説明

半導体記憶装置

【課題】SNMを向上でき、安定動作に有利な半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置は、一対のインバータを構成する第1、第2駆動トランジスタN3、N4を備えたSRAMセル10と、前記第1、第2駆動トランジスタの電流経路の一端に接地電圧よりも低いかまたは高い値の電圧を印加する回路11とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体記憶装置に関し、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)等に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン基板上に形成されるLSI(Large Scale Integrated Circuit)において、用いられる素子の微細化によって高性能化が達成されている。これは、論理回路またはSRAM等の記憶装置に用いられるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)において、いわゆるスケーリング則に基づいてゲート長の縮小化、ゲート絶縁膜の薄膜化等を行うことで実現されている。
【0003】
例えば、ゲート長(L)<30nm以下の短チャネル領域において、カットオフ特性を改善するため提案されている3次元構造MIS(Metal Insulater Semiconductor)型半導体装置の一種として、半導体基板を短冊状に細く切り出した突起状構造(ピラー(FIN))を利用したフィントランジスタ(FinFET)がある(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。このフィントランジスタは、例えば、SOI(Silicon On Insulater)基板を用いて基板上にピラーを形成し、このピラー上にゲート電極を立体交差させることで、ピラーの上面及び側面をチャネルとするトランジスタである。
【0004】
ここで、SRAMセルの動作の安定性を示すものとして、スタティックノイズマージン(Static Noise Margin:以下、SNMと称する)がある。このSNMは、バタフライカーブ(Butterfly Curve)に内接する正方形の一辺の値で定義され、上記値が大きいほど動作の安定性に有利である。
【0005】
さらに、SNMの大きさを定義する上記正方形の一辺の値は、ベータ比で決定される。このベータ比は、以下に示すように、SRAMセル中の転送トランジスタの電流駆動能力(Itr)に対する駆動トランジスタの電流駆動能力(Idr)の比で表わされる。
【0006】
ベータ比 = Idr/ Itr
しかし、上記フィントランジスタを用いてSRAMセルを構成しようとする場合、しきい値が適正にコントロールできないこと、ならびに、チャネル幅を任意に設定できないことなどの理由により、各トランジスタの電流駆動能力を適正な値に設定することが難しい。これは、フィントランジスタのチャネル幅は、上記ピラーの高さで決定されるため、それぞれトランジスタに別個にチャネル幅を選択することが困難であることに起因する。特に、SOI基板を用いたフィントランジスタの場合には、SOI膜厚でピラー(FIN)の高さが決定されるため、トランジスタごとにチャネル幅を変えるということは困難である。そのため、転送トランジスタの電流駆動能力(Itr)に対する駆動トランジスタの電流駆動能力(Idr)の比を選択することができず、上記ベータ比が低減する。
【0007】
その結果、ベータ比が低減し、SNMが低減し、安定動作に不利であるという問題があった。
【0008】
上記のように、従来の半導体記憶装置は、SNMが低減し、安定動作に不利であるという問題があった。
【非特許文献1】D.Hisamoto et al.: IEDM'98 p.1032 & X.Huang et al.: IEDM '99 p. 67, 久本 大 他
【特許文献1】特開平2-263473
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、SNMを向上でき、安定動作に有利な半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一態様によれば、一対のインバータを構成する第1、第2駆動トランジスタを備えたSRAMセルと、前記第1、第2駆動トランジスタの電流経路の一端に接地電圧よりも低いかまたは高い値の電圧を印加する回路とを具備する半導体記憶装置を提供できる。
【0011】
この発明の一態様によれば、一対のインバータと、前記一対のインバータに入出力データを転送する第1、第2転送トランジスタとを備えたSRAMセルと、前記第1、第2転送トランジスタのウェル領域に接地電圧よりも低いかまたは高い値の電圧を印加する回路とを具備する半導体記憶装置を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、SNMを向上でき、安定動作に有利な半導体記憶装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。尚、この説明においては、全図にわたり共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0014】
[第1の実施形態(電圧発生回路を備える一例)]
まず、図1乃至図4を用いて、この発明の第1の実施形態に係る半導体記憶装置を説明する。図1は本例に係る半導体記憶装置を示す回路図であり、図2は図1中のSRAMセルの平面レイアウトを示す図である。
【0015】
<回路構成>
図示するように、本例に係る半導体記憶装置は、SRAMセル(Static Random Access Memory Cell)10と電圧発生回路11を備えている。
【0016】
SRAMセル10は、MOSトランジスタP1〜N6を備えており、それぞれのトランジスタは、後述するように半導体基板を短冊状に細く切り出した突起状構造(ピラー)を利用したフィントランジスタ(FinFET)である。
【0017】
SRAMセル10は、転送トランジスタ(Transfer Tr)N5、N6、およびデータ記憶を行うようにフリップフロップ接続されたインバータ回路12−1、12−2により構成されている。
【0018】
転送トランジスタN5の電流経路の一端はビット線BLに接続され、他端はインバータ回路12−1のノードNDに接続され、ゲートはワード線WLに接続されている。転送トランジスタN6の電流経路の一端はビット線/BLに接続され、他端はインバータ回路12−2のノード/NDに接続され、ゲートはワード線WLに接続されている。
【0019】
