説明

回路接続材料及び回路部材の接続構造

【課題】対向配置された回路電極同士の接続抵抗を小さくし、かつ、隣り合う回路電極間が導通し短絡してしまう可能性を低減することができる回路接続材料及び回路部材の接続構造を提供する。
【解決手段】回路接続材料12は、接着剤組成物と、第1の粒子6と、第2の粒子8と、を備える。第1の粒子6は、低融点金属を主成分とするコア2と、該コア2の表面を被覆しており低融点金属の融点よりも低い軟化点を有する樹脂組成物からなる絶縁層4と、を有し、第2の粒子8は、コア2よりも平均粒径が小さく、低融点金属の融点よりも高い融点又は軟化点を有する材料を主成分とする。第1の粒子6は、絶縁層4が軟化して一部除去され、絶縁層4から露出したコア2と回路電極とが金属接合することによって回路電極間の導通を図り、第2の粒子8は、接続条件下においてスペーサとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に導電粒子を含有して成る回路接続材料、及びその回路接続材料を用いた回路部材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化・薄型化に伴い、電子部品に用いられる回路部材の回路電極は高密度化・高精細化している。第1の回路部材と第2の回路部材とを接続する回路接続材料として、異方導電性接着剤又は異方導電性フィルムが用いられている。例えば異方導電性フィルムは、複数の導電粒子(例えば、Ni等の金属粒子)及び接着剤組成物からなる回路接続材料をフィルム状に形成してなる。
【0003】
第1の回路部材と第2の回路部材とは、以下の方法で接続される。まず、第1の回路部材の第1の回路電極と第2の回路部材の第2の回路電極とが対向配置された状態で、第1の回路部材と第2の回路部材との間に異方導電性フィルムを介在させる。その後、第1及び第2の回路部材と異方導電性フィルムとからなる構造体を加熱すると共に所定方向に加圧する。この場合、異方導電性フィルムが硬化することにより、第1の回路部材は第2の回路部材に接着固定される。また、対向配置された第1の回路電極と第2の回路電極とが電気的に接続されると共に、隣り合う第1及び第2の回路電極同士が電気的に絶縁される。
【0004】
上記方法において、対向配置された第1の回路電極と第2の回路電極との間の導通は、主として異方導電性フィルム中の導電粒子が第1及び第2の回路電極に接触することにより得られる。しかしながら、導電粒子の剛性が高いと、導電粒子と第1及び第2の回路電極との間の接触面積、及び、導電粒子同士の接触面積を、十分大きくすることができない。
【0005】
そこで、接触面積を大きくする試みとして、例えば半田等の低融点金属からなる最外層が高分子核体の表面を覆う導電粒子を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この場合、加熱により導電粒子が融解して、融解した低融点金属が第1及び第2の回路電極と金属接合するため、対向配置された第1の回路電極と第2の回路電極との間の接続抵抗を下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−157720号公報
【特許文献2】特開2002−170427号公報
【特許文献3】特許第3542611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3において、対向配置された第1の回路電極と第2の回路電極との間の接続抵抗は未だ高く、この接続抵抗を一層下げることが強く望まれている。そこで、かかる接続抵抗を更に下げるために、本発明者らは、特許文献1〜3に開示されるような核体を備えず、低融点金属のみからなる導電粒子を用いることを検討した。
【0008】
ところが、このような導電粒子を加熱及び所定方向に加圧すると、導電粒子の温度が低融点金属の融点に到達した時点で導電粒子が溶融し、溶融した導電粒子が第1及び第2の回路部材によって押し潰されてしまう。また、溶融した低融点金属の表面張力は非常に高いため、隣り合う溶融した導電粒子同士は、加圧方向と直交する方向に互いに融合して接合する。その結果、隣り合う第1及び第2の回路電極間が導通し短絡(ショート)してしまう。特に、隣り合う第1及び第2の回路電極間が狭ピッチになると、上述の問題は顕著となる。
【0009】
そこで、本発明は、対向配置された第1の回路電極と第2の回路電極との間の接続抵抗を小さくし、かつ、隣り合う第1及び第2の回路電極間が導通し短絡(ショート)してしまう可能性を低減することができる回路接続材料及び回路部材の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回路接続材料は、互いに対向する第1の回路電極と第2の回路電極との間に挟まれて第1の回路電極と第2の回路電極とを接続するための回路接続材料であって、加熱により流動性を有する接着剤組成物と、第1の粒子と、第2の粒子と、を備え、第1の粒子は、融点が130〜250℃の低融点金属を主成分とするコアと、該コアの表面を被覆しており低融点金属の融点よりも低い軟化点を有する樹脂組成物からなる絶縁層と、を有しており、第2の粒子は、コアよりも平均粒径が小さく、低融点金属の融点よりも高い融点又は高い軟化点を有する材料を主成分としており、第1の粒子は、第1の回路電極と第2の回路電極との接続の際には、絶縁層が回路接続時の加熱・加圧によって軟化して一部除去され、絶縁層から露出したコアと第1及び第2の回路電極とが金属接合することによって第1の回路電極と第2の回路電極と間の導通を図り、第2の粒子は、第1の回路電極と第2の回路電極との接続の際には、第1及び第2の回路電極の接続条件下においてスペーサとして機能することを特徴とする。
【0011】
この回路接続材料が備える第1の粒子及び第2の粒子が、互いに対向する回路電極間に挟み込まれた際には、まず、樹脂組成物の軟化点において、第1の粒子の絶縁層が軟化すると共に、第1の回路電極及び第2の回路電極によって押圧されることで、第1の粒子の押圧された部分において選択的に絶縁層が一部除去され、絶縁層からコアが露出する。その後、更に加熱すると、低融点金属の融点においてコアは溶融する。これにより、第1及び第2の回路電極と、溶融したコアとが金属結合する。ここで、回路接続材料は第2の粒子を含んでおり、この第2の粒子は、低融点金属よりも高い融点又は難化点を有し、コアよりも粒径が小さいので、回路電極間でスペーサとして機能し、溶融したコアが第1及び第2の回路電極によって押し潰され難くなる。よって、第1の粒子が過剰に押し潰されることが避けられ、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することを抑制できる。さらに、コアの表面における上述の露出した部分以外の部分は、絶縁層で被覆されているので、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することを更に抑制できる。また、コアが絶縁層によって被覆されているので、コアが酸化し難い。よって、第1及び第2の粒子を加熱及び所定方向に加圧する際に、加圧方向における導電性が向上する。
【0012】
また、本発明の回路接続材料は、総質量に対する第1の粒子の含有割合が1〜10質量%であり、かつ、総質量に対する第2の粒子の含有割合が1〜10質量%であることとしてもよい。
【0013】
また、本発明の回路接続材料は、フィルム状に形成されてもよい。このように回路接続材料をフィルム状に形成することにより、回路接続材料が裂ける、割れる、或いはべたつく等の問題が生じにくく、回路接続材料の取り扱いが容易になる。
