説明

形態測定装置および形態測定方法

【課題】薄板を傷付けることなく且つ反りを生じることなくセットステージに載置することができると共に、セットステージへの固定および固定解除を瞬時に行うことができる形態測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】帯電性を有する薄板W上に形成された薄膜の形態および帯電性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、非接触で測定する形態測定装置1において、薄板Wをセットするセットステージ4と、セットステージ4にセットした薄板Wに非接触で臨み、薄膜の形態または薄板の表面の形態を測定する測定器6と、を備え、セットステージ4には、薄板Wを静電吸着する静電吸着機構5が組み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板上に形成された薄膜の形態および薄板の表面の形態のいずれかを、非接触で測定する形態測定装置および形態測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板をセットステージに固定する方法として、セットステージ上に載置された薄板を真空吸着するものが知られている(特許文献1参照)。この方法では、薄板をセットステージ上に載置した後、真空ポンプによる吸引駆動を行って薄板を吸着固定するため、薄板に反りを生じさせることなく固定させることができ、また、押え冶具やクランパなどで薄板を固定する必要もないため薄板を傷つけることもない。
【特許文献1】特開2000−312989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような構成では、吸着固定後に薄板に処理を行う場合、薄板の載置時から吸着固定時までの時間が処理作業におけるタイムロスとなってしまう。すなわち、薄板を載置してから真空ポンプを吸引駆動するため、薄板を吸着固定するまで時間が掛かってしまう。同様に、吸着固定した薄板に所望の処理を行った後、処理後の薄板の吸着固定時から吸着解除時までの時間においても、タイムロスとなってしまう。これにより、処理作業の作業効率が悪くなる問題があった。また薄板に貫通孔や裏面に溝等の3次元加工がなされていたり、紙等の多孔性素材の場合は、所望の真空吸着が望めない。かといって、セットステージ上に単に載置しただけでは、反りや浮きが生じやすい薄板に対して、再現性ある精度の良い測定は望めない。
【0004】
本発明は、反りや浮きが生じやすい薄板に対しても、薄板を傷付けることなく且つ反りを生じることなくセットステージに載置することができると共に、測定に際し、薄板の表面の高さ方向の位置合わせ・焦点合わせ等が容易または不要となり、セットステージへの固定および固定解除を瞬時に行うことができ、かつ再現性ある精度の高い測定が可能となる形態測定装置および形態測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の形態測定装置は、帯電性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および帯電性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、非接触で測定する形態測定装置において、薄板をセットするセットステージと、セットステージにセットした薄板に非接触で臨み、薄膜の形態または薄板の表面の形態を測定する測定器と、を備え、セットステージには、薄板を静電吸着する静電吸着機構が組み込まれていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の形態測定方法は、帯電性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および帯電性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、測定器により非接触で測定する形態測定方法において、薄板を静電吸着する静電吸着機構を組み込んだセットステージに、薄板をセットし、この状態で、測定器による測定を行うことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、薄板をセットステージにセットすると同時に、セットステージに薄板を静電吸着させることができるため、薄板に反りを生じさせることなく且つ薄板を傷付けることなく、薄板のセット作業をスピーディーに行うことができる。また、測定に際し、薄板の表面の高さ方向の位置合わせ・焦点合わせ等が容易または不要となる。これにより、測定作業におけるタクトタイムを短縮することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0008】
この場合、薄膜の形態には、薄膜の膜厚、膜構造、光学定数、表面形状および表面粗さのうち少なくとも1つが含まれ、薄板の表面の形態には、光学定数、表面形状および表面粗さのうち少なくとも1つが含まれていることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、薄膜の膜厚、膜構造(赤外吸収スペクトル)、薄膜または薄板の表面の光学定数(屈折率、消衰係数)、表面形状および表面粗さを測定することで、薄膜が薄板上に均一な厚さで形成されているか、または、薄膜および薄板の表面が、どんな光学定数を有しているか、またはどんな表面形状・粗さなのか、さらには、どんな官能基で物質が構成されているかを再現性ある精度の高い方法で測定することができる。
【0010】
