、ゲート電極は、最外周の環状プレートと一体的な環状に形成されていることが好ましい。
半導体層の表層部におけるフィールド絶縁膜と対向する部分に、第1導電型のリサーフ層が形成されていてもよい。これにより、半導体層における電界の集中を一層抑制することができる。
【0014】
リサーフ層は、半導体層における電界の集中が生じやすい部分に部分的に形成されてもよいし、フィールド絶縁膜と対向する部分の全域に形成されてもよい。リサーフ層がフィールド絶縁膜と対向する部分の全域に形成される場合、リサーフ層の第1導電型不純物の濃度を上げると、LDMOSFETの素子耐圧が向上するが、その反面、オン抵抗が大きくなる。したがって、リサーフ層の第1導電型不純物の濃度は、素子耐圧およびオン抵抗のバランスを考慮して決定されるとよい。
【0015】
半導体層の表面に素子分離部が形成され、この素子分離部により、ボディ領域および第1不純物領域が形成されているLDMOS領域とその周囲の領域とが絶縁分離されてもよい。
この場合において、素子分離部によりLDMOS領域から絶縁分離された領域に、バイポーラトランジスタが形成されてもよい。
【0016】
また、素子分離部に対向する位置とボディ領域に対向する位置との間に、半導体基板と半導体層とに跨って、第1導電型のローアイソレーション領域が形成されてもよい。このローアイソレーション領域が形成されることにより、ボディ領域の下方での電界の集中を防止することができ、素子耐圧のさらなる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の図解的な断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、図1のLDMOS領域の図解的な平面図であって、図2(a)は全体図、図2(b)はドレイン側の要部拡大図、図2(c)はソース側の要部拡大図をそれぞれ示す。
【図3】図3は、LDMOSFETの素子耐圧測定時のI−V波形を示すグラフである。
【図4】図4は、ドレイン電圧印加時のLDMOS領域における半導体層の電位分布を示す等電位線図である。
【図5】図5は、ドレイン電圧印加時のLDMOS領域における半導体層の電界強度分布を示すグラフである。
【図6】図6は、フィールドプレートの間隔を図解的に示す図である。
【図7】図7は、従来の半導体装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の図解的な断面図である。図2(a)〜(c)は、図1のLDMOS領域の図解的な平面図であって、図2(a)は全体図、図2(b)はドレイン側の要部拡大図、図2(c)はソース側の要部拡大図をそれぞれ示す。図1では、図面の簡素化のために、各部に対するハッチングの付与が省略されている。
【0019】
半導体装置1は、P型(第1導電型)の半導体基板2を備えている。半導体基板2は、たとえば、シリコン基板からなる。
半導体基板2上には、N型(第2導電型)の半導体層3が積層されている。半導体層3の比抵抗は、270Ω・cmである。半導体層3は、たとえば、エピタキシャル成長法により形成される。
【0020】
半導体層3の表面には、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されるシリコン酸化膜である素子分離部としてのLOCOS膜4が形成されている。LOCOS膜4により、LDMOS領域5、CMOS領域6およびBi領域7がそれぞれ個別に取り囲まれて、互いに絶縁分離されている。
LDMOS領域5には、半導体層3の表層部に、P型のボディ領域8と、N型のドレインバッファ領域9とが形成されている。
【0021】
ボディ領域8は、平面視で環状に形成されている。ボディ領域8の表層部には、N型のソース領域11およびP型のボディコンタクト領域10とが互いに隣接して形成されている。ボディコンタクト領域10は、ボディ領域8の外周側に形成され、ソース領域11とボディ領域8の内周縁との間には間隔が空けられている。ボディコンタクト領域10のP型不純物濃度は、ボディ領域8のP型不純物濃度よりも高い。
【0022】
ドレインバッファ領域9は、ボディ領域8に取り囲まれる領域の中央部に、ボディ領域8と間隔を空けて形成されている。ドレインバッファ領域9の表層部において、平面視でドレインバッファ領域9の中央部には、ドレインバッファ領域9よりも高いN型不純物濃度を有するN型のドレインコンタクト領域12が形成されている。
半導体層3の表面には、ボディ領域8とドレインコンタクト領域12との間の部分に、環状のフィールド絶縁膜13が形成されている。フィールド絶縁膜13の内周縁は、ドレインコンタクト領域12の周縁上に配置され、フィールド絶縁膜13の外周縁は、ボディ領域8と間隔を空けた位置に配置されている。フィールド絶縁膜13は、LOCOS膜4と同一工程で形成される。
【0023】
また、半導体層3の表面には、ボディコンタクト領域10とフィールド絶縁膜13との間に跨るように、図示しないゲート絶縁膜が形成されている。
ゲート絶縁膜上には、ゲート電極14が形成されている。ゲート電極14は、不純物がドープされたポリシリコンからなる。
これにより、LDMOS領域5には、ボディ領域8、ドレインバッファ領域9、ソース領域11およびゲート電極14などからなるLDMOSFETが備えられている。
