説明

可溶性エポキシド加水分解酵素の改良インヒビター

多数のファルマコフォアを組み込みかつ疾患の処置に有用である、可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)のインヒビターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、2003年4月3日出願の米国仮特許出願第60/460,559号の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府の支援する研究または開発の下でなされた発明の権利に関する声明
米国政府は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)から授与された契約ES02710に準拠して本発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表、またはコンピュータープログラムリスト添付物の参照
該当せず。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
エポキシド加水分解酵素(EH、EC3.3.2.3)は、水の付加による、エポキシドまたは酸化アレーンのその対応するジオールへの加水分解を触媒する(Oesch,F.,et.al.,Xenobiotica 1973,3,305-340を参照のこと)。EHは、ホルモン、化学療法薬物、発癌物質、環境汚染物質、マイコトキシンおよび他の有害な外来化合物を含む種々の化合物の代謝において重要な役割を果たす。
【0005】
十分研究された2つのEHである、ミクロソームのエポキシド加水分解酵素(mEH)および可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)がある。これらの酵素は極めて関係が遠く、細胞下の局在が異なり、そして異なるが部分的には重複する基質選択性を有する。この可溶性およびミクロソームのEH形態は、変異原性、毒性および発癌性の生体異物エポキシドの広範なアレイを解毒するのにおいてお互いに補完することが公知である(Hammock,B.D.,et al.,COMPREHENSIVE TOXICOLOGY.Oxford:Pergamon Press 1977,283-305、およびFretland,A.J.et al.,Chem.Biol.Intereract 2000,129,41-59)を参照のこと)。
【0006】
sEHはまた、そのいくつかは内因性化学メディエーターであるアラキドン酸(Zeldin,D.C.,et al.,J.Biol.Chem.1993,268,6402-6407を参照のこと)、リノール酸(Moghaddam,M.F.,et al.,Nat.Med.1997,3,562-567を参照のこと)および他の脂質エポキシドの代謝に関与する(Carroll,M.A.,et al.,Thorax 2000,55,S13-16を参照のこと)。アラキドン酸のエポキシド(エポキシエイコサトリエン酸またはEET)は、公知の血圧のエフェクター(Capdevila,J.H.,et.al.,J.Lipid.Res.2000,41,163-181)であり、かつ血管透過性の修飾因子(Oltman,C.L.,et al.,Circ Res.1998,83,932-939を参照のこと)である。EETの血管拡張性特性は、血管平滑筋の過分極をもたらす、カルシウム活性化ナトリウムチャネルの開口状態の確率の増大を伴う(Fisslthaler,B.,et al.,Nature 1999,401,493-497を参照のこと)。sEHによるエポキシドの加水分解はこの活性を減少する(Capdevila,J.H.et al.,J.Lipid.Res.2000,41,163-181を参照のこと)。EETのsEH加水分解はまた、冠動脈内皮リン脂質へのその取り込みを調節し、これによってsEHによる内皮機能の調節が示唆される(Weintraub,N.L.,et al.,Am.J.Physiol.1992,277,H2098-2108を参照のこと)。選択性のsEHインヒビターを用いた高血圧自然発生ラット(SHRs)の処置によって、その血圧は有意に低下されることが最近では示されている(Yu,Z.,et al.,Circ.Res.2000,87,992-998を参照のこと)。さらに、雄性ノックアウトsEHマウスは野生型マウスよりも有意に低い血圧を有し(Sinal,C.J.,et al.,J.Biol.Chem.2000,275,40504-405010)、このことは、血圧調節におけるsEHの役割をさらに支持する。
【0007】
EETによってまた、内皮細胞での抗炎症性の特性が実証された(Node,K.et al.,Science 1999,285,1276-1279およびCampbell,W.B.Trends Pharmacol.Sci.2000,21,125-127を参照のこと)。対照的に、エポキシ-リノール酸(ロイコトキシン)由来のジオールは、膜透過性およびカルシウム恒常性を乱し(Moghaddam,M.F. et al.,Nat.Med.1997,3,562-567を参照のこと)、これによって、一酸化窒素シンターゼおよびエンドセリン-1によって調節される炎症が生じる(Ishizaki,T.,et al.,Am.J.Physiol.1995,269,L65-70およびIshizaki,T.,et al.,J.Appl.Physiol.1995,79,1106-1611を参照のこと)。マイクロモル濃度のロイコトキシンで、炎症および低酸素(Dudda,A et al.,Chem.Phys.Lipids 1996,82,39-51を参照のこと)を伴い、インビトロでミトコンドリアの呼吸を抑制し(Sakai,T.,et al.,Am.J.Physiol.1995,269,L326-331を参照のこと)、そしてインビボで哺乳動物の心肺毒性を生じる(Ishizaki,T.,et al.,Am.J.Physiol.1995,269,L65-70;Fukushima,A et al.,Cardiovasc.Res.1988,22,213-218;およびIshizaki,T., et al.,Am.J.Physiol.1995,268,L123-128を参照のこと)ことが報告された。ロイコトキシンの毒性によって、多臓器不全および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を示唆する症状が示される(Ozawa,T.et al.,Am.Rev.Respir.Dis.1988,137,535-540を参照のこと)。細胞および生物体のモデルの両方とも、ロイコトキシン媒介性の毒性は、エポキシド加水分解に依存しており(Moghaddam,M.F.,et al.,Nat.Med.1997,3,562-567;Morisseau,C.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999,96,8849-8854;およびZheng,J.,et al.,Am.J.Respir.Cell mol.Biol.2001,25,434-438を参照のこと)、これによって、炎症の調節におけるsEHの役割が示唆される。これらのエポキシ脂肪酸の生物活性によって、ビシナル-ジヒドロキシ-脂質生合成の阻害は、有望な薬理学的標的であるsEHを作製するという治療的価値を有し得ることが示唆される。
【0008】
近年では、1,3-二置換尿素、カルバミン酸塩、およびアミドが、sEHの新規で強力であり、かつ安定なインヒビターとして報告されている(図1)。米国特許第6,150,415号を参照のこと。化合物192および686は、このタイプのインヒビターの代表的な構造である(図1)。これらの化合物は、精製された組み換えsEHと化学量論的に相互作用するナノモルのKl値を有する競合的な緊密結合のインヒビターである(Morisseau,C et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999,96,8849-8854を参照のこと)。X線結晶構造に基づいて、尿素インヒビターは、水素結合を達成すること、およびインヒビターの尿素機能とsEH活性部位の残基との間の塩架橋を形成して、この酵素によって開口するエポキシド環の反応座標において遭遇される特徴を模倣することが示された(Argiriadi,M.A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999,96,10637-10642およびArgiriadi,M.A.,et al.,J.Biol.Chem.2000,275,15265-15270を参照のこと)。これらのインヒビターは、いくつかのインビトロおよびインビボのモデルにおいて、エポキシド加水分解を効率的に減少する(Yu,Z.,et al.,Circ.Res.2000,87,992-998;Morisseau,C.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999,96,8849-8854;およびNewman,J.W.,et al.,Environ.Health Perspect.2001,109,61-66を参照のこと)。これらのインヒビターに関連する活性に関わらず、同様の活性または増大した活性を有し、溶解度が改善されて処方および送達が容易である化合物の必要性が存在する。
【0009】
驚くべき事に、本発明は、このような化合物とともにそれらの使用の方法およびそれらを含む組成物を提供する。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
1局面では、本発明は可溶性のエポキシド加水分解酵素を阻害するための方法を提供し、この方法は、この可溶性エポキシド加水分解酵素と、以下:

からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の阻害量とを接触させる工程を含み、式中、記号R1はC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはそれらの組み合わせであり、このシクロアルキル部分は単環式または多環式であり;記号P1は-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-から選択される一次ファルマコフォアであり;記号P2は-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-から選択される二次ファルマコフォアであり;P2aは-C(O)-または-NHC(O)-であり;記号P3はC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログから選択される三次ファルマコフォアであり;R2は水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、あるいは置換または非置換アリールC1-C4アルキルである。上記の式では、下付き文字nおよびmは各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下付き文字qは0〜3である。
【0011】
次に連結基については、記号L1は置換および非置換C2-C6アルキレン、もしくはC3-C6シクロアルキレン、またはアリーレン、またはヘテロアリーレン基である第一のリンカーであり;記号L2は置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせから選択される第二のリンカーである。記号A1はアミノ酸、ジペプチドまたはジペプチドアナログである。
【0012】
関連の局面では、本発明は、可溶性エポキシド加水分解酵素によって調節される疾患を処置するための方法を提供し、この方法は、そのような処置の必要な被験体に対して、上記の式(I)および(II)から選択される式を有する化合物の有効量を投与する工程を含む。
【0013】
他の局面では、本発明は、被験体における腎臓の悪化を軽減する方法を提供し、この方法は、この被験体に対して、上記の式(I)または(II)の化合物の有効量を投与する工程を含む。
【0014】
関連の局面では、本発明は、被験体における腎症の進行を阻害するための方法を提供し、この方法は、この被験体に対して、上記の式(I)または(II)の化合物の有効量を投与する工程を含む。
【0015】
別の局面では、本発明は、被験体における血圧を低下するための方法を提供し、この方法は、この被験体に対して、上記の式(I)または(II)の化合物の有効量を投与する工程を含む。
【0016】
関連の局面では、本発明は、被験体における血管平滑筋細胞の増殖を阻害するための方法を提供し、この方法は、この被験体に対して、上記の式(I)または(II)の化合物の有効量を投与する工程を含む。
【0017】
別の局面では、本発明は、被験体における閉塞性肺疾患、間質性肺疾患または喘息の進行を阻害するための方法を提供し、この方法は、この被験体に対して、上記の式(I)または(II)の化合物の有効量を投与する工程を含む。閉塞性肺疾患とは、例えば、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、肺気腫または慢性気管支炎であってもよい。間質性肺疾患は、例えば、特発性肺線維症であるか、または粉塵に対する職業的曝露に関連するものであってもよい。
【0018】
さらに別の局面では、本発明は上記の(I)および(II)から選択される式を有する化合物、ならびに本化合物の一つまたは複数を含む薬学的組成物を提供する。
【0019】
発明の詳細な説明
略語および定義
「シス-エポキシエイコサトリエン酸(cis-Epoxyeicosatrienoic acids)」(「EET」)は、チトクロムP450エポキシゲナーゼによって合成されるバイオメディエーター(biomediator)である。
【0020】
「エポキシド加水分解酵素(epoxide hydrolases)」(「EH;」EC 3.3.2.3)は、エポキシドと呼ばれる3員環のエーテルに水を付加する、αβ加水分解酵素フォールドのファミリーの酵素である。
【0021】
「可溶性エポキシド加水分解酵素(soluble epoxide hydrolases)」(「sEH」)は、内皮細胞および平滑筋細胞において、EETをジヒドロキシエイコサトリエン酸(「DHET」)と呼ばれるジヒドロキシ誘導体に変換する酵素である。マウスsEHのクローニングおよび配列は、Grant et al.,J.Biol.Chem.268(23):17628-17633(1993)に示される。ヒトsEH配列のクローニング、配列およびアクセッション番号は、Beetham et al.,Arch.Biochem.Biophys.305(1):197-201(1993)に示される。ヒトsEHのアミノ酸配列はまた、米国特許第5,445,956号の配列番号:2として示される;ヒトsEHをコードする核酸配列は、その特許の配列番号:1のヌクレオチド42-1703位として示される。この遺伝子の進化および命名法は、Beetham et al.,DNA Cell Biol.14(1):61-71(1995)に考察される。可溶性エポキシド加水分解酵素は、げっ歯類とヒトとの間で90%を超える相同性を有する単独の高度に保存された遺伝子産物である(Arand et al.,FEBS Lett.,338:251-256(1994))。
【0022】
「処置する(treat)」、「処置(treating)」および「処置(treatment)」という用語は、疾患またはその付随する症状を軽減または抑止する任意の方法をいう。
【0023】
「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」という用語は、処置されている疾患、状態または障害の症状のうちの一つまたは複数の発達を防止または軽減するために十分な、投与されている化合物の量をいう。
【0024】
「調節する(modulate)」という用語は、化合物が関連する活性(例えば、可溶性エポキシド加水分解酵素)の機能または活性を増大または低下する能力をいう。「調節(Modulation)」とは本明細書において用いられる場合その種々の形態で、sEHに関連する活性の拮抗作用および部分的拮抗作用を含むことを意味する。sEHのインヒビターとは、例えば、酵素に結合して、酵素の活性を部分的にまたは完全にブロックする化合物である。
【0025】
本明細書において用いる場合、「組成物」という用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物、ならびに特定の成分の特定の量での組み合わせから直接または間接的に生じる任意の生成物を含むことを意図する。「薬学的に許容される」とは、キャリア、希釈剤または賦形剤が、処方物の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに無害でなければならないということを意味する。
【0026】
「被験体(subject)」とは、本明細書において、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むがこれに限定されない哺乳動物などの動物を含むと規定される。好ましい態様では、被験体はヒトである。
【0027】
本明細書において用いる場合、「sEH媒介性疾患または状態(sEH-mediated disease or condition)」などは、正常なsEH活性より小さいかまたは大きいことによって特徴付けられる疾患または状態をいう。sEH媒介性疾患または状態とは、sEHの調節によって背景にある状態または疾患に対してある程度の影響が生じるものである(例えば、sEHインヒビターまたはアンタゴニストは、少なくともある患者では患者の健康にある程度の改善を生じる)。
【0028】
「実質(parenchyma)」とは、関連する結合組織または支持組織から識別される、器官の特徴的な組織をいう。
【0029】
「慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)」または「COPD」は時には、「慢性閉塞性気道疾患(chronic obstructive airway disease)」、「慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive lung disease)」および「慢性気道疾患(chronic airway disease)」としても公知である。COPDは一般に、最大呼気流量の減少、および肺を空にするのが遅く努力を要することによって特徴付けられる障害として一般に規定される。COPDは、2つの関連する状態、肺気腫および慢性気管支炎を含むとみなされる。COPDは、当技術分野において認識されている技術、例えば、最大吸入後に強制的に排出され得る空気の最大容積である、患者の強制肺活量(「FVC」)を用いて、一般開業医によって診断可能である。一般的開業医の診療所では、FVCは代表的には、スパイロメーターを通じた6秒最大呼気によって見積もられる。COPD、肺気腫および慢性気管支炎の定義、診断および処置は、当技術分野において周知であり、例えば、HonigおよびIngramのHarrison’s Principles of Internal Medicine(Fauci et al.,Eds.)、14th ed.,1998,McGraw-Hill,New York,pp.1451-1460(本明細書において以降では、「Harrison’s Principles of Internal Medicine」)によって詳細に考察されている。
【0030】
「肺気腫(Emphysema)」とは、明白な線維症のない、末端気管支梢に遠位の空隙の永続的な破壊性の拡張によって特徴付けられる肺の疾患である。
【0031】
「慢性気管支炎(chronic bronchitis)」とは、2年間の間に、1年に3ヶ月間、1ヶ月のほぼ毎日続く慢性気管支分泌によって特徴付けられる肺の疾患である。
【0032】
名称が意味するとおり、「閉塞性肺疾患(obstructive pulmonary disease)」および「閉塞性肺疾患(obstructive lung disease)」とは、拘束性の疾患とは対照的に、閉塞性の疾患をいう。これらの疾患としては特に、COPD、気管支喘息および末梢気道疾患が挙げられる。
【0033】
「末梢気道疾患(small airway disease)」。気道閉塞が単にまたは主に末梢気道の関与に起因する患者は明確に少数である。これらは、直径2mm未満の気道として規定され、小さい軟骨性の気管支、抹消気管支梢および気道気管支梢に相当する。末梢気道疾患(SAD)とは、気道抵抗を増大する炎症および線維変化による管腔の閉塞に相当する。閉塞は、一過性または永続性のいずれであってもよい。
【0034】
「間質性肺疾患(interstitial lung diseases(ILD)」とは、肺胞壁、肺胞周囲の組織および近接する支持構造に関与する1群の状態である。American Lung Associationのウェブサイトで考察されるとおり、肺の気嚢の間の組織は、間質であり、これは、この疾患では線維症によって影響される組織である。疾患を有する人は、肺組織の堅さのせいで呼吸が困難であるが、閉塞性肺疾患を有する人とは対照的に、息を吐き出すことは困難ではない。間質性肺疾患の定義、診断および処置は、当技術分野において周知であり、例えば、Reynolds,H.Y.,のHarrison’s Principles of Internal Medicine(前記)、pp.1460-1466において詳細に考察されている。Reynoldsは、ILDが種々の起因事象を有するが、肺組織の免疫病理学的応答は限定されており、従ってILDは共通の特徴を有することを注記している。
【0035】
「特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis)」または「IPF」は、プロトタイプのILDとみなされる。この原因が未知であるという点でこれは特発性であるが、前記のReynoldsは、この用語が十分規定された臨床的実体を指すことを注記している。
【0036】
「気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage)」または「BAL」は、下部呼吸管からの細胞の除去および検査を可能にする試験であり、IPFのような肺障害についての診断手順としてヒトで用いられる。ヒト患者では、これは一般に気管支鏡検査の間に行なわれる。
【0037】
本明細書において用いる場合、「アルキル(alkyl)」という用語は、直鎖であってもまたは分枝鎖であってもよいが、飽和された炭化水素ラジカルをいう(例えば、エチル、イソプロピル、t-アミル、または2,5-ジメチルヘキシル)。この定義は、この用語が単独で用いられる場合、および、「アラルキル(aralkyl)」、「アルキルアミノ(alkylamino)」および類似の用語のような化合物の用語の一部として用いられる場合の両方にあてはまる。好ましいアルキル基は、1〜10炭素原子を含む基である。本明細書および特許請求の範囲における全ての数値的範囲は、その上限および下限を含むことを意図する。低級アルキルとは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基をいう。
【0038】
「シクロアルキル(cycloalkyl)」および「シクロアルケニル(cycloalkenyl)」という用語は、飽和炭化水素環を指し、そして二環式および多環式の環を含む。好ましいシクロアルキルおよびシクロアルケニル部分は、この環に3〜12個の炭素原子を有するものである(例えば、シクロヘキシル、シクロオクチル、ノルボルニル、アダマンチルなど)。さらに、「(シクロアルキル)アルキル」という用語は、アルキル部分に結合されたシクロアルキル部分を有する基を指す。例としては、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチルおよびシクロペンチルプロピルである。
【0039】
「アルケニル(alkenyl)」という用語は、本明細書において用いる場合、二重結合である不飽和の一つまたは複数の部位を含む、上記のようなアルキル基を指す。同様に、本明細書において用いる場合、「アルキニル(alkynyl)」という用語は、三重結合である不飽和の一つまたは複数の部位を含む、上記のようなアルキル基を指す。
【0040】
「アルコキシ(alkoxy)」という用語は、上記のようなアルキルラジカルであって、また、別の炭化水素ラジカル(例えば、メトキシ、エトキシ、フェノキシおよびt-ブトキシなど)に対して共有結合し得る酸素置換基を保有するアルキルラジカルを指す。
【0041】
「アリール(aryl)」という用語は、芳香族炭素環式置換基であって、単独の環であっても複数の環であってもよく、一緒に融合され、エチレンまたはメチレン部分のような共通の基に共有結合または結合される基を指す。同様に、炭素環原子の位置にヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を有するアリール基は、「ヘテロアリール(heteroaryl)」と呼ばれる。アリールおよびヘテロアリール基の例は、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルメチル、2,2-ジフェニル-1-エチル、チエニル、ピリジル、およびキノキサリルである。アリールおよびヘテロアリール部分はまた、ハロゲン原子、または他の基、例えば、ニトロ、アルキル、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシ、フェノキシなどで置換されていてもよい。さらに、アリールおよびヘテロアリール基は、そうでなければ水素原子で占有される、アリールまたはヘテロアリールラジカル上の任意の位置で他の部分に結合されてもよい(例えば、2-ピリジル、3-ピリジルおよび4-ピリジルなど)。二価アリール基は、「アリーレン(arylene)」であり、かつ二価ヘテロアリール基は、本発明においてリンカーとして用いられる基のように「ヘテロアリーレン(heteroarylene)」と呼ばれる。
【0042】
「アリールアルキル(arylalkyl)」、「アリールアルケニル(arylalkenyl)」および「アリールオキシアルキル(aryloxyalkyl)」という用語は、それぞれ、アルキル基に結合される、アルキル基、アルケニル基または酸素に直接結合されたアリールラジカルを指す。略して、上記のような組み合わせた用語の一部としてのアリールは、同様にヘテロアリールを含むことを意味する。
【0043】
「ハロ(halo)」または「ハロゲン(halogen)」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、他に示さない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の原子を意味する。さらに、「ハロアルキル(haloalkyl)」のような用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「C1-C6ハロアルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロメチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0044】
「疎水性ラジカル(hydrophobic radical)」または「疎水性基(hydrophobic group)」という用語は、分子の水溶性を低くする基をいう。好ましい疎水性ラジカルは、少なくとも3個の炭素原子を含む基である。
【0045】
「カルボン酸アナログ(carboxylic acid analog)」という用語は、カルボン酸残基を模倣し得る酸性部分を有する種々の基をいう。このような基の例は、スルホン酸、スルフィン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホンアミドおよび複素環式部分、例えば、イミダゾール、トリアゾールおよびテトラゾールなどである。
【0046】
概要
本発明は、1,3-二置換尿素(または対応するアミドまたはカルバミン酸塩、一次ファルマコフォアとも呼ばれる)がさらに官能化されて、物理的特性の改善されたさらに強力なsEHインヒビターが得られるという発見に由来する。本明細書において記載されるように、二次ファルマコフォアおよび/または三次ファルマコフォアの導入は、sEHインヒビターの水溶性および経口アベイラビリティーを増大させ得る(図2を参照のこと)。3つのファルマコフォアの組み合わせ(表15の化合物を参照のこと)によって、水溶性の増大した種々の化合物が得られる。
【0047】
二次ファルマコフォアおよび三次ファルマコフォアの開発によってまた、sEH阻害活性を有する化合物の広範なスペクトルを確立するためのコンビナトリアル化学のアプローチの使用がもたらされる。極性のファルマコフォアは、分子をドメインに分割し、その各々がコンビナトリアル様式で共通の化学的アプローチによって容易に操作可能であり、これによって、高血圧および脈管の炎症のような疾患の処置のための新規な経口的に利用可能な治療剤の設計および高次構造がもたらされる。以下に示すように(実施例27および図14を参照のこと)、溶解度、バイオアベイラビリティーおよび薬理学的特性の変更によって、相対量のエポキシアラキドン酸塩誘導体を、それらのジオール生成物に対して、または炎症促進性および高血圧性のヒドロキシエイコサテトラエン酸(HETE)のいずれかに対して比較した場合増大する実験動物の調節性脂質を変更し得る化合物がもたらされる。エポキシアラキドン酸塩は、降圧および抗炎症性であるので、脂質比の変更によって血圧の低下、ならびに血管および腎臓の炎症の低減がもたらされ得る。このアプローチは、末期腎疾患(ESRD)に近づく患者において確証されており、低用量の化合物800での短期の経口処置でさえ、調節性脂質の血清プロフィールをポジティブな様式で変更した。これによって収縮期および拡張期の血圧の低下、血中尿素窒素(腎の炎症の指標)の劇的な低下が生じ、C反応性タンパク質(血管炎症の一般的指標)の血清レベルが劇的に減少した。
【0048】
理論的に拘束されることは意図しないが、図2、3、4および5を参照して、一方の側で触媒性アスパラギン酸に、そして他方で触媒性チロシンに水素結合し得る基を含む(図3を参照のこと)一次ファルマコフォアの左側すなわちR(図2)は、この一次ファルマコフォアが可能な最適の特性を得るように変化され得ると考えられる。一次ファルマコフォアの右側は、4つのセグメントに効果的に分割される:一次および二次ファルマコフォアを隔てるスペーサー(本発明ではL1と命名される)、二次ファルマコフォア(本発明ではP2と命名される、およびスペーサー(L2)に隣接して最終的にZ基で終わる三次ファルマコフォア(P3)(三次ファルマコフォアには総称としてP3を与える)。一次ファルマコフォアと二次ファルマコフォアとの間のスペーサーは、任意で3原子単位の長さであるが、二次ファルマコフォアは、例えば、ケトン、カーボネート、アミド、カルバメート、尿素、エーテル/ポリエーテル、エステルまたは一次ファルマコフォアのカルボニルから約7.5Åの、酵素と水素結合を形成し得る他の官能基であってもよい。この同定された三次ファルマコフォアは、一次ファルマコフォアからほぼ6〜11炭素単位に位置する極性基から構成される(図2を参照のこと)。保存されたアスパラギン酸残基(Asn471、図4および5を参照のこと)は、タンパク質とこの三次部位に位置する極性官能基との間の相互作用の部位を提供すると考えられる。一方、げっ歯類では、トレオニン(Thr468)はまた、水素結合の適切な位置であり、残基468はヒトの酵素ではメチオニンである(図5)。二次ファルマコフォア同様に、この基は、sEHインヒビターの水溶性、ならびにsEHの特異性を改善し、そして水素結合を与えるかまたは受けることができる、エステル、アミド、カルバメートまたは類似の官能基のような広範な多様な官能基が同様に、この極性基に寄与し得る。例えば、製薬化学的な複素環式基を通常用いて、カルボニルを水素結合のドナーおよびアクセプターとして模倣する。当然ながら、一次、二次および三次ファルマコフォア基を、適切なスペーサーとともに単独の分子に組み合せて、活性を改善するか、またはインヒビターをプロドラッグにすることができる。
【0049】
図12は、sEH基質結合ポケットにおいて観察された水素結合ドナーの構造的評価についての結合相互作用を、注記した一次ファルマコフォアへの直線距離で図示する。以下の表は、図4および5に提供された残基への特定の距離を示す。
【0050】
(表)結合した尿素のカルボニル炭素への親水性残基の直線的距離

