回転センサ付き軸受使用事務機
【課題】 回転センサの取付けおよび機体のコンパクト化が容易な回転センサ付き軸受使用事務機を提供する。
【解決手段】 渦電流式センサを使用した回転センサ2を備える回転センサ付き軸受20を、事務機である複写機における感光体ドラムの支持軸受、または感光体ドラムの駆動用モータの軸受として用いる。
【解決手段】 渦電流式センサを使用した回転センサ2を備える回転センサ付き軸受20を、事務機である複写機における感光体ドラムの支持軸受、または感光体ドラムの駆動用モータの軸受として用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転センサ付き軸受を用いたカラー複写機等の事務機に関する。
【背景技術】
【0002】
4連タンデム方式のカラー複写機では、各感光ドラムの回転変動の周期が異なることから、画像の重ね合わせにおいて、大きなずれが発生してしまうという欠点がある。この欠点を回避する対策として、各感光ドラムの回転変動周期の位相を合わせる手段を設けることで画像重ね合わせのずれを極力抑制するようにしたものが提案されている(例えば特許文献1)。この場合、回転変動周期の位相を合わせる上記手段として、感光ドラムやモータ回りの回転軸に、ロータリエンコーダ(回転センサ)を取付けている。
【特許文献1】特開2002−244395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記したカラー複写機のように、感光ドラムやそのモータの回転軸にロータリエンコーダを直接取付ける構成では、ロータリエンコーダの位置調整や組立に多くの時間を要すると共に、設置スペースも必要で、カラー複写機のコンパクト化を阻害する要因となる。
【0004】
この発明の目的は、回転センサの取付けおよびコンパクト化が容易で、かつ回転検出の分解能を高めることができる回転センサ付き軸受使用事務機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の回転センサ付き軸受使用事務機は、渦電流式センサを使用した回転センサを備える回転センサ付き軸受を、事務機に組み込んだことを特徴とする。
この構成によると、回転センサを一体化させた回転センサ付き軸受を事務機に組み込むので、軸受と別体の回転センサを組み込む構成に比べて回転センサの設置スペースを縮小でき、事務機をコンパクトにできる。また、別体の回転センサを組み込む場合に比べて、組込み時の回転センサの調整が不要となり、組立コストを低減できる。特に、回転センサとして渦電流式センサを使用するため、コンパクトで高分解能にすることができる。これにより、事務機の一層のコンパクト化が図れる。
【0006】
前記事務機は、例えば印字装置を有するものであり、この印字装置に前記回転センサ付き軸受を組み込んむ。すなわち、前記事務機は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはこれら複写機、プリンタ、ファクシミリ等の機能を複合した複合機であっても良く、その印字装置の部分に、前記回転センサ付き軸受を組み込んむ。前記事務機はカラー複写機であっても良い。ここで言うカラー複写機は、少なくとも複写機としての機能を有するものであり、プリンタ、ファクシミリ等の機能を有する複合機であっても良い。複写機等の印字装置、特に複数の感光ドラムを有するカラー複写機では、各感光ドラムの回転変動周期の位相を合わせることが必要であり、精度の良い回転検出が求められる。また、複数の感光ドラムを備える複写機では、コンパクト化が難しい。そのため、渦電流式センサを使用した回転センサ付き軸受を用いることによるコンパクト化,高分解能化の効果が、より効果的に発揮される。
回転センサ付き軸受は、感光体ドラムのモータに取付けても良い。あるいは回転センサ付き軸受を、感光体ドラムの支持軸受としても良い。モータに取付けた場合および感光体ドラムの支持軸受に用いた場合のいずれにおいても、従来のエンコーダ別体取り付けに比べて、モータや感光体ドラムの周辺のスペースが縮小でき、コンパクト化,高分解能化の利点が効果的に発揮される。
【0007】
この発明の回転センサ付き軸受は、渦電流式センサを使用した回転センサを軸受に組み込んだことを特徴とする。
回転センサを組み込んだ軸受とすることで、別体の回転センサを用いる場合に比べて、軸受使用機器への組み立て時にセンサの調整が不要となり、組み立てコストの削減にも寄与できる。この場合に、回転センサとして渦電流式センサを使用したため、よりコンパクトにでき、かつ回転センサに高分解能が得られる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の回転センサ付き軸受使用事務機は、渦電流式センサを使用した回転センサを備える回転センサ付き軸受を、事務機に組み込んだため、回転センサの取付けおよび機体のコンパクト化が容易となり、かつ回転検出の高分解能化が可能になる。