【0014】
本発明の回路部材の接続構造は、上記何れかの回路接続材料と、第1の回路電極と、第2の回路電極と、を備え、第1の回路電極と第2の回路電極とが、回路接続材料を介して電気的に互いに接続されていることを特徴とする。
【0015】
この回路部材の接続構造では、上記の回路接続材料により回路電極同士が接続されているので、対向する回路電極間の接続抵抗が小さくなり、隣接する回路電極間の短絡の可能性が低減される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、対向配置された第1の回路電極と第2の回路電極との間の接続抵抗を小さくし、かつ、隣り合う第1及び第2の回路電極間が導通し短絡(ショート)してしまう可能性を低減することができる回路接続材料及び回路部材の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回路接続材料を模式的に示す断面図である。
【図2】フィルム状回路接続材料を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る回路部材の接続構造を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、図3の回路部材の接続構造の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る回路電極の接続構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の回路接続材料及び回路部材の接続方法の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。また、以下の説明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味するものとする。
【0019】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態の回路接続材料1は、接着剤組成物と、図1に示す粒子混合物10とを備える。粒子混合物10には、第1の粒子6と第2の粒子8との2種類の粒子が含まれる。具体的には、回路接続材料1は、接着剤組成物中に第1の粒子6と第2の粒子8との2種類の粒子が分散されたものである。詳細は後述するが、この回路接続材料1は、主にフィルム状に形成された状態で使用され、互いに対向して加熱・加圧される第1の回路電極と第2の回路電極との間に挟み込まれて、当該第1及び第2の回路電極を接続するための回路接続材料である。このような電極の接続構造において、第1の粒子6及び第2の粒子8は、第1の回路電極と第2の回路電極との間に挟み込まれる。
【0020】
(粒子混合物)
図1に示すように、粒子混合物10は、第1の粒子6と第2の粒子8とを備える。第1の粒子6は、低融点金属を主成分とするコア2と、コア2の表面2aを被覆する絶縁層4とを有する。絶縁層4は、コア2を構成する低融点金属の融点よりも低い軟化点を有する樹脂組成物からなる。第2の粒子8は、低融点金属の融点よりも高い融点又は高い軟化点を有する材料を主成分とする。第1の粒子6及び第2の粒子8の形状は、特に限定されず、例えば略球状である。
【0021】
ここで、「軟化点」とは、ビカット軟化温度あるいはガラス転移温度を指す。ビカット軟化温度は、加熱浴槽中に規定された寸法の試験片を据え、中央部に一定の断面積の端面を押し当てた状態で浴槽の温度を上昇させ、試験片に端面が一定の深さまで食い込んだ時の温度である(JIS K7206)。ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって測定した損失正接(tanδ)のピーク温度である。
【0022】
この回路接続材料1が、互いに対向する第1及び第2の回路電極を接続する場合において、第2の粒子8は、第1及び第2の回路電極間に設けられるスペーサとして機能する。
【0023】
粒子混合物10を含有する回路接続材料1は、第1及び第2の回路電極を接続する時に、加熱されると共に第1及び第2の回路電極を介して所定方向に加圧される。これにより、まず、樹脂組成物の軟化点において、第1の粒子6の絶縁層4が軟化すると共に第1及び第2の回路電極によって押圧されることで、第1の粒子6の押圧された部分において選択的に絶縁層4が一部除去され、絶縁層4からコア2が露出する。その後更に加熱すると、低融点金属の融点においてコア2は溶融する。これにより、第1及び第2の回路電極と、溶融したコアとが金属結合する。
【0024】
粒子混合物10は第2の粒子8を備えるので、溶融したコアが第1及び第2の回路電極によって押し潰され難くなる。よって、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することを抑制できる。さらに、コア2の表面2aにおける上述の露出した部分以外の部分は、絶縁層4で被覆されているので、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することを抑制できる。したがって、本実施形態の粒子混合物10では、加熱及び所定方向の加圧の際に、加圧方向における導電性が向上すると共に、加圧方向と直交する方向における絶縁性が向上する。
【0025】
また、本実施形態の粒子混合物10では、コア2が絶縁層4によって被覆されているので、コア2が酸化し難い。よって、粒子混合物10を加熱及び所定方向に加圧する際に、加圧方向における導電性が向上する。
【0026】
(第1の粒子)
第1の粒子6のコア2を構成する低融点金属としては、例えば各種の共晶合金あるいは非共晶低融点合金あるいは単独金属が使用できる。例えば、Pb82.6−Cd17.4(融点248℃)、Pb85−Au15(融点215℃)、Bi97−Na3(融点218℃)、Bi57−Sn43(融点139℃)、Sn(融点232℃)、In97.2−Zn2.8(融点144℃)、In(融点157℃)などが挙げられる。
【0027】
コア2をなす低融点金属の融点は、130℃〜250℃であることが好ましく、150〜200℃であることがより好ましい。この場合、粒子混合物10を加熱する際の温度が低温で済む。よって、粒子混合物10が、例えば上記回路電極等の他の部材と共に加熱される場合に、当該他の部材が受ける熱的影響を低減することができる。
【0028】
コア2の平均粒径は、1〜10μmであることが好ましい。コア2の粒子の平均粒径が1μm以上であると、溶融したコアがより押し潰され難くなるので、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することが抑制される傾向にある。一方、コア2の粒子の平均粒径が10μm以下であると、例えば、溶融したコアと回路電極との接合面積又は接触面積が小さくなることを抑制できる傾向にある。よって、コア2の粒子の平均粒径を1〜10μmとすることにより、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することを抑制できると共に、溶融したコアと回路電極との接合面積又は接触面積を大きくできる。
【0029】
