説明

基板外観検査装置

【課題】カラーハイライト方式の光学系により生成されたカラー画像を用いて、部品電極の浮き不良の検査とはんだ検査との双方を実行できるようにする。
【解決手段】赤色から青色に向かって徐々に波長が変化する光を、その波長の変化が入射角度が変化する方向に沿って生じるようにして基板Sに照射し、基板Sからの正反射光をカメラ1に入射させ、撮像を行う。生成されたカラー画像を用いた検査では、各部品のはんだ付け部位に対し、照明光の一部に相当する波長範囲に対応する色彩(たとえば青から青緑までの色彩)が現れている領域を抽出し、その抽出結果に基づきはんだ63の表面状態の適否を判別する。さらに、部品電極の浮き不良を検査する場合には、カラー画像を濃淡画像に変換した後に、変換後の画像からエッジを抽出し、抽出されたエッジ画素の数を検査前に登録された判定基準値と比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、はんだ付け後の部品実装基板を所定の照明下で撮像し、生成された画像を処理することによって、部品の実装状態に関する検査を自動的に行う基板外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、従前より、「カラーハイライト方式」と呼ばれる基板外観検査装置を数多く開発している。このカラーハイライト方式の検査装置は、2次元カラーカメラ(以下、単に「カメラ」という。)と、赤、緑、青の3種類の色彩光を基板に対して異なる仰角の方向から照射する照明装置とを具備するもので、照明装置による照明下で撮像を行うことにより、はんだの傾斜面の傾斜状態が各照明色に対応する3色の分布状態により表現されたカラー画像を生成する(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特公平6−1173号公報
【0004】
上記の特許文献1に記載の照明装置では、基板面から見た仰角が最も大きい方向から赤色光が、仰角が最も小さい方向から青色光が、これらの中間に当たる方向から緑色光が、それぞれ照射される。よって、カラー画像中のはんだ付け部位では、平坦面に近い部位に赤色が現れ、傾斜が急な部位に青色が現れ、赤色になる部位と青色になる部位との間の傾斜角度を持つ部位に緑色が現れる。よって、カラー画像中に現れた色彩によって、はんだ面の傾斜状態を判別することができる。
【0005】
カラーハイライト方式の検査装置では、この原理を利用して、カラー画像中のはんだ付け部位に設定された検査領域内の画像を2値化し、赤、緑、青の各色彩が現れている領域を抽出する。そして抽出された各色領域の面積や位置などを計測し、得られた計測値をあらかじめ登録された判定基準値と比較することによって、はんだの傾斜状態が正しいかどうかを判断する。以下、この検査を「はんだ検査」という。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板に実装される種々の部品の中には、「ミニモールド部品」と呼ばれる部品がある。このミニモールド部品は、部品電極がはんだの中に埋もれている状態が、良好な実装状態となる。
【0007】
図6(1)は、ミニモールド部品の実装状態が良好な例を示す。図中、Sは基板であり、60はミニモールド部品の電極を、61は部品本体を、62は基板電極(ランドまたはパッドと呼ばれる。)を、63は部品電極60と基板電極62とを接合するためのはんだを、それぞれ示す。なお、図6(1)(2)とも、左手の電極に関する接続状態の図示を省略している。
【0008】
図6(1)に示すように、部品電極60の大半がはんだ63内に埋もれ、かつはんだ63が山状に盛り上がった状態であれば、接続状態は良好である。
【0009】
図6(2)は、接続状態に不良が生じている例を示す。この例では、部品電極60がはんだ63から露出し、その影響で部品本体61も傾いている。この種の不良は、一般に、「浮き不良」と呼ばれている。
【0010】
基板には種々の部品があるが、上記のような浮き不良を検出する必要のある部品は限られている。したがって、はんだ検査におけるカラーハイライト方式の照明の有用性や検査の効率を考えると、カラーハイライト方式の検査装置を用いて、はんだの検査とともに浮き不良の検査を実行できるようにするのが望ましい。
【0011】
