半導体装置
【課題】円弧状の部分を有する電極と先端部分を有する電極での円弧状の部分と先端部分との間で流れる電流密度を均一化するために、電極の先端部分における電流集中を緩和させ、電流集中に起因する半導体装置の破壊を防止できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、基板と、基板上に形成され、かつヘテロ接合に基づくキャリア走行層を有する化合物半導体層と、化合物半導体層上に形成される第1の主電極14と、化合物半導体層上において平面的に見て第1の主電極14を包囲するように形成され、かつ直線領域と円弧領域とを有する第2の主電極15と、化合物半導体層上において第1の主電極及び第2の主電極に対向するように形成された制御電極16と、を備え、第1の主電極及び第2の主電極の間に電流が流れる半導体装置であって、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に電流制限部19を設けた。
【解決手段】半導体装置は、基板と、基板上に形成され、かつヘテロ接合に基づくキャリア走行層を有する化合物半導体層と、化合物半導体層上に形成される第1の主電極14と、化合物半導体層上において平面的に見て第1の主電極14を包囲するように形成され、かつ直線領域と円弧領域とを有する第2の主電極15と、化合物半導体層上において第1の主電極及び第2の主電極に対向するように形成された制御電極16と、を備え、第1の主電極及び第2の主電極の間に電流が流れる半導体装置であって、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に電流制限部19を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、円弧状の部分を有する電極を備えた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム系等の窒化物系化合物半導体は、絶縁破壊電界が高いことから、低損失の高耐圧パワーデバイス等への応用が期待されている。近年、そのような窒化物系化合物半導体を用いた半導体装置において、くし型(フィンガ型)の電極構造を有する半導体装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−60049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
くし型の電極構造を有する半導体装置では、その電極構造において、直線状の部分と、その直線状の部分に連結する円弧状の部分が存在する。そのような、円弧状の部分を有する電極を用いた場合、電極の先端部分において電流が集中してしまうという問題がある。そのことを図12を参照して説明する。図12は、導通時における窒化物半導体系高電子移動度トランジスタ(GaN−HEMT)の円弧状の部分を用いた電極部の一部平面図を示す。図12において、電極部100は、円弧状の部分101を有するソース電極102とゲート電極103と先端部分104を有するドレイン電極105を備えている。図中矢印は、ソース電極からドレイン電極への電流の流れを表している。図12から分かるように、ソース電極102の円弧状の部分101からドレイン電極105の先端部分104に流れる電流は、先端部分104で集中してしまう。電流集中部では、集中していない部分よりも電圧降下が大きくなり、半導体装置の発熱や破壊が生じてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、先端部分を有する電極の先端部分における電流集中に起因する半導体装置の破壊を防止できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0007】
第1の半導体装置(請求項1に対応)は、基板と、基板上に形成され、かつヘテロ接合に基づく二次元キャリアガス層を有する化合物半導体層と、化合物半導体層上に形成される第1の主電極と、化合物半導体層上において平面的に見て第1の主電極を包囲するように形成され、かつ直線領域と円弧領域とを有する第2の主電極と、化合物半導体層上において第1の主電極及び第2の主電極に対向するように形成された制御電極と、を備え、二次元キャリアガス層を介して第1の主電極及び第2の主電極の間に電流が流れる半導体装置であって、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に電流の流れを抑制する電流制限部を設けたことを特徴とする。
第2の半導体装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に形成される二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
第3の半導体装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間の制御電極直下の二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
第4の半導体装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間の二次元キャリアガス層を除去した部分であることを特徴とする。
第5の半導体装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、化合物半導体層は、二次元キャリアガス層を含むキャリア走行層と、該キャリア走行層上にヘテロ接合をなすように形成されるキャリア供給層と、を備え、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア供給層を部分的に薄くした部分であることを特徴とする。
第6の半導体装置(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層に接合する化合物半導体層にフッ素イオンをドーピングした部分であることを特徴とする。
第7の半導体装置(請求項7に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層に接合した化合物半導体層のp型半導体層部分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に電流制限部を設けるようにしたので、第1の主電極の先端部分における電流集中が緩和され、これにより電流集中に起因する半導体装置の破壊を防止できる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の電流制限部の寸法を説明する図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の動作を説明する図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る半導体装置を説明する断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る半導体装置を説明する断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る半導体装置を説明する断面図である。
【図12】従来の半導体装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。図2は、図1のA部の拡大図である。図3は、図2のB−B断面図である。図4は、図2のC−C断面図である。
【0012】
