説明

形状測定装置、形状測定方法、及びそのプログラム

【課題】検出部を被検物に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合の測定速度を向上させることができる形状測定装置を提供する。
【解決手段】形状測定装置は、被検物に対しての相対位置が変更されて被検物の表面の形状を検出する検出部(20)と、検出部により検出された被検物の表面の形状の変位を示す情報に基づいて、被検物に対して検出部が相対的に静止しているか否かを判定する判定部(静止判定部58)と、判定部により検出部が相対的に静止していると判定された場合の形状に基づいて、被検物の表面の形状データを算出する算出部(座標算出部53)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置、形状測定方法、及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検物の三次元形状を測定する形状測定装置には、検出部から被検物までの距離を保ち、被検物の形状に沿って、検出部を移動させて測定するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、このような三次元形状を測定する方法として、被検物にライン状の測定光を照射して被検物の断面形状に対応して形成される光切断線から被検物の三次元形状を測定する光切断法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−160084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、形状測定装置において、検出部を被検物に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合、停止させた際に移動によって生じる残留振動により検出部を支持する各構造体に撓みが生じ、アッベの誤差が発生する場合がある。そのため、形状測定装置において、この停止させた際に生じる残留振動による影響を削減するために、検出部を被検物に対して停止させた後、該残留振動が充分に減衰するまで余裕を持った時間待ってから測定した場合、測定に時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、検出部を被検物に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合の測定速度を向上させることができる形状測定装置、形状測定方法、及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明は、被検物に対しての相対位置が変更されて前記被検物の表面の形状を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記被検物の表面の形状の変位を示す情報に基づいて、前記被検物に対して前記検出部が相対的に静止しているか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合の前記形状に基づいて、前記被検物の表面の形状データを算出する算出部と、を備えることを特徴とする形状測定装置である。
【0007】
また、本発明は、形状測定装置における形状測定方法であって、被検物に対しての相対位置が変更されて前記被検物の表面の形状を検出する検出手順と、前記検出手順により検出された前記被検物の表面の形状の変位を示す情報に基づいて、前記被検物に対して前記検出部が相対的に静止しているか否かを判定する判定手順と、前記判定手順により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合の前記形状に基づいて、前記被検物の表面の形状データを算出する算出手順と、を備えることを特徴とする形状測定方法である。
【0008】
また、本発明は、形状測定装置が備えるコンピュータに、被検物に対しての相対位置が変更されて前記被検物の表面の形状を検出する検出手順と、前記検出手順により検出された前記被検物の表面の形状の変位を示す情報に基づいて、前記被検物に対して前記検出部が相対的に静止しているか否かを判定する判定手順と、前記判定手順により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合の前記形状に基づいて、前記被検物の表面の形状データを算出する算出手順と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、形状測定装置は、検出部を被検物に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合の測定速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による三次元形状測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態による測定機本体と制御ユニットとのブロック図である。
【図3】アッベの誤差を説明する模式図である。
【図4】本実施形態による形状測定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による三次元形状測定装置(形状測定装置)100の概略構成を示す模式図である。
三次元形状測定装置100は、測定機本体1と制御ユニット40(図2)とを備えている。
図2は、本発明の一実施形態による測定機本体1と制御ユニット40とのブロック図である。
【0012】
図1に示されるように、測定機本体1は、水平な上面(基準面)を備えている基台2と、この基台2上に設けられ、測定ヘッド(支持部)13を支持して移動させる移動部10と、基台2上に設けられ被検物3を載置する支持装置30とを備えている。
この基台2の基準面を基準とする直交座標系を定義する。互いに直交するX軸とY軸とが基準面に対して平行に定められ、Z軸が基準面に対して直交する方向に定められている。また、基台2には、Y方向(紙面に垂直な方向でこれを前後方向とする)に延びるガイドレール(不図示)が設けられている。
【0013】
移動部10は、そのガイドレール上をY方向に移動自在に設けられ、支柱10aと、支柱10aと対をなす支柱10bとの間で水平に延びるように架け渡された水平フレーム10cとを備え、門型の構造体を形成している。また、移動部10は、水平フレーム10cにおいて、X方向(左右方向)に移動自在に設けられたキャリッジ(不図示)を備えており、そのキャリッジに対してZ方向(上下方向)に移動自在に設けられた測定ヘッド13を備えている。
【0014】
測定ヘッド13の下部には、被検物3の形状を検出する検出部20が設けられている。この検出部20は、検出部20の下方に配置される被検物3との距離を検出するように、測定ヘッド13に支持されている。測定ヘッド13の位置を制御することにより、検出部20の位置を移動させることができる。
