説明

印刷制御装置および印刷制御プログラム

【課題】画像のバンディングを抑制することができる印刷制御装置および印刷制御プログラムを提供すること。
【解決手段】本実施形態の印刷処理によれば、グレースケールの画像を構成するKのドットについては、3種類のドットのいずれかが決定される。一方、有彩色であるC,M,Yのドットは、大ドットとして形成されやすく、中ドット、小ドットとして形成され難い。換言すれば、グレースケールの画像を表現するC,M,Yのドットを比較的大きいドットで表現できる。グレースケールの画像をC,M,Yのドットを用いて表現することでK単色のドットのみで画像を構成する場合よりも着弾位置がばらつき、バンディング抑制効果が得られる上、比較的にじみやすい大サイズのドットが多く使用されることにより、一層のバンディング抑制効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置および印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドに形成されたノズルからインク滴を吐出して記録用紙上にドットを形成することにより、画像を印刷するインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタにおいて、シアン、マゼンタ、イエローの有彩色のインクと、無彩色のブラックのインクとが用いられる場合は、フルカラーの画像を印刷可能である。グレー色はブラックのインクで表現することもできるが、シアン、マゼンタ、イエローの組み合わせにより表現することも可能であるため、特許文献1には、入力された輝度データがグレーデータである場合は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなど、全色のインクを用いて画像の印刷を行うカラー画像印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−2025203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなインクジェットプリンタにおいて、製造時のインクヘッドの取り付け誤差などが原因でインク滴の着弾位置が目標点からずれると、記録用紙上に記録される画像にバンディングと呼ばれる不良が発生し画像品質を低下させてしまうという問題点があった。バンディングとは、隣接するドット間の距離が不均一であるために、隣接するドット間の距離が大きい部分に発生するスジ(記録用紙の白い部分)のことである。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、画像のバンディングを抑制することができる印刷制御装置および印刷制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載の印刷制御装置は、大きさが互いに異なるk種類のドットを形成可能なインクジェットプリンタに、印刷を実行させるものであって、前記インクジェットプリンタに印刷させる画像がグレースケールであるかを判断する印刷種類判断手段と、グレースケールであると判断される場合、前記インクジェットプリンタで使用可能な有彩色の組み合わせを利用してグレー色を表現する画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データに含まれる、各画素の無彩色成分を表す無彩色成分値と、有彩色成分を表す有彩色成分値とを、色毎にハーフトーン処理することにより、前記グレースケールの画像を構成する各ドットの種類を決定するハーフトーン処理手段とを備え、前記ハーフトーン処理手段は、前記無彩色成分値をn値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する無彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのいずれかを決定する無彩色処理手段と(ただし、n=k+1)、前記有彩色成分値をm値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する有彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのうち、予め定められた(m−1)種類のドットのいずれかを決定する有彩色処理手段とを備え(ただしk>m−1)、前記(m−1)種類のドットは、前記k種類のドットのうち、最大サイズのドットを含み、最小サイズのドットを含まない。
【0007】
請求項2記載の印刷制御装置は、請求項1記載の印刷制御装置において、前記有彩色処理手段は、さらに、各画素の前記有彩色成分値が、その有彩色について予め定められた閾値以上であるかを判断する有彩色成分値判断手段と、前記閾値未満である有彩色成分値を前記ハーフトーン処理によりn値化し、前記ドットを形成しないことを表す値、または前記k種類のドットのいずれかに対応する値に変換する淡色処理手段と、前記閾値以上である有彩色成分値を前記ハーフトーン処理によりm値化し、前記ドットを形成しないことを表す値、または前記(m−1)種類のドットのいずれかに対応する値に変換する濃色処理手段とを備える。
【0008】
請求項3記載の印刷制御装置は、請求項2記載の印刷制御装置において、前記有彩色成分値の組み合わせを利用してグレー色を表現するグレースケールのパッチデータとして予め準備された、濃淡が互いに異なる複数種類のパッチデータを、前記ハーフトーン処理によりn値化した結果に基づく第1種のパッチと、前記ハーフトーン処理によりm値化した結果に基づく第2種のパッチとを、前記インクジェットプリンタに印刷させるパッチ形成手段と、前記複数種類のパッチのうち、ユーザにより選択されたパッチに対応するパッチデータの各有彩色成分値を、各有彩色の閾値として設定する閾値設定手段とを備える。
【0009】