注:図12の距離は、カルボニルの酸素から別のファルマコフォアへ直線的に測定される。この表は、一次ファルマコフォアのカルボニル炭素からインヒビターと水素結合し得るアミノ酸への3次元の距離を測定する。
【0051】
可溶性エポキシド加水分解酵素を阻害する方法
上記を考慮すると、本発明は、1局面では、可溶性エポキシド加水分解酵素と、以下からなる群より選択される式を有する化合物、およびそれらの薬学的に許容される塩の阻害量とを接触させる工程を含む、可溶性エポキシド加水分解酵素を阻害する方法を提供する:

であって、式中、記号R1はC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはそれらの組み合わせであり、このシクロアルキル部分は単環式または多環式であり;記号P1は-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-から選択される一次ファルマコフォアであり;記号P2は-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-から選択される二次ファルマコフォアであり;記号P2aは-C(O)-、または-NHC(O)-であり;記号P3はC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログから選択される三次ファルマコフォアであり;R2は水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、あるいは置換または非置換アリールC1-C4アルキルである。上記の式では、下付き文字nおよびmは各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下付き文字qが0〜3である。
【0052】
次に連結基については、記号L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換もしくは非置換またはアリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレン基である第一のリンカーであり;記号L2は置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、置換もしくは非置換ヘテロアリーレンならびにそれらの組み合わせから選択される第二のリンカーである。記号A1はアミノ酸、ジペプチドまたはジペプチドアナログである。好ましくは、この化合物は、11-(3-シクロヘキシルウレイド)-ウンデカン酸、11-(3-シクロヘキシルウレイド)-ウンデカン酸メチルエステル、11-(3-シクロヘキシルウレイド)-ウンデカン酸アミド、12-(3-シクロヘキシルウレイド)-ドデカン酸、および12-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド-ドデカン酸以外である。
【0053】
上記の一般的説明内の多数の態様が好ましい。好ましい態様の第一の群では、用いられる化合物は、式(I)の化合物である。この群の態様内では、R1は、C5-C12シクロアルキル、フェニル、およびナフチルから選択される。より好ましくは、R1は、C6-C10シクロアルキルおよびフェニルから選択される。最も好ましいのは、R1がシクロヘキシル、シクロペプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、アダマンチル、ノルアダマンチル、およびフェニルであり、このフェニル基がハロゲン、低級アルキル、低級ハロアルキル、低級アルコキシ、C3-C5シクロアルキルおよびシアノから選択される1〜3つの置換基で置換されているかまたは置換されていない態様である。
【0054】
式(I)に戻れば、P1は、好ましくは、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-から選択される。最も好ましくはP1は、-NHC(O)NH-である。
【0055】
次に第一のリンカー基については、L1は好ましくは置換および非置換C2-C6アルキレンから選択され、ここでこの置換基は、全体的な組成物に対して所望の特性を付与するように選択される。例えば、R1が特に疎水性の残基であるいくつかの態様では、L1は好ましくは、極めて疎水性の化合物が通常伴う、水溶性のある程度の欠失を相殺するために親水性である置換基を有してもよい。結果として、ある態様では、L1は、1または2つのヒドロキシル部分を、置換基として、好ましくは1つだけのヒドロキシル部分置換基を有する。他の態様では、L1は上記で示される長さを有するアルキレンまたはシクロアルキレンリンカーであり、ここでは水素原子の一つまたは複数がフッ素原子で置換されて他の魅力のある特性、例えば、化合物がこのステントからゆっくり放出され、次いで可溶性エポキシド加水分解酵素を阻害するようにステントにおいてこの化合物の使用を容易にすることが可能になる。さらに好ましいのは、L1がC2-C5アルキレン、より好ましくはC2-C4アルキレン、それよりさらに好ましくはC2-C3アルキレン、そして最も好ましくはエチレン結合である態様である。L1が、C3-C6シクロアルキレンである場合、1,3または1,4様式で連結され得るシクロヘキシルがさらに好ましい。特定の特に好ましい態様では、L1は、約7.5±2Åおよびより好ましくは約7.5±1Åという、第一のファルマコフォアカルボニル部分(P1における)と第二のファルマコフォアカルボニル部分(P2における)との間の空間を提供するように選択される。
【0056】
第二のファルマコフォアP2は、提示される場合(nが1である)、-C(O)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-から選択される。より好ましくは、P2は、-C(O)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、および-C(O)NH-から選択される。最も好ましくは、P2は、-C(O)-、-O(CH2CH2O)q-、および-C(O)O-から選択される。
【0057】
第二のリンカー基L2は、置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、およびそれらの組み合わせから選択される。二次ファルマコフォア(P2)が存在しない態様については、リンカー基L2を、L1と組み合わせて、およそ6より多く、12より少ない炭素原子という、一次ファルマコフォアと三次ファルマコフォアとの間の空間が得られる。従って、L1がアルキレンであるか、2〜4個の炭素原子のシクロアルキレン連結の一部であり、かつP2が存在しない場合、L2は好ましくは、2〜8個の炭素原子、より好ましくは4〜8個の炭素原子、そして最も好ましくは5、6、7または8個の炭素原子のアルキレン連結である。いくつかの態様では、L2は、アルキレン基、好ましくはフェニレン基を含み、これは、1,2または1,3または1,4様式で、好ましくは1,3または1,4様式で連結され得る。L1と同様に、L2のアルキレン部分は、置換されてもよいし、置換されなくてもよい。置換は、上記のL1について記載されたように選択される。
【0058】
三次ファルマコフォアP3は、C2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログであり、R2は水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C2-C4アルケニル、置換または非置換C2-C4アルキニル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換C3-C10シクロアルキル-アルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである。ある特定の好ましい態様では、R2は、H、メチル、エチル、プロピル、アリル、3-プロピニル、ブチル、2-プロピル、1,1-ジメチルエチル、2-ブチル、2-メチル-1-プロピル、アダマンチル-メチル、ベンジル、2-クロロベンジルおよびナフチルメチルである。1群の好ましい態様では、P3は、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログであり、ここでR2は、水素、非置換C1-C4アルキル、および非置換C3-C8シクロアルキルから選択される。それよりさらに好ましくは、R2は、H、MeまたはEtである。特に好ましい態様では、P3は、-C(O)OR2およびカルボン酸アナログであり、R2は、水素、MeまたはEtから選択される。
【0059】
上記で示される好ましい基のうち、好ましい態様の特定の組み合わせが特に好ましい態様である。好ましい基の全ての組み合わせが本発明のさらなる態様であるが、特に好ましい態様は、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-から選択され;P2が-C(O)O-、-OC(O)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-から選択され;mが0であり、かつL1が非置換C2-C6アルキレンから選択される態様を含む。特に好ましい態様の別の群では、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-から選択され;P2が-C(O)O-、-OC(O)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-から選択され;nおよびmが各々1であり、L1が非置換C2-C6アルキレンから選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンから選択され;かつP3が-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、および-C(O)OR2から選択され、R2が水素、置換もしくは非置換C1-C4アルキル、置換もしくは非置換C3-C8シクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換アリールC1-C4アルキルである。さらに他の特に好ましい態様は、化合物が式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-から選択され;nが0であり;mが1であり;L1が、非置換C2-C6アルキレンから選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンから選択され;かつP3が-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、および-C(O)OR2から選択され、R2が水素、置換もしくは非置換C1-C4アルキル、置換もしくは非置換C3-C8シクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、および置換もしくは非置換アリールC1-C4アルキルである態様である。
【0060】
本発明のこの局面における使用のための最も好ましい化合物は、以下の表に提供される化合物である。
【0061】
態様の別の群では、用いられる化合物は、式(II)の化合物を有する化合物である。この式では、R1、P1およびL1は、式(I)に関して提供される意味を有する。記号P2aは、カルボニル部分(-C(O)-)またはアミド(-NHC(O)-)であり、かつ記号A1は、一般にP2aに結合してアミド結合を形成する、アミノ酸、ジペプチドまたはジペプチドアナログである。
【0062】
式(II)の化合物は、上記で注記されるとおり、アミノ酸またはジペプチドアナログであり得るジペプチド成分を含む。アミノ酸残基は、それ自体で、またはジペプチドの一部として、慣行的実務に従って1文字または3文字の命名で示される。遺伝子コードされたアミノ酸の命名は、以下のとおりである(アミノ酸、1文字記号、3文字記号):アラニン、A、Ala;アルギニン、R、Arg;アスパラギン、N、Asn;アスパラギン酸、D、Asp;システイン、C、Cys;グルタミン、Q、Gln;グルタミン酸、E、Glu;グリシン、G、Gly;ヒスチジン、H、His;イソロイシン、I、Ile;ロイシン、L、Leu;リジン、K、Lys;メチオニン、M、Met;フェニルアラニン、F、Phe;プロリン、P、Pro;セリン、S、Ser;トレオニン、T、Thr;トリプトファン、W、Trp;チロシン、Y、Tyr;およびバリン、V、Val。遺伝子コードされない通常遭遇するアミノ酸は、本発明において有用であり得る。これらのアミノ酸およびそれらの略語としては、オルニチン(Orn);t-ブチルグリシン(t-BuG);フェニルグリシン(PhG);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);2-ナフチルアラニン(2-Nal);1-ナフチルアラニン(1-Nal);2-チエニルアニリン(2-Thi);N-メチルイソロイシン(N-Melle)、ホモアルギニン(Har)、Nα-メチルアルギニン(N-MeArg)およびサルコシン(Sar)が挙げられる。本発明において用いられる全てのアミノ酸は、D-異性体であっても、L-異性体であってもよい。L-異性体が好ましい。
【0063】
本発明の好ましい化合物は、A1がアミノ酸またはジペプチドである化合物である。好ましくは、ジペプチドは、P2aに直接結合されたTyr、His、Lys、PheまたはTrp残基を有する。
【0064】
本発明における使用のために好ましい他の化合物は、R1、P1およびL1が、式(I)について上記されるような好ましい分類から選択される化合物である。式(II)の特に好ましい化合物は、R1がC5-C12シクロアルキルおよびフェニルから選択される化合物である。より好ましくは、R1は、C6-C10シクロアルキルおよびフェニルから選択される。最も好ましいのは、R1がシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、アダマンチルまたはノルアダマンチルである態様である。P1は好ましくは、尿素(-NHC(O)NH-)、またはカルバメート(-OC(O)NH-)、より好ましくは尿素である。L1は好ましくは、置換または非置換C2-C5アルキレン、より好ましくはC2-C4アルキレン、それより好ましくは、エチレンまたはプロピレン結合である。
【0065】
A1が単独のアミノ酸である態様については、A1は好ましくは、Ala、Arg、Asp、Cys、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValから選択される。より好ましくは、A1は、His、Ile、Lys、Phe、Trp、およびTyrから選択され、ここではアミノ酸が、アミノ連結および末端カルボン酸基を提供する様式でP2aに連結される。当然ながら、当業者は、これらのアミノ酸が、それらの対応するメチルまたはエチルエステル、およびそれらのカルボキシアミド誘導体(例えば、末端-C(O)NH2)を指すことを意味するということを理解する。最も好ましくは、この化合物は、表9に示される化合物である。
【0066】
A1がジペプチドであるこれらの態様については、P2aは好ましくは、Tyr、His、Lys、PheまたはTrp残基に結合され、ここでは残りのアミノ酸は、遺伝子コードされたアミノ酸、それらのD異性体またはそのアナログ(例えば、乳酸などのようなヒドロキシ酸)から選択される。それよりさらに好ましくは、A1は、TyrAla、TyrArg、TyrAsp、TyrGly、TyrIle、TyrLeu、TyrLys、TyrMet、TyrPhe、TyrPro、TyrSer、TyrThr、TyrTrp、TyrTyr、およびTyrValから選択される。より好ましくは、A1は、TyrArg、TyrAsp、TyrMet、TyrPhe、TyrSer、TyrTrp、TyrTyr、およびTyrValから選択され、ここでTyrアミノ酸は、アミド結合を提供する様式でP2aに連結される。上記のように、これらのジペプチドはまた、それらの対応するメチルまたはエチルエステル、ならびにそれらのカルボキサミド誘導体(例えば、末端-C(O)NH2)を指すことを意味する。最も好ましくは、この化合物は、表10に示される化合物である。
【0067】
可溶性エポキシド加水分解酵素活性をモニターするためのアッセイ
さらに、本発明は、可溶性エポキシド加水分解酵素活性、特に上記で提供される化合物の一つまたは複数の投与によって調節されている活性をモニタリングするための種々のアッセイおよび関連の方法を提供する。
【0068】
1群の態様では、本発明は、可溶性エポキシド加水分解酵素の作用によって生成される生物学的に活性なジオールの形成を減少させるための方法を提供するが、この方法は、可溶性エポキシド加水分解酵素と、この可溶性エポキシド加水分解酵素の活性を阻害して、生物学的に活性なジオールの形成を軽減するのに十分な量の、上記の式(I)または(II)の化合物とを接触させる工程を含む。
【0069】
別の群の態様では、本発明は、可溶性エポキシド加水分解酵素の存在下で、生物学的に活性なエポキシドを安定化するための方法を提供するが、この方法は、可溶性エポキシド加水分解酵素と、この可溶性エポキシド加水分解酵素の活性を阻害して、生物学的に活性なエポキシドを安定化させるのに十分な量の、上記の式(I)または(II)の化合物とを接触させる工程を含む。
【0070】
これらの群の態様の各々において、この方法は、インビトロアッセイの一部として行なってもよいし、またはこの方法は、各々の生物学的に活性なエポキシドもしくはジオールの血中力価をモニターすることによってインビボで行なってもよい。
【0071】
エポキシドおよびいくつかの脂肪酸のジオールは生物学的に重要な化学メディエーターであり、かついくつかの生物学的プロセスに関与する。最強の生物学的データによって、オキシリピン(oxylipin)の作用は、血管内皮と血管平滑筋との間の化学的メディエーターとして支持される。従って、エポキシ脂質は、抗炎症性および降圧性である。さらに、この脂質は、β酸化によって、そしてエポキシド水和によって、代謝されると考えられる。可溶性エポキシド加水分解酵素は、これらのオキシリピンの加水分解性の代謝に関与する主な酵素であるとみなされる。式(I)および(II)の化合物は、インビトロおよびインビボの両方で、エポキシド加水分解酵素を阻害して、エポキシ脂質を安定化することができる。この活性によって、4つの別々のげっ歯類モデルで、高血圧の軽減が得られる。さらに、このインヒビターは、高血圧モデルに関連する腎炎症の軽減を示す。
【0072】
さらに具体的には、本発明は、このシステムの生物学に取り組むために、アラキドン酸およびリノール酸のカスケードの両方において同時に種々の脂質をモニターするための方法を提供する。GLC-MSシステムまたはLC-MSの方法を用いて、極めて定量的な様式で単回注入で、40を超える分析物をモニターすることができる。この分析物としては、アラキドン酸エポキシド(EET)の位置異性体、ジオール(DHET)ならびにHETEを含む他のP450生成物が挙げられる。アラキドン酸塩およびリノール酸塩シリーズの両方において、シクロオキシゲナーゼ、リポオキシゲナーゼおよびペルオキシダーゼの経路の特徴的な生成物もモニターできる。このような方法は具体的には、特定の疾患状態の予測として有用である。オキシリピンは、エポキシド加水分解酵素のインヒビターの投与後に哺乳動物においてモニターできる。一般には、EHインヒビターは、体液および組織において、ジオール濃度を犠牲にしてエポキシ脂質濃度を増大させる。
【0073】
本発明のこの局面での使用のための好ましい化合物は、式(I)のインヒビターであり、ここでは、一次ファルマコフォアは、末端カルボン酸と天然の基質のエポキシド官能基との間の距離に近似の距離によって三次ファルマコフォアから隔てられる。
【0074】
可溶性エポキシド加水分解酵素によって調節される疾患を処置する方法
別の局面では、本発明は、疾患、特に可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)によって調節される疾患を処置する方法を提供する。この方法は一般に、このような処置の必要な被験体に対して、上記の式(I)および(II)から選択される式を有する化合物の有効量を投与する工程を含む。このような投与の用量、頻度およびタイミングは大部分が、選択された治療剤、処置されている条件の性質、年齢、体重および他の条件または障害の存在を含む被験体の状態、投与されている処方物、および担当医の決定に依存する。好ましくは、本発明の組成物および化合物、ならびにその薬学的に許容される塩は、経口、非経口または局所の経路を介して投与される。一般には、この化合物は、1日あたり約2mgから最大約2,000mgの範囲に及ぶ投与量で投与されるが、上記のように、疾患標的、患者および投与の経路に依存して、変動が必然的に生じる。好ましい投薬量は、1日あたり体重1kgあたり、約0.05mg/kg〜約20mg/kgの範囲で、より好ましくは約0.05mg/kg〜約2mg/kgの範囲で、最も好ましくは約0.05mg/kg〜約0.2mg/kgの範囲で経口投与される。局所投与のために使用される投薬量は、当然ながら、処置されている領域のサイズに依存する。
【0075】
可溶性エポキシド加水分解酵素(「sEH」)のインヒビターが高血圧を軽減し得るということは、以前に示されている。例えば、米国特許第6,351,506号を参照のこと。このようなインヒビターはまた、糖尿病に罹患している人を含む、望ましくない高い血圧を有する人の血圧を制御するのに有用であり得る。
【0076】