この場合、測定器が、光学的測定器および分光学的測定器のいずれかであることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、薄膜の形態の測定において、薄膜にダメージを与えることなく、常温常圧の状態で薄膜を測定することができる。なお、薄膜の膜厚を測定する場合は、光学的測定器として、光干渉式の膜厚計、分光学的測定器として、エリプソメトリー法により測定する測定機器を用いることが好ましく、薄膜の光学定数(屈折率、消衰係数)は、分光学的測定器として、エリプソメトリー法により測定する測定機器を用いることが好ましく、薄膜の表面形状・粗さは光学的測定器として、顕微鏡を用いることが好ましく、膜構造(赤外吸収スペクトル)を測定する場合は、赤外分光法により測定する測定機器を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の他の形態測定装置は、磁性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および磁性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、非接触で測定する形態測定装置において、薄板をセットするセットステージと、セットステージにセットした薄板に非接触で臨み、薄膜の形態または薄板の表面の形態を測定する測定器と、を備え、セットステージには、薄板を磁着する磁気吸着機構が組み込まれていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の形態測定方法は、磁性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および磁性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、測定器により非接触で測定する形態測定方法において、薄板を磁着する磁気吸着機構を組み込んだセットステージに、薄板をセットし、この状態で、測定器による測定を行うことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、薄板をセットステージにセットすると同時に、セットステージに薄板を磁着させることができるため、薄板のセット作業をスピーディーに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本実施形態に係る形態測定装置について説明する。この形態測定装置は、金属材料で構成された薄板形状のワークに成膜された薄膜の膜厚を測定するものである。
【0016】
図1に示すように、形態測定装置1は、ベッド2と、ベッド2中央に設けられたXYθテーブル3と、XYθテーブル3に移動自在に搭載されたセットステージ4と、セットステージ4内に組み込んだ静電吸着機構5と、セットステージ4にセットされたワークWに上方から臨む光学測定系6(測定器)と、光学測定系6を支持する逆「U」字状の支持部材8と、を備えており、パソコン等の制御装置7により、装置全体が統括制御されている。
【0017】
XYθテーブル3は、ベッド2上に固定したモータ駆動のX軸テーブル10と、X軸テーブル10上に搭載したモータ駆動のY軸テーブル11と、Y軸テーブル11上に搭載され、セットステージ4を介してワークWを角度回転させるモータ駆動のθテーブル12と、を有している。XYθテーブル3は、セットステージ4にワークWがセットされると、制御装置7の制御に基づいて、セットステージ4にセットしたワークWを光学測定系6に臨ませるべく、θテーブル12を回転駆動させると共に、X軸テーブル10およびY軸テーブル11を適宜駆動させる。
【0018】
セットステージ4は、長方形の厚板状に形成されており、その上面にセットされるワークWを位置決めする一対の位置規制部材15を有している。一対の位置規制部材15は、それぞれ「L」字状に形成されており、セットされるワークWの後方2隅を位置決めするよう配置されている(図2参照)。なお、一対の位置規制部材15は、大きさのことなるワークWを位置決めセットできるように、左右方向(X軸方向)に位置調整可能に構成されていることが、好ましい。また、位置規制部材15は、必要に応じて一方のみの構成でも構わない。なお、図1では長方形のワークを対象にセットステージ4は形成されているが、円形ワークを対象に、円形のステージであっても良い。また、ワーク形状に応じて、ステージが形成されていれば、測定に支障の無い範囲でステージに段差があっても良い。
【0019】
光学測定系6は、例えば、エリプソメータ等の光学測定器を用いており、支持部材8の前面に配置されると共に、セットされるワークWの上方に非接触の状態で臨んでいる。光学測定系6は、入射光をワークWに向けて照射する光源ユニット21と、ワークWから反射された反射光を受光して、受光結果を制御装置7に入力する受光ユニット22と、を備えている。光源ユニット21からワークWに向けて入射光が照射されると、入射光は、ワークWにより反射され、反射された反射光は、受光ユニット22へ入射する。この後、受光ユニット22は受光結果を制御装置7に入力し、制御装置7は、照射した入射光と、反射した反射光に基づいて薄膜の厚さ等を測定する。なお、測定作業は、入射光を照射しながら、ワークWをXYθテーブル3により移動させて、ワークWの各部を随時測定してもよいし、あるいは、ワークW上における特定のポイントのみを測定してもよい。
【0020】
