説明

基板の連続成膜搬送装置

【課題】マスクの取り付け及び成膜と、成膜された基板の搬送工程を連続させる連続成膜搬送装置を提供する。
【解決手段】連続成膜搬送装置1は、成膜用の複数のマスク穴21が所定の間隔をおいて形成され、基板10が載置される一方の面を有する搬送用ベルト20と、一方の面と反対側の面側に設置される成膜機構30と、搬送用ベルト20を移動させるモータ40とを含む。各マスク穴21は、搬送用ベルト20における各マスク穴21の外周辺縁が基板10と重なるように基板10と比べて小さい面積を有する。成膜機構30は、マスク穴21のいずれかが所定の位置に位置したときに、マスク穴21のいずれかの上に配置される基板10を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を連続して成膜し、搬送させるための連続成膜搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶、有機EL、太陽電池などのフラットパネルの成膜においては、成膜する材料をガラス板のような基板に蒸着のような成膜手段で成膜するため、マスクを基板に取り付ける必要がある。
【0003】
そのようなマスクを基板に取り付ける工程を含む成膜装置としては、一般に、以下に示す方法で行われる。先ず、成膜装置は、基板の表面にマスクを取り付けるために、基板をマスクチェンジャに移す移し工程を行い、移された基板に所定のマスクを取り付けるマスク取付工程を行う。その後、成膜装置はマスクに取り付けられた基板をマスクストッカーに格納する第1格納工程を行う。成膜装置は、移し工程、マスク取付工程及び第1格納工程を、マスクストッカーが基板でいっぱいになるまで繰り返して行う。
【0004】
次に、成膜装置は、マスクが取り付けられた基板を成膜機構の成膜室に搬送する成膜室搬送工程を行い、搬送された基板を成膜機構によって成膜させる成膜工程を行う。その後、成膜装置は、成膜された基板を別のマスクストッカーに格納する第2格納工程を行う。成膜装置は、成膜室搬送工程、成膜工程及び第2格納工程を、マスクストッカーにある基板が無くなるまで繰り返して行う。
【0005】
このマスクチェンジャと成膜室との間の搬送、及び、成膜室と別のマスクストッカーとの間の搬送を繰り返す繰返搬送工程は、ロボットのような搬送機構が行う。このように、フラットパネルの成膜は、マスクストッカー単位で行われる。
【0006】
マスク取付工程や繰返搬送工程は、基板をローラー上で転送させる方法や、多数台の搬送ロボットを使用する方法が知られている。しかし、いずれの方法も、マスク取付工程、成膜工程、及び、繰返搬送工程を一体化するものではないので、結果的に、複数の基板についての成膜は連続的に行うことができていない。つまり、マスク取付工程と成膜工程と繰返搬送工程とに連続性がないので作業時間を短縮することができず、生産効率を向上させるためには搬送技術の高度化が要求されている。
【0007】
特許文献1においては、太陽電池製造工程を簡素化するため、基板の端を折り込むことによって基板自体をマスクとしているが、成膜工程と繰返搬送工程との間の搬送については開示されていないし、成膜工程に必要なマスク自体を搬送に活用する装置は検討されていない。
【特許文献1】特開2006−73849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、成膜用のマスクを鋼板などのベルト状にして、ローラーを介して搬送装置とすることで、マスクの取り付け及び成膜と、成膜された基板の搬送工程を連続させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、以下のような方法を見出した。
【0010】
(1) 基板を連続的に成膜して搬送する連続成膜搬送装置であって、成膜用の複数のマスク穴が所定の間隔をおいて形成され、前記基板が載置される一方の面を有する搬送用ベルトと、前記一方の面と反対側の面側に設置される成膜機構と、前記搬送用ベルトを移動させるモータと、を含み、各マスク穴は、前記搬送用ベルトにおける各マスク穴の外周辺縁が前記基板と重なるように前記基板と比べて小さい面積を有し、前記成膜機構は、前記マスク穴のいずれかが所定の位置に位置したときに、前記マスク穴のいずれかの上に配置される基板を成膜する連続成膜搬送装置。
【0011】
