説明

基板処理装置

【課題】結晶物や剥離物等の異物を良好に捕捉する一方で、メンテナンスフリーやランニングコスト削減に貢献する。
【解決手段】剥離装置は、シャワーノズル18を備えたチャンバ10もつ処理部1と、薬液を貯溜するタンク2とを有し、このタンク2からシャワーノズル18に薬液を送液しつつチャンバ10内の使用済みの薬液をタンク2に回収して再使用するように構成される。チャンバ10には、その内定部の一部に薬液の排出口11が設けられ、さらに排出口11と基板Sの処理位置(搬送ローラ16の位置)との間の部分には、前記排出口11よりも広い濾過面積をもつフィルタ部材20が配備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD、PDP用ガラス基板および半導体基板等の基板に処理液を供給して各種処理を施す基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばタンクに貯溜した処理液をポンプの駆動により処理部に送液し、当該処理部に配備されたノズルから基板に吹き付けることにより当該基板に所定の処理を施すとともに、この処理液をタンクに回収することにより、タンクと処理部との間で処理液を循環させながら処理を進める基板処理装置が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−146414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように処理液を繰り返し使用する装置では、タンクから処理部への送液配管にフィルタを介設し、処理に伴い発生する異物を取り除いてから処理液を処理部に送液することが行われている。この種の異物は結晶物や剥離物等の可溶性の物質であり、一般には時間の経過と共に解けて消滅するものであるが、例えば大型基板の処理等では、短時間に多くの異物が発生する場合もあるため、送液配管の一部にフィルタを設けただけの従来構成では、フィルタが目詰まりを起こし易く、いきおいフィルタ交換の回数が増加して、メンテナンスフリーやランニングコスト削減の妨げとなる。従って、この点を改善することが望まれている。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであって、処理に伴い発生する結晶物や剥離物等の異物を良好に捕捉する一方で、メンテナンスフリーやランニングコスト削減に貢献し得る基板処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の基板処理装置は、処理液の供給手段を備えたチャンバと、処理液を貯溜するタンクとを有し、前記タンクから前記供給手段に処理液を送液しつつ前記チャンバ内の使用済みの処理液を前記タンクに回収して再使用する基板処理装置において、前記チャンバが、その内底部の一部に処理液の排出口を備え、さらにこの排出口と基板の処理位置との間の部分に、前記排出口よりも広い濾過面積をもつフィルタ部材を備えているものである(請求項1)。
【0006】
この装置によると、タンクからチャンバ内の供給手段に処理液が送液され、供給手段から基板に対して処理液が供給されることにより基板に所定の処理が施される。処理に供された処理液は、チャンバ内のフィルタ部材を透過しつつチャンバ内底部の排出口から導出され、このようにフィルタ部材を透過することにより処理中に発生した結晶物や剥離物等の異物がフィルタ部材により捕捉(濾過)されることとなる。つまり、排出口と基板の処理位置との間の部分にフィルタ部材を設けたので、濾過面積をかせぐことができ、その分、より多くの前記異物を捕捉することができる。しかも、捕捉された結晶物等の異物は、逐次、基板の処理に使用された処理液に曝されて溶解が促進されるので、フィルタ部材は目詰まりを誘発し難いものとなる。
【0007】
なお、この種の基板処理では、処理液を効率的に回収するために、前記チャンバが、例えば前記内底部として下向きに窄む漏斗状部分を有し、この漏斗状部分の下端部に前記排出口が設けられるものが多いが、この場合、前記フィルタ部材は、この漏斗状部分の上端近傍に配備されているのが好適である(請求項2)。このような構成によると、フィルタ部材として、より広い濾過面積をもつものを配備することが可能となる。
【0008】
