説明

半導電性ベルト、半導電性ロール及びこれらを用いる画像形成装置

【課題】加工ストレスによる抵抗不均一を意識しない使い方が可能な半導電性ベルト/半導電性ロールを提供すること。
【解決手段】部分的に表面抵抗値が周囲と比較して高い異抵抗部が回動方向と垂直な方向に対して所定の角度を有する半導電性ベルト/半導電性ロールであって、異抵抗部の幅0.5mm〜50mm、角度30度〜60度であり、異抵抗部の個数1個〜10個である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導電性ベルト等に関し、より詳しくは、半導電性ベルト、半導電性ロール及びこれらを用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用する画像形成装置は、静電潜像担持体(感光体)表面に一様な電荷を形成し(帯電)、画像信号を変調したレーザ等により静電潜像を形成した後、帯電したトナーで静電潜像を現像してトナー画像とする。そして、トナー画像は中間転写体を介して、あるいは直接記録媒体に静電的に転写することにより、所望の転写画像を得ることができる。
近年、このような画像形成装置であるプリンターや複写機には、半導電性部材が多種多様な用途で採用され、高画質、ロングライフ、環境改善をめざし大きな進歩が進んでいる。具体的な半導電性部材の用途としては、電子写真の基本プロセスである帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電の回転ロール等の全般が挙げられる。
【0003】
例えば、中間転写体を用いる転写方式においては、半導電性の無端ベルト(半導電性ベルト)が採用される。この半導電性ベルトは、ベルト駆動時の制御の容易さ等の観点から、一般に弾性材料で構成され、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)やウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、または、それらのブレンドゴム等の加硫ゴム材料が一般的に用いられる。そして、これらの基材ゴム材料に金属粉やカーボンブラック粉末、繊維等の導電性添加物(導電性フィラー)を分散し、所望の体積固有抵抗値を有する半導電性ベルト等を調製する(特許文献1参照)。
【0004】
また、転写搬送ベルトは、静電的な吸着力を介して転写材(記録媒体)を保持する方式を採用するために、良好な画質を得るには、ベルト面内の抵抗均一性が必要である。これは、抵抗値が部分的に低い場合は放電が生じ、ベルト或いは像担持体等の破損、転写材表面の転写画像の乱れが生じるためであり、また、ベルトの体積固有抵抗が高い場合には、高電圧で転写材を保持するために生じる放電現象により、転写材表面のトナーの一部が逆極性となる転写不良が発生し、転写材表面では一部白抜けという画像欠陥が起きるためである。さらに、転写搬送ベルトの部分的な体積抵抗率が低い場合には、抵抗率が低い局所に電荷が流れ易くなるために静電的な吸着力を介して転写材を保持することができなくなる。このようなベルト面内の抵抗均一性を得る方法として、体積固有抵抗が10Ωcm以下のクロロプレンゴム等弾性体の表面に、ナイロン系樹脂またはウレタン系樹脂のコートを施したベルトが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、半導電性ベルトが転写材を保持し、トナー画像を転写材に転写するためには0.5kVから5kVの転写電圧を印加するが、この印加電圧によって、ベルト材料の抵抗値が変化して、転写材のある部位と転写材のない部位とでベルトの抵抗値が変わる(ベルト抵抗値ムラ)場合がある。
このようなベルト抵抗値ムラの改善策としては、転写搬送ベルトを3層構成として、第1層(表面層)の体積固有抵抗を1×1010〜1×1016Ωcmの範囲とし、第2層(中間層)に、体積固有抵抗が1×10〜1×1010Ωcmの範囲の、ポリマー自体の導電性を利用したゴム層を用い、第3層(基層)の体積固有抵抗を1×1010〜1×1016Ωcmの範囲とする提案がなされている(特許文献3参照)。
【0006】
また、他の改善策としては、クロロプレンゴムとEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)とからなるゴム材料からなるベルト材料を用いる方法(特許文献4参照)、ヒドリンゴム等の極性の強いゴム材料を用いて、イオン伝導タイプのゴム材料を用いる提案(特許文献5参照)等がされている。
【0007】
一方、半導電性部材としての帯電ロール、転写ロール、バックアップロール、クリーニングロール、現像スリーブ等の回転ロールにおいても、電気抵抗値均一性、像担持体や中間転写体とのニップ圧力、幅の均一性等が必要であるため、通常、所定の導電性添加物を混入している。また、帯電ロールのゴム基材表層を厚くして、パーティングラインで発生する凹凸の不具合を回避する方法が知られている(特許文献6参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−78029号公報
【特許文献2】特開平08−185068号公報
【特許文献3】特開平08−292648号公報
【特許文献4】特開平09−179414号公報
【特許文献5】特開平07−271204号公報
【特許文献6】特開平04−177377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、転写搬送ベルトの場合、特許文献1に記載されるような2種以上の導電性添加物量を混練すると、導電性フィラーの分散を均一にするために加工方法が限定されるという問題点がある。
また、特許文献2に記載されるように、クロロプレンゴム表面層にナイロン系樹脂をコートすると、表面コート層が硬くなり、ロール形状の支持体を通過する曲率部での転写搬送ベルトの変形に追随することができず、表面層にクラックが発生する場合がある。また、ウレタン系樹脂コートの場合には、トナーが付着し易く汚れやすい等の問題がある。
さらに、転写搬送ベルトとしてカーボンブラック等を分散したクロロプレンゴム等の弾性体を用いると、10Ωcm付近の半導電性の抵抗領域が制御の難しい領域であるために、所望の抵抗値を安定して得ることがほとんどできない。このため、弾性体を用いたベルトの抵抗のバラツキを体積抵抗の常用対数値で1桁以内に安定して製造することは難しい。
【0010】
次に、特許文献3においては、第2層(中間層)のポリマー自体の導電性を利用したゴム層によって、ベルト抵抗値ムラが改善できるとしているが、積層ベルトの抵抗値は、抵抗の高い層に支配されるために、ベルト抵抗値ムラの改善は十分なものではない。
