説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】放電電極の形状変化を早期に発見し、被処理基板の膜厚不均一を抑制できる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、前記電極の形状変化を監視する監視機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板の表面をエッチングしたり、薄膜を形成したりする基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置の一例として、半導体製造装置があり、さらに半導体製造装置の一例として、縦型拡散・CVD(Chemical Vapor Deposition)装置が知られている。この縦型装置・CVD装置は、基板を処理する反応管内部の壁面近くに垂直方向に細長いバッファ室を備え、その内部には2本の誘電体管で覆った放電電極とガスノズルが備えられている。そして放電電極端部に発振器で発生する高周波電力を印加してバッファ室内の放電電極間にプラズマを生成し、ガスノズルから供給された反応性ガスをプラズマで励起してバッファ室壁に設けられたガス供給孔から反応室内の被処理膜に供給される構造となっている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特許3,947,126号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、放電電極は垂直方向に長く伸びており、バッファ室内に均一なプラズマを生成するように設置されているが、ヒータからの熱等により、放電電極の縮みが発生することがある。これにより、プラズマに不均一が生じ、被処理基板の膜厚が不均一となるが、従来は、放電電極の形状変化を確認する効果的手段が無く、被処理基板の膜厚が不均一となることで放電電極の形状変化が発覚することが多かった。
【0005】
本発明は、放電電極の形状変化を早期に発見し、被処理基板の膜厚不均一を抑制できる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴とするところは、複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、前記電極の形状変化を監視する監視機構を有する基板処理装置にある。
【0007】
好ましくは、前記監視機構は、前記電極の共振周波数の変化を監視する。
【0008】
また、本発明の第2の特徴とするところは、複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、前記電極での吸収周波数を測定する吸収周波数計と、前記吸収周波数計により前記電極の形状変化を監視する監視機構を有する基板処理装置にある。
【0009】
また、本発明の第3の特徴とするところは、複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、前記電極での吸収周波数を測定する吸収周波数計と、前記吸収周波数計により測定された第1の周波数を、予め設定したしきい値と比較する比較手段と、アラームを報知する出力手段と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1の周波数が前記しきい値を超えた場合にアラームを報知するよう前記比較手段及び前記出力手段を制御する基板処理装置にある。
【0010】
また、本発明の第4の特徴とするところは、処理室内に積層載置された複数枚の基板に所定の膜を形成する半導体装置の製造方法であって、前記処理内に基板を搬入する基板搬入工程と、前記処理室内に設けられた一対の電極に高周波電力を印加して、前記処理室内に導入された処理ガスを励起し、前記基板に所定も膜を形成する成膜工程と、前記処理室外に基板を搬出する基板搬出工程と、前記監視機構により前記電極の形状変化を監視する電極形状監視工程と、を有する半導体装置の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放電電極の形状変化を早期に発見し、被処理基板の膜厚不均一を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態において、基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC)の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。尚、以下の説明では、基板処理装置として基板に酸化、拡散処理やCVD処理などを行う縦型の装置(以下、単に処理装置という)を適用した場合について述べる。図1は、本発明に適用される処理装置の斜透視図として示されている。
【0013】
図1に示されているように、シリコン等からなるウエハ(基板)200を収納したウエハキャリアとしてのカセット100が使用されている本発明の処理装置1は、筐体101を備えている。カセット搬入搬出口(図示せず)の筐体101内側にはカセットステージ(基板収容器受渡し台)105が設置されている。カセット100はカセットステージ105上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、カセットステージ105上から搬出されるようになっている。
カセットステージ105は、工程内搬送装置によって、カセット100内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット100のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ105は、カセット100を筐体後方に右回り縦方向90°回転し、カセット100内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット100のウエハ出し入れ口が筐体後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0014】
