説明

安全支援情報提供車載システム

【課題】道路地図情報に基づく予測車両位置を通信情報として、立体交差などでの誤判定を防ぐとともに、判定装置および通信装置を追加するのみで、安価な安全支援情報提供車載システムを得る。
【解決手段】車両の予測車両位置を道路地図情報106に基づき求める車両位置予測装置110と、予測車両位置を他車両との間で通信する通信装置120と、車両および他車両の各予測車両位置を比較する判定装置119と、ドライバに情報を提供する表示再生装置109を備えている。道路地図情報106には立体交差情報が付加されており、平面的な予測車両位置に立体的な情報を加えて送信する。自車両の予測車両位置および道路の高さ情報を通信で他車両に送信し、受信側では車両および他車両との各予測車両位置および高さ情報を比較して、衝突可能性を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されて、車両のドライバに安全を支援するための情報を提供する安全支援情報提供車載システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、外部(路側)のインフラ設備から車両に情報を提供する装置として、VICS(道路交通情報通信システム)が実用化されており、渋滞情報などを含む各種情報が提供されている。
また、近年では、渋滞情報のみでなく、見えないカーブ先の停止車両などの存在を路側に設置されたセンサで検知し、路車間通信を用いて、路側の通信装置から車両内の通信装置に安全支援情報を提供する技術が提案されており、実証実験も行われている。
【0003】
一方、インフラ設備を必要とせずに、各車両間で直接通信が可能な車車間通信機を車両に搭載し、GPSなどで得られた車両の位置情報や進行方向、速度などの車両情報を相互に交換し、自車両の車両位置と他車両の車両位置とが将来接近する可能性が高い場合に、安全支援のための情報を提供する技術も提案され、実験も行われている。
【0004】
上記のいずれのサービスにおいても、車両のドライバが情報を認識および判定する時間を確保するためには、少なくとも衝突状態になるまでの数秒前に将来の衝突可能性を判定して、ドライバに情報を提供する必要がある。
また、様々な道路状況においても、間違った情報提供を回避する必要がある。
【0005】
従来の安全支援情報提供車載システムとして、車両衝突回避制御装置に適用したものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の従来システムは、GPSなどの位置測定センサや、ハンドル角またはアクセル開度などのセンサ情報に基づいて、自車両の数秒先の車両位置を予測して他車両に送信するとともに、他車両の予測車両位置を車車間通信で入手して、自車両と他車両との衝突確率を演算し、衝突確率が高い場合には車両のドライバに情報を提供するように構成されている。
また、過去の車両位置情報も合わせて送信する従来システムも提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
図11、図12は上記特許文献1、2に記載された従来の安全支援情報提供車載システムによるサービス提供例を示す説明図であり、図11は平面構造の交差点でのサービス提供例を示し、図12は立体構造の交差点(立体交差)でのサービス提供例を示している。
各図において、車両(自車両)10および他車両20の走行方向は、矢印で示されている。
【0007】
図11において、車両10は、道幅の狭い非優先道路14を走行して交差点に進入しようとしており、他車両20は、道幅の広い優先道路24を走行して交差点に進入しようとしている。
一方、図12において、車両10は、立体交差の下段側の道路13を走行しており、他車両20は、立体交差の上段側の道路23を走行している。
【0008】
図11のように平面構造の交差点においては、優先道路24側の他車両20の接近状態は、車車間通信によって非優先道路14側の車両10に伝えられ、衝突確率が高い場合に、車両10内の警告装置が、ドライバに「右車両接近」などの注意情報を提供することになる。
【0009】
しかしながら、従来システムの場合、車両10および他車両20の互いの予測車両位置を平面的に予測して通信するのみなので、図12に示すように立体交差(物理的に衝突が発生しない状況)においても、衝突確率が高いと判定して誤った安全支援情報(「右車両接近」などの注意情報)をドライバに提供する可能性がある。
【0010】
【特許文献1】特開2000−276696号公報
【特許文献2】特開2006−182207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の安全支援情報提供車載システムでは、車両10および他車両20の互いの予測車両位置を平面的に予測し、各車両間の位置予測に基づいて安全支援情報を提供いるのみなので、立体交差などで衝突可能性がないにも関わらず衝突確率が高いと誤判定し、誤った安全支援情報をドライバに提供するという課題があった。
【0012】
また、誤りの少ない安全支援情報提供システムを実現するために、他車両から連続的に通信で入手した複数の時刻の位置情報を、立体交差の情報を持つ地図情報の道路上にマッチング処理することにより、自車両の走行道路と他車両の走行道路とが立体交差であると特定することも考えられるが、地図情報はカーナビゲーション装置に内蔵されているので、通信で入手する自車両周辺のすべての他車両に対してマッチング処理および判定を行うためには、カーナビゲーション装置の演算処理性能を大幅に増強する必要があり、従来のカーナビゲーション装置では対応することができないという課題があった。
【0013】
さらに、他車両の将来位置の予測精度を上げるための車両情報(加速性能、運転時におけるドライバの癖、カーナビゲーション装置による案内中のルート、常時利用する通勤ルートなど)は、自車両側で入手することができないので、他車両の将来位置を高精度に予測することができないという課題があった。
【0014】