また、特許文献4に記載されているクロロプレンゴムとEPDMの混合物は、ベルト材料の抵抗値の経時変動、ベルト抵抗ムラの改善としては十分なものではない。
そして、特許文献5に記載されるように、カーボンブラック等の導電剤を用いるイオン伝導タイプの場合は、高温高湿と低温低湿との環境で抵抗値が1.5桁以上変化する問題がある。
【0011】
さらに、回転ロールの場合は、特許文献6に記載されるように所定の導電性添加物を混入する際、材料配合に十分な配慮が必要であることに加え、表層の材料が硬い場合、像担持体と帯電ロール間にカーボンファイバーやキャリア等の異物が入り込むことによる浮きが発生し帯電不良となることが考えられる。この場合、導電性弾性体層の表面に、薄肉且つ均一でバリア機能を有する保護層を設けることが考えられるが、保護層表面に半導電性弾性体層からイオン導電剤がブリードし、感光体表面が汚染されてしまうことがある。
【0012】
本発明は、このような従来における諸問題を解決し、以下の課題を達成することを目的とする。
即ち、本発明の目的は、加工ストレスによる抵抗不均一を意識しない使い方が可能な半導電性ベルトを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、加工ストレスによる抵抗不均一を意識しない使い方が可能な半導電性ロールを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記の半導電性ベルトまたは半導電性ロールを用いる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題は、以下の本発明により達成される。即ち、本発明によれば、部分的に表面抵抗値が周囲と異なる異抵抗部を有し、異抵抗部がベルト端部に垂直な方向に対して所定の角度を有することを特徴とする半導電性ベルトが提供される。
ここで、本発明が適用される半導電性ベルトにおいて、異抵抗部の幅は0.5mm〜50mmであり、角度が30度〜60度であることが好ましく、半導電性ベルト中に、異抵抗部が、1個〜10個有することが好ましい。
半導電性ベルトは、ゴム材料または熱可塑性エラストマーと導電性フィラーとを含む半導電性材料を用いることが好ましい。このとき、導電性フィラーとしては、イオン導電性または電子伝導性を有するものを配合することが好ましい。さらに、体積抵抗率が10Ωcm〜1012Ωcmであることが好ましい。
また、本発明が適用される半導電性ベルトは、ベルト部材がゴム材料を含む場合は、さらに1層以上の他の層を有することが好ましい。
【0014】
次に、本発明によれば、周囲に対して抵抗が異なる異抵抗部を有し、異抵抗部が長手方向に対して所定の角度を有することを特徴とする半導電性ロールが提供される。
ここで、本発明が適用される半導電性ロールにおいて、異抵抗部の幅が0.5mm〜30mmであり、角度が15度以上であることが好ましい。
また、異抵抗部の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)と周囲の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)との差の絶対値(ΔlogΩ)が、少なくとも0.2であることが好ましい。
さらに、イオン導電性フィラーまたは電子伝導性フィラーを含み、体積固有抵抗率が10Ωcm〜1012Ωcmである半導電性弾性体層を有することが好ましい。
【0015】
次に、製造方法の観点から本発明を把握すると、本発明によれば、押出成型機を用いて成形する半導電性部材の製造方法であって、押出成型機中に投入した弾性材料と導電性フィラーとを含む半導電性材料を押出成形する際に、周囲に対して抵抗が異なる異抵抗部の表面抵抗値が押し出し方向に対して所定の角度を有するように、押出成型機の口金または芯金を回転しながら押出成形を行うことを特徴とする半導電性部材の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、プレス成型機を用いて成形する半導電性部材の製造方法であって、プレス成型機の熱板面に対して湾曲した形状の型合わせ部を有するプレス金型中に、弾性材料と導電性フィラーとを含む半導電性材料を投入し、所定の圧力下でプレス成形を行うことを特徴とする半導電性部材の製造方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、トナー像形成手段、トナー像を記録材上に転写する転写手段及びトナー像を記録材に定着する定着手段とを有する画像形成装置において、周囲に対して抵抗が異なる異抵抗部の表面抵抗値が回動方向と垂直な方向に対して所定の角度を有する半導電性ベルトまたは半導電性ロールを備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導電性ベルト等によれば、加工ストレスによる抵抗不均一を意識しない使い方が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明が適用される半導電性ベルト及び半導電性ロールは、電子写真用画像形成装置における帯電装置、現像装置、転写装置等に用いる導電部材として広く使用することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを現すものではない。
【0019】
初めに、本実施の形態が適用される半導電性ベルト及び半導電性ロールを使用する画像形成装置の一例について、図面に基づき説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置を説明する図である。図1に示す画像形成装置100は、像担持体10上の電子写真方式による各色成分(本例では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック))のトナー像を、中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)する一次転写装置110、中間転写ベルト20上に転写した重畳トナー画像を記録材に一括転写(二次転写)する二次転写装置120、二次転写した画像を記録材上に定着する定着装置130を備えている。また、図示しないが、各装置(各部)の動作を制御する制御部を有している。中間転写ベルト20は、像担持体10に一定領域で像担持体10の形状に沿うように接触する。
【0020】
像担持体10は、光の照射によって抵抗値が低下する感光層を備え、周囲に像担持体10を帯電する帯電装置11と、帯電された像担持体10上に各色成分(Y、M、C、K)の静電潜像を書込む露光装置12と、像担持体10上に形成する各色成分潜像を各色成分トナーにて可視像化するロータリー型現像装置13と、前述した中間転写ベルト20と、像担持体10上の残留トナーを清掃するクリーニング装置17とを有する。尚、必要に応じて除電装置を配置しても良い。