絶縁層4は、コア2を構成する低融点金属の融点よりも低い軟化点を有する樹脂組成物からなるものであれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂又はホットメルト性樹脂を含有する樹脂組成物からなることが好ましい。また、熱軟化性又は融点を有するホットメルト接着剤のベースポリマー又はエラストマー類も有用である。このような樹脂として、例えば、ポリエチレン、エチレン共重合体ポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリク酸エステル系ゴム、ポリビニルアセタール、アクリロニトリル−ブタジェン共重合体、スチレン、フェノキシ、固形エポキシ樹脂、ポリウレタン等が挙げられ、その他、テルペン樹脂やロジン等の天然及び合成樹脂、EDTA等のキレート剤も挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
絶縁層4を構成する樹脂組成物の軟化点は、130〜250℃であることが好ましい。樹脂組成物の軟化点が130℃以上であると、接続信頼性が向上する。例えば、本発明を用いた電子部品の耐温度サイクル試験を行う場合、上限125℃の耐温度サイクル試験においては、電子部品が125℃に曝されても接合部の絶縁層4が溶融または軟化することがなく機械的強度が保たれるため接続信頼性が向上する。一方、樹脂組成物の軟化点が250℃以下であると、粒子混合物10が、例えば上記回路電極部材等の他の部材と共に加熱される場合に、当該他の部材が受ける熱的影響が低減される傾向にある。
【0031】
絶縁層4の厚さは、0.01〜0.5μmであることが好ましい。絶縁層の厚さが0.01μm以上であると、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士の接合がより抑制される傾向にある。一方、絶縁層4の厚さが0.5μm以下であると、粒子6の絶縁層4が押圧される際に、小さい圧力でも粒子6の押圧された部分にコア2が露出する傾向にある。よって、絶縁層4の厚さを0.01〜0.5μmとすることにより、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士の接合を更に抑制できると共に、絶縁層4が押圧される際に絶縁層4の押圧された部分にコア2が露出し易くなる。
【0032】
(第2の粒子)
第2の粒子8は、導電粒子であることが好ましい。この場合、第2の粒子8も電流を通すことができるので、粒子混合物10の導電性が向上する。第2の粒子8は、例えばAu、Ag、Ni、Cu、Co、半田等の金属やカーボン等からなることが好ましい。また、非導電性のガラス、セラミックス、プラスチック等を上記金属等の導電物質で被覆したものも第2の粒子8として使用できる。このとき、被覆する金属層の厚さは十分な導電性を得るためには10nm以上が好ましい。
【0033】
第2の粒子8は絶縁粒子であってもよい。絶縁性材料としては、スチレンブタジエンゴム及びシリコーンゴム等の各種ゴム、ポリスチレン及びエポキシ樹脂等の各種プラスチックス、デンプン及びセルロース等の天然物が挙げられる。第2の粒子8に絶縁性材料を用いることにより、第2の粒子8の密度が低くなり、接着剤組成物への分散性が良くなる。
【0034】
第2の粒子8の平均粒径が1〜10μmであることが好ましい。第2の粒子8の平均粒径が1μm以上であると、溶融したコアがより押し潰され難くなるので、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することが抑制される傾向にある。一方、第2の粒子8の平均粒径が10μm以下であると、例えば、溶融したコアと回路電極との接合面積又は接触面積が小さくなることを抑制できる傾向にある。よって、第2の粒子8の平均粒径を1〜10μmとすることにより、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア同士が接合することを抑制できると共に、溶融したコアと回路電極との接合面積又は接触面積を大きくできる。
【0035】
コア2の平均粒径に対する第2の粒子8の平均粒径が、0.5〜0.9倍であることが好ましい。第2の粒子8の平均粒径がコア2の平均粒径の0.5倍以上であると、熱圧着したときに溶融したコア2が充分に潰れて第1及び第2の電極との接触面積が増える傾向にあり、また、溶融したコア2を潰し過ぎて隣接する粒子6同士が融着する可能性も少なくなる傾向にある。一方、第2の粒子8の平均粒径がコア2の平均粒径の0.9倍以下であると、熱圧着したときに溶融したコア2が充分に潰れて第1及び第2の電極との接触面積が増える傾向にある。よって、第2の粒子8の平均粒径がコア2の平均粒径の0.5〜0.9倍であることにより、熱圧着したときに溶融したコア2が充分に潰れて第1及び第2の電極との接触面積が増える傾向にあり、また、溶融したコアを潰し過ぎて隣接する第1の粒子6同士が融着する可能性も少なくなる傾向にある。
【0036】
コア2の質量に対する第2の粒子8の質量比は、0.1〜1.0倍であることが好ましい。第2の粒子8の質量がコア2の質量の0.1倍以上であると、溶融したコアがより押し潰され難くなるので、加圧方向と直交する方向における絶縁性が向上する傾向にある。一方、第2の粒子8の質量がコア2の質量の1.0倍以下であると、加圧方向における導電性が向上する傾向にある。よって、第2の粒子8の質量がコア2の質量の0.1〜1.0倍であることにより、加圧方向と直交する方向における絶縁性を向上できると共に、加圧方向における導電性を向上できる。
【0037】
(接着剤組成物)
この回路接続材料1に含有される接着剤組成物は、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有する。
【0038】
ラジカル重合性化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物である。ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド化合物、ナジイミド化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー、又はオリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して使用してもよい。
【0039】
(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エテレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド変性ジアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。上記(メタ)アクリレート化合物をラジカル重合させることで、(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0040】
マレイミド化合物は、マレイミド基を少なくとも1個有する化合物である。マレイミド化合物としては、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
シトラコンイミド化合物は、シトラコンイミド基を少なくとも1個有する化合物である。シトラコンイミド化合物としては、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
ナジイミド化合物は、ナジイミド基を少なくとも1個有する化合物である。ナジイミド化合物としては、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
さらに、ラジカル重合性化合物としては、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物を使用してもよい。