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置10は、図1〜図4に示すように、窒化物系化合物半導体からなるキャリア走行層11、バッファ層20、キャリア供給層17の複数層からなる半導体層12と、半導体層12の主面13上に配置され、第1の主電極14及び第2の主電極15と、第1の主電極14と第2の主電極15の間で主面13上に配置された制御電極16を備えている。制御電極(ゲート電極)16は、キャリア走行層11を通って第1の主電極14と第2の主電極15の間に流れる主電流を制御する。以下では、第1の主電極14がドレイン電極14であり、第2の主電極15がソース電極15である場合について例示的に説明するが、第1の主電極14がソース電極であり、第2の主電極15がドレイン電極であってもよい。以下、第1の主電極、第2の主電極、制御電極という用語を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、第2の主電極15及び第1の主電極14は、互いに紙面に向かって上下方向にそれぞれ延伸する複数の歯部分を有する櫛型形状をなして配置される。また、第3の電極16は、第2の主電極15と第1の主電極14の間に配置される。
【0014】
半導体層12上に配置された第2の主電極15及び第1の主電極14は、電子供給層(キャリア供給層)17との間でオーミック接触(低抵抗接触)を形成している。第2の主電極15及び第1の主電極14は、例えばチタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層体として形成可能である。
【0015】
制御電極16は、例えばニッケル(Ni)と金(Au)とチタン(Ti)の積層体からなる金属膜が採用可能であり、キャリア供給層17とショットキー接触している。また、制御電極16は、窒化物系化合物半導体とショットキー接合をなす材料、例えばNi、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銅(Cu)等が採用可能である。
【0016】
図3に示すように、バッファ層20、キャリア走行層11、キャリア供給層17の複数の層からなる半導体層12は基板18上に配置されるが、窒化物系化合物半導体装置の製造コストを低減するために、基板18は大口径化が容易なシリコン基板であることが好ましい。シリコン基板は不純物を添加して導電性基板としてもよい。また、基板18はセラミック半導体、SiC基板としてもよい。さらに、基板18の材料は、シリコンカーバイド、サファイア、スピネル、ZnO、ガリウム窒化物、アルミニウム窒化物、またはIII族窒化物材料の成長が可能な任意の他の材料とすることができる。
【0017】
図2は、図1のA部の拡大図である。半導体装置10は、基板18と、基板18上に形成され、かつヘテロ接合に基づくキャリア走行層11を有する化合物半導体層(半導体層)12と、化合物半導体層12上に形成される第1の主電極14と、化合物半導体層12上において第1の主電極14を包囲するように形成され、かつ直線領域15aと円弧領域15bとを有する第2の主電極15と、化合物半導体層12上において第1の主電極14及び第2の主電極15の間に形成された制御電極16と、を備えている。そして、半導体装置10では、第1の主電極14と第2の主電極15の間に電流が流れるようになっているが、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間には電流の流れを抑制する電流制限部19が設けられている。
【0018】
電流制限部19は、上記の構成において、好ましくは、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の二次元キャリアガス層を部分的に除去した部分である。具体的には、電流制限部19は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア供給層17をリセスエッチングにより部分的に除去することによって二次元キャリアガス層21を除去した部分である。更に、電流制限部19は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極直下の二次元キャリアガス層21を部分的に除去した部分としてもよい。
【0019】
図3は、図2のB−B断面図である。図3に示す半導体層12は、それぞれが窒化物系化合物半導体からなるバッファ層20、電子(キャリア)走行層11及びキャリア供給層17がこの順に積層された構造である。以下では、キャリア供給層17がキャリア走行層11に供給するキャリアが電子である例について説明する。つまり、2次元キャリアガス層21は2次元電子ガス層(以下2DEG層という)であり、ソース電極15から2DEG層21を介してドレイン電極14に電子が流れる。
【0020】
バッファ層20は、基板18上に生成され、基板18とキャリア走行層11との間の格子不整合を緩和するためのものであるが、これを省略することもできる。
【0021】
バッファ層20上に配置されたキャリア走行層11は、キャリア供給層17とのヘテロ接合面の近傍に電流通路(チャネル)としての2DEG層21を得るための層である。キャリア走行層11は、例えば不純物が添加されていないアンドープGaNを0.5〜10μm程度の厚さに、MOCVD法等でエピタキシャル成長させて形成する。適切なキャリア走行層11は、Aly1Gay2In(1−y1−y2)N(0≦y1<1,0≦y2≦1,y1+y2≦1)などのIII族窒化物材料からなる。本実施形態では、キャリア走行層11は、膜厚約5〜6μmでノンドープのGaN層からなる。キャリア走行層11は、有機金属気相成長法(MOVPE)、または分子線エピタキシー(MBE)などの既知の半導体成長法を用いてバッファ層20上に形成することができる。
【0022】
キャリア走行層11上に配置されたキャリア供給層17は、キャリア走行層11よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなる。キャリア供給層17は、AlxMyGa1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y≦1)で表され、ここでMはインジウム(In)或いはボロン(B)等である。組成比xは0.1〜0.5が好ましく、より好ましくは0.3である。キャリア供給層17としてはアンドープのAlxGa1-xNが採用可能であるが、n型不純物を添加したAlxGa1-xNからなる窒化物半導体も採用可能である。
【0023】
キャリア供給層17は、キャリア走行層11上にMOCVD法等でエピタキシャル成長させて形成される。キャリア供給層17の膜厚は、キャリア走行層11とキャリア供給層17との間のヘテロ接合に基づいて周知の2DEG層21が生じるように設定される。具体的には、キャリア供給層17の膜厚は、キャリア走行層11よりも薄い例えば5〜50nm程度、より好ましくは5〜30nm程度である。
【0024】
なお、キャリア供給層17としてn型不純物を添加したAlxGa1-xNを採用してもよい。このキャリア供給層17とGaNからなるキャリア走行層11との間にアンドープAlNからなるスペーサ層を配置してもよい。また、ソース電極15及びドレイン電極14とキャリア供給層17との間に例えばn型AlGaNからなるコンタクト層を配置してもよい。キャリア供給層17は、有機金属気相成長法(MOVPE)、または分子線エピタキシー(MBE)などの既知の半導体成長法を用いてキャリア走行層11上に形成することができる。
【0025】
