説明

回路接続用接着フィルム及び回路接続構造体

【課題】回路部材同士を接続する際の接続プロセス性に優れる回路接続用接着フィルム並びに回路接続構造体を提供すること。
【解決手段】加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、ラジカル重合性物質、フィルム形成性高分子、及び導電性粒子を含み、ラジカル重合性物質として、25℃での粘度が100,000〜1,000,000mPa・sであるウレタンアクリレート及び/またはウレタンメタアクリレートと、ジシクロペンテニル基またはトリシクロデカニル基を有するアクリレート及び/またはメタアクリレートとが含有され、ラジカル重合性物質100重量部に対して80〜180重量部の前記フィルム形成性高分子を含有することを特徴とする回路接続用接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路接続用接着フィルムおよび回路接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
相対向する回路電極を電気的に接続する回路接続用接着フィルム、例えば、エポキシ系接着剤に導電性粒子を分散させた異方導電接着フィルム(エポキシ樹脂系異方導電接着フィルム)は、主に液晶ディスプレイ(LCD)を駆動させる半導体が搭載されたTCP(Tape Carrier Package)とLCDパネルまたは、TCPとプリント配線板との電気的接続に広く使用されている。
【0003】
また、最近では、半導体をフェイスダウンで直接LCDパネルやプリント配線板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンディング法ではなく、薄型化や狭ピッチ接続に有利なフリップチップ実装が採用されており、ここでも異方導電接着フィルムが回路接続用接着フィルムとして用いられている。
【0004】
しかしながら、上記エポキシ樹脂系異方導電接着フィルムは、作業性に優れるものの、20秒程度の接続時間で160〜180℃程度の加熱が必要であり、10秒では180〜210℃程度の加熱が必要であった。
【0005】
この理由は、短時間硬化性(速硬化性)と貯蔵安定性(保存性)の両立により良好な安定性を得ることを目的として、常温で不活性な触媒型硬化剤を用いているために、硬化に際して十分な反応が得られないためである。
【0006】
近年、LCDモジュールの大型化・狭額縁化に伴い、回路接続用接着フィルムを用いた接続時にLCDパネルへの熱的影響の増大やプリント基板の反り増大が問題化している。また、軽量化という観点からLCDパネル基板をガラスに代わってプラスチックへ置き換えようという検討もなされているが、プラスチックは耐熱性が低く、TCPの実装が困難であるという問題を有している。
【0007】
そこで、この対応策として回路接続用接着フィルムの低温接続化が要求されている。また、生産効率向上のために10秒以下への接続時間の短縮化が求められてきており、低温速硬化性が必要不可欠となっている。そのため、10秒の接続時間で160℃程度の加熱で接続できるラジカル重合性物質を用いた回路接続用接着フィルムが提案(例えば、特許文献1参照)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3344886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したラジカル重合性物質を用いた回路接続用接着フィルムには、回路接続用接着フィルムを基板に転写する仮圧着の際、その基板上にきちんと転写できない、あるいは、接続する回路部材を回路接続用接着フィルムに仮固定した後、本圧着プロセスに移行する際の搬送時に振動で回路部材が回路接続用接着フィルムから剥がれ落ちる等、接続プロセス性に劣るという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、回路部材同士を接続する際の接続プロセス性に優れる回路接続用接着フィルム並びに回路接続構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、相対峙する回路電極間に介在され、前記回路電極同士を電気的に接続する回路接続用接着フィルムであって、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、ラジカル重合性物質、及びフィルム形成性高分子を含み、前記回路接続用接着フィルムのフレキシブル基板に対する仮固定力が40〜180N/mであることを特徴とする回路接続用接着フィルムである。
【0012】
この回路接続用接着フィルムは、回路部材同士を接続する際の接続プロセス性に優れる。具体的には、回路部材としてのフレキシブル基板への転写性が向上する。また回路部材としてのフレキシブル基板が、次プロセスへ搬送する際の振動で落下しにくくなる。さらに回路接続用接着フィルムをフレキシブル基板に転写した後、回路接続用接着フィルムが基材フィルムから剥がれにくくなる。さらにまた数10m以上の回路接続用接着フィルムがリールに巻かれて長時間室温で放置されても、回路接続用接着フィルムの剥離性支持フィルムへの背面転写が十分に防止され、所望の回路接続用接着フィルムをリールから引き出せないという問題が十分に解消される。
【0013】
なお、仮固定力が40N/mを下回ると、粘着性が弱すぎ、フレキシブル基板を回路接続用接着フィルムに仮固定した後、次プロセスへ搬送する際の振動でフレキシブル基板が落下しやすく、接続プロセス性、即ち生産性が低下する。一方、接着フィルムの仮固定力が180N/mを上回ると粘着性が強すぎ、接着フィルムをフレキシブル基板に転写後、接着フィルムが基材フィルムから剥がれにくくなり、同様に生産性の低下を招くという問題が発生する。また、粘着性が強すぎるために、数10m以上の回路接続用接着フィルムがリールに巻かれて長時間室温で放置された場合、回路接続用接着フィルムが剥離性支持フィルムに背面転写をし、所望の回路接続用接着フィルムをリールから引き出せないという問題が発生しやすくなる。