【0044】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物は、金属等の無機物に対する接着剤組成物の接着力を向上させることができるので好ましい。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物の使用量は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましい。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物として得られる。具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(リン酸エステルジメタクリレート)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物とリン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物とを組み合わせて用いることが好ましい。このような組合せの場合には、(メタ)アクリレート化合物、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物をそれぞれ単独で用いた場合に比べて、接着剤組成物の接着強度がより向上する。
【0046】
ラジカル重合開始剤としては、光照射及び/又は加熱によりラジカルを発生する化合物であれば特に制限はない。かかるラジカル重合開始剤としては、150〜750nmの光照射及び/又は80〜200℃の加熱によりラジカルを発生する化合物が好ましく、具体的には、過酸化物、アゾ化合物等が好ましい。これらは、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等を考慮し適宜選択される。
【0047】
過酸化物としては、高反応性と保存安定性の点から、有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が50℃以上、かつ半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物が特に好ましい。なお、接続時間を10秒以下とする場合、十分な反応率を得るためのラジカル重合開始剤の配合量は、接着剤組成物の固形分全量を基準として、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%が特に好ましい。
【0048】
有機過酸化物としては、具体的には、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。中でも、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドは、開始剤中の塩素イオンや有機酸の濃度が5000ppm以下であり、加熱分解後に発生する有機酸が少なく、回路部材の電極の腐食を抑えることができるため特に好ましい。
【0049】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0050】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0051】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0052】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0053】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0054】
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0055】
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0056】
これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
【0057】
また、これらのラジカル重合開始剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0058】
また、接着剤組成物が回路接続材料に使用される場合には、回路部材の電極の腐食を抑えるため、ラジカル重合開始剤中に含有される塩素イオンや有機酸の濃度は5000ppm以下であることが好ましい。さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないラジカル重合開始剤がより好ましい。また、接着剤組成物の硬化後の安定性が向上することから、室温及び常圧下で24時間の開放放置後に20質量%以上の質量保持率を有することが好ましい。
【0059】
また、必要に応じて、接着剤組成物は、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン等のラジカル重合禁止剤を硬化性が損なわれない範囲で含有してもよい。
【0060】
この接着剤組成物は、ラジカル重合性化合物以外の熱硬化性樹脂を含んでもよい。このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
また、上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、通常のエポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものが使用できる。具体的には、アミン類、フェノール類、酸無水物類、イミダゾール類、ジシアンジアミド等が挙げられる。さらに、硬化促進剤として通常使用されている3級アミン類、有機リン系化合物を適宜使用してもよい。
【0062】
また、エポキシ樹脂を反応させる方法として、上記硬化剤を使用する以外に、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等を使用して、カチオン重合させてもよい。
【0063】
この接着剤組成物には、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和性を付与するため、高分子化合物が含有されてもよい。高分子化合物としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0064】
これら高分子化合物は、分子量が10000〜10,000,000のものが好ましい。また、これら高分子化合物は、ラジカル重合性の官能基で変成されていても良く、この場合耐熱性が向上する。さらに、これら高分子化合物は、カルボキシル基を含んでいてもよい。接着剤組成物における高分子化合物の配合量は、接着剤組成物中の固形分全量に対して、2〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%が特に好ましい。高分子化合物の配合量が、2質量%以上であると、応力緩和や接着力が向上する傾向にある。他方、80質量%以下であると流動性が低下し難くなる傾向にある。
【0065】
この接着剤組成物には、適宜充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤を添加してもよい。
【0066】
以上説明した接着剤組成物においては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜30質量部含有することが好ましく、1.0〜10質量部含有することがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量が0.5質量部以上であると、硬化反応が十分に進行し、硬化が十分になる傾向がある。他方、30質量部以下であると、保存安定性が低下し難くなる傾向がある。