この発明は、道路地図情報に基づく予測車両位置を通信情報とすることにより、立体交差などにおける誤判定を防止するとともに、判定装置および通信装置を追加するのみで、カーナビゲーション装置の性能を大幅アップすることなく安価な安全支援情報提供車載システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明による安全支援情報提供車載システムは、車両に搭載されて安全支援情報を提供する安全支援情報提供車載システムであって、車両に搭載されて道路地図情報を含むカーナビゲーション装置と、車両の周辺に位置する他車両との間で相互通信を行うための通信装置と、道路地図情報に基づいて、車両および他車両の将来の走行位置をそれぞれ予測して予測車両位置を求める車両位置予測装置と、車両の予測車両位置と他車両の予測車両位置とを比較する判定装置と、判定装置の判定結果に基づき安全支援情報を提供する表示再生装置と、を備え、表示再生装置は、将来の時刻における車両と他車両との各予測車両位置が近い場合に、安全支援情報を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、道路地図情報に基づく予測車両位置を通信情報とすることにより、立体交差などでの誤判定を防ぐとともに、判定装置および通信装置を追加するのみで、既存のカーナビゲーション装置の性能を大幅に変更することなく、安価に安全支援情報車載システムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係る安全支援情報提供車載システムの全体構成を示すブロック図である。
図1において、車両に搭載されたカーナビゲーション装置100は、GPSアンテナ101と、GPS位置計測装置102aと、自立位置計測装置102bと、ジャイロセンサ103と、車速パルス入力装置104と、ハードディスク記録装置105と、ハードディスク記録装置105内に記録された道路地図情報106、走行履歴情報111および運転特性情報112と、ナビゲーションルート検索装置107と、地図・経路表示生成装置108と、表示再生装置109と、車両位置予測装置110と、車載ネットワーク113とを備えている。
【0018】
車両位置予測装置110には、車載ネットワーク113を介した車両機器情報(各種センサの検出情報)として、ウィンカ情報114、ブレーキ情報115、アクセル開度情報116、ギア位置情報117、ハンドル角情報118などが入力されている。
なお、車両機器情報は、車載ネットワーク113を介することなく、個別に直接入力されてもよい。
【0019】
表示再生装置109は、地図・経路表示生成装置108からのルート情報や、車両に搭載された判定装置119からの外部交通情報などの各種入力情報を表示する。
また、車両位置予測装置110により求められた位置予測情報(予測車両位置)は、判定装置119に入力されている。
判定装置119は、車車間通信用の通信装置120およびアンテナ121に接続されている。
【0020】
GPS位置計測装置102aは、GPSアンテナ101からの入力信号に基づいて自車両の車両位置を測定する。
また、自立位置計測装置102bは、ジャイロセンサ103からの検出信号と、車速センサ(図示せず)から車速パルス入力装置104を介して入力される車速パルスと、ハードディスク記録装置105内の道路地図情報106とに基づいて、自立的に自車両の車両位置を計測する。
【0021】
カーナビゲーション装置100は、GPS位置計測装置102aに基づく車両位置計測機能と、自立位置計測装置102bに基づく車両位置計測機能との、ハイブリッドによる位置計測機能を有しており、トンネルや立体交差下などでGPS信号が受信できない状態であっても、道路地図情報106に基づくマップマッチングにより、地図上に正確に自車両の車両位置を特定することができるようになっている。
なお、この場合、道路地図情報106は、ハードディスク記録装置105内に記録されているが、DVD―ROMやCD−ROMの光ディスクなどの大容量記憶装置であれば記録装置の種類を問わないのは当然であり、記録装置としてたとえば半導体メモリを用いてもよい。
【0022】
ナビゲーションルート検索装置107は、車両のドライバによる運転開始時の目的地設定時に、GPS位置計測装置102aおよび自立位置計測装置102bからの車両位置情報と、ハードディスク記録装置105内の情報とに基づいて、車両の走行ルートを検索する。
【0023】
地図・経路表示生成装置108は、車両位置情報と道路地図情報106とに基づいて、道路地図や車両のナビゲーション経路を表示する。
表示再生装置109は、地図・経路表示生成装置108からの地図および経路情報と、判定装置119からの入力情報(後述する衝突可能性に関する判定結果、外部交通情報など)とに基づいて、道路地図、自車両位置および外部交通情報などを表示する。
以上の装置102a、102b、104、107〜109は、一般的なカーナビゲーション機能に関するものである。
【0024】
車両位置予測装置110には、GPS位置計測装置102aおよび自立位置計測装置102bからの現在の自車両の車両位置情報と、立体交差など高さ情報を含む道路地図情報106と、通勤などでよく通る走行ルート記録する走行履歴情報111と、加減速などドライバの運転癖を学習する運転特性情報112と、ナビゲーションルート検索装置107からのナビゲーションルートとが入力されており、ナビゲーション動作中におけるナビゲーションルートに応じて自車両の予測車両位置を予測する。
【0025】
また、予測車両位置の予測精度を向上させるために、車両位置予測装置110には、前述のように、ウィンカ情報114、ブレーキ情報115、アクセル開度情報116、ギア位置情報117、ハンドル角情報118などの車両機器情報が入力されている。
車両位置予測装置110による上記機能は、カーナビゲーション装置100において、現在のマップマッチング技術を利用した自車両の車両位置計測技術を拡張することにより、比較的容易に実現することができる。
【0026】
以下、車両位置予測装置110により予測された予測車両位置(道路の高さ階層情報などを含む)は、判定装置119に入力される。
通信装置120は、判定装置119に入力された自車両の予測車両位置をアンテナ121から送信するとともに、アンテナ121を介して受信した他車両の予測車両位置を判定装置119に入力する。
【0027】
判定装置119は、他車両の予測車両位置と自車両の予測車両位置とを比較して、車両間の衝突可能性(衝突確率)を演算し、衝突可能性が高いと判定された場合には、衝突の可能性があると見なした時刻の数秒前に、表示再生装置109に安全支援情報を表示し、ドライバに注意を促す。
なお、図1においては、表示再生装置109をカーナビゲーション装置100内に構成したが、カーナビゲーション装置100とは別体に構成してもよい。
【0028】