図4は、図2のC−C断面図である。C−C断面では、B−B断面と異なる部分は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア供給層17を部分的に除去した部分を設けていることである。キャリア供給層17が除去された部分は電流制限部19を形成する。電流制限部19では二次元キャリアガス(2DEG)層が形成されなくなるので電流が流れなくなる。電流制限部19は、具体的には第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア供給層17をリセスエッチングにより部分的に除去して形成する。電流制限部19は、更に第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16直下のキャリア供給層を部分的に除去するように形成してもよい。それ以外は、B−B断面と同様である。
【0026】
図5は、電流制限部19の寸法を説明する図である。図5(a)に示すように、各寸法の関係は、次のようになる。第1の主電極14の幅(円弧部の直径)を2a、第1の主電極14の円弧部の周長をb、制御電極16の円弧部における第1の主電極14側の端の周長をc、第1の主電極14の端から制御電極16の端までの距離をrとすると、b=2πa/4、c=2π(a+r)/4である。この構成の関係おいて、b<cの関係であるから電流が集中しやすいと考えられ、b=cの関係に近づけることで電流の集中を緩和することができる。
【0027】
本実施形態においては、図5(b)に示すように、電流制限部19を形成することで上記のb=cの関係に近づける。すなわち、制御電極16において直下の2DEGが除去される部分の第1の主電極14側の端のトータルの長さをL(図中では、L=L1+L2+L3)とすると、L=c−b=πr/2となるように、制御電極16直下の2DEGを除去する。厳密には上記の計算式の寸法となるように電流制限部19を設けることが好ましいが、電流集中を緩和する効果を得るために、電流制限部19の領域は適宜変更できる
【0028】
次に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置10の動作を、図6を参照して説明する。第1の主電極14と第2の主電極15間に電圧が印加されたとき、電流制限部19のない領域には、2DEG21が形成されているため、第1の主電極14と第2の主電極15間に電流が流れる。これに対し、電流制限部19には、キャリア供給層17が除去されているため2DEG21が形成されず、電流が流れない。従って、図中の矢印で示す部分でだけ電流が流れる。それにより、第2の主電極15の端部での電流集中を抑制する。
【0029】
以上のように、本発明によれば、電流制限部19を設けたことにより、第1の主電極14の先端部分14aにおける電流集中を緩和させ、電流集中に起因する半導体装置10の破壊を防止できる半導体装置10を提供することができる。
【0030】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる窒化物系化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0031】
(工程1)先ず、基板18上に、MOCVD法等によりバッファ層20、キャリア走行層11及びキャリア供給層17をこの順にエピタキシャル成長させて積層して、半導体層12を形成する。キャリア走行層11は、例えば膜厚0.5〜10μmのアンドープGaN層をMOCVD法にて形成し、その上に形成されるキャリア供給層17は、キャリア走行層11よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなり、例えばアンドープのAlGaN層をMOCVD法にて形成する。
【0032】
(工程2)キャリア供給層17の制御電極を形成する箇所に部分的にリセスエッチングを施し、キャリア供給層17を部分的に除去する。
【0033】
(工程3)次に、半導体層12上に、第2の主電極15及び第1の主電極14となる第1の導電体層を、半導体層12上に蒸着する。第1の導電体層は、例えばTiとAlの積層構造が採用可能である。次いで、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしたフォトレジスト膜をマスクにして、第1の導電体層をウェットエッチングして第2の主電極15及び第1の主電極14を形成する。
【0034】
(工程4)次に、半導体層12及び第2の主電極15、第1の主電極14上に絶縁膜を形成し、制御電極16と半導体層12とが接触する部分の絶縁膜を、フォトリソグラフィ技術及びウェットエッチングによって除去し、開口部を形成する。
【0035】
(工程5)次いで、制御電極16となる第2の導電体層をスパッタ法等により形成する。このとき、絶縁膜の開口部を埋め込むように第2の導電体層は形成され、開口部において第2の導電体層が半導体層12とショットキー接合をなすように蒸着した後、リフトオフ法によって第2の導電体層を形成する。第2の導電体層としては、例えばNiとAuとTiの積層体等が採用可能である。
【0036】
<変形例>
図7と図8は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置を示す図である。図7は、第1の実施形態での図2に対応する図である。図8は、図7のD−D断面図である。図7と図8に示した窒化物系化合物半導体装置は、電流制限部30が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16の直下以外の二次元キャリアガス層21も部分的に除去した部分であることが、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。
【0037】
図7と図8に示した窒化物系化合物半導体装置は、工程2において、制御電極を堆積する箇所とそれ以外の部分に部分的にリセスエッチングによりキャリア供給層17をエッチングして2DEG21を部分的に除去する。
【0038】
本発明の第1の実施形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第1の主電極14と第2の主電極15間に電圧が印加されたとき、電流制限部30のない領域には、2DEG21が形成されているため、第1の主電極14と第2の主電極15間に電流が流れる。そのとき、電流制限部30には、2DEG21が除去されているため、電流が流れない。従って、矢印で示す部分でだけ電流が流れる。それにより、第2の主電極の端部での電流集中を抑制する。よって、図1〜図6に示した第1の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置を説明する。第2実施形態では、電流制限部31が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分である。図9は、図7のD−D断面図に対応する図である。図9で示すように、電流制限部31を構成する第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16周辺のキャリア供給層17の厚みが、それ以外の領域におけるキャリア供給層17の厚みよりも薄く形成されるところが、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。そのため、同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図9に示した窒化物系化合物半導体装置は、第1実施形態の製造法の工程2において、ゲート電極を堆積する箇所のキャリア供給層17を薄く残すように部分的にリセスエッチングを施し2DEG21のキャリア濃度を低減する。