【0015】
また、移動部10の内部には、入力される駆動信号に基づき測定ヘッド13を3方向(X、Y、Z方向)に電動で移動させるヘッド駆動部14(図2)と、測定ヘッド13の座標を検出し測定ヘッド13の座標値を示す信号を出力するヘッド位置検出部(移動位置検出部)15(図2)と、が設けられている。
【0016】
基台2上には、支持装置30が設けられている。支持装置30は、被検物3を載置して把持するステージ(設置部)31と、直交する2方向の回転軸周りにステージ31を回転(揺動)可能に支持することによりステージ31を基準面に対して傾斜または水平回転させる支持テーブル(傾斜回転部)32とを備えている。支持テーブル32は、垂直(Z軸方向)に延びる回転軸θを中心として水平面内で回転(揺動)可能、且つ、水平(X軸方向)に延びる回転軸φを中心として回転(揺動)可能(基準面に対して傾斜可能)にステージ31を支持している。また、支持装置30には、入力される駆動信号に基づきステージ31を回転軸θ、φ回りに電動でそれぞれ回転駆動させるステージ駆動部33(図2)と、ステージ31の座標を検出し、ステージ座標値を示す信号を出力するステージ位置検出部(傾斜回転位置検出部)34(図2)とが設けられている。
【0017】
制御ユニット40は、制御部41と、入力装置42と、ジョイスティック43と、モニタ44とを備える。
制御部41は、測定機本体1を制御する。その詳細は後述する。入力装置42は、各種指示情報を入力するキーボードなどである。ジョイスティック43は、測定ヘッド13の位置及びステージ31の回転位置を指定する情報を入力するための入力装置である。モニタ44は、計測画面、指示画面、計測結果等を表示する。
【0018】
続いて、図2を参照し、測定機本体1の構成について説明する。
測定機本体1は、駆動部16と、位置検出部17と、検出部20とを備えている。
【0019】
駆動部16は、前述のヘッド駆動部14とステージ駆動部33とを備えている。
ヘッド駆動部14は、支柱10a、10bをY方向に駆動するY軸用モータ、キャリッジをX方向に駆動するX軸用モータ、及び測定ヘッド13をZ方向に駆動するZ軸用モータを備えている。ヘッド駆動部14は、後述の駆動制御部54から供給される駆動信号を受け取る。ヘッド駆動部14は、その駆動信号に基づき測定ヘッド13を3方向(X、Y、Z方向)に電動で移動させる。
【0020】
ステージ駆動部33は、ステージ31を回転軸θ回りに回転駆動するロータリ軸用モータ及び回転軸φ回りに回転駆動するチルト軸用モータを備える。ステージ駆動部33は、駆動制御部54から供給される駆動信号を受け取る。ステージ駆動部33は、その駆動信号に基づきステージ31を回転軸θ、φ回りに、電動でそれぞれ回転させる。
【0021】
位置検出部17は、前述のヘッド位置検出部15と、ステージ位置検出部34とを備えている。
ヘッド位置検出部15は、測定ヘッド13のX軸、Y軸、及びZ軸方向の位置をそれぞれ検出するX軸用エンコーダ、Y軸用エンコーダ、及びZ軸用エンコーダを備えている。ヘッド位置検出部15は、それらのエンコーダによって測定ヘッド13の座標を検出し、測定ヘッド13の座標値を示す信号を後述の座標検出部51へ供給する。
【0022】
ステージ位置検出部34は、ステージ31の回転軸θ、φ回りの回転位置をそれぞれ検出するロータリ軸用エンコーダ及びチルト軸用エンコーダを備えている。ステージ位置検出部34は、それらのエンコーダを用いて、ステージ31の回転軸θ、φ回りの回転位置を検出し、検出した回転位置を表す信号を座標検出部51へ供給する。
【0023】
検出部20は、被検物3に対しての相対位置が変更されて、三次元形状を有している被検物3の表面形状を検出する。
検出部20は、次に示す検出手段のうちの少なくとも1つの検出手段を備える。
第1の検出手段では、備えている光切断型の光プローブ20Aを用いて検出する。光プローブ20Aは、光切断方式により被検物3の表面形状を求めるために、照射部21と、撮像部22とを備えて構成される。照射部21は、後述の間隔調整部52から供給される光の照射を制御する制御信号に基づき、被検物3に直線上の光があたるように、被検物3に直線状のスリット光(ライン状の計測光)を照射する。
撮像部22は、照射部21の照射方向に対して、光軸を所定角度ずらして配置される。撮像部22は、照射部21からの照射光により被検物3の表面に形成される光切断線(スリット光が照射されている部分)を撮像する。ここで、光切断線は、被検物3の断面形状に応じて形成される。撮像部22は、被検物3の表面に形成される陰影パターンを撮像し、撮像した画像情報を間隔調整部52へ供給する。これにより、制御ユニット40は、形状測定データを取得する。撮像部22は、CCD(Charge Coupled Device)、C−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの個体撮像素子を備えている。
【0024】
第2の検出手段では、備えている取得画像変換型のSSFプローブ20Bを用いて検出する。SSFプローブ20Bは、被検物3の形状を撮像した画像データを間隔調整部52へ供給する。これにより、制御ユニット40は、形状測定データを取得する。SSFプローブ20Bに関する詳細の説明は、例えば、次の参考文献を参照する([参考文献]国際公開第2009/096422号パンフレット)。
【0025】
第3の検出手段では、備えている接触型の接触プローブ20Cを用いて検出する。接触プローブ20Cは、被検物3に接触することにより検出した情報(位置情報)を間隔調整部52へ供給する。これにより、制御ユニット40は、形状測定データを取得する。
検出部20は、上記の検出手段のいずれか1つを備える代わりに、複数の検出手段を備え、選択された検出手段によって検出することとしてもよい。以下の説明では、光プローブ20Aを例に説明する。
【0026】
続いて、制御ユニット40について説明する。
入力装置42は、ユーザが各種指示情報を入力するキーボードなどを備えている。入力装置42は、入力された指示情報を検出し、検出した指示情報を記憶部55に書き込み記憶させる。
【0027】
ジョイスティック43は、ユーザの操作を受けて、その操作に応じて測定ヘッド13やステージ31を駆動させる制御信号を生成して駆動制御部54へ供給する。例えば、ジョイスティック43は、ユーザの操作に応じて、測定領域において光プローブ20Aを配置させる状態を示す情報を制御指令情報として検出する。そして、ジョイスティック43は、検出した制御指令情報に基づいて光プローブ20Aを配置させるように、測定ヘッド13やステージ31を駆動させる制御信号を生成して駆動制御部54へ供給する。
【0028】
モニタ44は、データ出力部57から供給された測定データ(全測定ポイントの座標値)等を受け取る。モニタ44は、受け取った測定データ(全測定ポイントの座標値)等を表示する。また、モニタ44は、計測画面、指示画面等を表示する。
【0029】