インバータ回路12−1は、負荷トランジスタ(Load Trまたはpull-up Tr)P1、駆動トランジスタ(Driver Trまたはpull-down Tr)N3を備えている。駆動トランジスタN3の電流経路の一端は電圧発生回路11の出力(Vss)に接続され、他端はノードNDにおいて負荷トランジスタP1の電流経路の一端に接続され、ゲートは負荷トランジスタP1のゲート、およびインバータ回路12−2のノード/NDに接続されている。負荷トランジスタP1の電流経路の他端は内部電源Vddに接続されている。
【0020】
インバータ回路12−2は、負荷トランジスタP2、駆動トランジスタN4を備えている。駆動トランジスタN4の電流経路の一端は電圧発生回路11の出力(Vss)に接続され、他端はノード/NDにおいて負荷トランジスタP2の電流経路の一端に接続され、ゲートは負荷トランジスタP2のゲート、およびインバータ回路12−1のノードNDに接続されている。負荷トランジスタP2の電流経路の他端は内部電源Vddに接続されている。
【0021】
ここで、SRAMセル10の動作の安定性を示すスタティックノイズマージン(Static Noise Margin:以下、SNMと称する)の大きさを定義する正方形の一辺は、ベータ比(β ratio)で決定される。このベータ比は、以下に示すように、SRAMセル10中の転送トランジスタN5、N6の電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)に対する、駆動トランジスタN3、N4の電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)の比で表わされる。
【0022】
ベータ比 = Idr(N3) / Itr(N5)
= Idr(N4) / Itr(N6)
例えば、駆動トランジスタの電流駆動力Idr(N3)、Idr(N4)を、転送トランジスタの電流駆動能力Itr(N3)、Itr(N4)よりも大きく選択することで、ベータ比を増大し、SNMを向上して安定性を向上できる。より具体的には、駆動トランジスタN3、N4のチャネル幅を増大させたり、しきい値Vtを適切に選択することによって、ベータ比を増大することができる。
【0023】
図2に示すように、本例に係るSRAMセル10を構成する各フィントランジスタのゲート長L0およびフィン幅Wfin0は、実質的に同一であるようにレイアウトされている。
【0024】
<フィントランジスタ>
次に、図3および図4を用いて、フィントランジスタ(FinFET)の構造について説明する。上記のように、SRAMセル10中の6トランジスタP1〜N6は、フィントランジスタである。ここでは、駆動トランジスタN3を例に挙げて説明する。
【0025】
まず、図3のバルクフィントランジスタ(bulk FinFET)について説明する。図示するように、P型シリコン半導体基板21に、このP型シリコン基板11が突起状に加工され素子領域となるピラーFINが形成されている。例えば、このピラーFINの高さは、〜0.3μm程度である。また、このピラーFINの両側のP型シリコン基板21上には、素子分離領域となる素子分離膜23が形成されている。
【0026】
素子分離膜23上に、ピラーFINの上面及び側面と立体交差するように、ゲート電極Gが設けられている。このゲート電極Gは、例えばホウ素(B)が導入された多結晶シリコン等から形成される。このホウ素が導入された多結晶シリコンをゲート電極に用いることによって、閾値電圧をオフリーク電流の低減に適した値(1V程度)にすることができる。ゲート電極Gに導入されるホウ素の濃度は例えば1×1020cm−3程度以上が望ましい。また閾値電圧を0.4V程度に設定するにはこのゲート電極Gをmidgap近傍の仕事関数をもつ金属電極、もしくは金属電極とポリシリコン電極の組み合わせで形成するのが望ましい。
【0027】
このゲート電極GとピラーFINとの界面となる両側面および上面に、ゲート絶縁膜GOXが形成されている。このゲート絶縁膜GOXは、ピラーFIN上を覆うように形成され、例えば熱酸化によって形成されたシリコン酸化膜等から形成されている。このゲート絶縁膜GOXの膜厚は、例えば1nm〜3nm程度が望ましいが、必要により例えば、1nm以下、または5nm程度でも良い。
【0028】
ピラーFINの図面の手前側と奥側の両側面内には、例えば、P型シリコン基板11の導電型と逆の導電型(n型)を持つソースSとドレインDが設けられている。このソースSおよびドレインDは、ゲート電極Gの形成後にこのゲート電極Gのパターンをマスクとして自己整合的に形成する。例えば、ソースSとドレインDは、ゲート電極Gの下方を除くピラーFINの両側面内に、イオン注入によりリン(P)あるいはヒ素(As)等の不純物を注入することにより形成する。
【0029】
続いて、図4に示すSOIフィントランジスタ(SOI FinFET)について説明する。図示するように、このフィントランジスタは、半導体基板21に設けられた絶縁膜22(SOI:Silicon On Insulator)上に設けられている点で、上記バルクフィントランジスタと相違している。
【0030】
SRAMセル10のその他のトランジスタも同様の構造である。また、本例では、図3に示すバルクフィントランジスタの場合を例に挙げて、以下説明する。
【0031】
<ダブルゲート型トランジスタの静電ポテンシャル>
次に、図5および図6を用いて、ダブルゲート(double gate)型トランジスタの静電ポテンシャル(potential)について説明する。ここで説明するように、上記フィントランジスタは、ダブルゲート型トランジスタである。
【0032】
図5に示すように、フィントランジスタを含むダブルゲート型トランジスタは、ゲート電極として、トップゲート(top gateまたはfront gate)電極とバックゲート(back gate)電極に同時かつ等しい電圧を印加する。
【0033】
そのため、図6に示すように、図5中でチャネルに垂直な方向で切った断面15での静電ポテンシャルは、両側のゲート電極でフェルミレベル(Fermi level)が引っ張られ、両方の側面の表面部にチャネルが形成される。
【0034】
ここで、上記図3および図4に示したフィントランジスタ(FinFET)は、ピラーFINを挟む両側のゲート電極Gに同時かつ等しい電位を印加する構造である。そのため、本例のフィントランジスタであるトランジスタP1〜N6は、ダブルゲート型トランジスタである。
【0035】
<Id−Vg特性(Vss>0V)>
次に、図7を用いて、電圧発生回路11により、駆動トランジスタN3のソースに正の印加電圧Vssを印加した場合(Vss>0V)の、駆動トランジスタN3のドレイン電流IdのId−Vg特性を説明する。本例では、駆動トランジスタN3を例に挙げて説明する。図中の実線17−1、17−2、17−3は、駆動トランジスタN3のソースにそれぞれ0V、200mV、400mVを印加した場合のId−Vg特性である。この際、トランジスタN3のウェル(p-well)電圧を固定している。