(1)の発明によれば、搬送用ベルトに成膜用の複数のマスク穴が所定の間隔をおいて形成される。基板は、各マスク穴の上に載置され、モータによって搬送用ベルトが移動すると載置された基板が搬送される。各マスク穴は、基板よりも面積が小さく、この穴の外周の辺縁が基板と重なるように、すなわち各マスク穴が基板の内側に収まるように形成されている。搬送用ベルトは、成膜機構と基板との間に配置される。成膜機構は、搬送ベルト上の基板が載置される面の反対側に設置され、複数の穴のうちの所定の穴に向けて、蒸着などの成膜を行う。これにより、穴の上の基板の、成膜機構に対向する面が成膜される。
【0012】
基板は、モータによって移動する搬送用ベルトに形成された複数のマスク穴の上であれば、次々に載置してよい。成膜が済んだ基板は搬送方向へ搬送され、次に、この成膜が済んだ基板と一定の間隔をおいて、搬送用ベルト上に置かれた成膜がされていない基板が搬送される。成膜機構は、搬送された成膜がされていない基板に成膜を行い、この成膜工程と搬送工程とが繰り返されることによって、成膜と搬送が連続的に行える装置が提供できる。
【0013】
(2) 前記搬送用ベルトは、それぞれが前記基板を位置決めする複数の位置決め手段を有し、各位置決め手段は、前記搬送用ベルトの前記一方の面の上において、各マスク穴の辺縁であって前記搬送用ベルトの搬送方向と反対側の辺縁の近傍に配置される(1)記載の連続成膜搬送装置。
【0014】
(3) 各位置決め手段は、ピンを有する(2)記載の連続成膜搬送装置。
【0015】
(2)及び(3)の発明によれば、前記搬送用ベルトには、上述した基板を位置決めする複数の位置決め手段が形成される。各位置決め手段は、前記搬送用ベルトの基板が載置される面に形成される。また、各マスク穴の辺縁のうち、前記搬送用ベルトの搬送方向と反対側の辺縁から所定の距離だけ離れた位置に、位置決め手段が設けられる。位置決め手段は、例えばピンであってよい。この位置決め手段に前記基板が係止することにより、基板がマスク穴の上で留まる。基板は、この穴を介して、基板の成膜機構と対向する面に適切に成膜が行われる位置に位置決めされる。
【0016】
(4) さらに、前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間に設けられる開閉ゲートと、前記開閉ゲートを移動させる開閉ゲート作動装置とを含み、前記開閉ゲート作動装置は、前記マスク穴のいずれかが前記所定の位置に位置したときに、前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間から、前記成膜機構が前記基板へ成膜可能な開位置へ移動する(1)から(3)いずれか記載の連続成膜搬送装置。
【0017】
(4)の発明によれば、前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間には、開閉ゲートが設けられ、この開閉ゲートは開閉ゲート作動装置と連結されている。前記開閉ゲート作動装置は、前記マスク穴のいずれかが前記所定の位置に位置したときに、前記開閉ゲートを前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間から、前記成膜機構が前記基板へ成膜可能な開位置へ移動させる。開閉ゲートが前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間にある閉位置では、成膜機構からの成膜物の放射(例えば蒸着)が遮断される。開閉ゲートが前記開閉ゲートを前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間から、前記成膜機構が前記基板へ成膜可能な開位置へ移動すると、成膜が行われる。これにより、基板に対する成膜が、開閉ゲートによって制御される。
【0018】
(5) さらに、前記モータと前記開閉ゲート作動装置とに電気的に繋がる中央処理装置と、前記マスク穴のいずれかが所定の位置に配置されたことを感知して前記中央処理装置に感知信号を出力するマスク穴感知センサと、を有し、前記中央処理装置は前記感知信号に応じて前記開閉ゲート作動装置に前記ゲートを前記開位置へ移動させるよう開信号を出力する(4)記載の連続成膜搬送装置。
【0019】
(5)の発明によれば、中央処理装置は、前記モータと前記開閉ゲート作動装置とに電気的に繋がっている。また、マスク穴感知センサは、前記マスク穴のいずれかが所定の位置に配置されたことを感知して前記中央処理装置に感知信号を出力する。前記中央処理装置は、この感知信号に応じて前記開閉ゲート作動装置に前記開閉ゲートを前記開位置へ移動させるよう開信号を出力する。前記開閉ゲートが開くことにより、成膜機構からの成膜が行われる。