【0021】
帯電装置11としては、例えば、帯電ロール、コロトロン等の帯電器が挙げられる。また、露光装置12は像担持体10上に光によって像を書込めるものであればよく、例えば、LEDを用いたプリントヘッド、ELを用いたプリントヘッド、レーザビームをポリゴンミラーでスキャンするスキャナ等を適宜選定することができる。
ロータリー型現像装置13は、各色成分トナーを収容する現像器13a〜13dを回転可能に搭載し、例えば、像担持体10上で露光により電位が低下した部分に各色成分トナーを付着するものであれば適宜選定することができる。また、使用するトナーは、形状、粒径等特に制限はなく、像担持体10上の静電潜像上に正確に載るものであればよい。尚、図1においては、ロータリー型現像装置13を用いているが、4台の現像装置を用いてもよい。
さらに、クリーニング装置17は、像担持体10上の残留トナーを清掃するものとして、ブレードクリーニング方式を採用するもの等を適宜選定することができる。
【0022】
図1に示すように、中間転写ベルト20は、4つの張架ロール21〜24に掛け渡され、ロータリー型現像装置13とクリーニング装置17との間に位置する像担持体10面に所定の接触領域だけ密着配置されている。図1に示すように、中間転写ベルト20と像担持体10とは、それぞれ別駆動系で駆動されている。
【0023】
中間転写ベルト20が像担持体10に密着した接触領域の一部には、中間転写ベルト20の裏側から一次転写ロール25が接触配置されており、所定の一次転写バイアスが印加されている。
中間転写ベルト20の張架ロール22に対向した部位には、二次転写ロール30が張架ロール22をバックアップロールとして対向配置されており、例えば、二次転写ロール30に所定の二次転写バイアスが印加され、バックアップロールを兼用する張架ロール22が接地されている。
また、中間転写ベルト20の張架ロール23に対向した部位には、クリーニングロール26が配設されており、このクリーニングロール26には所定のクリーニングバイアスが印加され、張架ロール21が接地されている。
【0024】
次に、画像形成装置100の基本的な作像プロセスについて説明する。画像形成装置100では、図示しない画像読取装置(IIT)等から出力される画像データは、所定の画像処理が施された後、現像器13a〜13dによりY、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、露光装置12に出力される。
像担持体10では、帯電装置11によって表面が帯電された後、露光装置12によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
像担持体10上に形成されたトナー像は、像担持体10と中間転写ベルト20とが当接する一次転写装置110において、中間転写ベルト20上に転写される。
【0025】
トナー像が中間転写ベルト20の表面に転写された後、中間転写ベルト20は移動し、トナー像が二次転写装置120に搬送される。トナー像が二次転写装置120に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写装置120に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール42が回転し、供給トレイ40から所定サイズの記録材が供給される。給紙ロール42により供給された記録材は記録材経路を経て二次転写装置120に到達する。この二次転写装置120に到達する前に、記録材は一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト20の移動タイミングに合わせてレジストロール43が回転することで、記録材の位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0026】
二次転写装置120では、中間転写ベルト20を介して、二次転写ロール30がバックアップロールである張架ロール22に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された記録材41は、中間転写ベルト20と二次転写ロール30との間に挟み込まれる。その際に、図示しない給電ロールからトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール30と張架ロール22との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト20上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール30と張架ロール22とによって押圧される二次転写装置120において、記録材41上に一括して静電転写される。
【0027】
その後、トナー像が静電転写された記録材41は、二次転写ロール30によって中間転写ベルト20から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール30の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト44へと搬送される。搬送ベルト44では、定着装置130における最適な搬送速度に合わせて、記録材41を定着装置130まで搬送する。定着装置130に搬送された記録材41上の未定着トナー像は、定着装置130によって熱および圧力で定着処理を受けることで記録材41上に定着される。そして定着画像が形成された記録材41は、搬送ロール46及び用紙搬出装置47を経て搬出トレイ48へと排出される。
一方、記録材41への転写が終了した後、中間転写ベルト20上に残った残留トナーは、中間転写ベルト20の回動に伴ってクリーニングロール26まで搬送され、中間転写ベルト20上から除去される。
【0028】
次に、本実施の形態において、画像形成装置100に使用する半導電性ベルトについて、中間転写ベルト20を例に挙げて説明する。
図2は、半導電性部材の一例である中間転写ベルト20と二次転写ロール30の構造を説明する図である。図2(a)は、半導電性ベルトの一例である中間転写ベルト20の構造を説明する図である。図2(a)に示すように、中間転写ベルト20は、弾性材からなるベルト基材51と、ベルト基材51の表面に必要に応じて設ける保護離型層52とを備えている。弾性材からなるベルト基材51は、単層で構成してもよく、ベルト基材51上に1層以上の層を設ける複数層で構成してもよい。