【0024】
そして、フィールド絶縁膜13上には、少なくとも3つ(本実施形態では、7つ)のフィールドプレート15が形成されている。フィールドプレート15は、ゲート電極14と同じ材料からなる。フィールドプレート15は、フィールド絶縁膜13に沿った互いに相似な(周囲長が異なる)環状をなしており、相対的に長いフィールドプレート15が相対的に短いフィールドプレート15を取り囲むように、互いに間隔を空けて配置されている。ゲート電極14は、フィールド絶縁膜13上に載り上がり、最外周のフィールドプレート15は、ゲート電極14と一体的に形成されている。
【0025】
CMOS領域6において、半導体層3の表面には、NMOS領域16とPMOS領域17とを互いに絶縁分離するためのLOCOS膜18が形成されている。LOCOS膜18は、LOCOS膜4およびフィールド絶縁膜13と同一工程で形成される。
NMOS領域16には、半導体層3の表層部に、P型のPウェル領域19が形成されている。また、Pウェル領域19の下方には、Pウェル領域19よりも高いP型不純物濃度を有するP型の高濃度不純物領域20が形成されている。高濃度不純物領域20は、平面視でPウェル領域19とほぼ同じサイズを有し、半導体基板2と半導体層3とに跨って形成されている。
【0026】
Pウェル領域19の表層部には、N型のソース領域21およびN型のドレイン領域22が互いに間隔を空けて形成されている。
ソース領域21とドレイン領域22との間の領域は、チャネル領域であり、このチャネル領域の表面上には、図示しないゲート絶縁膜を挟んで、ゲート電極23が形成されている。ゲート電極23は、ゲート電極14と同じ材料からなり、ゲート電極14と同一工程で形成される。
【0027】
これにより、NMOS領域16には、ソース領域21、ドレイン領域22およびゲート電極23などからなるNMOSFET(Negative-channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が備えられている。
PMOS領域17には、半導体層3の表層部に、N型のNウェル領域24が形成されている。また、Nウェル領域24の下方には、Nウェル領域24よりも高いN型不純物濃度を有するN型の高濃度不純物領域25が形成されている。高濃度不純物領域25は、平面視でNウェル領域24とほぼ同じサイズを有し、半導体基板2と半導体層3とに跨って形成されている。
【0028】
Nウェル領域24の表層部には、P型のソース領域26およびP型のドレイン領域27が互いに間隔を空けて形成されている。
ソース領域26とドレイン領域27との間の領域は、チャネル領域であり、このチャネル領域の表面上には、図示しないゲート絶縁膜を挟んで、ゲート電極28が形成されている。ゲート電極28は、ゲート電極14,23と同じ材料からなり、ゲート電極14,23と同一工程で形成される。
【0029】
これにより、PMOS領域17には、ソース領域26、ドレイン領域27およびゲート電極28などからなるPMOSFET(Positive-channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が備えられている。
Bi領域7には、半導体層3の表層部に、P型のベース領域29およびN型のコレクタ領域30が互いに間隔を空けて形成されている。
【0030】
ベース領域29とコレクタ領域30との間において、半導体層3の表面には、LOCOS膜31が形成されている。LOCOS膜31は、LOCOS膜4,18およびフィールド絶縁膜13と同一工程で形成される。
ベース領域29の表層部には、N型のエミッタ領域32およびP型のベースコンタクト領域33が互いに間隔を空けて形成されている。ベースコンタクト領域33のP型不純物濃度は、ベース領域29のP型不純物濃度より高い。
【0031】
コレクタ領域30の表層部には、コレクタ領域30よりも高いN型不純物濃度を有するコレクタコンタクト領域34が形成されている。
これにより、Bi領域7には、ベース領域29、コレクタ領域30およびエミッタ領域32などからなるバイポーラトランジスタが備えられている。
ベース領域29およびコレクタ領域30の下方には、エミッタ領域32よりも高いN型不純物濃度を有するN型不純物領域35が形成されている。このN型不純物領域35は、半導体基板2と半導体層3とに跨り、エミッタ領域32の最深部に接続され、ベース領域29と対向する位置まで延びている。
【0032】
また、半導体層3には、LDMOS領域5を取り囲むLOCOS膜4の下方に、P型のウェル領域36がそのLOCOS膜4に沿って環状に形成されている。
さらに、ウェル領域36の下方には、ウェル領域36よりも高いP型不純物濃度を有するローアイソレーション領域37が形成されている。ローアイソレーション領域37は、半導体基板2と半導体層3とに跨り、ウェル領域36の最深部に接続され、ボディ領域8と対向する位置まで延びている。
【0033】
