説明

帯状体の表面欠陥検査装置

【課題】帯状体表面の欠陥を、蛇行しているときにも検出できること、及び欠陥の大きさ、種類、形状も認識できること。
【解決手段】ガイドロール(4)(5)に巻装されて走行する磁気テープ(3)に対向して配設されるラインCCDカメラ(6a、6b、6c、6d、6e)と、磁気テープ(3)を照射する光照射手段(9)と、磁気テープ(3)の走行速度を検出するパルス発生器(11)と、ラインCCDカメラの撮像した画像を処理する画像処理手段(7a、7b、7c)とを具備し、画像処理手段(7a、7b、7c)は少なくとも磁気テープ(3)の一方の縁部と表面上の欠陥を認識させ、パルス発生器(11)の出力に基づく磁気テープ(3)の走行方向における欠陥の位置と、縁部から欠陥までの距離とを演算するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯状体、例えば磁気テープの表面欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に磁気テープはこれまで何らかの方法で表面の欠陥が検査されている。例えば、特開2004−191370号公報では、「磁気テープ等の表面欠陥を高SNRで検出する」ことを課題として「表面欠陥検出装置は、磁気テープの表面に、CCDラインカメラによる帯状検査領域を設定し、検査光照射装置から光を照射して、帯状検査領域の外側に隣接してテープ幅方向に長い帯状の光源像領域を形成し、更に、磁気テープの表面に直交し、且つ、光源像領域の幅方向中心線を含む第1の仮想平面に対して、CCDラインカメラのカメラ光軸を傾斜角βが0<β≦10°となるように傾けて設定し、光の照射光軸がCCDラインカメラの鏡像位置を通り、且つ、光出射口から帯状検査領域の幅方向中心を通る設定直線とカメラ光軸のカメラ対称光軸とのなす傾斜角αが0<α<25°となるように設定し、CCDラインカメラでの受光信号が一定レベル以上になるとき、判定装置において欠陥検出信号を出力させる」ようにしている。
【0003】
また、特開2004−30752号公報では「磁気テープ等の表面欠陥を高SNRで検出する」ことを課題として「磁気テープの表面に帯状検査領域を設定し、この帯状検査領域を含む照射領域に、検査光照射装置から光La、Lbを照射して、帯状検査領域の両外側に隣接してテープ幅方向に長い帯状の光源像領域を形成し、更に、磁気テープの表面に直交し且つ光源像領域の幅方向中心線を含む第1の仮想平面に対してCCDラインカメラのカメラ光軸を傾斜角βが0<β≦10°となるように傾けて設定し、光La、Lbの照射光軸がCCDラインカメラの鏡像位置を通り且つ光出射口から帯状検査領域の幅方向中心を通る設定直線とカメラ光軸のカメラ対称光軸とのなす傾斜角αが、0<α<25°となるように設定し、CCDラインカメラでの受光信号が一定レベル以上になるとき、判定装置において欠陥検出信号を出力」するようにしている。
【0004】
また、特開平9−127011号公報では、「磁気記録媒体の表面に存する欠陥や不良個所を高速且つ高精度で検査することのできる磁気記録媒体の表面検査方法及び装置の提供」を課題として、「一定幅を有する長尺状磁気記録媒体を一方方向に走行させ、走行中に該磁気記録媒体に磁気的手段及び光学的手段を連続的に施し、該磁気記録媒体表面の欠陥を検出する」ようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−191370号公報
【特許文献2】特開2004−30752号公報
【特許文献3】特開平9−127011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の従来技術(特開2004−191370号公報及び特開2004−30752号公報)ではラインCCDカメラからの受光信号の強度が検査領域における無欠陥部分からの入射光による受光信号の強度よりも一定値以上大きいとき欠陥検出信号を出力する判定をしている。欠陥の大きさ、形、種類を識別することはできない。また磁気テープが走行中に蛇行すると縁部近くの表面欠陥を検査することはできなかった。また一方の従来技術(特開平9−127011号公報)では磁気的手段および光学的手段により欠陥を検出しているがやはりは同様な問題がある。本発明は帯状体が走行中に蛇行しても、縁部近くの欠陥も検査でき、欠陥の大きさ、形、種類も識別できる帯状体の表面欠陥検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題は、ガイドロールに巻装されて走行する帯状体に対向して配設される撮像手段と、前記帯状体を照射する光照射手段と、前記帯状体の走行速度を検出する速度検出手段と、前記撮像手段の撮像した画像を処理する画像処理手段とを具備し、前記画像処理手段は少なくとも前記帯状体の一方の縁部と表面上の欠陥を認識させ、前記速度検出手段の出力に基づく前記帯状体の走行方向における前記欠陥の位置と、前記縁部から前記欠陥までの距離とを演算するようにしたことを特徴とする帯状体の表面欠陥検査装置によって解決される。