好ましい態様では、式(I)または式(II)の化合物は、高血圧、特に腎臓、肝臓または肺性の高血圧;炎症、特に腎臓の炎症、血管炎症、および肺の炎症;成人呼吸窮迫症候群;糖尿病合併症;末期腎疾患;レイノー症候群、および関節炎の処置の必要な被験体に投与される。
【0077】
腎臓の悪化(腎症)の進行を阻害して血圧を低下させるための方法
本発明の別の局面では、本発明の化合物は、タンパク尿によって測定される場合、腎臓に対する障害、および特に糖尿病からの腎臓の障害を軽減し得る。本発明の化合物は、高血圧を有さない個体でさえ、糖尿病からの腎臓の悪化(腎症)を軽減し得る。治療剤投与の条件は上記のとおりである。
【0078】
シス-エポキシエイコサトリエン酸(「EET」)は、本発明の化合物と組み合わせて、腎障害をさらに軽減するために用いられ得る。アラキドン酸のエポキシドであるEETは、血圧のエフェクター、炎症の調節因子、および脈管透過性の修飾因子であることが公知である。sEHによるエポキシドの加水分解によって、この活性は減少する。EETがDHETに加水分解される速度が低下されるせいで、sEHの阻害は、EETのレベルを上昇させる。理論によって拘束されることは望まないが、EETのレベルの上昇は、微小血管変化による腎臓細胞に対する障害および糖尿病性高血糖の他の病理的な効果を妨害すると考えられる。従って、腎臓のEETレベルの上昇は、ミクロアルブミン尿症から末期腎疾患への進行から腎臓を保護すると考えられる。
【0079】
EETは、当技術分野において周知である。本発明の方法において有用なEETとしては、14,15-EET、8,9-EETおよび11,12-EETおよび5,6 EETが、その選考順序で挙げられる。好ましくは、EETは、より安定なメチルエステルとして投与される。当業者は、EETが位置異性体、例えば、8S,9R-および14R,15S-EETであることを認識する。8,9-EET、11,12-EETおよび14R,15S-EETは、例えば、Sigma-Aldrichから市販されている(それぞれ、カタログ番号E5516、E5641、およびE5766、Sigma-Aldrich Corp.,St.Louis,MO)。
【0080】
内皮細胞によって生成されるEETは、降圧特性を有し、そしてEET 11,12-EETおよび14,15-EETは、内皮細胞由来過分極因子(EDHF)であってもよい。さらに、11,12-EETのようなEETは、繊維素溶解促進効果、抗炎症作用を有し、平滑筋細胞増殖および遊走を阻害する。本発明の状況では、これらの好ましい特性は、腎臓および心血管の疾患状態の間、脈管および器官を保護すると考えられる。
【0081】
sEH活性は、EETのレベルを増大させるために十分に阻害され得、これによってsEHインヒビターを投与する効果をそれ自体が増強すると現在考えられる。これによって、本発明の方法において腎症を軽減するために一つまたは複数のsEHインヒビターと組み合わせてEETを投与することが可能になる。これによってさらにEETを、高血圧、または炎症、その両方を軽減するために一つまたは複数のsEHインヒビターと組み合わせて用いることが可能になる。従って、一つまたは複数のsEHインヒビターと組み合わせて投与され得るEETの医薬が作製可能であり、または一つまたは複数のsEHインヒビターを含む医薬は任意で一つまたは複数のEETを含んでもよい。
【0082】
EETは、sEHインヒビターと同時に、またはsEHインヒビターの投与後に投与されてもよい。これによって、全ての薬物と同様に、インヒビターは、身体によって代謝されるかまたは身体から排泄される速度によって規定される半減期を有すること、およびインヒビターは、有効であるのに十分な量で存在する投与後期間を有することが理解される。従ってインヒビターが投与された後にEETが投与される場合、インヒビターがEETの加水分解を遅らせるのに有効である量で存在する期間の間にEETが投与されることが望ましい。代表的には、EETは、sEHインヒビターを投与する48時間内に投与される。好ましくは、EETは、インヒビターの24時間内に、そしてさらに好ましくは12時間内に投与される。望ましい順序では、EETは、インヒビターの投与後10、8、6、4、2時間、1時間または半時間内に投与される。最も好ましくはEETは、インヒビターと同時に投与される。
【0083】
好ましい態様では、EET、本発明の化合物、または両方が、長時間作用をもたらすために経時的に放出することを可能にする物質に提供される。徐放性コーティングは、製薬業界で周知である;特に徐放性のコーティングの選択は、本発明の実施に重要ではない。
【0084】
EETは、酸性条件下で分解に供される。従って、EETが経口的に投与される場合、それらは、胃での分解から保護されることが望ましい。都合のよいことには、経口投与のためのEETは、それらが胃の酸性環境を腸の塩基性環境に通過することを可能にするようにコーティングされ得る。このようなコーティングは、当技術分野において周知である。例えば、いわゆる「腸溶性コーティング(enteric coatings)」でコーティングされたアスピリンは、広く市販されている。このような腸容性コーティングを用いて、胃の通過の間にEETを保護することができる。代表的なコーティングは、実施例に示される。
【0085】
EETの降圧性効果は認識されているが、EETは高血圧を処置するためには投与されていない。なぜなら、内因性sEHは、EETを加水分解するのが、それらが任意の有用な効果を発揮するには急激過ぎると考えられるからである。驚くべきことに、本発明の背景にある研究の経過の間、外因性に投与されたsEHのインヒビターがsEHを阻害するのにおいて、十分に成功し、EETのレベルが内因性EETの投与によってさらに上昇され得るということが見出された。これらの知見は、腎症の発症および進行を阻害するのに関して上記のsEHインヒビターおよびEETの同時投与が基礎である。これは、強化処置において重要な改善である。内因性EETのレベルは、sEHインヒビターの作用によって生じるsEH活性の阻害とともに上昇し、従って、症状または病状の少なくともある程度の改善を生じると予想されるが、腎臓の障害の進行を完全にまたは意図する程度まで阻害するためには、全ての場合に十分ではないかもしれない。これは、疾患または他の要因が、EETの内因性の濃度を健常な個体で通常存在する濃度未満に低下させている場合、特にあてはまる。従って、sEHインヒビターと組み合わせた外因性EETの投与は、糖尿病性腎症の進行を軽減するのにおいてsEHインヒビターの効果に有益であるか、それを強化することが期待される。
【0086】
本発明は、腎臓または腎機能に対する進行性の障害を伴う程度の任意のそして全ての形態の糖尿病に関して用いられ得る。糖尿病の慢性高血糖症は、長期の障害、機能不全および種々の器官、特に眼、腎臓、神経、心臓および血管の不全に関連する。糖尿病の長期合併症としては、視力喪失を伴う網膜症;腎不全をもたらす腎症;足の潰瘍、切断およびシャルコー関節の危険性を有する末梢神経障害が挙げられる。
【0087】
さらに、代謝症候群を有する人は、2型糖尿病へ進行する危険性が高く、従って糖尿病性腎症の危険性が平均より高い。従って、ミクロアルブミン尿についてこのような個体をモニターすること、そしてsEHインヒビターおよび任意で一つまたは複数のEETを、腎症の発達を軽減するための介入として投与することが望ましい。医師は、介入の開始の前にミクロアルブミン尿が見られるまで待ってもよい。上記のように、130/85以上の血圧を有さない人は代謝性症候群と診断され得る。130/85以上の血圧を有する人および130/85未満の血圧を有する人の両方が、その腎臓への障害の進行を遅らせるために、sEHインヒビターの投与から、そして任意で、一つまたは複数のEETの投与から恩恵を受けることができる。ある好ましい態様では、代謝性障害でかつ130/85未満の血圧を有する人がいる。
【0088】
脂質代謝の異脂肪血症または障害は、心臓疾患の別の危険要因である。このような障害としては、LDLコレステロールのレベル上昇、HDLコレステロールのレベルの低下、およびトリグリセライドのレベルの上昇が挙げられる。血清コレステロール、特にはLDLコレステロールのレベルの上昇は、心疾患のリスクの増大を伴う。腎臓はまた、このようなレベルが高いことによって障害される。高レベルのトリグリセライドは腎臓障害に関連すると考えられる。具体的には、200mg/dLを超えるコレステロールのレベル、特に225mg/dLを超えるレベルでは、sEHインヒビターおよび任意でEETが投与されるべきことが示唆される。同様に、215mg/dLをより多くの、そして特に250mg/dL以上のトリグリセリドレベルでは、sEHインヒビターおよび任意でEETの投与が望ましいことが示される。本発明の化合物のEETとの投与またはEETを伴わない投与によって、患者に対してスタチン薬物(HMG-CoAリダクターゼインヒビター)を投与する必要性を減らすこと、または必要なスタチンの量を減らすことができる。ある態様では、本発明の方法、使用および組成物の候補は、215mg/dLを超えるトリグリセライドレベル、および130/85未満の血圧を有する。ある態様では、この候補は、250mg/dLを超えるトリグリセライドレベル、および130/85未満の血圧を有する。ある態様では、本発明の方法、使用および組成物の候補は、200mg/dLを超えるコレステロールレベル、および130/85未満の血圧を有する。ある態様では、この候補は225mg/dLを超えるコレステロールレベル、および130/85未満の血圧を有する。
【0089】
血管平滑筋細胞の増殖を阻害する方法
他の態様では、式(I)または(II)の化合物は、有意な細胞毒性(例えば、VSM細胞に特異的)なしに血管平滑筋(VSM)細胞の増殖を阻害する。VSM細胞増殖は、アテローム性動脈硬化症の病態生理学における一体的なプロセスであるので、これらの化合物は、アテローム性動脈硬化症を遅らせるかまたは阻害するのに適切である。これらの化合物は、アテローム性動脈硬化症のリスクの被験体、例えば、心発作または心臓への血液循環の低下を示す試験結果を有していた個体に有用である。治療的投与の条件は上記のとおりである。
【0090】
本発明の方法は、狭くなった動脈を再開通するため、再狭窄による再開通した通路の狭窄を軽減するかまたは遅らせるための血管形成術のような経皮的な介入を有する患者に特に有用である。ある好ましい態様では、この動脈は冠動脈である。本発明の化合物は、再狭窄を軽減する、局所的な徐放性を与えるためにステント上のポリマーコーティング中に配置されてもよい。移植可能な医学用デバイス、例えば、ステントのためのポリマー処方物、および徐放性のためにポリマー中に薬剤を包埋するための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第6,335,029号;同第6,322,847号;同第6,299,604号;同第6,290,722号;同第6,287,285号;および同第5,637,113号に教示される。好ましい態様では、このコーティングはある時間にわたって、好ましくは数日、数週間または数ヶ月の期間にわたって、インヒビターを放出する。特定のポリマーまたは選り抜きの他のコーティングは、本発明の重要な部分ではない。
【0091】
本発明の方法は、天然および合成の代用血管の狭窄または再狭窄を遅らせるかまたは阻害するために有用である。上記のようにステントと組み合わせて、望ましくは、合成の代用血管は、本発明の化合物を経時的に放出してVSMの増殖およびこの移植片の引き続く狭窄を遅らせるかまたは阻害する物質を含む。血液透析移植片が特に好ましい態様である。
【0092】
これらの使用に加えて、本発明の方法は、心発作を有する人、または試験結果が心発作のリスクがあることを示す人の血管の狭窄または再狭窄を遅らせるかまたは阻害するために用いられる。
【0093】
1群の好ましい態様では、本発明の化合物は、高血圧を有さない人におけるVSM細胞の増殖を軽減するために投与される。別の群の態様では、本発明の化合物は、高血圧を、ただしsEHインヒビターではない薬剤で処置されている人のVSM細胞の増殖を軽減するために用いられる。
【0094】
本発明の化合物は、不適切な細胞周期調節を示す細胞の増殖を妨害するために用いることができる。1つの重要なセットの態様では、細胞は癌の細胞である。このような細胞の増殖は、この細胞を本発明の化合物と接触させることによって遅らせられるかまたは阻害され得る。本発明の特定の化合物が、任意の特定のタイプの癌の細胞の増殖を遅らせることができるか、または阻害することができるかという決定は、当技術分野の慣用的アッセイを用いて決定できる。
【0095】
本発明の化合物の使用に加えて、EETのレベルは、EETを添加することによって上昇され得る。EETおよび本発明の化合物の両方と接触されたVSM細胞は、EETのみにまたは本発明の化合物のみに曝露された細胞よりも増殖が遅かった。従って、所望の場合、本発明の化合物によるVSM細胞の遅延または阻害は、本発明の化合物とともにEETを追加することによって増強され得る。ステントまたは血管移植の場合、例えば、これは、本発明の化合物とともにコーティング中にEETを包埋することによって都合よく達成可能であり、この結果、一旦ステントまたは移植片が所定の位置になればこの両方が放出される。
【0096】
閉塞性肺疾患、間質性肺疾患または喘息の進行を阻害する方法
慢性閉塞性肺疾患、またはCOPDは、化学物質およびタバコの煙に対する空気汚染、慢性曝露によって肺に生じる障害に関連する、2つの状態である肺気腫および慢性気管支炎を含む。疾患としての肺気腫は、肺胞とガス交換に利用可能な全体的表面積の結果的な減少との間の解離の低下につながる、肺の肺胞に対する障害に関連する。慢性気管支炎は、ムチンの過剰な生成を生じる気管支梢の刺激、および肺胞につながる気道のムチンによる結果的なブロックに関連する。肺気腫を有する人は、慢性気管支炎を有する必要は無く、逆もまたそうであるが、この状態のうちの1つを有するヒトはまたもう一方、そして他の肺障害も有することが通常である。
【0097】
COPD、肺気腫、慢性気管支炎および他の閉塞性肺障害に起因する肺に対するある程度の障害は、可溶性のエポキシド加水分解酵素、または「sEH」として公知の酵素のインヒビターを投与することによって阻害または逆転され得る。sEHインヒビターの効果は、EETも投与することによって増大され得る。この効果は少なくとも、2つの薬剤を別々に投与することよりも相加的であり、実際は相乗的であり得る。
【0098】
本明細書において報告される研究によって、EETは、タバコの煙による、または拡張による、職業的または環境的な刺激物による、肺に対する障害を軽減するために、sEHインヒビターと組み合わせて用いられ得るということが示される。これらの知見によってsEHインヒビターとEETとの同時投与を用いて、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、または肺に対する刺激を生じる他の慢性閉塞性肺疾患の発症または進行を阻害または遅らせることができることが示される。
【0099】
COPDの動物モデルおよびCOPDを有するヒトは、免疫調節性リンパ球および好中球のレベルが上昇している。好中球は組織障害を生じる因子を放出し、そして調節されなければ、経時的に破壊的な影響を有する。理論的に拘束されることは望まないが、好中球のレベルが低下すれば、閉塞性肺疾患、例えば、COPD、肺気腫、および慢性気管支炎に寄与する組織障害は軽減されると考えられる。COPDの動物モデルにおけるラットに対するsHEインヒビターの投与によって、肺で見出される好中球の数が減少した。sEHインヒビターに加えてEETを投与することも好中球レベルを減少させた。sEHインヒビターおよびEETの存在下での好中球レベルの減少は、sEHインヒビター単独の存在下での減少よりも大きかった。
【0100】
内因性EETのレベルは、sEHインヒビターの作用によって生じるsEH活性の阻害で上昇して、従って、症状または病状の少なくともある程度の改善を生じると予想されるが、COPDまたは他の肺疾患の進行を全ての場合に阻害するには十分ではないかもしれない。これは、疾患または他の要因が、EETの内因性の濃度を、健康な個体に通常存在する濃度未満に低下させた場合に特にあてはまる。従って、sEHインヒビターと組み合わせた外因性のEETの投与によって、COPDまたは他の肺疾患の進行を阻害または軽減するのにおけるsEHインヒビターの効果が増強されると期待される。
【0101】
慢性閉塞性気道状態の進行を阻害または軽減することに加えて、本発明はまた、慢性の拘束性気道疾患の重篤度または進行を軽減する新規な方法を提供する。閉塞性気道疾患は、肺柔組織の、特に肺胞の破壊から生じる傾向であるが、拘束性疾患は、肺柔組織の過剰のコラーゲンの沈着から生じる傾向である。これらの拘束性疾患は一般に、「間質性肺疾患(interstitial lung disease)」または「ILD」と呼ばれ、特発性肺線維症のような状態を含む。本発明の方法、組成物および用法は、ILD、例えば、特発性肺線維症の重篤度または進行を軽減するために有用である。マクロファージは、間質性細胞、特に線維芽細胞を刺激してコラーゲンを蓄えるのに重要な役割を果たす。理論的に拘束されることは望まないが、好中球はマクロファージを活性化するのに関与すること、および本明細書に報告される研究で見られる好中球レベルの減少は、本発明の方法および用法がまたILDの重篤度および進行を軽減するのに適用可能であることを実証するということが考えられる。
【0102】
ある好ましい態様では、ILDは、特発性の肺線維症である。他の好ましい態様では、ILDは、職業的および環境的な曝露に関連するものである。このようなILDの例は、石綿肺症、珪肺症、炭鉱作業員塵肺症およびベリリウム肺症である。さらに、セメント粉塵、コークス炉排出物、雲母、岩粉、綿ぼこりおよび穀物粉を含む、任意の多数の無機粉塵および有機粉塵に対する職業的曝露が、粘液過剰分泌および呼吸器疾患に関連すると考えられる(これらの状態に関連する職業的粉塵のさらに完全な列挙については、Speizer「Environmental Lung Diseases」Harrison’s Principles of Internal Medicine,後出、pp1429-1436の表254-1を参照のこと)。他の態様では、ILDは、肺のサルコイドーシスである。ILDはまた、特に乳癌のための医学的処置において放射線から、そして結合組織またはコラーゲン疾患、例えば関節リウマチおよび全身性硬化症から生じ得る。本発明の方法、用法および組成物は、これらの間質性肺疾患の各々において有用であり得ると考えられる。
【0103】
別のセットの態様では、本発明を用いて喘息の重篤度または進行を軽減する。喘息は代表的には、ムチンの過剰分泌を生じ、部分的な気道閉塞を生じる。さらに、気道の刺激は、気道閉塞を生じるメディエーターの放出を生じる。喘息の肺に補充されたリンパ球および他の免疫調節性細胞は、COPDまたはILDの結果として補充されたものとは異なり得るが、本発明は、免疫調節性細胞、例えば、好中球および好酸球の流入を軽減して、閉塞の程度を軽減することが期待される。従って、sEHインヒビターの投与およびEETと組み合わせたsEHインヒビターの投与は、喘息に起因する気道閉塞を軽減するのに有用であると期待される。
【0104】
これらの疾患および状態の各々において、肺に対する障害の少なくともある程度は、肺に浸潤する好中球によって放出される因子に起因すると考えられる。従って気道における好中球の存在は、この疾患または状態からの継続的な障害の指標であるが、好中球の数の減少は、障害の軽減または疾患の進行の指標である。従って、ある因子の存在下での気道中の好中球の数の減少は、この疾患または状態に起因する障害をこの因子が減少させており、そしてこの疾患または状態のさらなる発達を遅らせているということのマーカーである。肺に存在する好中球の数は、例えば、気管支肺胞洗浄によって決定され得る。
【0105】
これらの指標の全てについての治療的投与の条件は、上記のとおりである。
【0106】
可溶性エポキシド加水分解酵素を阻害する化合物
上記の方法に加えて、本発明は別の局面において、可溶性エポキシド加水分解酵素の活性を阻害し得る化合物を提供する。具体的には、本発明は、上記の式(I)および(II)から選択される式を有する化合物を提供する。好ましくは、この化合物は、11-(3-シクロヘキシルウレイド)-ウンデカン酸、11-(3-シクロヘキシルウレイド)-ウンデカン酸メチルエステル、11-(3-シクロヘキシルウレイド)-ウンデカン酸アミド、12-(3-シクロヘキシルウレイド)-ドデカン酸、および12-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド-ドデカン酸以外である。
【0107】
好ましい化合物は、列挙された用法について好ましいとして上記された化合物である。
【0108】
調製の方法
本発明の化合物は、以下のスキームにおいて一般的に概説されるような種々の方法によって調製され得る。
【0109】
スキーム1-二次ファルマコフォア(ケトン)の導入
スキーム1は、ケトン官能基である二次ファルマコフォアを有する本発明の化合物の調製のために用いられ得る一般的方法を図示する。このスキームは、1-(3-クロロフェニル)-3-(4-オキソデシル)尿素の合成のために提供されるが、当業者は、多数の市販のイソチオシアナートが、3-クロロフェニルイソシアナートの代わりに用いることができること、およびエチル4-アミノ酪酸またはヘキシルブロミドの短いアナログまたは長いアナログを使用することもできることを理解する。
【0110】
スキーム1:1-(3-クロロフェニル)-3-(4-オキソデシル)尿素(794)の合成