請求項4記載の印刷制御プログラムは、大きさが互いに異なるk種類のドットを形成可能なインクジェットプリンタに、印刷を実行させるためのプログラムであって、前記インクジェットプリンタに印刷させる画像がグレースケールであるかを判断する印刷種類判断手段と、グレースケールであると判断される場合、前記インクジェットプリンタで使用可能な有彩色の組み合わせを利用してグレー色を表現する画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データに含まれる、各画素の無彩色成分を表す無彩色成分値と、有彩色成分を表す有彩色成分値とを、色毎にハーフトーン処理することにより、前記グレースケールの画像を構成する各ドットの種類を決定するハーフトーン処理手段としてコンピュータを機能させ、前記ハーフトーン処理手段は、前記無彩色成分値をn値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する無彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのいずれかを決定する無彩色処理手段と(ただし、n=k+1)、前記有彩色成分値をm値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する有彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのうち、予め定められた(m−1)種類のドットのいずれかを決定する有彩色処理手段とを備え(ただしk>m−1)、前記(m−1)種類のドットは、前記k種類のドットのうち、最大サイズのドットを含み、最小サイズのドットを含まない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の印刷制御装置によれば、無彩色成分値はn値化されるので、グレースケールの画像を構成する無彩色の各ドットについては、k種類のドットのいずれかが決定される。一方、有彩色成分値はm値化されるので、グレースケールの画像を構成する有彩色の各ドットについては、k種類のドットのうち、予め定められた(m−1)種類のドットのいずれかが決定される。そして、前記(m−1)種類のドットは、前記k種類のドットのうち、最大サイズのドットを含み、最小サイズのドットを含まない。よって、グレー色を表現するための有彩色のドットは、最大サイズのドットとして形成されやすく、最小サイズのドットとして形成され難い。換言すれば、グレースケールの画像を表現する有彩色のドットを比較的大きいドットで表現できる。グレースケールの画像を有彩色のドットを用いて表現することで単色ドットのみで画像を構成する場合よりも着弾位置がばらつき、バンディング抑制効果が得られる上、比較的にじみやすい最大サイズのドットが多く使用されることにより、一層のバンディング抑制効果を得ることができるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の印刷制御装置によれば、請求項1記載の印刷制御装置の奏する効果に加え、閾値未満である有彩色成分値はn値化され、ドットを形成しないことを表す値、またk種類のドットのいずれかに対応する値に変換されるので、淡いグレー色は、多種類の大きさのドットから構成され、画像の粒状感を低減できるという効果がある。一方、閾値以上である有彩色成分値はm値化され、ドットを形成しないことを表す値、または(m−1)種類のドットのいずれかに対応する値に変換されるので、濃いグレー色は、比較的にじみやすい最大サイズのドットが多く使用されることにより、バンディング抑制効果を得ることができる。画像のうち、淡いグレー色を構成する部分は、バンディングよりも粒状感が画質を低下させやすく、反対に、濃いグレー色を構成する部分は、粒状感よりもバンディングが問題となりやすいのである。
【0012】
請求項3記載の印刷制御装置によれば、請求項2記載の印刷制御装置の奏する効果に加え、濃淡が互いに異なる複数種類のパッチデータをハーフトーン処理によりn値化した結果に基づく第1種のパッチと、ハーフトーン処理によりm値化した結果に基づく第2種のパッチとのうち、ユーザにより選択されたパッチに対応するパッチデータの各有彩色成分値が、各有彩色の閾値として設定されるので、パッチを目視した結果に基づく適切な閾値を設定することができるという効果がある。すなわち、第1種のパッチは多種類の大きさのドットから構成されるので、粒状感は抑制されるものの、濃い色のパッチにおいて、バンディングが問題となりやすい。一方、第2種のパッチは最大サイズのドットが多く使用されているので、バンディングが抑制されるものの、薄い色のパッチにおいて、粒状感が問題となりやすい。よって、ユーザは、第1種のパッチと、第2種のパッチとを視認して、粒状感およびバンディングが共に抑制されているパッチを選択する。このようにすれば、有彩色成分値をn値化してもm値化しても画質をそれほど低下させない値を、閾値として決定することができる。
【0013】
請求項4記載の印刷制御プログラムによれば、請求項1記載の印刷制御装置と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態である制御部を搭載したプリンタの部分断面図である。
【図2】(a)は、インク吐出面を示すインクヘッドの下面図であり、(b)は、ノズルユニットを示す拡大図であり、(c)は、ノズルユニットにおけるノズルの配置の規則を説明する図である。
【図3】インクヘッドの取り付け角度と、形成されるドット列との関係を示す図である。
【図4】プリンタの電気的構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】プリンタの制御部が実行する印刷処理を示すフローチャートである。
【図6】GCRテーブルに記憶される関係を表すグラフである。
【図7】プリンタの制御部が実行する閾値判定処理を示すフローチャートである。
【図8】閾値判定チャート画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の印刷制御装置の実施形態である制御部10を搭載したプリンタ1の部分断面図である。プリンタ1は、ラインヘッド型のインクジェットプリンタであり、バンディングが抑制された画像を記録用紙Pに印刷できるように構成されている。