【0067】
また、回路接続材料1における粒子混合物10の含有割合は、回路接続材料1の全量に対して、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。含有割合が1質量%以上であると、良好な導通を得易くなる傾向がある。他方、20質量%以下であると、隣接回路の短絡を引き起こす可能性を低減できる。
【0068】
また、回路接続材料1の使用形態は特に制限されないが、例えば、上記接着剤組成物における各成分をトルエン、酢酸エチル等の有機溶媒に溶解させた溶液に粒子混合物10を分散させて使用することができる。また、粒子混合物10が分散した溶液から溶媒を除去して所定の形状に成形した成形体(例えば、後述するフィルム状回路接続材料12;図2参照)として使用することもできる。
【0069】
(回路接続材料)
本実施形態の回路接続材料1は、第1の回路基板の主面上に複数の第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に複数の第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、上記第1及び第2の回路電極を対向させた状態で接続するための回路接続材料であって、上述の粒子混合物10と接着剤組成物とを含有する。本実施形態の回路接続材料1は、異方導電性を有することが好ましい。
【0070】
本実施形態の回路接続材料1を第1及び第2の回路部材間に介在させ、この回路接続材料1を加熱すると共に第1及び第2の回路部材を介して所定方向に加圧すると、第1及び第2の回路部材はこの回路接続材料1によって電気的に接続される。本実施形態の回路接続材料1は上述の粒子混合物10を含有するので、この回路接続材料1では、加熱及び所定方向の加圧の際に、加圧方向における導電性が向上すると共に、加圧方向と直交する方向における絶縁性が向上する。
【0071】
また、当該回路接続材料1の総質量に対する粒子混合物10の含有割合が1〜20質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。回路接続材料1の総質量に対する粒子混合物10の含有割合が1以上であると、回路接続材料1を加熱及び所定方向に加圧する際に加圧方向における導電性が向上する傾向にある。一方、回路接続材料1の総質量に対する粒子混合物10の含有割合が20質量%以下であると、回路接続材料1を加熱及び所定方向に加圧する際に加圧方向に直交する方向における絶縁性が向上する傾向にある。また、回路部材との接着又は接合に相対的に寄与し難い第2の粒子8の含有割合が相対的に低くなるため、得られる回路部材の接続構造の機械的強度が向上する傾向にある。よって、回路接続材料1の総質量に対する粒子混合物10の含有割合を1〜20質量%とすることにより、回路接続材料1を加熱及び所定方向に加圧する際に、加圧方向における導電性を向上できると共に、加圧方向に直交する方向における絶縁性を向上できる。本発明において、第1の粒子と第2の粒子は、それぞれ、回路接続材料1の総質量に対する第1の粒子の含有割合が1〜10質量%であり、かつ、回路接続材料1の総質量に対する前記第2の粒子の含有割合が1〜10質量%であると好ましい。
【0072】
また、本実施形態の回路接続材料1では、コア2が絶縁層4によって被覆されているので、コア2が酸化し難い。このため、対向する第1の回路電極と第2の回路電極との間の接続抵抗を更に低減することができる。
【0073】
(フィルム状回路接続材料)
図2は、フィルム状の回路接続材料を模式的に示す断面図である。図2に示されるフィルム状回路接続材料12は、上述の回路接続材料1をフィルム状に形成したものである。このように回路接続材料をフィルム状に形成することにより、回路接続材料が裂ける、割れる、或いはべたつく等の問題が生じにくく、回路接続材料の取り扱いが容易になる。フィルム状回路接続材料12は、上述の接着剤組成物からなるフィルム状の絶縁部14と、絶縁部14中に分散された粒子混合物10とを有する。
【0074】
フィルム状回路接続材料12は、硬化させたときに接着剤組成物のTg(ガラス転移温度)が5℃以上異なる2種以上の層からなる多層構成(図示せず)としてもよい。
【0075】
フィルム状回路接続材料12は、例えば、接着剤組成物を溶媒に溶解させ、粒子混合物10を分散したものを支持体(PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等)上に塗工装置を用いて塗布し、接着剤組成物が硬化しない温度で所定時間熱風乾燥することにより作製することができる。
【0076】
フィルム状回路接続材料12の厚さは、2〜20μmであることが好ましい。フィルム状回路接続材料12の厚さが2μm以上であると、対向する回路部材間に十分な量の回路接続材料を充填できる傾向がある。他方、20μm以下であると、回路電極間の接着剤組成物を十分に排除可能であり、回路電極間の導通の確保が容易になる傾向がある。
【0077】
(回路部材の接続構造)
図3は、本発明の実施形態に係る回路部材の接続構造を模式的に示す断面図である。図3に示される回路部材の接続構造24は、第1の回路基板21の主面21a上に複数の第1の回路電極22が形成された第1の回路部材20と、第2の回路基板31の主面31a上に複数の第2の回路電極32が形成された第2の回路部材30と、が接続されたものである。接続構造24は、第1の回路基板21の主面21aと第2の回路基板31の主面31aとの間に設けられた回路接続部材26とを備える。第1の回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。また、第2の回路基板31の主面31a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0078】
回路部材20,30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITOやAu等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて使用される。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ケイ素(SiO2)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0079】
回路接続部材26は、前述の回路接続材料1の硬化物からなるものであり、回路電極22,32を対向させた状態で回路部材20,30同士を接続している。回路接続部材26は、フィルム状回路接続材料12の第1の粒子6のコア2(図2)を構成していた低融点金属からなる低融点金属部16と、フィルム状回路接続材料12の第1の粒子6の絶縁層4(図2)を構成していた樹脂組成物の硬化物からなる絶縁部18と、フィルム状回路接続材料12の第2の粒子8(図2)と、フィルム状回路接続材料12の絶縁部14に含まれていた接着剤組成物の硬化物からなる絶縁部11とを備える。
【0080】
