説明

排水制御水引き乾燥装置及び排水制御水引き乾燥方法

【課題】ウェーハ乾燥時にウェーハ表面にウォータマークが形成されないようにすると共に、ウェーハの乾燥効率及び品質性能を向上させる。
【解決手段】排水制御水引き乾燥装置1は、ウェーハ3上面が液体2の水面に極力近接するようにウェーハ3を保持する保持部材5と、ウェーハ3上面中央部の上方に設けられた供給ノズル7と、椀型の水槽4の底面中央部に形成された排水口17と、排水口17の下流側に設置された流量制御弁19を具備する。ウェーハ3上面中央部に供給ノズル7からIPA蒸気及び/又は窒素ガスを吹き付けて表面張力を低下させた後、排水口17から液体2を排出させることにより、水面を低下させながらウェーハ3表面を蒸発乾燥させる。又、IPA蒸気および窒素ガスN2の圧力と流速、並びに、排水口17からの排水速度は可変調整可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水制御水引き乾燥装置及び排水制御水引き乾燥方法に関するものであり、特に、ウェーハ表面にウォータマークが形成されないようにした排水制御水引き乾燥装置及び排水制御水引き乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、CMP装置により研磨されたウェーハは、洗浄処理を実施した後に、ウェーハ表面に付着している洗浄水を除去乾燥している。即ち、洗浄水によりウェーハ表面を洗浄した後、更に、該ウェーハを回転させながら、該ウェーハ表面にリンス液及び窒素ガスを順次吹き付けて、ウェーハ表面の水分を除去乾燥させている。
【0003】
例えば、従来のスピン乾燥方式では、回転するウェーハにリンス液供給ノズルからリンス液を供給した後、更に窒素ガス供給ノズルから乾燥用の窒素ガスをウェーハに吹き付けている。これにより、該ウェーハ表面に付着していた水分が遠心力により分離されると共に、蒸発によって水分が除去乾燥される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−126264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のスピン乾燥方式では、遠心分離された微小な水玉がウェーハ表面と反応することにより、ウォータマークと呼ばれる水玉の残痕がウェーハ表面に発生する。
【0005】
特に、ウェーハの表面は、撥水性材料(Low−k材料)により形成されているために、遠心力により分離できない微小な水玉が発生し、該水玉がウェーハ表面に残存してウォータマークが形成され易い。
【0006】
ウェーハ表面にウォータマークが形成された場合は、該ウォータマークに塵埃が付着してデバイス性能の低下、例えば、信号遅延(RC遅延)などの品質低下を招来させる。従って、ウェーハの乾燥処理において、ウォータマークを形成させないことが大きな課題になっている。
【0007】
又、前記リンス液供給ノズル及び窒素ガス供給ノズルは可動アームにより移動可能に保持されているが、該可動アームのスキャン速度は、ウェーハの回転速度、リンス液供給量及び窒素ガス供給量に応じた水切り速度に一致させるべく、その都度、適正な速度に厳密に調整する必要がある。
【0008】
この場合、可動アームのスキャン速度の調整は、常に水切り速度と一致するように厳密に設定しなければならないので、調整作業が面倒であるだけでなく、かなり高度な熟練技術を要するため、前記スキャン速度の調整作業が行い難い。又、可動アームのスキャン速度が水切り速度と一致しない場合は、ウェーハの乾燥効率及び品質性能が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、ウェーハ乾燥時においてウェーハ表面にウォータマークが形成されないようにすると共に、該ウェーハの乾燥効率及び品質性能を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、液体が溜められた水槽内にウェーハを静置させて該ウェーハを乾燥させる排水制御水引き乾燥装置であって、前記ウェーハの上面が前記液体の水面に近接するように該ウェーハを水面下に保持する保持部材と、該ウェーハの上面中央部の上方に設けられたIPA蒸気及び/又は不活性ガス吹き付け用の供給ノズルと、前記水槽の底面部に形成された排水口とを備え、前記ウェーハの上面中央部に前記供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付けた後、前記排水口から前記液体を排出させながら該液体の水位を低下させることにより、前記ウェーハ表面を大気中に露出させて乾燥させるように構成して成る排水制御水引き乾燥装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、ウェーハの乾燥処理を実施する場合は、先ず、液体が溜められた水槽内の保持部材によりウェーハを水面下に保持することによって、該ウェーハ上面が液体の水面に極力近接するように静置させる。次に、ウェーハの上面中央部に供給ノズルからIPA(イソプロピルアルコール)蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付けることにより、ウェーハ上面の液体の表面張力を低下させると共に、ウェーハ上面の中央部から外周部側に液体を排除して、ウェーハ上面の中央部を大気中に露出させて蒸発乾燥する。即ち、ウェーハ上面における液体の水際線(以下「水引きライン」という。)がウェーハの半径方向外方へ漸次進行するため、ウェーハ上面において中央部から外周部に向かって露出領域が放射状に均等に拡大する。