ベルト基材51の厚さは、通常、350〜800である。また、保護離型層52の厚さは、通常、1〜20である。
【0029】
ここで、ベルト基材51の材料としては、加硫ゴム、熱可塑性エラストマーが挙げられる。加硫ゴムは、原料ゴムを所定の加硫剤により加硫成形して得られるものである。原料ゴムとしては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)等のジエン系ゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴム(CHR)、ポリウレタンゴム(PUR)、アクリルゴム(ACM,ANM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等の耐熱・耐候性ゴムが挙げられる。これらの中でも、耐熱性ゴムが、比較的剛性が高く、それ自体が半導電性に近い体積抵抗率を有し、成型型内での流動性が良好であるという観点から好ましい。
【0030】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン−ブタジエントリブロック系、ポリオレフィン系等が挙げられる。このような熱可塑性エラストマーを使用すると、リサイクル可能となり、環境上好ましい。尚、ベルト基材51の材料としては、2種以上の材料を混合することもできる。例えば、クロロプレンゴム(CR)とEPDMとのブレンド材料が用いられる。
【0031】
ベルト基材51には、通常、導電性フィラー、絶縁性フィラーを添加し、ベルト基材51の体積抵抗率を調整することができる。導電性フィラーとしては、例えば、LiClO、LiAsF等の金属塩;カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素化合物;酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ、グラファイト、各種4級アンモニウム塩等が挙げられる。絶縁性フィラーとしては、シリカ等が挙げられる。
また、通常、ゴム用配合剤として知られている以下の化合物が使用可能である。例えば、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等、クレー、タルク、シリカ等の充填剤;加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等のゴム用薬品;可塑剤、プロセスオイル、着色剤としての各種顔料等が挙げられる。
【0032】
また、保護離型層52の材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアクリル樹脂等をバインダとし、潤滑性フィラー及び導電性フィラー等のフィラーを分散させたものが挙げられる。ここで、潤滑性フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)等のフッ素樹脂の粉体等が挙げられ、必要に応じて界面活性剤を分散させた形で用いられる。導電性フィラーとしては、電子伝導性フィラー、イオン導電性フィラーが挙げられる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カーボンホワイト、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ケイ素アンチモン、酸化アルミニウムのような金属酸化物等が挙げられる。
【0033】
本実施の形態が適用される半導電性ベルトの一例である中間転写ベルト20は、部分的に表面抵抗値が周囲と比較して異なる異抵抗部を有し、この異抵抗部が中間転写ベルト20端部に垂直な方向に対して所定の角度を有することに特徴を有している。
即ち、半導電性ベルトの製造過程において金型の合わせ目(パーティングライン)や材料の流れの合わせ目(ウエルドライン)によって生じる電気抵抗値が高い部分が、円周方向にねじれていることを特徴とするものである。
ここで、中間転写ベルト20が有する異抵抗部とは、通常、異抵抗部の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)と周囲の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)との差の絶対値(ΔlogΩ:以下、「抵抗ムラ」と記すことがある。)が、少なくとも0.2である部分をいう。
【0034】
これを図に基づき説明する。図3は、半導電性ベルト表面の異抵抗部を説明する図である。図3(a)の従来例に示すように、半導電性ベルトである複写機やプリンター等に使用する中間転写ベルトや用紙搬送ベルトの製造過程において、プレス成形法や押出し成形法等によってベルト面内の局部にパーティングラインやウエルドライン等の欠陥が生じ、この欠陥による半導電剤の配向や密度が部分的に変化し電気抵抗値の不均一帯(異抵抗部)として現れてくる。
図3(b)に示すように、この電気抵抗の不均一帯は、転写プロセス時に転写電圧の急激な変化を生じさせる抵抗異常部帯となる結果、転写電圧が追従できず所望の転写電流が得られないことで転写性能に悪影響を及ぼし画質上には、濃度ムラ不良として現れる。
【0035】
そこで、図3(a)の本実施の形態に示すように、この異抵抗部が半導電性ベルト端部に垂直な方向に対して所定の角度を有することにより、転写電流や転写電圧を均一に保つことが可能になる。その結果、導電部材の抵抗均一性に影響を受けずに画像品質を維持することが可能となる。
【0036】
異抵抗部の、中間転写ベルト20端部に垂直な方向に対する角度は、通常、30〜60度の範囲であることが好ましい。また、異抵抗部の幅は、通常、0.5mm〜50mmの範囲にあることが好ましい。さらに、異抵抗部は、中間転写ベルト20の表面内に、1箇所〜10箇所程度設けられることが好ましい。
また、中間転写ベルト20の体積抵抗率は、10Ωcm〜1012Ωcmの範囲であることが好ましい。
【0037】
ベルト基材51の製造方法は、任意の製造方法を用いることができ、特に限定されないが、通常、以下のように製造する。例えば、原料ゴムと導電性フィラー及び加硫剤を混入分散した原料ゴム組成物を所定の混練機で混練し、押出成型機により押出成形を行う。このとき、押出成型機の口金もしくは芯金を回転しながら押出成形を行うことにより、部分的に電気抵抗値が周囲と比較して異なる異抵抗部が、ベルト端部に垂直な方向に対して所定の角度を有するようになる。
また、プレス成型機を用いてプレス成形する場合は、前述した原料ゴム組成物を、プレス成型機の熱板面に対して湾曲した形状の型合わせ部を有するプレス金型を用いることができる。
尚、半導体ベルトの製造方法は、実施例の欄で詳述する。
【0038】