筐体101内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収容器載置棚)109が設置されており、カセット棚109は複数段複数列にて複数個のカセット100を保管するように構成されている。カセット棚109にはカセット100が収納される移載棚123が設けられている。
また、カセットステージ105の上方には予備カセット棚110が設けられ、予備的にカセット100を保管するように構成されている。
カセットステージ105とカセット棚109との間には、カセット100を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収容器昇降機構)115とカセット移載機114とで構成されており、カセットエレベータ115とカセット移載機114との連続動作により、カセットステージ105、カセット棚109、予備カセット棚110との間で、カセット100を搬送するように構成されている。
【0015】
カセット棚109の後方には、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載機112およびウエハ移載機112を昇降させるための移載エレベータ113とで構成されている。移載エレベータ113は、耐圧筐体101の右側端部に設置されている。これら、移載エレベータ113およびウエハ移載機112の連続動作により、ウエハ移載機112のツイーザ(基板保持体)111をウエハ200の載置部として、ボート(基板保持手段)217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0016】
筐体101の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)116により開閉されるように構成されている。
処理炉202の下方にはボート217を処理炉202に昇降させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)121が設けられ、ボートエレベータ121の昇降台に連結された連結具としての昇降部材122には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
基板保持手段であるボート217は、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0017】
図1に示されているように、カセット棚109の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット118が設けられておりクリーンエアを前記筐体101の内部に流通させるように構成されている。
【0018】
次に、上述した処理炉202について図2に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態で好適に用いられる縦型の基板処理炉の概略構成図であり処理炉202部分を縦断面で示し、図3は、処理炉202部分を横断面で示す。
【0020】
本実施の形態で用いられる処理装置1は制御部であるコントローラ280を備え、コントローラ280により処理装置1および処理炉202を構成する各部の動作等が制御される。
【0021】
加熱装置(加熱手段)であるヒータ207の内側に、基板であるウエハ200を処理する反応容器として反応管203が設けられ、この反応管203の下端開口は蓋体であるシールキャップ219により気密部材であるOリング220を介して気密に閉塞され、少なくとも、反応管203、及びシールキャップ219により処理室201を形成している。シールキャップ219にはボート支持台218を介して基板保持手段であるボート217が立設され、ボート支持台218はボートを保持する保持体となっている。そして、ボート217は処理室201に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウエハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。ヒータ207は処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0022】
処理室201へは複数種類、ここでは2種類のガスを供給するガス供給手段としての2本のガス供給管232a、232bが設けられる。ここでは第1のガス供給管232aからは流量制御装置(流量制御手段)である第1のマスフローコントローラ241a及び開閉弁である第1のバルブ243aを介し、更に後述する反応管203内に形成されたバッファ室237を介して処理室201に反応ガスが供給され、第2のガス供給管232bからは流量制御装置(流量制御手段)である第2のマスフローコントローラ241b、開閉弁である第2のバルブ243b、ガス溜め247、及び開閉弁である第3のバルブ243cを介して処理室201に反応ガスが供給されている。
【0023】
処理室201はガスを排気するガス排気管231により第4のバルブ243dを介して排気装置(排気手段)である真空ポンプ246に接続され、真空排気されるようになっている。また、この第4のバルブ243dは弁を開閉して処理室201の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能になっている開閉弁である。
【0024】
処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間には、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、ガス分散空間であるバッファ室237が設けられており、そのバッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給する供給孔である第1のガス供給孔248aが設けられている。この第1のガス供給孔248aは反応管203の中心へ向けて開口している。この第1のガス供給孔248aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0025】