一方、判定装置119および通信装置120は、カーナビゲーション装置100とは別体に構成され、従来のカーナビゲーション装置にない追加機能を備えており、新規のハードウェアおよびソフトウェアを必要とする。
このように、判定装置119および通信装置120をカーナビゲーション装置100から分離することにより、従来のカーナビゲーション装置への追加機能は、ソフトウェアで容易に実現可能な車両位置予測装置110のみとなるので、既存のカーナビゲーション機器の性能を大幅に向上させる(コストアップを招く)ことなく、この発明の実施の形態1による安全支援情報提供車載システムを容易に実現することができる。
また、判定装置119および通信装置120を追加変更するのみで、今後発展する安全支援情報提供車載システムのアップグレード時(通信方法や判定ロジックの変更などを含む)にも、容易に対応することができる。
【0029】
次に、図1に示したこの発明の実施の形態1による動作について説明する。
まず、既存技術である現在の車両位置のマップマッチング機能について、簡単に説明する。
マップマッチング機能とは、GPS位置計測装置102aで演算した位置情報を、道路地図情報(道路地図上の位置情報)106と比較し、GPSの位置座標が地図の道路上に存在しない場合には、近くの道路上に位置を修正して、道路上に自車両の車両位置を示す機能である。
【0030】
これにより、トンネルや立体交差などでGPSの位置情報が入手できなくなった場合でも、ジャイロセンサ103と車速パルスを積分した距離とに基づき、自車両が道路上を走行しているものと見なして、自車両の車両位置を自立的に計算することができる。
【0031】
従来のカーナビゲーション装置においては、GPSの位置演算およびマップマッチング演算のための各遅延時間が存在し、演算結果の自車両の車両位置を単純に地図上に表示すると、現在の車両位置よりも少し前の時刻の位置が表示されることになるので、自車両の車速と演算遅延時間分とから実際の予測車両位置を求め、現在の車両位置として表示する簡単な車両位置予測処理が行われている。
【0032】
一方、この発明の実施の形態1による車両位置予測装置110においては、上記従来技術を拡張して、数秒先の車両位置を予測するようになっている。
以下、図2および図3を参照しながら、この発明の実施の形態1による特徴的な動作について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1による車両位置予測処理を示すフローチャートであり、図3は道路地図情報106に基づいて予測した車両位置を図式化して示す説明図である。
図2において、まず、自車両の現在の車両位置を計測し(ステップS10)、マップマッチングしている現在の走行道路を推定する(ステップS11)。
【0033】
続いて、自車両の現在の車速および加速度から予測される数秒後の予測移動距離を演算する(ステップS12)。
このとき、車載ネットワーク113から、車両の挙動をさらに詳細に推定するために必要な情報(ブレーキ情報115、アクセル開度情報116、ギア位置情報117、車両重量、ハンドル角情報118など)が得られる場合には、これらの各情報を用いて予測移動距離を演算する。
【0034】
次に、現在マップマッチングしている道路から、ステップS12で求めた予測移動距離まで移動する間に、交差点などの分岐が存在するか否かを、道路地図情報106に基づいて判定する(ステップS13)。
ステップS13において、分岐が存在しない(すなわち、NO)と判定されれば、現在マップマッチングしている道路上で予測移動距離分だけ移動した地点を予測車両位置とする(ステップS18)。
【0035】
このとき、平面的には交差点などの分岐が存在したとしても、道路地図上で、立体交差などのように、物理的な交差が存在しないことが判明した場合には、分岐なしの処理(ステップS18)に進む。
この場合、車両位置予測装置110は、ハードディスク記録装置105内の道路地図情報106にあらかじめ記録しておいた道路の高さの階層情報を必ず求めて、予測車両位置とともに、道路の高さの階層情報も合わせて判定装置119に送信する。
【0036】
たとえば図3のように、自車両10が走行している道路13Aの形状が左方向に直角にカーブしている場合に、仮に従来システムのように自車両10の現在方位や速度のみから自車両10の車両位置を予測したとすると、予測車両位置12(点線枠参照)のように、実際の道路上では起こり得ない車両位置を予測するが、この発明の実施の形態1によれば、図3内の予測車両位置11(実線枠参照)のように、道路13Aの形状に合わせて車両位置を予測することができる。
【0037】
また、予測車両位置11の演算に合わせて、マップマッチングした走行中の道路情報を同時に取り扱い、予測車両位置11および道路情報の両方の情報を、通信装置120およびアンテナ121を用いた車車間通信により他車両20に送信する。
さらに、自車両10においては、通信装置120およびアンテナ121を用いた車車間通信により、他車両20の予測車両位置21を受信する。
【0038】
図2に戻り、車両位置予測装置110の動作について、引き続き説明する。
前述のステップS13において、現在マップマッチングしている道路から予測移動距離まで移動する間に、交差点などの分岐が存在する(すなわち、YES)と判定されれば、車両位置予測装置110は、その分岐点で道路を変更する可能性を考慮して予測車両位置を演算する。
【0039】
具体的に、交差点などで実際に分岐が可能な場合には、ステップS13に続いて、以下のように分岐道路を推定する。
まず、ウィンカ情報114を参照し、自車両が交差点に近いかまたは交差点に進入しているときに、ウィンカが動作しているか否かを判定する(ステップS14)。
【0040】
ステップS14において、ウィンカが動作している(すなわち、YES)と判定されれば、ウィンカの指示方向に右折または左折するか、もしくは、合流または分岐することが予測されるので、ウィンカの指示方向に合わせた道路を選択し、ウィンカ動作方向の道路上に車両位置を予測して、予測車両位置をマッチングする(ステップS16)。
【0041】
一方、ステップS14において、ウィンカが動作していない(すなわち、NO)と判定されれば、続いて、カーナビゲーション装置100の機能によるルート案内で右左折があるか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15において、ルート案内で右左折がある(すなわち、YES)と判定されれば、ルート案内に応じた道路を選択し、ルート案内方向の道路上に車両位置を予測して、予測車両位置をマッチングする(ステップS17)。