この発明の回転センサ付き軸受は、渦電流式センサを使用した回転センサを軸受に組み込んだため、軸受使用機器への回転センサの取付け、および周辺部のコンパクト化が可能で、かつ回転検出の高分解能化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この回転センサ付き軸受20は、カラー複写機などの事務機に組み込まれるものであり、内輪3および外輪4間に複数の転動体5を介在させた転がり軸受1と、この転がり軸受1の一端部に設けられた回転センサ2とからなる。転がり軸受1は深溝玉軸受からなり、ここでは内輪3が回転側軌道輪、外輪4が固定側軌道輪とされる。内輪3の外径面および外輪4の内径面にはそれぞれ転動体5に対する軌道面3a,4aが形成されており、転動体5は保持器6で保持されている。内輪3と外輪4の間の環状空間は、回転センサ2の設置側とは反対側の端部がシール部材7で密封されている。
【0010】
回転センサ2は渦電流式センサであって、内輪3の一端部の外径面に圧入固定されたセンサターゲット部8と、外輪4の一端部に取付けられ前記センサターゲット部8を検出するセンサ部9とからなる。センサターゲット部8は、導電性材料からなる偏心環体であって、その外径面の中心O1は内輪3の中心つまり転がり軸受1の中心Oから若干偏心した位置とされる。
【0011】
外輪4に取付けられるセンサ部9は、シート状基体10と、このシート状基体10の一部に設けられる複数(ここでは2つ)のセンサコイル11,12とでなる。このシート状のセンサ部9は、樹脂製センサハウジング13内に挿入された状態でモールド樹脂部14により樹脂モールドされ、このセンサハウジング13が金属製外環15を介して外輪4に取付けられる。
【0012】
図2に示すように、センサ部9のシート状基体10は、内輪3の外径面に沿うように、つまり転がり軸受1の中心O回りに円弧状に湾曲させることで、内輪3側のセンサターゲット部8と径方向に対向するように配置される。2つのセンサコイル11,12は、シート状基体10上の周方向の機械角で90°離れた位置に配置される。これにより、センサ部9のセンサコイル11,12とセンサターゲット部8のエアギャップが、センサターゲット部8の1回転を1周期として変化し、このエアギャップの変化をセンサコイル11,12が検出する。図2では、センサターゲット部8におけるa点でエアギャップが最も小さく、c点でエアギャップが最も大きくなる。
【0013】
なお、図示は省略するが、回転センサ2におけるセンサ部9には電源用や検出信号出力用のコードが接続される。また、回転センサ2をコンパクトに構成する観点から、センサ部9のシート状基体10には、電源回路、信号増幅回路、信号処理回路などを設けることが望ましいが、これらの回路をセンサ部9の外側に設けてコードでセンサ部9と接続しても良い。
【0014】
図3は、回転センサ2が出力する検出信号の波形図を示す。図2のように、内輪3が図のCW方向(時計方向)に回転すると、その1回転当たりにセンサ部9の2つのセンサコイル11,12がそれぞれ正弦波状の検出信号S1 ,S2 を1波形分出力する。2つのセンサコイル11,12は周方向に機械角で90°離れて配置されているので、これらの検出信号S1 ,S2 は図3のように90°の位相差を持つ。これにより、図2に示すCW方向回転の場合、検出信号S1 は検出信号S2 に対して90°位相が進み、CCW方向(反時計方向)回転の場合、検出信号S1 は検出信号S2 に対して90°位相が遅れる。すなわち、例えばCW方向回転の場合を示す図3において、センサコイル11がセンサターゲット部8のa点を検出するときセンサコイル12がd点を、またセンサコイル11がb点を検出するときセンサコイル12がa点を、センサコイル11がc点を検出するときセンサコイル12がb点を、センサコイル11がd点を検出するときセンサコイル12がc点をそれぞれ検出する。このように、内輪3が1回転する間に、2つのセンサコイル11,12の検出信号S1 ,S2 の間では限定された電圧値の関係が成り立つので、これらの電圧値の関係をチェックすることにより、内輪3の回転方向が検出可能である。そこで、前記両検出信号S1 ,S2 の電圧値と、各回転方向における絶対角度の関係を予め定義しておくことにより、内輪3の回転の絶対角度を知ることができる。
【0015】