スキーム1:1-(3-クロロフェニル)-3-(4-オキソデシル)尿素(794)の合成:(a)ベンゾフェノンイミン、CH2Cl2、rt;(b)DIBAL、THF、-78℃;(c)Mg/I2、ヘキシルブロミド、THF、rt;(d)無水酢酸、DMSO、rt;(e)1N HCl/ジオキサン、rt;(f)3-クロロフェニルイソシアナート、TEA、DMF、rt。
【0111】
スキーム1に示されるとおり、エチル4-アミノブチラート塩酸塩(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wisconsin,USAから入手可能)を、室温でベンゾフェノンイミンと合わせて、中間体(i)を得る。エステル基のDIBAL還元によって、隔離されていないアルデヒド部分が得られ、これが次に適切なグリニャール試薬(インサイチューで調製された)と反応して、中間体アルコール(ii)が得られる。ケトンへのアルコール部分の酸化によって(iii)が得られ、次いでこれが脱保護されてアミノ-ケトン(iv)を形成することができる。適切なイソシアナートとの(iv)の反応によって、標的化合物(794)が得られる。例えば、アダマンチルイソシアナートまたはシクロヘキシルイソシアナート(これもAldrich Chemical Co.から入手可能)での3-クロロフェニルイソシアナートの置換によって、本発明の他の好ましい化合物が得られる。
【0112】
スキーム2:二次ファルマコフォア(エステルまたはアミド)の導入

スキーム2:1-(アリールまたはアルキル)-3-(3-アルキル化プロピル)尿素の合成:(a)アリールまたはアルキルイソシアナート、DMF,rt;(b)ブロモペンタン、K2CO3、NaI、アセトニトリル、還流;(c)ジ-t-ブチルジカルボナート、ジオキサン、50℃;(d)ペンチルアミン、クロロギ酸イソブチル、NMM、DMF、rt;(e)4M 塩酸、ジオキサン;(f)3-クロロフェニルイソシアナート、TEA、DMF,rt。
【0113】
スキーム2に示されるように、エステルまたはアミド官能基のいずれかである二次ファルマコフォアを有する種々の化合物を調製することができる。4-アミノ酪酸で開始して、適切なシクロアルキルまたはアリールイソシアナートでの処理によって、(v)として示される尿素中間体が得られ、ここでRは3-クロロフェニル、シクロヘキシルまたは1-アダマンチルである。当然ながら、所望の尿素中間体を得るために、他の適切なイソシアナートも使用することができる。例えば、臭化ペンチルを用いた(v)に存在するカルボン酸のアルキル化を介したエステル化によって、標的化合物767、772および789が得られる。種々の適切なハロゲン化アルキルを用いて、本発明の他の化合物を調製することができる。スキーム2で図示される第二の経路を用いて、768のような化合物、およびカルバミン酸塩である一次ファルマコフォアを有する化合物を調製することができる。従って、ジ-t-ブチルジカルバメートでの4-アミノ酪酸の処理によって、t-ブチルカルバミン酸(vi)が得られ、これが、例えば、クロロギ酸イソブチルおよびN-メチルモルホリン(NMM)を使用する穏やかな手順で、ペンチルアミンを用いて所望のアミド(vii)に変換される。カルバマート保護基(この場合にはこれが用いられるので)の除去、続いて適切なイソシアナートでの尿素の形成(ここで3-クロロフェニルイソシアナートとして示す)によって、標的化合物(例えば、768)が得られる。
【0114】
スキーム3:二次ファルマコフォア(エステル、カルボナート、カルバマート、アミドおよび尿素)の導入

スキーム3:1-(3-クロロフェニル)-3-(2-アルキル化エチル)尿素の合成:(a)3-クロロフェニルイソシアナート、DMF、rt;(b)無水ヘプタン酸(761)、クロロギ酸ペンチルエステル(760)、またはイソシアン酸ペンチル(762)、TEA、DMF、rt;(c)ジ-t-ブチルジカルボナート、ジオキサン、rt;(d)無水ヘプタン酸(765)、クロロギ酸ペンチルエステル(777)、またはイソシアン酸ペンチル(766)、DMF、rt;(e)4M HCl、ジオキサン;(f)3-クロロフェニルイソシアン酸塩、TEA、DMF、rt。
【0115】
スキーム3は、容易に接近可能な出発材料から、エステル、アミド、尿素、カルボナートおよびカルバマートである二次ファルマコフォアを導入するための種々の方法を図示する。Aでは、エタノールアミンを適切なイソシアン酸塩で処理して、尿素である二次ファルマコフォアを導入して、中間体(viii)を形成する。無水物、クロロギ酸エステルまたはイソシアン酸塩での(viii)の処理によって、それぞれ761、760および762のような化合物が得られる。Bで使用される同様の方法論で、保護/脱保護工程を追加する。従って、エチレンジアミンをt-ブチルカルバマートとして単一保護する。次いで遊離アミンを、「A」において使用したのと同じ反応物質および条件を用いて、アミド、カルバマートまたは尿素である二次ファルマコフォアに変換して、中間体(x)を得た。(x)の脱保護および適切なイソシアン酸塩との反応によって、標的化合物765、777および766を得る。ここでも、3-クロロフェニルイソシアン酸塩以外のイソシアン酸塩の使用によって、本発明の他の化合物がもたらされるが、例えば、(ix)〜(x)の変換において、用いられる特定の反応物質の置換によって、本発明のさらに他の化合物を得ることができる。
【0116】
スキーム4:三次ファルマコフォア(エステルおよびアミド)の導入

スキーム4:1-(1-アダマンチル)-3-(11-アルキル化ウンデシル)尿素の合成:(a)アダマンチルイソシアン酸塩、クロロホルム、還流;(b)アルキルまたはハロゲン化アリール、K2CO3、NaI、アセトニトリル、還流;(c)アルコールまたはアミン、イソブチルクロロギ酸塩、TEA、DMF、rt;(d)t-ブタノール、EDCI,DMAP、塩化メチレン、rt。
【0117】
スキーム4は、エステルまたはアミド官能基である三次ファルマコフォアの導入のための経路を図示する。各々の場合に、カルボン酸基は、所望のエステルまたはアミドに変換される。スキーム4に示されるように、12-アミノドデカン酸(Aldrich Chemical Co.)を、アダマンチルイソシアン酸塩での処理の際に尿素(687)に変換する。当業者は、種々のアルキル、アリールおよびシクロアルキルイソシアン酸塩を同様に使用して、一次ファルマコフォアとして他の尿素を形成することが可能であることを理解する。同様に、11-アミノウンデカン酸または別の長鎖アミノ脂肪酸は、12-アミノドデカン酸の代わりに用いることができる。次いで、カルボン酸部分を標準的な手順後にエステル化するかまたはアミド部分に変換して、例えば、780-785、788および800-804(エステルとして)および786、787、792および793(エステルおよびアミドとして)を得ることができる。
【0118】
以下の実施例は、本発明を例証するために示されており、そして上記にまたは添付の特許請求の範囲に示される本発明のいかなる局面も限定することは意図しない。
【0119】
実施例
全ての融点は、Thomas-Hoover装置(A.H.Thomas Co.)を用いて決定し、補正は行っていない。質量スペクトルは、LC-MS(Waters 2790)によって測定した。内部標準としてテトラメチルシランを用いて、1H-NMRスペクトルをQE-300分光計で記録した。シグナル多重度は、一重線(s)、二重線(d)、二重二重線(dd)、三重線(t)、四重線(q)、五重線(quint)、多重線(m)、幅広(broad:br)および幅広一重線(broad singlet:brs)として表す。合成方法は、代表的な化合物について記載する。
【0120】
以下の実施例における小文字で太字のローマ数字は、上記のスキーム1〜4における対応する中間体を指す。化合物番号はまた、スキームにおいておよび以下の表において示されるとおりに用いる。
【0121】
実施例1
1-(3-クロロフェニル)-3-(4-オキソデシル)尿素(794)の合成
1.00g(5.52mmol)のベンゾフェノンイミン、0.94g(5.52mmol)のエチル4-塩酸アミノ酪酸塩酸塩、および20mLの塩化メチレンを室温で24時間撹拌した。反応混合物を濾過して、NH4Clを除去して、エバポレートして乾燥させた。エチル4-アミノ酪酸(i)のベンゾフェノンSchiff塩基をエーテル(20mL)で抽出して、エーテル溶液を水(20mL)で洗浄して、硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥させて、濃縮した。残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(5:1)を流すシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して油状物としてi(1.00g、61%)を得た。ベンゾフェノンSchiff塩基(i)を含む20mLのテトラヒドロフラン(THF)の溶液に、3.7mLの1M水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)溶液を含むペンタン(3.73mmol)を-78℃で窒素下で添加して、その反応物を室温で2時間撹拌させた。0.10gのマグネシウムターニング(turning)(4.07mmol)およびI2(触媒量)を含むTHF(10mL)に0.48mLのヘキシルブロミド(3.39mmol)を室温で窒素下において添加した。1時間の撹拌後、この反応溶液を上記の反応混合物に-78℃で滴下して加え、その溶液を撹拌しながら室温まで温めた。室温での5時間の撹拌後、10mLのNaHCO3水溶液をこの反応物に添加し、次いでアルキル化アルコール(ii)をエーテル(20mL)で抽出して、エーテル溶液を水(20mL)で洗浄して、Na2SO4で乾燥し、濃縮して0.26g(60%)のアルコール生成物(ii)を得た。
【0122】
無水酢酸(2mL)をii(0.77mmol)を含む5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)の溶液に添加した。この混合物を室温で12時間静置させて、濃縮した。残渣をエーテル(20mL)で抽出し、このエーテルを水(20mL)で洗浄して、Na2SO4で乾燥し、エバポレートして0.26g(100%)のケトン化合物(iii)を得た。iiiを含むジオキサン(5mL)の溶液に、1N HClを含む1mLのジオキサンを室温で添加した。この反応混合物を2時間撹拌し、濃縮してケトアミン塩酸塩(iv)を得た。次いで、ivを5mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解して、トリエチルアミン(TEA、0.27mL、1.95mmol)および3-クロロフェニルイソシアナート(0.10mL、0.78mmol)を含むDMF(3mL)の溶液を用いて室温で処理した。5時間の撹拌後、この生成物をエーテル(30mL)で抽出し、このエーテルを水(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥して、乾燥するまでエバポレートした。残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を流すシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して、75mg(30%)の794を得た。