【0020】
(6) 前記搬送用ベルトは、エンドレスベルトである(1)から(5)いずれか記載の連続成膜搬送装置。
【0021】
(6)の発明によれば、前記搬送用ベルトは、エンドレスベルトの形状をしている。このため、前記搬送用ベルトは基板の搬送を途切れることなく行うことができる。また、搬送用ベルトの基板を載置する面と反対側の面に成膜機構を配置することによって、成膜工程と搬送工程とを連続的に一体化することができる。
【0022】
(7) さらに、前記搬送用ベルトの洗浄を行う洗浄機構を含み、前記洗浄機構は前記搬送用ベルトの一部を覆うように配置される洗浄部を有する(1)から(6)いずれか記載の連続成膜搬送装置。
【0023】
(8) 前記洗浄機構は、前記洗浄部を真空にする真空装置と、前記洗浄部を照射するUVランプと、前記洗浄部にオゾンガスを供給するオゾンガス供給装置と、を備える(7)記載の連続成膜搬送装置。
【0024】
(7)及び(8)の発明によれば、搬送用ベルトの洗浄を行う洗浄機構を含み、この洗浄機構は前記搬送用ベルトの一部を覆うように配置される洗浄部を有する。前記洗浄機構は、前記洗浄部を真空にする真空装置と、前記洗浄部を照射するUVランプと、前記洗浄部にオゾンガスを供給するオゾンガス供給装置と、を備えてよい。洗浄機構によって、成膜工程において搬送ベルトに付着した付着物が洗浄され、搬送ベルトを移動させることで再度マスクとして使用することができる。
【0025】
成膜機構と洗浄機構とを隣接して配置することで、成膜工程と洗浄を行う洗浄工程とを連続させることができる。また、搬送用ベルトがエンドレスベルトである場合には、搬送用ベルトが成膜機構と洗浄機構とを通過し、環状に移動することで、搬送工程と成膜工程と洗浄工程とを途切れることなく続けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、液晶、有機EL、太陽電池などに用いる基板の成膜と、成膜された基板の搬送とを連続的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態の説明において、共通するものについては同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。また、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0028】
図1は本発明における連続成膜搬送装置1の縦断面図である。図2は搬送用ベルト20と、これに載置された基板10を示す。図3(a)は開閉ゲート50及び開閉ゲート作動装置51が開位置に移動した連続成膜搬送装置1の部分縦断面図である。図3(b)は、図3(a)における開閉ゲート作動装置51の部分拡大図であり、開閉ゲート作動装置51を上面から見た図である。図4は、本実施形態に係る連続成膜搬送装置における、中央処理装置100とマスク穴感知センサ60と開閉ゲート作動装置51との電気的繋がりを示すブロック図である。図5は、複数の成膜機構と複数の洗浄機構とが設けられた連続成膜搬送装置を示す図である。
【0029】
<第1実施形態>
[連続成膜搬送装置の全体構成]
図1に示すように、連続成膜搬送装置1は、搬送用ベルト20と成膜機構30とモータ40とを含む。搬送用ベルト20には、複数のマスク穴21が所定の間隔をおいて形成される。搬送用ベルト20の一方の面には基板10が載置され、他方の面側には成膜機構30が設置される。各マスク穴21は、基板10と比べて面積が小さくなるように形成されており、基板10をマスク穴21の上に配置した際に、マスク穴21の外周の辺縁は基板10の辺縁と重なる。モータ40は搬送用ベルト20に動力を与え、搬送方向へ移動させる。
【0030】
本実施形態において、連続成膜搬送装置1は、内部が中空である中空部分203が形成されている筐体200を有し、成膜機構30やモータ40は、筐体200に組み付けられている。この筐体200の略中央部に成膜機構30が配置される。搬送用ベルト20は、後述するローラー22などの伸張手段によって、成膜機構30の周囲を環状に囲むように、筐体200内に配置されている。
【0031】
筐体200は、マスクストッカー(図示せず)から中空部分203に基板を投入する投入口201と、成膜が済んだ基板10を中空部分203から搬出する搬出口202とを備える。投入口201と搬出口202とは、いずれも、中空部分203の内部の気圧を維持することができる開閉扉(図示せず)を有することが好ましい。