【0016】
図1に示すように、プリンタ1には、インク色ごとに設けられたインクヘッド2と、インクヘッド2へ記録用紙Pを搬送する搬送機構21とが配置されている。給紙ユニット30に積載されている記録用紙Pは、プリンタ1の内部を図1の矢印で示す搬送方向Aに沿って搬送され、所望の画像が印刷された後に、排紙部90へ排出されるように構成されている。
【0017】
給紙ユニット30は、複数枚の記録用紙Pを収納することが可能な給紙トレイ31と、給紙ローラ32とを有している。給紙ローラ32は、給紙トレイ31に積層して収納された複数の記録用紙Pのうち、最も上方にある記録用紙Pを搬送機構21へ1枚ずつ送り出す。
【0018】
給紙ユニット30と搬送機構21との間には、記録用紙Pの搬送経路に沿って、2組の送りローラ対33a,33b,34a,34bが配置されている。給紙ユニット30から送り出された記録用紙Pは、送りローラ対33a,33b,34a,34bによって案内されながら、搬送機構21へと送り出される。
【0019】
搬送機構21は、エンドレスの搬送ベルト8と、2つのベルトローラ6,7とを有している。搬送ベルト8は、ベルトローラ6,7に巻き掛けられている。ベルトローラ7には、搬送モータ22(図4)が接続されており、この搬送モータ22からの回転力によってベルトローラ7が図1中矢印B方向に回転する。このとき、搬送ベルト8が記録用紙Pを搬送方向Aに搬送するように走行し、従動ローラであるベルトローラ6も回転する。
【0020】
また、搬送ベルト8を挟んでベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット30から送られてきた記録用紙Pを、搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付けて、その全体を搬送ベルト8の外周面8aに保持させるものである。搬送ベルト8上の記録用紙Pは、インクヘッド2へ搬送される。
【0021】
インクヘッド2は、4つのインク色C,M,Y,K(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)ごとに設けられており、それぞれ搬送ベルト8の幅方向に沿って延在し、枠体のフレーム3に支持されて、記録用紙Pの搬送方向Aに併設されている。各インクヘッド2は、それぞれチューブを介してインク貯留部60と接続されている。インク貯留部60には、4つのインクを個別に貯留するインクカートリッジ61が設けられており、各インクヘッド2には、それぞれ対応する色のインクが供給されている。
【0022】
4つの各インクヘッド2のインク吐出面2aに対向する搬送ベルト8のループ内には、略直方体形状のプラテン19が配置されている。プラテン19の上面は、搬送ベルト8の内周面と接触しており、内周側から搬送ベルト8を支持している。
【0023】
搬送ベルト8に保持されている記録用紙Pが、4つの各インクヘッド2を順番に通過することで記録用紙Pに画像が形成される。各インクヘッド2を通過する際には、各インクヘッド2のインク吐出面2aに形成されたノズル2c(図2)から吐出したインク滴をドットとして記録用紙Pに着弾させることにより、搬送方向Aに直交する方向を長手方向とする1列分のドット列を形成する。そして、搬送ベルト8による1列分の搬送と、各インクヘッド2による1列分のドット列の形成とが繰り返されて、記録用紙Pの搬送方向Aに多数のドット列を形成することにより、画像を印刷する。画像が印刷された記録用紙Pは、搬送機構21により更に下流側へと搬送される。
【0024】
ベルトローラ7の上方には、拍車ローラ5が配置されている。搬送機構21によって搬送されてきた記録用紙Pは、拍車ローラ5と搬送ベルト8との間に挟持されることによって、さらに搬送力が付与され、搬送機構21から排出される。搬送機構21によって搬送方向Aに搬送されてきた記録用紙Pは、図示しない剥離部材によって外周面8aから剥離された後、排出機構90に搬送される。排出機構90は、一対のガイド91a,91b間に搬送されてきた記録用紙Pを、2組の送りローラ対92a,92b,93a,93bによって、上方に搬送し、排紙する。
【0025】
図2(a)は、インク吐出面2aを示すインクヘッド2の下面図である。図2(a)に示すように、各インクヘッド2は長尺の構成を有し、台形のノズルユニット2bが、各インクヘッド2の長手方向に一列に配列されている。なお、以下の説明において、インクヘッド2の長手方向をX方向と称し、X方向に直交する方向をY方向と称する。また、理想的には、インクヘッド2は、そのX方向が記録用紙Pの搬送方向A(図1)に対して垂直になるように、枠体のフレーム3に取り付けられる。
【0026】
図2(b)は、ノズルユニット2bを示す拡大図であり、図2(c)は、ノズルユニット2bにおけるノズル2cの配置の規則を説明する図である。図2(b),(c)に示すように、ノズルユニット2bには、多数のノズル2cが形成されている。本実施形態のインクヘッド2は、各ノズル2cから吐出されるインク滴量を、図示しないピエゾアクチュエータの電圧制御により、調整可能なピエゾ方式のインクヘッドであり、本実施形態の場合、各ノズル2cから、大きさが互いに異なる3種類のドット(大ドット、中ドット、小ドット)を、記録用紙P上に形成可能であるものとして説明する。
【0027】
多数のノズル2cは、X方向のノズル間隔が一定の距離(図2(c)に示す例ではx)となるように設けられている。一方、各ノズル2cのY方向位置は、不揃いに設けられる。したがって、インクヘッド2に設けられた全ノズル2cから同じタイミングでインクを吐出すると、記録用紙Pに形成されるドットは、搬送方向Aの位置がばらばらになる。換言すれば一列のドット列を形成できない。そこで、本実施形態においては、各ノズル2cのY方向位置に応じて、各ノズルのインク吐出タイミングを制御部10によって制御することにより、記録用紙P上において、搬送方向Aに垂直な方向を長手方向とするドット列40(図3)を形成することができる。すなわち、ノズル2cのうち、搬送方向Aの上流側に位置するノズル2cについては早めにインク滴を吐出させてドットを形成させ、そのドットが形成された記録用紙Pが、搬送方向Aの下流側に位置するノズル2cの直下まで搬送されてから、当該ノズル2cからインク滴を吐出させることにより、搬送方向Aに垂直な一列のドット列40を、記録用紙Pに形成させるのである。