制御部41は、座標検出部51と、間隔調整部52と、座標算出部(算出部)53と、駆動制御部54と、記憶部55と、移動指令部56と、データ出力部57と、静止判定部(判定部)58とを備えている。
【0030】
座標検出部51は、ヘッド位置検出部15から出力される座標信号により、ヘッド位置検出部15に支持されている光プローブ20Aの位置、すなわち水平方向における観察位置(光軸中心位置)と上下方向における観察位置とを検知する。また、座標検出部51は、ステージ位置検出部34から出力される回転位置を示す信号により、ステージ31の回転軸θ、φ回りの回転位置を検知する。座標検出部51は、それぞれ検知された水平方向における観察位置(光軸中心位置)と上下方向における観察位置の情報と、ステージ位置検出部34から出力される回転位置を示す情報(ステージ31の回転位置情報)とから、座標情報を検出する。そして、座標検出部51は、光プローブ20Aの座標情報とステージ31の回転位置情報とを座標算出部53へ供給する。
また、座標検出部51は、光プローブ20Aの座標情報とステージ31の回転位置情報とに基づいて、光プローブ20Aとステージ31との相対的な移動経路、移動速度、移動が停止しているか否かなどの情報を検出し、検出した情報を移動指令部56へ供給する。
【0031】
間隔調整部52は、座標計測開始前に記憶部55からサンプリング周波数を指定するデータを読み出す。間隔調整部52は、そのサンプリング周波数で、撮像部22から画像情報を受け取る。そして、間隔調整部52は、該画像情報から被検物3の表面の形状データを算出するためのフレームを間引いた画像情報を、座標算出部53に供給する。
【0032】
座標算出部53は、光プローブ20Aにより検出された被検物3の表面の形状に基づいて、被検物3の表面の形状データ、すなわち三次元形状データを算出する。
座標算出部53は、間隔調整部52から供給されたフレームが間引かれた画像情報を受け取る。座標算出部53は、座標検出部51から供給された光プローブ20Aの座標情報と、ステージ31の回転位置情報とを受け取る。座標算出部53は、間隔調整部52から供給された画像情報と、光プローブ20Aの座標情報と、ステージ31の回転位置情報とに基づき、各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データを算出する。
【0033】
具体的な算出方法は以下の通りである。まず、座標算出部53は、受け取った光プローブ20Aの座標から、光プローブ20Aに固定された照射部21の座標と、撮像部22の座標を算出する。
ここで、照射部21は光プローブ20Aに固定されているので、照射部21の照射角度は、光プローブ20Aに対して固定である。また、撮像部22も光プローブ20Aに固定されているので、撮像部22の撮像角度は、光プローブ20Aに対して固定である。
【0034】
座標算出部53は、照射した光が被検物3にあたった点の座標を、撮像された画像の画素毎に、三角測量を用いて算出する。ここで、照射した光が被検物3にあたった点の座標は、照射部21の座標から照射部21の照射角度で描画される直線と、撮像部22の座標から撮像部22の撮像角度で描画される直線(光軸)とが交わる点の座標である。なお、上記の撮像された画像は、測定位置に配置された光プローブ20Aによって検出された画像を示す。
これにより、被検物に照射されるスリット光を所定の方向に走査させることにより、光が照射された位置の座標を算出することができる。
【0035】
また、被検物3は、ステージ31に支持されている。被検物3は、ステージ31が回転軸周りに回転することにより、ステージ31の回転軸を中心に一緒に回転する。つまり、算出された光が照射された位置の座標は、ステージ31の回転軸中心に回転したことによって姿勢が傾けられた被検物3の表面の位置を示す情報である。よって、座標算出部53は、光が照射された位置の座標を、ステージ31の傾き、即ち回転軸周りの回転位置情報に基づいて、ステージ31の傾きを補正することにより、実際の被検物3の表面形状データを算出することができる。
また、座標算出部53は、算出した被検物3の表面形状データである三次元座標値の点群データを記憶部55に保存する。
【0036】
記憶部55には、入力装置42またはジョイスティック43から入力された各種指示情報や、予め設定された各種指示情報が保持される。この各種指示情報は、制御部41が所定の測定制御を実行するための測定条件や測定手順等を示す情報である。例えば、記憶部55には、被検物3の測定範囲を示す測定ポイントの座標値、被検物3の測定開始位置(最初の測定ポイント)と測定終了位置(最後の測定ポイント)との座標値、測定ポイントの移動方向、及び各測定ポイントの距離間隔(例えば、一定距離間隔の測定ピッチ)を示すデータなどが各種指示情報として保持される。
【0037】
例えば、被検物3の測定ポイントの座標値は、次に示す処理により算出される。
被検物3の測定ポイントの座標値は、ユーザによって入力された情報に基づいて、測定ヘッド13及びステージ31が駆動されて、被検物3及び光プローブ20Aが所望の姿勢になるようにそれぞれ位置決めされた位置により算出される。
【0038】
より具体的には、座標検出部51は、ユーザによって入力された情報に基づいて駆動制御部54により駆動された座標情報(測定ヘッド13の座標情報及びステージ31の回転位置情報)を検出する。そして、座標算出部53は、座標検出部51により検出された測定ポイントの座標情報に基づいて、被検物3の測定ポイントの座標値を算出する。座標算出部53が算出する当該測定ポイントの座標値は、入力装置42による当該座標値のキー入力の他、予めジョイスティック43の操作によって駆動制御部54が測定ヘッド13及びステージ31を駆動させ、被検物3及び光プローブ20Aを所望の姿勢に位置決めした位置により算出される。
【0039】
また、記憶部55には、座標算出部53から供給された三次元座標値の点群データが測定データとして保持される。また、記憶部55には、座標検出部51から供給された各測定ポイントの座標情報が保持される。また、記憶部55には、設計データ(CADデータ)が保持される。
【0040】
駆動制御部54は、ジョイスティック43からの操作信号に基づいて、または、移動指令部56からの指令信号に基づいて、ヘッド駆動部14及びステージ駆動部33に駆動信号を出力して、測定ヘッド13及びステージ31の駆動制御を行う。
また、駆動制御部54は、ジョイスティック43からの操作信号に基づいて、登録位置として設定された測定ヘッド13及びステージ31の位置情報を記憶部55に書き込み記憶させる。つまり、駆動制御部54は、測定ヘッド13に支持されている光プローブ20Aの位置を間接的に取得することができる。
【0041】