【0036】
実線17−1〜17−3に示すように、電圧発生回路11の印加電圧Vssを順次0V、200mV、400mVに変動させた場合、サブスレッシュホールド(sub-threshold)特性α1、α3の変化はほとんどないが、正の印加電圧Vssの増大に伴い、特性曲線17−1〜17−3をしきい値電圧Vtが大きくなるようにシフトさせ、電流駆動能力Idr(N3)、 Idr(N4)を調整できる。
【0037】
一方、図示しないが、負の印加電圧Vssを印加する場合(Vss<0V)には、同様に、負の印加電圧Vssの増大に伴い、Id−Vg特性曲線をしきい値電圧Vtが小さくなるようにシフトさせて、電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を増大できる。
【0038】
このように、負の印加電圧Vssを印加する場合(Vss<0V)、印加電圧Vssを増大させると、駆動トランジスタN3の電流駆動能力Idrを増大できることが分かる。一方、転送トランジスタN5、N6の閾値電圧は変化がないため、ベータ比を構成する分母の成分である転送トランジスタN5、N6の電流駆動能力Idr(N5)、Idr(N6)は一定とすることができる。
【0039】
このように、負の印加電圧Vssを印加する場合(Vss<0V)に印加電圧Vssを増大させると、ベータ比を構成する分子の成分である電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を増大できる一方、分母の成分である転送トランジスタN5、N6の電流駆動能力Idr(N5)、Idr(N6)を一定とすることができるため、本例に係るベータ比β1を増大することができる。
【0040】
<バタフライカーブについて>
次に、本例に係るSRAMセル10のバタフライカーブ(Butterfly Curve)について、図8を用いて説明する。バタフライカーブは、ビット線BL、/BLの電位を変化させた場合のノードND、/NDの電位変化をプロットしたもので、SRAMセルの動作の安定性を示すものである。
【0041】
図8中の破線BC1は電圧発生回路11の印加電圧が0V(Vss=0V)の場合のバタフライカーブであり、実線BC2は電圧発生回路11の印加電圧Vssが負の電圧(Vss=−0.2V程度)の場合のバタフライカーブである。
【0042】
図示するように、破線BC1に内接する正方形の一辺の値(SNM:Static Noise Margin)は、ほとんど0mVないし10mV程度である。そのため、BC1に示すSRAMセルは、SNMが低く、安定動作に不利であると言える。
【0043】
一方、実線BC2に示す本例に係るSRAMセル10のように、電圧発生回路11が負の電圧の印加電圧(Vss<0V)を印加させた場合には、内接する正方形の一辺の値L2を、50mV以上に向上している。
【0044】
これは、上記のように負の電圧の印加電圧Vssを印加すると、駆動トランジスタの電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を増大でき、ベータ比β1を増大できるためである。そのため、SRAMセル10のSNMを向上でき、安定動作に有利である。
【0045】
この実施形態に係る半導体記憶装置によれば、下記(1)および(2)の効果が得られる。
【0046】
(1)ベータ比を増大して、SNMを向上でき、安定動作に有利である。
【0047】
本例に係る半導体記憶装置は、駆動トランジスタN3、N4のソースに印加電圧Vssを印加する電圧発生回路11を備えている。
【0048】
そのため、電圧発生回路11が負の印加電圧Vss(Vss<0V)を増大するように変動させることにより、特性曲線をシフトさせ、駆動トランジスタN3、N4の電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を増大させることができる。
【0049】
そのため、下記に示すように、ベータ比を構成する分子の成分である電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を増大できる一方、分母の成分である転送トランジスタN5、N6の電流駆動能力Idr(N5)、Idr(N6)を一定とすることができる。そのため、本例に係るベータ比β1を増大することができる。
【0050】
β1 = Idr(N3) / Itr(N5)
= Idr(N4) / Itr(N6)
その結果、図8に示すように、内接する正方形の一辺の値を増大して、SNMを向上することができるため、安定動作に有利である。
【0051】
例えば、本例のバタフライ曲線BC2に示すように、印加電圧Vssを−0.2Vにまで変化させた場合には、内接する正方形の一辺の値であるベータ比L2を、50mV以上にすることができる。
【0052】
(2)SRAMセル10の各トランジスタをフィントランジスタ(FinFET)で構成する場合に有利である。
【0053】
本例によれば、SRAMセル10の各トランジスタをフィントランジスタで構成する場合、以下1〜3に示すメリットがある。
【0054】
1.ベータ比を増大でき、SNMを向上し、安定動作に有利である。
フィントランジスタを用いてSRAMセルを構成しようとすると、しきい値が適正にコントロールできないこと、ならびに、チャネル幅を任意に設定できないことなどの理由により、各トランジスタの電流駆動能力を適正な値に設定することが難しい。これは、フィントランジスタのしきい幅およびチャネル幅は、上記ピラー(FIN)の高さで決定されるため、それぞれトランジスタに別個にチャネル幅を選択することが困難であることに起因する。特に、SOI基板を用いたフィントランジスタ(SOI FinFET)の場合には、SOI膜厚でピラーの高さが決定されるため、トランジスタごとにチャネル幅を変えるということは事実上ほぼ不可能である。
【0055】
しかし、本例では、駆動トランジスタN3、N4のソースに印加電圧Vssを印加する電圧発生回路11を備えている。
【0056】
そのため、ピラーFINの高さに依存せずに、フィントランジスタである駆動トランジスタN3、N4のみ電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を増大することができ、ベータ比を増大できる。結果、SRAMセル10の各トランジスタをフィントランジスタで構成した場合であっても、ベータ比を増大して適正な値に設定でき、SNMを向上し、安定動作に有利である。
【0057】
2.製造工程および製造コストの低減に有利である。