また、フィルタ部材の具体的な構成は種々考えられるが、例えば、簀の子状のフレームに網状のフィルタ本体が固定されたものであれば(請求項3)、簡素な構造でありながら異物を良好に捕捉することが可能となる。
【0009】
なお、チャンバ内にフィルタ部材を設ける場合、例えばフィルタ部材とチャンバ内側面との間を完全に塞ぐことが難しい場合もあり、このような場合には、処理中に破損した基板の破片等がこの隙間を通じて排出口に流れ込むといった不都合が考えられる。そのため、上記装置においては、係る不都合を回避すべく、前記フィルタ部材を第1のフィルタ部材としたときに、これとは別に、前記排出口の部分に第2のフィルタ部材が配備されているのが好適である(請求項4)。
【0010】
このような構成によれば、基板の破片等を第2フィルタ部材で捕捉することが可能となり、基板の破片等がタンクに入り込むのを有効に防止することが可能となる。なお、この場合、第2のフィルタ部材は、排出口の部分に配備されるものであり、第1のフィルタ部材に比べて濾過面積が小さくなる。そのため、第2のフィルタ部材は、結晶物等の異物による目詰まりを防止する上で、第1のフィルタ部材よりも目が粗いものであるのが好適である。
【0011】
なお、基板に形成された薄膜を剥離する剥離液、又は基板に形成された薄膜をエッチングするエッチング液の何れかを使用する装置では(請求項5)、特に、結晶物や剥離物等の異物が発生し易いため、上記のような装置構成は、この種の処理液を使用する装置に特に有用なものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る基板処理装置は、基板を処理するチャンバ内にフィルタ部材を設け、大きいな濾過面積を確保して結晶物等の異物を捕捉するようにしたので、結晶物や剥離物等の異物を良好に捕捉する一方で、フィルタ部材の目詰まりを起き難くすることができる。従って、フィルタ部材のメンテナンス回数を低減することができ、これによりメンテナンスフリーやランニングコスト削減に貢献することができる。
【0013】
特に、請求項2に係る基板処理装置によれば、チャンバの略断面積に相当する大きな濾過面積をもつフィルタ部材を配備することができる。また、請求項3に係る基板処理装置によれば、簡素な構成で良好に結晶等の異物を捕捉することが可能となる。また、請求項4に係る基板処理装置によれば、処理中に破損した基板等をより確実に捕捉することが可能となる。また、請求項5に係る基板処理装置によれば、剥離処理やエッチング処理で発生する異物を効果的に捕捉することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る基板処理装置の一例を示す概略断面図である。この図に示す基板処理装置は、基板Sに形成されたレジスト膜を剥離する剥離装置であって、基板Sに剥離処理を施す処理部1と、薬液(処理液)を貯溜するタンク2と、前記処理部1とタンク2との間で薬液を循環させる循環系統等とを備えている。
【0016】
前記処理部1は、箱形のチャンバ10を有している。このチャンバ10の内部には、複数の搬送ローラ16が所定間隔で配備されており、基板Sがこれら搬送ローラ16により水平姿勢で搬送されるようになっている。なお、チャンバ10の側面には、扉14により開閉される基板Sの搬入口12aおよび搬出口12bが設けられている。
【0017】
チャンバ10の内部において、搬送ローラ16の上方には、基板Sに対して薬液を供給するための複数のシャワーノズル18(本発明に係る供給手段に相当する)が配備されている。これらシャワーノズル18は、詳しく図示していないが、搬送ローラ16の上方に複数設けられ、例えばマトリクス状に配備されている。そして、各シャワーノズル18からそれぞれ液滴状に薬液を吐出して基板Sに供給するようになっている。
【0018】
前記チャンバ10の内底部は、下向きに窄む漏斗状に形成されており(漏斗状部分10aという)、この漏斗状部分10aの下端部には薬液の排出口11が設けられている。これにより前記シャワーノズル18から基板Sに供給された薬液が、漏斗状部分10aの斜面に沿って流下しつつ収液され、排出口11から排出される構成となっている。
【0019】
なお、チャンバ10の内部において、この排出口11と搬送ローラ16との間のスペースには、例えばステンレス等の材料から構成されるフィルタ部材20が介設されている。
【0020】