移動指令部56は、記憶部55から被検物3の測定範囲を示す測定ポイントの座標値、被検物3の測定開始位置(最初の測定ポイント)と測定終了位置(最後の測定ポイント)との座標値、測定ポイントの移動方向、及び各測定ポイントの距離間隔(例えば、一定距離間隔の測定ピッチ)を示すデータ等を読み出す。移動指令部56は、上記読み出したデータに基づいて、被検物3に対するスキャンの移動経路を算出する。そして、移動指令部56は、算出した移動経路及び記憶部55から読み出した各測定ポイントの距離間隔(例えば、一定距離間隔の測定ピッチ)等に従って、測定ヘッド13及びステージ31を駆動させるための指令信号を駆動制御部54に供給し、ヘッド駆動部14とステージ駆動部33とに測定ヘッド13及びステージ31を駆動させる。
【0042】
例えば、移動指令部56は、移動経路及び測定ピッチに従って、測定ヘッド13の移動または移動の停止と、ステージ31の回転または回転の停止を駆動させる指令信号を供給して、光プローブ20Aとステージ31との相対的な位置を移動させて測定ポイント毎に停止させる。また、移動指令部56は、この指令信号を間隔調整部52、及び静止判定部58に供給する。
【0043】
データ出力部57は、記憶部55から測定データ(全測定ポイントの座標値)等を読み出す。データ出力部57は、その測定データ(全測定ポイントの座標値)等をモニタ44に供給する。また、データ出力部57は、測定データ(全測定ポイントの座標値)等をプリンタ(不図示)へ出力する。
【0044】
静止判定部58は、ステージ31に載置されて把持されている被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定する。具体的には、静止判定部58は、光プローブ20Aにより検出された被検物3の表面の形状の変位を示す情報、例えば単位時間あたりの変位量(ゆらぎ)に基づいて、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定する。
【0045】
例えば、間隔調整部52は、所定のサンプリング周波数で光プローブ20Aにより被検物3の表面に照射されるスリット光(ライン状の計測光)によって形成される陰影パターンを撮像した画像情報を受け取る。座標算出部53は、この画像情報に基づいて、照射した光が被検物3にあたった点(陰影パターン上の点)の座標を、撮像された画像の画素毎に、三角測量を用いて算出する。そして、座標算出部53は、所定のサンプリング周波数で撮像される画像情報毎に、陰影パターンの座標値の点群データを算出して静止判定部58に供給する。静止判定部58は、所定のサンプリング周波数で撮像される画像情報毎に算出されて供給される陰影パターンの座標値の点群データ(被検物3の表面の形状)に基づいて、被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量を検出する。静止判定部58は、この変位量の大きさによって、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定し、判定した結果を座標算出部53及び移動指令部56に供給する。
【0046】
次に、本実施形態における処理の概要を説明する。
本実施形態の三次元形状測定装置100は、被検物3に対して光プローブ20Aの相対位置を移動させ、測定ポイント毎に相対位置を停止させて被検物3の表面の形状を検出する。この場合、相対位置を停止させる制御をした場合であっても、残留振動の影響により光プローブ20Aを支持する移動部10などの各構造体に撓みなどが発生し、アッベの誤差が生じることがある。
【0047】
図3は、アッベの誤差を説明する模式図であって、三次元形状測定装置100を上面視した場合の簡略図である。この図において、移動部10の支柱10aは、軸301に沿って(Y軸に沿って)ガイドレール上を移動される。また、測定ヘッド13に支持されている光プローブ20Aは、支柱10a及び水平フレーム10cにより支持されており、移動部10の支柱10aがY軸に沿って移動されるのに応じて、同様にY軸に沿って移動される。この図においては、移動部10の支柱10aと対をなす支柱10bは、説明を容易にするため省略している。
【0048】
また、図3は、三次元形状測定装置100において支柱10aのY軸方向の移動を値Y1の位置で停止させた際に、水平フレーム10cに撓みが発生していない場合と発生している場合との一例を示している。例えば、水平フレーム10cに撓みが発生していない場合、水平フレーム10cは、Y軸と直交するように停止する。つまり、水平フレーム10cは、X軸に平行な線分302と重なる位置にあり、水平フレーム10C上を移動する光プローブ20AのY軸方向の位置が支柱10aと同じ値Y1である。
【0049】
一方、水平フレーム10cに撓みが発生している場合、支柱10aの位置と光プローブ20Aの位置とが撓みによりY軸方向の同じ位置にならない場合がある。例えば、水平フレーム10cが撓みにより線分302に対して支柱10aを中心に角度α分ずれた線分303と重なる位置にあるとした場合、支柱10aのY軸方向の位置が値Y1であるのに対して、光プローブ20AのY軸方向の位置は値Y2である(撓みは一般的に曲線状になるように発生するが、説明しやすくするため直線状の線分303として表している)。このように、三次元形状測定装置100は、支柱10aの位置として検出されるY軸方向の位置により光プローブ20AのY軸方向の位置を値Y1と検出する。しかし、水平フレーム10cに撓みが発生している場合、実際の光プローブ20AのY軸方向の位置は値Y2であることから、この値Y1と値Y2との差分Errがアッベの誤差として生じる。
【0050】
このアッベの誤差は、Y軸方向の位置を検出するY軸用エンコーダを有する支柱10aと、光プローブ20Aの位置とが同一のY軸上にないことにより生じるものである。そして、Y軸用エンコーダによって検出される支柱10aのY軸上の位置に対して、光プローブ20Aの位置がY軸上から離れる(支柱10aと光プローブ20Aとの距離Lが大きくなる)のに応じて、水平フレーム10cの撓みによる誤差への影響が大きくなる。つまり、撓みによって生じる上述の角度αが同じであれば、距離Lが大きくなるのに応じて差分Errが大きくなる。一般的に、光プローブ20Aを支持して移動させる移動部10のスケール軸上(空間座標それぞれの軸方向の位置がエンコーダにより検出される軸上)に、被検物3を設置して測定することは困難である。そのため、三次元形状測定装置100において、スケール軸上から離れた位置の光プローブ20Aにより被検物3を測定することになり、上述のアッベの誤差が生じることになる。
ここで、アッベの誤差は、簡易的に「Err=sinα×L」により表される。
【0051】
また、図3においては、Y軸方向への移動において生じる残留振動によるY軸方向への水平フレーム10cの撓みの影響のみについて説明したが、支柱10aの撓みの影響もある。また、その他に、移動部10のX軸方向、またはZ軸方向への移動においてもそれぞれの方向に移動部10の各部の撓みの影響がある。また、撓み以外にも捩れにより回転方向への影響もある。更に、ステージ31の回転駆動において生じる残留振動によっても同様にアッベの誤差が生じる場合がある。よって、従来の三次元形状測定装置は、残留振動によって生じるアッベの誤差を低減させるために、各測定ポイントにおいて残留振動が検出精度に影響しないレベルに減衰するまで余裕を持った時間が経過してから検出する必要があった。