図4は、前記回転センサ2の検出信号の処理回路の一例を示す。この処理回路は、温度変化に起因して検出信号に生じるオフセットをキャンセルするオフセットキャンセル部16と、オフセットをキャンセルした後の信号を矩形波処理する矩形波処理部17とを備える。オフセットキャンセル部16は、OPアンプ18および抵抗R1〜R4で構成される差動増幅器からなる。矩形波処理部17はOPアンプからなる。この処理回路を用いる場合、図2におけるセンサ部9では、各センサコイル11,12に対してそれぞれ組をなす別のセンサコイル11’12’が、対応するセンサコイルに対して機械角で180°離れて配置される。
【0016】
図5は、センサコイル11,11’の組合せの検出信号S1 ,S1'を図4の処理回路で処理したときの波形図を示す。オフセットキャンセル部16におけるOPアンプ18の+入力端子、−入力端子には図5(A),(B)に示すセンサコイル11,11’の各出力信号S1a,S1bが入力される。なお、図5(A),(B)において破線で示す波形はオフセットがない場合の信号波形を示す。オフセットキャンセル部16はこれら出力信号S1a,S1bの差分(S1a−S1b)を増幅して出力することで、検出信号に含まれるオフセットをキャンセルする。図5(C)は、オフセットがキャンセルされたオフセットキャンセル部16からの出力信号S1 の波形図を示す。この出力信号S1 がセンサコイル11の処理済み検出信号として矩形波処理部17に入力され、図5(D)のような矩形波に処理される。
ここでは、説明を省略するが、センサコイル12,12’の組合せの検出信号についても、同様の処理回路で同様の処理を行うことで、オフセットのキャンセルと矩形波処理が行われる。
【0017】
このように、この構成の回転センサ付き軸受20によると、渦電流式センサを使用した回転センサ2を転がり軸受1に組み込んでいるので、構成のコンパクト化が可能であり、かつ回転検出の高分解能化も可能となる。
【0018】
図6〜図8は、この発明の他の実施形態を示す。図6のVII −VII 矢視断面図を示す図7のように、この実施形態の回転センサ付き軸受20は、図1〜図5に示した先の実施形態において、偏心環体のセンサターゲット部8に替えて、螺旋状のセンサターゲット部8Aを用いたものである。すなわち、このセンサターゲット部8Aは、内径面が内輪3と同心の真円で外径面の外径寸法が1周にわたり連続的に増大変化する環体とされている。ここでは、センサターゲット部8Aは、その外径面の外径寸法がCCW方向(反時計方向)に増大するように形成されている。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0019】
図8は、この実施形態の回転センサ付き軸受20において、回転センサ2の出力する検出信号の波形図を示す。この実施形態の場合、図7のように内輪3がCW方向(時計方向)に回転すると、その1回転当たりにセンサ部9の2つのセンサコイル11,12がそれぞれ鋸歯状の検出信号S1 ,S2 を1波形分出力する。2つのセンサコイル11,12は周方向に機械角で90°離れて配置されているので、これらの検出信号は90°の位相差を持つ。すなわち、図8において、センサコイル11がセンサターゲット部8Aのa点(e点と同じ)を検出するときセンサコイル12がd点を、またセンサコイル11がb点を検出するときセンサコイル12がa点を、センサコイル11がc点を検出するときセンサコイル12がb点を、センサコイル11がd点を検出するときセンサコイル12がc点をそれぞれ検出する。この場合にも、内輪3が1回転する間に、2つのセンサコイル11,12の検出信号S1 ,S2 の間では限定された電圧値の関係が成り立つので、これらの電圧値の関係をチェックすることにより、内輪3の回転方向が検出される。そこで、前記両検出信号S1 ,S2 の電圧値と、各回転方向における絶対角度の関係を予め定義しておくことにより、内輪3の回転の絶対角度を知ることができる。
【0020】
この実施形態の場合、検出信号が増大変化するか減少変化するかを判定することによって、内輪3の回転方向を検出できるので、センサ部9の構成は、この実施形態のように2相出力方式とせず、1つのセンサコイルだけを用いた単相出力方式としても内輪3の回転の絶対角度を検出できる。
【0021】
なお、上記した各実施形態の回転センサ付き軸受20では、内輪3が回転側軌道輪で、外輪4が固定側軌道輪である転がり軸受1に回転センサ2を取付けた場合について説明したが、内輪3が固定側軌道輪で、外輪4が回転側軌道輪である転がり軸受に回転センサ2を取付けた回転センサ付き軸受であっても、上記と同様に適用可能である。
【0022】