【0014】
また、本発明の回路接続構造体は、第一の回路電極を有する第一の回路部材又は第二の回路電極を有する第二の回路部材の少なくとも一方をフレキシブル基板とし、そのフレキシブル基板に上記回路接続用接着フィルムを仮固定し、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極を対向させた状態にして配置し、前記対向配置した第一の回路電極と第二の回路電極の間に上記回路接続用接着フィルムを介在させるようにし、前記回路接続用接着フィルムを加熱及び加圧して前記第一の回路電極と第二の回路電極とが電気的に接続されるようにしたものである。
【0015】
この回路接続構造体によれば、上記接着フィルムが、回路部材同士を接続する際の接続プロセス性に優れる。このため、生産性が向上し、回路接続構造体についての低コスト化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回路接続用接着フィルムによれば、ラジカル硬化系回路接続用接着フィルムの欠点である回路部材としてのフレキシブル基板への転写性と仮固定力の両立化を実現することが可能となるため、回路部材同士を接続する際の接続プロセス性に優れる。
【0017】
また本発明の回路接続構造体によれば、上記接着フィルムが、フレキシブル基板との接続プロセス性に優れるため、生産性が向上し、低コスト化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の回路接続用接着フィルムについて説明する。
【0019】
本発明の回路接続用接着フィルムは、相対峙する回路電極間に介在され、前記回路電極同士を電気的に接続する回路接続用接着フィルムであって、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、ラジカル重合性物質、及びフィルム形成性高分子を含み、回路接続用接着フィルムのフレキシブル基板に対する仮固定力は40〜180N/mとなっている。
【0020】
この回路接続用接着フィルムは、回路部材であるフレキシブル基板との接続プロセス性に優れる。具体的には、フレキシブル基板への転写性が向上する。またフレキシブル基板が、次プロセスへ搬送する際の振動で落下しにくくなる。さらに回路接続用接着フィルムをフレキシブル基板に転写後、回路接続用接着フィルムが基材フィルムから剥がれにくくなる。さらにまた数10m以上の回路接続用接着フィルムがリールに巻かれて長時間室温で放置されても、回路接続用接着フィルムの剥離性支持フィルムへの背面転写が十分に防止され、所望の回路接続用接着フィルムをリールから引き出せないという問題が十分に解消される。
【0021】
なお、仮固定力が40N/mを下回ると、粘着性が弱すぎ、フレキシブル基板を回路接続用接着フィルムに仮固定した後、次プロセスへ搬送する際の振動でフレキシブル基板が落下しやすく、接続プロセス性、即ち生産性が低下する。一方、接着フィルムの仮固定力が180N/mを上回ると粘着性が強すぎ、接着フィルムをフレキシブル基板に転写後、接着フィルムが基材フィルムから剥がれにくくなり、同様に生産性の低下を招くという問題が発生する。また、粘着性が強すぎるために、数10m以上の回路接続用接着フィルムがリールに巻かれて長時間室温で放置された場合、回路接続用接着フィルムが剥離性支持フィルムに背面転写をし、所望の回路接続用接着フィルムをリールから引き出せないという問題が発生しやすくなる。
【0022】
本発明の回路接続用接着フィルムの仮固定力を測定するための試料は、次のようにして作製した。即ちまず、2.5mm幅のPET基材付回路接続用接着フィルムをITOコートガラス(表面抵抗15〜20Ω/□、1.1mm厚)基板上に70℃、1MPa、3sの条件で仮圧着後、PET基材を剥離し、回路接続用接着フィルム上に75μm厚のポリイミドフィルムを基材とする200μmピッチフレキシブル配線板(18μmCu箔、Snめっき)を20〜24℃、0.5MPa、5sで圧着し仮固定用試料を作製した。
【0023】
仮固定力の測定は、次のようにして行った。即ち、上記のようにして作製した試料を用い、200μmピッチフレキシブル配線板(FPC)と回路接続用接着フィルムとの接着力(1cmあたりFPC)を、引張方向90度(引張速度:50mm/分)の引き剥がし(FPCの回路に対して平行方向での引き剥がし)によって測定(測定温度23±2℃)し、このときの接着力を仮固定力(N/m)とした。
【0024】
本発明の回路接続用接着フィルムの仮固定力の特に好ましい範囲は、60N/m〜150 N/mである。
【0025】
本発明に用いる加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものであり、ラジカル重合性物質、及びフィルム形成性高分子とともに回路接続用接着フィルムのフィレキシブル基板に対する仮固定力を40〜180N/mとし得るものであれば特に制限されない。かかる硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物などの硬化剤が挙げられるが、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定される。上記過酸化化合物としては、高反応性とポットライフの点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましい。この場合、有機過酸化物の配合量は0.05〜10重量%であり、0.1〜5重量%がより好ましい。硬化剤は、具体的には、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などから選定できる。また、回路部材の回路電極の腐食を抑えるために、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドから選定されることが好ましく、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定されることがより好ましい。