【0052】
本実施形態の三次元形状測定装置100は、光プローブ20Aにより検出された被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量(ゆらぎ)に基づいて、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定する。そして、三次元形状測定装置100は、光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された状態において検出された被検物3の表面の形状に基づいて形状データを算出することにより、アッベの誤差による影響を低減する。
【0053】
つまり、三次元形状測定装置100は、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していることを判定して被検物3の表面における測定ポイント毎の形状を検出する。よって、三次元形状測定装置100は、残留振動が充分に減衰してから測定するために余裕を持った時間が経過してから検出する必要がない。これにより、三次元形状測定装置100は、光プローブ20Aを被検物3に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合の測定速度を向上させることができる。
【0054】
次に、制御部41により静止判定して形状測定する処理についての詳細を説明する。
制御部41の静止判定部58は、ステージ31に載置されて把持されている被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定する。具体的には、静止判定部58は、光プローブ20Aにより検出された被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量に基づいて、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定する。
【0055】
例えば、静止判定部58は、光プローブ20Aにより検出された被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。静止判定部58は、この変位量が予め定められた閾値以下であると判定した場合、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定する。一方、静止判定部58は、この変位量が予め定められた閾値以下でない(閾値より大きい)と判定した場合、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しておらず、相対位置が移動している可能性がある(例えば、残留振動がある)と判定する。ここで予め定められた閾値は、形状測定する際に求められる測定精度に対して単位時間あたりの変位量が充分小さい変位量(許容誤差範囲内の変位量)である値が閾値として設定されている。例えば、測定精度に対して1/10程度の値が閾値として設定されている。
【0056】
制御部41は、静止判定部58により被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された場合、光プローブ20Aに被検物3の表面の形状を検出させる。
例えば、制御部41は、光プローブ20Aの相対的な移動を停止させるように制御して、ヘッド位置検出部15により測定ヘッド13の移動が停止したことが検出され、且つステージ位置検出部34によりステージ31の傾斜または回転が停止したことが検出されたことを検出する。その後、制御部41は、静止判定部58により被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された場合、光プローブ20Aに被検物3の表面の形状を検出させる制御をする。
【0057】
具体的には、移動指令部56は、移動経路及び測定ピッチに従って、測定ヘッド13の移動または移動の停止とステージ31の回転または回転の停止とを駆動させるための指令信号を駆動制御部54に供給して、測定ヘッド13とステージ31との相対的な位置を移動させて測定ポイント毎に停止させる。これにより、移動指令部56は、測定ヘッド13に支持されている光プローブ20Aの被検物3に対する相対的な移動を停止させるように制御する。そして、座標検出部51は、ヘッド位置検出部15から出力される座標信号により、測定ヘッド13の移動が停止したことを検出し、且つステージ位置検出部34から出力される回転位置を示す信号により、ステージ31の回転軸θ、φ回りの回転(傾斜または回転)が停止したことを検出する。座標検出部51は、これら検出した情報を移動指令部56へ供給する。そして、座標検出部51により測定ヘッド13の移動が停止したことが検出され、且つステージ31の回転軸θ、φ回りの回転(傾斜または回転)が停止したことが検出された場合、移動指令部56は、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを静止判定部58に判定させる。
【0058】
例えば、間隔調整部52は、所定のサンプリング周波数で光プローブ20Aにより被検物3の表面に照射されるスリット光(ライン状の計測光)によって形成される陰影パターンを撮像した画像情報を受け取る。座標算出部53は、この画像情報に基づいて、照射した光が被検物3にあたった点(陰影パターン上の点)の座標を、撮像された画像の画素毎に、三角測量を用いて算出する。そして、座標算出部53は、所定のサンプリング周波数で撮像される画像情報毎に、陰影パターンの座標値の点群データを算出して静止判定部58に供給する。
【0059】
静止判定部58は、所定のサンプリング周波数で撮像される画像情報毎に算出されて供給される陰影パターンの座標値の点群データ(被検物3の表面の形状)に基づいて、被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量を検出する。静止判定部58は、この変位量の大きさによって、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定し、判定した結果を座標算出部53及び移動指令部56に供給する。
【0060】
静止判定部58により被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された場合(すなわち残留振動の影響が無い場合)、座標算出部53は、間隔調整部52を介して光プローブ20Aにより検出された画像情報、及び座標検出部51により検出された光プローブ20Aの座標情報とステージ31の回転位置情報とに基づき、被検物3の表面形状データである三次元座標値の点群データを算出して記憶部55に保存する。また、移動指令部56は、静止判定部58により被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された場合、間隔調整部52が光プローブ20Aを介して被検物3の表面の形状を検出した画像情報を受け取った後に、移動経路に従って次の測定ポイントへ移動させるための指令信号を駆動制御部54に供給する。