そしてバッファ室237の第1のガス供給孔248aが設けられた端部と反対側の端部には、ノズル233が、やはり反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積載方向に沿って配設されている。そしてノズル233には複数のガスを供給する供給孔である第2のガス供給孔248bが設けられている。この第2のガス供給孔248bの開口面積は、バッファ室237と処理室201の差圧が小さい場合には、ガスの上流側から下流側まで同一の開口面積で同一の開口ピッチとすると良いが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくすると良い。
【0026】
本実施の形態においては、第2のガス供給孔248bの開口面積を上流側から下流側にかけて徐々に大きくしている。このように構成することで、第2の各ガス供給孔248bよりガスの流速の差はあるが、流量はほぼ同量であるガスをバッファ室237に噴出させている。
そして、バッファ室237内において、各第2のガス供給孔248bより噴出したガスの粒子速度差が緩和された後、第1のガス供給孔248aより処理室201に噴出させている。よって、各第2のガス供給孔248bより噴出したガスは、各第1のガス供給孔248aより噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとすることができる。
【0027】
さらに、バッファ室237に、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が上部より下部にわたって電極を保護する保護管である電極保護管275に保護されて配設され、この第1の棒状電極269と第2の棒状電極270は反応管203の下部で高周波トランス300の二次側に接続されている。
【0028】
また、高周波トランス300の一次側には整合器272を介して高周波電源273が接続され、両端は基準電位であるアースに接続されている。したがって、高周波電源273により高周波電力が印加されることで第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224に処理ガスを励起するプラズマが生成される。
【0029】
また、高周波トランス300の一次側には吸収型周波数計281が接続され、両端は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間の吸収周波数が測定される。
図4は、比較例に係る従来の縦型の基板処理炉の概略構成図であり処理炉202部分を横断面で示す。本実施の形態の処理炉202と比較すると、この高周波トランス300の一次側に吸収型周波数計が接続されている点相違する。
【0030】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207の加熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部は窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられる。
【0031】
さらに、第1のガス供給孔248aの位置より、反応管203の内周を120°程度回った内壁に、ガス供給部249が設けられている。このガス供給部249は、ALD法による成膜においてウエハ200へ、複数種類のガスを1種類ずつ交互に供給する際に、バッファ室237とガス供給種を分担する供給部である。
【0032】
このガス供給部249もバッファ室237と同様にウエハと隣接する位置に同一ピッチでガスを供給する供給孔である第3のガス供給孔248cを有し、下部では第2のガス供給管232bが接続されている。
【0033】
第3のガス供給孔248cの開口面積はガス供給部249内と処理室201内の差圧が小さい場合には、ガスの上流側から下流側まで同一の開口面積で同一の開口ピッチとすると良いが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって開口面積を大きくするか開口ピッチを小さくすると良い。
本実施の形態においては、第3のガス供給孔248cの開口面積を上流側から下流側にかけて徐々に大きくしている。
【0034】
反応管203内の中央部には複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で載置するボート柱部221を有するボート217が設けられており、このボート217は図中省略のボートエレベータ機構により反応管203に出入りできるようになっている。また処理の均一性を向上する為にボート217を回転するための回転装置(回転手段)であるボート回転機構267が設けてあり、ボート回転機構267を回転することにより、石英キャップ218に保持されたボート217を回転するようになっている。
【0035】
制御手段であるコントローラ280は、第1、第2のマスフローコントローラ241a、241b、第1〜第4のバルブ243a、243b、243c、243d、ヒータ207、真空ポンプ246、ボート回転機構267、図中省略のボート昇降機構、高周波電源273、整合器272及び吸収型周波数計281に接続されており、第1、第2のマスフローコントローラ241a、241bの流量調整、第1〜第3のバルブ243a、243b、243cの開閉動作、第4のバルブ243dの開閉及び圧力調整動作、ヒータ207温度調節、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節、ボート昇降機構の昇降動作制御、高周波電源273及び吸収型周波数計281の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0036】
次に、本発明の処理装置1の動作について説明する。
図1に示されているように、カセット100はカセット搬入搬出口から搬入され、カセットステージ105の上にウエハ200が垂直姿勢であって、カセット100のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット100は、カセットステージ105によって、カセット100内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット100のウエハ出し入れ口が筐体後方を向けるように、筐体後方に右周り縦方向90°回転させられる。