【0123】
実施例2
1-(3-クロロフェニル)-3-(3-ペントキシカルボニルプロピル)尿素(767)の合成
4-アミノ酪酸(1.41g、13.7mol)を含むDMF(25mL)の懸濁液に、3-イソシアン酸クロロフェニル(0.70g、4.56mmol;722についてはイソシアン酸シクロヘキシル、そして789については1-イソシアン酸アダマンチル)を室温で添加した。この反応混合物を24時間撹拌させた。次いで酢酸エチル(30mL)および1N HCl水溶液(30mL)をこの反応物に添加し、酸生成物を溶解している酢酸エチル層を収集した。この生成物は、水層からさらに2回酢酸エチル(20mL)を用いて抽出した。合わせた有機溶液をNa2SO4で乾燥してエバポレートした。残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を流すシリカゲルのカラムクロマトグラフィーを用いて精製して0.88g(75%)の尿素酸(v)を得た。v(0.50g、1.95mmol)、炭酸カリウム(K2CO3、0.54g、3.90mmol)、ブロモペンタン(0.37mL、2.92mmol)およびヨウ化ナトリウム(60mg、0.39mmol)を含むDMF(20mL)の混合物を室温で20時間撹拌した。次いでこの生成物をエーテル(20mL)で抽出して、このエーテルを1N NaOH水溶液(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄して、Na2SO4で乾燥し、エバポレートして0.59g(92%)の767を得た。

【0124】
以下の化合物を、同様の方式で調製した。

1-シクロヘキシル-3-(3-ペントキシカルボニルプロピル)尿素(772)

1-(1-アダマンチル)-3-(3-ペントキシカルボニルプロピル)尿素(789)

【0125】
実施例3
1-(3-クロロフェニル)-3-(3-ペンチルアミノカルボニルプロピル)尿素(768)の合成
4-アミノ酪酸(2.84g、27.5mol)を含むDMF(30mL)の懸濁液に、TEA(3.86mL、27.5mmol)を添加した。この混合物に、ジ-t-ブチルジカルボナート(2.00g、9.17mmol)を撹拌しながら添加した。この反応混合物を50℃に12時間加熱し、ついで、10分間、氷冷希塩酸(15mL)と撹拌した。t-ブトキシカルボニル化アミノ酸(vi)を直ちにエーテル(2×30mL)で抽出した。この有機抽出物をNa2SO4で乾燥して、エバポレートして、1.00g(54%)のviを油状物として得た。
【0126】
viおよび4-メチルモルホリン(NMM、0.54mL、4.92mmol)を含有するDMF(10mL)の溶液を、室温でクロロギ酸イソブチル(0.64mL、4.92mmol)を用いて処理した。30分後、ペンチルアミン(0.57mL、4.92mmol)を添加した。この反応混合物を12時間撹拌した。溶媒をエバポレートして、残渣を酢酸エチル(25mL)と水(25mL)との間で分配した。酢酸エチル層を5%NaHCO3(10mL)およびブライン(20mL)を用いて洗浄して、Na2SO4で乾燥して、エバポレートした。この残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を流すシリカゲルでクロマトグラフにかけて0.33g(33%)のt-ブトキシカルボニル化アミノアミド(vii)を得た。Viiを含むジオキサン(10mL)の溶液に、4M塩酸(2mL)を含むジオキサンで処理して、この混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、この溶液をエバポレートして、乾燥し、残留した固体をDMF(10mL)に溶解して、TEA(0.51mL、3.63mmol)および3-イソシアン酸クロロフェニル(0.15mL、1.21mmol)を用いて室温で処理した。5時間の撹拌後、この生成物をエーテル(30mL)で抽出し、このエーテルを水(30mL)で洗浄して、Na2SO4で乾燥し、乾燥するまでエバポレートした。この残渣をヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を流すシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.39g(100%)の768を得た。

【0127】
実施例4
1-(3-クロロフェニル)-3-(2-ヘキシルカルボニルオキシエチル)尿素(761)の合成
2-アミノエタノール(2.98g、48.8mmol)を含有するDMF(30mL)の溶液に、3-イソシアン酸クロロフェノール(2.50g、16.3mmol)を0℃で添加した。この反応混合物を室温で5時間撹拌した。この溶媒をエバポレートして、その残渣をエーテル(30mL)と1N塩酸(20mL)との間で分配して、そのエーテル層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥して、エバポレートした。この残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を流すシリカゲルでカラムクロマトグラフィーによって精製して、1.49g(40%)の尿素アルコール(viii)を白色固体として得た。
【0128】
viii(1.00g、4.60mmol)およびTEA(0.97mL、6.90mmol)を含有するDMF(15mL)の溶液に、無水ヘプタン酸(2.23g、9.20mmol)を含有するDMF(5mL)の溶液を室温で添加した。この反応物を12時間撹拌し、その溶媒をエバポレートした。その残渣をエーテル(30mL)と冷1N 塩酸(20mL)との間で分配した。このエーテル層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥して、エバポレートした。この残留固体を、シリカゲルでカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を用いて精製して、1.05g(70%)の761を得た。

【0129】
化合物760および762は、それぞれ、無水ヘプタン酸の代わりにクロロギ酸ペンチルエステルおよびイソシアン酸ペンチルから、化合物761について用いられるのと同じ方式で調製した。

1-(3-クロロフェニル)-3-(2-ペントキシカルボニルオキシエチル)尿素(760)

1-(3-クロロフェニル)-3-(2-ペンチルアミノカルボニルオキシエチル)尿素(762)
【0130】

【0131】
実施例5
1-(3-クロロフェニル)-3-(2-ヘキシルカルボニルアミノエチル)尿素(765)の合成
ジ-t-ブチルジカルボナート(0.50g、2.29mmol)を含有するジオキサン(20mL)の溶液を、1時間にわたって、1,2-ジアミノエタン(1.10g、18.3mmol)を含有するジオキサン(20mL)に添加した。この混合物を22時間撹拌させて、その溶媒を乾燥するまでエバポレートさせた。水(30mL)をこの残渣に添加して、不溶性のbis-置換生成物を濾過によって取り除いた。この濾液を塩化メチレン(3×30mL)で抽出して、この塩化メチレンをエバポレートして、ixを油状物(0.35g、95%)として得た。
【0132】
無水ヘプタン酸(0.91g、3.75mmol;777についてはクロロギ酸ペンチルエステル、そして766についてはイソシアン酸ペンチル)およびix(0.50g、3.13mmol)を含有するDMF(20mL)の溶液を、室温で2時間撹拌した。次いで、この溶媒をエバポレートした。この残渣をエーテル(30mL)と水(30mL)との間で分配した。このエーテル層をNa2SO4で乾燥して、エバポレートさせた。残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を流すシリカゲルでカラムクロマトグラフィーを用いることによって精製して、0.57g(67%)のアルキル化N-t-ブトキシカルボニルアミン(x)を得た。
【0133】
xを含有するジオキサン(10mL)の溶液を、ジオキサンに含まれる4M塩酸(2mL)で処理して、この混合物を室温で1時間撹拌した。次いでこの溶媒を乾燥するまでエバポレートし、その残留する固体をDMF(10mL)に溶解して、TEA(0.58mL、4.19mmol)および3-イソシアン酸クロロフェニル(0.32g、2.10mmol)を用いて室温で処理した。5時間の撹拌後、この生成物をエーテル(30mL)で抽出して、そのエーテルを水(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥して、乾燥するまでエバポレートした。この残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を流すシリカゲルでカラムクロマトグラフィーを用いることによって精製して、0.68g(100%)の765を得た。

【0134】
以下の化合物を、同様の方式で調製した。

1-(3-クロロフェニル)-3-(2-ペントキシカルボニルアミノエチル)尿素(777)

1-(3-クロロフェニル)-3-(2-ペンチルアミノカルボニルアミノエチル)尿素(766)

【0135】
実施例6
1-(1-アダマンチル)-3-(12-ドデカン酸)尿素(687)の合成
クロロホルム(30mL)中に1-アダマンチルイソシアナート(1.30g、7.34mmol)および12-アミノドデカン酸(1.46g、6.77mmol)を含む混合物を10時間還流した。この溶媒をエバポレーションによって除去して、その残渣を酢酸エチル(20mL)で洗浄して、2.66g(100%)の尿素酸生成物を白色固体として得た。

【0136】
実施例7
1-(1-アダマンチル)-3-(11-メトキシカルボニルウンデシル)尿素(780)の合成
アセトニトリル(20mL)中に化合物687(0.15g、0.38mmol)、K2CO3(64mg、0.46mmol)およびヨードメタン(54mg、0.38mmol)を含む混合物を10時間還流した。次いで、この反応混合物を濾過して、その濾液をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥して、エバポレートさせた。その残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を流すシリカゲルでカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、0.14g(92%)の780を白色固体として得た。

【0137】
化合物784、783、781、788、800、785、802、803、804および782を対応するハロゲン化物を用いて30〜95%の範囲の収率で同じ方式で調製した。
【0138】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-エトキシカルボニルウンデシル)尿素(784)

【0139】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-プロポキシカルボニルウンデシル)尿素(783)

【0140】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-アリルオキシカルボニルウンデシル)尿素(781)

【0141】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-プロパジルオキシカルボニルウンデシル)尿素(788)

【0142】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-ブトキシカルボニルウンデシル)尿素(800)

【0143】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-イソ-プロポキシカルボニルウンデシル)尿素(785)

【0144】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-sec-ブトキシカルボニルウンデシル)尿素(802)

【0145】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-イソブトキシカルボニルウンデシル)尿素(803)

【0146】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-ベンジルオキシカルボニルウンデシル)尿素(804)

【0147】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-(2-クロロベンジル)オキシカルボニルウンデシル)尿素(782)

【0148】
実施例8
1-(1-アダマンチル)-3-(11-(1-アダマンチル)メチルオキシカルボニルウンデシル)尿素(786)の合成
687(0.15、0.38mmol)およびTEA(96mg、0.96mmol)を含有するDMF(10mL)の溶液を、クロロギ酸イソブチル(52mg、0.38mmol)を用いて室温で処理した。30分後、アダマンタンメタノール(64mg、0.38mmol)を含むDMF(2mL)の溶液を添加した。この反応混合物を12時間撹拌した。この溶媒をエバポレートして、その残渣を酢酸エチル(25mL)と水(25mL)との間で分配させた。酢酸エチル層を5% NaHCO3(10mL)およびブライン(20mL)を用いて洗浄して、Na2SO4で乾燥して、エバポレートさせた。その残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチル(5:1)を流すシリカゲルでクロマトグラフィーして、72mg(35%)の786を白色固体として得た。

【0149】
化合物792、793および787は、アダマンタンメタノールの代わりに、それぞれエチルアミン、イソプロピルアミンおよび1-ナフタレンメタノールを用いてこの方式で調製した。
【0150】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-エチルアミノカルボニルウンデシル)尿素(792)

【0151】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-イソプロピルアミノカルボニルウンデシル)尿素(793)

【0152】
1-(1-アダマンチル)-3-(11-(1-ナフチル)メトキシカルボニルウンデシル)尿素(787)

【0153】
実施例9
1-(1-アダマンチル)-3-(11-t-ブトキシカルボニルウンデシル)尿素(801)の合成
化合物687(0.10g、0.25mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP、10mg、0.13mmol)およびt-ブタノール(23mg、0.31mmol)を含む塩化メチレン(20mL)の溶液に、1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI、50mg、0.25mmol)を室温で添加した。この混合物を20時間撹拌した。溶媒をエバポレートして、その残渣をエーテル(30mL)と水(30mL)との間で分配させた。エーテル層をNa2SO4で乾燥して、エバポレートさせた。ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を流すシリカゲルカラムクロマトグラフィーによるこの残渣の精製によって、21mg(18%)のt-ブチルエステルを白色固体として得た。

【0154】
実施例10
4-(3-シクロヘキシル-ウレイド)-酪酸(632)の合成
4-アミノ酪酸(2.16g、21mmol)および触媒量のDBUを含む22mLの1.0N NaOHの冷却溶液に、2.5g(20mmol)のイソシアン酸シクロヘキシルを1回で投与した。この混合物を室温で一晩強力に混合した。次いで反応物を濃HClで酸化した。形成された白色固体を濾過によって収集した。この混合物をシリカカラム(8×3cm)でのクロマトグラフィーによって精製した。ヘキサン:酢酸エチル:酢酸の50:50:1の混合物を用いた溶出によって、純粋な標的化生成物を得る。得られた白色結晶(3.46g;収率:76%)は、153.0〜154.0℃の融点を有した。[M+H]+281.18
【0155】
実施例11
2-[4-(3-シクロヘキシル-ウレイド)-ブチリルアミノ]-3-(4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸(632-Tyr)の合成
632(0.45g、2.0mmol)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ)-プロピル)カルボジイミド(0.5g、2.2mmol)を含む15mLのDMFの溶液に、0.53g(2.3mmol)のチロシンメチルエステルおよび2.4mmolのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この混合物を60℃で6時間加熱した。次いで、50mLの0.1N NaOHを添加して、その混合物を室温に一晩おいた。次いで、反応混合物を濃HClを用いて酸性にして、2:1混合のクロロホルム:メタノールを用いて2回抽出した。有機相をプールして、乾燥し、エバポレートした。その残渣をシリカカラム(5×4cm)でのクロマトグラフィーによって精製した。酢酸エチル:メタノール:酢酸の75:25:1混合物での溶出によって、140mg(収率:18%)の標的生成物を褐色の油状液体として得た。LC-MS-ESネガティブモード:390.3(100%、[M-H]-)、290.9(10%、[M-C6H10N]-)、264.9(5%、[M-C7H12NO]-);ポジティブモード:392.5(40%、[M+H])、264.95(100%、[M-C7H10NO])。
【0156】
実施例12
本実施例によって、カルボン酸またはカルボキシルメチルエステル官能基である二次ファルマコフォアを有する本発明の化合物による、マウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害をアッセイし、その阻害を例証する。
【0157】
酵素調製物
組み換えマウスsEHおよびヒトsEHをバキュロウイルス発現系において生成して、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した34,35,36。この調製物は、SDS-PAGEおよびスキャンニング・デンシトメトリーによって判定した場合少なくとも97%純粋であった。このsEHアッセイを妨げ得る、検出可能なエステラーゼ活性もグルタチオントランスフェラーゼ活性も観察されなかった37。タンパク質濃度は、較正標準として第V画分のウシ血清アルブミンを用いてPierce BCAアッセイを用いることによって定量した。
【0158】
IC50アッセイ条件
IC50値は、基質としてラセミ体の4-ニトロフェニル-trans-2,3-エポキシ-3-フェニルプロピルカルボナートを用いることによって記載のとおり決定された37。酵素(0.12μMマウスsEHまたは0.24μMヒトsEH)を、基質導入([S]=40μM)の前に、リン酸ナトリウム緩衝液、0.1M pH 7.4中で30℃で5分間インヒビターとともにインキュベートした。405nmの4-ニトロフェノラートアニオンの出現を30℃で1分間測定することによって活性を評価した(Spectramax 200;Molecular Devices)。アッセイは3連で行なった。IC50は、酵素活性が50%に低下するインヒビターの濃度であり、これは、IC50のいずれかの側の曲線の直線領域における最小の2点を用いて少なくとも5つの基準点の回帰によって決定した。この曲線は、各々3連の少なくとも3つの別の実施から作成して、表1〜表4に示される標準偏差(SD)を得た。
【0159】
アッセイは、上記の表1に示される化合物を用いて行なった。
【0160】
(表1)1-シクロヘキシル-3-n-(置換)アルキル尿素によるマウスおよびヒトsEHの阻害a