しかし、ミニモールド部品の部品電極60は鏡面反射性が高いため、カラーハイライト方式の光学系により撮像を行うと、部品電極60で正反射した光のうち、その電極60の傾きに対応する色彩光がカメラに入射し、はんだ面として誤認される可能性がある。しかも、図6中に点線枠A,Bで示すように、ミニモールド部品のはんだ63では、部品本体61に近い箇所が緩やかな傾斜面(画像中で赤色となるもの)となり、浮き不良が生じた場合の電極60もこの緩やかな傾斜面に近い傾きになる可能性が高い。このため、画像上で浮き不良の電極60と赤色になったはんだ面とを見分けるのは困難である。
【0012】
そこで、発明者らは、カラー画像を濃淡画像に変換し、変換後の濃淡画像から部品電極のエッジを抽出する方法を検討した。一般的な浮き不良の検査では、単色の照明光による照明下で撮像を行って、被検査部位の濃淡画像を生成し、この画像から部品電極60のエッジを抽出するが、この方法をカラーハイライト方式の検査装置で実施しようとすると、はんだ検査のためのカラー照明下での撮像とは別に、単色照明下での撮像を行う必要が生じ、その分、効率が低下するからである。
しかし、以下に説明するとおり、この方法は適切でないことが判明した。
【0013】
図7は、図6(1)に示した浮き不良のないミニモールド部品と、図6(2)に示した浮き不良が生じているミニモールド部品とについて、それぞれをカラーハイライト方式の光学系により撮像した場合に生成されるはんだ付け部位のカラー画像と、このカラー画像を濃淡画像に変換してエッジを抽出した場合の処理結果(エッジ画像)とを模式的に示したものである。なお、対比を容易にするために、カラー画像中の各部位にも図6と同様の符号を使用する。またエッジ画像中の63Eは、はんだ63のエッジであり、60Eは部品電極60のエッジであり、61Eは部品本体61のエッジである。
【0014】
浮き不良がない場合のはんだ付け部位のカラー画像には、図7(1)の上段に示すように、部品本体61の近くに緩やかな傾斜面を示す赤領域が現れ、この赤領域の外周に緑領域が現れ、さらにその外周に青領域が現れる。
【0015】
一方、浮き不良が生じている場合のカラー画像では、図7(2)の上段に示すように、露出した部品電極60の上面が、はんだ63の赤色領域に重なるように現れる。上記したように、この部品電極60にも赤みの強い色彩が現れる。しかし、部品電極60とはんだ63の赤色で表される部分との傾斜角度が全く同一になることは少なく、また両者の反射率が異なるため、両者の色合いや輝度は異なるものになる。したがって、上記のカラー画像を濃淡画像に変換し、エッジ抽出処理を行うと、その処理結果を示すエッジ画像には、部品電極のエッジ60Eが出現する(図7(2)の下段参照。)。
【0016】
しかし、変換後の濃淡画像では、カラー画像における色彩の違いが濃度の違いとして変換されるため、エッジ抽出処理では、各色領域間の境界を示すエッジ101,102も抽出されてしまう。これらのエッジ101,102は、浮き不良の有無に関わらず抽出され、電極のエッジ60Eに近い場所に現れるので、電極のエッジ60Eを見分けるのが困難になる。
【0017】
この発明は、上記の問題点に着目し、カラーハイライト方式の光学系により生成されたはんだ付け部位のカラー画像を濃淡画像に変換する際に、はんだ部分に現れる色彩の違いが濃度差として反映されることがないようにすることにより、カラーハイライト方式の光学系により生成されたカラー画像を用いて、部品電極の浮き不良の検査とはんだ検査との双方を実行できるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明による基板外観検査装置は、検査対象の基板の上方に配置され、この基板に対し、複数種の色彩光をそれぞれ異なる入射角度をもって照射する照明装置と、この照明装置からの光に対する基板からの正反射光を入射可能な位置に配備されたカラー画像用の撮像装置と、はんだ付け後の部品実装基板を前記撮像装置および照明装置により撮像することにより生成されたカラー画像を用いて、各部品の実装状態に関する検査を実行する検査実行手段とを具備する。
【0019】
照明装置は、可視光線のスペクトルに従って波長が連続的に変化する光を、その変化が入射角度が変化する方向に沿って生じるようにして照射する。また検査実行手段は、基板上の各部品について、それぞれその部品のはんだ付け部位のカラー画像を用いて、部品電極と基板電極とを接合するはんだを対象にした第1検査を実行するとともに、あらかじめ定めた特定種の部品が検査対象となるとき、第1検査に用いるのと同じカラー画像を用いて部品電極を対象にした第2検査を実行する。