【0032】
連続成膜搬送装置1は、成膜する基板10や、使用する成膜機構は従来公知のものを用いてよい。例えば、有機ELや太陽電池のための半導体薄膜を真空成膜法にて形成する場合には、連続成膜搬送装置1の一部(例えば、成膜機構30を取り巻く中空部分203)を真空状態に形成してよい。本実施形態においては、連続成膜搬送装置1の中空部分203は、10−5Pa程度に減圧されている。
【0033】
中空部分203には、基板10の投入口201と、成膜の済んだ基板10を搬出する搬出口202とが設けられている。投入口201と搬出口202とは、いずれも、公知の気密性を有する開閉扉を有するので、中空部分203内の気圧が大気圧と異なっていても、中空部分203内の気圧を維持することができる。したがって、連続成膜搬送装置1は、中空部分203内を真空状態に保つことができる。
【0034】
[基板]
本発明で用いられる基板10は、成膜の対象となる基板であれば特に限定されない。液晶、有機EL、太陽電池などに用いられ半導体薄膜を成膜するための基板は、ガラス板、PET、PEN、セルロースなどの樹脂フィルム、SUSなどの金属薄板が好ましく用いられる。
【0035】
[搬送用ベルト]
図2において、矢印Dは搬送方向を示す。図2中の最も右寄りのマスク穴21には、基板10は載置されていない。マスク穴21は基板10よりも面積が小さくなるような辺縁21aを有する。基板10は、マスク穴21を略覆うように、搬送用ベルト20に載置される。
【0036】
マスク穴21とこれに隣接するマスク穴21との間隔は、成膜する基板10の大きさ、基板10の重量、搬送用ベルト20が移動する速度などに応じて決定され、とくに限定されない。例えば、基板10が1.0mから1.5m×1.0mから3mの大きさで、その重量が3kgから40kg程度のガラス板の場合、3cmから5cm程度の間隔を設けることが好ましい。3cm以下であると基板10とこれに隣接する基板10との間が詰まりすぎて、成膜された基板10と成膜される前の基板10との境界が、後述するセンサに感知されづらくなり、5cm以上であると、基板10とこれに隣接する基板10との間の間隔が開きすぎて時間当たりに成膜される基板10の量が減少する。
【0037】
マスク穴21の大きさ及び形状は、成膜する基板10の形状及び大きさによって決定される。基板10の形状は、方形、円状やその他いかなる所望の形状であってよいが、本実施形態では基板10の外周辺縁から1cm内側とする方形状である。
【0038】
搬送用ベルト20の素材は、基板10にマスクをかけることが可能であれば、特に限定されない。搬送用ベルト20は、基板10の連続的な搬送を行い、繰り返して使用することから、強度、剛性の高い素材を用いることが好ましく、PET、PEN、セルロースなどの樹脂フィルム、SUSなどの金属薄板を用いることがより好ましい。また、搬送用ベルト20は磁性を有するものであってもよい。搬送用ベルト20は、成膜する物質の性質によって適宜変更が可能であるが、SUS410、SUS430などの鋼板を用いることが好ましい。
【0039】
本実施形態は、搬送用ベルト20としてエンドレスベルトを採用している。しかし、搬送用ベルト20として一端と他端を有するベルトを用い、予め、ベルトの一端からコイル状に巻いておき、搬送工程においては、予めコイル状に巻かれているベルトを巻き解きながら他端をコイル状に巻くことにより、搬送工程を行ってもよい。
【0040】
搬送用ベルト20の張力は、連続成膜搬送装置1に設けられた複数のローラー22によって調整される。また、複数のローラー22のうち少なくとも4つのローラーは、それぞれ、搬送用ベルト20が連続成膜搬送装置1内を途切れずに移動できるよう4つの隅に配置される。複数のローラー22のうち残りのローラーは、さらに、圧縮コイルばねのような伸縮機構を有する張力付与機構を備える。この残りのローラーは、中空部分203内に適宜配置されている。残りのローラーが付与する張力は、基板10の搬送及び成膜中に搬送用ベルト20が弛まないように、張力付与機構により調整される。
【0041】
ローラー22による搬送用ベルト20に作用する張力は、基板10の重量や、互いに隣接する2つの基板10の間隔や、中空部分203内において搬送用ベルト20によって移動している基板10の位置によって変化する。従って搬送用ベルト20の張力を一定にすることが好ましい。
【0042】
[位置決め手段]