【0042】
一方、ステップS15において、ルート案内で右左折がない(すなわち、NO)と判定されれば、分岐なしの処理(ステップS18)に進む。
なお、図2には記載していないが、自車両の交差点への進入時において、ウィンカの操作がルート案内と異なる場合には、ルート案内をドライバが無視したものと見なして、ウィンカ情報114の方を優先して予測車両位置を推定する。
【0043】
分岐での車両位置および道路の予測処理(ステップS16〜S18)が終了したら、次に、予測した道路の車線幅を、道路地図情報106に基づいて求め(ステップS19)、続いて、予測した道路の高さを、道路地図情報106に基づいて求める(ステップS20)。
なお、ステップS20で予測する道路の高さは、メートル単位の絶対値で求めなくてもよく、階層構造(地下、地上、高架1、高架2など)が分かる程度の値でよい。
【0044】
以上のステップS10〜S20によれば、車両が走行中の場合には車両位置を予測することができるが、右折待ち状態や一時停止状態などでは、車両が停止しているので、数秒後の車両位置も、停止位置のままで予測車両位置が演算されることになる。
しかし、実際のサービスにおいては、停止状態の車両が発進したときに衝突可能性があるか否かを判定しなければならないので、以下の条件下(ステップS21〜S27参照)においては、仮想的に車両が発進した場合の車両位置を予測する。
【0045】
まず、車両位置予測装置110は、赤信号情報や一時停止情報を通信で入手することができる交差点や、地図上にあらかじめ記録された交差点情報などで一時停止が要求されている場合や、地図上にあらかじめ記録された自車両の走行道路幅および分岐道路の道路幅などの情報に基づいて、自車両の走行道路が非優先側であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0046】
また、図2では示していないが、車両位置予測装置110は、ブレーキ情報115から減速中(ブレーキが踏まれているなど)であることが明確な場合には、交差点で停止することを考慮して車両位置を予測する。
また、赤信号による停止や一時停止が必要な交差点であっても、ブレーキが踏まれていない場合や、減速の加速度が弱い場合には、停止することを考慮しない車両位置を予測する。
【0047】
ステップS21において、自車両の走行道路が優先側である(すなわち、NO)と判定されれば、一時停止が不要な走行道路なので、既に予測した予測車両位置をそのまま利用し(ステップS28)、図2の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS21において、自車両の走行道路が非優先側である(すなわち、YES)と判定されれば、続いて、自車両が一時停止しているか否かを判定する(ステップS22)。
【0048】
ステップS22において、自車両が走行中である(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS28に進み、既に予測した予測車両位置をそのまま利用して、図2の処理ルーチンを終了する。
【0049】
一方、ステップS22において、自車両が交差点などで停止中である(すなわち、YES)と判定されれば、まず、将来の移動距離がゼロである場合の予測車両位置を、第1の予測車両位置として現在の車両位置に設定する(ステップS23)。
続いて、停止状態からブレーキを離して加速する場合を想定して、学習機能によって求めた通常の加速度で加速される場合の予測車両位置を、第2の予測車両位置として求める(ステップS24)。
【0050】
また、自車両が一時停止中の場合には、車両位置予測装置110は、その後のブレーキ情報115に基づき、以下のように、2種類(第1および第2)の予測車両位置のそれぞれに予測確率を付して出力する。
まず、ブレーキ情報115から、ブレーキが踏まれているか否かを判定し(ステップS25)、ブレーキが踏まれている(すなわち、YES)と判定されれば、第1の予測車両位置を設定するための第1の予測確率を大きく設定して(ステップS26)、図2の処理ルーチンを終了する。
【0051】
一方、ステップS25において、ブレーキが踏まれていない(すなわち、NO)と判定されれば、ブレーキを離して発進加速に移るものと予測し、第2の予測車両位置を設定するための第2の予測確率を大きく設定して(ステップS27)、図2の処理ルーチンを終了する。
【0052】
ステップS27により、ブレーキを離しただけで、発進加速に移ると予測した場合の第2の予測車両位置の予測確率が高まるので、より早い段階での情報提供が可能となる。
すなわち、通信装置120およびアンテナ121を介して送信された予測車両位置を受信した他車両は、第2の予測車両位置に基づいて衝突可能性を判定することができる。
なお、ギア位置情報117がニュートラル位置を示す場合、または、パーキングブレーキがかかっている場合など、すぐに車両が発進することができない条件を示す場合には、ステップS27の実行は禁止される。
【0053】
なお、図2では示していないが、ルート案内をしていない道路や、毎日の通勤経路などの、走行履歴情報111の学習によってルート案内される道路の分岐対象の交差点(右左折が予測される状態)でのウィンカの操作忘れを考慮して、走行履歴情報111の学習から予測される分岐道路上の第3の予測車両位置と、直進方向の道路上の第4の予測車両位置とを演算し、第3および第4の予測車両位置に対してそれぞれ第3および第4の予測確率を付して、2つの情報を出力することにより安全性を高めるようにしてもよい。
【0054】
以上のように、車両位置予測装置110は、走行中の予測車両位置を演算するが、始動直後の状態においては、自車両の位置が、駐車場など、道路上に位置しないことが多いことが予測されるので、道路上に予測車両位置をマッチングすると、予測車両位置がずれる問題がある。
そこで、車両が道路地図情報106に記録されていない道路を走行中であることを判定する走行路判定装置(図示せず)を設け、始動後の低速での移動状態、GPSを受信できない状態、駐車場への入場状態(決済などの通信から分かる)など、道路上を走行していないことが明らかであることが判定された場合には、車両位置予測装置110は、予測車両位置の道路上へのマッチング演算処理を停止する。
【0055】
図4は駐車場通路と公道とが隣接している状態を示す説明図である。