また、半導体層3の上方には、図示しない層間絶縁膜が形成されている。この層間絶縁膜上には、複数の配線が形成されている。たとえば、ドレインバッファ領域9と層間絶縁膜を挟んで対向する位置には、ドレイン配線38が形成されている。ドレイン配線38は、層間絶縁膜を貫通するプラグ39を介して、ドレインコンタクト領域12と電気的に接続されている。ドレイン配線38は、平面視で、少なくとも最内周のフィールドプレート15と重なるようにレイアウトされている。また、層間絶縁膜(図示せず)上において、ソース領域11およびボディコンタクト領域10と層間絶縁膜を挟んで対向する位置には、ソース配線40が形成されている。ソース配線40は、層間絶縁膜を貫通するプラグ41を介して、ソース領域11およびボディコンタクト領域10と電気的に接続されている。ソース配線40は、平面視で、少なくともゲート電極14と最外周のフィールドプレート15との一体型プレートに重なるようにレイアウトされている。
【0034】
図3は、LDMOSFETの素子耐圧測定時のI−V波形を示すグラフである。このグラフでは、横軸にドレイン電圧をとり、縦軸にドレイン電流をとっている。
本願発明者は、本発明に至る過程において、図1に示す半導体装置1からフィールドプレート15を省略したモデルを作製し、そのモデルにおいて、ソース領域11およびゲート電極14を接地し、LDMOS領域5のドレインバッファ領域9にドレイン電圧を印加して、素子耐圧を測定した。
【0035】
半導体装置1からフィールドプレート15を省略したモデルでは、半導体層3の比抵抗が270Ω・cmであるので、シミュレーション上では、750Vを超える素子耐圧が得られる。
しかしながら、実際にドレイン電圧を印加して、素子耐圧を測定すると、図3に示す波形Aのように、ドレイン電圧が700Vに達する前にリーク電流が瞬間的に流れ、ドレイン電圧が700Vを超えた後、ブレークダウン(降伏)現象が生じることが判った。
【0036】
図4は、ドレイン電圧印加時のLDMOS領域における半導体層の電位分布を示す等電位線図である。図5は、ドレイン電圧印加時のLDMOS領域における半導体層の電界強度分布を示すグラフである。
そこで、ドレイン電圧の印加時に、LDMOS領域5における半導体層3の電位分布および電界強度分布を調べたところ、ドレイン電圧の印加時には、ドレインバッファ領域9側とソース領域11側とを比較して、図4に示すように、ソース領域11側(ソース側)で等電位線の間隔が狭くなり、図5に示すように、ソース領域11側に大きい電界集中を生じた。
【0037】
このソース領域11側での電界集中がリーク電流を発生させる原因と考えられ、その電界集中を緩和することができれば、LDMOSFETの素子耐圧を向上することができる。
図6は、フィールドプレートの間隔を図解的に示す図である。
半導体装置1では、フィールド絶縁膜13上の7つのフィールドプレート15は、互いに隣り合うフィールドプレート間の間隔が、ソース領域11側ほど小さくされている。具体的には、図6に示すように、最外周のフィールドプレート15(ゲート電極14と一体に形成されたフィールドプレート15)から順に、各フィールドプレート15に参照符号15a,15b,15c,15d,15e,15f,15gを付して、フィールドプレート15a,15b間の間隔を間隔D1とし、フィールドプレート15b,15c間の間隔を間隔D2とし、フィールドプレート15c,15d間の間隔を間隔D3とし、フィールドプレート15d,15e間の間隔を間隔D4とし、フィールドプレート15e,15f間の間隔を間隔D5とし、フィールドプレート15f,15g間の間隔を間隔D6とした場合、間隔D1〜D6は、
D1<D2<D3<D4<D5<D6
の関係を有している。
【0038】
これにより、フィールドプレート15a,15bにより構成されるキャパシタの容量C1、フィールドプレート15b,15cにより構成されるキャパシタの容量C2、フィールドプレート15c,15dにより構成されるキャパシタの容量C3、フィールドプレート15d,15eにより構成されるキャパシタの容量C4、フィールドプレート15e,15fにより構成されるキャパシタの容量C5およびフィールドプレート15f,15gにより構成されるキャパシタの容量C6は、
C1>C2>C3>C4>C5>C6
の関係を有する。
【0039】
その結果、半導体層3のソース領域11に近い部分での電界の集中を抑制することができ、その電界集中によるリークの発生を抑制することができる。よって、図3に示す波形Bのように、LDMOSFETの素子耐圧特性を、ドレイン電圧が700V以下ではリーク電流が発生せず、ドレイン電圧が750V程度に達したときにブレークダウンを生じるような特性とすることができる。
【0040】
また、半導体装置1では、ドレイン配線38が平面視で少なくとも最内周のフィールドプレート15と重なるようにレイアウトされている。言い換えれば、少なくとも最内周のフィールドプレート15は、平面視でドレイン配線38と重なるように配置されている。そのため、フィールドプレート15間のキャパシタにより形成される電界がドレイン配線38(ドレイン電圧)の影響を受けることを防止でき、フィールドプレート15間のキャパシタによる電界集中の抑制の効果を良好に発揮することができる。
【0041】
また、半導体装置1では、ローアイソレーション領域37が形成されているので、ボディ領域8の下方での電界の集中を防止することができ、素子耐圧のさらなる向上が図られている。