上記のように、チャネル幅を変えようとして、各フィントランジスタのピラーの高さを変えようとする場合には、リソグラフィ工程やRIE(Reactive Ion Etching)等のエッチング工程をフィントランジスタごとに別工程で行う必要があるため、製造工程および製造コストが増大する。
【0058】
しかし、本例によれば、各フィントランジスタのピラーの高さを一定のままで、駆動トランジスタN3、N4の電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を増大することができる。そのため、フィントランジスタごとにピラーの高さを変える工程を行う必要がない点で、製造工程および製造コストの低減に有利である。
【0059】
3.歩留まりの向上に有利である。
ベータ比を増大しようとして、電流駆動力を調整するためにフィントランジスタごとにゲート長を制御する手法も有効とも思われる。しかし、この場合であると、微細化のレイアウトの観点上、十分なベータ比を得ることができないばかりか、さらにSRAMセル内にまちまちなゲート長のフィントランジスタが存在することになる。そのため、異なるゲート長を形成する際のフォトリソグラフィ工程におけるCD(Critical Dimention)の制御性が低減し、歩留まりが低減する。
【0060】
しかし、図2に示したように、本例に係るSRAMセル10を構成する各フィントランジスタのゲート長L0およびフィン幅Wfin0は、各とトランジスタにおいて同一であるように設けられている。そのため、異なるゲート長やフィン幅を形成する必要がなく、リソグラフィにおけるCD制御を容易にできる点で、歩留まりの向上に有利である。
【0061】
尚、この第1の実施形態において、SRAMセル10を構成するトランジスタは、ダブルゲート型フィントランジスタを一例に挙げて説明した。しかし、SRAMセル10を構成するトランジスタは、これに限定されず、例えば、ダブルゲート型プレーナトランジスタや、シングルゲート型プレーナトランジスタ等であっても、同様に適用でき、上記の(1)と同様の効果を得ることが可能である。
【0062】
[変形例1(印加電圧Vssがパルス駆動型である一例)]
次に、変形例1に係る半導体記憶装置について、図9および図10を用いて説明する。この変形例1は、印加電圧Vssの印加およびカットオフのタイミングに関するものである。この説明において、上記第1の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0063】
上記説明において、印加電圧Vssは、直流電圧型である場合を説明した。しかし、この印加電圧Vssがパルス駆動型である場合に、その印加およびカットオフのタイミングを選択することにより、SRAMセル10の特性を更に向上させることができる。
【0064】
まず、図9に示すように、時刻t1の直前に、電圧発生回路11は、所定の負の印加電圧Vssを駆動トランジスタN3、N4のソースに印加する。
【0065】
続いて、時刻t1の際に、SRAMセル10は、ライトイネーブル信号WR(Write enable)および入力データD1を受信すると、書き込み可能状態(スタンドバイ(stand-by)状態)となる。そして、SRAMセル10は、転送トランジスタN5、N6を動作させ、入力されたデータD1をフリップフロップ接続されたインバータ回路12−1、12−2にラッチして書き込み動作を開始する。
【0066】
続いて、時刻t2の際に、SRAMセル10は、入力データD1の書き込み動作を終了する。
【0067】
続いて、時刻t2の直後に、電圧発生回路11は、印加電圧Vssを接地電圧GNDである0Vに戻し、カットオフする。
【0068】
以後、同様の動作について繰り返し、SRAMセル10は、データD2、D3についても同様の書き込み動作を行う。
【0069】
このように、電圧発生回路11は、ライトイネーブル信号WRおよび入力データDの入力の直前に、負の印加電圧Vssを印加することにより、書き込み時のベータ比β1を増加させ、SNMを向上することができる。上記のように、負の印加電圧Vssを印加するタイミングは、ライトイネーブル信号WRおよび入力データD1〜D3が入力される時刻t1、t3、t5よりも、余裕を持った直前の時刻(時刻t1,t3,t5の直前)である。そのため、スタンドバイ状態の際には、駆動トランジスタN3、N4の電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を向上させた状態で、データD1〜D3を書き込むことができる。
【0070】
さらに、電圧発生回路11は、ライトイネーブル信号WRおよび入力データDの立下がりの直後に、印加電圧Vssを接地電圧GNDである0Vに戻し、カットオフを行う。このように、電圧発生回路11をカットオフするタイミングは、ライトイネーブル信号WRおよび入力データD1〜D3が立ち下がった時刻t2、t6、t10等の際よりも、余裕を持った直後の時刻(時刻t2,t6,t10,…の直後等)である。そのため、書き込み動作終了の後には、転送トランジスタN5、N6のしきい値電圧Vtを増大させ、電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を低減させている。そのため、リーク電流を防止でき、消費電力の低減に有利である。
【0071】
このように印加電圧Vssがパルス駆動型である場合には、上記のように、所定のタイミングにより行うことが望ましい。
【0072】
次に、印加電圧Vssがパルス駆動型である場合に、図10に示すようにすることも可能である。図示するように、この場合は、図9に示した印加電圧Vssを接地レベル(ground level)である0Vと所定の負電圧の間で変動させるのではなく、書き込み動作終了の後には、正の電圧の印加電圧Vssを印加する点で、上記図9の場合と相違している。
【0073】
この場合には、書き込み動作終了の後に、本例のようにSRAMセル10がフィントランジスタ(FinFET)により構成された場合に、駆動トランジスタN3、N4のしきい値をより大きくできるため、消費電力を低減できる点でより有効である。これは、フィントランジスタである駆動トランジスタN3、N4のソースに、正の電圧である印加電圧Vssを印加すると、駆動トランジスタN3、N4のしきい値を実質的に大きくできるからである。
【0074】
一方、書き込みの際には、同様に駆動トランジスタN3、N4に負の電圧である印加電圧Vssを印加することで、SNMを向上することができる。
【0075】
尚、この変形例1に係る半導体記憶装置の回路構成およびレイアウト構成は、上記第1の実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0076】