図4においては、駐車場の入口INから構内に入る車両(破線矢印参照)と、駐車場の出口OUTから公道に出る車両(破線矢印参照)と、駐車場の構内を走行する自車両15と、公道上を走行するものとして誤認識される自車両15’(破線)と、非優先道路から公道に出る他車両16(実線矢印参照)とが示されている。
【0056】
通常、道路地図情報106には、公道以外の私有地や駐車場内の道路は記録されていないので、道路地図情報106に基づいて予測車両位置をマッチングすると、駐車場の構内を走行中の自車両15が、公道を走行していないにも関わらず、公道上の車両15’の位置を走行しているものと誤判定する。
したがって、予測車両位置を誤演算し、たとえば他車両16と衝突可能性が高いなど、誤った情報を提供する可能性がある。
【0057】
そこで、通信で駐車場への入場状態を判定可能な場合には、駐車場への入場時に、道路地図情報106での予測車両位置のマッチングを停止し、出場時の決算に使用する通信で駐車場からの出場を判定し、道路地図情報106での予測車両位置のマッチングを再開することにより、予測車両位置の誤演算を回避することができる。
また、他の誤演算回避処理として、たとえば、一定速度以上での走行中であって、GPSでの位置測定結果が連続して公道上に存在しているなどの条件を満たす場合に、マッチングを再開するようにしてもよい。
上記処理により、カーブ、立体交差、交差点、合流、分岐など様々な道路形状でも、また、ドライバの運転特性や車両の加速性能がどのような条件であっても、将来の予測車両位置を的確に求めることができる。
【0058】
次に、図5〜図10を参照しながら、この発明の実施の形態1による表示再生装置109および判定装置119の動作について説明する。
図5〜図7は判定装置119への入力情報を示す説明図であり、図5は他車両から通信で入手する位置予測情報、図6は自車両の位置予測情報、図7は路側(信号機など)から配信される路側情報をそれぞれ示している。
図8は予測車両位置に基づく判定処理を示すフローチャートである。
また、図9、図10は予測車両位置の比較処理を図式化して示す説明図であり、図9は交差点での状態、図10は立体交差での状態をそれぞれ示している。
【0059】
判定装置119には、図5〜図7に示すように、通信装置120およびアンテナ121で受信した他車両の位置予測情報(予測車両位置)200と、自車両の位置予測情報(予測車両位置)201と、路側に設置された機器(信号など)から受信した路側情報203(路側から配信される信号情報、交差点構造、提供サービス種別情報)とが入力される。
【0060】
自車両の位置予測情報201には、自車両がこれから進入する交差点などの路側情報202(自車両内の交差点構造、提供サービス種別情報)も添付される。
また、路側情報203には、路側から配信されて表示再生装置109に表示されるコンテンツ204が含まれる場合もある。
【0061】
図5〜図7において、他車両の予測車両位置200(図5参照)は、他車両の識別が可能な車両IDと、予測車両位置情報(予測演算した時刻、予測時間、他車両の予測車両位置を示す緯度、経度、進行方向、進行速度、他車両の予測車両位置の確率分布など)と、他車両の走行中の道路幅および道路の高さ方向の階層情報とを含む。
さらに、渋滞情報などで用いられる道路の特定区間を示すリンク番号が設定されている道路の場合には、リンク番号も予測車両位置200に含まれる。
【0062】
自車両の予測車両位置201(図6参照)は、図5に他車両の場合と同様の情報を含み、通信で送信される予測車両位置201に加えて、判定装置119のみで利用する路側情報202(交差点構造および提供サービス種別情報など)が付加される。
また、信号機などから通信による路側情報203(図7参照)が提供される場合には、信号機の信号情報、交差点構造および提供サービス種別などの情報を受信するとともに、表示再生装置に表示するコンテンツ204を受信する場合もある。
【0063】
次に、図8〜図10を参照しながら、予測車両位置に基づく判定装置119の判定処理について説明する。
図8において、まず、予測時刻を調整するために、他車両からの予測時刻(受信情報)と自車両の予測時刻との間にずれ(他車両からの通信による遅延)が存在するか否かを判定する(ステップS30)。
【0064】
ステップS30において、予測時刻のずれがある(すなわち、YES)と判定されれば、自車両の予測時刻に合わせて、他車両の情報(予測車両位置)を予測時間のずれ分だけ修正する(ステップS31)。
このとき、他車両の予測時刻と自車両の予測時刻との差と、他車両の進行方向および速度とを用いて、他車両の緯度および経度を再計算する。
【0065】
続いて、自車両と他車両の予測時刻の差が所定値よりも大きいか否かを判定し(ステップS32)、予測時刻のずれが所定値よりも大きい(すなわち、YES)と判定されれば、予測車両位置の領域に対応した確率分布を広げる(ステップS33)。
続いて、入手した他車両の情報のすべてを補正した(他車両からの予測時刻を自車両の予測時刻と合わせた)か否かを判定し(ステップS34)、他車両のすべての補正が完了していない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS30に戻り、以上の処理を繰り返し実行する。
【0066】
なお、ステップS30において、予測時刻のずれがない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS31〜S33の処理を実行せずに、補正完了判定処理(ステップS34)に進む。
また、ステップS32において、予測時刻のずれが所定値以下(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS33の処理を実行せずに、他車両の補正完了判定処理(ステップS34)に進む。
【0067】
一方、ステップS34において、他車両のすべての補正が完了した(すなわち、YES)と判定されれば、続いて、自車両の予測車両位置と他車両の予測車両位置とがほぼ等しいか否かを判定し(ステップS35)、自車両と他車両との各予測車両位置が異なる(すなわち、NO)と判定されれば、衝突可能性がないと見なされるので、図8の処理ルーチンを直ちに終了する。
【0068】
一方、ステップS35において、自車両と他車両との各予測車両位置がほぼ等しい(すなわち、YES)と判定されれば、続いて、自車両の走行道路の高さと他車両の走行道路の高さとが異なるか否かを判定し(ステップS36)、自車両と他車両との各走行道路の高さが異なる(すなわち、YES)と判定されれば、立体交差などで衝突可能性がないと見なされるので、図8の処理ルーチンを直ちに終了する。