【発明の効果】
【0008】
帯状体が蛇行しても縁部近くの欠陥も検査できる。形状や大きさも認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、図1を参照して、本発明の基本的構成について説明する。
【0010】
供給ロール1には磁気テープ3が巻装されており巻き取りリール2に巻き取られる。図示せずとも供給ロール1、巻き取りロール2には駆動モータが取り付けられており、この駆動と共に供給ロール1、巻き取りロール2が回転し、磁気テープ3が供給ロール1から巻きだされ、ガイドロール4,5に沿って走行し、巻き取りロール2に順次、巻き取られる。本発明では、この走行途上で、磁気テープ3の表面の欠陥が検査される。
【0011】
ガイドロール4の上方にはラインCCDカメラ6が図示しない静止物に取り付けられている。ラインCCDカメラ6には画像取り込みハードウェア7が接続され、これはコンピュータ8内に内蔵される。数千ライン分を一枚の画像データとしてコンピュータ8に転送する。
【0012】
照明器9からの光は磁気テープ3の表面を照射する。パソコン8に接続される照明電源ユニット10はライトガイド16を介して照明器9に接続されている。ガイドロール4にはパルス発生器11が取り付けられる。これはガイドロール4の回転速度に比例した数のパルスを発生する。このパルスはコンピュータ8に供給され、テープ走行速度が演算され、検出された欠陥の走行方向における位置を特定する。
【0013】
またコンピュータ8にはモニター12が接続され、図の下方に示すような外観を呈するものである。コンピュータ8には欠陥マップ作成プログラムが内臓され、ここで欠陥マップが表示されるようになっている。
【0014】
またラインCCDカメラ6は、適正な画像が得られるようにX、Y、ゴニオ及び回転ステージ(図示せず)で位置調整されるようになっている。
【0015】
次に、本発明の実施の形態による磁気テープの表面欠陥装置を図2を参照して説明する。
【0016】
磁気テープ3は1/2インチ幅であり、ガイドロール4,5に図示するように巻かれて、ワインダ、リワインダの駆動モータの起動信号とともに検査を開始する。磁気テープ3は矢印で示す方向に走行する。ラインCCDカメラ6a、6bはガイドロール4が磁気テープ3に密着している部分の直上方に配設され、同様に、ラインCCDカメラ6c、6dはガイドロール5が磁気テープ3に密着している部分の直上方に配設されている。また磁気テープ3は図示しない張力調節機構により張設されているが図示した磁気テープ3の最下流側の上方には一台のラインCCDカメラ6eが配設されている。以上のラインCCDカメラ6a、6b、6c、6d、6eの撮像領域Aは図示する通りであるがラインCCDカメラ6eの撮像領域Aの下方には線状照明器15が配設されており磁気テープ3の欠陥としての孔を検査するようにしている。すなわち透過光をラインCCDカメラ6eは観測するようにしている。なお、図1で示したライトガイド9は図2では図示省略している。
【0017】
ラインCCDカメラ6a、6b、6c、6d、6eはそれぞれ画像取り込みハードウェア7a、7b、7cに接続されているが、これ等はコンピュータ8a、8b、8cに内蔵されている。パルス発生器11はガイドロール4の回転速度に比例したパルス数を発生するが、カウンタユニット13はこれをカウントする。これもコンピュータ8cに内臓されるが、この出力から演算されるテープ速度を表す速度信号は他のコンピュータ8a、8bに供給される。
【0018】
図3は以上の欠陥検査装置に適用される実際の構成要素及び配置構成を示すが、図において磁気テープ3は図示省略している。
【0019】
ラインCCDカメラ6は静止物に固定されている。これに対向して磁気テープ(図示省略)が走行しているのであるが、ラインCCDカメラ6の焦点から磁気テープまでの距離は295mmである。ガイドロール4,5には磁気テープが巻かれているのであるが、照明器具9の光源からの距離は20mm〜30mmであり、この光軸とラインCCDカメラ6の光軸とのなす角度は30度とされている。ライトガイド16には多数の光ファイバが通されている。