【0020】
第1検査では、はんだ付け部位のカラー画像に対し、照明装置からの照明光の一部に相当する波長範囲に対応する色彩が現れた領域を抽出する処理を、少なくとも一波長範囲について実行し、その抽出結果に基づいてはんだの表面状態の良否を判別する。第2検査では、はんだ付け部位のカラー画像を濃淡画像に変換した後に、変換後の濃淡画像から所定量を超える濃度勾配が生じている部位をエッジとして抽出し、このエッジ抽出結果に基づいて部品電極の浮きの有無を判別する。
【0021】
上記の撮像装置および照明装置を用いて基板を撮像した場合、鏡面反射性が高く、その反射率が一定で、傾斜角度の変化が緩やかな傾斜面であれば、その傾斜の方向に沿って、照明光におけるのに近い色彩の変化、すなわち可視光線のスペクトルに従った順序で徐々に色彩が変化した状態のカラー画像を得ることができる。このような状態で色彩が変化しているカラー画像を濃淡画像に変換しても、大きな濃度勾配が生じる箇所は認められにくいと考えられる。これに対し、隣り合う関係にある2つの部位間の反射率が異なる場合や、傾斜角度に大きな変化が生じている場合には、変換後の濃淡画像の対応箇所に大きな濃度勾配が生じると考えられる。
【0022】
したがって、部品電極の浮き不良の検査の対象となるはんだ付け部位を、上記の照明装置および撮像装置を用いて撮像すると、電極の浮き不良が生じていない場合には、変換後の濃淡画像に大きな濃度勾配が生じることがなく、色彩の境界位置でエッジが抽出されるのを抑えることができる。これに対し、部品電極の浮き不良が生じている場合には、部品電極とはんだ面との間の傾斜角度の違いや反射率の違いが濃度差となって現れるため、部品電極の輪郭線を示すエッジを抽出することができる。
【0023】
このように、浮き不良が生じている場合と生じていない場合とでは、変換後の濃淡画像の状態やエッジの抽出結果が異なるものになるから、部品電極の浮きの有無を判別する第2検査では、変換後の濃淡画像に対するエッジの抽出結果に基づいて部品電極の浮き不良の有無を精度良く判別することができる。
【0024】
また、はんだを対象とした第1検査を行う場合には、カラー画像において、照明光の一部に相当する波長範囲に対応する色彩が現れた領域を抽出することにより、特定の角度範囲の傾斜面を抽出することができる。よって、従来のカラーハイライト方式と同様の手法による検査を実施することができる。
【0025】
好ましい態様における装置では、検査実行手段は、第1検査において、4以上の波長範囲についてそれぞれその範囲に対応する色彩を抽出する処理を個別に実行し、抽出された各領域の分布状態に基づいてはんだの表面状態の良否を判別する。このようにすることにより、従来の赤、緑、青の三原色による検査よりも、はんだの表面状態の認識に関する分解能を向上することができ、検査の質を高めることができる。
【0026】
また、第1検査については、はんだ付け部位のカラー画像に対し、可視光線のスペクトルに従った色彩の変化に沿う方向を抽出する処理を実行し、その抽出結果に基づいてはんだの表面状態の良否を判別してもよい。このようにすれば、照明の変動やはんだ付け部位の傾斜状態のばらつき等によって、画像の色合いにばらつきが生じても、傾斜の方向や傾斜角度の変化の度合いを正しく認識することができる。
【0027】
このように、第1検査については、大きく分けて2とおりの方法を実施することができるが、いずれの場合にも、第2検査を実施する必要のある部品については、同一のカラー画像を用いて第1検査および第2検査を実行することができる。よって、2種類の検査を行う場合でも、撮像を1回ですませることができ、検査を効率良くすすめることができる。
【発明の効果】
【0028】
上記の基板外観検査装置によれば、カラーハイライト方式の光学系により生成されたカラー画像を用いて、はんだの表面状態の検査および部品電極の浮き不良の検査の双方を、精度良く実行することができる。また、部品電極の浮き不良の検査のために、条件を変更して撮像を2回実行する必要がなく、検査の効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、この発明が適用された基板外観検査装置の電気的構成を示す。