【0069】
一方、ステップS36において、自車両と他車両との各走行道路の高さが等しい(すなわち、YES)と判定されれば、自車両に対する他車両の接近方向および接近速度を演算し(ステップS37)、自車両が非優先側であるか否かを判定する(ステップS38)。
【0070】
ステップS38において、自車両が非優先側である(すなわち、YES)と判定されれば、非優先情報をセットして(ステップS39)、道路地図情報106に特定サービス情報(安全支援サービス種類情報)があるか否かを判定する(ステップS40)。
一方、ステップS38において、自車両が優先側である(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS39を実行せずに、特定サービス情報の判定処理(ステップS40)に進む。
【0071】
図9および図10は自車両および他車両の各分布(緯度、経度、進行方向、確率分布)の比較処理(ステップS35〜S39)を図式化して示す説明図であり、図9は平面構造の交差点での状態(図9)を示し、図10は立体構造の交差点(立体交差)での状態を示している。
図9、図10において、前述(図11、図12参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0072】
図9においては、自車両の予測車両位置11(実線の楕円枠参照)と、他車両の予測車両位置21(点線の楕円枠参照)との各分布が重なり、かつ、自車両10が走行する非優先道路14と、他車両が走行する優先道路24との高さの階層が一致する。
したがって、図9の場合には、判定装置119は、自車両10と他車両20との衝突可能性が高いものと判定し、衝突対象となり得る他車両20の自車両10への接近方向および接近速度を演算して出力するとともに、各予測車両位置11、21の重なり具合を衝突可能性として出力する。
【0073】
また、判定装置119は、非優先道路14および優先道路24の各道路幅を比較し、自車両10の走行する非優先道路14の幅が狭く非優先であることを示す情報も出力する。
また、車両位置予測装置110の処理(図2参照)で説明したように、たとえば自車両10が一時停止中であって、第1の予測車両位置(停止中の現在位置)が他車両20の予測車両位置21の分布と重ならない場合でも、判定装置119は、一時停止後の発進を想定した第2の予測車両位置を用いて衝突可能性を演算する。
【0074】
一方、図10においては、自車両10の予測車両位置11と他車両20の予測車両位置21とが平面上では重なるものの、自車両10が走行する道路13の道路高さの階層と、他車両20が走行する道路23の道路高さの階層とが一致しない。
したがって、図10の場合には、判定装置119は、自車両10に対して衝突可能性のある対象物は存在しないものと判定し、衝突可能性を示す判定結果を出力することはない。
【0075】
なお、表示再生装置109は、判定装置119から入力される他車両20の接近方位、接近速度、衝突可能性、非優先情報などを表示するが、そのまま表示しても、ドライバには容易に状況を理解することができない。
したがって、判定装置119は、ドライバがどのようなことに注意すればよいかを判定して、分かりやすいコンテンツを用意して表示再生装置109に表示させる必要がある。
【0076】
そこで、図8に戻り、判定装置119は、特定サービス情報の有無を判定する(ステップS40)。
このとき、交差点の信号機などからの通信により、どのようなサービスを行うかが明確な場合や、特定サービスの提供を指定する情報が道路地図情報106にあらかじめ設定されている場合などの条件下であって、ステップS40において、特定サービス情報がある(すなわち、YES)と判定されれば、判定装置119は、特定サービスの表現方法に応じたコンテンツを用意する(ステップS41)。
【0077】
具体的には、たとえば、特定サービスが右折待ち車両に対する情報提供サービスである場合には、信号が「青」のときに他車両が前方から接近する場合に、「直進車あり」などのコンテンツを用意する。
また、コンテンツが同時に通信で送られてきた場合には、送られてきたコンテンツの利用を優先する。これにより、車両間での通信に基づいて判定して提供される情報と、路側機器(信号機など)から提供される情報とを、二重に提供してドライバが混乱するのを防ぐことができる。
【0078】
一方、通信によるサービスがない交差点の場合や、特定サービスの提供を指定する情報が道路地図情報106にあらかじめ設定されていない場合などの条件下であって、ステップS40において、特定サービス情報がない(すなわち、NO)と判定されれば、判定装置119は、他車両の接近方向および非優先情報などから判定したコンテンツを提供する(ステップS42)。
【0079】
具体的には、たとえば、自車両の走行道路が非優先側であって、右から他車両が接近中の場合には、衝突確率が低くても、「右車両接近」のコンテンツを用意する。
また、自車両が優先側であって、左から他車両が一時停止中の状況下で他車両のブレーキが解除された場合など、他車両の第2の予測車両位置が自車両への衝突確率が高いことを示す場合には、「左車両飛び出し」のコンテンツを用意する。
他車両が一時停止中でブレーキを踏んでいる場合など、他車両の第2の予測車両位置が自車両への衝突確率が低い場合には、特にコンテンツを用意しない。
【0080】
最後に、判定装置119は、用意されたコンテンツをカーナビゲーション装置100の表示再生装置109に送り、一定時間にわたって表示再生させることにより、ドライバに安全支援情報を提供し(ステップS43)、図8の処理ルーチンを終了する。
【0081】
以上のように、この発明の実施の形態1に係る安全支援情報提供車載システムは、車両に搭載されて道路地図情報を含むカーナビゲーション装置100と、車両の周辺に位置する他車両との間で相互通信を行う(予測車両位置を相互通信する)ための通信装置120と、道路地図情報106に基づいて、車両および他車両の将来の走行位置をそれぞれ予測して予測車両位置を求める車両位置予測装置110と、車両の予測車両位置と他車両の予測車両位置とを比較する判定装置119と、判定装置119の判定結果に基づき安全支援情報を提供する表示再生装置109とを備え、表示再生装置109は、将来の時刻における車両と他車両との各予測車両位置が近い場合に、安全支援情報(所要のコンテンツ)をドライバに提供する。
【0082】