【0028】
さらに、本実施形態のインクヘッド2においては、各ノズル2cのY方向位置が、搬送方向Aの上流側と下流側とに交互に入れ替わるように配置されている。より具体的には、k番目のノズル2c(k)に対してk+1番目のノズル2c(k+1)が、搬送方向Aの上流側(図2(c)に示す例では紙面上側)にある場合、k+1番目のノズル2c(k+1)に対しk+2番目のノズル2c(k+2)は、搬送方向Aの下流側(図2(c)に示す例では紙面下側)にある。
【0029】
すなわち、Y方向におけるある1点を原点とし、搬送方向Aの上流側を正、搬送方向Aの下流側を負とするY座標を用いて、k番目のノズル2c(k)に対するk+1番目のノズル2c(k+1)のY方向の位置の変化を表す場合、その変化(図2(c)に示す例ではy(k))の向きが正であるとする。その場合、k+1番目のノズル2c(k+1)に対するk+2番目のノズル2c(k+2)のY方向の位置の変化の向きが負となるように、各ノズル2cのY方向位置が定められている。換言すれば、インクヘッド2においてX方向に隣り合う一対のノズル2c間のY方向の位置の変化を全て求めると、その変化の向きが、互い違いになるように、ノズル2cが設けられる。
【0030】
ノズル2cをこのように配置することで、各ノズル2bに個別にインクを供給するための流路の形成が容易となる。なお、ノズルユニット2bには、高密度で多数のノズル2cが形成されるが、全てのノズル2cを図示すると図面が煩雑になるため、図2(b)においてはノズル2cを模式的に図示している。
【0031】
図3は、インクヘッド2の取り付け角度と、形成されるドット列との関係を示す図である。図3(a)は、インクヘッド2のX方向(長手方向)が、搬送方向Aに対して垂直な方向となる理想的な取り付け角度で、フレーム3(図1)にインクヘッド2が取り付けられた状態と、そのインクヘッド2におけるノズル2cの配置と、インクヘッド2により形成するドット列40との関係を示す図である。なお、説明の都合上、以降の説明においては、ドット列40の長手方向を、B方向と称する。このB方向は、搬送方向Aに直交する方向でもある。
【0032】
図3(a)に示すように、インクヘッド2が理想的な取り付け角度で取り付けられる場合、インクヘッド2のX方向と、記録用紙Pに形成されるドット列40の長手方向(B方向)とが平行であるから、ドット列40におけるドット間の距離は、ノズル2cのX方向の間隔に等しくなる。したがって、インクヘッド2において、X方向における間隔が一定となるようにノズル2cが形成されていれば、記録用紙P上に形成されるドット列40におけるドット間隔は、各ノズル2cのX方向の間隔に等しく一定となり、画像のバンディングの問題は発生しにくい。
【0033】
一方、図3(b)は、取り付け角度の誤差により、インクヘッド2のX方向が、搬送方向Aに対して垂直な方向からずれた状態で、フレーム3にインクヘッド2が取り付けられた状態と、そのインクヘッド2におけるノズル2cの配置と、インクヘッド2により形成するドット列40との関係を示す図である。この場合、インクヘッド2のX方向は、記録用紙Pに形成するドット列40の長手方向(B方向)に対して傾いている。よって、インクヘッド2において、X方向におけるノズル2cの間隔が一定であったとしても、ドット列40を構成する各ドット間の距離が不均一となり、ドット列40においてドットの疎密が発生する。
【0034】
すなわち、インクヘッド2cがB方向に対して傾いているため、ドット列40におけるドット間の距離は、各ノズル2cのX方向距離(間隔)のB方向成分と、各ノズル2cのY方向距離のB方向成分とを加算した値に相当する。図2を参照して説明したように、各ノズル2cのY方向位置は不揃いであるため、各ノズルのY方向の間隔のB方向成分は、ノズル2c間毎に異なり、その結果、ドット列40において各ドット間の距離が様々にばらつき、図3(b)に示すように、ドットの疎密が発生する。
【0035】
このようなドット疎密は、同じインクヘッド2で形成される全てのドット列40において表れる。したがって、ドット列40のある位置においてドット間の距離が大きく、ドットの間に隙間が生じている場合、そのドットの隙間が搬送方向Aに連なって、搬送方向Aに延びるスジ(バンディング)となって表れるおそれがある。
【0036】
よって、本実施形態のプリンタ1は、所定の条件を満たす場合、比較的にじみやすい大ドットを多く使用して画像を形成することにより、画像のバンディングを抑制するように構成されている。
【0037】
図4は、プリンタ1の電気的構成を模式的に示すブロック図である。図4に示すように、プリンタ1は、制御部10、インターフェイス16、インクヘッド2、及び搬送モータ22を主に有している。
【0038】
制御部10は、CPU11、ROM12、RAM13、フラッシュメモリ14、及びASIC15を備え、これらは、バスラインを介して互いに接続されている。また、インターフェイス16、インクヘッド2、搬送モータ22は、ASIC15を介して互いに接続されている。
【0039】
CPU11は、ROM12やフラッシュメモリ14に記憶される固定値やプログラムに従って、プリンタ1が有している各機能の制御や、ASIC15と接続された各部を制御するものである。ROM12は、プリンタ1で実行される制御プログラム12a、ルックアップテーブル12b、GCRテーブル12cなどを格納した書換不能なメモリである。制御プログラム12aは、図5,図7のフローチャートに示す処理をCPU11に実行させる。ルックアップテーブル12bは、R(赤),G(緑),B(青)の各色の輝度値を、C,M,Y,Kの各色の成分値に色変換するための予め定められた対応関係を保持するテーブルである。GCRテーブル12cは、Kの成分値の一部を、C,M,Yの成分値に置換するGCR処理において用いられるテーブルであるが、詳細は図5,図6を参照して後述する。