この基板外観検査装置(以下、単に「検査装置」という。)は、はんだ付け後のプリント基板を対象に、各はんだ付け部位に対するはんだ検査や、部品電極の浮き不良の検査を実行するもので、カメラ1、照明装置2、Xステージ部3、Yステージ部4、およびコンピュータによる制御部50を含む制御処理装置5などにより構成される。このほか、図1には示していないが、この検査装置には、検査対象の基板を支持するための基板支持テーブルや、基板の搬出入機構などが設けられる。
【0030】
カメラ1は、検査対象の基板のカラー静止画像を生成する。照明装置2は、複数のLEDを発光源とするもので、カメラ1とともに「カラーハイライト方式」の光学系を構成する。
【0031】
Xステージ部3は、カメラ1および照明装置2を基板支持テーブルの上方で支持し、Yステージ部4は基板支持テーブルを支持する。いずれのステージ部3,4とも、その支持対象を、一軸に沿って移動させることが可能である。また一方のステージ部による移動の方向は、他方のステージ部による移動の方向に直交する関係にある。
【0032】
制御処理装置5は、各ステージ部3,4やカメラ1および照明装置2の動作を制御して検査のためのカラー画像を生成し、各種検査を実行するもので、制御部50のほか、画像入力部51、撮像制御部52、照明制御部53、Xステージ駆動部54,Yステージ駆動部55、入力部56、表示部57、通信用インターフェース58などが含まれる。
【0033】
画像入力部51には、カメラ1から出力されたR,G,Bの各画像信号を受け付けるインターフェース回路や、これらの画像信号をディジタル変換するA/D変換回路などが含まれる。撮像制御部52は、カメラ1の撮像タイミングを制御し、照明制御部53は、照明装置2の各LEDの光量、発光色。点灯タイミングなどを制御する。
【0034】
入力部56は、ティーチングの際の設定操作などを行うためのもので、専用の操作ボタン、またはマウスやキーボードにより構成される。表示部57は、検査用の画像や検査結果などを表示するためのもので、液晶パネルなどにより構成される。通信用インターフェース58は、検査結果を外部の装置に送信する目的に使用される。
【0035】
制御部50内の図示しないメモリには、各種機構の制御や検査に関するプログラムや設定データが格納される。設定データには、基板に割り付けられた撮像対象領域にカメラ1の視野を合わせるのに必要なX、Yステージ部3,4の移動量、生成されたカラー画像に検査領域を設定するためのデータ、はんだ検査のために検出すべき色彩の範囲を示す2値化しきい値、このしきい値により検出される部位の面積の適正値などが含まれる。
【0036】
制御部50は、これらのプログラムや設定データを用いて、カメラ1の視野を基板の複数位置に順に合わせながらカメラ1に撮像を行わせる。さらに撮像の都度、画像入力部51により処理されたカラー画像に検査領域を設定して、被検査部位の検出、計測、計測値の適否判定などの処理を実行する。判定の結果は、基板単位の情報にまとめられて表示部57に表示され、さらに通信用インターフェース58を介して、図示しない外部機器に出力される。
【0037】
図2は、上記の検査装置で用いられる光学系の構成を示す。この図では、検査対象の基板Sに実装される部品の代表例としてミニモールド部品61を示している。このほか、基板Sには、チップ部品、IC、LSIなど、種々の部品が実装されている。
【0038】
カメラ1および照明装置2は、基板Sの上方に配備される。照明装置2は、ドーム型の筐体20の内面に、多色発光型のLED21を多数配列した構成のものである。筐体20の天頂部分には、上方に突出する筒状の開口部22が形成されており、各LED21は、この開口部22を取り囲むように同心円状に配列される。さらに、LED21の配置面は、全面にわたって光拡散部材23により被覆されている。
【0039】
カメラ1は、その受光面を鉛直方向に向け、光軸11を開口部22の中心に合わせた状態にして、照明装置2の上方に配備される。
カメラ1および照明装置2を上記のように配置することにより、照明装置2の各LED21から基板Sに照射された光に対する反射光のうち、開口部22を通過したものがカメラ1に導かれ、各反射光の色彩を反映したカラー画像が生成される。
【0040】
さらにこの実施例では、照明装置20の同心円状に配列されたLED21の発光色を、1つ1つの円単位で制御することによって、筐体20の上端部から下端部に向かう方向に沿って、発光色を少しずつ変化させている。具体的には、照明装置2の開口部22に最も近い上端部(入射角度が最も小さくなる光を発する位置)に配置されたLED21に赤色光を発光させ、筐体20の下端部(入射角度が最も大きくなる光を発する位置)に配置されたLED21に青色光を発光させ、上端部から下端部に向かう方向に沿って、可視光線のスペクトルに従った順序で発光色が変化するように、各円の発光色を制御する。各LED21からの光は、前面の光拡散部材23によって拡散されるので、基板Sに対する入射角度が変化する方向に沿って波長がきわめて緩やかに変化するような光を照射することができる。