図9は上記した各実施形態の回転センサ付き軸受20が組み込まれる事務機の一例の概略構成を示す断面図である。この事務機は、4連タンデム式の印字装置33を有するフルカラー複写機であって、4つの感光体ドラム21と、原稿置き台22上の原稿画像を処理する画像処理部23と、この画像処理部23で処理された画像を前記感光体ドラム21に露光させる露光処理部24と、これら感光体ドラム21が並ぶ転写領域に用紙カセット25A,25Bの用紙を搬送する用紙搬送部26と、転写領域で転写された用紙を定着し機外に排出する定着部27などを備える。上記4つの感光体ドラム21、露光処理部24、および定着部27により上記印字装置33が構成される。
【0023】
図10は、前記感光体ドラム21の回転軸28が回転自在に支持されるフレーム29の一部を示す断面図である。感光体ドラム21の回転軸28は、回転センサ付き軸受20を介してフレーム29に回転自在に支持される。この回転センサ付き軸受20の回転センサ2によって、前記回転軸28の回転角度が検出される。検出した回転角度情報は、例えば各感光体ドラム21の回転変動の周期の位相を合わせる処理に用いられ、これにより画像重ね合わせずれの抑制が図られる。
【0024】
このように、このカラー複写機は、上記実施形態の回転センサ付き軸受20で感光体ドラム21の回転軸28を回転自在に支持することで、回転軸28の回転角度を検出するようにしているので、軸受と別体の回転センサを組み込む構成に比べて回転センサ2の設置スペースを縮小でき、カラー複写機をコンパクトに構成できる。また、別体の回転センサを組み込む場合に比べて、組込み時の回転センサ2の調整が不要となり、組立コストを低減できる。
【0025】
なお、図10では、感光体ドラム21の回転軸28を回転自在に支持する軸受として、上記した実施形態の回転センサ付き軸受20を用いた例を示したが、これに限らず図11のように、感光体ドラム21を回転駆動するモータ30の出力軸31をモータハウジング32に回転自在に支持する軸受として、上記実施形態の回転センサ付き軸受20を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる回転センサ付き軸受の断面図である。
【図2】図1におけるII−II矢視断面図である。
【図3】同回転センサ付き軸受における回転センサの出力波形図である。
【図4】同回転センサの出力信号の処理回路の一例を示すブロック図である。
【図5】同処理回路による処理信号の波形図である。
【図6】この発明の他の実施形態にかかる回転センサ付き軸受の断面図である。
【図7】図6におけるVII −VII 矢視断面図である。
【図8】同回転センサ付き軸受における回転センサの出力波形図である。
【図9】回転センサ付き軸受が組み込まれるカラー複写機の一例の概略構成を示す断面図である。
【図10】同カラー複写機における感光体ドラムの回転軸の支持部の一例を示す断面図である。
【図11】同カラー複写機における感光体ドラム用モータの出力軸支持部の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…転がり軸受
2…回転センサ
8,8A…センサターゲット部
9…センサ部
10…シート状基体
11,12…センサコイル
20…回転センサ付き軸受
21…感光体ドラム
28…感光体ドラムの回転軸
30…モータ
31…モータ出力軸
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転センサ付き軸受を用いたカラー複写機等の事務機に関する。
【背景技術】
【0002】
4連タンデム方式のカラー複写機では、各感光ドラムの回転変動の周期が異なることから、画像の重ね合わせにおいて、大きなずれが発生してしまうという欠点がある。この欠点を回避する対策として、各感光ドラムの回転変動周期の位相を合わせる手段を設けることで画像重ね合わせのずれを極力抑制するようにしたものが提案されている(例えば特許文献1)。この場合、回転変動周期の位相を合わせる上記手段として、感光ドラムやモータ回りの回転軸に、ロータリエンコーダ(回転センサ)を取付けている。
【特許文献1】特開2002−244395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記したカラー複写機のように、感光ドラムやそのモータの回転軸にロータリエンコーダを直接取付ける構成では、ロータリエンコーダの位置調整や組立に多くの時間を要すると共に、設置スペースも必要で、カラー複写機のコンパクト化を阻害する要因となる。
【0004】