上記のように、この変形例1に係る半導体記憶装置によれば、上記(1)および(2)と同様の効果が得られる。さらに、本変形例1によれば、下記(3)の効果が得られる。
【0077】
(3)消費電力の低減に有利である。
【0078】
図9に示すように、本例に係る電圧発生回路11は、ライトイネーブル信号WRおよび入力データDの際に、負の印加電圧Vssを印加する。そのため、書き込み時のベータ比β1を増加させ、SNMを向上することができる。
【0079】
負の印加電圧Vssを印加するタイミングは、ライトイネーブル信号WRおよび入力データD1〜D3が入力される時刻t1、t3、t5よりも、余裕を持った直前の時刻(時刻t1,t3,t5の直前)である。そのため、スタンドバイ状態から、駆動トランジスタN3、N4の電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を向上させた状態で、データD1〜D3を書き込むことができる。
【0080】
また、電圧発生回路11は、ライトイネーブル信号WRおよび入力データDの立下がりの直後に、印加電圧Vssを接地電圧GNDである0Vに戻し、カットオフを行う。そのため、書き込み終了の後には、転送トランジスタN5、N6のしきい値電圧Vtを増大させ、電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を低減させて、リーク電流を防止できる。その結果、消費電力の低減に有利である。
【0081】
接地電圧GNDである印加電圧Vssを印加するタイミングは、ライトイネーブル信号WRおよび入力データD1〜D3が立ち下がった時刻t2、t6、t10等の際よりも、余裕を持った直後の時刻(時刻t2,t6,t10,…の直後等)である。そのため、書き込み動作終了の後には、電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を低減させている。そのため、リーク電流を防止でき、消費電力の低減に有利である。
【0082】
図10に示す場合には、書き込み動作終了の後に、電圧発生回路11が正の電圧の印加電圧Vssを印加する。
【0083】
そのため、書き込み動作終了の後の駆動トランジスタN3、N4のしきい値をより大きくできるため、消費電力を低減できる点でより有効である。
【0084】
この場合には、駆動トランジスタN3、N4がフィントランジスタ(FinFET)により構成された場合に、駆動トランジスタN3、N4のしきい値を実質的により大きくできるため、消費電力を低減できる点でより有効である。そのため、SRAMセル10をフィントランジスタで構成する場合により有効である。
【0085】
[第2の実施形態(基板バイアス発生回路を備える一例)]
次に、第2の実施形態に係る半導体記憶装置について、図11乃至図15を用いて説明する。この実施形態は、基板バイアス発生回路を備える一例に関するものである。この説明において、上記第1の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0086】
<回路構成およびレイアウト>
図11に示すように、本例に係る半導体記憶装置の回路構成は、転送トランジスタN5、N6のウェル領域に半導体基板の基板電圧Vsubを印加する基板バイアス発生回路55を備えている点で、上記第1の実施形態と相違している。本例に係るSRAMセルを構成する各トランジスタP1〜N6は、図3に示したフィントランジスタ(bulk FinFET)を例に挙げて説明する。
【0087】
図12に示すように、本例に係るSRAMセル10のレイアウトは、以下の点で上記第1の実施形態と相違している。
【0088】
まず、転送トランジスタN5、N6のゲート長L1は、駆動トランジスタN3、N4および負荷トランジスタP1、P2のゲート長L2よりも大きくなるように設けられている(L1>L2)
転送トランジスタN5、N6のフィン幅Wfin1は、駆動トランジスタN3、N4および負荷トランジスタP1、P2のフィン幅Wfin2よりも大きくなるように設けられている(Wfin1>Wfin2)。
【0089】
また、駆動トランジスタN3、N4のピラー(FIN)数は、2個である(FIN×2)。
【0090】
次に、同じゲート長でフィン幅Wfinが異なる場合のId−Vg特性について、図13および図14を用いて説明する。
【0091】
図13は、バルク基板上に形成されたFinFETで、かつフィン幅Wfinが小さい場合(例えば、フィン幅Wfin=50nm程度)であって、基板バイアス発生回路55の基板電圧Vsubを接地電圧(0V)から負の電圧または正の電圧(−1.0V<Vsub<0.5V)に変化させた場合のId−Vg特性を示している。
【0092】
図中の実線33−0は、基板電圧Vsubが接地電圧(0V)の際の特性曲線である。実線33−1は、基板電圧Vsubが負の電圧(Vsub:−0.5Vまたは−1.0V)の際の特性曲線である。実線33−2は、基板電圧Vsubが正の電圧(Vsub:1.0Vまたは1.5V)の際の特性曲線である。
【0093】
図示するように、フィン幅Wfinが小さい場合は、基板電圧Vsubを変化(−1.0V<Vsub<0.5V)させた場合であっても、閾値電圧Vtの変化はほとんど見られない。例えば、ドレイン電流Id=10−7(A)の際の閾値電圧Vt(V)は、基板電圧Vsubを変化させた場合であってもほとんど変化は見られず、−0.2V程度である。
【0094】
このように、フィン幅Wfinが小さい場合は、基板電圧Vsubの影響をほとんど受けず、その動作モードは、ほぼ完全空乏型トランジスタ(FD-SOI MOSFET)と等価である。
【0095】
一方、図14は、バルク基板上に形成されたFinFETで、かつフィン幅Wfinが大きい場合(例えば、フィン幅Wfin=100nm程度)であって、基板バイアス発生回路55の基板電圧Vsubを接地電圧(0V)から負の電圧または正の電圧(−1.0V<Vsub<0.5V)に変化させた場合のId−Vg特性を示している。
【0096】
同様に、図中の実線33−0は、基板電圧Vsubが接地電圧(0V)の際の特性曲線である。実線33−1は、基板電圧Vsubが負の電圧(Vsub:−0.5Vまたは−1.0V)の際の特性曲線の際の特性曲線である。実線33−2は、基板電圧Vsubが正の電圧(Vsub:1.0Vまたは1.5V)の際の特性曲線である。
【0097】
図示するように、フィン幅Wfinが大きい場合は、基板電圧Vsubを変化(−1.0V<Vsub<0.5V)させると、閾値電圧Vtが変化することが分かる。例えば、ドレイン電流Id=10−7(A)の際の閾値電圧の変動幅ΔVtは、0.25V〜0.41V程度である。
【0098】
具体的には、接地電圧から負の電圧の基板電圧Vsubを印加(特性曲線33−1の場合)すると、閾値電圧Vtが増加するように(電流駆動能力Itrが減少するように)、Id−Vg曲線をシフトできる。