a酵素(0.12μMマウス sEHおよび0.24μM ヒト sEH)を、基質導入([S]=40μM)の前に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中でインヒビターとともに30℃で5分間インキュベートした。結果は、3つの別々の実験の平均±SDである。
【0161】
上記の表からわかるとおり、カルボン酸官能基のそのメチルエステルへの変換(549、635および774)によって、マウスおよびヒトの両方のsEHの阻害能力が増大した。さらに、ブタン酸のメチルエステル(774)は、両方の酵素にとって酢酸およびプロピオン酸のエステル(549および635)よりも8〜100倍高い活性を示し、これによって、一次尿素ファルマコフォアのカルボニルから3炭素単位(4番目の炭素上のカルボニル、尿素カルボニルから約7.5Å)に位置する極性の官能基が、水溶性の改善された強力なsEHインヒビターを作成するために有効であり得ることが示される。さらに、化合物854中の一次尿素ファルマコフォアのカルボニルから二次エステルファルマコフォアへの距離は、約8.9Åであり、このことは、この二次ファルマコフォアが、一次尿素ファルマコフォア基のカルボニルから約7Å〜約9Åに位置し得ることを示す。
【0162】
実施例13
本実施例は、一次ファルマコフォアのみを有する化合物に比較して、二次ファルマコフォアを有する本発明の化合物によるマウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を例証する。表2の結果からわかるとおり、この活性は比較的一貫している。
【0163】
アッセイは、確立されたプロトコールに従って、表2に示される化合物を用いて行なった(上記を参照のこと)。
【0164】
(表2)1-シクロアルキル-3-アルキル尿素によるマウスおよびヒトsEHの阻害a

a酵素(0.12μMマウス sEHおよび0.24μM ヒト sEH)を、基質導入([S]=40μM)の前に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中でインヒビターとともに30℃で5分間インキュベートした。結果は、3つの別々の実験の平均±SDである。
【0165】
上記の表に示されるとおり、シクロヘキシル(772)またはアダマンチル(789)を用いたRでの置換によって、インヒビターの力価は、3-クロロフェニルアナログ(767、以下の表3を参照のこと)よりも10倍大きくなった。さらに、極性基で官能化されたこれらの化合物は、マウスおよびヒトの酵素の両方について、非官能化脂肪親和性インヒビター(例えば、791、790、297および686)と同じく活性かつ強力であった。化合物に対する極性基を付加することによって一般に、それらの水溶性が、化合物772または789〜791および790に比較した場合増大した。さらに、酵素触媒部位の外側の水和の水を取り去るには、インヒビターと酵素との間の新しい水素結合を形成することによって得られるエネルギーのほぼ同じ量が必要である。従って、標的酵素に対して水素が結合する極性基の付加は、このインヒビターが既に強力である場合、劇的に力価を増大することはない。しかし、さらなる極性基の存在は、一次標的(sEH)以外の生物学的分子に対する疎水性結合を低下させることによって特異性を劇的に増大することが予想され得る。この方法では、いくつかの活性ファルマコフォアの単独の分子への組み合わせはしばしば、複雑な生物学的系において特異性および生物学的活性のかなりの増大を有する。
【0166】
実施例14
本実施例は、ケトン、アミド、アルコール、カルボナート、カルバマート、尿素、カルボキシラートエステル官能基である二次ファルマコフォアを有する本発明の化合物によるマウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を例証する。
【0167】
表1に示す最初の活性に基づいて、親油性のsEHインヒビターの水溶性を改善するため、一次尿素ファルマコフォアのカルボニルからおよそ7.5Åに位置する極性カルボニル基を有する尿素化合物を調製した(192および686)。以下の表は、カルボニル基に寄与し、二次ファルマコフォアと命名されるケトン、エステル、アミド、カルボナート、カルバマートおよび尿素のような種々の官能基を示す。この二次ファルマコフォアの各々についての効果を決定するために、3-クロロフェニル基を尿素ファルマコフォアの置換基の1つとして一定に保持した。3-クロロフェニル基はまた、クロマトグラフィーを介して迅速に化学反応をモニタリングするために特に有用である。二次ファルマコフォアを最適化した後に、アリール置換基を、シクロヘキシル、アダマンチルまたはより強力なインヒビターをもたらす他の基で置換してもよい。
【0168】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表3に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0169】
(表3)1-(3-クロロフェニル)-3-(2-アルキル化エチル)尿素によるマウスおよびヒトのsEHの阻害a

a酵素(0.12μMマウス sEHおよび0.24μM ヒト sEH)を、基質導入([S]=40μM)の前に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中でインヒビターとともに30℃で5分間インキュベートした。結果は、3つの別々の実験の平均±SDである。
【0170】
カルボニル(X)の左側が、メチレンカーボンであるときは、メチレンカーボン(ケトン794)または酸素(エステル767)が右位置(Y)に存在する場合に最高の阻害が得られた。エステル結合は、アルコールもしくは酸性部分または両方の立体障害によって安定化され得る(805)。窒素の存在(アミド、768)によって活性は低下した。カルボニル基の左側に酸素を有する化合物では、活性の>10倍を超える低下が観察され、右位置では、Yが、それぞれメチレンカーボン(エステル、761)、酸素(カーボナート、760)または窒素(カルバメート、762)で修飾された場合でさえ、活性に変化がなかった。左位置に窒素を有する全ての化合物(765、777および766)は、794または767よりも低い活性を有した。化合物767および761と比較して、カルボニル周囲のメチレンカーボンの存在は、阻害活性に対して極めて異なる効果を示した。カルボニルの左側にメチレンカーボンを有する化合物(767)は、右側に有する化合物(761)よりも20倍大きい阻害を示した。このインヒビターのシリーズの力価の序列は、マウスおよびヒトのsEHと等価であったが、マウスの酵素については3〜5倍高い阻害力価が観察された。
【0171】
実施例15
本実施例は、二次ファルマコフォアを有さないが、アミドまたはカルボキシラートエステル官能基(アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアリールアルキルエステル基を有する)である三次ファルマコフォアを有する本発明の化合物による、マウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を例証する。
【0172】
12個の炭素鎖の末端にカルボン酸基を有する化合物687は、マウスおよびヒトの酵素の両方の優れたインヒビターであることが見出された。さらに、あるエステルは適切な二次ファルマコフォアであることが見出された。結果として、三次ファルマコフォアの寄与を検討するため、尿素ファルマコフォアから11炭素単位に位置するカルボニル基を有する種々のエステル誘導体を合成して評価した。
【0173】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表4に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0174】
(表4)1-(1-アダマンチル)-3-(11-アルキル化ウンデシル)-尿素によるマウスおよびヒトのsEHの阻害a

a酵素(0.12μMのマウスsEHおよび0.24μMのヒトsEH)を、基質導入([S]=40μM)の前に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中でインヒビターとともに30℃で5分間インキュベートした。結果は、3つの別々の実験の平均±SDである。
【0175】
短い鎖の末端での極性基の存在は両方の酵素の阻害力価を低下したが(表1を参照のこと)、カルボン酸が種々の脂肪族基(780、784、783、781、788、800、785、801、802および803)でエステルに修飾された場合、阻害力価は、両方の酵素について酸(687)の場合と同じ程度に高かった。エチル(792)およびイソプロピル(793)アミド誘導体はまた強力なインヒビターであった。メチル分枝脂肪族鎖を有する化合物も強力であった(785、801、802、803および793)。なおさらに、それより大きいバルキーな基、例えば、1-アダマンチルメチル(786)、ベンジル(804)、2-クロロベンジル(782)または2-ナフチルメチル(787)によって、両方の酵素についてわずかに低下した(1.5〜3倍)が良好なレベルの活性が得られる。これらの結果によって、第三の極性機能、すなわち三次ファルマコフォアの包含を可能にするsEHインヒビター構造内のさらなる部位が同定された。
【0176】
実施例16
本実施例は、カルボン酸エステル官能基である二次および三次ファルマコフォアの両方を有する本発明の化合物による、マウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素をアッセイし、その阻害を例証する。
【0177】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表5に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0178】
(表5)4-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド)ブチリルオキシ化合物によるマウスおよびヒトのsEHの阻害

a一次尿素ファルマコフォアのカルボニル基から伸びる原子の総数、TA=n+7
b酵素(0.12μMマウス sEHおよび0.24μM ヒト sEH)を、基質導入([S]=40μM)の前に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中でインヒビターとともに30℃で5分間インキュベートした。結果は、3つの別々の実験の平均±SDである。
ccLogP:CS ChemDraw 6.0バージョンを用いることによるCrippenの方法によって算出したlog P。
【0179】
上記の表からわかるとおり、二次エステルファルマコフォアと三次エステルファルマコフォア(549、635および774)との間の距離が増大すれば、ヒトsEHの阻害力価は増大するが、マウスEHの活性は比較的一定のままであった。
【0180】
実施例17
本実施例は、二次エーテルファルマコフォアを有する本発明の化合物(式(I))による、マウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を例証する。
【0181】
一次尿素ファルマコフォアのカルボニルから種々の距離に位置する極性のエーテル基を有するアダマンチル-尿素化合物を調製した。これらの化合物は、親油性sEHインヒビター(192および686)の水溶性を改善するために調製した。表6の結果からわかるとおり、その活性は比較的一定である。
【0182】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表6に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0183】
(表6)アルキルエーテル誘導体によるマウスおよびヒトのsEHの阻害

【0184】
上記の表からわかるとおり、単独のエーテル基で官能化されたこれらの化合物は、マウスおよびヒトの酵素の両方について非官能化親油性インヒビター(790、上記の表2を参照のこと)と同じく活性かつ強力であり得る。これらの化合物に対する極性のエーテル基の付加によって、それらの水溶性が増大した(化合物866〜870を790と比較)。化合物869における一次尿素ファルマコフォアのカルボニルから二次エーテルファルマコフォアの距離は約8.9Åであり、このことはこの二次ファルマコフォアが、一次尿素ファルマコフォア基のカルボニルから約7Å〜約9Åに位置し得ることを示す。
【0185】
本実施例は、二次のエーテルまたはポリエーテルファルマコフォアを有する本発明の化合物(式(I))による、マウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を、三次ファルマコフォアをさらに含む化合物と比較して例証する。
【0186】
エーテル二次ファルマコフォアを有する化合物は、マウスおよびヒトの酵素の両方の適切なインヒビターであることが見出されたので、種々のポリエーテル誘導体を合成して、三次ファルマコフォアの寄与とともに評価した。表7の結果からわかるとおり、活性は比較的一定である。
【0187】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表7に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0188】
(表7)置換されたエーテル誘導体によるマウスおよびヒトのsEHの阻害

【0189】
2つから4つのエーテル基を有する化合物(908、950および952)は、マウスおよびヒトの酵素の両方について非官能化親油性インヒビター(790、上記の表2を参照のこと)と同じく高い阻害力価を有し、そして水溶性が向上して薬物動態が改善されていた。三次ファルマコフォアを含むことはまた、強力なインヒビターであったが、それらの活性をさらに増大することはなかった(化合物913および940を908と、および化合物951を950と比較する)。
【0190】
本実施例は、アリーレンまたはシクロアルキレンリンカーを有する本発明の化合物(式(I))による、マウスおよびヒトの可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を例証する。
【0191】
一次ファルマコフォアと二次ファルマコフォアとの間にアルキレンリンカーを有する化合物は、マウスおよびヒトの酵素の両方の優れたインヒビターであることが見出されたので、リンカーの寄与を検討するために一次尿素と二次ファルマコフォアとの間にフェニルまたはシクロヘキシルスペーサーを有する種々のアダマンチル-尿素誘導体を合成して、評価した。
【0192】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表8に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0193】
(表8)置換されたフェニルおよびシクロヘキシル誘導体によるマウスおよびヒトのsEHの阻害

【0194】
アルキレンおよびアリーレンリンカー基を有する化合物(859および861)は、形態学(化合物859を860と比較、そして化合物861を863と比較)または二次ファルマコフォアのタイプ(化合物860および863をと909と比較)とは独立して、マウスおよびヒトの酵素の両方について、アルキレンリンカーを有する化合物(789(上記表2を参照のこと)、および868(上記表6を参照のこと))よりも高い阻害力価を有した。
【0195】
実施例20
本実施例は、二次ファルマコフォアを有し、そして単一アミノ酸部分をさらに含む本発明の化合物(式(II))による、マウス可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を例証する。本実施例はさらに、化合物調製および評価に向かうコンビナトリアルアプローチの使用を例証する。
【0196】
コンビナトリアルアプローチの有用性は、一つまたは複数の天然または合成のアミノ酸とのアミド結合を形成する、表9および表10由来のブタン酸誘導体を用いることによって例証される。このアプローチによって極めて活性であり、かつ腸のペプチド取り込み系によって認識され得る多数の化合物が容易にもたらされる。上記に示すとおり、極性基は、尿素官能基から適切な距離に位置する場合、活性の損失なしにジアルキル-尿素sEHインヒビターのアルキル基の1つに組み込まれ得る。これらの修飾によって、溶解度およびアベイラビリティーの優れた新規なインヒビターを得る。インヒビター構造精練のこの評価を拡大するために、セミコンビナトリアルアプローチをアミノ酸で用いた。アミノ酸は、広範な種々の側鎖を有する単純な二官能性シントンであるので、4-(3-シクロヘキシル-ウレイド)-酪酸625のモノペプチドおよびジペプチド誘導体を合成した。この親の化合物(酸625)は、sEHの低い阻害によって選択された。さらに、ペプチド結合を作製するために、1-エチル-3-(3-(ジメチルアミノ)-プロピル)カルボジイミドのような、それ自体またはその反応生成物、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ)-プロピル尿素がsEHのインヒビターではない反応物質を用いた。従って、観察された任意の阻害は、標的されたペプチド性誘導体由来であった。このアプローチによって、この生成物の精製なしに分析的スケール(10μmol)での化合物の調製が可能になる。所望の生成物の存在を、LC-MSによって確認し、そして所望の化合物と出発物質とのLC-MSピークの比を用いて、反応収率を見積もった。各々のインヒビターは、ネガティブモードイオン化のための唯一のカルボキシル基であるので、収率の推定はかなり定量的である。
【0197】
4-(3-シクロヘキシル-ウレイド)酪酸(632)のアミノ酸誘導体の合成を分析スケールで行なった。反応は、各々のアミノ酸について2mLのガラスバイアル中で行なった。100mM(10μmol)の632のDMF溶液100μLに、100mM(20μmol)の1-エチル-3-(3-(ジメチルアミノ)-プロピル)カルボジイミドのDMF溶液200μLを添加した。室温での15分の反応後、90:10のDMF:1N NaOHに100mM(40μmol)のアミノ酸メチルエステル溶液400μL液を添加した。この反応物を40℃で一晩強力に混合した。次いで、300μlの1N NaOHを添加して、40℃で一晩反応させた。生成物形成は、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)を用いて各々のアミノ酸について確認した。反応溶液は、インヒビター力価測定のために10mMという理論濃度で直接用いた。
【0198】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表9に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0199】
(表9)4-(3-シクロヘキシル-ウレイド)-酪酸(632)のモノアミノ酸誘導体によるマウスのsEHの阻害

結果は3つの別々の実験の平均±SDである。
【0200】
芳香族誘導体(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、ヒスチジンおよびリジンについて阻害力価の有意な改善が観察された。ここでも、理論的に拘束されることは意図しないが、列挙した5つのペプチド性インヒビターとの酵素の相互作用の特異性は、二次ファルマコフォアに近接して位置するトリプトファン334(Trp334)と上記の5つのアミノ酸のうち4つを有する芳香族部分との間の特異的なπ-πスタッキングから生じると考えられる。この相互作用は、酵素の蛍光スペクトルを変化するはずである。リジン誘導体について、反応は側鎖アミノ基で生じ得るので、得られた生成物は、第三のファルマコフォアの役割を果たす酸性機能を有する上記の合成されたアルキル誘導体を模倣し得る。
【0201】
実施例21
本実施例は、二次ファルマコフォアを有し、そしてジペプチド部分をさらに含む本発明の化合物(式(II))による、マウス可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害を例証する。
【0202】
アミノ酸誘導体シリーズにおける化合物、625-Tyrは、数百ナノモル範囲の阻害力価を示し、これによって第二のアミノ酸を付加する効果の評価が示唆された。
【0203】
上記の方式と同様の方式で、632のジペプチド誘導体の例である、2-[4-(3-シクロヘキシル-ウレイド)-ブチリルアミノ]-3-(4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸(632-Tyr)のアミノ酸誘導体の合成を、分析スケールで行なった。合成は、この化合物を632-Tyrによって単に置換している632の誘導体について上記したとおり行なった。生成物の形成はESI-MSによって確認した。
【0204】
確立されたプロトコール(上記を参照のこと)に従って、表10に示した化合物を用いてアッセイを行なった。
【0205】
(表10)4-(3-シクロヘキシル-ウレイド)-ブチリル-チロシンのモノアミノ酸誘導体によるマウスsEHの阻害