この発明の目的は、回転センサの取付けおよびコンパクト化が容易で、かつ回転検出の分解能を高めることができる回転センサ付き軸受使用事務機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の回転センサ付き軸受使用事務機は、渦電流式センサを使用した回転センサを備える回転センサ付き軸受を、事務機に組み込んだことを特徴とする。
この構成によると、回転センサを一体化させた回転センサ付き軸受を事務機に組み込むので、軸受と別体の回転センサを組み込む構成に比べて回転センサの設置スペースを縮小でき、事務機をコンパクトにできる。また、別体の回転センサを組み込む場合に比べて、組込み時の回転センサの調整が不要となり、組立コストを低減できる。特に、回転センサとして渦電流式センサを使用するため、コンパクトで高分解能にすることができる。これにより、事務機の一層のコンパクト化が図れる。
【0006】
前記事務機は、例えば印字装置を有するものであり、この印字装置に前記回転センサ付き軸受を組み込んむ。すなわち、前記事務機は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはこれら複写機、プリンタ、ファクシミリ等の機能を複合した複合機であっても良く、その印字装置の部分に、前記回転センサ付き軸受を組み込んむ。前記事務機はカラー複写機であっても良い。ここで言うカラー複写機は、少なくとも複写機としての機能を有するものであり、プリンタ、ファクシミリ等の機能を有する複合機であっても良い。複写機等の印字装置、特に複数の感光ドラムを有するカラー複写機では、各感光ドラムの回転変動周期の位相を合わせることが必要であり、精度の良い回転検出が求められる。また、複数の感光ドラムを備える複写機では、コンパクト化が難しい。そのため、渦電流式センサを使用した回転センサ付き軸受を用いることによるコンパクト化,高分解能化の効果が、より効果的に発揮される。
回転センサ付き軸受は、感光体ドラムのモータに取付けても良い。あるいは回転センサ付き軸受を、感光体ドラムの支持軸受としても良い。モータに取付けた場合および感光体ドラムの支持軸受に用いた場合のいずれにおいても、従来のエンコーダ別体取り付けに比べて、モータや感光体ドラムの周辺のスペースが縮小でき、コンパクト化,高分解能化の利点が効果的に発揮される。
【0007】
この発明の回転センサ付き軸受は、渦電流式センサを使用した回転センサを軸受に組み込んだことを特徴とする。
回転センサを組み込んだ軸受とすることで、別体の回転センサを用いる場合に比べて、軸受使用機器への組み立て時にセンサの調整が不要となり、組み立てコストの削減にも寄与できる。この場合に、回転センサとして渦電流式センサを使用したため、よりコンパクトにでき、かつ回転センサに高分解能が得られる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の回転センサ付き軸受使用事務機は、渦電流式センサを使用した回転センサを備える回転センサ付き軸受を、事務機に組み込んだため、回転センサの取付けおよび機体のコンパクト化が容易となり、かつ回転検出の高分解能化が可能になる。
この発明の回転センサ付き軸受は、渦電流式センサを使用した回転センサを軸受に組み込んだため、軸受使用機器への回転センサの取付け、および周辺部のコンパクト化が可能で、かつ回転検出の高分解能化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この回転センサ付き軸受20は、カラー複写機などの事務機に組み込まれるものであり、内輪3および外輪4間に複数の転動体5を介在させた転がり軸受1と、この転がり軸受1の一端部に設けられた回転センサ2とからなる。転がり軸受1は深溝玉軸受からなり、ここでは内輪3が回転側軌道輪、外輪4が固定側軌道輪とされる。内輪3の外径面および外輪4の内径面にはそれぞれ転動体5に対する軌道面3a,4aが形成されており、転動体5は保持器6で保持されている。内輪3と外輪4の間の環状空間は、回転センサ2の設置側とは反対側の端部がシール部材7で密封されている。
【0010】
回転センサ2は渦電流式センサであって、内輪3の一端部の外径面に圧入固定されたセンサターゲット部8と、外輪4の一端部に取付けられ前記センサターゲット部8を検出するセンサ部9とからなる。センサターゲット部8は、導電性材料からなる偏心環体であって、その外径面の中心O1は内輪3の中心つまり転がり軸受1の中心Oから若干偏心した位置とされる。
【0011】