【0026】
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等がある。
【0027】
パーオキシジカーボネート類としては、ジーnープロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネト、ジ-2-エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等がある。
【0028】
パーオキシエステル類としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノネート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート等がある。
【0029】
パーオキシケタール類としては、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)デカン等がある。
【0030】
ジアルキルパーオキサイド類としては、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド等がある。
【0031】
ハイドロパーオキサイド類としては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等がある。これらの遊離ラジカル発生剤は単独または混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明で用いるラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、このようなラジカル重合性物質としては、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物等が挙げられる。
【0033】
アクリレート(メタクリレート)の具体例としては、ウレタンアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス〔4-(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等がある。
【0034】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-P-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチル-ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-3,3’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス〔3-s-ブチル-4,8(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス〔1-(4-マレイミドフェノキシ)-2-シクロヘキシル〕ベンゼン、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、などを挙げることができる。これらは、単独あるいは併用して用いたり、アリルフェノール、アリルフェニルエーテル、安息香酸アリルなどのアリル化合物と併用して用いてもよい。
【0035】
本発明では、上記のようなラジカル重合性物質を単独、または併用して用いることができるが、本発明では、25℃での粘度が100,000〜1,000,000mPa・sであるラジカル重合性物質を少なくとも含有することが特に好ましく、特に100,000〜500,000mPa・sの粘度(25℃)を有するラジカル重合性物質を含有することが好ましい。ラジカル重合性物質の粘度の測定は、市販のE型粘度計を用いて測定できる。
【0036】
ラジカル重合性物質の中でもウレタンアクリレートまたはウレタンメタアクリレートが接着性の観点から好ましく、また、耐熱性を向上させるために用いる有機過酸化物との橋かけ後、単独で100℃以上のTgを示すラジカル重合性物質を併用して用いることが特に好ましい。
【0037】
本発明で用いるラジカル重合性物質としては、ジシクロペンテニル基及び/またはトリシクロデカニル基及び/またはトリアジン環を有するものを用いることができる。特に、トリシクロデカニル基を有するラジカル重合性物質が好ましい。更に、トリシクロデカニル基を有するラジカル重合性物質がアクリレートまたはメタクリレートであることが好ましい。なお、本発明の回路接続用接着フィルムは、必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜含んでもよい。
【0038】
また、本発明に用いるラジカル重合性物質は、トリアジン環を有することが好ましい。
【0039】
また、さらに、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を0.1〜10重量部用いた場合、金属等の無機物表面での接着強度が向上するので好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2-ヒドロキシル(メタ)アクリレートの反応物として得られる。具体的には、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート、2-アクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート等があげられる。これらは、単独でもまた組み合わせても使用できる。
【0040】