【0020】
コンピュータ8には上述した以外に、画像検査エリア確定部、ラインCCDカメラの受光量の閾値による2値化処理部、粒子解析処理部、パラメータによる欠陥判定部、マップ作成のためのデータ保存部、照射強度調節部などを内蔵している。
【0021】
本発明の実施態様は以上のように構成されるがつぎにその作用について説明する。
【0022】
本発明は磁気テープ生産工程にインラインで取り付け可能なシステムであるが、各検査パラメータ、モデル、ロットなどの必要な情報がコンピュータ8に設定される。ラインCCDカメラ6はX,Y軸、ゴニオ、および回転ステージを適正な画像が得られるように表示器12をみながら調整する。またラインCCDカメラ6が受ける光量が適正になるようにコンピュータ8の照射強度調節部で調整する。
【0023】
本実施の形態によれば、ガイドロール4,5で磁気テープ3は反転されるので表裏面を検査することができる。
【0024】
供給ロール1及び巻き取りロール2の起動信号に同期して検査を開始する。磁気テープ3は走行中にわずかに蛇行するが、本発明の実施の形態によれば、図4A,Bで示すように常に監視される。すなわちAは磁気テープ3が走行方向に関し右側に寄った場合を示しBは左側に寄った場合を示す。黒い帯部分は空間を示すものである。
【0025】
本発明によれば、常に磁気テープ3の縁部もしくはエッジ3aまたは3bから欠陥aまでの距離bが測定される。
【0026】
磁気テープ3は極めて薄いので、テープ走行速度によっては、あるいは周囲の環境によっては両縁部がひらひらすることがある。これによってこれら部分が黒く写る場合がある。すなわち欠陥と誤認識する恐れがある。図5で示すようにこれを防止するためにソフト的に両縁部に所定幅のマスク処理dが行われる。欠陥の検査対象は磁気テープ幅−マスク処理cとされる。マスク処理幅cは勿論、任意に変更可能である。周囲環境によってはマスク幅cは0で、磁気テープ全幅で検査可能である。
【0027】
また本発明の実施の形態によれば、画像を取り込むバッファを2個有し、片方のバッファで画像を取り込んでいる間に、他方のバッファで既に取り込んでいる画像データに対して検査処理を行うことを繰り返しているので画像データ処理を極めて早く行うことができる。
【0028】
以上のようにして、磁気テープの走行時の蛇行追従機能により従来、困難であったエッジ近傍の欠陥検査が可能となった。検査性能は磁気テープ3の6m/秒の走行時、走行方向分解能は約180μm でこれは業界最高分解能である。また幅方向分解能は約30μmである。
【0029】
コンピュータ8内では欠陥マップが作成され、欠陥画像データが保存される。またこれらは、表示器12で表示され、欠陥の種類および発生箇所の情報をリアルタイムで提供する。ラインCCDカメラ6eからは欠陥としての孔情報が得られる。
【0030】
またコンピュータ8では粒子解析も行われ欠陥の形状は厳密に解析される。表示器12ではボタンfを押して欠陥画像を切り出しトリミングして見せることができる。
【0031】
また欠陥検出処理をソフトウエアで行っているので、装置の大規模な変更なしに様々な検査仕様に対応することができる。
【0032】
以上本発明の実施の態様について説明したが、もちろん本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて、種々の変形が可能である。
【0033】
例えば、以上の実施の形態では、帯状体として磁気テープを説明したが、図6で示すようなリチウムイオンバッテリー電極部材Mにも本発明は適用可能である。
【0034】
電極部材貼り付けシート20は帯状であるが、この表裏面にはあるピッチで電極部材21が貼られている。
【0035】
リチウムイオンバッテー電極部材Mは図示しないガイドロールに案内されて一方向へと走行しているがこの上方および下方にはカメラ23と光源24とが対として配設されている。光源24はリチウムイオンバッテリー電極部材Mを照射し、その反射光をカメラ23が受光する。カメラ23には上述の実施の形態と同様に画像取り込みハードウェアが接続されている。
【0036】
また孔明き検出用のカメラ25と光源26とは上下に整列して配設されている。欠陥としての孔22を光源26からの光線が透過することによりカメラ25が受光し孔検出する。