第1の回路電極22と第2の回路電極32とは、低融点金属部16を介して電気的及び機械的に接続されている。低融点金属部16は、コア2が溶融した後に第1の回路電極22及び第2の回路電極32に接合して固化したものである。このため、低融点金属部16は、第1の回路電極22及び第2の回路電極32と金属結合している。よって、回路電極22,32間の接続抵抗が十分に低減されると共に、第1の回路電極22と第2の回路電極32とを強固に固定することができる。したがって、回路電極22,32間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。
【0081】
また、絶縁部18によって、第1の回路電極22と第2の回路電極32とをより強固に固定することができる。さらに、絶縁部18は、隣り合う低融点金属部16同士が導通することを一層抑制できる。よって、隣り合う回路電極22,32間の短絡を一層抑制することができる。
【0082】
このような回路部材の接続構造24では、対向する回路電極22と回路電極32との間の接続抵抗を十分に低減できると共に、隣り合う回路電極22間の絶縁性及び隣り合う回路電極32間の絶縁性が十分に向上する。また、対向する回路電極22と回路電極32とは、回路接続部材26によって強固に固定される。
【0083】
(回路部材の接続構造の製造方法)
次に、図4(a)〜図4(c)を参照して、上述した回路部材の接続構造24の製造方法について説明する。図4(a)〜図4(c)は、回路部材の接続構造の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【0084】
まず、上述した第1の回路部材20及びフィルム状回路接続材料12を用意する(図4(a)参照)。次に、フィルム状回路接続材料12を第1の回路部材20の第1の回路電極22が形成されている面上に載置する。なお、例えばフィルム状回路接続材料12が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状回路接続材料12側を第1の回路部材20に向けるようにして、第1の回路部材20上に載置する。このとき、フィルム状回路接続材料12はフィルム状であるので取り扱いが容易である。よって、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間にフィルム状回路接続材料12を容易に介在させることができ、第1の回路部材20と第2の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
【0085】
そして、フィルム状回路接続材料12を、回路部材20に押し付ける向きに加圧(図4(a)の矢印A及び矢印Bの向きに加圧)し、フィルム状回路接続材料12を第1の回路部材20に仮接続する(図4(b)参照)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状回路接続材料12中の接着剤組成物が硬化しない温度、すなわちラジカル重合開始剤がラジカルを発生する温度よりも低い温度とする。
【0086】
続いて、図4(c)に示すように、第2の回路部材30を、第2の回路電極32が第1の回路部材20に向くようにしてフィルム状回路接続材料12上に載置する。なお、例えばフィルム状回路接続材料12が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから第2の回路部材30をフィルム状回路接続材料12上に載せる。
【0087】
そして、フィルム状回路接続材料12を、加熱しながら、図4(c)の矢印A及び矢印Bの向きに回路部材20,30を介して加圧する。このときの加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。そして、絶縁部14の接着剤組成物が硬化される。加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。こうして、フィルム状回路接続材料12が硬化処理され、本接続が行われ、図3に示すような回路部材の接続構造24が得られる。
【0088】
このような加熱・加圧処理の際、フィルム状回路接続材料12は、加熱されると共に第1及び第2の回路電極を介して所定方向に加圧される。そして、フィルム状回路接続材料12に分散されている第1の粒子6と第2の粒子8とが、互いに対向する回路電極22と回路電極32との間に挟み込まれる。これにより、まず、樹脂組成物の軟化点において、第1の粒子6の絶縁層4が軟化すると共に、第1の回路電極22及び第2の回路電極32によって押圧されることで、第1の粒子6の押圧された部分において選択的に絶縁層4が一部除去され、絶縁層4からコア2が露出する。その後、更に加熱すると、低融点金属の融点においてコア2が溶融する。これにより、第1及び第2の回路電極22,32と、溶融したコアとが金属結合する。
【0089】
フィルム状回路接続材料12は第2の粒子8を含んでおり、この第2の粒子8は、低融点金属部16(コア2)よりも高い融点又は高い軟化点を有し、コア2よりも粒径が小さいので、回路電極22と回路電極32との間でスペーサとして機能し、溶融したコア2が第1及び第2の回路電極によって押し潰され難くなる。よって、第1の粒子6が過剰に押し潰されることが避けられ、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア2同士が接合することを抑制できる。さらに、コア2の表面2aにおける上述の露出した部分以外の部分は、絶縁層4で被覆されているので、加圧方向と直交する方向において、溶融したコア2同士が接合することを更に抑制できる。
【0090】
また、本実施形態の粒子混合物10では、コア2が絶縁層4によって被覆されているので、コア2が酸化し難い。よって、粒子混合物10を加熱及び所定方向に加圧する際に、加圧方向における導電性が向上する。
【0091】
上記のようにして、回路部材の接続構造24を製造すると、得られる回路部材の接続構造24において、対向する回路電極22と回路電極32との間の接続抵抗を十分に低減できると共に、隣り合う回路電極22間の絶縁性及び隣り合う回路電極32間の絶縁性が十分に向上し、短絡(ショート)の可能性が低減される。
【0092】
フィルム状回路接続材料12の加熱により、第1の回路電極22と第2の回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤組成物が硬化して絶縁部11となる。また、コア2は、溶融して第1の回路電極22及び第2の回路電極32に接合した後に固化するので、第1の回路部材20と第2の回路部材30とが回路接続部材26を介して強固に接続される。得られる回路部材の接続構造24において、回路接続部材26は上記回路接続材料の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対して回路接続部材26の接着強度は十分に高い。
【0093】
さらに、コア2は低融点金属を主成分とするため、回路部材の接続構造24を製造する際のプロセス温度が低温となる。よって、回路部材の接続構造24を構成する部品は耐熱性をそれ程要求されないので、当該部品の材料選択の幅が広がる。
【0094】
〔第2実施形態〕
(接続材料)
本実施形態の接続材料は、上述の粒子混合物10と接着剤組成物とを含有する。本実施形態の接続材料は、上述の回路接続材料に限定されず、互いに対向する第1及び第2の回路電極を接続するための接続材料である。この接続材料を第1及び第2の回路電極間に介在させ、接続材料を加熱すると共に第1及び第2の回路電極を介して所定方向に加圧すると、第1及び第2の回路電極は接続材料によって電気的に接続される。本実施形態の接続材料は上述の粒子混合物10を含有するので、この接続材料では、加熱及び所定方向の加圧の際に、加圧方向における導電性が向上すると共に、加圧方向と直交する方向における絶縁性が向上する。