【0041】
なお、照明装置20の構成は上記に限らず、たとえばLED21を白色発光のものにして、光拡散部材22の表面に可視光線のスペクトルと同様の色彩変化を示すパターンを印刷してもよい。または、ドーム型の照明に代えて、プリズムにより分光された光をそれぞれ異なる方向から照射するタイプの照明装置(特許文献2)を使用してもよい。
【0042】
【特許文献2】特開2002−310626号公報
【0043】
この実施例の検査装置では、ミニモールド部品のような部品電極の浮き検査が必要な部品に対し、同じカラー画像を用いて、はんだ検査および浮き不良検査を続けて実行できるようにしている。
【0044】
浮き不良検査では、検査領域内のカラー画像を256階調のグレースケールによる濃淡画像(以下、単に「濃淡画像」という。)に変換し、さらにこの変換後の濃淡画像にソーベルフィルタ等のエッジ抽出フィルタを作用させることにより、近傍の画素に対する濃度勾配が所定値を上回る画素をエッジ画素として抽出する。そして、抽出されたエッジ画素の数をあらかじめ登録されたしきい値と比較し、エッジ画素の数がしきい値を上回る場合には、「浮き不良あり」と判断し、エッジ画素の数がしきい値を下回る場合には、「浮き不良なし」と判断する。
【0045】
図3は、浮き不良がない場合、および浮き不良が生じている場合の模式図(上段)に、それぞれカラー画像を濃淡画像に変換した後にエッジ抽出処理を行った結果(エッジ画像)を対応づけて示す。なお、図3中の上段の図は、符号も含め、前出の図6と同様のものである。下段のエッジ画像中の63Eは、はんだ63のエッジを、60Eは部品電極60のエッジを、61Eは部品本体61のエッジを、それぞれ示す。
【0046】
はんだ付け工程において溶融した後に固化したはんだの表面は、一般に、滑らかで、傾斜角度の変化も緩やかである。したがって、はんだの表面状態が良好で、段差や凹み等によって表面が不連続になる箇所がなければ、はんだ63の傾斜が生じている方向に沿って、照明光におけるのと同様の色彩パターン、すなわち可視光線のスペクトルに従った順序で色彩が徐々に変化するパターンが現れる。
【0047】
したがって、図3(1)のように、部品電極60の浮き不良がなく、電極60がはんだ63の内部に隠れているようなはんだ付け部位に対し、そのカラー画像を濃淡画像に変換し、変換後の濃淡画像からエッジを抽出した場合には、はんだや部品本体のエッジ63E,61Eのほか、若干の色彩の差を反映した微小なエッジ(図示せず。)が抽出される程度となる。
【0048】
上記に対し、図3(2)のように部品電極60の浮き不良が生じているはんだ付け部位のカラー画像を濃淡画像に変換した場合には、部品電極60とはんだ63の表面との傾斜角度の違いによる色合いの差や反射率の違いによる輝度差によって、変換後の濃淡画像における両者の間に大きな濃度勾配が現れる。したがって、エッジ抽出処理を行うことによって、部品電極のエッジ60Eが抽出されるが、はんだ63の表面の色彩の差によるエッジは、図3(1)の場合と同様に、殆ど抽出されない。
【0049】
つぎに、ミニモールド部品に対するはんだ検査では、照明光の全波長範囲のうち、青から青緑までの波長範囲に対応する色彩が現れている領域(以下、「色領域」という。)を抽出し、その色領域の位置や面積を登録された判定基準値と比較するようにしている。
【0050】
図2によれば、青から青緑までの色彩の光は、その他の色彩光よりも大きな入射角度をもって基板Sに照射される。したがって、たとえば、青から青緑までの範囲の色彩が含まれる領域を抽出することによって、従来のカラーハイライト方式の検査装置で青色領域として抽出した領域と同様に、はんだの急峻な傾斜面の位置や大きさを認識することができる。また、ミニモールド部品のはんだ63においては、仮に部品電極60の露出があっても、その電極60による影響を受けずにはんだ63の表面状態を判別することができる。
【0051】
図4は、ミニモールド部品のはんだが良好である場合、およびはんだの状態が良好でない場合を表す模式図(上段)に、それぞれ上記の青から青緑までの範囲に対応する色領域Uを抽出した結果(下段)を対応づけたものである。