次に、カセット100は、カセット棚109ないし予備カセット棚110の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚109ないし予備カセット棚110から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0037】
カセット100が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット100からウエハ移載機112のツイーザ111によってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機112はカセット100に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0038】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ116によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ116によって、開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ219がボートエレベータ121によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0039】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。
処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット100は筐体101の外部へ払出される。
【0040】
次にALD法による基板成膜処理について、半導体デバイスの製造工程の一つである、DCS及びNHガスを用いてSiN膜を成膜する例で説明する。
【0041】
CVD法の中の1つであるALD法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる2種類(またはそれ以上)の原料となる処理ガスを1種類ずつ交互にウエハ上に供給し、1原子層単位で吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。
【0042】
利用する化学反応は、例えばSiN(窒化珪素)膜形成の場合ALD法ではDCS(SiHCl、ジクロルシラン)とNH(アンモニア)を用いて300〜600℃の低温で高品質の成膜が可能である。また、ガス供給は、複数種類の反応性ガスを1種類ずつ交互に供給する。そして、膜厚制御は、反応性ガス供給のサイクル数で制御する。(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、処理を20サイクル行う。)
【0043】
まず成膜しようとするウエハ200をボート柱部221に載置して、ボート217に装填し、処理室201に搬入する。搬入後、次の3つのステップを順次実行する。
【0044】
(ステップ1)
ステップ1では、プラズマ励起の必要なNHガスと、プラズマ励起の必要のないDCSガスとを並行して流す。まず第1のガス供給管232aに設けた第1のバルブ243a、及びガス排気管231に設けた第4のバルブ243dを共に開けて、第1のガス供給管232aから第1のマスフローコントローラ243aにより流量調整されたNHガスをノズル233の第2のガス供給孔248bからバッファ室237へ噴出し、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加してNHをプラズマ励起し、活性種として処理室201に供給しつつガス排気管231から排気する。NHガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、第4のバルブ243dを適正に調整して処理室201内圧力を10〜100Paの範囲であって、例えば50Paに維持する。第1のマスフローコントローラ241aで制御するNHの供給流量は1〜10slmの範囲であって、例えば5slmで供給される。NHをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間は2〜120秒間である。このときのヒータ207温度はウエハが300〜600℃の範囲であって、例えば530℃になるよう設定してある。NHは反応温度が高いため、上記ウエハ温度では反応しないので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ温度は設定した低い温度範囲のままで行える。
【0045】
このNHをプラズマ励起することにより活性種として供給しているとき、第2のガス供給管232bの上流側の第2のバルブ243bを開け、下流側の第3のバルブ243cを閉めて、DCSも流すようにする。これにより第2、第3のバルブ243b、243c間に設けたガス溜め247にDCSを溜める。このとき、処理室201内に流しているガスはNHをプラズマ励起することにより得られた活性種であり、DCSは存在しない。したがって、NHは気相反応を起こすことはなく、プラズマにより励起され活性種となったNHはウエハ200上の下地膜などの表面部分と表面反応(化学吸着)する。
【0046】
(ステップ2)
ステップ2では、第1のガス供給管232aの第1のバルブ243aを閉めて、NHの供給を止めるが、引続きガス溜め247へ供給を継続する。ガス溜め247に所定圧、所定量のDCSが溜まったら上流側の第2のバルブ243bも閉めて、ガス溜め247にDCSを閉じ込めておく。また、ガス排気管231の第4のバルブ243dは開いたままにし真空ポンプ246により、処理室201を20Pa以下に排気し、残留NHを処理室201から排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201に供給すると、更に残留NHを排除する効果が高まる。ガス溜め247内には、圧力が20000Pa以上になるようにDCSを溜める。また、ガス溜め247と処理室201との間のコンダクタンスが1.5×10−3/s以上になるように装置を構成する。また、反応管203の容積とこれに対する必要なガス溜め247の容積との比として考えると、反応管203容積100l(リットル)の場合においては、100〜300ccであることが好ましく、容積比としてはガス溜め247は処理室容積の1/1000〜3/1000倍とすることが好ましい。