また、本発明に用いられるフィルム形成性高分子には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられ、これらの中でも水酸基等の官能基を有する樹脂は、接着性が向上するためより好ましい。また、これらの高分子をラジカル重合性の官能基で変性したものも用いることができる。これら高分子の分子量は10,000〜1,000,000であることが好ましい。分子量が1,000,000を超えると混合性が悪くなる。
【0041】
またフィルム形成性高分子は、ラジカル重合性物質100重量部に対して80〜180重量部含まれることが好ましい。
【0042】
さらに、本発明の回路接続用接着フィルムは、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0043】
本発明の回路接続用接着フィルムが充填材を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填材の最大径が導電性粒子の粒径未満であれば使用でき、5〜60体積%の範囲が好ましい。60体積%を超えると信頼性向上の効果が飽和する。カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基の含有物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0044】
本発明の回路接続用接着フィルムは、導電性粒子をさらに含有することが好ましい。この場合、回路接続用接着フィルムが回路部材同士の接続に使用される場合に、導電性粒子を含有しない回路接続用接着フィルムを用いる場合に比べて、回路電極同士の接続信頼性をより向上させることができる。導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cuなどの遷移金属類ではなくAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましくAuがより好ましい。また、Niなどの遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等により形成し最外層を貴金属類プラスチックを核とした場合や熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。貴金族類の被覆層の厚みは良好な抵抗を得るためには、100Å以上が好ましい。しかし、Ni等の遷移金属の上に貴金属類の層を設ける場合では、貴金属類層の欠損や導電性粒子の混合分散時に生じる貴金属類層の欠損等により生じる酸化還元作用で遊離ラジカルが発生しポットライフ低下を引き起こすため、300Å以上が好ましい。導電性粒子は、接着剤成分100体積%に対して0.1〜30体積%の範囲で用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積%とするのがより好ましい。
【0045】
また、本構成の回路接続用接着フィルムを2層以上に分割し、遊離ラジカルを発生する硬化剤を含有する層と導電性粒子を含有する層に分離した場合、従来の高精細化可能の効果に加えて、ポットライフの向上が得られる。
【0046】
次に、本発明の回路接続構造体の実施形態について説明する。
【0047】
本実施形態の回路接続構造体は、以下の製造方法により得られるものである。
【0048】
即ち、まず第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材を用意する。このとき、例えば第一の回路部材をフレキシブル基板とする。
【0049】
次に、第一の回路部材に、上述した回路接続用接着フィルムを転写して仮固定する。このとき、リールに巻かれた状態から回路接続用接着フィルムを引き出す。
【0050】
次に、回路接続用接着フィルムを仮固定した状態で第一の回路部材を、第一の回路部材と第二の回路部材とを接続するための場所へ搬送する。
【0051】
そして、第一の回路部材と第二の回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極を対向させた状態にして配置し、対向配置した第一の回路電極と第二の回路電極の間に上記回路接続用接着フィルムを介在させるようにする。続いて、回路接続用接着フィルムを加熱及び加圧して硬化処理を施す。こうして第一及び第二の回路部材の間に回路接続部材を形成する。硬化処理は、一般的な方法により行うことが可能であり、その方法は接着剤組成物により適宜選択される。こうして第一の回路電極と第二の回路電極とが電気的に接続されるようにする。
【0052】
上記製造方法により得られる回路接続構造体によれば、上記接着フィルムが、フレキシブル基板である第一の回路部材との接続プロセス性に優れる。具体的には、フレキシブル基板である第一の回路部材への転写性が向上する。またフレキシブル基板が、次プロセスへ搬送する際の振動で落下しにくくなる。さらに回路接続用接着フィルムをフレキシブル基板である第一の回路部材に転写した後、回路接続用接着フィルムが基材フィルムから剥がれにくくなる。さらにまた数10m以上の回路接続用接着フィルムがリールに巻かれて長時間室温で放置されても、回路接続用接着フィルムの剥離性支持フィルムへの背面転写が十分に防止され、所望の回路接続用接着フィルムをリールから引き出せないという問題が十分に解消される。このため、生産性が向上し、回路接続構造体について低コスト化を図ることが可能となる。
【0053】
なお、上記回路接続構造体の製造方法においては、第一の回路部材をフレキシブル基板としているが、第一の回路部材に代えて第二の回路部材をフレキシブル基板としてもよいし、第一の回路部材とともに第二の回路部材をフレキシブル基板としてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0055】
(実施例1)