図2に示すように、搬送用ベルト20は、複数の位置決め手段23を備えてもよい。複数の位置決め手段23は、それぞれ複数のマスク穴21が有する辺縁のうち、搬送方向と反対側の辺縁21aの近傍、すなわち辺縁21aから所定の距離wだけ離れた位置に配置されている。上述したように、位置決め手段23は、基板10とマスク穴21とは、基板10がマスク穴21を覆い、マスク穴21の外周辺縁21bが基板10と重なるように、搬送用ベルト20に形成されている。このため、少なくともマスク穴の辺縁21aから、基板10と重なる重なり代の役割を果たす外周辺縁21bの幅wの分、離れた位置に配置されることが必要である。例えば、本実施形態では、辺縁21aから搬送方向と反対側に5mmから3cm離れた位置に配置する。
【0043】
搬送用ベルト20は搬送方向Dに移動しているため、搬送用ベルト20上に載置される基板10には、搬送用ベルト20に対して搬送方向Dと反対側の方向に慣性力が働いている。このため位置決め手段23はマスク穴21の搬送方向Dと反対側にのみ設ければ足りる。
【0044】
位置決め手段23は、基板10が搬送方向Dと反対側の方向にずれようとする慣性力に対向することができる強度を保持することができれば、形状、素材、設ける数は問わない。本実施形態においては、基板10を留める面を有する金属製のピンを用いている。ピンと搬送用ベルト20とは公知の方法で接合されてよい。また、搬送用ベルト20が鋼板で製作される場合、搬送用ベルト20に切り込みを入れて、この切込みを盛り上げることで位置決め手段23を形成してもよい。
【0045】
したがって、位置決め手段23により、連続的に載置される基板10は、搬送用ベルト20上の成膜するために適切な位置に配置される。
【0046】
[モータ]
モータ40は、搬送用ベルト20に動力を与えるものであれば、いずれのタイプのモータであってもよい。図1に示すモータ40は説明のため簡略化してあるが、モータ40の出力軸(図示せず)がチェーンのような伝達手段(図示せず)によって搬送用ベルト20に連結されている。モータ40は、搬送用ベルト20を図1における時計周りに移動するように、駆動する。
【0047】
[成膜機構]
成膜機構30は、ガラス板などの基板10を成膜するものであれば、公知の成膜機構を配置してもよい。成膜機構30は、蒸着、スパッタ及びCVDソース源などを備えていることが好ましく用いられる。本実施形態においては、フラットパネルに用いるガラス基板を成膜する蒸着装置であり、蒸着ルツボ、蒸着源を備える。
【0048】
成膜機構30は、中空部分203内にある基板10を成膜することができるように、後述する開閉ゲートカバー54を介して中空部材203に取り外し可能にかつ気密性を有するように組み付けられている。
【0049】
本発明にかかる連続成膜搬送装置1の搬送用ベルト20は成膜用のマスクとしても機能する。これにより、連続成膜搬送装置1は、成膜を行う基板10を連続的に搬送し、成膜を行い、さらに成膜の済んだ基板10を連続的に搬送する生産の連続的な工程が実現される。このため、成膜する作業時間の短縮が可能となり、基板に成膜する生産効率が高まり、成膜された基板の製造コストが低減される。
【0050】
[開閉ゲート及び開閉ゲート作動装置]
図1並びに図3(a)及び(b)に示すように、連続成膜搬送装置1は、開閉ゲート50と開閉ゲート作動装置51とを備える。本実施形態においては、開閉ゲート50と開閉ゲート作動装置51とは、開閉ゲートカバー54に組み付けられている。開閉ゲートカバー54は、中空部分203に形成された開口204を覆うように、中空部分203に気密的に組み付けられている。これにより、開閉ゲートカバー54は、中空部分203の外周の一部と共同して開閉ゲート50が摺動するための摺動空間55を形成している。
【0051】
図1に示すように、開閉ゲート50は、通常、搬送用ベルト20のうち、基板10が載置されている部分と成膜機構30との間に挟まれる位置である閉位置に配置される。開閉ゲート50は、これを移動させる開閉ゲート作動装置51と連結されている。
【0052】
開閉ゲート作動装置51は、動力源52と、開閉ゲート50に連結する連結部材53とを備える。本実施形態においては、連結部材53はヒンジで連結される金属製の2つの棒状部材である。図3(b)に示すように、連結部材は搬送用ベルトに基板が載置される面と平行な方向に伸縮する。開閉ゲート作動装置51は、開閉ゲート50を開位置に移動させるときは、2つの棒状部が、図3(b)に示すように、ヒンジで折りたたまれるように動力源52を作動させる。これにより、開閉ゲート50は、搬送用ベルト20と成膜機構30との間(図1参照)から、成膜機構30が基板10を成膜可能な位置(図3(a)参照)へ引き寄せられる。