【0052】
図4(1)に示すように、はんだ63の量が十分で、部品電極60の上方で高く盛り上がっている場合には、傾斜が急峻な部位の面積も大きくなるため、抽出される色領域Uも大きくなる。これに対し、図4(2)に示すように、はんだ63が少なく、表面が低く平坦に近い状態になっている場合には、急峻な部位の面積が小さくなるため、抽出される色領域Uも小さくなる。よって、はんだ63が不良の場合の領域Uの面積に基づき適当な判定基準値を設定することにより、色領域Uの面積によって、はんだ63の表面状態の良否を判別することが可能になる。
【0053】
上記のように、この実施例の照明によれば、生成されたカラー画像を濃淡画像に変換してエッジ抽出処理を実行することにより、部品電極60の浮きの有無を精度良く判別することが可能になる。また、照明光の全波長範囲のうちの特定の範囲に対応する色領域を抽出することによって、はんだ63の表面状態の適否を支障なく判別することができる。
しかも、これら2種類の検査は、同じ検査領域の同じカラー画像を用いて行われるので、検査を効率良く行うことができる。
【0054】
なお、浮き不良検査の対象となる部品はミニモールド部品に限定されるものではない。たとえば、SOP等の多数のリードを具備する部品でも、はんだの接合の信頼性を高める必要からリードの先端部がはんだで覆われた状態になることを良品の基準とする場合がある。このような部品に対しても、ミニモールド部品と同様の方法により、浮き不良検査とはんだ検査を実行することができる。
【0055】
つぎに、この実施例では、浮き不良検査を実行する必要のない部品(チップ部品など)のはんだ検査については、複数とおりのしきい値を用いた2値化処理により、それぞれ異なる波長範囲に対応する4以上の色領域を抽出するようにしている。たとえば、赤から黄色の1つ手前までの色彩を含む範囲、黄色から緑の1つ手前までの色彩を含む範囲、緑から青緑の1つ手前までの色彩を含む範囲、青緑から青までの色彩を含む範囲、の4つを対象に、それぞれ対応する色領域を抽出する。
【0056】
上記の処理によれば、従来の赤、緑、青の三色を検出対象とする検査よりも、はんだ表面の傾斜角度を細かく分類して検出することが可能になる。特に、近年のチップ部品のはんだフィレットは、部品の小型化や実装の高密度化にともなって急峻になる傾向が高いので、上記のように傾斜角度の検出にかかる分解能を向上することにより、はんだ検査の精度を高めることができる。
【0057】
図5は、上記の検査装置が1枚の基板に対して実行する検査の流れを示す。
まず最初のST1(STは「ステップ」の略である。以下も同じ。)で、検査対象の基板を基板支持テーブルに搬入する。つぎのST2では、最初の撮像対象領域にカメラ1を位置合わせして撮像を行う。
【0058】
以下、生成された画像に含まれる部品に順に着目して、部品毎に検査を実行する。
具体的には、着目した部品が浮き不良検査の対象部品である場合(ST3が「YES」)には、ST4〜8の処理を実行する。ST4では、部品のはんだ付け部位に検査領域を設定し、その検査領域内のカラー画像を濃淡画像に変換する。つぎのST5では、変換後の濃淡画像からエッジを抽出し、ST6では、抽出されたエッジ画素の数を、あらかじめ登録された判定基準値と比較することにより、浮き不良の有無を判別する。
【0059】
ST7では、変換前のカラー画像を対象にして、青から青緑までの範囲内の色彩が現れた領域を抽出する。ST8では、抽出された領域の面積をあらかじめ登録された判定基準値と比較することにより、はんだの表面状態の良否を判別する。
【0060】
着目した部品が浮き不良検査の対象部品ではない場合(ST3が「NO」)には、ST9,10の処理を実行する。
ST9では、はんだ付け部位に検査領域を設定し、4以上の色彩の範囲について、それぞれ検査領域から対応する色領域を抽出する。ST10では、抽出された各色領域の位置や面積をそれぞれ登録された判定基準値と比較することにより、はんだの表面状態を判別する。
【0061】
なお、図5では、フローチャートが煩雑になるのを避けるために、ST4〜8やST9,10の処理が1回のみ実行されるように表現しているが、実際には、これらの処理は、はんだ付け部位毎に個別に実行される。また、浮き不良検査の対象部品に対し、この例では、浮き不良検査を行った後にはんだ検査を行っているが、この検査の順序は逆であってもかまわない。
【0062】