【0095】
また、当該接続材料の総質量に対する粒子混合物10の含有割合が1〜20質量%であることが好ましい。接続材料の総質量に対する粒子混合物10の含有割合が1質量%以上であると、接続材料を加熱及び所定方向に加圧する際に加圧方向における導電性が向上する傾向にある。一方、接続材料の総質量に対する粒子混合物10の含有割合が20質量%以下であると、接続材料を加熱及び所定方向に加圧する際に加圧方向に直交する方向における絶縁性が向上する傾向にある。また、回路電極との接着又は接合に相対的に寄与し難い第2の粒子8の含有割合が相対的に低くなるため、得られる回路電極の接続構造の機械的強度が向上する傾向にある。よって、接続材料の総質量に対する粒子混合物10の含有割合を1〜20質量%とすることにより、接続材料を加熱及び所定方向に加圧する際に、加圧方向における導電性を向上できると共に、加圧方向に直交する方向における絶縁性を向上できる。
【0096】
(フィルム状接続材料)
本実施形態のフィルム状接続材料は、図2に示されるフィルム状回路接続材料12と同様に、前述の回路接続材料1をフィルム状に形成してなる。このように回路接続材料をフィルム状に形成することにより、接続材料が裂ける、割れる、或いはべたつく等の問題が生じにくく、接続材料の取り扱いが容易になる。
【0097】
(回路電極の接続構造)
図5は、本実施形態の回路電極の接続構造としての半導体装置を模式的に示す断面図である。図5に示される半導体装置100は、半導体素子50(第1の回路電極)と、半導体素子50を支持する基板60とを備える。半導体素子50及び基板60の間には、これらを電気的及び機械的に接続する半導体素子接続部材40(接続部材)が設けられている。半導体素子接続部材40は、基板60の主面60a上に設けられている。半導体素子50は、半導体素子接続部材40上に設けられている。
【0098】
基板60上には複数の回路パターン61(第2の回路電極)が形成されている。回路パターン61は半導体素子50に対向配置されている。半導体素子接続部材40は、半導体素子50及び回路パターン61の間に設けられており、これらを電気的及び機械的に接続している。半導体素子接続部材40及び半導体素子50は、封止材70により封止されている。
【0099】
半導体素子50の構成材料としては、特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウム等のIV族半導体材料、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsP等のIII−V族化合物半導体材料、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTe等のII−VI族化合物半導体材料、CuInSe(ClS)等の種々の材料が挙げられる。
【0100】
半導体素子接続部材40は、前述の回路接続材料1の硬化物からなる。半導体素子接続部材40は、回路接続部材26と同様に、例えば、低融点金属部16と、絶縁部18と、第2の粒子8と、絶縁部11とを備える。半導体装置100においては、半導体素子50と回路パターン61とが、低融点金属からなる低融点金属部16を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体素子50の有する機能を十分に発揮することができる。また、半導体素子接続部材40は優れた異方導電性を有するので、隣り合う回路パターン61間の絶縁性が十分に向上する。よって、隣り合う回路パターン61間の短絡の発生を抑制できる。
【0101】
また、半導体素子接続部材40では、低融点金属部16と半導体素子50及び回路パターン61とが金属接合していることから、半導体素子50及び基板60に対する半導体素子接続部材40の接着強度が十分に高くなり、この状態を長期間にわたって持続させることができる。したがって、半導体素子50及び基板60間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0102】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0103】
例えば、上記実施形態では、フィルム状回路接続材料12を用いて回路部材の接続構造を製造しているが、フィルム状回路接続材料12に代えて、フィルム状ではない回路接続材料1を用いてもよい。この場合、例えば、回路接続材料1を溶媒に溶解させ、その溶液を、第1の回路部材20又は第2の回路部材30のいずれかに塗布し乾燥させれば、回路部材20,30間に回路接続材料1を介在させることができる。
【0104】
また、回路部材の接続構造の製造方法では、加熱又は光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤のほかに、必要に応じて、超音波、電磁波等によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。
【実施例1】
【0105】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
(粒子の作製)
まず、コアとして、Sn−58Biの導電粒子を準備した。千住金属株式会社製ソルダーペーストL20(はんだ成分:Sn−58Bi)をアセトンに溶かして導電粒子成分を分離した。次いで、振動ふるい器を用いて平均粒径が5μmの粒子を分級した。
【0107】
続いて、導電粒子の表面上に絶縁層を形成した。絶縁層の材料として、パラプレンP−25M(熱可塑性ポリウレタン樹脂、軟化点130℃、日本エラストラン(株)製商品名)の1質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液とし、導電性粒子を添加撹拌した。この後スプレードライヤ(ヤマト科学(株)製GA−32型)により100℃で10分間噴霧乾燥を行い被覆粒子を得た。この時の被覆層の平均厚みは、電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、約1μmであった。このようにして、第1の粒子を作製した。
【0108】
次に、第2の粒子として積水化学株式会社製の導電微粒子(ミクロパールAU、平均粒径4μm準備した。第2の粒子の平均粒径は、コア2の平均粒径の0.8倍であった。
【0109】
(フィルム状回路接続材料の作製)
一方、以下の手順でフィルム状回路接続材料の作製を行った。まず、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、平均分子量45,000)50gを、質量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を準備した。
【0110】
ラジカル重合性化合物として、ヒドロキシエチルグリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名80MFA)及び、リン酸エステルジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名P−2M)を準備した。
【0111】
ラジカル重合開始剤として、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(日本油脂株式会社製、商品名パーロイルOPP)を準備した。
【0112】
上記のようにして準備した材料を下記に示す固形分質量比で配合して接着剤組成物を得た。さらに、その接着剤組成物に、上述の粒子混合物を回路接続材料の全量に対して3体積%となるように添加して分散させた。