【0099】
一方、接地電圧から正の電圧の基板電圧Vsubを印加(特性曲線33−2の場合)すると、閾値電圧Vtが減少するように(電流駆動能力Itrが増大するように)、Id−Vg曲線をシフトできる。
【0100】
このように、バルク基板上に形成されたFinFETで、かつフィン幅Wfinが大きい場合は、基板電圧VsubによるVt制御がなされていることから、ピラー(FIN)の両側面に、通常の2つのバルクトランジスタ(bulk MOSFET)が作りこまれているのと電気的には等価である。これは、ゲート電極に電圧を印加することで形成される空乏層が、トップゲート側とバックゲート側とから延びてきていても、それらが連結しない状況になっていると推測できる。
【0101】
その証拠としてフィン幅が細く完全空乏型トランジスタ(FD-SOI MOSFET)として動作している場合(図13)と比較して、フィン幅が大きく部分空乏型トランジスタ(Partially Depleted SOI (PD-SOI) MOSFET)として動作している場合(図14)の閾値電圧Vtが、より大きくなっている。これは、基板電圧Vsubの印加により、閾値電圧Vt制御がなされていることを示している。
【0102】
ここで、本例では、転送トランジスタN5、N6のフィン幅Wfin2が大きいため、動作モードは部分空乏型トランジスタ(PD-SOI MOSFET)と等価である(図14の場合)。そのため、基板バイアス発生回路55が、負の基板電圧Vsubを印加することにより、閾値電圧Vtを増大でき、電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を低減することができる。このように、ベータ比の分母成分を構成する電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を低減できるため、本例に係るベータ比β2を増大することができる。
【0103】
また、転送トランジスタN5、N6のウェル領域(p-well)に印加する基板電圧Vsubは、転送トランジスタN5、N6が設けられた半導体基板21中のコンタクト配線を介して行われる(図12において図示せず)。
【0104】
一方、本例の駆動トランジスタN3、N4および負荷トランジスタP1、P2のフィン幅Wfin1は小さく設けられているため、動作モードは完全空乏型トランジスタ(FD-SOI MOSFET)と等価である(図13の場合)。そのため、基板バイアス発生回路55が、正または負の基板電圧Vsubを印加しても、閾値電圧Vtに変化はない。結果、基板電圧Vsubを印加した場合であっても、駆動トランジスタN3、N4、および負荷トランジスタP1、P2の電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)、Pld(P1)、Pld(P2)の変化を防止できる。
【0105】
次に、図15を用いて、フィン幅が大きい場合(Wfin=100nm程度)における、閾値電圧Vtと基板電圧Vsubとの関係を説明する。
【0106】
図示するように、閾値電圧Vtは、基板電圧Vsubに対して非線形に変動しており、同じ基板電圧Vsubの変動幅であっても閾値電圧の変動幅は異なっている。例えば、変動幅ΔVsubが同じ1.0Vである、+0.5Vから−0.5Vの際の閾値電圧変動幅ΔVt1は、0.0Vから−1.0Vの際の閾値電圧変動幅ΔVt2よりも大きい(ΔVt1>ΔVt2)。
【0107】
このように、基板電圧Vsubの変動幅を同一とした場合であっても、閾値電圧の変動幅は異なってくることから、より変動幅の大きい領域(−0.5V<Vsub<+0.5V)で、基板バイアス発生回路55は、基板電圧Vsubを印加させることが望ましい。
【0108】
<ベータ比>
本例に係るSRAMセル10のベータ比β2は、以下のように表わされる。
【0109】
β2 = Idr(N3) / Itr(N5)
= Idr(N4) / Itr(N6)
ここで、本例に係るSRAMセル10をまとめると、図16に示すようになる。図示するように、ベータ比β2の分母成分を構成する電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)は、ゲート長L1が大きく(L1>L2)、ピラー数が1本(×1)であるため、短チャネル効果が劣化することにより、低減する。
【0110】
さらに、転送トランジスタN5、N6のフィン幅Wfin1は大きい(>Wfin2)ため、動作モードは部分空乏型トランジスタ(PD-SOI MOSFET)と等価である。よって、基板バイアス発生回路55が、負の基板電圧Vsubを印加することにより、閾値電圧Vtを大きくでき、電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を低減することができる。
【0111】
一方、ベータ比β2の分子成分を構成する電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)は、ゲート長L2が小さく、ピラー数が2本であるため、増大する。
【0112】
さらに、駆動トランジスタN3、N4のフィン幅Wfin2は小さい(<Wfin1)ため、動作モードは完全空乏型トランジスタ(FD-SOI MOSFET)と等価である。よって、基板バイアス発生回路55が基板電圧Vsubを印加しても、トランジスタ特性に変化はないため閾値電圧Vtに変化はなく、電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)の低減を防止することができる。
【0113】
そのため、例えば、本例ではベータ比β2を2.0以上とすることができる。それは、ベータ比は、形式的には、駆動トランジスタN3、N4のチャネル本数で決定されるところ、本例では、駆動トランジスタN3、N4のピラーFIN数は、2本であるからである。
【0114】
このように、ベータ比は、チャネル本数で決まるため、形式的には、整数値しか取り得ない。しかし、本例では、さらに負の基板電圧Vsubを印加することによって、ベータ比の分母成分を構成する転送トランジスタの電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を低減することができるため、2.0以上のベータ比β2を得ることができる。かつ、基板バイアス発生回路55が、印加する基板電圧Vsubの値を選択することにより、より最適な値を選択することができる。
【0115】
上記のように、この実施形態に係る半導体記憶装置によれば、上記(1)と同様の効果が得られる。
【0116】
即ち、(1)ベータ比を増大して、SNMを向上でき、安定動作に有利である。
【0117】