【0047】
(ステップ3)
ステップ3では、処理室201の排気が終わったらガス排気管231の第4のバルブ243dを閉じて排気を止める。第2のガス供給管232bの下流側の第3のバルブ243cを開く。これによりガス溜め247に溜められたDCSが処理室201に一気に供給される。このときガス排気管231の第4のバルブ243dが閉じられているので、処理室201内の圧力は急激に上昇して約931Pa(7Torr)まで昇圧される。DCSを供給するための時間は2〜4秒設定し、その後上昇した圧力雰囲気中に晒す時間を2〜4秒に設定し、合計6秒とした。このときのウエハ温度はNHの供給時と同じく、300〜600℃の範囲内の所望の温度で維持される。DCSの供給により、ウエハ200の表面に化学吸着したNHとDCSとが表面反応(化学吸着)して、ウエハ200上にSiN膜が成膜される。成膜後、第3のバルブ243cを閉じ、第4のバルブ243dを開けて処理室201を真空排気し、残留するDCSの成膜に寄与した後のガスを排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201に供給すると、更に残留するDCSの成膜に寄与した後のガスを処理室201から排除する効果が高まる。また第2のバルブ243bを開いてガス溜め247へのDCSの供給を開始する。
【0048】
上記ステップ1〜3を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことによりウエハ上に所定膜厚のSiN膜を成膜する。
【0049】
図5は、本発明の実施形態に係る基板処理装置1を用いた処理シーケンスを示し、図5(a)は各シーケンスに対応する工程を示し、図5(b)はプラズマ発生のシーケンス、図5(c)は吸収周波数測定のシーケンスを示す。
図5(a)に示すように上述のステップ1〜3の基板成膜処理工程と上述の基板移載工程(処理済基板の回収、未処理基板の搭載)が順に実施される。
基板成膜処理中は高周波電源273から高周波電力が第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270に供給され、図5(b)で示すようにバッファ室237内にプラズマを生成し、被処理基板200に対して成膜処理が行われる(基板成膜処理工程)。
次に、成膜処理が終わり、処理済基板を移載中に図5(c)で示すように吸収周波数計によって吸収周波数の測定を行う(基板移載工程)。
吸収周波数測定にて異常値が検出されなければ、未処理基板を搭載し(基板移載工程)、成膜処理を行い、図5(b)で示すようにバッファ室237内にプラズマを生成し、被処理基板200に対して成膜処理が行われる(基板成膜処理工程)。
即ち、吸収周波数測定にて異常値が検出されなければ、基板成膜処理工程と基板移載工程を繰り返し、異常値が検出された場合には、アラームを報知し、次の成膜処理は開始せずに、電極交換等の処置を行う。
なお、電極の吸収周波数測定は基板成膜処理工程後、基板移載工程中に実施される為、測定の為の時間を設ける必要が無く、装置の稼働率に影響は与えない。
【0050】
次に、吸収周波数測定におけるコントローラ280の作用について図6に基づいて説明する。
図6に示すように、コントローラ280は、吸収型周波数計281により測定された電極の周波数fxを、比較手段である比較器301により基準値f0及び予め設定されたしきい値f´と比較し、しきい値f´から所定の値だけ変化した場合には異常値として出力手段である出力装置302によりアラームを報知するよう比較器301および出力装置302を制御する。
尚、アラームの出力装置302としては、聴覚手段による音を発するもの、視覚手段による画面上への表示等が挙げられるが、これらの組み合わせ若しくはこれら以外の手段によるものも適用可能である。
【0051】
図7は、第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270の電極長さが正規の電極長さL0の場合の吸収型周波数計281の波形例を示す。
電極長さL0が1/4波長と一致する周波数で高周波電力の吸収が起こることから吸収型周波数計281の出力はある決まった周波数f0で極小となる。
【0052】
図8は、第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270の電極長さが形状変化した(縮み)後の電極長さL1の場合の吸収型周波数計281の波形例を示す。
電極長さL1は電極の正規長さL0に比べて短いことから、出力が極小値をとる周波数f1は正規電極長さの時の周波数f0よりも高くなる。
【0053】
実施例
本発明の実施の形態に係る第1の棒状電極269と第2の棒状電極270を反応管203の下部で高周波トランス300の二次側に接続し、高周波トランス300の一次側には吸収型周波数計281を接続し、電極長さを変えた場合の周波数変動量を求めた。
図9(a)は、電極長さが変化する前、図9(b)は、電極長さが変化した後の電極周辺を模式的に示した図であり、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270は、例えば5回の成膜処理で縮む。
電極長さが正規の長さであるL0=1185mmの時の吸収周波数f0は44.3MHzだった。
電極長さが50mm縮んでL1=1135mmとなった時の吸収周波数f1は45.9MHzだった。
即ち、電極が50mm縮んだことにより周波数は1.6MHz増えた。
【0054】
したがって、電極長さが縮んだことによって、吸収周波数は高くなり、この吸収周波数が極小値をとる周波数(共振周波数)をモニタすることにより間接的に電極形状の変化を監視でき、バッファ室237内での均一なプラズマ発生の指標とすることができ、被処理基板の膜厚不均一を抑制できる。
【0055】
なお、本発明は、ALD法だけでなくプラズマCVD法などの縦型装置による処理方法全般に適用される。また、ALD法による成膜例につきSiN膜を形成する例を挙げたがこれにかぎらず、プラズマを利用する膜種であれば他の膜種、ガス種によらず適用される。
【0056】
また、本発明は、バッファ室を備える処理室に限らず、バッファ室を備えない処理室においても適用される。
【0057】