結果は3つの別々の実験の平均±SDである。
【0206】
アラニン、イソロイシン、ロイシンおよびトレオニンを除いて、試験したほぼ全ての誘導体について阻害力価の有意な改善が観察された。これらの結果によって、酵素は活性部位トンネルの末端に向かうよりも触媒中心に対して近い、より狭い特異性を有することが示される。最高のジペプチド誘導体に見出される阻害力価は、対応するアルキルインヒビターについて見出される阻害力価と同様であり(C.Morisseau,et al.,Biochem.Pharm.63:1599〜1608(2002)を参照のこと)、これによって、このようなペプチド模倣物がsEHの優れたインヒビターであることが示される。アミノ酸誘導体のそれらの構造での存在のおかげで、これらの化合物は優れた水溶性を有する。さらに、腸における活性な低分子ペプチド輸送系の存在のおかげで、ジペプチド性尿素誘導体は、いくつかのペプチド誘導薬物について観察されるようにこのような系によって腸で吸収され(E.Walter,et al.,Pharm.Res.12:360-365(1995)、およびK.Watanabe,et al.,Biol.Pharm.Bull.25:1345-1350(2002)を参照のこと)、これによってこれらの化合物は優れたバイオアベイラビリティーであることが示される。
【0207】
実施例22
本実施例によって、sEHの特定のインヒビターの代謝安定性に関する研究が提供される。
【0208】
これらのインヒビターの代謝安定性を評価するため、多数の強力なsEHインヒビターのミクロソームおよびNADPH依存性の代謝を評価した。化合物の間で代謝の速度は劇的に異なったが、n-アルカン置換基を含む全てのインヒビターについてω末端酸の存在が観察された。試験した場合、強力なアルキル誘導体(例えば、686)は、p450依存性プロセスによってミクロソーム調製物中で急速に代謝される(図6を参照のこと)が、ω酸アナログ(例えば、687)は安定であった(図7を参照のこと)。n-アルキルからn-アルカノン酸誘導体への代謝性の変換における第一の工程は、げっ歯類およびヒトの肝臓組織調製物において、チトクロムP450依存性ω水酸化によって行なわれるNADPH依存性プロセスである(図8を参照のこと)。この代謝経路にそって同定された代謝物を表11に示す。インビボ代謝を評価した場合、アルカン酸誘導体のβ酸化の証拠も見出された(図9を参照のこと)。まとめると、これらのデータによって、P450ω水酸化は、急速なインビボ代謝不活性化およびこれらのインヒビターの排出を生じ得ることが示される。
【0209】
(表11):化合物686から形成された代謝物の構造

【0210】
実施例23
本実施例によって、エラスターゼ依存性不活性化を遅らせるか、β酸化をブロックするか、チトクロムP450依存性ω水酸化をブロックするか、またはチトクロムP450ω水酸化を阻害するように設計された本発明の化合物の構造が提供される。
【0211】
β酸化は、種々の方法で、例えば、αハロゲンまたはα分枝アルキル基(806)、シクロプロパン(807)もしくは芳香族基(808)を用いて、またはスルホンアミド(809および810)のような別の官能基で酸またはエステル官能基を置換して、エステルおよび酸性官能基を模倣し、さらにインビボで代謝安定性を提供することによってブロックできる。同様に、薬理学的な複素環式基を水素結合の供与体および受容体として用いてカルボン酸およびエステルを模倣する(811)。さらに、P450ω水酸化は、アセチレン(812)、トリフルオロメチル(813)またはアリール(814)基をそのアルキル鎖の末端に含むことによってブロックし得る。この一連のインヒビターによってまた、二次および三次ファルマコフォアの両方を用いて、置換は、カルボニルを他の官能基で水素結合の供与体および受容体として行なうことができることが例証される。
【0212】
(表12)β酸化およびP450ω水酸化を防ぐように設計したsEHインヒビターの構造

R1およびR2=アルキルまたはアリール基、R3=アルキル基(エチルまたはブチル)。
【0213】
実施例24
本実施例によって、シクロヘキシルおよびアダマンチル基の安定性および溶解度の比較を例証する。
【0214】
代謝研究の間の別の一貫した観察は、アダマンチル置換基(両方とも置換された192および686)によって安定性の改善された化合物が得られるということであった(図6を参照のこと)。驚くべきことに、アダマンチル化合物は、相当するシクロヘキシル誘導体よりもほぼ2倍安定性であった(772対789、791対790、および297対686、構造については表2を参照のこと)。驚くべきことに、アダマンチル置換基を含む化合物のLC-MS/MS分析で生じた衝突誘発性解離によって、極めて豊富な量のイオンが生じ、これはこれらのインヒビターの分析上の感度を劇的に向上した(下の表13を参照のこと)。この増強された感度は、インビボまたはインビトロの系のいずれを用いる薬物代謝研究にとっても明確な利点である。さらに、アダマンタンは最小のひし形の核を示し、そしてアダマンチル置換基は代謝安定性および薬物動態パラメーターの改善された化合物を生じるだけでなく、検出が極めて容易である化合物も生じる。
【0215】
(表13)HPLC-MS/MSによって分析したインヒビターの検量線および検出限界(DL)

【0216】
実施例25
本実施例によって、本発明の化合物を用いて行なう薬物動態学的研究が得られる。
【0217】
最も強力なsEHインヒビターのうちのいくつかの薬物動態学的特性を、マウスにおいて経口胃管栄養法に従って評価した。上記のように、1-アダマンチル尿素インヒビターの使用によって、精緻な感度が得られ、これによって個々のマウスから集めた一連の血液サンプルから決定した薬物動態学的パラメーターの決定が可能になった(表14を参照のこと)。
【0218】
動物
6週齢の雄性Swiss WebsterマウスをCharles River(CA、USA)から入手した。1〜2週の馴化期間の後、健康な動物を体重で層化した無作為手順に基づき研究群に割り当てた。全ての実験で用いた動物の体重は28g〜38gの範囲に及んだ。管理した温度および湿度の条件下で、食物および水は自由に与え、12時間明野/12時間暗野のサイクルでマウスを飼育した。
【0219】
投与および測定
マウスでの薬物動態学的研究では、コーン油および4%のDMSOに溶解したsEHインヒビターの5mg/kgの用量を経口投与して用いた。一連の尾から採取した血液サンプル(5〜10μL)は、LC-MS/MS:30×2.1mm 3μm C18 XterraTMカラム(Waters)およびMicromass Quattro Ultimate三連四重極タンデム質量分析計(Micromass,Manchester,UK)を装備したWaters 2790液体クロマトグラフィーを用いることによって親の化合物およびそれらの代謝物を測定するために、投与後異なる時点(0.5、1、2、3、4、5、6および24時間)でヘパリン処理1.5mLチューブに採取した。収集したサンプルに100μLの蒸留水、25μLの内部標準(500ng/mL;1-シクロヘキシル-3-テトラデシル尿素、CTU)および500μLの酢酸エチルを加えた。次いで、このサンプルを6000rpmで5分間遠心分離して、酢酸エチル層を窒素下で乾燥させた。この残渣を25μLのメタノールに再構成して、アリコート(5μL)をLC-MS/MSシステムに注入した。
【0220】
ヒト被験体を用いる薬物動態学的研究には、オリーブオイルに溶解した0.1〜1.0mg/kgの用量のsEHインヒビター(800)または0.3mg/kg用量の687の経口投与を使用した。連続的に採血した血液サンプル(3〜50μL)を、投与後種々の時点(0.5、1、2、4、6、12および24時間)で、フィンガーチップから50μLのヘパリン処理キャピラリーチューブに収集した。これらのサンプルは、マウスでの実験について上記されたようにLC-MS/MSを用いて親化合物およびそれらの代謝物を測定するために用いた。血液サンプルに400μLの蒸留水および25μLの内部標準(500ng/mL CTU)を添加して、ボルテックスした。次いで、この血液サンプルを500μLの酢酸エチルを用いて2回抽出し、その酢酸エチル層を窒素下で乾燥させた。その残渣を25μLのメタノールに再構成して、アリコート(10μL)を上記のようなLC-MS/MSシステムに注入した。生物学的な終点は、The University of California Davis Clinical Laboratoryで行なった臨床化学サンプルに由来しており、そしてC反応性タンパク質を含む一連の6つの炎症性マーカーは、University of California Davis Department of Nephrologyで盲検的に行なった。
【0221】
分析
SigmaPlotソフトウェアシステム(SPSS science,Chicago,IL)を用いて薬物動態学的分析を行なった。経口胃管投薬についての血液濃度時間プロフィールについては1コンパートメントモデルを用い、以下の式にあてはめる(Gibson,G.G.およびSkett,P.:INTRODUCTION TO DRUG METABOLISM,SECOND ED.,Chapman and Hall,New York 1994,199-210を参照のこと):
C=ae-bt
排泄相についての半減期(t1/2)は、以下の式によって算出した:
t1/2=0.693/b
濃度の曲線下面積(AUC)は、以下の式によって算出した:
AUC=a/b
式中、
- C=時点tでの総血中濃度
- a=外挿されたゼロ切片
- b=みかけの一次排泄速度定数
である。
【0222】
(表14)1-(1-アダマンチル)-3-(11-アルキル化ウンデシル)尿素の薬物動態学的パラメーターa

a5mg/kgの用量の化合物を雄性Swill Websterマウスに経口投与した、b最大濃度、c最大濃度時間、d濃度曲線下面積、e半減期。
【0223】
エステル化合物は経口投与された場合、一般に酸化合物(687)に加水分解された。結果として、表14に記載された最大濃度は、血中の687の最大濃度に相当する。遊離の酸出現の時間経過の例を図10に示す。化合物687が経口投与される場合、30分で最大濃度(686より2倍大きい)に達したが、化合物686は、2時間でその最大濃度に達した(表14を参照のこと)。さらに、687の曲線下面積(AUC)は2倍高く、このことは、経口のバイアベイラビリティーの改善を示す。一次エステルの最大濃度(780、784、783、781、788、800、803および804)エステルは、687よりも1.5〜5倍高かった。AUCはエステル化合物について1.2〜2.3倍増大し、このことによってさらに高いバイオアベイラビリティーが示される。一方では、二級エステル(785および802)は、マウス中での687と同様の最大濃度およびバイオアベイラビリティーを示したが、三級エステル(801)は、最大濃度およびバイオアベイラビリティーの4〜8倍の低下を示した。従って、一級エステルを形成するための強力な酸インヒビター(687)のアルキル化によって、これらのインヒビターの経口のアベイラビリティーが改善される。これらの結果に従って、男性における化合物687および800の薬物動態の予備調査を行なった(図11を参照のこと)。この知見によって、一般的なげっ歯類でヒトの前の臨床試験の良好なモデルが得られることが示唆される。
【0224】
実施例26
本実施例は、存在する3つ全てのファルマコフォアを有する本発明の化合物についての構造の表を示す。
【0225】
(表15)一次、二次および三次ファルマコフォアを含むsEHインヒビターの構造

Z=OまたはNH、R=アルキル基(エチルまたはブチル)
【0226】
一次尿素ファルマコフォアは、同様にsEHインヒビターの物理的特性を改善するためにアミドまたはカルバマート官能基で変化され得る(化合物番号):AおよびB=CH2、O、またはNH、R2、およびR3=Hまたはメチル基、Y=CH2、OまたはNHである。カルボニルは、表12に示されるように複素環または非環式の水素結合受容体および供与体によって置換されてもよい。
【0227】
実施例27
本実施例は、げっ歯類における血清および尿のオキシリピンプロフィールに対するsEHインヒビターの効果を示す。
【0228】
記載された可溶性エポキシドインヒビターは、処理された動物で形成されたエポキシおよびジヒドロキシ脂肪酸の相対的な存在度および量を調節することが示されている。この変更のこのような例の1つを図14に示す。本実施例では、アンジオテンシンII(ANGII)の注入によって1群のSprague-Dawleyラットで高血圧を誘導した。第二群のラットにはANGIIおよびsEHインヒビター1-アダマンチル-3-(ドデカン酸)尿素(すなわち、化合物687)のモデルの皮下注射の両方を与えた。化合物687に対する曝露後24時間、尿サンプルを収集して、リノール酸塩(パネルA)およびアラキドン酸塩(パネルB)に由来するエポキシドおよびジオールについてLC/MS/MSを用いて分析した。図14に示されるように、ANGII曝露によって、リノール酸塩(EpOME)およびアラキドン酸塩(EET)の両方に由来するエポキシドの濃度が低下し、アラキドン酸塩に由来するジオール(DHET)が増大したが、リノール酸塩に由来するジオール(DHOME)は増大しなかった。両方の脂質のクラスとも、化合物687で処理した動物は、尿のエポキシドが増大し、ジオール濃度が低下する。
【0229】
実施例28
本実施例は、ESRDを有する患者における血液尿素質素およびC反応性タンパク質に対するAUDAブチルエステル(800)の効果を示す。
【0230】
(表16)末期腎疾患(ESRD)を有する患者における血液尿素窒素およびC反応性タンパク質に対するAUDAブチルエステル(800)の効果

ESRDは、体表面積補正したクレアチニンクリアランスの14mL/分として規定した。正常は70〜130。
#AUDAブチルエステルの総用量は、血液検査の前6日間に8時間の間隔で2mlのオリーブオイルの3つの等しい用量にとって、0.5mg/Kg・日である。
C反応性タンパク質の正常値を議論する。データは両方のトライアルについての2つのサンプルの範囲を示す。検出限界は0.01である。
@BUNはテキストの前に30ヶ月間平均が47.2+/-3.8(n=13)であって、30ヶ月の期間にわたって一定に増大した。
+2週間前(n=6)および薬物トライアルの間(n=10)に複数回とった休息期血圧
【0231】
実施例29
本実施例は、アラキドン酸カスケードのメンバーに対する本発明の特定の化合物の効果を例証する。
【0232】
エポキシ脂肪酸加水分解のためには、可溶性エポキシド加水分解酵素は、カルボキシル末端からより遠いエポキシド部分のある基質を好む。具体的には、この基質優先度は、アラキドン酸のエポキシドについて、14,15-EET>11,12-EET>8,9-EET>>>5,6-EETの順序で低下する。独立して、エポキシアラキドン酸塩の相対的な基質代謝回転は、8,9-EET、11,12-EET、および14,15-EET脂肪酸の1:1:2混合物がラット腎皮質細胞質ゾルによって30%まで加水分解される場合、0.1:8.1:14.3と算出された。尿素の一次ファルマコフォアがエポキシド加水分解の遷移状態のアナログであるとみなすことによって、長い脂肪族系酸を組み込む好ましいインヒビターがここで開発された。これらの化合物は、短い脂肪族系酸を組み込んでいるものよりも良好な基質および遷移状態模倣物である。従って、最適の可溶性エポキシド加水分解酵素インヒビターは、一次ファルマコフォアから等しい距離隔てられている、脂肪族系酸置換基(すなわち、三次ファルマコフォア)を有する化合物を生成することによって得ることができる。なぜなら末端の酸は、最適の基質ではエポキシドから隔てられているからである。酵素活性部位内では、エポキシ脂肪酸は、伸展されるかまたは偽直線の構成で存在することが予想されている。従って、尿素構造を含むエポキシ脂肪酸および脂肪族系酸の両方が、2次元の直線的提示として近似され、そして測定は、各々の種で行なわれた。得られた重要な測定値は、カルボキシラートヒドロキシルから尿素カルボニルおよび尿素窒素への距離(Å)であった。
【0233】
カルボキシラートから1-シクロヘキシル-3-オクタン酸の尿素官能基への距離は、8,9-EETにおけるエポキシドからカルボキシラートへの距離と同様である。従って、算出されたインヒビター能力を、この化合物に対して正規化して、順位付けしたインヒビター力価を得た。次いで、本発明者らは、相対的な基質代謝回転速度に関してエポキシドからカルボニルの距離を関連付けて、相関性回帰を確認した。このグラフに相対的なインヒビター力価をプロットすることによって、本発明者らは、カルボキシルからN’-窒素への距離がカルボキシルからエポキシド酸素への距離と最もよく相関することを見出した。これらのデータによってさらに、可溶性エポキシド加水分解酵素との相互作用のインヒビターと基質の間の類似性が強調される。
【0234】
プログラム
全ての構造は、ACD/ChemSketch v 4.55(5/06/2000)Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario,Canada)を用いるMDL MOLファイルとして描出し、書き出した。距離の測定は、ACD/3D v4.52(4/10/2000)を用いる対応するMOLファイル画像に対して行なった。構造の最適化は用いなかった。
【0235】
表17は、この分析の結果を示す(図13も参照のこと)。
【0236】
(表17)

一連のsEHインヒビターの一次ファルマコフォアと二次ファルマコフォアとの間の直線距離、ならびにマウス(MsEH)およびヒトsEH(HsEH)でのそれらの力価順位を、エポキシドから遊離の酸の距離、および4つのアラキドン酸エポキシドとラットsEHとの相対代謝回転速度と比較して示す。
【0237】
実施例30
本実施例は、レイノー症候群の処置のために選択した化合物の有効性を例証する。
【0238】
この実験デザインは、活性化合物の有無においてエタノールを含むVanicream溶液を調製する工程、次いでアルミニウムホイルで注射器の筒を覆う工程を含む。この化合物を、曝露の約20分前に結合状態にし、次いで手を約30分間、低温に曝して、結果を記録した。その翌日結果を解読した。処置(左または右の人差し指)は無作為であった。対照は、処方薬ニトログリセリンクリーム(処置された指をピンクに変えるのに大きい効果を有する)および市販のラノリンベースのL-アルギニンのハンド・ウォーミング・クリーム(hand warming cream)(おそらくカプサイシンを含む)(下に挙げたパラメーターには影響を有さない)を含んだ。試験化合物を10mg/mLの濃度でエタノールに溶解して、次にこれを10:1の濃度で市販のVanicreamと混合して、Vanicream/エタニール混合物に含まれる1mg/mLの最終濃度の活性成分を得た。一本の指にほぼ100μLのクリーム(+/- sEHインヒビター)を塗布した。最初の2列では、暴露条件の範囲にわたって、左手および右手からの結果が同様であったことが示される。3番目および4番目の列によって、sEHインヒビターCDUは、レイノー症候群の重篤度を軽減することが示され、そして5番目および6番目の列によって、ADUについて同じ結論が示される。この実験は盲検的に行なったので、左および右の人差し指は、無作為な方式で試験した。都合上、この処置は各々の場合の右側に示す。
【0239】
本研究に用いたスケールを以下に示す:
0-首に触れた場合、指が温かく感じる
1-首に触れた場合、指が中立に感じる
2-首に触れた場合、指が冷たく感じ、爪を圧迫した場合、指の爪の下が赤くなり、白くなって、赤く戻る
2.5-上記と同じであるが、加圧および再灌流のもとでは爪の下が白くなったままである
3-指が第一関節まで白く、温められた場合、青い状態を経ることなくピンクに変わる。
4-指が第二関節まで白い
5-指が青く変わる(注、指は白く、次に青く変わり、さらに長く曝せば再度白く変わり、ほぼ陶器の皿のような外観になる)
6-指が根元まで白い。温めることによって青く変わり、その後、赤く変わる。
【0240】
(表18)レイノー症候群を有する患者でのCDUおよびADUの効果