車両位置予測装置110は、カーナビゲーション装置100に内蔵され、判定装置119および通信装置120は、カーナビゲーション装置100から分離されている。
また、道路地図情報106には、通常のカーナビゲーション装置に使用される道路情報に加えて、立体交差の情報が付加されており、立体交差情報は、車両および他車両の各予測車両位置に対応した時刻情報および緯度経度情報に関連して、立体交差の高さ方向の階層情報を含む。
【0083】
車両位置予測装置110は、平面的な予測車両位置に立体的な情報を加えて送信する。
また、車両位置予測装置110は、自車両の予測車両位置に道路の高さ情報を付加して判定装置119に入力し、通信装置120およびアンテナ121を介して他車両に送信する。
これにより、受信側の判定装置119は、自車両および他車両の各予測車両位置および高さ情報を比較して、衝突可能性を判定する。
【0084】
また、道路地図情報106は、車線幅情報を含み、車線幅情報は、車両および他車両の各予測車両位置に対応した時刻情報および緯度経度情報に関連している。
これにより、判定装置119は、車線幅情報に基づいて、車両および他車両の各走行車線の優先/非優先を判定する。
【0085】
また、道路地図情報106は、交差点情報と、一時停止または速度規制を含む規制情報とを含み、車両位置予測装置110は、交差点情報に基づいて、複数の予測車両位置が想定される場合には、複数の予測車両位置に予測確率情報を付与し、通信装置120は、予測確率情報とともに複数の予測車両位置を通信する。
【0086】
また、車両位置予測装置110には、カーナビゲーション装置100による案内中の予定経路情報が入力されている。
また、車両の過去の走行履歴情報111を保持するハードディスク記録装置105(記憶装置)を備え、車両位置予測装置110には、過去の走行履歴情報111が入力されている。
【0087】
また、道路地図情報106は、特定サービス情報(安全支援サービス種類情報)を含み、判定装置119は、特定サービス情報に応じて、現地点における有効な提供サービスを判定する。
また、車両位置予測装置110には、車両のウィンカ情報114、アクセル開度情報、ブレーキ情報、ギア位置情報および重量情報の少なくとも1つの情報が入力されており、さらに信頼性の高い予測車両位置を演算する。
【0088】
また、車両が道路地図情報106に記録されていない道路を走行中であることを判定する走行路判定装置を備え、車両位置予測装置は、車両が道路地図情報に記録されていない道路を走行中と判定された場合には、車両位置予測装置110による道路地図情報106に基づく予測処理を停止させる。
このとき、走行路判定装置は、駐車場の入退場時の決済に利用される通信情報に基づいて車両の走行路を判定する。
【0089】
したがって、この発明の実施の形態1によれば、道路地図情報106に基づく予測車両位置を通信情報とすることにより、立体交差などにおける衝突可能性の誤判定を防ぐことができる。
また、複数の他車両の予測車両位置を、道路地図情報106に基づいてマップマッチング演算をする必要がないので、車両位置予測装置110の演算量を大幅に軽減することができる。
【0090】
また、カーナビゲーション装置100の持つ情報(道路地図情報106など)を利用しなくても、立体交差などの高さ方向の情報も含む予測車両位置のみに基づいて衝突可能性を判定することができるので、判定装置119をカーナビゲーション装置100と別体に構成することができ、カーナビゲーション装置100の外部に判定装置119および通信装置120を追加するのみで、既存のカーナビゲーション装置の性能を大幅に変更することなく、安価に安全支援情報車載システムを構築することができる。
【0091】
また、車両位置予測装置110は、自車両のみの予測車両位置を求めればよいので、通常のカーナビゲーション装置が有するマップマッチング機能を用いて、GPS位置計測装置102aの位置測定結果と道路地図情報106とのずれの補正などが容易であり、走行道路を容易に判定可能なことから、道路地図情報106に付加した立体交差や道路幅などの道路属性を間違えずに入手することができる。
また、車両の加速性能などはあらかじめ分かっているので、アクセル開度情報116から、加速度を考慮した予測車両位置を容易に計算することができる。
さらに、運転特性情報112により、ドライバの運転癖を学習して予測精度を向上させることができるとともに、ナビゲーション動作中のルート案内や、通勤など複数回通っている経路などを参照して、交差点や分岐などでも進路を正確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明の実施の形態1に係る安全支援情報提供車載システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車両位置予測処理を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1により道路地図情報に基づき求めた予測車両位置を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1が適用される駐車場通路と公道との隣接情報を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1における他車両の予測車両位置の情報構造を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態1における自車両の予測車両位置の情報構造を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態1における路側情報の具体的構造を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態1による衝突可能性の判定処理を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1による交差点での衝突可能性の判定処理を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態1による立体交差での衝突可能性の判定処理を示す説明図である。
【図11】従来の安全支援情報提供車載システムによる交差点での安全支援サービスを示す説明図である。
【図12】従来の安全支援情報提供車載システムによる立体交差での安全支援サービスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0093】