【0041】
本発明の第2の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第1の主電極14と第2の主電極15間に電圧が印加されたとき、電流制限部31のない領域には、2DEG21が形成されているため、第1の主電極14と第2の主電極15間に電流が流れる。そのとき、電流制限部31は、2DEG21での電子濃度が低くされている高抵抗領域であるため、電流が抑制される。従って、電流制限部31では、電流が抑制される。それにより、第1の主電極14の端部14aでの電流集中を抑制する。よって、図1〜図6に示した第1の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態に係る半導体装置を説明する。第3実施形態では、電流制限部32は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16直下の二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。上記の構成において、好ましくは、電流制限部32が、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層に接合する化合物半導体層にフッ素イオンをドーピングすることにより二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
【0043】
図10は、図7のD−D断面図に対応する図である。図10で示すように、電流制限部32が、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層11に接合する化合物半導体層(キャリア供給層17)にフッ素イオンをドーピングすることにより二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分である点が図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。そのため、同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0044】
図10に示した窒化物系化合物半導体装置は、第1実施形態の製造方法の工程2において、制御電極を堆積する箇所のキャリア供給層にフッ素イオンをドーピングすることにより2DEGのキャリア濃度を低減する。このフッ素イオンのドーピングは、フッ素系ガスプラズマ処理等により行うことができる。
【0045】
本発明の第3の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第2の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0046】
次に、本発明の第4実施形態に係る半導体装置を説明する。第4実施形態では、電流制限部32は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16直下の二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。上記の構成において、好ましくは、電流制限部32が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア走行層11に接合する化合物半導体層33aをp型半導体層にすることにより二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
【0047】
図11は、図8のD−D断面図に対応する図である。図11で示すように、電流制限部が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア走行層11上に、p型半導体層33aを形成することにより二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分である点が図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。そのため、同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図11に示した窒化物系化合物半導体装置は、工程2において、ゲート電極を堆積する箇所のキャリア供給層にMg等のp型不純物をイオン注入等によりドーピングすることにより2DEGのキャリア濃度を低減する。
【0049】
本発明の第4の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第2の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0050】
なお、第2〜第4の実施形態では、電流制限部が制御電極直下にある例を示したが、それらに限らず、制御電極直下以外の部分に電流制限部を設けるようにしても良い。
【0051】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。また、実施例同士を組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る半導体装置は、高周波・高耐圧動作の電力素子としての半導体装置等に利用される。
【符号の説明】
【0053】
10 半導体装置
11 キャリア走行層
12 半導体層
13 主面
14 第1の主電極(ドレイン電極)
15 第2の主電極(ソース電極)
16 制御電極
17 キャリア供給層
18 基板
19 電流制限部
20 バッファ層
21 二次元キャリアガス層
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、円弧状の部分を有する電極を備えた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム系等の窒化物系化合物半導体は、絶縁破壊電界が高いことから、低損失の高耐圧パワーデバイス等への応用が期待されている。近年、そのような窒化物系化合物半導体を用いた半導体装置において、くし型(フィンガ型)の電極構造を有する半導体装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−60049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
くし型の電極構造を有する半導体装置では、その電極構造において、直線状の部分と、その直線状の部分に連結する円弧状の部分が存在する。そのような、円弧状の部分を有する電極を用いた場合、電極の先端部分において電流が集中してしまうという問題がある。そのことを図12を参照して説明する。図12は、導通時における窒化物半導体系高電子移動度トランジスタ(GaN−HEMT)の円弧状の部分を用いた電極部の一部平面図を示す。図12において、電極部100は、円弧状の部分101を有するソース電極102とゲート電極103と先端部分104を有するドレイン電極105を備えている。図中矢印は、ソース電極からドレイン電極への電流の流れを表している。図12から分かるように、ソース電極102の円弧状の部分101からドレイン電極105の先端部分104に流れる電流は、先端部分104で集中してしまう。電流集中部では、集中していない部分よりも電圧降下が大きくなり、半導体装置の発熱や破壊が生じてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、先端部分を有する電極の先端部分における電流集中に起因する半導体装置の破壊を防止できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0007】