外輪4に取付けられるセンサ部9は、シート状基体10と、このシート状基体10の一部に設けられる複数(ここでは2つ)のセンサコイル11,12とでなる。このシート状のセンサ部9は、樹脂製センサハウジング13内に挿入された状態でモールド樹脂部14により樹脂モールドされ、このセンサハウジング13が金属製外環15を介して外輪4に取付けられる。
【0012】
図2に示すように、センサ部9のシート状基体10は、内輪3の外径面に沿うように、つまり転がり軸受1の中心O回りに円弧状に湾曲させることで、内輪3側のセンサターゲット部8と径方向に対向するように配置される。2つのセンサコイル11,12は、シート状基体10上の周方向の機械角で90°離れた位置に配置される。これにより、センサ部9のセンサコイル11,12とセンサターゲット部8のエアギャップが、センサターゲット部8の1回転を1周期として変化し、このエアギャップの変化をセンサコイル11,12が検出する。図2では、センサターゲット部8におけるa点でエアギャップが最も小さく、c点でエアギャップが最も大きくなる。
【0013】
なお、図示は省略するが、回転センサ2におけるセンサ部9には電源用や検出信号出力用のコードが接続される。また、回転センサ2をコンパクトに構成する観点から、センサ部9のシート状基体10には、電源回路、信号増幅回路、信号処理回路などを設けることが望ましいが、これらの回路をセンサ部9の外側に設けてコードでセンサ部9と接続しても良い。
【0014】
図3は、回転センサ2が出力する検出信号の波形図を示す。図2のように、内輪3が図のCW方向(時計方向)に回転すると、その1回転当たりにセンサ部9の2つのセンサコイル11,12がそれぞれ正弦波状の検出信号S1 ,S2 を1波形分出力する。2つのセンサコイル11,12は周方向に機械角で90°離れて配置されているので、これらの検出信号S1 ,S2 は図3のように90°の位相差を持つ。これにより、図2に示すCW方向回転の場合、検出信号S1 は検出信号S2 に対して90°位相が進み、CCW方向(反時計方向)回転の場合、検出信号S1 は検出信号S2 に対して90°位相が遅れる。すなわち、例えばCW方向回転の場合を示す図3において、センサコイル11がセンサターゲット部8のa点を検出するときセンサコイル12がd点を、またセンサコイル11がb点を検出するときセンサコイル12がa点を、センサコイル11がc点を検出するときセンサコイル12がb点を、センサコイル11がd点を検出するときセンサコイル12がc点をそれぞれ検出する。このように、内輪3が1回転する間に、2つのセンサコイル11,12の検出信号S1 ,S2 の間では限定された電圧値の関係が成り立つので、これらの電圧値の関係をチェックすることにより、内輪3の回転方向が検出可能である。そこで、前記両検出信号S1 ,S2 の電圧値と、各回転方向における絶対角度の関係を予め定義しておくことにより、内輪3の回転の絶対角度を知ることができる。
【0015】
図4は、前記回転センサ2の検出信号の処理回路の一例を示す。この処理回路は、温度変化に起因して検出信号に生じるオフセットをキャンセルするオフセットキャンセル部16と、オフセットをキャンセルした後の信号を矩形波処理する矩形波処理部17とを備える。オフセットキャンセル部16は、OPアンプ18および抵抗R1〜R4で構成される差動増幅器からなる。矩形波処理部17はOPアンプからなる。この処理回路を用いる場合、図2におけるセンサ部9では、各センサコイル11,12に対してそれぞれ組をなす別のセンサコイル11’12’が、対応するセンサコイルに対して機械角で180°離れて配置される。
【0016】
図5は、センサコイル11,11’の組合せの検出信号S1 ,S1'を図4の処理回路で処理したときの波形図を示す。オフセットキャンセル部16におけるOPアンプ18の+入力端子、−入力端子には図5(A),(B)に示すセンサコイル11,11’の各出力信号S1a,S1bが入力される。なお、図5(A),(B)において破線で示す波形はオフセットがない場合の信号波形を示す。オフセットキャンセル部16はこれら出力信号S1a,S1bの差分(S1a−S1b)を増幅して出力することで、検出信号に含まれるオフセットをキャンセルする。図5(C)は、オフセットがキャンセルされたオフセットキャンセル部16からの出力信号S1 の波形図を示す。この出力信号S1 がセンサコイル11の処理済み検出信号として矩形波処理部17に入力され、図5(D)のような矩形波に処理される。
ここでは、説明を省略するが、センサコイル12,12’の組合せの検出信号についても、同様の処理回路で同様の処理を行うことで、オフセットのキャンセルと矩形波処理が行われる。
【0017】