【0053】
図1に示すように、開閉ゲート50が閉位置にあるときは、成膜機構30から放射される成膜物が開閉ゲート50によって遮断され、基板10を成膜しない。ここで、「成膜可能な位置」とは、開閉ゲート50が閉位置以外の位置に移動することであり、成膜機構30から放射される成膜物を遮断しない位置であればいずれの位置であってもよい。図3においては、開閉ゲート50は、成膜機構30より搬送方向に向かう右側の空間へ、開閉ゲート作動装置51の作動に従って移動する。
【0054】
開閉ゲート50は、成膜機構30から放射される成膜物を遮断したり、遮断を解除したりすることができる。開閉ゲート作動装置51は、基板10に対する成膜の開始や中断を制御することができる。
【0055】
また、開閉ゲート50は、中空部分203の開口204を気密的に封鎖することができる封鎖機構を有する。これにより、中空部分203内の気圧が減圧されているときであっても、開閉ゲート50が開口204を気密的に封鎖した状態にすることにより、成膜機構30を取り替えることが容易にできる。
【0056】
[マスク穴感知センサ]
図1及び図4示すように、連続成膜搬送装置1は、中央処理装置100とマスク穴感知センサ60とを備える。マスク穴感知センサ60は、搬送用ベルト20の近傍に設置される。マスク穴感知センサ60が設置される位置は、マスク穴21の位置を感知することができれば、特に限定されない。マスク穴感知センサ60が配置される位置は、感知するマスク穴21の位置の誤差が減少するため、搬送用ベルト20及び成膜機構30の近傍に配置されることが好ましい。
【0057】
マスク穴感知センサ60は、搬送用ベルト20に伴って移動するマスク穴21の位置を感知する。特に、複数のマスク穴21のうち所定のマスク穴の位置が、成膜機構30の位置に対して、成膜するのに適した位置に配置されたことを感知する。例えば、図1において、マスク穴感知センサ60は、所定のマスク穴21が成膜機構30の上面に配置されたとき、後述する中央処理装置に、感知したこと示す感知信号を出力する。
【0058】
マスク穴感知センサ60は、マスク穴21の位置を感知することができるセンサであれば、公知のいかなる種類のセンサであってもよい。光センサ、磁気センサ、超音波距離計などが適宜挙げられる。本実施形態においてはCCDカメラを用いた。
【0059】
[中央処理装置]
中央処理装置100は、モータ40と電気的に繋がっている。中央処理装置100はモータ40に信号を出力し、モータ40は中央処理装置100から信号を受信して駆動する。モータ40の出力軸の回転速度によってベルトの移動する速度が決定される。
【0060】
中央処理装置100は、マスク穴感知センサ60からの感知信号を受信可能に電気的に繋がっている。したがって、中央処理装置100は、マスク穴感知センサ60から、マスク穴21が所定の位置に配置されたことを感知した感知信号を受信することができる。
【0061】
中央処理装置100は、連続成膜搬送装置1が開閉ゲート作動装置51を備えている場合には、さらに、開閉ゲート作動装置51への開信号及び閉信号を出力可能に電気的に繋がっている。中央処理装置100は、感知信号を受信すると、開閉ゲート作動装置51に開信号を出力し、開閉ゲート作動装置51は、中央処理装置100からの開信号を受信すると、開閉ゲート50を開位置に移動させるよう作動する。
【0062】
中央処理装置100は、マスク穴感知センサ60からの感知信号を受信し、その内部でマスク穴21の位置の算出及び開閉ゲート作動装置51の作動を制御することのできる装置であれは、従来公知の装置であってよい。中央処理装置100は、予め所定の基板10を所定の速度で成膜し、搬送するためのプログラムが組み込まれた電子計算機であってよい。
【0063】
中央処理装置100は、搬送用ベルト20の移動速度を制御するモータ40へ速度信号を出力することができるよう、モータ40と電気的に接続されている。中央処理装置100は、モータ40と、マスク穴感知センサ60と、開閉ゲート作動装置51と電気的に繋がり、受信した感知信号を処理し、速度信号及び開信号又は閉信号を出力して、連続成膜搬送装置1の動作を総合的に制御する。
【0064】
中央処理装置100と、これに繋がるモータ40とマスク穴感知センサ60と開閉ゲート作動装置51とによって、連続成膜搬送装置1は基板10の搬送速度に適合されたタイミングで成膜を行うことができ、作業効率が高まる。