第1の半導体装置(請求項1に対応)は、基板と、基板上に形成され、かつヘテロ接合に基づく二次元キャリアガス層を有する化合物半導体層と、化合物半導体層上に形成される第1の主電極と、化合物半導体層上において平面的に見て第1の主電極を包囲するように形成され、かつ直線領域と円弧領域とを有する第2の主電極と、化合物半導体層上において第1の主電極及び第2の主電極に対向するように形成された制御電極と、を備え、二次元キャリアガス層を介して第1の主電極及び第2の主電極の間に電流が流れる半導体装置であって、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に電流の流れを抑制する電流制限部を設けたことを特徴とする。
第2の半導体装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に形成される二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
第3の半導体装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間の制御電極直下の二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
第4の半導体装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間の二次元キャリアガス層を除去した部分であることを特徴とする。
第5の半導体装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、化合物半導体層は、二次元キャリアガス層を含むキャリア走行層と、該キャリア走行層上にヘテロ接合をなすように形成されるキャリア供給層と、を備え、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア供給層を部分的に薄くした部分であることを特徴とする。
第6の半導体装置(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層に接合する化合物半導体層にフッ素イオンをドーピングした部分であることを特徴とする。
第7の半導体装置(請求項7に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電流制限部は、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層に接合した化合物半導体層のp型半導体層部分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間に電流制限部を設けるようにしたので、第1の主電極の先端部分における電流集中が緩和され、これにより電流集中に起因する半導体装置の破壊を防止できる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の電流制限部の寸法を説明する図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の動作を説明する図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る半導体装置を説明する断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る半導体装置を説明する断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る半導体装置を説明する断面図である。
【図12】従来の半導体装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。図2は、図1のA部の拡大図である。図3は、図2のB−B断面図である。図4は、図2のC−C断面図である。
【0012】
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置10は、図1〜図4に示すように、窒化物系化合物半導体からなるキャリア走行層11、バッファ層20、キャリア供給層17の複数層からなる半導体層12と、半導体層12の主面13上に配置され、第1の主電極14及び第2の主電極15と、第1の主電極14と第2の主電極15の間で主面13上に配置された制御電極16を備えている。制御電極(ゲート電極)16は、キャリア走行層11を通って第1の主電極14と第2の主電極15の間に流れる主電流を制御する。以下では、第1の主電極14がドレイン電極14であり、第2の主電極15がソース電極15である場合について例示的に説明するが、第1の主電極14がソース電極であり、第2の主電極15がドレイン電極であってもよい。以下、第1の主電極、第2の主電極、制御電極という用語を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、第2の主電極15及び第1の主電極14は、互いに紙面に向かって上下方向にそれぞれ延伸する複数の歯部分を有する櫛型形状をなして配置される。また、第3の電極16は、第2の主電極15と第1の主電極14の間に配置される。
【0014】
半導体層12上に配置された第2の主電極15及び第1の主電極14は、電子供給層(キャリア供給層)17との間でオーミック接触(低抵抗接触)を形成している。第2の主電極15及び第1の主電極14は、例えばチタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層体として形成可能である。
【0015】
制御電極16は、例えばニッケル(Ni)と金(Au)とチタン(Ti)の積層体からなる金属膜が採用可能であり、キャリア供給層17とショットキー接触している。また、制御電極16は、窒化物系化合物半導体とショットキー接合をなす材料、例えばNi、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銅(Cu)等が採用可能である。
【0016】
図3に示すように、バッファ層20、キャリア走行層11、キャリア供給層17の複数の層からなる半導体層12は基板18上に配置されるが、窒化物系化合物半導体装置の製造コストを低減するために、基板18は大口径化が容易なシリコン基板であることが好ましい。シリコン基板は不純物を添加して導電性基板としてもよい。また、基板18はセラミック半導体、SiC基板としてもよい。さらに、基板18の材料は、シリコンカーバイド、サファイア、スピネル、ZnO、ガリウム窒化物、アルミニウム窒化物、またはIII族窒化物材料の成長が可能な任意の他の材料とすることができる。
【0017】
図2は、図1のA部の拡大図である。半導体装置10は、基板18と、基板18上に形成され、かつヘテロ接合に基づくキャリア走行層11を有する化合物半導体層(半導体層)12と、化合物半導体層12上に形成される第1の主電極14と、化合物半導体層12上において第1の主電極14を包囲するように形成され、かつ直線領域15aと円弧領域15bとを有する第2の主電極15と、化合物半導体層12上において第1の主電極14及び第2の主電極15の間に形成された制御電極16と、を備えている。そして、半導体装置10では、第1の主電極14と第2の主電極15の間に電流が流れるようになっているが、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間には電流の流れを抑制する電流制限部19が設けられている。