また、浮き不良検査の対象部品のはんだ検査を行う場合にも、他の部品と同様に4種類の色彩範囲に対応する色領域を抽出してもよい。勿論、部品電極60の浮き不良が生じている場合のはんだ検査で、電極60がはんだの赤色領域として検出されたために、正しい判断が行われない可能性はある。しかし、この場合には、同じ検査対象に対して実施される浮き不良検査で不良が検出されるから、浮き不良検査の結果を優先して不良と判定することができる。よって、実装状態の適否判断に特段の問題が生じることはない。
【0063】
処理対象の画像に含まれるすべての部品に対する検査が終了すると(ST11が「YES」)、さらに撮像対象領域を変更して新たな撮像を行う(ST12,ST2)。以下、生成された新たな画像に含まれる部品に対し、上記と同じ手順で検査を実行する。
【0064】
すべての撮像が実行され、最後の撮像に対する処理が終了すると(ST12が「YES」)、ST13に進み、各部品に対する判定結果をまとめて外部機器などに出力する。最後に、ST14で、検査の終了した基板を搬出し、しかる後に処理を終了する。
【0065】
つぎに、上記の実施例では、2値化により検出した色領域の面積を用いてはんだ検査とを実行したが、これに代えて、カラー画像中のはんだ付け部位から、可視光線のスペクトルに従った色彩の変化に沿う方向を抽出し、この方向をあらかじめ良品基板の画像を用いて求めた基準の方向と比較することによって、はんだの表面状態の良否を判別することもできる。
【0066】
可視光線のスペクトルに従った色彩の変化は、ベクトルとして検出することができる。たとえば、はんだ付け部位に対応する領域内のカラー画像データ(R,G,Bの各階調データの組み合わせにより表される。)を、下記の式を用いて、1次元の色相データHに変換すると、このHの値は、赤色(R=255,G=B=0)の場合に最大となり、可視光線のスペクトルに沿って青色(B=255,R=G=0)の方に移動するにつれて、徐々に値が減少する。したがって、この色相データHが増加または減少する方向を表すベクトルによって、可視光線のスペクトルに従った色彩の変化に沿う方向を表すことができる。
【0067】
R=Vmaxのとき H=(bb−gg)*π/3 ・・・(1)
G=Vmaxのとき H=2+(rr−bb)*π/3 ・・・(2)
B=Vmaxのとき H=4+(gg−44)*π/3 ・・・(3)
【0068】
上記(1)〜(3)式において、Vmaxは、画素単位のカラー画像データを構成するR,G,Bの各階調のうちの最大値である。また、rr,bb,ggは、それぞれ上記の最大値Vmaxと、R,G,Bの中の最小値Vminの値を用いて、下記の(4)(5)(6)式により求められる。
rr=(Vmax−R)/(Vmax−Vmin) ・・・(4)
gg=(Vmax−G)/(Vmax−Vmin) ・・・(5)
bb=(Vmax−B)/(Vmax−Vmin) ・・・(6)
【0069】
上記の色相データHを用いてはんだ検査を行う場合には、画像中のはんだ付け部位に所定大きさの検査領域を設定し、この検査領域内の各画素につき、それぞれ(1)〜(3)式のいずれかにより色相データHを算出する。そして、水平方向(x軸方向)および垂直方向(y軸方向)における検査領域内の色相データの変化量を求めた後、これらの変化量により表されるベクトルの合成ベクトルを、可視光線のスペクトルに基づく色彩の変化に沿う方向として特定する。詳細な処理については、下記の特許文献3を参照されたい。
【0070】
【特許文献3】特許第3867724号公報
【0071】
上記の色相データHによる合成ベクトルによれば、そのベクトルの方向を基準の方向と比較することによって、はんだの傾斜が正しい方向に生じているかどうかを判別することができる。また同じ部品であるのに、基板によってはんだ付け部位の傾斜状態がばらついたり、照明の明るさが変化するなどして、はんだ付け部位の色合いにばらつきが生じても、ベクトルの方向や長さに基づいて、傾斜の方向や傾斜角度の変化の度合いを正しく判別することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】基板外観検査装置の電気構成を示すブロック図である。
【図2】光学系の構成を示す説明図である。
【図3】浮き不良が生じていない場合と不良が生じている場合とについて、カラー画像を濃淡画像に変換した後にエッジ抽出処理を実行した結果を対比させて示す図である。