本発明は、特許請求の範囲に記載した事項を特徴とするが、さらに次に記載した事項も含まれる。
(1)複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、前記電極の形状変化を監視する監視機構を有する基板処理装置。
(2)(1)であって、前記監視機構は、前記電極の共振周波数の変化を監視する。
(3)(1)であって、さらに、吸収周波数計を備える。
(4)(1)であって、前記電極の形状変化とは電極の長さの変化である。
(5)複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、前記電極での吸収周波数を測定する吸収周波数計と、前記吸収周波数計により測定された第1の周波数を、予め設定したしきい値と比較する比較手段と、アラームを報知する出力手段と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1の周波数が前記しきい値を超えた場合にアラームを報知するよう前記比較手段及び前記出力手段を制御する基板処理装置。
(6)処理室内に積層載置された複数枚の基板に所定の膜を形成する半導体装置の製造方法であって、前記処理内に基板を搬入する基板搬入工程と、前記処理室内に設けられた一対の電極に高周波電力を印加して、前記処理室内に導入された処理ガスを励起し、前記基板に所定も膜を形成する成膜工程と、前記処理室外に基板を搬出する基板搬出工程と、前記監視機構により前記電極の形状変化を監視する電極形状監視工程と、を有する半導体装置の製造方法。
(7)(6)であって、前記監視機構は、前記電極の共振周波数の変化を監視する。
(8)(6)であって、前記電極の形状変化とは電極の長さの変化である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基板処理装置が有する処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基板処理装置が有する処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を横断面で示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係る基板処理装置の比較例である従来の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を横断面で示した図である。
【図5】本発明の実施形態に係る処理シーケンスを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るコントローラの作用を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態において用いられる電極が正規の電極長さである場合の吸収型周波数計の波形例を示した図である。
【図8】本発明の実施形態において用いられる電極の長さが形状変化(縮み)した場合の吸収型周波数計の波形例を示した図である。
【図9】本発明の実施形態において用いられる(a)電極長さが変化する前、(b)電極長さが変化した後、の吸収周波数を比較した図である。
【符号の説明】
【0059】
1 基板処理装置
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
207 ヒータ
237 バッファ室
269 第1の棒状電極
270 第2の棒状電極
272 整合器
273 高周波電源
280 コントローラ
281 吸収型周波数計
300 高周波トランス
301 比較器
302 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、
前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、
前記電極の形状変化を監視する監視機構を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記監視機構は、前記電極の共振周波数の変化を監視する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、
前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、
前記電極での吸収周波数を測定する吸収周波数計と、
前記吸収周波数計により前記電極の形状変化を監視する監視機構を有する基板処理装置。
【請求項4】
複数枚の基板を積層載置して処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給手段と、
前記処理室内に設けられ、高周波電力が印加されることにより前記処理室内に供給されたガスを励起するプラズマを生成する少なくとも一対の電極と、
前記電極での吸収周波数を測定する吸収周波数計と、
前記吸収周波数計により測定された第1の周波数を、予め設定したしきい値と比較する比較手段と、
アラームを報知する出力手段と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記第1の周波数が前記しきい値を超えた場合にアラームを報知するよう前記比較手段及び前記出力手段を制御する基板処理装置。
【請求項5】
処理室内に積層載置された複数枚の基板に所定の膜を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記処理内に基板を搬入する基板搬入工程と、
前記処理室内に設けられた一対の電極に高周波電力を印加して、前記処理室内に導入された処理ガスを励起し、前記基板に所定の膜を形成する成膜工程と、
前記処理室外に基板を搬出する基板搬出工程と、
前記監視機構により前記電極の形状変化を監視する電極形状監視工程と、
を有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−129666(P2010−129666A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300961(P2008−300961)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】