【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】一次ファルマコフォアのみを有する公知のsEHインヒビターの構造を提供する:1-アダマンチル-3-シクロヘキシル尿素(192)、1-アダマンチル-3-ドデシル尿素(686)。
【図2】sEHインヒビター一次、二次および三次ファルマコフォアを特徴付ける構造図を提供する。用いられる命名法は、3つのファルマコフォアおよび2つの置換基(RおよびR’基)を指す。R’領域に位置する二次および三次ファルマコフォアは、一次ファルマコフォアから直線的に図示される。二次ファルマコフォアは一般に極性のカルボニル基または極性のエーテル基からなる。二次ファルマコフォアがカルボニル基である場合、これは、一次ファルマコフォアのカルボニルから約7.5±1Åに位置し、ここでカルボニルのいずれかの側(XおよびY)がCH2、OまたはNHである。二次ファルマコフォアがエーテル基である場合、これは好ましくは、一次ファルマコフォアのカルボニルからさらに約1炭素単位に位置する。この三次ファルマコフォアはまた、Z基をOHとして有する一次ファルマコフォアのカルボニルから約11炭素単位(17±1Å)に位置する極性基であるか、または置換アミンもしくはアルコール、または複素環式もしくは非環式構造であって末端のエステルまたは酸を模倣する。
【図3】インヒビター1-シクロヘキシル-3-ドデシル尿素と同時結晶化されたマウスsEH基質結合ポケットの疎水性マップを提供する。影による勾配は疎水性の程度を示す。一連の親水性残基は、このチャネルの「上部(top)」側に観察されるが、このチャネルの「底部(bottom)」は、触媒性のアスパラギン酸(Asp333)を除いて、極めて疎水性であった。この構造解析によって、多数の潜在的な水素結合部位が、反対側の表面のAsp333に主に位置する可溶性エポキシド加水分解酵素の基質結合ポケットで観察されることが示された(基質と反応するか、または一次ファルマコフォアに結合する触媒性の求核試薬)。
【図4】哺乳動物の可溶性エポキシド加水分解酵素のタンパク質配列のアラインメントを提供する(残基1-340位)。
【図5】哺乳動物の可溶性エポキシド加水分解酵素のタンパク質配列のアラインメントを提供する(残基341-554位)。
【図6】ラットの肝臓ミクロソームにおける1-アダマンチル-3-ドデシル尿素(686)および1-シクロヘキシル-3-ドデシル尿素(297)の代謝安定性を示すグラフである。ミクロソームは、NADPH生成システムの存在下で1μMの686または297とともにインキュベートした。データは、三連の実験の平均±SDとして表す。
【図7】上記のようなラット肝臓ミクロソームにおける686および687の代謝安定性を示すグラフである。
【図8】ラット、マウスおよびヒトの肝臓組織由来のミクロソーム調製物における1-アダマンチル-3-ドデシル尿素(686)の代謝変換を図示する一連のグラフである。同定された代謝物は、ωヒドロキシル(686-M1)、ωアルデヒド(686-M2)、ω酸(687)およびモノヒドロキシアダマンチルω加水分解化合物の混合物(686-M3)である。これらの構造を表11に示す。
【図9】質量スペクトルを示しており、これは、1-アダマンチル-3-ドデシル尿素(686)および3-ドデカン酸アナログ(687)の主な尿代謝物の衝突誘起解離を示しており、これによってこれらの化合物が最終的にβ酸化に入り、鎖の短いインヒビターが生成され得ることが示唆される。
【図10】マウスに対して687または800のいずれかを5mg/kgで経口投与した後の687の血中濃度対時間のプロフィールを図示するグラフである。エステル化合物によって、最大循環用量が得られる時間が遅くなり、そして観察される687の最大循環濃度が増大する。これは、インヒビターについてさらに長い半減期に変換する。
【図11】ヒト被験体に対して687または800のいずれかを単回経口投与した後の687の血中濃度対時間のプロフィールを示すグラフである。最大濃度になる時間は、マウスおよびヒトで同様であるが(図10と比較)、得られる最大循環濃度は、ヒトでかなり高かった。
【図12】sEH基質結合ポケットにおいて観察された水素結合ドナーの構造的評価を、注記した一次ファルマコフォアに対して直線的な距離で示しており、これはさらに、哺乳動物の可溶性エポキシド加水分解酵素との相互作用に対する官能基の距離の効果を図示している。
【図13】相対的基質代謝回転/相対的インヒビター力価を、インヒビターの3位の窒素の基質エポキシドのいずれかに対する末端カルボキシル距離の関数として図示するグラフである。
【図14】687の非存在下でアンジオテンシンIIで処理したラットにおける尿オクタデカノイド(A)および尿エイコサノイド(B)のレベルを示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性エポキシド加水分解酵素を阻害するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の阻害量とを接触させる工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項2】
可溶性エポキシド加水分解酵素を阻害するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の阻害量とを接触させる工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項3】
R1がC5-C12シクロアルキル、フェニル、およびナフチルからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
化合物が式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;P2が-C(O)O-、-CH(OH)-、-OC(O)-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択され;mが0であり、L1が非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
化合物が式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;P2が-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択され;nおよびmが各々1であり、L1が非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3が-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、および-C(O)OR2からなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
化合物が式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;nが0であり;mが1であり;L1が非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3が-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、および-C(O)OR2からなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
化合物が式(II)を有し、式中、A1がジペプチドまたはジペプチドアナログである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
A1が、Tyr、His、Lys、Phe、およびTrpからなる群より選択されるN末端残基、ならびにAla、Arg、Asp、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValからなる群より選択されるC末端残基を有するジペプチドである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
mが1であり、かつP3がエステラーゼ依存性不活性化、β-酸化、P450-依存性ω水酸化により、またはp450ω水酸化酵素を阻害することにより代謝を減少させる基から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
R1がC5-C12シクロアルキル、フェニル、およびナフチルからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項12】
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項13】
化合物が式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;P2が-C(O)O-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、OC(O)-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択され;mが0であり、かつL1が非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、ならびに置換または非置換アリーレンからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項14】
化合物が式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;P2が-C(O)O-、-O(CH2CH2O)q-、OC(O)-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択され;nおよびmが各々1であり、L1が非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、ならびに置換または非置換アリーレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項2記載の方法。
【請求項15】
化合物が式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;nが0であり;mが1であり;L1が非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、および置換または非置換アリーレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項2記載の方法。
【請求項16】
mが1であり、かつP3がエステラーゼ依存性不活性化、β酸化、P450-依存性ω水酸化により、またはp450ω水酸化酵素を阻害することにより代謝を減少させる基から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項17】
可溶性エポキシド加水分解酵素を阻害するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と表1〜18に記載される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の阻害量とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項18】
可溶性エポキシド加水分解酵素によって調節される疾患を処置するための方法であって、このような処置の必要な被験体に対して、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項19】
疾患が、高血圧、炎症、成人呼吸窮迫症候群;糖尿病合併症;末期腎疾患;レイノー症候群、および関節炎からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
高血圧が、腎性高血圧、肺高血圧、および肝性高血圧からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
炎症が、腎の炎症、脈管の炎症、および肺の炎症からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
可溶性エポキシド加水分解酵素によって調節される疾患を処置するための方法であって、このような処置の必要な被験体に対して、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、ならびに置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項23】
疾患が、高血圧、炎症、成人呼吸窮迫症候群;糖尿病合併症;末期腎疾患;レイノー症候群、および関節炎からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
高血圧が、腎性高血圧、肺高血圧、および肝性高血圧からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
炎症が、腎の炎症、脈管の炎症、および肺の炎症からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
可溶性エポキシド加水分解酵素によって調節される疾患を処置するための方法であって、このような処置の必要な被験体に対して、表1〜18に記載される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
疾患が、高血圧、炎症、成人呼吸窮迫症候群;糖尿病合併症;末期腎疾患;レイノー症候群、および関節炎からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
高血圧が、腎性高血圧、肺高血圧、および肝性高血圧からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
炎症が、腎の炎症、脈管の炎症、および肺の炎症からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
被験体の腎臓の悪化を軽減するための方法であって、該被験体に対して、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項31】
腎臓の悪化が、糖尿病、高血圧、または炎症性障害に罹患している被験体に存在する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
被験体における腎臓の悪化を軽減するための方法であって、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を該被験体に投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項33】
腎臓の悪化が、糖尿病、高血圧、または炎症性障害に罹患している被験体に存在する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
被験体における腎臓の悪化を軽減するための方法であって、該被験体に対して、表1〜18に記載される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項35】
腎臓の悪化が、糖尿病、高血圧、または炎症性障害に罹患している被験体に存在する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
被験体の腎症の進行を阻害するための方法であって、該被験体に対して、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項37】
被験体が、(a)血圧が130/85以下の糖尿病の人であるか、(b)血圧が130/85以下の代謝症候群の人であるか、(c)トリグリセライドレベルが215mg/dLを超える人であるか、または(d)コレステロールレベルが200mg/dLを超える人である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
被験体における腎症の進行を阻害するための方法であって、該被験体に対して、表1〜18に記載される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項39】
被験体が、(a)血圧が130/85以下の糖尿病の人であるか、(b)血圧が130/85以下の代謝症候群の人であるか、(c)トリグリセライドレベルが215mg/dLを超える人であるか、または(d)コレステロールレベルが200mg/dLを超える人である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
被験体の血圧を低下させるための方法であって、該被験体に対して、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項41】
シス-エポキシエイコサトリエン酸の有効量を被験体に投与する工程をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
シス-エポキシエイコサトリエン酸が、式(I)または(II)を有する化合物とともに投与される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
被験体における血圧を低下するための方法であって、該被験体に対して、表1〜18に記載される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
シス-エポキシエイコサトリエン酸の有効量を被験体に投与する工程をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
シス-エポキシエイコサトリエン酸が、式(I)または(II)を有する化合物とともに投与される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
被験体における血管平滑筋細胞の増殖を阻害する方法であって、該被験体に対して、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、nまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項47】
被験体における血管平滑筋細胞の増殖を阻害するための方法であって、該被験体に対して、表1〜18に記載される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項48】
被験体における閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、または喘息の進行を阻害する方法であって、該被験体に対して、以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項49】
閉塞性肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、および慢性気管支炎からなる群より選択される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
間質性肺疾患が、特発性肺線維症であるか、または粉塵に対する曝露に関連するものである、請求項48記載の方法。
【請求項51】
シス-エポキシエイコサトリエン酸の有効量を被験体に投与する工程をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項52】
シス-エポキシエイコサトリエン酸が、式(I)または(II)を有する化合物とともに投与される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
被験体における閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、または喘息の進行を阻害する方法であって、該被験体に対して、表1〜18に記載される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項54】
閉塞性肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、および慢性気管支炎からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
間質性肺疾患が、特発性肺線維症であるか、または粉塵に対する曝露に関連するものである、請求項53記載の方法。
【請求項56】
シス-エポキシエイコサトリエン酸の有効量を被験体に投与する工程をさらに含む、請求項53記載の方法。
【請求項57】
シス-エポキシエイコサトリエン酸が、式(I)または(II)を有する化合物とともに投与される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項59】
以下からなる群より選択される式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩:

式中、
R1がC5-C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;
P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-CH2C(O)NH-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される一次ファルマコフォアであり;
P2が-C(O)-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択される二次ファルマコフォアであり;
P2aが-C(O)-および-NHC(O)-からなる群より選択され;
P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択される三次ファルマコフォアであり、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
下付き文字nおよびmが各々独立して0または1であり、かつnまたはmの少なくとも1つが1であり、かつ下つき文字qが0〜3であり;
L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、および置換または非置換ヘテロアリーレンからなる群より選択される第一のリンカーであり;
L2が置換および非置換C2-C12アルキレン、置換および非置換アリーレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される第二のリンカーであり;かつ
A1がアミノ酸、ジペプチド、およびジペプチドアナログからなる群より選択されるメンバーである。
【請求項60】
R1がC5-C12シクロアルキル、フェニル、およびナフチルからなる群より選択される、請求項58記載の化合物。
【請求項61】
式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;P2が-C(O)O-、-CH(OH)-、-OC(O)-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択され;nおよびmが各々1であり、L1が非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3が-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、および-C(O)OR2からなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項58記載の化合物。
【請求項62】
式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;nが0であり;mが1であり;L1が非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3が-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、および-C(O)OR2からなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項58記載の化合物。
【請求項63】
式(II)を有し、式中、A1がジペプチドまたはジペプチドアナログである、請求項58記載の化合物。
【請求項64】
式(II)を有し、式中、A1が、Tyr、His、Lys、Phe、およびTrpからなる群より選択されるN末端残基、ならびにAla、Arg、Asp、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValからなる群より選択されるC末端残基を有するジペプチドである、請求項58記載の化合物。
【請求項65】
R1がC5-C12シクロアルキル、フェニル、およびナフチルからなる群より選択される、請求項59記載の化合物。
【請求項66】
式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;P2が-C(O)O-、-CH(OH)-、-O(CH2CH2O)q-、-OC(O)-、-C(O)NH-、および-NHC(O)-からなる群より選択され;nおよびmが各々1であり;L1が非置換C2-C6アルキレン、置換または非置換C3-C6シクロアルキレン、および置換または非置換アリーレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3が-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、および-C(O)OR2からなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項59記載の化合物。
【請求項67】
式(I)を有し、式中、P1が-NHC(O)NH-、-OC(O)NH-、および-NHC(O)O-からなる群より選択され;nが0であり;mが1であり;L1が非置換C2-C6アルキレン、置換または非置換C3-C6シクロアルキレン、および置換または非置換アリーレンからなる群より選択され;L2が置換または非置換C2-C6アルキレンからなる群より選択され;かつP3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)NHR2、-C(O)NHS(O)2R2、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項59記載の化合物。
【請求項68】
式(I)を有し、R1がC5-C12シクロアルキルからなる群より選択されるメンバーであり、ここで該シクロアルキル部分が単環式または多環式であり;P1が-NHC(O)NH-からなる群より選択され;P2が-O(CH2CH2O)q-、および-C(O)O-からなる群より選択され;P3がC2-C6アルキニル、C1-C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-NHS(O)2R2、-C(O)OR2、およびカルボン酸アナログからなる群より選択され、ここでR2が水素、置換または非置換C1-C4アルキル、置換または非置換C3-C8シクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アリールC1-C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;mが1でありかつqが0〜3であり;L1が置換および非置換C2-C6アルキレン、置換および非置換C3-C6シクロアルキレン、および置換または非置換アリーレンからなる群より選択され;かつL2が置換および非置換C2-C12アルキレンからなる群より選択される、請求項59記載の化合物。
【請求項69】
表1〜18に記載される式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩。
【請求項70】
薬学的に許容される賦形剤および請求項58記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項71】
薬学的に許容される賦形剤および請求項59記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項72】
薬学的に許容される賦形剤および請求項69記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項73】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の存在下で生物学的に活性なエポキシドを安定化するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、該可溶性エポキシド加水分解酵素の活性を阻害して該生物学的に活性なエポキシドを安定化するのに十分な量の請求項58記載の化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項74】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の存在下で生物学的に活性なエポキシドを安定化するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、該可溶性エポキシド加水分解酵素の活性を阻害して該生物学的に活性なエポキシドを安定化するのに十分な量の請求項59記載の化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項75】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の存在下で生物学的に活性なエポキシドを安定化するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、表1〜18記載の式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩のある量とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項76】
接触工程がインビトロアッセイにおいて行なわれる、請求項73記載の方法。
【請求項77】
接触工程がインビボアッセイにおいて行なわれる、請求項73記載の方法。
【請求項78】
接触工程がインビトロアッセイにおいて行なわれる、請求項74記載の方法。
【請求項79】
接触工程がインビボにおいて行なわれる、請求項74記載の方法。
【請求項80】
接触工程がインビトロアッセイにおいて行なわれる、請求項75記載の方法。
【請求項81】
接触工程がインビボにおいて行なわれる、請求項75記載の方法。
【請求項82】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の作用によって生成される生物学的に活性なジオールの形成を低減するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、該可溶性エポキシド加水分解酵素の活性を阻害して該生物学的に活性なジオールの形成を低減するのに十分な量の請求項58記載の化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項83】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の作用によって生成される生物学的に活性なジオールの形成を低減するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、該可溶性エポキシド加水分解酵素の活性を阻害して該生物学的に活性なジオールの形成を低減するのに十分な量の請求項59記載の化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項84】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の作用によって生成される生物学的に活性なジオールの形成を低減するための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、表1〜18記載の式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩のある量とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項85】
接触工程がインビトロアッセイにおいて行なわれる、請求項82記載の方法。
【請求項86】
接触工程がインビボにおいて行なわれる、請求項82記載の方法。
【請求項87】
接触工程がインビトロアッセイにおいて行なわれる、請求項83記載の方法。
【請求項88】
接触工程がインビボにおいて行なわれる、請求項83記載の方法。
【請求項89】
接触工程がインビトロアッセイにおいて行なわれる、請求項84記載の方法。
【請求項90】
接触工程がインビボにおいて行なわれる、請求項84記載の方法。
【請求項91】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の活性をモニタリングするための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、sEHの触媒部位に存在する一つまたは複数のトリプトファン残基との相互作用によって該可溶性エポキシド加水分解酵素の蛍光の検出可能な変化を生じるのに十分な量の請求項58記載の化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項92】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の活性をモニタリングするための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、sEHの触媒部位に存在する一つまたは複数のトリプトファン残基との相互作用によって該可溶性エポキシド加水分解酵素の蛍光の検出可能な変化を生じるのに十分な量の請求項59記載の化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項93】
可溶性のエポキシド加水分解酵素の活性をモニタリングするための方法であって、該可溶性エポキシド加水分解酵素と、表1〜18記載の式を有する化合物およびそれらの薬学的に許容される塩のある量とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項94】
化合物が、R1、L2、P3およびA1からなる群より選択される一つまたは複数の成分を呈するアリール基を有する、請求項92記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−525327(P2006−525327A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509664(P2006−509664)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/010298
【国際公開番号】WO2004/089296
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】