【0040】
RAM13は、書換可能な揮発性のメモリであり、プリンタ1の各操作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。フラッシュメモリ14は書換可能な不揮発性のメモリであり、2値/4値切替閾値メモリ14aを備える。2値/4値切替閾値メモリ14aは、有彩色成分値であるC成分値、M成分値、Y成分値をハーフトーン処理する際に、各成分値を2値化するか4値化するかのいずれかに振り分けるために色毎および紙種毎に定められた切替閾値を記憶するメモリである。この切替閾値は、図7を参照して後述する閾値判定処理により決定され、2値/4値切替閾値メモリ14aに設定される。
【0041】
図5は、プリンタ1の制御部10が実行する印刷処理を示すフローチャートである。この処理は、例えばパーソナルコンピュータなどの外部装置から印刷対象の画像データが入力された場合に実行される。なお、この処理の開始前に、ユーザは、例えば、パーソナルコンピュータにおいて、プリンタドライバのGUI(Graphical User Interface)から、グレースケール印刷をするかカラー印刷を行うか、記録用紙Pの紙種など、各種の設定を入力しているものとして説明する。
【0042】
まず、制御部10のCPU11は、プリンタ1に印刷させる画像がグレースケールであるか否かを判断する(S502)。例えば、外部装置から入力される画像データがモニタの表色系であるR,G,Bの各色の輝度を画素毎に規定するデータである場合、全画素において、Rの輝度=Gの輝度=Bの輝度の関係が成立している場合、プリンタ1に印刷させる画像がグレースケールであるとして、S502の判断が肯定される(S502:Yes)。または、印刷の実行を指示したユーザが、グレースケール印刷を設定した場合は、Rの輝度=Gの輝度=Bの輝度の関係が成立していなくても、プリンタ1に印刷させる画像がグレースケールであるとして、S502の判断が肯定される(S502:Yes)。
【0043】
グレースケールではないと判断される場合(S502:No)、CPU11は通常のカラー印刷処理を実行し(S505)、処理を終了する。
【0044】
一方、グレースケールであると判断される場合(S502:Yes)、印刷対象の画像データをグレースケール印刷用の画像データに変換する処理を行う。具体的には、まず、CPU11は、画像データに規定された画素毎のR,G,Bの各色の輝度値を、C,M,Y,Kの各色の成分値に色変換する色変換処理(S506)を実行する。この処理は、ルックアップテーブル12b(図4)に予め定められた関係を用いて実行される公知の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
次に、CPU11は、GCRテーブル12cに記憶された関係に基づいて、Kの成分値の一部を、C,M,Yの成分値に置換するGCR処理を実行する(S508)。
【0046】
図6は、GCRテーブル12cに記憶される関係を表すグラフである。図6に示すグラフは、入力されるKの成分値(Kの入力値)を横軸にとり、GCR処理により出力される各色の成分値(各色の出力値)を縦軸にとって、それらの関係を示す図である。図6に示すように、GCRテーブル12cに記憶された関係によれば、入力されるKの成分値が0から128までの間は、出力されるKの成分値は0とされる。すなわち、入力されるKの成分値が128以下の場合は、淡いグレー色を表現するので、K成分値を全て有彩色の成分値に置き換え、Kのドットを使わず、有彩色のドットのみでグレー色を表現するのである。図6に示すように、GCRテーブル12cに記憶された関係によれば、入力されるKの成分値が128以下の場合は、出力される各有彩色成分値は、入力されるKの成分値に比例して線形的に増大するので、表現すべきグレー色が濃くなるほど、より多くの有彩色のドットを用いて、濃いグレー色を表現することができる。
【0047】
一方、入力されるKの成分値が128より大きい場合は、入力されるK成分値が大きいほど、出力するK成分値を増大させ、逆にC,M,Yの各色の成分値は線形的に低減される。すなわち、GCR処理前のKの成分値が128より大きい場合は、濃いグレー色を表現するので、Kのドットを用いてグレー色を表現すると共に、Kのドットでグレー色を表現することにより、不要となる有彩色のドットの数を低減させるのである。
【0048】
このようなGCRテーブル12cに記憶された関係を用いて、色変換後の画像データをGCR処理することにより、有彩色であるC,M,Yの組み合わせを利用してグレー色を表現する画像データを取得することができる。
【0049】
図5に戻り説明する。次にプリンタ1の個体差や経時変化を補正するためのキャリブレーションを実行し(S510)、C,M,Y,Kの各成分値の合計が規定値を超えないように処理をするインク総量規制処理を行う(S512)。なお、キャリブレーション、およびインク総量規制処理は公知の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
S514以降の処理では、画像データに含まれる各画素を順番に注目画素として抽出し、その注目画素のC成分値と、M成分値と、Y成分値と、K成分値とを、色毎にハーフトーン処理することにより、各色についてドットの種類(大ドット、中ドット、小ドット)を決定する。
【0051】
まず、CPU11は、注目画素のC成分値が、Cについて予め定められた切替閾値以上であるか否かを判断する(S514)。なお、切替閾値は、2値/4値切替閾値メモリ14a(図4)に予め記憶されている。印刷処理の開始前にユーザにより紙種が入力されている場合には、入力された紙種に対応した切替閾値を、2値/4値切替閾値メモリ14aから読み出し、注目画素のC成分値と比較する。
【0052】