【図4】はんだが良好な場合と不良が生じている場合とについて、色領域の抽出結果を対比させて示す図である。
【図5】検査における処理手順を示すフローチャートである。
【図6】ミニモールド部品の良好な実装状態と、浮き不良が生じている状態とを対比させて示す図である。
【図7】図6の各状態に対応するカラー画像と、このカラー画像を濃淡画像に変換してエッジ抽出処理を実行した結果とを、対比させて示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 カメラ
2 照明装置
5 制御処理装置
50 制御部
60 部品電極
62 基板電極
63 はんだ
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の基板の上方に配置され、この基板に対し、複数種の色彩光をそれぞれ異なる入射角度をもって照射する照明装置と、この照明装置からの光に対する基板からの正反射光を入射可能な位置に配備されたカラー画像用の撮像装置と、はんだ付け後の部品実装基板を前記撮像装置および照明装置により撮像することにより生成されたカラー画像を用いて、各部品の実装状態に関する検査を実行する検査実行手段とを具備し、
前記照明装置は、可視光線のスペクトルに従って波長が連続的に変化する光を、その変化が入射角度が変化する方向に沿って生じるようにして照射し、
前記検査実行手段は、
基板上の各部品について、それぞれその部品のはんだ付け部位のカラー画像を用いて、前記部品電極と基板電極とを接合するはんだを対象にした第1検査を実行するとともに、あらかじめ定めた特定種の部品が検査対象となるとき、前記第1検査に用いたのと同じカラー画像を用いて部品電極を対象にした第2検査を実行し、
前記第1検査では、前記はんだ付け部位のカラー画像に対し、前記照明装置からの照明光の一部に相当する波長範囲に対応する色彩が現れた領域を抽出する処理を、少なくとも一波長範囲について実行し、その抽出結果に基づいてはんだの表面状態の良否を判別し、
前記第2検査では、前記はんだ付け部位のカラー画像を濃淡画像に変換した後に、変換後の濃淡画像から所定量を超える濃度勾配が生じている部位をエッジとして抽出し、このエッジ抽出結果に基づいて部品電極の浮きの有無を判別する、
ことを特徴とする基板外観検査装置。
【請求項2】
前記検査実行手段は、前記第1検査において、4以上の波長範囲についてそれぞれその範囲に対応する色彩を抽出する処理を個別に実行し、抽出された各領域の分布状態に基づいてはんだの表面状態の良否を判別する、
請求項1に記載された基板外観検査装置。
【請求項3】
検査対象の基板の上方に配置され、この基板に対し、複数種の色彩光をそれぞれ異なる入射角度をもって照射する照明装置と、この照明装置からの光に対する基板からの正反射光を入射可能な位置に配備されたカラー画像用の撮像装置と、はんだ付け後の部品実装基板を前記撮像装置および照明装置により撮像することにより生成されたカラー画像を用いて、各部品の実装状態に関する検査を実行する検査実行手段とを具備し、
前記照明装置は、可視光線のスペクトルに従って波長が連続的に変化する光を、その変化が入射角度が変化する方向に沿って生じるようにして照射し、
前記検査実行手段は、
基板上の各部品について、それぞれその部品のはんだ付け部位のカラー画像を用いて、前記部品電極と基板電極とを接合するはんだを対象にした第1検査を実行するとともに、あらかじめ定めた特定種の部品が検査対象となるとき、前記第1検査に用いたのと同じカラー画像を用いて部品電極を対象にした第2検査を実行し、
前記第1検査では、前記はんだ付け部位のカラー画像に対し、可視光線のスペクトルに従った色彩の変化に沿う方向を抽出する処理を実行し、その抽出結果に基づいてはんだの表面状態の良否を判別し、
前記第2検査では、前記はんだ付け部位のカラー画像を濃淡画像に変換した後に、変換後の濃淡画像から所定量を超える濃度勾配が生じている部位をエッジとして抽出し、このエッジ抽出結果に基づいて部品電極の浮きの有無を判別する、
ことを特徴とする基板外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−128303(P2009−128303A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306134(P2007−306134)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】