【0037】
また、以上の実施の形態ではラインCCDカメラ6は磁気テープ3の上方に1台または2台が配設されたが、台数はこれに限定されることなく3台以上であっても良い。
【0038】
また以上の実施の形態では磁気テープ3は1/2インチ幅であったが更に大きい、または更に小さい幅の磁気テープにも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の基本的構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態の磁気テープ表面欠陥検査装置の斜視図。
【図3】各構成要素の配置構成を示す斜視図。
【図4】磁気テープの蛇行監視作用を示す模式図で、Aは右側に寄った場合、Bは左側に寄った場合を示す。
【図5】エッジ部分誤認識対策を示す模式図。
【図6】変形例を示す側面図。
【符号の説明】
【0040】
3・・・磁気テープ、4・・・ガイドロール、5・・・ガイドロール、6・・・ラインCCDカメラ、7・・・画像取り込みハードウェア、7a、7b、7c・・・画像取り込みハードウェア、8・・・コンピュータ、8a、8b、8c・・・コンピュータ、9・・・照明器、11・・・パルス発生器、12・・・表示器、15・・・線状照明器、16・・・ライトガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドロールに巻装されて走行する帯状体に対向して配設される撮像手段と、
前記帯状体を照射する光照射手段と、
前記帯状体の走行速度を検出する速度検出手段と、
前記撮像手段の撮像した画像を処理する画像処理手段とを具備し、
前記画像処理手段は少なくとも前記帯状体の一方の縁部と表面上の欠陥を認識させ、
前記速度検出手段の出力に基づく前記帯状体の走行方向における前記欠陥の位置と、前記縁部から前記欠陥までの距離とを演算するようにしたことを特徴とする帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記ガイドロールは複数個でなり、前記帯状体の表裏を反転走行させることを特徴とする請求項1に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記光照射手段は前記帯状体を下方から光を照射する下方光照射部を含み、この下方光照射部によって孔が前記欠陥として認識されることを特徴とする請求項1に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
前記撮像手段はラインCCDカメラであることを特徴とする請求項1に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段は一対のラインCCDカメラから成り一方のカメラで前記帯状体の一方の縁部を認識させ他方のカメラで他方の縁部を認識させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項6】
前記速度検出手段は前記ガイドローラに取り付けられたパルス発生器であり、このパルス発生器により前記ガイドローラの回転数をカウントすることにより前記帯状体の走行速度を演算するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項7】
前記画像処理手段、前記速度検出手段の出力に基ずく前記走行速度の演算部、前記光照射手段の照射強度調整手段はコンピュータに内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項8】
前記画像処理手段は画像データ取り込みバッファを2個有することを特徴とする請求項7に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。
【請求項9】
前記コンピュータは検査エリア確定部、受光量の閾値による2値化処理部、粒子解析処理部、パラメータによる欠陥判定部、マップ作成のためのデータ保存部を有することを特徴とする請求項8に記載の帯状体の表面欠陥検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−240290(P2007−240290A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62035(P2006−62035)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】