C成分値が切替閾値以上であると判断される場合(S514:Yes)、例えば誤差拡散アルゴリズムにより、C成分値を2値化処理する(S516)。2値化処理前のC成分値が、0から255までのいずれかの値である場合、その成分値を、例えば閾値である128と比較し、閾値以下であればドット無し(ドットを形成しないことを表す値)に変換し、閾値より大きければ、大ドット(大ドットの形成を表す値)に変換する。すなわち、C成分値が2値化処理される場合、ドットが形成されるとすれば、決定され得るのは大ドット1種類(m−1種類の一例)のみであり、中ドットまたは小ドットが、形成すべきドットとして決定されることはない。なお、2値化処理において誤差拡散アルゴリズムを採用する場合、2値化の際に発生する誤差を周辺画素に分配し誤差を反映した上で各画素の2値化処理を行うが、誤差拡散アルゴリズム自体は公知のアルゴリズムであるため、詳細な説明は省略する。
【0053】
一方、C成分値が切替閾値未満であると判断される場合(S514:No)、例えば誤差拡散アルゴリズムにより、C成分値を4値化処理する(S518)。4値化処理前のC成分値が、0から255までのいずれかの値である場合、その成分値を、例えば第1閾値である64と、第2閾値である128と、第3閾値である192と比較し、第1閾値以下であればドット無しに変換し、第1閾値より大きく第2閾値以下であれば、小ドット(小ドットの形成を表す値)に変換し、第2閾値より大きく第3閾値以下であれば、中ドット(中ドットの形成を表す値)に変換し、第3閾値より大きければ、大ドットに変換する。すなわち、C成分値が4値化処理される場合には、ドット無し、または大ドット、中ドット、小ドットの3種類(k種類の一例)のドットのいずれかに対応する値に変換される。なお、4値化処理において誤差拡散アルゴリズムを採用する場合は、2値化処理の場合と同様に、4値化の際に発生する誤差が周辺画素に分配されるが、詳細な説明は省略する。
【0054】
次に、CPU11は、注目画素のM成分値が、Mについて予め定められた切替閾値以上であるか否かを判断する(S520)。M成分値が切替閾値以上であると判断される場合(S520:Yes)、例えば誤差拡散アルゴリズムにより、M成分値を2値化処理し(S522)、ドット無し又は大ドットのいずれかに変換する。なお、M成分値の2値化処理の具体的内容は、C成分値の2値化処理(S516)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
一方、M成分値が切替閾値未満であると判断される場合(S520:No)、例えば誤差拡散アルゴリズムにより、M成分値を4値化処理し(S524)、ドット無し、または大ドット、中ドット、小ドットの3種類(k種類の一例)のドットのいずれかに対応する値に変換する。M成分値の4値化処理の具体的内容は、C成分値の4値化処理(S518)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0056】
次に、CPU11は、注目画素のY成分値が、Yについて予め定められた切替閾値以上であるか否かを判断する(S526)。Y成分値が切替閾値以上であると判断される場合(S526:Yes)、例えば誤差拡散アルゴリズムにより、Y成分値を2値化処理し(S528)、ドット無し又は大ドットのいずれかに変換する。なお、Y成分値の2値化処理の具体的内容は、C成分値の2値化処理(S516)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
一方、Y成分値が切替閾値未満であると判断される場合(S526:No)、例えば誤差拡散アルゴリズムにより、Y成分値を4値化処理し(S530)、ドット無し、または大ドット、中ドット、小ドットの3種類(k種類の一例)のドットのいずれかに対応する値に変換する。Y成分値の4値化処理の具体的内容は、C成分値の4値化処理(S518)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
次に、CPU11は、Kデータを4値化処理する(S532)。これにより、グレースケールの画像を構成する無彩色の各ドットについて、大ドット、中ドット、小ドットの3種類(k種類の一例)のドットのいずれかを決定する。
【0059】
次に、CPU11は、全画素を注目画素として処理したか否かを判断し(S533)、S533の判断が否定される場合(S533:No)、S514に戻り処理を繰り返す。そして、処理を繰り返すうちに、S533の判断が肯定されると(S533:Yes)、インクヘッド2および搬送モータ22(図4)を駆動して、グレースケールの画像を印刷させる(S534)。ここで、印刷される画像は、ハーフトーン処理により2値化または4値化された各画素の色毎の値(ドット無し、大ドット、中ドット、小ドット)に基づくドットから構成される。
【0060】
本実施形態の印刷処理によれば、グレースケールの画像を構成するKのドットについては、3種類のドットのいずれかが決定される。一方、有彩色であるC,M,Yのドットは、大ドットとして形成されやすく、中ドット、小ドットとして形成され難い。換言すれば、グレースケールの画像を表現するC,M,Yのドットを比較的大きいドットで表現できる。グレースケールの画像をC,M,Yのドットを用いて表現することでK単色のドットのみで画像を構成する場合よりも着弾位置がばらつき、バンディング抑制効果が得られる上、比較的にじみやすい大サイズのドットが多く使用されることにより、一層のバンディング抑制効果を得ることができる。
【0061】
また、C,M,Yの成分値であっても、切替閾値未満である場合は4値化され、ドット無し、また大ドット、中ドット、小ドットに変換されるので、淡いグレー色は、大、中、小の3種類の大きさのドットから構成されることとなる。多種類のドットから構成することにより、画像の淡いグレー色における粒状感が低減される。一方、切替閾値以上であるC,M,Yの成分値は2値化され、ドット無し、または大ドットに変換されるので、画像の濃いグレー色におけるバンディング抑制効果を得ることができる。
【0062】
図7は、プリンタ1の制御部10が実行する閾値判定処理を示すフローチャートである。この処理は、例えばプリンタ1の図示しない操作キーがユーザにより押下された場合に実行される。
【0063】
まず、ROM12に予め準備されたパッチデータに基づいて、閾値判定チャート画像を印刷する(S702)。