このフィルタ部材20は、基板Sから剥離されるレジスト膜を捕捉するためのものである。このフィルタ部材20は、簀の子状に構成された多孔質のフレーム22の表面に、当該フレーム22全体を覆うように金網状のフィルタ本体24を固定した構造とされ、フィルタ本体24の網目寸法は、薬液を透過させつつレジスト膜を捕捉し得るように、当実施形態では略50〜100μm、好ましくは60〜80μmに設定されている。なお、この値は限定的なものではなく、レジスト膜を良好に捕捉できるように適宜選定可能である。
【0021】
フィルタ部材20は、当実施形態では、同図に示すように被処理基板Sの面積より充分に大きくなるように構成されており、前記漏斗状部分10aの斜面に載置した状態でチャンバ10内に配備されている。
【0022】
一方、薬液の循環系統は、ポンプ32およびフィルタ34等を具備する送液配管30と、チャンバ10の前記排出口11から導出される薬液を回収する回収配管31とを有しており、タンク2から前記送液配管30を通じて薬液を導出しつつシャワーノズル18に送液し、シャワーノズル18から基板Sに薬液を供給するとともに、使用後の薬液を、前記回収配管31を通じてタンク2に戻すように構成されている。
【0023】
このような基板処理装置によると、チャンバ10内に基板Sが搬入されると、ポンプ32の作動によりタンク2から薬液が導出されつつ各シャワーノズル18に送液される。これにより基板Sに薬液が供給されてレジスト膜の剥離処理が行われる。
【0024】
基板Sの処理に供された薬液は、同図中破線矢印で示すように、基板Sからフィルタ部材20に流下しつつ当該フィルタ部材20を透過して排出口11からタンク2に戻されるが、この際、薬液中にレジスト膜が残っている場合、つまり薬液に溶解し切れなかったレジスト膜が薬液中に含まれている場合には、薬液が前記フィルタ部材20を透過する際に、このフィルタ部材20によって捕捉(濾過)されることとなる。そのため、薬液は、レジスト膜を殆ど含まない状態でタンク2に戻されることとなる。
【0025】
以上のように、この基板処理装置では、チャンバ10内にフィルタ部材20を設け、基板Sから流下等する薬液をこのフィルタ部材20を介してタンク2に戻すことにより、大きいな濾過面積を確保して薬液中のレジスト膜を捕捉するようにしているので、処理に伴い剥離されたレジスト膜を効果的に捕捉できる一方で、フィルタ部材20の目詰まりを起き難くすることができる。従って、フィルタ部材20のメンテナンス回数を低減することができ、これによりメンテナンスフリーやランニングコスト削減に貢献することができる。
【0026】
特に、上記のように大きい濾過面積をもつフィルタ部材20の場合、捕捉されるレジスト膜はフィルタ本体24上に広く薄く堆積することとなるので、処理の進行に伴いシャワーノズル18から吐出される薬液や基板Sから流下する液滴上の薬液が継続的にレジスト膜フィルタ部材20上に注がれることによりレジスト膜が速やかに粉砕され、早期に薬液中に溶解することとなる。そのため、フィルタ部材20は、目詰まりを起こすことが殆どなく、長期間、交換が不要となる。
【0027】
なお、この実施形態では、送液配管30にフィルタ34が介設されているが、上記の通り、処理に伴い発生するレジスト膜の殆どは、チャンバ10からタンク2に薬液が回収される過程で前記フィルタ部材20により捕捉される。そのため、送液配管30を通じて送液される際にこのフィルタ34においてレジスト膜が捕捉されることは殆どなく、従って、送液配管30に設けられたフィルタ34についても、同様にメンテナンス回数を低減することができ、メンテナンスフリーやランニングコスト削減に貢献することができる。
【0028】
ところで、上述した基板処理装置は、本発明に係る基板処理装置の好ましい実施の形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することも可能である。
【0029】
例えば実施形態では、上記のようにチャンバ10の漏斗状部分10aの部分に載置した状態でフィルタ部材20を設けているが、これは簡易的にフィルタ部材20を設けた場合の例であって、勿論、フィルタ部材20をチャンバ10に対してボルト等で頑丈に固定さした構成としてもよい。この場合、チャンバ10内のうち搬送ローラ16の下方全体が完全に塞がれるようにフィルタ部材20を設けるようにすれば、より広い濾過面積を確保することができ、レジスト膜をより確実に捕捉することが可能となる。