【0018】
電流制限部19は、上記の構成において、好ましくは、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の二次元キャリアガス層を部分的に除去した部分である。具体的には、電流制限部19は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア供給層17をリセスエッチングにより部分的に除去することによって二次元キャリアガス層21を除去した部分である。更に、電流制限部19は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極直下の二次元キャリアガス層21を部分的に除去した部分としてもよい。
【0019】
図3は、図2のB−B断面図である。図3に示す半導体層12は、それぞれが窒化物系化合物半導体からなるバッファ層20、電子(キャリア)走行層11及びキャリア供給層17がこの順に積層された構造である。以下では、キャリア供給層17がキャリア走行層11に供給するキャリアが電子である例について説明する。つまり、2次元キャリアガス層21は2次元電子ガス層(以下2DEG層という)であり、ソース電極15から2DEG層21を介してドレイン電極14に電子が流れる。
【0020】
バッファ層20は、基板18上に生成され、基板18とキャリア走行層11との間の格子不整合を緩和するためのものであるが、これを省略することもできる。
【0021】
バッファ層20上に配置されたキャリア走行層11は、キャリア供給層17とのヘテロ接合面の近傍に電流通路(チャネル)としての2DEG層21を得るための層である。キャリア走行層11は、例えば不純物が添加されていないアンドープGaNを0.5〜10μm程度の厚さに、MOCVD法等でエピタキシャル成長させて形成する。適切なキャリア走行層11は、Aly1Gay2In(1−y1−y2)N(0≦y1<1,0≦y2≦1,y1+y2≦1)などのIII族窒化物材料からなる。本実施形態では、キャリア走行層11は、膜厚約5〜6μmでノンドープのGaN層からなる。キャリア走行層11は、有機金属気相成長法(MOVPE)、または分子線エピタキシー(MBE)などの既知の半導体成長法を用いてバッファ層20上に形成することができる。
【0022】
キャリア走行層11上に配置されたキャリア供給層17は、キャリア走行層11よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなる。キャリア供給層17は、AlxMyGa1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y≦1)で表され、ここでMはインジウム(In)或いはボロン(B)等である。組成比xは0.1〜0.5が好ましく、より好ましくは0.3である。キャリア供給層17としてはアンドープのAlxGa1-xNが採用可能であるが、n型不純物を添加したAlxGa1-xNからなる窒化物半導体も採用可能である。
【0023】
キャリア供給層17は、キャリア走行層11上にMOCVD法等でエピタキシャル成長させて形成される。キャリア供給層17の膜厚は、キャリア走行層11とキャリア供給層17との間のヘテロ接合に基づいて周知の2DEG層21が生じるように設定される。具体的には、キャリア供給層17の膜厚は、キャリア走行層11よりも薄い例えば5〜50nm程度、より好ましくは5〜30nm程度である。
【0024】
なお、キャリア供給層17としてn型不純物を添加したAlxGa1-xNを採用してもよい。このキャリア供給層17とGaNからなるキャリア走行層11との間にアンドープAlNからなるスペーサ層を配置してもよい。また、ソース電極15及びドレイン電極14とキャリア供給層17との間に例えばn型AlGaNからなるコンタクト層を配置してもよい。キャリア供給層17は、有機金属気相成長法(MOVPE)、または分子線エピタキシー(MBE)などの既知の半導体成長法を用いてキャリア走行層11上に形成することができる。
【0025】
図4は、図2のC−C断面図である。C−C断面では、B−B断面と異なる部分は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア供給層17を部分的に除去した部分を設けていることである。キャリア供給層17が除去された部分は電流制限部19を形成する。電流制限部19では二次元キャリアガス(2DEG)層が形成されなくなるので電流が流れなくなる。電流制限部19は、具体的には第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア供給層17をリセスエッチングにより部分的に除去して形成する。電流制限部19は、更に第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16直下のキャリア供給層を部分的に除去するように形成してもよい。それ以外は、B−B断面と同様である。
【0026】
図5は、電流制限部19の寸法を説明する図である。図5(a)に示すように、各寸法の関係は、次のようになる。第1の主電極14の幅(円弧部の直径)を2a、第1の主電極14の円弧部の周長をb、制御電極16の円弧部における第1の主電極14側の端の周長をc、第1の主電極14の端から制御電極16の端までの距離をrとすると、b=2πa/4、c=2π(a+r)/4である。この構成の関係おいて、b<cの関係であるから電流が集中しやすいと考えられ、b=cの関係に近づけることで電流の集中を緩和することができる。
【0027】
本実施形態においては、図5(b)に示すように、電流制限部19を形成することで上記のb=cの関係に近づける。すなわち、制御電極16において直下の2DEGが除去される部分の第1の主電極14側の端のトータルの長さをL(図中では、L=L1+L2+L3)とすると、L=c−b=πr/2となるように、制御電極16直下の2DEGを除去する。厳密には上記の計算式の寸法となるように電流制限部19を設けることが好ましいが、電流集中を緩和する効果を得るために、電流制限部19の領域は適宜変更できる
【0028】
次に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置10の動作を、図6を参照して説明する。第1の主電極14と第2の主電極15間に電圧が印加されたとき、電流制限部19のない領域には、2DEG21が形成されているため、第1の主電極14と第2の主電極15間に電流が流れる。これに対し、電流制限部19には、キャリア供給層17が除去されているため2DEG21が形成されず、電流が流れない。従って、図中の矢印で示す部分でだけ電流が流れる。それにより、第2の主電極15の端部での電流集中を抑制する。
【0029】
以上のように、本発明によれば、電流制限部19を設けたことにより、第1の主電極14の先端部分14aにおける電流集中を緩和させ、電流集中に起因する半導体装置10の破壊を防止できる半導体装置10を提供することができる。
【0030】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる窒化物系化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0031】