【0064】
図8は、閾値判定チャート画像の一例を示す図である。図8に示すように、閾値判定チャート画像は、1から8まで段階的に濃くなる8種類のグレーパッチ81〜88を含み、各グレーパッチは、各パッチの上段に示す第1種のパッチ81a〜88aと、各パッチの下段に示す第2種のパッチ81b〜88bとからなる。また、各パッチの左隣に記した数値をチャート番号と称する。
【0065】
ROM12には、8種類のグレーパッチ81〜88に対応した、濃淡が互いに異なる8種類のパッチデータが予め準備されている。このパッチデータはさらに、第1種のパッチ81a〜88aに対応する第1種パッチデータと、第2種のパッチ81b〜88bとを含む。
【0066】
第1種パッチデータは、8種類のKの成分値(16,32,48,64,80,96,112,128)を、GCRテーブル12c(図4)に記憶された関係に従って、C成分値、M成分値、Y成分値の組み合わせに置換し、4値化した結果として得られるパッチデータである。一方、第2種のパッチデータは、K成分値をGCRテーブル12cに記憶された関係に従って、置換して得られるC成分値、M成分値、Y成分値の組み合わせを、2値化した結果として得られるパッチデータである。
【0067】
すなわち、第1種のパッチ81a〜88aは、大ドット、中ドット、小ドットの3種類のC,M,Yのドットから構成されるのに対し、第2種のパッチ81b〜88bは、大ドットのみのC,M,Yのドットから構成される。
【0068】
図8に示すように、第1種のパッチ81a〜88aと、第2種のパッチ81b〜88bとは、記録用紙P上において、濃度別のセットとなって配置される。すなわち、同一濃度の第1種のパッチと第2種のパッチとが一対となり、帯状の長手方向の一辺を接して配置され、同一のチャート番号が付される。
【0069】
よって、ユーザは、第1種のパッチと、第2種のパッチとを視認し、特に、濃度に応じて、お互い並べられ接している境界を視認して、粒状感およびバンディングが共に抑制されているパッチを選択する。このようにすれば、2種のパッチが接した面を視認することによって、有彩色成分値をn値化してもm値化しても画質をそれほど低下させない値を、閾値として決定することができる。また、異なる濃度においては、お互いの境界が接していないので、ユーザが誤って、異なる濃度の第1種のパッチと第2種のパッチとを比較することを防止できる。
【0070】
図7に戻り説明する。次に、CPU11は、ユーザにより紙種が入力されたか否かを判断する(S704)。S704の判断が否定される場合(S704:No)、処理を待機する。一方、紙種が入力されると(S704:Yes)、次に、CPU11は、チャート番号が入力されたか否かを判断する(S706)。S706の判断が否定される場合(S706:No)、処理を待機する。一方、チャート番号が入力されると(S706:Yes)、そのチャート番号に対応するパッチデータに含まれるC,M,Yの各色の成分値を各色の切替閾値として入力された紙種と対応付けて、2値/4値切替閾値メモリ14a(図4)に設定し(S708)、処理を終了する。
【0071】
すなわち、第1種のパッチ81a〜88aは、3種類のドットから構成されるため粒状感は抑制されるものの、濃い色のパッチにおいて、バンディングが問題となりやすい。一方、第2種のパッチ81b〜88bは、比較的にじみ易い大ドットのみから構成されるため、バンディングが抑制されるものの、薄い色のパッチにおいて、粒状感が問題となりやすい。よって、ユーザは、第1種のパッチ81a〜88aと、第2種のパッチ81b〜88bとを視認して、粒状感およびバンディングが共に抑制されているパッチを選択する。このようにすれば、C,M,Yの成分値を2値化しても4値化しても画質をそれほど低下させない値を、各色の切替閾値として決定することができる。
【0072】
上記実施形態に記載のプリンタ1がインクジェットプリンタの一例に相当し、制御プログラム12aが印刷制御プログラムの一例に相当し、CPU11がコンピュータの一例に相当し、大ドットが最大サイズのドットの一例に相当し、小ドットが最小サイズのドットの一例に相当し、K成分値が無彩色成分値の一例に相当し、C,M,Yの各色の成分値が有彩色成分値の一例に相当し、切替閾値が予め定められた閾値の一例に相当する。S502を実行するCPU11が印刷種類判断手段の一例に相当し、S508を実行するCPU11が画像データ取得手段の一例に相当し、S516〜S532を実行するCPU11がハーフトーン処理手段の一例に相当し、S532を実行するCPU11が無彩色処理手段の一例に相当し、S514〜S530を実行するCPU11が有彩色処理手段の一例に相当する。S514,S520,S526を実行するCPU11が有彩色成分値判断手段の一例に相当し、S518,S524,S530を実行するCPU11が淡色処理手段の一例に相当し、S516,S522,S528を実行するCPU11が濃色処理手段の一例に相当する。S702を実行するCPU11がパッチ形成手段の一例に相当し、S708を実行するCPU11が閾値設定手段の一例に相当する。
【0073】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0074】
例えば、上記実施形態では、プリンタ1の制御部10が印刷制御装置の一例であったが、プリンタ1と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置が本発明の印刷制御装置として構成されても良い。その場合、各色の成分値の色変換処理やハーフトーン処理は、印刷制御装置である外部装置で行い、ハーフトーン処理後の画像データを、インクジェットプリンタへ出力するように構成すれば良い。
【0075】
また、上記実施形態では、プリンタ1が長尺のインクヘッド2を有しインクヘット2を固定して印刷を行うラインヘッド型のインクジェットプリンタであるものとして説明したが、インクヘッドが搬送方向と交差する方向に往復移動しながら印刷を行うシリアルプリンタである場合にも、本発明は適用可能である。
【0076】