【0065】
[洗浄機構]
図1に示すように、連続成膜搬送装置1は、搬送用ベルト20を洗浄する洗浄機構70を備える。洗浄機構70は、これのカバー(図示せず)が搬送用ベルト20の一部を覆うように、配置されている。洗浄機構70のカバーが搬送用ベルト20の一部を覆っている部分が、洗浄機構70が洗浄することができる洗浄部71である。したがって、洗浄部71は、搬送用ベルト20及び基板10を通過させることができる開口(図示せず)が形成されているものの、略閉じた洗浄部71を形成している。洗浄機構70によって洗浄部71は、移動する搬送用ベルト20において、成膜機構30により成膜が行われた位置よりも、搬送用ベルト20の搬送方向Dの先に配置される。
【0066】
洗浄機構70は、搬送用ベルト20の一部を洗浄するものであれば、従来公知のいかなる洗浄手段を備えてよい。特に、洗浄機構70は、ドライ洗浄を行う手段であることが好ましい。洗浄機構70がドライ洗浄であれば、成膜機構30によって形成され、マスク穴21に付着した有機溶剤を洗浄することができる。ドライ洗浄には、オゾン洗浄、プラズマ洗浄、スパッタ洗浄、イオン洗浄などがあり、いずれの手段を用いてもよいが、特に、UVオゾン洗浄やプラズマアッシャーが好ましい。洗浄機構70としてUVオゾン洗浄やプラズマアッシャーを備えていれば、有機ELや太陽電池に使用する基板に付着した有機膜を効率よく洗浄することができる。
【0067】
洗浄機構70がUVオゾン洗浄を備える場合には、洗浄機構70は、UVランプ72と、真空装置73と、オゾンガス供給装置74とを備える。本実施形態では、オゾンガスを充填した洗浄部71に波長が170mmから190mmのUVランプ72を配置している。UVランプ72は、搬送用ベルト20の一部、特に、成膜機構30が設置されている搬送用ベルト20の他方の面を照射できるよう、搬送用ベルト20を挟むように配置することが好ましい。
【0068】
連続成膜搬送装置1は成膜の済んだ基板10を格納する格納庫80を備えてもよい。格納庫80は、従来公知のいかなる方法で作成されてよい。例えば、連続成膜搬送装置1の中空部分203内が真空蒸着のために減圧されている場合、格納庫80内の気圧も適宜設定されてもよい。格納庫80と連続成膜搬送装置1とが気密的に連結されることで、基板10の搬送及び保管を減圧状態において連続的に行うことができ、さらなる作業時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0069】
<第2実施形態>
図5に示すように、連続成膜搬送装置2は、連続成膜搬送装置1に、洗浄機構70と同等の洗浄機構70’を備えている。また、連続成膜搬送装置2は、さらに、開閉ゲート50及び開閉ゲート作動装置51と同等の開閉ゲート50’及び開閉ゲート作動装置51’をそれぞれ備えている。さらに、開閉ゲート作動装置51’は、動力源52’と、開閉ゲート50’に連結する連結部材53’とを備えている。
【0070】
洗浄機構70’は、洗浄機構70の洗浄部71、UVランプ72、真空装置73、及びオゾンガス供給装置74と同等の洗浄部71’、UVランプ72’、真空装置73’、及びオゾンガス供給装置74’を備えている。洗浄機構70’は、成膜後のマスク穴を含む搬送用ベルトの一部を洗浄可能な位置に位置した洗浄機構70よりも、搬送方向Dの先に配置される。
【0071】
成膜機構30と同等の成膜機構30’を連続して配置する場合は、成膜機構30、洗浄機構70、成膜機構30’、洗浄機構70’のように成膜機構と洗浄機構とを交互に配置することが好ましい。洗浄機構70’は、中央処理装置100と電気的に繋がっており、マスク穴感知センサ60や、洗浄機構70と成膜機構30’との間に配置されたマスク穴感知センサ60’からの検知信号に基づいて作動する。マスク穴感知センサ60’はマスク穴感知センサ60と同等のものが好ましいが、これに限定されない。
【0072】
これにより、基板10は、成膜機構30によって成膜され基板10’とされ、洗浄機構70の洗浄部71中を通って、成膜機構30’によって再び成膜される。そして、成膜された基板10’は、洗浄機構70’の洗浄部71’を通って搬出口202から搬出される。ここで、搬送用ベルト20は、成膜機構30によって付着した有機溶剤を洗浄機構70によって洗浄されてから、成膜機構30’に移動するので、成膜機構30’による成膜は、成膜機構30によって搬送用ベルト20に付着した有機溶剤の混入の影響は殆ど受けない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】連続成膜搬送装置の縦断面図である。