ラジカル重合性物質として、25℃での粘度が250,000mP・sのウレタンアクリレート10重量部、25℃での粘度が8,000mP・sのビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート25重量部、25℃での粘度が150mP・sのジメチロールトリシクロデカンジアクリレート10重量部、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート3部、遊離ラジカル発生剤として2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンの50重量%炭化水素希釈溶液4重量部を、フェノキシ樹脂(重量平均分子量45,000)をトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤に溶解して得られた40重量%の溶液130重量部に混合、均一に攪拌し、さらに、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径5μmの導電性粒子を3体積%配合分散させ、厚み80μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが20μmの回路接続用接着フィルム(幅15cm、長さ60m)を得た。得られた接着フィルムを1.5mm幅に裁断し、内径40mm、外径48mmのプラスチック製リールの側面(厚み1.5mm)に接着フィルム面を内側にして50m巻きつけ、テープ状の回路接続用接着フィルムを得た。得られた回路接続用接着フィルムのフレキシブル基板に対する仮固定力は、110N/mであった。
【0056】
(回路の接続)
実施例1で作製したテープ状の回路接続用接着フィルムは、3日間室温に放置された場合でも、接着フィルム層が剥離性支持フィルムに背面転写することなく、所望の接着フィルムをリールから引き出すことができた。
【0057】
そこで、この回路接続用接着フィルム(幅1.5mm、長さ3cm)の接着剤面を、70℃、1MPaで3秒間加熱加圧してITOコートガラス基板上に転写し、PETフィルムを剥離した。サンプル数は、20であり、全て回路接続用接着フィルム(幅1.5mm、長さ3cm)をITOコートガラス基板上に転写できた。ついで、ピッチ50μm、厚み18μmのすずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)を回路接続フィルム上に24℃、0.5MPaで5秒間加圧して仮固定した。仮固定されたFPC(サンプル数20)は、全てガラス基板と一緒に上下左右に振動させても落下せず、つぎのプロセスである本圧着機への設置に際しての搬送が問題なかった。ついで、このFPCが回路接続フィルムによって仮固定されたガラス基板を、本圧着装置に設置し、フレキシブル配線板側からヒートツールによって160℃、3MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続した。
【0058】
(接続抵抗の測定)
回路の接続後、上記接続部を含むFPCの隣接回路間の抵抗値を、初期と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に1000時間保持した後にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗50点を測定し、平均値を求めた。
【0059】
実施例1で得られた回路接続用接着フィルムを用いた回路接続構造体の初期接続抵抗は、平均で1.5Ωであり、1000hの高温高湿(85℃、85%RH)試験後の抵抗は、平均で2.5Ωと接続抵抗変化はほとんどなく、高い接続信頼性を示した。
【0060】
(接着力の測定)
回路の接続後、90度剥離、剥離速度50mm/分で接着力測定を行った。実施例1では1000gf/cm程度と良好な接着力が得られた。
(比較例1)
【0061】
ラジカル重合物質として、25℃での粘度が8,000mP・sのビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート45重量部、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート3部用いる以外は、実施例1と同様にして接着剤層の厚みが20μmの回路接続用接着フィルムを得た。得られた回路接続用接着フィルムの仮固定力は、20N/mであった。
【0062】
(回路の接続)
比較例1で作製したテープ状の回路接続用接着フィルムは、3日間室温に放置された場合でも、接着フィルム層が剥離性支持フィルムに背面転写することなく、所望の接着フィルムをリールから引き出すことができた。
【0063】
そこで、このテープ状の回路接続用接着フィルム(幅1.5mm、長さ3cm)の接着剤面を、70℃、1MPaで3秒間加熱加圧してITOコートガラス基板上に転写し、PETフィルムの剥離を試みた。しかし、サンプル数20の内、8サンプルで回路接続用接着フィルムのITOコートガラス基板上への転写ができなかった。ついで、ITOコートガラス基板上に回路接続用接着フィルムを転写できた12サンプルを用い、ピッチ50μm、厚み18μmのすずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)を回路接続用接着フィルム上に24℃、0.5MPaで5秒間加圧して仮固定した。ついで、このFPCが回路接続用接着フィルムによって仮固定されたガラス基板(サンプル数12)を移動して、本圧着装置に設置しようとしたが、搬送中の振動によって7個のFPCが回路接続用接着フィルムから剥がれ、本圧着に供することができなかった。
【0064】
(比較例2)
ラジカル重合性物質として、25℃での粘度が150mP・sのジメチロールトリシクロデカンジアクリレート45重量部、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート3部用いる以外は、実施例1と同様にして接着剤層の厚みが20μmの回路接続用接着フィルムを得た。得られた回路接続用接着フィルムの仮固定力は、200N/mであった。
【0065】
(回路の接続)