また、保護離型層52は、通常、樹脂バインダ中に潤滑性フィラー及び導電性フィラーを混入分散させ、ディップコート、スプレーコート、静電塗装、ロールコート等により、所定の方法によりベルト基材51上に塗布するようにすればよい。尚、保護離型層52の表面粗さは、必要に応じて基材を研磨することにより調整する。
【0039】
続いて、本実施の形態において、画像形成装置100に使用する半導電性ロールについて、二次転写ロール30を例に挙げて説明する。尚、本実施の形態が適用される半導電性ロールは、二次転写ロール30に限らず、二次転写ロール30のバックアップロールである張架ロール22、一次転写ロール25、帯電装置11における帯電ロール等にも適用できる。さらに、芯金の周囲に樹脂を被覆成形した現像スリーブにも適用することができる。
【0040】
図2(b)は、半導電性ロールの一例である二次転写ロール30を説明する図である。図2(b)に示すように、二次転写ロール30は、芯金31と、芯金31の周囲に固着した弾性体層32とを有し、必要に応じて設ける表面層33とで構成されている。芯金31は、鉄、SUS等の金属製の円柱棒である。弾性体層32は、カーボンブラック等の導電性フィラーを配合した加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーで形成する円筒ロールである。表面層33は、ポリウレタン樹脂等をバインダとし、潤滑性フィラー及び導電性フィラー等のフィラーを分散したものから形成する。
弾性体層32を形成する加硫ゴムの原料ゴム及び熱可塑性エラストマーは、前述した中間転写ベルト20のベルト基材51を構成する材料と同様なものが挙げられる。導電性フィラーとしては、前述した中間転写ベルト20のベルト基材51または保護離型層52に配合する電子導電性フィラー及びイオン導電性フィラーと同様なものが挙げられる。
【0041】
尚、本実施の形態が適用される二次転写ロール30として、例えば、芯金31の外周面に形成する円筒状の弾性体層32を、発泡樹脂からなる半導電性樹脂層とし、表面層33をポリイミド樹脂またはポリエーテルイミド樹脂製のチューブにより構成することもできる。
【0042】
本実施の形態が適用される半導電性ロールの一例である二次転写ロール30は、製造過程で発生する金型の合わせ目(パーティングライン)や材料の合わせ目(ウエルドライン)で生じる電気抵抗値やゴム硬度に代表される機械強度等の物性変化帯が円周方向にねじれていることに特徴を有している。
特に、半導電性ロールは、部分的に表面抵抗値が異なる帯状の異抵抗部が、円周方向に対して所定の角度を有することを特徴とするものである。
ここで、二次転写ロール30が有する異抵抗部とは、通常、異抵抗部の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)と周囲の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)との差の絶対値(ΔlogΩ:以下、「抵抗ムラ」と記すことがある。)が、少なくとも0.2である部分をいう。
【0043】
これを図に基づき説明する。図4は、半導電性ロール表面の異抵抗部を説明する図である。図4(a)の従来例に示すように、半導電性ロールである複写機やプリンター等に使用する転写ロール等の製造過程において、プレス成形法や押出し成形法等によってロール長手方向にパーティングラインやウエルドライン等の欠陥が生じ、この欠陥による半導電剤の配向や密度が部分的に変化し電気抵抗値の不均一帯(異抵抗部)として現れてくる。
図4(b)に示すように、この電気抵抗の不均一帯は、転写プロセス時に転写電圧の急激な変化を生じさせる抵抗異常部帯となる結果、転写電圧が追従できず所望の転写電流が得られないことで転写性能に悪影響を及ぼし画質上には、濃度ムラ不良として現れる。
そこで、図4(a)の本実施の形態に示すように、この異抵抗部が半導電性ロールの長手方向に対して所定の角度を有することにより、転写電流や転写電圧を均一に保つことが可能になる。その結果、導電部材の抵抗均一性に影響を受けずに画像品質を維持することが可能となる。
【0044】
異抵抗部の、二次転写ロール30の長手方向に対する所定の角度は、通常、15度以上であることが好ましい。また、異抵抗部の幅は、通常、0.5mm〜30mmの範囲あることが好ましい。さらに、異抵抗部は、二次転写ロール30の表面内に、1箇所〜10箇所程度設けられることが好ましい。
また、二次転写ロール30の体積抵抗率は、10Ωcm〜1012Ωcmの範囲であることが好ましい。
【0045】
二次転写ロール30の製造方法は、任意の製造方法を用いることができ、特に限定されないが、通常、以下のように製造する。例えば、原料ゴムと導電性フィラー及び加硫剤を混入分散した原料ゴム組成物を所定の混練機で混練し、押出成型機により押出成形を行う。このとき、押出成型機の口金もしくは芯金を回転しながら押出成形を行うことにより、部分的に電気抵抗値が周囲と比較して異なる異抵抗部が、円周方向に対して所定の角度を有するようになる。即ち、異抵抗部は、半導電性ロールを成形する際に金型の移動速度と回転速度を調節することで、半導電性ロールの円周方向に対して所定の角度を有すように設けることができる。
また、プレス成型機を用いてプレス成形する場合は、前述した原料ゴム組成物を、プレス成型機の熱板面に対して湾曲した形状の型合わせ部を有するプレス金型を用いることができる。
尚、半導体ロールの製造方法は、実施例の欄で詳述する。
【0046】
また、表面層33は、通常、樹脂バインダ中に潤滑性フィラー及び導電性フィラーを混入分散させ、ディップコート、スプレーコート、静電塗装、ロールコート等により、所定の方法により弾性体層32上に塗布するようにすればよい。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
<半導電性ベルトの実施例及び比較例>
(実施例1)
(ゴム組成物)
表1に示す配合のゴム組成物を以下のとおり調製した。ポリマーはニーダーで素練り後、加硫剤及び加硫促進剤以外の他の配合剤を加えて15分間混練し、この混合物に加硫剤及び加硫促進剤を加えて二本ロールにて混練し、未加硫ゴム組成物を調製した。
次に、この未加硫ゴム組成物を、厚さ10mm幅50mmにリボン出しを行い、続いて、押出成型機にて無端ベルトの予備成形を行った。
【0048】
【表1】

【0049】
(予備成形)
図5は、押出成形を説明する図である。図5に示すように、材料投入口から投入したリボン出し形状の未加硫ゴム組成物を、押し出し機内部のスクリューによって金型へ送り込む。この間、押出しから金型に至るまで、バンドヒータ等で約50℃〜100℃の温度制御を施す。ゴム組成物は投入口近傍と比較してゴム粘度が低下するため、狭い口金をスムーズに流れることが可能である。