このように、この構成の回転センサ付き軸受20によると、渦電流式センサを使用した回転センサ2を転がり軸受1に組み込んでいるので、構成のコンパクト化が可能であり、かつ回転検出の高分解能化も可能となる。
【0018】
図6〜図8は、この発明の他の実施形態を示す。図6のVII −VII 矢視断面図を示す図7のように、この実施形態の回転センサ付き軸受20は、図1〜図5に示した先の実施形態において、偏心環体のセンサターゲット部8に替えて、螺旋状のセンサターゲット部8Aを用いたものである。すなわち、このセンサターゲット部8Aは、内径面が内輪3と同心の真円で外径面の外径寸法が1周にわたり連続的に増大変化する環体とされている。ここでは、センサターゲット部8Aは、その外径面の外径寸法がCCW方向(反時計方向)に増大するように形成されている。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0019】
図8は、この実施形態の回転センサ付き軸受20において、回転センサ2の出力する検出信号の波形図を示す。この実施形態の場合、図7のように内輪3がCW方向(時計方向)に回転すると、その1回転当たりにセンサ部9の2つのセンサコイル11,12がそれぞれ鋸歯状の検出信号S1 ,S2 を1波形分出力する。2つのセンサコイル11,12は周方向に機械角で90°離れて配置されているので、これらの検出信号は90°の位相差を持つ。すなわち、図8において、センサコイル11がセンサターゲット部8Aのa点(e点と同じ)を検出するときセンサコイル12がd点を、またセンサコイル11がb点を検出するときセンサコイル12がa点を、センサコイル11がc点を検出するときセンサコイル12がb点を、センサコイル11がd点を検出するときセンサコイル12がc点をそれぞれ検出する。この場合にも、内輪3が1回転する間に、2つのセンサコイル11,12の検出信号S1 ,S2 の間では限定された電圧値の関係が成り立つので、これらの電圧値の関係をチェックすることにより、内輪3の回転方向が検出される。そこで、前記両検出信号S1 ,S2 の電圧値と、各回転方向における絶対角度の関係を予め定義しておくことにより、内輪3の回転の絶対角度を知ることができる。
【0020】
この実施形態の場合、検出信号が増大変化するか減少変化するかを判定することによって、内輪3の回転方向を検出できるので、センサ部9の構成は、この実施形態のように2相出力方式とせず、1つのセンサコイルだけを用いた単相出力方式としても内輪3の回転の絶対角度を検出できる。
【0021】
なお、上記した各実施形態の回転センサ付き軸受20では、内輪3が回転側軌道輪で、外輪4が固定側軌道輪である転がり軸受1に回転センサ2を取付けた場合について説明したが、内輪3が固定側軌道輪で、外輪4が回転側軌道輪である転がり軸受に回転センサ2を取付けた回転センサ付き軸受であっても、上記と同様に適用可能である。
【0022】
図9は上記した各実施形態の回転センサ付き軸受20が組み込まれる事務機の一例の概略構成を示す断面図である。この事務機は、4連タンデム式の印字装置33を有するフルカラー複写機であって、4つの感光体ドラム21と、原稿置き台22上の原稿画像を処理する画像処理部23と、この画像処理部23で処理された画像を前記感光体ドラム21に露光させる露光処理部24と、これら感光体ドラム21が並ぶ転写領域に用紙カセット25A,25Bの用紙を搬送する用紙搬送部26と、転写領域で転写された用紙を定着し機外に排出する定着部27などを備える。上記4つの感光体ドラム21、露光処理部24、および定着部27により上記印字装置33が構成される。
【0023】
図10は、前記感光体ドラム21の回転軸28が回転自在に支持されるフレーム29の一部を示す断面図である。感光体ドラム21の回転軸28は、回転センサ付き軸受20を介してフレーム29に回転自在に支持される。この回転センサ付き軸受20の回転センサ2によって、前記回転軸28の回転角度が検出される。検出した回転角度情報は、例えば各感光体ドラム21の回転変動の周期の位相を合わせる処理に用いられ、これにより画像重ね合わせずれの抑制が図られる。
【0024】
このように、このカラー複写機は、上記実施形態の回転センサ付き軸受20で感光体ドラム21の回転軸28を回転自在に支持することで、回転軸28の回転角度を検出するようにしているので、軸受と別体の回転センサを組み込む構成に比べて回転センサ2の設置スペースを縮小でき、カラー複写機をコンパクトに構成できる。また、別体の回転センサを組み込む場合に比べて、組込み時の回転センサ2の調整が不要となり、組立コストを低減できる。
【0025】