【0012】
然る後、水槽内の液体を排水口から排出させることにより、液体の水位が徐々に低下し、これに伴い、ウェーハの露出領域が上面から外周側面及び下面に向かって漸次増大して乾燥される。この場合、液体の水位低下の速度は、排水口からの排水速度を制御することにより適宜調整される。
【0013】
このように本発明によれば、水槽内の液体の排水制御に伴い、液体の水引ラインをウェーハ表面から漸次下降させることにより、ウェーハの上面から下面まで蒸発乾燥が連続的に行われる。
【0014】
請求項2記載の発明は、上記水槽は椀型に形成され、且つ、該水槽の底面中央部に上記排水口が形成されている請求項1記載の排水制御水引き乾燥装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、椀型の水槽の底面中央部に排水口が形成されているため、該排水口には水槽の底面部において最も高い水圧が作用する。従って、排水口における排水作用が効果的に進行し、水槽内の液体の水位低下が一層円滑に行われる。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記供給ノズルから上記ウェーハの上面中央部に吹き付けられるIPA蒸気及び/又は不活性ガスの圧力と流速の双方又は一方は可変調整可能である請求項1記載の排水制御水引き乾燥装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、ウェーハの乾燥条件や種類が異なった場合、IPA蒸気及び/又は不活性ガスの圧力と流速の双方又は一方を適宜可変調整することにより、ウェーハの乾燥条件や種類に応じて、IPA蒸気及び/又は不活性ガスの圧力若しくは流速が自由に設定変更される。
【0018】
請求項4記載の発明は、上記排水口には流量制御弁が設置されている請求項1又は2記載の排水制御水引き乾燥装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、流量制御弁の開度を可変調整することにより、排水口からの液体の排出速度が調整され、その結果、水槽内の液体の水位の低下速度特性も設定変更される。
【0020】
請求項5記載の発明は、液体が溜められた水槽内にウェーハを静置させて該ウェーハを乾燥させる排水制御水引き乾燥方法であって、該ウェーハの上面が液体の水面に近接するように前記ウェーハを保持部材により水面下に保持する工程と、該ウェーハの上面中央部に供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付ける工程と、前記水槽内の液体を該水槽の底面部に形成された排水口から排出させる工程とを含み、前記ウェーハの上面中央部に前記供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付けた後、前記排水口から前記液体を排出させながら該液体の水位を低下させることにより、前記ウェーハ表面を大気中に露出させて乾燥させる排水制御水引き乾燥方法を提供する。
【0021】
この方法によれば、水槽内の保持部材によりウェーハを保持することによって、該ウェーハ上面が液体の水面に極力近接するように静置させた後、ウェーハの上面中央部に供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付ける。斯くして、ウェーハ上面の液体の表面張力を低下させると共に、ウェーハ上面中央部の液体を周囲に排除しながら、ウェーハ上面を大気中に露出させて蒸発乾燥させる。然る後、水槽内の液体を排水口から所定速度で排出させることにより、液体の水位が徐々に低下する。その結果、液体の水位低下に伴い、ウェーハの露出領域が漸次増大し、ウェーハの上面から下面まで蒸発乾燥が円滑に行われる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明は、ウェーハと接触する液体の表面張力を低下させたのち、該液体を所定速度にて排水することにより、ウェーハ表面全域を均等に蒸発乾燥させることができる。斯くして、ウェーハ表面上におけるウォータマークの形成が抑制され、ウェーハのデバイス性能を従来に比べて向上させることができる。
【0023】
又、従来のように、可動アームのスキャン速度を水切り速度に厳密に一致させる必要がなく、ウェーハの乾燥効率及び品質性能が従来に比べて向上する
請求項2記載の発明は、排水口からの液体の排水が効果的に進行するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、液体の水位が水面全域において円滑に低下し、ウェーハ表面全域における蒸発乾燥が一層均等に実行される。又、液体は重力により自然落下するので、排水ポンプが不要になる。