【0061】
図4は、本実施形態における形状測定処理の一例を示すフローチャートである。
以下、図4が示すフローチャートを用いて、三次元形状測定装置100が被検物3に対する光プローブ20Aの静止判定をして形状測定を実行する処理について説明する。
【0062】
最初に、ユーザは、被検物3の測定開始位置(最初の測定ポイント)及び測定終了位置(最後の測定ポイント)を入力装置42から入力して設定する。入力装置42は、入力された測定開始位置(最初の測定ポイント)及び測定終了位置(最後の測定ポイント)を記憶部55に記憶させる(ステップS1)。また、ユーザは、被検物3の測定ポイントの距離間隔を入力装置42から入力して設定する。入力装置42は、入力された測定ポイントの距離間隔を記憶部55に記憶させる(ステップS2)。移動指令部56は、記憶部55から入力されて設定された情報である測定開始位置(最初の測定ポイント)と測定終了位置(最後の測定ポイント)との座標値、及び各測定ポイントの距離間隔(例えば、一定距離間隔の測定ピッチ)を示すデータや、予め設定された情報である測定範囲を示す測定ポイントの座標値、及び測定ポイントの移動方向等を読み出す。移動指令部56は、上記読み出したデータに基づいて、被検物3に対するスキャンの移動経路を算出する。
【0063】
次に、移動指令部56は、算出した移動経路に基づいて、測定ヘッド13及びステージ31を駆動させるための指令信号を駆動制御部54に供給し、ヘッド駆動部14とステージ駆動部33とに測定ヘッド13及びステージ31を駆動させる。これにより、移動指令部56は、測定ヘッド13とステージ31との相対的な位置を移動させて光プローブ20Aを被検物3の測定開始位置(最初の測定ポイント)に移動させた後に停止させる(ステップS3)。
【0064】
続いて、座標検出部51は、移動指令部56が指令信号を駆動制御部54に供給して制御した測定ヘッド13の移動、及びステージ31の回転軸θ、φ回りの回転(傾斜または回転)が停止したか否かを検出する。座標検出部51は、これら検出した情報を移動指令部56へ供給する。そして、座標検出部51により測定ヘッド13の移動が停止したことが検出され、且つステージ31の回転軸θ、φ回りの回転(傾斜または回転)が停止したことが検出された場合、移動指令部56は、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを静止判定部58に判定させる。静止判定部58は、所定のサンプリング周波数で撮像される画像情報毎に算出されて供給される陰影パターンの座標値の点群データ(被検物3の表面の形状)に基づいて、被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量を検出する(ステップS4)。
【0065】
静止判定部58は、光プローブ20Aにより検出された被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する(ステップS5)。静止判定部58は、この変位量が予め定められた閾値以下であると判定した場合、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定し、判定した結果を座標算出部53に供給する(ステップS6に処理を進める)。一方、静止判定部58は、この変位量が予め定められた閾値以下でない(閾値より大きい)と判定した場合、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しておらず、相対位置が移動している可能性がある(例えば、残留振動がある)と判定して、ステップS4に処理を戻す。例えば、静止判定部58は、この変位量が予め定められた閾値以下であると判定するまで、すなわち被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止されるまで、被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量を検出して静止判定処理を繰り返す。
【0066】
ステップS5において、変位量が予め定められた閾値以下であると判定された場合、すなわち被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された場合、間隔調整部52は、光プローブ20Aを介して被検物3の表面の形状を検出し、検出した画像情報を座標算出部53へ供給する。また、座標検出部51は、位置検出部17より光プローブ20Aの座標情報とステージ31の回転位置情報とを検出し、検出した情報を座標算出部53へ供給する(ステップS6)。
【0067】
座標算出部53は、間隔調整部52から供給された画像情報、及び座標検出部51から供給された光プローブ20Aの座標情報とステージ31の回転位置情報とに基づき、測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データを算出して記憶部55に保存する(ステップS7)。
【0068】
次に、移動指令部56は、直前に測定した測定ポイントが測定終了位置(最後の測定ポイント)であるか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8において、直前に測定した測定ポイントが測定終了位置(最後の測定ポイント)でない(測定終了位置以外の測定ポイントである)と判定された場合、移動指令部56は、次の測定ポイントに光プローブ20Aを移動させた後停止させる。例えば、移動指令部56は、移動経路に従って次の測定ポイントへ移動させるために、測定ヘッド13及びステージ31を駆動させるための指令信号を駆動制御部54に供給し、ヘッド駆動部14とステージ駆動部33とに測定ヘッド13及びステージ31を駆動させる(ステップS9)。そして、移動指令部56は、ステップS4に制御を戻し、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを静止判定部58に判定させる。
【0069】
一方、ステップS8において、直前に測定した測定ポイントが測定終了位置(最後の測定ポイント)であると判定された場合、座標算出部53は、各測定ポイントにおいて算出した測定ポイント毎の座標値(三次元座標値)の点群データに基づいて、被検物3の表面形状データを算出する。例えば、座標算出部53は、間隔調整部52を介して光プローブ20Aにより検出された画像情報、及び座標検出部51により検出された光プローブ20Aの座標情報と、ステージ31の回転位置情報とに基づいて測定ポイントことに算出された座標値(三次元座標値)の点群データを、記憶部55から読み出して被検物3の表面形状データである三次元座標値の点群データを算出して記憶部55に保存する(ステップS10)。