【0030】
また、図2に示すように、フィルタ部材20を第1フィルタ部材20としたときに、これとは別に、排出口11の部分に第2のフィルタ部材26を設け、これによって処理中に破損した基板Sの破片等を捕捉できるようにしてもよい。すなわち、基板Sが破損等した場合には、通常、その破片は第1フィルタ部材20で捕捉することが可能であるが、上記のように漏斗状部分10aの斜面にフィルタ部材20を載置した簡易的な構成では、第1フィルタ部材20とチャンバ内壁との間に隙間ができ、処理中に破損した基板Sの破片等がこの隙間を通じて排出口11からタンク2内に入り込むことも考えられる。そこで、上記のように第2フィルタ部材26を排出口11の部分に設け、これによって基板Sの破片等を確実に捕捉できるようにするのが好ましい。なお、この構成の場合、第2フィルタ部材26の網目寸法は第1フィルタ部材20と同じでもよいが、第2フィルタ部材26は排出口11に設けられるため濾過面積が小さい点、また、レジスト膜の殆どは第1フィルタ部材20で捕捉される点を考慮すれば、第2フィルタ部材26の網目寸法は、第1フィルタ部材20よりも粗く設定するのが好ましい。これによれば、基板Sの破片等を捕捉する一方で、第2フィルタ部材26の目詰まりの発生を有効に防止して、薬液の良好な流動性を確保することができる。
【0031】
なお、実施形態では、基板Sのレジスト膜を剥離する剥離装置に対して本発明を適用した例について説明したが、勿論、エッチング装置等、処理に伴い結晶物や剥離物等の異物が発生するような装置であれば本発明の装置構成は有用である。そして、フィルタ部材20を構成する材料や具体的な網目の荒さ(網目寸法)等についても、上記実施形態中で示したものに限定されず、具体的な処理の内容や結晶物等の異物の大きさ等に応じて、当該異物を良好に捕捉できるように適宜選定すれるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る基板処理装置(剥離装置)を示す概略断面図である。
【図2】基板処理装置(剥離装置)の別の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 処理部
2 タンク
10 チャンバ
16 搬送ローラ
18 シャワーノズル
20 フィルタ部材
30 送液配管
31 回収配管
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液の供給手段を備えたチャンバと、処理液を貯溜するタンクとを有し、前記タンクから前記供給手段に処理液を送液しつつ前記チャンバ内の使用済みの処理液を前記タンクに回収して再使用する基板処理装置において、
前記チャンバは、その内底部の一部に処理液の排出口を備え、さらにこの排出口と基板の処理位置との間の部分に、前記排出口よりも広い濾過面積をもつフィルタ部材を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記チャンバは、前記内底部として下向きに窄む漏斗状部分を有し、この漏斗状部分の下端部に前記排出口が設けられるものであり、前記フィルタ部材は、この漏斗状部分の上端近傍に配備されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板処理装置において、
前記フィルタ部材は、簀の子状のフレームに網状のフィルタ本体が固定されたものであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記フィルタ部材を第1のフィルタ部材としたときに、これとは別に、前記排出口の部分に第2のフィルタ部材が配備されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記処理液は、基板に形成された薄膜を剥離する剥離液、又は基板に形成された薄膜をエッチングするエッチング液の何れかであることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−277681(P2008−277681A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122256(P2007−122256)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】