本実施例では、金型の横からゴム組成物を送り出す直角型の押し出し機を使用した。金型の構造は、無端ベルトが形成可能なようにリング状の溝が施され金型内部でゴム組成物が合わさる工夫がされている。この場合、ウエルドラインは、1ヶ所となる。
押し出し機から吐出された材料は金型ジョイント部を介して金型内部に進行し、円筒状の金型内部で断面A−Aに示すようなウエルド部が生じる。この接合部は、口金まで回転することなく芯金に被覆される。
【0050】
本実施例では、芯金搬送回転装置により芯金を回転しながら押出成形を行うことにより、部分的に電気抵抗値が周囲と比較して異なる異抵抗部が、無端ベルトのラテラル方向に対して斜めに形成する。図6は、無端ベルトのラテラル方向に対する抵抗マッピングを説明する図である。図6(a)に示すように、芯金を回転しないで押出成形を行うと、ウエルドラインに対応するベルト面内部分に異抵抗部が形成される。これに対して、芯金を回転しながら押出成形を行うと、図6(b)に示すように、無端ベルトのラテラル方向に対して異抵抗部が斜めに形成される。
【0051】
(加硫)
予備成形した無端ベルトは、加硫缶にて蒸気加硫(加硫温度160℃、時間30分間)を行い、続いて、円筒研削盤にて表と裏側を研削して厚さ0.5mmに仕上げた。さらに、研磨粉を除去した後、無端ベルト表面にウレタン変性フッ素樹脂(JLY−601ESD:日本アチソン社製帯電防止用コーティング剤)によるスプレーコートを施し、厚さ0.01mmの保護離型層を形成し、半導電性ベルトを調製した。
【0052】
(抵抗測定)
上述した方法で調製した半導電性ベルトの体積抵抗値、抵抗ムラを測定した。体積抵抗値等の測定は、特開平06−118105号公報に記載した測定方法に準じ、500voltの電圧を印加し、回動自在に取り付けた半導電性ベルト内輪の面積を0.05mmまで小さくして、ベルト全体について連続測定した。
尚、本実施例で調製した半導電性ベルトは、金型の構造上、発生したウエルドラインは、非ウエルド部の抵抗値と比較して3倍の抵抗値を示し、異抵抗部は幅15mmで形成された。
【0053】
(画質評価)
この半導電性ベルトを用いた画像形成装置(富士ゼロックスプリンティングシステム株式会社製DocuPrintC525A)により、転写電位ムラ及び画像品質(転写不良)について画質評価を行った。図7は、ベルト2周分の転写電圧モニタを説明する図である。図7(a)に示すように、本実施例で調製した半導電性ベルトは、ベルト周方向の角度0°〜360°において、転写電圧(kV)に特異値が観測されないことが分かる。
体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ(kV)及び画像品質(転写不良)の結果を表2に示す。
【0054】
(実施例2)
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用いて、金型によるプレス成形(加硫温度160℃、時間25分間)を行って半導電性ベルトを成形した。金型は、合わせ部をワイヤーカットにてスパイラル状に割って形成したものを用いた。図8は、金型を説明する断面図である。図8(a)に示すように、ワイヤーカットプレス金型は、内部に芯金を配置し、上型と下型の型合わせをワイヤーカットにてスパイラル状に形成している。
プレス成形にて調製した半導電性ベルトについて、実施例1と同様な手法により、体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ及び画像品質(転写不良)を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
(比較例1)
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用い、実施例1で使用したのと同様な押出成型機を用いて、芯金を回転せずに未加硫ゴム組成物の被覆成形を行い、半導電性ベルトを調製した。
調製した半導電性ベルトは、押出成形の際のウエルドラインに対応するベルト面内に、プロセス方向に対し垂直に幅15mmの範囲で抵抗値が0.5桁高い値の異抵抗部が形成されていた。
尚、図7(b)に示すように、本比較例で調製した半導電性ベルトは、ベルト周方向の角度0°〜720°(2周分)において、180°及び540°(1周目の180゜部)の付近に転写電圧(kV)に特異値が観測された。
このように調製した半導電性ベルトについて、実施例1と同様な手法により、体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ及び画像品質(転写不良)を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
(比較例2)
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用いて、金型によるプレス成形(加硫温度160℃、時間25分間)を行って半導電性ベルトを成形した。
金型は、図8(b)に示すように、一般的な2つ割構造のプレス金型を用いた。図9は、一般的な2つ割構造のプレス金型によるプレス成形の図である。この金型を用いてプレス成形にて調製した半導電性ベルトは、金型合わせ部の抵抗値が大きく高い値を示した。また、金型合わせ部は、ゴム硬度が軟らかく研磨後の凹みが観察された。
プレス成形にて調製した半導電性ベルトについて、実施例1と同様な手法により、体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ及び画像品質(転写不良)を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示す結果から、芯金を回転しながら行う押出成形(実施例1)及びワイヤーカットにて型合わせをスパイラル状に割った金型を用いるプレス成形にて調製した半導電性ベルトは、部分的に表面抵抗値が周囲と比較して高い異抵抗部が、無端ベルトのラテラル方向に対して斜めに形成されるため、転写電位ムラがいずれも低く(0.4kVolt)、その結果、転写電圧の安定性が大幅に改善され、リークや白抜けがない良好な画質が得られた。
これに対して、従来の手法により調製した半導電性ベルト(比較例1、比較例2)は、転写電圧の安定性が改善されない。
【0059】
このように、ベルトの転写ベルトのラテラル方向に発生する異抵抗部を斜めにすることによって、ベルト裏面に配置された転写ロール等で一次転写或いは二次転写に必要な転写電流の安定化が図れる。このことにより、転写性能に優れた転写システムの実現が可能であり高画質な画像形成装置の提供が出来る。