本例に係る半導体記憶装置は、転送トランジスタN5、N6のウェル領域に基板電圧Vsubを印加する基板バイアス発生回路55を備えている。
【0118】
さらに、図12に示すように、転送トランジスタN5、N6は、ゲート長L1が大きく、ピラー数が1本であるため、ベータ比β2の分母成分を構成する電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を低減できる。
【0119】
加えて、フィン幅Wfin1が大きい(>Wfin2)ため、転送トランジスタN5、N6の動作モードは部分空乏型トランジスタ(PD-SOI MOSFET)と等価であり、基板バイアス発生回路55が負の基板電圧Vsubを印加することにより、閾値電圧Vtを大きくでき、電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を低減することができる。
【0120】
一方、駆動トランジスタN3、N4は、ゲート長L2が小さく、ピラー数が2本であるため、ベータ比β2の分子成分を構成する電流駆動能力Itrを増大できる。
【0121】
加えて、フィン幅Wfin2が小さいため、駆動トランジスタN3、N4の動作モードは完全空乏型トランジスタ(FD-SOI MOSFET)と等価であり、基板バイアス発生回路55が基板電圧Vsubを印加しても、トランジスタ特性に変化はないため閾値電圧Vtに変化はなく、電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)の低減を防止することができる。
【0122】
そのため、ベータ比β2を増大して、SNMを向上でき、安定動作に有利である。
【0123】
さらに、本例はピラーFINの高さを一定のままで、上記(2)の効果を得ることができる点で、SRAMセル10の各トランジスタをフィントランジスタ(FinFET)で構成する場合に有利である。
【0124】
尚、この第2の実施形態において、駆動トランジスタN3、N4および転送トランジスタN5、N6のウェル領域(例えば、p-well領域)は、互いに共有され電気的に接続された領域であっても良い。さらに、ウェル領域が互いに独立して別々の領域であって、電気的に分離された領域であっても良い。駆動トランジスタN3、N4および転送トランジスタN5、N6のウェル領域が上記いずれの場合であっても、基板電圧Vsubをウェル領域に印加した際、しきい値が変動するのは転送トランジスタN5、N6だけである。そのため、ウェル領域が上記いずれの場合であっても、駆動トランジスタN3、N4の電流特性は変化せず、電流駆動能力Idr(N3)、Idr(N4)を一定にすることができる。従って、ウェル領域のレイアウトが上記いずれの場合であっても、SNMを向上することができる。
【0125】
[変形例2(基板電圧Vsubがパルス駆動型である一例)]
次に、変形例2に係る半導体記憶装置について、図17および図18を用いて説明する。この変形例2は、基板電圧Vsubのタイミングに関するものである。この説明において、上記第2の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0126】
まず、図17に示すように、時刻t1の直前に、基板バイアス発生回路55は、接地電圧(0V)から負の電圧の基板電圧Vsubを転送トランジスタN5、N6のウェル領域に印加する。
【0127】
続いて、時刻t1の際に、SRAMセル10は、ライトイネーブル信号WRおよび入力データD1を受信すると、書き込み可能状態(スタンドバイ(stand-by)状態)となる。そして、SRAMセル10は、転送トランジスタN5、N6を動作させ、入力されたデータD1をフリップフロップ接続されたインバータ回路12−1、12−2にラッチして書き込み動作を開始する。
【0128】
続いて、時刻t2の際に、SRAMセル10は、入力データD1の書き込み動作を終了する。
【0129】
続いて、時刻t2の直後に、基板バイアス発生回路55は、負の電圧から接地電圧(0V)に基板電圧Vsubを戻す。
【0130】
以後、同様の動作について繰り返し、SRAMセル10は、データD2、D3についても同様の書き込み動作を行う。
【0131】
このように、基板バイアス発生回路55は、ライトイネーブル信号WRおよび入力データDの入力の直前に、負の基板電圧Vsubを印加することにより、書き込み時のベータ比β2を増加させ、SNMを向上することができる。上記のように、負の基板電圧Vsubを印加するタイミングは、ライトイネーブル信号WRおよび入力データD1〜D3が入力される時刻t1、t3、t5よりも、余裕を持った直前の時刻(時刻t1,t3,t5の直前)である。そのため、スタンドバイ状態から、転送トランジスタN5、N6の電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を低減させた状態で、データD1〜D3を書き込むことができる。
【0132】
さらに、電圧発生回路11は、ライトイネーブル信号WRおよび入力データDの立下がりの直後に、基板電圧Vsubを接地電圧GNDである0Vに戻す。このように、基板バイアス発生回路55を接地電圧に戻すタイミングは、ライトイネーブル信号WRおよび入力データD1〜D3が立ち下がった時刻t2、t4等の際よりも、余裕を持った直後の時刻(時刻t2,t4,…の直後等)である。そのため、書き込み動作終了の後には、転送トランジスタN5、N6のしきい値電圧Vtを低減させ、電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を増大させている。
【0133】
そのため、読み出し時における転送トランジスタN5、N6の電流特性を改善し、読み出し速度を向上することができる。
【0134】
このように基板電圧Vsubがパルス駆動型である場合には、上記のように、所定のタイミングにより行うことが望ましい。
【0135】
<正の電圧および負の電圧に変動させる一例>
次に、基板電圧Vssがパルス駆動型である場合に、図18に示すようにすることも可能である。図示するように、本例は、基板電圧Vsubを接地電圧(ground level)である0Vと負の電圧の間で変動させるのではなく、書き込み動作の際に、基板電圧Vsubを接地レベル(0V)を挟んで正の電圧および負の電圧に変動させている点で図17と相違している。
【0136】
この場合には、読み出し時における転送トランジスタN5、N6の読み出し速度をより向上することができる点で有効である。
【0137】
図示するように、書き込み動作終了の後には、基板バイアス発生回路55は、正の基板電圧Vsubを印加することにより、転送トランジスタN5、N6のしきい値電圧Vtをより低減させることができる。そのため、読み出し時における転送トランジスタN5、N6の電流特性をより改善でき、電流駆動能力Itr(N5)、Itr(N6)を増大させることができるからである。