そして、半導体装置1では、厚膜SOI基板ではなく、N型の半導体層3が直上に設けられたP型の半導体基板2が採用されている。半導体基板2は、厚膜SOI基板よりもはるかに安価である。そして、半導体層は、たとえば、エピタキシャル成長法により、安価かつ容易に形成することができる。よって、半導体装置1では、厚膜SOI基板を採用した半導体装置と比較して、コストの低減を図ることができる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することも可能である。
たとえば、図1に破線で示すように、LDMOS領域5において、フィールド絶縁膜13の下方に、P型のリサーフ層51が形成されていてもよい。リサーフ層51は、半導体層3における電界の集中が生じやすい部分、つまりソース領域11に近い部分に部分的に形成されるとよい。これにより、半導体層3における電界の集中を一層抑制することができる。
【0043】
リサーフ層51は、フィールド絶縁膜13と対向する部分の全域に形成されてもよい。リサーフ層51がフィールド絶縁膜13と対向する部分の全域に形成される場合、リサーフ層51のP型不純物濃度を上げると、LDMOSFETの素子耐圧が向上するが、その反面、オン抵抗が大きくなる。したがって、リサーフ層51のP型不純物の濃度は、素子耐圧およびオン抵抗のバランスを考慮して決定されるとよい。
【0044】
また、本発明は、半導体装置1と各半導体部分の導電型(P型、N型)を反転した構造を有するものに適用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体装置
2 半導体基板
3 半導体層
8 ボディ領域
9 ドレインバッファ領域(第1不純物領域)
11 ソース領域(第2不純物領域)
12 ドレインコンタクト領域
13 フィールド絶縁膜
14 ゲート電極
15 フィールドプレート
29 ベース領域(バイポーラトランジスタ)
30 コレクタ領域(バイポーラトランジスタ)
32 エミッタ領域(バイポーラトランジスタ)
37 ローアイソレーション領域
38 ドレイン配線
51 リサーフ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、前記半導体基板に接する第2導電型の半導体層と、
前記半導体層の表層部に形成された第1導電型のボディ領域と、
前記半導体層の表層部に、前記ボディ領域と間隔を空けて形成された第2導電型の第1不純物領域と、
前記ボディ領域の表層部に、前記ボディ領域の周縁と間隔を空けて形成された第2導電型の第2不純物領域と、
前記半導体層上に形成され、前記ボディ領域の周縁と前記第2不純物領域の周縁との間の部分に対向するゲート電極と、
前記半導体層の表面における前記ボディ領域と前記第1不純物領域との間の部分に形成されたフィールド絶縁膜と、
前記フィールド絶縁膜上に、互いに間隔を空けて形成された複数のフィールドプレートとを含み、
前記フィールドプレートの間隔が前記ボディ領域側ほど小さい、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層の表層部における前記フィールド絶縁膜と対向する部分に形成された第1導電型のリサーフ層をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の前記フィールドプレートが、互いに間隔を空けて少なくとも3つ以上形成されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数の前記フィールドプレートが互いに長さの異なる複数の環状プレートを含み、
複数の前記環状プレートは、相対的に長い前記環状プレートが相対的に短い前記環状プレートを取り囲むように配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極が、最外周の前記環状プレートと一体的な環状に形成されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体層の表面に形成され、前記ボディ領域および前記第1不純物領域が形成されているLDMOS領域をその周囲の領域から絶縁分離するための素子分離部をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記素子分離部により前記LDMOS領域から絶縁分離された領域に形成されたバイポーラトランジスタをさらに含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板と前記半導体層とに跨って形成され、前記素子分離部に対向する位置と前記ボディ領域に対向する位置との間に延びた第1導電型のローアイソレーション領域をさらに含む、請求項6または7に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−159903(P2011−159903A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22117(P2010−22117)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】