また、上記実施形態では、有彩色であるC,M,Yの成分値が切替閾値以上であるか否かに応じて2値化と4値化とを切り替えていたが、有彩色の成分値は、切替閾値との大小関係を判断せずに一律に2値化するように構成しても良い。このようにすれば、グレースケールの画像を構成する有彩色のドットとしては大ドットのみが使用され、一層のバンディング抑制効果を得ることができる。また、上記実施形態では、特許請求の範囲に記載のn,m,kを、それぞれn=4、m=2、k=3であるものとして説明していたが、n,m,kの具体的値はこれに限られず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 プリンタ
2 インクヘッド
10 制御部
12a 制御プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きさが互いに異なるk種類のドットを形成可能なインクジェットプリンタに、印刷を実行させる印刷制御装置であって、
前記インクジェットプリンタに印刷させる画像がグレースケールであるかを判断する印刷種類判断手段と、
グレースケールであると判断される場合、前記インクジェットプリンタで使用可能な有彩色の組み合わせを利用してグレー色を表現する画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データに含まれる、各画素の無彩色成分を表す無彩色成分値と、有彩色成分を表す有彩色成分値とを、色毎にハーフトーン処理することにより、前記グレースケールの画像を構成する各ドットの種類を決定するハーフトーン処理手段とを備え、
前記ハーフトーン処理手段は、
前記無彩色成分値をn値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する無彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのいずれかを決定する無彩色処理手段と(ただし、n=k+1)、
前記有彩色成分値をm値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する有彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのうち、予め定められた(m−1)種類のドットのいずれかを決定する有彩色処理手段とを備え(ただしk>m−1)、
前記(m−1)種類のドットは、前記k種類のドットのうち、最大サイズのドットを含み、最小サイズのドットを含まないことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記有彩色処理手段は、さらに、
各画素の前記有彩色成分値が、その有彩色について予め定められた閾値以上であるかを判断する有彩色成分値判断手段と、
前記閾値未満である有彩色成分値を前記ハーフトーン処理によりn値化し、前記ドットを形成しないことを表す値、または前記k種類のドットのいずれかに対応する値に変換する淡色処理手段と、
前記閾値以上である有彩色成分値を前記ハーフトーン処理によりm値化し、前記ドットを形成しないことを表す値、または前記(m−1)種類のドットのいずれかに対応する値に変換する濃色処理手段とを備える請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記有彩色成分値の組み合わせを利用してグレー色を表現するグレースケールのパッチデータとして予め準備された、濃淡が互いに異なる複数種類のパッチデータを、前記ハーフトーン処理によりn値化した結果に基づく第1種のパッチと、前記ハーフトーン処理によりm値化した結果に基づく第2種のパッチとを、前記インクジェットプリンタに印刷させるパッチ形成手段と、
前記複数種類のパッチのうち、ユーザにより選択されたパッチに対応するパッチデータの各有彩色成分値を、各有彩色の閾値として設定する閾値設定手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の印刷制御装置。
【請求項4】
大きさが互いに異なるk種類のドットを形成可能なインクジェットプリンタに、印刷を実行させるための印刷制御プログラムであって、
前記インクジェットプリンタに印刷させる画像がグレースケールであるかを判断する印刷種類判断手段と、
グレースケールであると判断される場合、前記インクジェットプリンタで使用可能な有彩色の組み合わせを利用してグレー色を表現する画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データに含まれる、各画素の無彩色成分を表す無彩色成分値と、有彩色成分を表す有彩色成分値とを、色毎にハーフトーン処理することにより、前記グレースケールの画像を構成する各ドットの種類を決定するハーフトーン処理手段としてコンピュータを機能させ、
前記ハーフトーン処理手段は、
前記無彩色成分値をn値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する無彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのいずれかを決定する無彩色処理手段と(ただし、n=k+1)、
前記有彩色成分値をm値化することにより、前記グレースケールの画像を構成する有彩色の各ドットについて、前記k種類のドットのうち、予め定められた(m−1)種類のドットのいずれかを決定する有彩色処理手段とを備え(ただしk>m−1)、
前記(m−1)種類のドットは、前記k種類のドットのうち、最大サイズのドットを含み、最小サイズのドットを含まないことを特徴とする印刷制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−234613(P2010−234613A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84192(P2009−84192)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】