【図2】搬送用ベルトと、これに載置された基板の上面図である。
【図3】図3(a)は開閉ゲート及び開閉ゲート作動装置が開位置に移動した連続成膜搬送装置1の部分縦断面図である。図3(b)は、図3(a)における開閉ゲート作動装置の部分拡大図であり、上面図である。
【図4】他の実施形態に係る連続成膜搬送装置における、中央処理装置とマスク穴感知センサと開閉ゲート作動装置との電気的繋がりを示すブロック図である。
【図5】成膜機構と洗浄機構が複数設けられた連続成膜搬送装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1、2 連続成膜搬送装置
10、10’ 基板
20 搬送用ベルト
21 マスク穴
22 ローラー
23 ピン(位置決め手段)
30、30’ 成膜機構
40 モータ
50、50’ 開閉ゲート
51、51’ 開閉ゲート作動装置
52、52’ 動力源
53、53’ 連結部材
54 開閉ゲートカバー
55 開閉ゲートの摺動空間
60、60’ マスク穴感知センサ
70、70’ 洗浄機構
71、71’ 洗浄部
72、72’ UVランプ
73、73’ 真空装置
74、74’ オゾンガス供給装置
100 中央処理装置
200 筐体
201 投入口
202 搬出口
203 中空部分
204 中空部分の開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を連続的に成膜して搬送する連続成膜搬送装置であって、成膜用の複数のマスク穴が所定の間隔をおいて形成され、前記基板が載置される一方の面を有する搬送用ベルトと、前記一方の面と反対側の面側に設置される成膜機構と、前記搬送用ベルトを移動させるモータと、を含み、各マスク穴は、前記搬送用ベルトにおける各マスク穴の外周辺縁が前記基板と重なるように前記基板と比べて小さい面積を有し、前記成膜機構は、前記マスク穴のいずれかが所定の位置に位置したときに、前記マスク穴のいずれかの上に配置される基板を成膜する連続成膜搬送装置。
【請求項2】
前記搬送用ベルトは、それぞれが前記基板を位置決めする複数の位置決め手段を有し、各位置決め手段は、前記搬送用ベルトの前記一方の面の上において、各マスク穴の辺縁であって前記搬送用ベルトの搬送方向と反対側の辺縁の近傍に配置される請求項1記載の連続成膜搬送装置。
【請求項3】
各位置決め手段は、ピンを有する請求項2記載の連続成膜搬送装置。
【請求項4】
さらに、前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間に設けられる開閉ゲートと、前記開閉ゲートを移動させる開閉ゲート作動装置とを含み、前記開閉ゲート作動装置は、前記マスク穴のいずれかが前記所定の位置に位置したときに、前記開閉ゲートを前記搬送用ベルトと前記成膜機構との間から、前記成膜機構が前記基板を成膜可能な開位置へ移動させる請求項1から3いずれか記載の連続成膜搬送装置。
【請求項5】
さらに、前記モータと前記開閉ゲート作動装置とに電気的に繋がる中央処理装置と、前記マスク穴のいずれかが所定の位置に配置されたことを感知して前記中央処理装置に感知信号を出力するマスク穴感知センサと、を有し、前記中央処理装置は前記感知信号に応じて前記開閉ゲート作動装置に前記開閉ゲートを前記開位置へ移動させるよう開信号を出力する請求項4記載の連続成膜搬送装置。
【請求項6】
前記搬送用ベルトは、エンドレスベルトである請求項1から5いずれか記載の連続成膜搬送装置。
【請求項7】
さらに、前記搬送用ベルトの洗浄を行う洗浄機構を含み、前記洗浄機構は前記搬送用ベルトの一部を覆うように配置される洗浄部を有する請求項1から6いずれか記載の連続成膜搬送装置。
【請求項8】
前記洗浄機構は、前記洗浄部を真空にする真空装置と、前記洗浄部を照射するUVランプと、前記洗浄部にオゾンガスを供給するオゾンガス供給装置と、を備える請求項7記載の連続成膜搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−177409(P2008−177409A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10278(P2007−10278)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(508041219)株式会社フィズケミックス (2)
【Fターム(参考)】