また、ベルトの抵抗ムラを分散化することにより、電源容量を小さくすることが可能となり、電源の小型化、省エネ化が可能となる。
さらに、転写電圧の急激な変化が抑制でき、高電圧発生によるリーク現象を抑制でき、転写部材の損傷を押さえることが可能となり、転写部材の耐久性も向上する。
【0060】
次に、半導電性ロールの実施例及び比較例を示す。
(実施例3):半導電スリーブ
<押出し被覆成形>
表3に示す配合の66ナイロン組成物を二軸混練機で練り込み、径φ2mm、長さ5〜10mmの粒状(ペレット)材料を作製した。次に、この粒状(ペレット)材料を、押出成型機の材料投入口から投入し、バンドヒータ等で熱した単軸スクリューが回転するバレル(シリンダー)内で溶融し、金型内に搬送した。図5は、押出成型機の図である。使用した金型はクロスヘッド型を用い、金型内に搬送された66ナイロン組成物は、ドーナツ形状のマニホールドを介して合流(パーティング)し筒状に形成される。そして、66ナイロン組成物は筒状の形が維持したまま、口金から芯金を被覆成形する。芯金は、必要に応じ熱せられることもあるが、本実施例では常温で使用した。また、芯金は、径φ20mmで、肉厚2mmの中空アルミ材を使用した。尚、本実施例では、パーティングラインが1ヶ所となる構造の金型を選択したが、金型構造上、パーティング部を複数に分けること、または金型ランナーを多分割構造にすることも可能である。
【0061】
芯金の送り速度は、66ナイロン組成物の押出し速度に応じ変更される。芯金の搬送は、金型後方に設けた芯金搬送回転装置を用いて芯金供給速度を制御した。芯金の供給速度精度は、押出し膜厚に影響を与えるので送り精度が必要である。本実施例では、ウエルドラインの直進性を防ぐために送り装置にねじり機構を設け芯金を回転させながら送った。送りと回転の関係は、300mm搬送に対し360度芯金が回転する様に調整した。尚、芯金は、芯金表面を被覆成形後に引き込む場合もある。
【0062】
【表3】

【0063】
<半導電スリーブ調製>
芯金を被覆成形した66ナイロン組成物は、軟化状態にあるため冷却装置によって硬化した。本実施例では、冷却手段とて水シャワー冷却を行った。その後、旋盤にて所定の長さ寸法と外径に整え、被覆厚さ0.8mmに仕上げ、アルミキャップを両端に挿入して半導電スリーブを調製した。
【0064】
(抵抗測定)
前述した半導電性ベルトの場合と同様に、上述した方法で調製した導電スリーブの体積抵抗値、抵抗ムラを、特開平06−118105号公報に記載した測定方法に準じ、100voltの電圧を印加し、導電スリーブ全体について連続測定した。抵抗ムラ測定は、回転角10度毎、軸方向は5mm毎に測定した。
【0065】
(画質評価)
前述した半導電性ベルトの場合と同様に、上述した方法で調製した導電スリーブを用いた画像形成装置(富士ゼロックスプリンティングシステム株式会社製DocuPrintC525A)により、転写電位ムラ、耐久性(クラック)及び画像品質(転写不良)について画質評価を行った。
体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ、耐久性(クラック)及び画像品質(転写不良)の結果を表4に示す。
【0066】
(実施例4):BTR
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用い、実施例1と同様な操作により厚さ10mm幅50mmにリボン出しを行った未加硫ゴム組成物を、押出成型機にて半導電性ロールの予備成形を行った。図10は、ストレートダイタイプの押し出し機を説明する図である。図10に示す押し出し機は、シリンダー内に2本のスクリューを備えた二軸押し出し機である。
【0067】
<予備成形>
リボン出ししたゴム組成物を、図10に示す押し出し機の材料投入口から供給し、二軸スクリューで混練する。シリンダー部は、ヒータによって温度制御してありゴムは軟化しながらストレーナー方向へと進行する。メッシュ状のスクリーンと蜂の巣状のブレーカープレートを通過したゴム組成物は金型内へ進行し、内型と外型とを4個のジョイントで吊った金型内へ進む。ゴム組成物は、4個のジョイントで一旦分流し、ジョイント通過後に合流(パーティング)し筒状へと形を変える。その後、ゴム組成物は口金出口へと進行し、所定の内径と外径を形成する。本実施例では、内径φ8mm、外径φ18mmに予備成形した。
【0068】
<芯金挿入>
ロールの内径精度を向上する目的で、予備成形した未加硫ゴム組成物に芯金を挿入する目的。定常の芯金挿入方法ではウエルドラインに直線性が発生するため、本実施例では、挿入時に未加硫ゴム組成物を回転しながら芯金を挿入した。
【0069】
<加硫>
予備成形したロールは、加硫缶にて蒸気加硫(加硫温度160℃、1時間)を行い、続いて、円筒研削盤にて表と裏側を研削して厚さ0.5mmに仕上げた。さらに、研磨粉を除去した後、無端ベルト表面にウレタン変性フッ素樹脂(JLY−601ESD:日本アチソン社製帯電防止用コーティング剤)によるスプレーコートを施し、厚さ0.01mmの保護離型層を形成し、半導電性ロール(BTR)を調製した。
【0070】
このように調製した半導電性ロールについて、実施例4と同様な手法により、体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ、耐久性(クラック)及び画像品質(転写不良)を測定した。結果を表4に示す。
【0071】
(比較例3)
実施例3で使用した66ナイロン組成物(表3参照)を用い、実施例3で使用したのと同様な押出成型機を用いて、芯金を回転せずに66ナイロン組成物の被覆成形を行い、半導電性スリーブを調製した。調製した半導電性スリーブは、押出成形の際のウエルドラインに対応するベルト面内に、プロセス方向に対し垂直に幅8mmの範囲で抵抗値が0.5桁高い値の異抵抗部が形成されていた。更に、表面にウレタン変性フッ素樹脂(JLY−601ESD:日本アチソン社製帯電防止用コーティング剤)をスプレーコートしたが、ウエルドラインの高抵抗部が顕著に表れた。
実施例3と同様な手法により、体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ、耐久性(クラック)及び画像品質(転写不良)を測定した結果を表4に示す。
【0072】
(比較例4)
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用いて、図8(b)に示す2つ割構造のプレス金型によるプレス成形(加硫温度160℃、時間25分間)を行って半導電性ロールを成形した。この金型を用いてプレス成形にて調製した半導電性ロールは、金型合わせ部の抵抗値が大きく高い値を示した。金型合わせ部は、ゴム硬度が軟らかく研磨後の凹みが観察された。また、耐久性評価では、ウエルド部からクラックが生じた。