(工程1)先ず、基板18上に、MOCVD法等によりバッファ層20、キャリア走行層11及びキャリア供給層17をこの順にエピタキシャル成長させて積層して、半導体層12を形成する。キャリア走行層11は、例えば膜厚0.5〜10μmのアンドープGaN層をMOCVD法にて形成し、その上に形成されるキャリア供給層17は、キャリア走行層11よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなり、例えばアンドープのAlGaN層をMOCVD法にて形成する。
【0032】
(工程2)キャリア供給層17の制御電極を形成する箇所に部分的にリセスエッチングを施し、キャリア供給層17を部分的に除去する。
【0033】
(工程3)次に、半導体層12上に、第2の主電極15及び第1の主電極14となる第1の導電体層を、半導体層12上に蒸着する。第1の導電体層は、例えばTiとAlの積層構造が採用可能である。次いで、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしたフォトレジスト膜をマスクにして、第1の導電体層をウェットエッチングして第2の主電極15及び第1の主電極14を形成する。
【0034】
(工程4)次に、半導体層12及び第2の主電極15、第1の主電極14上に絶縁膜を形成し、制御電極16と半導体層12とが接触する部分の絶縁膜を、フォトリソグラフィ技術及びウェットエッチングによって除去し、開口部を形成する。
【0035】
(工程5)次いで、制御電極16となる第2の導電体層をスパッタ法等により形成する。このとき、絶縁膜の開口部を埋め込むように第2の導電体層は形成され、開口部において第2の導電体層が半導体層12とショットキー接合をなすように蒸着した後、リフトオフ法によって第2の導電体層を形成する。第2の導電体層としては、例えばNiとAuとTiの積層体等が採用可能である。
【0036】
<変形例>
図7と図8は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置を示す図である。図7は、第1の実施形態での図2に対応する図である。図8は、図7のD−D断面図である。図7と図8に示した窒化物系化合物半導体装置は、電流制限部30が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16の直下以外の二次元キャリアガス層21も部分的に除去した部分であることが、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。
【0037】
図7と図8に示した窒化物系化合物半導体装置は、工程2において、制御電極を堆積する箇所とそれ以外の部分に部分的にリセスエッチングによりキャリア供給層17をエッチングして2DEG21を部分的に除去する。
【0038】
本発明の第1の実施形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第1の主電極14と第2の主電極15間に電圧が印加されたとき、電流制限部30のない領域には、2DEG21が形成されているため、第1の主電極14と第2の主電極15間に電流が流れる。そのとき、電流制限部30には、2DEG21が除去されているため、電流が流れない。従って、矢印で示す部分でだけ電流が流れる。それにより、第2の主電極の端部での電流集中を抑制する。よって、図1〜図6に示した第1の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置を説明する。第2実施形態では、電流制限部31が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分である。図9は、図7のD−D断面図に対応する図である。図9で示すように、電流制限部31を構成する第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16周辺のキャリア供給層17の厚みが、それ以外の領域におけるキャリア供給層17の厚みよりも薄く形成されるところが、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。そのため、同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図9に示した窒化物系化合物半導体装置は、第1実施形態の製造法の工程2において、ゲート電極を堆積する箇所のキャリア供給層17を薄く残すように部分的にリセスエッチングを施し2DEG21のキャリア濃度を低減する。
【0041】
本発明の第2の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第1の主電極14と第2の主電極15間に電圧が印加されたとき、電流制限部31のない領域には、2DEG21が形成されているため、第1の主電極14と第2の主電極15間に電流が流れる。そのとき、電流制限部31は、2DEG21での電子濃度が低くされている高抵抗領域であるため、電流が抑制される。従って、電流制限部31では、電流が抑制される。それにより、第1の主電極14の端部14aでの電流集中を抑制する。よって、図1〜図6に示した第1の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態に係る半導体装置を説明する。第3実施形態では、電流制限部32は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16直下の二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。上記の構成において、好ましくは、電流制限部32が、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層に接合する化合物半導体層にフッ素イオンをドーピングすることにより二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
【0043】
図10は、図7のD−D断面図に対応する図である。図10で示すように、電流制限部32が、第1の主電極と第2の主電極の円弧領域との間のキャリア走行層11に接合する化合物半導体層(キャリア供給層17)にフッ素イオンをドーピングすることにより二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分である点が図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。そのため、同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0044】
図10に示した窒化物系化合物半導体装置は、第1実施形態の製造方法の工程2において、制御電極を堆積する箇所のキャリア供給層にフッ素イオンをドーピングすることにより2DEGのキャリア濃度を低減する。このフッ素イオンのドーピングは、フッ素系ガスプラズマ処理等により行うことができる。
【0045】
本発明の第3の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第2の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0046】