10 自車両、11 自車両の予測車両位置、13 自車両の走行道路(衝突可能性のない立体交差の道路)、13A 自車両の走行道路(衝突可能性のない左折道路)、14 自車両の走行道路(衝突可能性のある交差点の道路)、15 駐車場内の自車両、15’ 公道上に誤ってマッチングされた自車両、16、20 他車両、21 他車両の予測車両位置(予測エリア)、23 他車両の走行道路(衝突可能性のない道路)、24 他車両の走行道路(衝突可能性のある交差点の道路)、 100 カーナビゲーション装置、101 GPSアンテナ、102a GPS位置計測装置、102b 自立位置計測装置、105 ハードディスク記録装置、106 道路地図情報、107 ナビゲーションルート検索装置、108 地図・経路表示生成装置、109 表示再生装置、110 車両位置予測装置、111 走行履歴情報、112 運転特性情報、113 車載ネットワーク、114 ウィンカ情報、115 ブレーキ情報、116 アクセル開度情報、117 ギア位置情報、118 ハンドル角情報、119 判定装置、120 通信装置、121 アンテナ、200 他車両の位置予測情報、201 自車両の位置予測情報、203 路側情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて安全支援情報を提供する安全支援情報提供車載システムであって、
前記車両に搭載されて道路地図情報を含むカーナビゲーション装置と、
前記車両の周辺に位置する他車両との間で相互通信を行うための通信装置と、
前記道路地図情報に基づいて、前記車両および前記他車両の将来の走行位置をそれぞれ予測して予測車両位置を求める車両位置予測装置と、
前記車両の予測車両位置と前記他車両の予測車両位置とを比較する判定装置と、
前記判定装置の判定結果に基づき前記安全支援情報を提供する表示再生装置と、
を備え、
前記表示再生装置は、将来の時刻における前記車両と前記他車両との各予測車両位置が近い場合に、前記安全支援情報を提供することを特徴とする安全支援情報提供車載システム。
【請求項2】
前記車両位置予測装置は、前記カーナビゲーション装置に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項3】
前記通信装置および前記判定装置は、前記カーナビゲーション装置から分離されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項4】
前記道路地図情報は、立体交差情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項5】
前記立体交差情報は、前記車両および前記他車両の各予測車両位置に対応した時刻情報および緯度経度情報に関連して、立体交差の高さ方向の階層情報を含むことを特徴とする請求項4に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項6】
前記道路地図情報は、車線幅情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項7】
前記車線幅情報は、前記車両および前記他車両の各予測車両位置に対応した時刻情報および緯度経度情報に関連していることを特徴とする請求項6に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項8】
前記判定装置は、前記車線幅情報に基づいて、前記車両および前記他車両の各走行車線の優先/非優先を判定することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項9】
前記道路地図情報は、交差点情報と、一時停止または速度規制を含む規制情報とを含むことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項10】
前記車両位置予測装置は、前記交差点情報に基づいて、複数の予測車両位置が想定される場合には、前記複数の予測車両位置に予測確率情報を付与し、
前記通信装置は、前記予測確率情報とともに前記複数の予測車両位置を通信することを特徴とする請求項9に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項11】
前記車両位置予測装置には、前記カーナビゲーション装置による案内中の予定経路情報が入力されていることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項12】
前記車両の過去の走行履歴情報を保持する記憶装置を備え、
車両位置予測装置には、前記過去の走行履歴情報が入力されていることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項13】
前記道路地図情報は、安全支援サービス種類情報を含み、
前記判定装置は、現地点における有効な提供サービスを判定することを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項14】
前記車両位置予測装置には、前記車両のウィンカ情報、アクセル開度情報、ブレーキ情報、ギア位置情報および重量情報の少なくとも1つの情報が入力されていることを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項15】
前記車両が前記道路地図情報に記録されていない道路を走行中であることを判定する走行路判定装置を備え、
前記車両位置予測装置は、前記車両が前記道路地図情報に記録されていない道路を走行中と判定された場合には、前記道路地図情報に基づく予測処理を停止することを特徴とする請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の安全支援情報提供車載システム。
【請求項16】
前記走行路判定装置は、駐車場の入退場時の決済に利用される通信情報に基づいて前記車両の走行路を判定すること特徴とする請求項15に記載の安全支援情報提供車載システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−97413(P2008−97413A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279895(P2006−279895)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】