比較例2で作製したテープ状の回路接続用接着フィルムは、粘着性が強すぎ、3日間室温に放置された場合、接着フィルム層が剥離性支持フィルムに背面転写をし、所望の接着フィルムをリールから引き出せないという問題が発生し、回路接続に供することができなかった。
【0066】
(比較例3)
ラジカル重合性物質として、25℃での粘度が10mP・sのトリエチレングリコールジアクリレート45重量部、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート3部用いる以外は、実施例1と同様にして接着剤層の厚みが20μmの回路接続用接着フィルムを得た。得られた回路接続用接着フィルムの仮固定力は、230N/mであった。
【0067】
(回路の接続)
比較例3で作製したテープ状の回路接続用接着フィルムは、粘着性が強すぎ、3日間室温に放置された場合、接着フィルム層が剥離性支持フィルムに背面転写をし、所望の接着フィルムをリールから引き出せないという問題が発生し、回路接続に供することができなかった。
【0068】
以上の実施例1及び比較例1〜3の結果より、本発明の回路接続用接着フィルムは、フレキシブル基板との接続プロセス性に優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回路電極を有する第一の回路部材及び第二の回路電極を有する第二の回路部材の少なくとも一方をフレキシブル基板とし、対向配置した前記第一の回路電極と前記第二の回路電極の間に介在させた当該回路接続用接着フィルムを加熱及び加圧して前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続されるようにして回路接続構造体を得るために用いられる回路接続用接着フィルムであって、
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、ラジカル重合性物質、フィルム形成性高分子、及び導電性粒子を含み、
前記ラジカル重合性物質として、25℃での粘度が100,000〜1,000,000mPa・sであるウレタンアクリレート及び/またはウレタンメタアクリレートと、ジシクロペンテニル基またはトリシクロデカニル基を有するアクリレート及び/またはメタアクリレートとが含有され、
前記ラジカル重合性物質100重量部に対して80〜180重量部の前記フィルム形成性高分子を含有することを特徴とする回路接続用接着フィルム。
【請求項2】
当該回路接続用接着フィルムのフレキシブル基板に対する仮固定力が40〜180N/mであり、前記仮固定力が、2.5mm幅のPET基材付前記回路接続用接着フィルムをITOコートガラス基板上に70℃、1MPa、3sの条件で仮圧着後、PET基材を剥離し、前記回路接続用接着フィルム上に75μm厚のポリイミドフィルムを基材とする200μmピッチフレキシブル配線板(18μmCu箔、Snめっき)を20〜24℃、0.5MPa、5sで圧着して仮固定用試料を作製し、前記仮固定用試料を用い、前記200μmピッチフレキシブル配線板(FPC)と前記回路接続用接着フィルムとの接着力(1cmあたりFPC)を、引張方向90度(引張速度:50mm/分)の引き剥がし(FPCの回路に対して平行方向での引き剥がし)によって測定(測定温度23±2℃)したときの接着力である、請求項1記載の回路接続用接着フィルム。
【請求項3】
前記加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤が、半減期10時間の温度が40℃以上かつ半減期1分の温度が180℃以下である有機過酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路接続用接着フィルム。
【請求項4】
前記ラジカル重合性物質として、トリシクロデカニル基を有するアクリレート及び/またはメタアクリレートが含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続用接着フィルム。
【請求項5】
トリシクロデカニル基を有するアクリレート及び/またはメタアクリレートが、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続用接着フィルム。
【請求項6】
前記ラジカル重合性物質としてさらにトリアジン環を有するラジカル重合性物質が含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続用接着フィルム。
【請求項7】
第一の回路電極を有する第一の回路部材及び第二の回路電極を有する第二の回路部材の少なくとも一方をフレキシブル基板とし、対向配置した前記第一の回路電極と前記第二の回路電極の間に介在させた前記回路接続用接着フィルムを加熱及び加圧して前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続されるようにした回路接続構造体。
【請求項8】
第一の回路電極を有する第一の回路部材及び第二の回路電極を有する第二の回路部材の少なくとも一方をフレキシブル基板とし、対向配置した前記第一の回路電極と前記第二の回路電極の間に介在させた請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路接続用接着フィルムを加熱及び加圧して前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続されるようにして回路接続構造体を得る、回路接続構造体の製造方法。

【公開番号】特開2012−57161(P2012−57161A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206517(P2011−206517)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【分割の表示】特願2004−2326(P2004−2326)の分割
【原出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】