なお、図10では、感光体ドラム21の回転軸28を回転自在に支持する軸受として、上記した実施形態の回転センサ付き軸受20を用いた例を示したが、これに限らず図11のように、感光体ドラム21を回転駆動するモータ30の出力軸31をモータハウジング32に回転自在に支持する軸受として、上記実施形態の回転センサ付き軸受20を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる回転センサ付き軸受の断面図である。
【図2】図1におけるII−II矢視断面図である。
【図3】同回転センサ付き軸受における回転センサの出力波形図である。
【図4】同回転センサの出力信号の処理回路の一例を示すブロック図である。
【図5】同処理回路による処理信号の波形図である。
【図6】この発明の他の実施形態にかかる回転センサ付き軸受の断面図である。
【図7】図6におけるVII −VII 矢視断面図である。
【図8】同回転センサ付き軸受における回転センサの出力波形図である。
【図9】回転センサ付き軸受が組み込まれるカラー複写機の一例の概略構成を示す断面図である。
【図10】同カラー複写機における感光体ドラムの回転軸の支持部の一例を示す断面図である。
【図11】同カラー複写機における感光体ドラム用モータの出力軸支持部の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…転がり軸受
2…回転センサ
8,8A…センサターゲット部
9…センサ部
10…シート状基体
11,12…センサコイル
20…回転センサ付き軸受
21…感光体ドラム
28…感光体ドラムの回転軸
30…モータ
31…モータ出力軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦電流式センサを使用した回転センサを備える回転センサ付き軸受を、事務機に組み込んだことを特徴とする回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項2】
請求項1において、前記事務機が印字装置を有するものであり、この印字装置に前記回転センサ付き軸受を組み込んだ回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項3】
請求項2において、前記事務機がカラー複写機を含む印字装置である回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項4】
請求項3において、回転センサ付き軸受を、感光体ドラムのモータに取付けた回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項5】
請求項3において、回転センサ付き軸受を、感光体ドラムの支持軸受とした回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項6】
渦電流式センサを使用した回転センサを軸受に組み込んだことを特徴とする回転センサ付き軸受。
【請求項1】
渦電流式センサを使用した回転センサを備える回転センサ付き軸受を、事務機に組み込んだことを特徴とする回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項2】
請求項1において、前記事務機が印字装置を有するものであり、この印字装置に前記回転センサ付き軸受を組み込んだ回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項3】
請求項2において、前記事務機がカラー複写機を含む印字装置である回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項4】
請求項3において、回転センサ付き軸受を、感光体ドラムのモータに取付けた回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項5】
請求項3において、回転センサ付き軸受を、感光体ドラムの支持軸受とした回転センサ付き軸受使用事務機。
【請求項6】
渦電流式センサを使用した回転センサを軸受に組み込んだことを特徴とする回転センサ付き軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−349896(P2006−349896A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174701(P2005−174701)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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