【0024】
請求項3記載の発明は、IPA蒸気及び/又は不活性ガスの圧力若しくは流速を適宜調整できるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、ウェーハの乾燥条件や種類が異なった場合でも、IPA蒸気及び/又は不活性ガスの圧力若しくは流速を最適値に容易に変更させることができる。
【0025】
請求項4記載の発明は、液体の水位低下速度を任意に調整できるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、乾燥条件等に応じてウェーハの蒸発乾燥速度を適宜変更させることができる。
【0026】
請求項5記載の発明は、ウェーハと接触する液体の表面張力を低下させたのち、液体を排水制御することにより、ウェーハ表面を均等に蒸発乾燥させることができる。斯くして、従来のスピン乾燥のように、ウェーハ表面に微小な水玉が残存しなくなるので、ウォータマークの発生を抑制してデバイス性能を向上させることができる。
【0027】
又、可動アームのスキャン速度を調整させる工程が無くなるので、従来に比べてウェーハの乾燥効率及びウェーハの品質性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明はウェーハ表面におけるウォータマークの形成を抑制し、且つ、ウェーハの乾燥効率及び品質性能を向上させるという目的を達成するため、液体が溜められた水槽内にウェーハを静置させて該ウェーハを乾燥させる排水制御水引き乾燥装置であって、前記ウェーハの上面が前記液体の水面に近接するように該ウェーハを水面下に保持する保持部材と、該ウェーハの上面中央部の上方に設けられたIPA蒸気及び/又は不活性ガス吹き付け用の供給ノズルと、前記水槽の底面に形成された排水口とを備え、前記ウェーハの上面中央部に前記供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付けた後、前記排水口から前記液体を排出させながら該液体の水位を低下させることにより、前記ウェーハ表面を大気中に露出させて蒸発乾燥させることによって実現した。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図5に従って説明する。本実施例では、CMP装置により研磨された1次洗浄後のウェーハを乾燥させる際に、該ウェーハ表面にウォータマークが形成されないようにしたものである。
【0030】
即ち、液体(超純水)が溜められた水槽内にウェーハを静置させて、該ウェーハの上面中央部にIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付けて、ウェーハ表面上の液体の表面張力を低下させた後、液体を所定の速度で緩やかに排水させることにより、ウェーハ表面から水引きラインを徐々に下降退避させながら、ウェーハの露出面領域を次第に拡大させて蒸発乾燥させる。斯くして、微小な水玉がウェーハ上に残存することなく、ウェーハ表面の水分が円滑かつ完全に除去乾燥される。
【0031】
本実施例に係る排水制御水引き乾燥装置1の全体構成を図1に示す。この排水制御水引き乾燥装置1によれば、液体2が溜められた水槽4を備え、該水槽4内にウェーハ3を静置させた状態で、液体2の水面を徐々に下降させて、ウェーハ3表面を蒸発乾燥させることができる。
【0032】
同図に示すように、排水制御水引き乾燥装置1の水槽4は、上面開口タイプの椀型に形成されている。又、水槽4の上方には液体2を注水するための液体供給管(図示せず)が設けられ、該液体供給管から水槽4内に所定量の液体2を注水することにより、液体2の水面を水槽4の上面近傍まで上昇させる。
【0033】
水槽4内にはウェーハ3が保持部材5により保持され、この保持状態においてウェーハ3は水平状態に維持される。該保持部材5は上下動可能に設けることにより、ウェーハ3の高さを適宜調整させることができる。又、該保持部材5は複数のチャックピン6,6・・を有し、これらチャックピン6,6・・はウェーハ3の外周部を着脱自在に保持するように構成されている。又、該チャックピン6,6・・は、図2に示すように、保持部材5上のウェーハ3の外周部に沿って互いに等間隔を有するように配置されている。
【0034】
ウェーハ3の上面中央部の真上位置には供給ノズル7が設けられ、該供給ノズル7によりウェーハ3の上面中央部にIPA蒸気及び/又は窒素ガスN2が吹き付けられる。又、供給ノズル7には、図3に示すように、供給管8を介してIPA蒸気タンク9が連通接続されている。更に、供給管8の途中には流量調整器10及び圧力調整器11が設けられている。該流量調整器10及び圧力調整器11は、制御手段12により電気的に動作制御されるように構成されている。
【0035】
尚、流量調整器10及び圧力調整器11の弁開度や開閉時期などの動作条件は、必要により手動にて調整設定することもできる。
【0036】
従って、流量調整器10若しくは圧力調整器11を適宜調整することにより、供給ノズ