図2に示すように、静電吸着機構5は、双極方式を用いており、セットステージ4内部には、例えば、陽極26と陰極27とが櫛歯状に配置され、セットステージ4の表面に、プラスおよびマイナスの静電気(帯電)が交互に生ずる構成になっている。このため、小さなワークの吸着も可能となる。なお、各電極26、27と電源装置との間にはスイッチ(スイッチング素子:図示省略)が設けられており、制御装置7によってスイッチのON/OFF動作が制御されている。すなわち、ワークWがセットステージ4に位置決めされた状態でセットされると、制御装置7は、スイッチをオンにすることで、静電吸着機構5によりワークWを瞬時にセットステージ4に吸着固定する。この状態を維持したまま、光学測定系6による測定作業が行われ、この後、測定作業が終了すると、スイッチをオフにして瞬時に吸着固定を解除する。なお、静電吸着機構5は、セットステージ4の一方の半面を例えばプラスに帯電させ、他方の半面をマイナスに帯電させるような構成であってもよい。
【0021】
このような構成によれば、ワークWの吸着固定および吸着解除を瞬時に行うことができ、また、測定の際に、ワーク表面の高さ方向の位置合わせ・焦点合わせ等が容易または不要となるため、測定作業におけるタクトタイムを短縮することができ、作業効率を向上させることができる。また、セットステージ4への固定に際し、ワークWの表面に接触することなくハンドリングを行うことができるため、ワークWに傷を付けることがなく、更に、反りを生ずることもないため再現性ある精度の高い測定が可能となる。なお、本実施形態では、エリプソメータを用いることにより、膜厚を測定したが、赤外分光光度計を用いて、薄膜の膜構造(赤外吸収スペクトル)を測定してもよい。また、本実施形態の形態測定装置は、薄板の表面の形態を測定する装置にも適用可能である。この場合には、薄板の表面形状や、表面粗さ等を測定することができる。
【0022】
次に、第2実施形態の形態測定装置1について説明する。なお、重複した記載を避けるため、異なる部分についてのみ説明する。図示は省略するが、この形態測定装置1は、静電吸着機構5に代えて、磁気吸着機構を有している。この場合、形態測定装置1に用いられるワークWは磁性を有した構成となっている。磁気吸着機構は、例えば、電磁石等を用いており、電磁石は上記と同様にスイッチを介して電源装置に接続されている。セットステージ4にワークWがセットされると、制御装置7によりスイッチがオンとなり、ワークWを瞬時に吸着固定する。この後、測定作業が行われ、測定作業が終了すると、スイッチをオフにして瞬時に吸着固定を解除する。このような構成においても、ワークWの吸着固定および吸着解除を瞬時に行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る形態測定装置の斜視図である。
【図2】セットステージの上面図である。
【符号の説明】
【0024】
W…ワーク 1…形態測定装置 4…セットステージ 5…静電吸着機構 6…光学測定系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および帯電性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、非接触で測定する形態測定装置において、
前記薄板をセットするセットステージと、
前記セットステージにセットした前記薄板に非接触で臨み、前記薄膜の形態または前記薄板の表面の形態を測定する測定器と、を備え、
前記セットステージには、前記薄板を静電吸着する静電吸着機構が組み込まれていることを特徴とする形態測定装置。
【請求項2】
前記薄膜の形態には、前記薄膜の膜厚、膜構造、光学定数、表面形状および表面粗さのうち少なくとも1つが含まれ、前記薄板の表面の形態には、光学定数、表面形状および表面粗さのうち少なくとも1つが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の形態測定装置。
【請求項3】
前記測定器が、光学的測定器および分光学的測定器のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の形態測定装置。
【請求項4】
磁性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および磁性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、非接触で測定する形態測定装置において、
前記薄板をセットするセットステージと、
前記セットステージにセットした前記薄板に非接触で臨み、前記薄膜の形態または前記薄板の表面の形態を測定する測定器と、を備え、
前記セットステージには、前記薄板を磁着する磁気吸着機構が組み込まれていることを特徴とする形態測定装置。
【請求項5】
帯電性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および帯電性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、測定器により非接触で測定する形態測定方法において、
前記薄板を静電吸着する静電吸着機構を組み込んだセットステージに、前記薄板をセットし、
この状態で、前記測定器による測定を行うことを特徴とする形態測定方法。
【請求項6】
磁性を有する薄板上に形成された薄膜の形態および磁性を有する薄板の表面の形態のいずれかを、測定器により非接触で測定する形態測定方法において、
前記薄板を磁着する磁気吸着機構を組み込んだセットステージに、前記薄板をセットし、
この状態で、前記測定器による測定を行うことを特徴とする形態測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−232486(P2007−232486A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52734(P2006−52734)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】