【0070】
以上のように、本実施形態における三次元形状測定装置100は、光プローブ20Aにより検出された被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量(ゆらぎ)に基づいて、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止しているか否かを判定する。そして、三次元形状測定装置100は、光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された状態において検出された被検物3の表面の形状に基づいて形状データを算出する。
つまり、三次元形状測定装置100は、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止している場合、被検物3の表面における測定ポイントの形状を検出するため、残留振動が充分に減衰するまで余裕を持った時間待ってから検出する必要がない。これにより、三次元形状測定装置100は、光プローブ20Aを被検物3に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合の測定速度を向上させることができる。
【0071】
例えば、三次元形状測定装置100は、被検物3に対して光プローブ20Aの相対位置を移動させ、測定ポイント毎に相対位置を停止させて被検物3の表面の形状を検出する。三次元形状測定装置100は、測定ポイント毎に相対位置を停止させた場合に生じる残留振動の影響を、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していることを判定した後に測定することで、該残留振動の影響により発生する場合があるアッベの誤差を低減させることができる。
【0072】
また、三次元形状測定装置100は、測定ポイント毎に相対位置を停止させた際に生じる残留振動が残っている状態であったとしても、被検物3に対して光プローブ20Aが相対的に静止していると判定された場合、すなわち、被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量が小さく測定精度に影響が無い範囲である場合、残留振動の減衰を待つことなく測定することができるため、アッベの誤差を低減させるとともに測定速度を向上させることができる。
【0073】
また、被検物3の表面の形状の単位時間あたりの変位量が小さい場合には、残留振動が大きくても残留振動の方向や形状によって被検物3の表面の形状に変位が発生しない場合がある(例えば、残留振動の方向に対して平面が続くような形状の場合等)。この場合、残留振動による影響の無い測定が可能であるため、三次元形状測定装置100は、被検物3の形状によって大幅に測定速度を向上させることができる。
【0074】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
例えば、制御部41は、検出部20(光プローブ20A)の相対的な移動を停止させるように制御して、ヘッド位置検出部(移動位置検出部)15により測定ヘッド(支持部)13の移動が停止したことが検出され且つステージ位置検出部(傾斜回転位置検出部)14によりステージ(設置部)31の傾斜または回転が停止したことが検出された後、静止判定部(判定部)58により検出部20が相対的に静止していると判定された場合、検出部20に被検物3の表面の形状を検出させる制御をする例について説明したが、これに限られるものではない。
【0075】
制御部41は、検出部20の相対的な移動を停止させるように制御して、ヘッド位置検出部(移動位置検出部)15により測定ヘッド(支持部)13の移動が停止したことが検出された後、静止判定部(判定部)58により検出部20が相対的に静止していると判定された場合、検出部20に被検物3の表面の形状を検出させる制御をしてもよい。例えば、被検物3を把持するステージ31の姿勢が固定であるような形状測定装置の場合、検出部20の移動が停止したことを検出した後、静止判定部(判定部)58は、検出部20が相対的に静止しているか否かを判定してもよい。これにより、三次元形状測定装置100は、検出部20を被検物3に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合の測定速度を、同様に向上させることができる。
【0076】
また、制御部41は、検出部20の相対的な移動を停止させるように制御した後、静止判定部(判定部)58により検出部20が相対的に静止していると判定された場合、検出部20に被検物3の表面の形状を検出させる制御をしてもよい。例えば、検出部20の移動の停止やステージ31の傾斜または回転の停止を検出しなくても、静止判定部(判定部)58は、検出部20の相対的な移動を停止させるように制御した後、検出部20が相対的に静止しているか否かを判定してもよい。この場合においても、三次元形状測定装置100は、検出部20を被検物3に対して移動させて測定位置毎に停止させて測定する場合の測定速度を、同様に向上させることができる。
【0077】
また、制御部41は、検出部20の相対的な移動を停止させるように制御した後に限らずその他の期間においても、所定のサンプリング周期で検出部20により検出された画像情報に基づいて、静止判定部(判定部)58により検出部20が相対的に静止しているか否かを判定してもよい。
【0078】
また、座標算出部53は、算出した各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データに、静止判定部58が検出した変位量のデータを関連付けて記憶部55に記憶させてもよい。例えば、座標算出部53は、静止判定部58による検出部20の相対的な静止判定結果によらず、検出部20により検出された画像情報などに基づいて、各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データを算出し、検出時の静止判定結果を関連付けて記憶させてもよい。そして、座標算出部53は、各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データに基づいて被検物3の表面形状データである三次元座標値の点群データを算出する際に、記憶部55から読み出した各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データのうち、検出時の静止判定結果により測定精度を満足している座標値のみに基づいて、被検物3の表面形状データである三次元座標値の点群データを算出する制御をしてもよい。
【0079】
なお、上記実施形態において、検出部20が変位センサを備えている構成としてもよい。この場合、検出部20が備えている変位センサが被検物3に対する検出部20の変位量を検出することにより、静止判定部(判定部)58は、検出部20が相対的に静止しているか否かを判定してもよい。