ル7からウェーハ3に吹き付けられるIPA蒸気の流速若しくは圧力を所望値に変更することができる。
【0037】
又、該供給ノズル7には供給管13を介して窒素ガスタンク14が連通接続されている。更に、供給管13の途中には流量調整器15及び圧力調整器16が設けられている。該流量調整器15及び圧力調整器16は、制御手段12により電気的に動作制御されるように構成されている。
【0038】
前記流量調整器15及び圧力調整器16の弁開度や開閉時期などの動作条件は、必要により手動にて調整設定することもできる。
【0039】
従って、流量調整器15若しくは圧力調整器16を調整することにより、供給ノズル7からウェーハ3に吹き付けられる窒素ガスN2の流速若しくは圧力を所望値に適宜変更することができる。
【0040】
水槽4の底面中央部には、図4に示すように、排水口17が形成されている。排水口17には液体2を外部に排出させるための排水路18が接続されている。該排水路18の途中には流量制御弁19が設置され、該流量制御弁19は制御手段12により動作制御されるように構成されている。
【0041】
この流量制御弁19の弁開度および開閉時期を制御手段12によって制御することにより、水槽4内の液体2の排水量を適宜調整変更することができる。
【0042】
次に、本実施例によるウェーハ3の乾燥処理の工程例について説明するが、本発明はこの工程例に限定されない。先ず、図示しない搬送手段によりウェーハ3を水槽4内の保持部材5上に載置した後、該保持部材5に設けた複数のチャックピン6,6・・によってウェーハ3外周部を保持固定する。
【0043】
又、前記液体供給管から所定量の液体2を水槽4内に注入する。これにより、ウェーハ3は液体2の水面下に静置されるが、この場合、液体2の水面は、ウェーハ3の上面に限りなく近接するように設定される。
【0044】
次に、保持部材5上にウェーハ3を静置させた状態、即ち、該ウェーハ3の上面が液体2の水面に極力近接した状態で、供給ノズル7からIPA蒸気及び/又は窒素ガスN2がウェーハ3の上面中央部に吹き付けられる。この場合、IPA蒸気及び/又は窒素ガスN2の流速若しくは圧力は、ウェーハ3の種類や乾燥条件などに応じて最適値に設定される。
【0045】
斯くして、ウェーハ3上面中央部へのIPA蒸気の吹き付けにより、ウェーハ3表面と接触する水引きラインの液体2がIPA(凝縮液)と置換されるために、該水引きラインの液体2の表面張力が大幅に低下する。
【0046】
又、ウェーハ3上面中央部への窒素ガスN2の吹き付けにより、ウェーハ3上面の中央部が大気中に露出し、図5に示すように、窒素ガスN2の吹き付け量の増大に伴い、該露出領域がウェーハ3上面の中央部Cから外周部に向かって放射状に漸次拡大する。
【0047】
従って、ウェーハ3上面において、液体2の水引きラインLは水玉を形成することなく、ウェーハ3の外周部に向かって同芯円状に後退移動するため、ウェーハ3の露出領域が次第に増大しながら、該露出面に付着している水分が効率良く蒸発乾燥される。
【0048】
然る後、必要により、供給ノズル7からのIPA蒸気及び/又は窒素ガスN2のウェーハ3の吹き付けを停止させる。而して、ウェーハ3上における液体2の水引きラインLの表面張力が低下した状態で、液体2の排水制御のみによる蒸発乾燥がウェーハ3の下面まで連続して続行される。
【0049】
即ち、水槽4内の液体2を排水口17から所定スピードで排出させることにより、液体2の水位をウェーハ3下面の直下まで徐々に低下させる。液体2の水面が低下するに伴い、ウェーハ3表面の大気への露出領域が上面から下面まで連続して漸増するようになる。
【0050】
この場合、液体2の水位低下速度と対応するウェーハ3の露出面の拡大速度は、液体2の排水速度を流量制御弁19によりコントロールすることによって、乾燥条件に応じた適正量に調整変更することができる。
【0051】
実験によれば、ウェーハ3上面中央部に99.9%のIPAを20cc垂らした後、窒素ガスN2を吹き付け速度25L/minでブローし、且つ、液体2の排水速度を3〜5cc/secに設定して乾燥を実施したところ、ウェーハ3表面にウォータマークは形成されなかった。
【0052】
以上説明したように本実施例によれば、ウェーハ3上面が液体2の水面に限りなく近接するように静置させた後、ウェーハ3の上面中央部に供給ノズル7からIPA蒸気及び/又は窒素ガスN2を吹き付ける。斯くして、ウェーハ3上面の液体2の表面張力を低下させると共に、ウェーハ3上面の中央部から外周側に液体2を排除して、液体2の水位を低下させることによって、ウェーハ3上面の中央部C及びその周囲領域を大気中に露出させる。
【0053】
即ち、図5に示すように、ウェーハ3上面において、液体2の水引きラインLがウェーハ3の半径方向外方へ徐々に進行するため、ウェーハ3上面において中央部Cから外周部に向かって露出領域が均等に拡大しつつ、連続的に効率良く蒸発乾燥される。
【0054】
然る後、液体2を排水口17から所定速度で排出させることにより、液体2の水位を徐々に低下させる。而して、液体2の水引きラインLがウェーハ3表面から所定スピードで退避することによって、ウェーハ3の上面から下面まで蒸発乾燥が円滑に実施される。従って、従来のスピン乾燥のように、ウェーハ3表面に水玉の残痕が形成されないので、ウォータマークの発生が効果的に抑制され、ウェーハ3のデバイス性能が向上する。