次に、本発明の第4実施形態に係る半導体装置を説明する。第4実施形態では、電流制限部32は、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間の制御電極16直下の二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。上記の構成において、好ましくは、電流制限部32が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア走行層11に接合する化合物半導体層33aをp型半導体層にすることにより二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする。
【0047】
図11は、図8のD−D断面図に対応する図である。図11で示すように、電流制限部が、第1の主電極14と第2の主電極15の円弧領域15bとの間のキャリア走行層11上に、p型半導体層33aを形成することにより二次元キャリアガス層21のキャリア濃度を部分的に低減した部分である点が図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態と異なる。その他の構成については、図1〜図6で示した本発明の第1の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置と同様である。そのため、同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図11に示した窒化物系化合物半導体装置は、工程2において、ゲート電極を堆積する箇所のキャリア供給層にMg等のp型不純物をイオン注入等によりドーピングすることにより2DEGのキャリア濃度を低減する。
【0049】
本発明の第4の実施形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、第2の実施形態と同様に電流集中を抑制できる。
【0050】
なお、第2〜第4の実施形態では、電流制限部が制御電極直下にある例を示したが、それらに限らず、制御電極直下以外の部分に電流制限部を設けるようにしても良い。
【0051】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。また、実施例同士を組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る半導体装置は、高周波・高耐圧動作の電力素子としての半導体装置等に利用される。
【符号の説明】
【0053】
10 半導体装置
11 キャリア走行層
12 半導体層
13 主面
14 第1の主電極(ドレイン電極)
15 第2の主電極(ソース電極)
16 制御電極
17 キャリア供給層
18 基板
19 電流制限部
20 バッファ層
21 二次元キャリアガス層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成され、かつヘテロ接合に基づく二次元キャリアガス層を有する化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に形成される第1の主電極と、
前記化合物半導体層上において平面的に見て前記第1の主電極を包囲するように形成され、かつ直線領域と円弧領域とを有する第2の主電極と、
前記化合物半導体層上において前記第1の主電極及び前記第2の主電極の間に形成された制御電極と、を備え、前記二次元キャリアガス層を介して前記第1の主電極及び前記第2の主電極の間に電流が流れる半導体装置であって、
前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間に電流の流れを抑制する電流制限部を設けたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間に形成される二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記制御電極直下の二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の二次元キャリアガス層を除去した部分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記化合物半導体層は、前記二次元キャリアガス層を含むキャリア走行層と、該キャリア走行層上にヘテロ接合をなすように形成されるキャリア供給層と、を備え、前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記キャリア供給層を部分的に薄くした部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記キャリア走行層に接合する化合物半導体層にフッ素イオンをドーピングした部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記キャリア走行層に接合した化合物半導体層のp型半導体層部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項1】
基板と、該基板上に形成され、かつヘテロ接合に基づく二次元キャリアガス層を有する化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に形成される第1の主電極と、
前記化合物半導体層上において平面的に見て前記第1の主電極を包囲するように形成され、かつ直線領域と円弧領域とを有する第2の主電極と、
前記化合物半導体層上において前記第1の主電極及び前記第2の主電極の間に形成された制御電極と、を備え、前記二次元キャリアガス層を介して前記第1の主電極及び前記第2の主電極の間に電流が流れる半導体装置であって、
前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間に電流の流れを抑制する電流制限部を設けたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間に形成される二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記制御電極直下の二次元キャリアガス層のキャリア濃度を部分的に低減した部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の二次元キャリアガス層を除去した部分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記化合物半導体層は、前記二次元キャリアガス層を含むキャリア走行層と、該キャリア走行層上にヘテロ接合をなすように形成されるキャリア供給層と、を備え、前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記キャリア供給層を部分的に薄くした部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記キャリア走行層に接合する化合物半導体層にフッ素イオンをドーピングした部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記電流制限部は、前記第1の主電極と前記第2の主電極の円弧領域との間の前記キャリア走行層に接合した化合物半導体層のp型半導体層部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−18961(P2012−18961A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153744(P2010−153744)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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