ここで、検出部20が備えている変位センサは、例えば、加速度センサ、または各速度センサ等、であってもよい。
また、静止判定部(判定部)58は、単位時間に関わらず所定の閾値を超える変位量を検出した場合には静止していないと判定してもよい。また、静止判定部(判定部)58は、判定には変位量を用いずに、例えば撮像部22が撮像する画素情報を用いて静止しているか否かの判定を行うこともできる。
【0080】
なお、図1における制御部41は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリ及びCPU(中央演算装置)により構成され、制御部41の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0081】
また、上述の制御部41の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の制御部41の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0082】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0083】
10…移動部、13…測定ヘッド(支持部)、15…ヘッド位置検出部(移動位置検出部)20…検出部、31…ステージ(設置部)、32…支持テーブル(傾斜回転部)、34…ステージ位置検出部(傾斜回転位置検出部)、41…制御部、53…座標算出部(算出部)、58…静止判定部(判定部)、100…三次元形状測定装置(形状測定装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物に対しての相対位置が変更されて前記被検物の表面の形状を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記被検物の表面の形状の変位を示す情報に基づいて、前記被検物に対して前記検出部が相対的に静止しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合の前記形状に基づいて、前記被検物の表面の形状データを算出する算出部と、
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記判定部により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合、前記検出部に前記被検物の表面の形状を検出させる制御部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記被検物に対する前記検出部の相対的な移動を停止させるように制御した後、前記判定部により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合、前記検出部に前記被検物の表面の形状を検出させる
ことを特徴とする請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記検出部を支持する支持部と、
前記支持部を移動させる移動部と、
前記支持部の位置を検出する移動位置検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検出部の相対的な移動を停止させるように制御して、前記移動位置検出部により前記支持部の移動が停止したことが検出された後、前記判定部により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合、前記検出部に前記被検物の表面の形状を検出させる
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記被検物が設置されて前記被検物を把持する設置部と、
前記設置部を傾斜または回転させる傾斜回転部と、
前記設置部の傾斜位置または回転位置を検出する傾斜回転位置検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検出部の相対的な移動を停止させるように制御して、前記移動位置検出部により前記支持部の移動が停止したことが検出され且つ前記傾斜回転位置検出部により前記設置部の傾斜または回転が停止したことが検出された後、前記判定部により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合、前記検出部に前記被検物の表面の形状を検出させる
ことを特徴とする請求項4に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記判定部は、
前記検出部により検出された前記被検物の表面の形状の変位を示す情報が予め定められた閾値以下であるか否かを判定し、予め定められた閾値以下であると判定した場合、前記検出部が相対的に静止していると判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記検出部は、
前記被検物に照射されたライン状の計測光によって前記被検物の表面に形成される陰影パターンに基づいて、前記被検物の表面の形状を検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の形状測定装置。
【請求項8】
形状測定装置における形状測定方法であって、
被検物に対しての相対位置が変更されて前記被検物の表面の形状を検出する検出手順と、
前記検出手順により検出された前記被検物の表面の形状の変位を示す情報に基づいて、前記被検物に対して前記検出部が相対的に静止しているか否かを判定する判定手順と、
前記判定手順により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合の前記形状に基づいて、前記被検物の表面の形状データを算出する算出手順と、
を備えることを特徴とする形状測定方法。
【請求項9】
形状測定装置が備えるコンピュータに、
被検物に対しての相対位置が変更されて前記被検物の表面の形状を検出する検出手順と、
前記検出手順により検出された前記被検物の表面の形状の変位を示す情報に基づいて、前記被検物に対して前記検出部が相対的に静止しているか否かを判定する判定手順と、
前記判定手順により前記検出部が相対的に静止していると判定された場合の前記形状に基づいて、前記被検物の表面の形状データを算出する算出手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220339(P2012−220339A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86304(P2011−86304)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】