【0055】
又、椀型の水槽4の底面中央部に形成した排水口17には、水槽4の底面において最も高い水圧が作用する。従って、排水口17から液体2が重力により自動的に排出され、液体2の水位低下が円滑に進行する。斯くして、排水用ポンプの設置が不要であるうえに、前記蒸発乾燥がウェーハ3表面全域において一層均等かつ円滑に実行される。
【0056】
更に、ウェーハ3の乾燥条件や種類が異なった場合、IPA蒸気及び/又は窒素ガスN2の圧力若しくは流速は、ウェーハ3の乾燥条件や種類に応じて任意に設定変更できる。従って、ウェーハ3の乾燥条件や種類が異なった場合でも、IPA蒸気及び/又は窒素ガスN2の圧力と流速をウェーハ3の乾燥条件等に応じて容易に変更させることができる。
【0057】
更に又、排水口17からの液体2の排出速度は、流量制御弁19により調整され、これに伴い、液体2の水面低下速度も調整される。従って、ウェーハ3の乾燥条件等に応じて該ウェーハ3の乾燥速度を適宜変更させることができる。
【0058】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発
明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例を示し、排水制御水引き乾燥装置の構成を示す一部断面正面図。
【図2】一実施例に係るウェーハの保持状態を示す平面図。
【図3】一実施例に係る供給ノズルの配管系を示すブロック図。
【図4】一実施例に係る水槽(保持部材の図示は省略)の排水構造の一例を示す一部断面正面図。
【図5】一実施例に係るウェーハにIPA蒸気及び/又は窒素ガスを吹き付けたときの状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0060】
1 排水制御水引き乾燥装置
2 液体
3 ウェーハ
4 水槽
5 保持部材
6 チャックピン(ウェーハ固定部)
7 供給ノズル
9 IPA蒸気タンク
10 流量調整器
11 圧力調整器
12 制御手段
14 窒素ガスタンク(不活性ガスタンク)
15 流量調整器
16 圧力調整器
17 排水口
19 流量制御弁(排水制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が溜められた水槽内にウェーハを静置させて該ウェーハを乾燥させる排水制御水引き乾燥装置であって、
前記ウェーハの上面が前記液体の水面に近接するように該ウェーハを水面下に保持する保持部材と、
該ウェーハの上面中央部の上方に設けられたIPA蒸気及び/又は不活性ガス吹き付け用の供給ノズルと、
前記水槽の底面部に形成された排水口とを備え、
前記ウェーハの上面中央部に前記供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付けた後、前記排水口から前記液体を排出させながら該液体の水位を低下させることにより、前記ウェーハ表面を大気中に露出させて乾燥させるように構成したことを特徴とする排水制御水引き乾燥装置。
【請求項2】
上記水槽は椀型に形成され、且つ、該水槽の底面中央部に上記排水口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の排水制御水引き乾燥装置。
【請求項3】
上記供給ノズルから上記ウェーハの上面中央部に吹き付けられるIPA蒸気及び/又は不活性ガスの圧力と流速の双方又は一方は可変調整可能であることを特徴とする請求項1記載の排水制御水引き乾燥装置。
【請求項4】
上記排水口には流量制御弁が設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の排水制御水引き乾燥装置。
【請求項5】
液体が溜められた水槽内にウェーハを静置させて該ウェーハを乾燥させる排水制御水引き乾燥方法であって、
該ウェーハの上面が液体の水面に近接するように前記ウェーハを保持部材により水面下に保持する工程と、
該ウェーハの上面中央部に供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付ける工程と、
前記水槽内の液体を排水口から排出させる工程とを含み、
前記ウェーハの上面中央部に前記供給ノズルからIPA蒸気及び/又は不活性ガスを吹き付けた後、前記排水口から前記液体を排出させながら該液体の水位を低下させることにより、前記ウェーハ表面を大気中に露出させて乾燥させることを特徴とする排水制御水引き乾燥方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−306076(P2008−306076A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153415(P2007−153415)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】