プレス成形にて調製した半導電性ロールについて、実施例3と同様な手法により、体積抵抗値の常用対数値(LogΩ)、抵抗ムラ(LogΩ)、転写電位ムラ、耐久性(クラック)及び画像品質(転写不良)を測定した。結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
表4に示す結果から、芯金を回転しながら行う押出成形(実施例3、実施例4)にて調製した半導電性ロールは、部分的に電気抵抗値が周囲と比較して高い異抵抗部が、無端ベルトのラテラル方向に対して斜めに形成されるため、転写電位ムラがいずれも低く(0.4kVolt)、その結果、転写電圧の安定性が大幅に改善され、リークや白抜けがない良好な画質が得られた。また、クラックが生じることがなく耐久性が高いことが分かる
これに対して、従来の手法により調製した半導電性ロール(比較例3、比較例4)は、耐久性が低い傾向にあり、転写電圧の安定性が改善されない。
【0075】
(実施例5):BCR
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用いて、図8に示すワイヤーカットプレス金型によるプレス成形(加硫温度160℃、時間25分間)を行い、クラック発生が生じない半導電性ロール(BCR)が得られた。金型構造が複雑となるが充分な効果が得られた。
【0076】
(実施例6):発泡BTR+TUBE
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用いて、押出成形法で口金を回転させながらゴム組成物を注入し、加硫缶にて蒸気加硫を行い、続いて、円筒研削盤にて外径寸法を整えた研磨後の半導電性ロールにポリイミドチューブを被覆し転写ロールとして用いた。ウエルドラインをねじった押出成形を行った基材を用いた場合は、クリーニングが充分行われ偏摩耗も生じなかった。尚、回転させないゴム組成物は、転写ロール表面をクリーニングする金属スクレーパによる偏摩耗が生じクリーニング不良が発生した。尚、芯金を回転しながらゴム組成物を押出ししても同様の効果が得られると考える。
【0077】
(実施例7)
実施例1で使用したゴム組成物(表1参照)を用いて、押出成形した未加硫ゴムを加硫缶にて加硫した後、加硫接着剤を塗布した芯金を加硫済みゴムに回転しながら軽圧入し、その後、オーブンにて160度、15分間放置して半導電性ロールを調製した。
【0078】
このように、半導電性ベルトと同様に、半導電性ロールのラテラル方向に発生する異抵抗部を斜めにすることによって、転写性能に優れた転写システムの実現が可能であり高画質な画像形成装置の提供が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置を説明する図である。
【図2】半導電性部材の一例である中間転写ベルトと二次転写ロールの構造を説明する図である。
【図3】半導電性ベルト表面の異抵抗部を説明する図である。
【図4】半導電性ロール表面の異抵抗部を説明する図である。
【図5】押出成型を説明する図である。
【図6】無端ベルトのラテラル方向に対する抵抗マッピングを説明する図である。
【図7】転写電圧モニタを説明する図である。
【図8】金型を説明する断面図である。
【図9】一般的な2つ割構造のプレス金型によるプレス成形の図である。
【図10】ストレートダイタイプの押し出し機を説明する図である。
【符号の説明】
【0080】
10…像担持体、11…帯電装置、12…露光装置、13…ロータリー型現像装置、17…クリーニング装置、20…中間転写ベルト、21,22,23,24…張架ロール、25…一次転写ロール、30…二次転写ロール、31…芯金、32…弾性体層、33…表面層、40…供給トレイ、41…記録材、42…給紙ロール、43…レジストロール、44…搬送ベルト、46…搬送ロール、47…用紙搬出装置、48…搬出トレイ、51…ベルト基材、52…保護離型層、100…画像形成装置、110…一次転写装置、120…二次転写装置、130…定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に表面抵抗値が周囲と異なる異抵抗部を有し、
前記異抵抗部がベルト端部に垂直な方向に対して所定の角度を有することを特徴とする半導電性ベルト。
【請求項2】
前記異抵抗部の幅が0.5mm〜50mmであり、前記角度が30度〜60度であることを特徴とする請求項1記載の半導電性ベルト。
【請求項3】
部分的に表面抵抗値が周囲に対して抵抗が異なる異抵抗部を有し、
前記異抵抗部が長手方向に対して所定の角度を有することを特徴とする半導電性ロール。
【請求項4】
前記異抵抗部の幅が0.5mm〜30mmであり、前記角度が15度以上であることを特徴とする請求項3記載の半導電性ロール。
【請求項5】
前記異抵抗部の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)と周囲の表面抵抗値の常用対数値(logΩ)との差の絶対値(ΔlogΩ)が、少なくとも0.2であることを特徴とする請求項3記載の半導電性ロール。
【請求項6】
押出成型機を用いて成形する半導電性部材の製造方法であって、
前記押出成型機中に投入した弾性材料と導電性フィラーとを含む半導電性材料を押出成形する際に、表面抵抗値が周囲に対して抵抗が異なる異抵抗部が押し出し方向に対して所定の角度を有するように、当該押出成型機の口金または芯金を回転しながら押出成形を行うことを特徴とする半導電性部材の製造方法。
【請求項7】
プレス成型機を用いて成形する半導電性部材の製造方法であって、
前記プレス成型機の熱板面に対して湾曲した形状の型合わせ部を有するプレス金型中に、弾性材料と導電性フィラーとを含む半導電性材料を投入し、所定の圧力下でプレス成形を行うことを特徴とする半導電性部材の製造方法。
【請求項8】
トナー像形成手段、トナー像を記録材上に転写する転写手段及び当該トナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有する画像形成装置において、
部分的に表面抵抗値が周囲に対して抵抗が異なる異抵抗部が回動方向と垂直な方向に対して所定の角度を有する半導電性ベルトまたは半導電性ロールを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−206473(P2007−206473A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26588(P2006−26588)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】