【0138】
さらに、転送トランジスタN5、N6が、フィントランジスタで構成されている場合には、負の基板電圧Vsubを印加することにより、実質的にしきい値Vtを大きくしたのと同じ効果が得られる。この点で、転送トランジスタN5、N6をフィントランジスタで構成する場合に有効である。
【0139】
[変形例3(平面レイアウトのその他の一例)]
次に、変形例3に係る半導体記憶装置について、図19および図20を用いて説明する。この変形例3は、上記第2の実施形態の平面レイアウトのその他の一例に関するものである。この説明において、上記第2の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0140】
図示するように、本変形例に係る半導体記憶装置は、駆動トランジスタN3、N4および負荷トランジスタP1、P2のピラー数が1つである(FIN×1)点で、上記第2の実施形態と相違している。
【0141】
そのため、本変形例に係るSRAMセル10のベータ比β3は、形式的には、1.0以上の値を得ることが可能である。
【0142】
ここで、一般的にβ比は、1.5〜2.5程度が最適とされている。そのため、必要に応じて、基板バイアス発生回路55が印加する基板電圧Vsubの値を選択することにより、例えば、1.0〜2.5程度の最適なベータ比β3を選択できる点で有効である。
【0143】
また、この変形例3の場合であっても、所定のタイミングに基板電圧Vsubを印加することにより、上記変形例2と同様の効果を得ることが可能である。
【0144】
尚、上記第1、第2の実施形態、および変形例1乃至3において、SRAMセル10を構成するトランジスタは、フィントランジスタに限らず、例えば、ダブルゲート型プレーナトランジスタや、シングルゲート型プレーナトランジスタ等であっても、同様に適用でき、上記の(1)と同様の効果を得ることが可能である。
【0145】
以上、実施形態および変形例を用いて本発明の説明を行ったが、この発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記各実施形態および各変形例には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば各実施形態および各変形例に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る半導体記憶装置を示す回路図。
【図2】図1中のSRAMセルを示す平面レイアウト図。
【図3】図1中の駆動トランジスタを示す斜視図(bulk FinFETの場合)。
【図4】図1中の駆動トランジスタを示す斜視図(SOI FinFETの場合)。
【図5】ダブルゲート型トランジスタの静電ポテンシャルを説明するための図。
【図6】図5中の断面で見たエネルギーバンド図。
【図7】印加電圧を変化させた場合の閾値電圧とドレイン電流との関係(Id−Vg特性)を示す図。
【図8】バタフライカーブを示す図。
【図9】変形例1に係る半導体記憶装置のタイミングチャート図。
【図10】変形例1に係る半導体記憶装置のタイミングチャート図。
【図11】この発明の第2の実施形態に係る半導体記憶装置を示す回路図。
【図12】図11中のSRAMセルを示す平面レイアウト図。
【図13】フィン幅が小さい場合のId−Vg特性図。
【図14】フィン幅が大きい場合のId−Vg特性図。
【図15】フィン幅が大きい場合における、閾値電圧Vtと基板電圧Vsubとの関係を示す図。
【図16】第2の実施形態に係る半導体記憶装置を説明するための図。
【図17】変形例2に係る半導体記憶装置のタイミングチャート図。
【図18】変形例2に係る半導体記憶装置のタイミングチャート図。
【図19】変形例3に係る半導体記憶装置の平面レイアウト図。
【図20】変形例3に係る半導体記憶装置を説明するための図。
【符号の説明】
【0147】
10…SRAMセル、11…電圧発生回路、12−1、12−2…インバータ回路、VDD…内部電源、Vss…印加電圧、WL…ワード線、BL、/BLビット線…、ND、/ND…ノード、P1、P2…負荷トランジスタ、N3、N4…駆動トランジスタ、N5、N6…転送トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のインバータを構成する第1、第2駆動トランジスタを備えたSRAMセルと、
前記第1、第2駆動トランジスタの電流経路の一端に接地電圧よりも低いかまたは高い値の電圧を印加する回路とを具備すること
を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記SRAMセルを構成する各トランジスタはフィントランジスタであり、
前記フィントランジスタのゲート長およびフィン幅は、前記各トランジスタについて実質的に同一であること
を特徴とする請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
一対のインバータと、前記一対のインバータに入出力データを転送する第1、第2転送トランジスタとを備えたSRAMセルと、
前記第1、第2転送トランジスタのウェル領域に接地電圧よりも低いかまたは高い値の電圧を印加する回路とを具備すること
を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項4】
前記SRAMセルは、前記一対のインバータを構成する第1、第2駆動トランジスタを備え、
前記第1、第2転送トランジスタおよび前記第1、第2駆動トランジスタはフィントランジスタであって、
前記第1、第2転送トランジスタのゲート長は、前記第1、第2駆動トランジスタのゲート長よりも大きく、
前記第1、第2転送トランジスタのフィン幅は、前記第1、第2駆動トランジスタのフィン幅よりも大きく、
前記第1、第2駆動トランジスタのピラー数は2個であること
を特徴とする請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記回路は、前記SRAMセルへの入力データの書き込み開始の際に接地電圧よりも低い電圧を発生し、前記SRAMセルへの前記入力データの書き込み終了の後に前記接地電圧または前記接地電圧よりも高い電圧を発生すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−90958(P2008−90958A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272081(P2006−272081)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】