・PKHC:50
・80MFA:50
・P−2M:10
・パーロイルOPP:5
【0113】
次に、得られた溶液を、厚さ80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間の熱風乾燥により、厚さが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。得られたフィルム状回路接続材料は、室温(25℃)で十分な柔軟性を示した。
【0114】
(回路部材の接続構造の作製)
次に、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚さ8μmのAuめっき回路を有するフレキシブル基板(株式会社日立超LSIシステムズ製、商品名COF TEG_50A)と、バンプサイズ30μm×100μm、ピッチ50μmのAuバンプを有する半導体素子(株式会社日立超LSIシステムズ製、商品名JTEG Phase6_50)を準備した。FPC基板と半導体素子との間に上述のフィルム状回路接続材料を配置し、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて160℃、3MPaで15秒間の加熱及び所定方向の加圧を行った。こうして回路部材の接続構造(半導体素子/フレキシブル基板接続構造)を作製した。
【0115】
(実施例2)
第2の粒子に平均粒径が4μmのプラスチック粒子(積水化学株式会社製ミクロパールSP)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を作製し、接続構造体(半導体素子/フレキシブル基板の接続構造体)を得た。
【0116】
(比較例1)
第1の粒子に平均粒径が5μmのAuめっきプラスチック粒子(積水化学株式会社製ミクロパールAU)を用い、第2の粒子を入れなかったこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を作製し、接続構造体(半導体素子/フレキシブル基板の接続構造体)を得た。
【0117】
(比較例2)
Sn−Bi粒子に絶縁層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を作製し、接続構造体(半導体素子/フレキシブル基板の接続構造体)を得た。
【0118】
(接続抵抗の測定)
上記各実施例及び各比較例で作製した接続構造体の対向する回路部材間の接続抵抗を測定した。具体的には、それぞれの接続構造体の全電極をデイジーチェインで結んだ回路の接続抵抗をADVANTEST製DIGITAL MULTIMETER R6871Eを用いて測定した。このとき、測定電流は1mAとした。測定結果は、表1に示す通りであった。第1の粒子のコアに低融点金属を有する回路接続材料を用いた場合(実施例1、2)の方が、低融点金属層を有しない、高融点金属(Au)の接触のみによって導通を確保している回路接続材料を用いた場合(比較例1)よりも、低い接続抵抗を示した。また、第1の粒子に絶縁層を形成しなかった場合(比較例2)には、隣接する電極間にショート(短絡)が見られた。
【0119】
(耐温度サイクル寿命)
上記各実施例及び各比較例で作製した接続構造体の耐温度サイクル寿命を評価した。測定における温度範囲は下限−40℃、上限125℃とし、下限及び上限温度での保持時間を各15分間とした。常温から温度上限まで加熱して温度下限まで冷却し、その後常温に戻す一連の工程を1サイクルとし、かかるサイクルを繰り返し行って耐温度サイクル性を評価した。そして、100サイクル毎に温度サイクル試験装置から取り出して接続抵抗を測定し、オープン不良が発生するまでのサイクル数を測定した。測定結果は表1に示す通りであった。第1の粒子のコアに低融点金属を有する回路接続材料を用いた場合(実施例1、2)の方が、低融点金属層を持たず高融点金属(Au)の接触のみによって導通を確保している回路接続材料(比較例1)よりも、耐温度サイクル寿命が長いことが確認できた。また、絶縁層を持たない導電粒子を用いた場合は、接続構造体を作製するときに、隣接する導電粒子同士が融着し、さらに、隣り合う電極が導通してショート(短絡)してしまう現象があった。
【0120】
【表1】

【符号の説明】
【0121】
1…回路接続材料、2…コア、2a…コアの表面、4…絶縁層、6…第1の粒子、8…第2の粒子、10…粒子混合物、11、14…絶縁部、12…フィルム状回路接続材料、16…低融点金属部、18…絶縁部、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、21a…第1の回路基板の主面、22…第1の回路電極、24…回路部材の接続構造、26…回路接続部材、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、31a…第2の回路基板の主面、32…第2の回路電極、40…半導体素子接続部材(接続部材)、50…半導体素子(第1の回路電極)、60…基板、60a…基板の主面、61…回路パターン(第2の回路電極)、70…封止材、100…半導体装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の回路電極と第2の回路電極との間に挟まれて前記第1の回路電極と前記第2の回路電極とを接続するための回路接続材料であって、
加熱により流動性を有する接着剤組成物と、第1の粒子と、第2の粒子と、を備え、
前記第1の粒子は、
融点が130〜250℃の低融点金属を主成分とするコアと、該コアの表面を被覆しており前記低融点金属の融点よりも低い軟化点を有する樹脂組成物からなる絶縁層と、を有しており、
前記第2の粒子は、
前記コアよりも平均粒径が小さく、前記低融点金属の融点よりも高い融点又は高い軟化点を有する材料を主成分としており、
前記第1の粒子は、
前記第1の回路電極と前記第2の回路電極との接続の際には、前記絶縁層が回路接続時の加熱・加圧によって軟化して一部除去され、前記絶縁層から露出した前記コアと前記第1及び第2の回路電極とが金属接合することによって前記第1の回路電極と前記第2の回路電極と間の導通を図り、
前記第2の粒子は、
前記第1の回路電極と前記第2の回路電極との接続の際には、前記第1及び第2の回路電極の接続条件下においてスペーサとして機能することを特徴とする回路接続材料。
【請求項2】
総質量に対する前記第1の粒子の含有割合が1〜10質量%であり、かつ、総質量に対する前記第2の粒子の含有割合が1〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項3】
フィルム状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路接続材料。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の回路接続材料と、第1の回路電極と、第2の回路電極と、を備え、
前記第1の回路電極と前記第2の回路電極とが、前記回路接続材料を介して電気的に互いに接続されていることを特徴とする回路部材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−277652(P2009−277652A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97149(P2009−97149)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】