説明

放電電極の面調整方法及び電極面位置計測装置

【課題】放電電極の面調整を短時間に、かつ、人的要因によるバラツキを抑制できる放電電極の面調整方法及び電極面位置計測装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電極面17に沿ったZ方向の両端側の位置が電極面17に交差する厚さ方向に移動可能に取り付けられた放電電極3における電極面17のレベルを略一定となるように調整する放電電極3の面調整方法であって、複数の変位計61が直線状に配置された計測部材42を、変位計61が電極面17に対向するとともにZ方向と直交するY方向に沿った位置に配置されるように設置する設置工程と、各変位計61によって電極面17のレベルを計測する計測工程と、計測工程で計測された結果に基づいて放電電極3の両端側の位置を調整する位置調整工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電電極の面調整方法及び電極面位置計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体、薄型ディスプレイ、太陽電池等における薄膜形成等は、プラズマを用いて基板に処理を行う真空処理装置が利用されている。
このような真空処理装置としては、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、ドライエッチング装置、スパッタリング装置等がある。
例えば、プラズマCVD装置では、真空雰囲気にされたチャンバ内で、接地された対向電極に保持された基板に対して放電電極が対向して配置されている。放電電極に高周波電源から高周波電力が供給されることによって放電電極と基板との間に供給された原料ガスがプラズマ化され、基板に製膜される。
【0003】
近年、生産性向上のために膜質を維持しながら製膜速度の増加が求められている。このため、例えば、製膜雰囲気圧力を高く設定して基板と放電電極との間隔を小さくするということが行なわれる。
このようにした場合、基板と放電電極との平行度が高精度に設定されていないと、基板に形成される薄膜の厚さ分布が不均一になるということがある。特に、生産性向上のために大面積化された基板(例えば、1m以上、或いは一辺が1m以上のサイズ)を対象とする場合は、基板と放電電極との平行度を精度良く調整して設置することが難しく、一層に薄膜の厚さ分布(膜分布)が不均一になる要因となりやすい。
更に基板と放電電極との間隔が小さくなるに従い平行度の精度管理が厳しくなり、放電電極自体のソリなどが0.1mm〜0.2mm程度あるものについては、基板と放電電極との間隔が基板面内で基板中心に対して対称となるように放電電極の平行度を調整して、製膜分布に影響しないようにする高度な配慮が必要になる。
これを解消するものとして、例えば、特許文献1に示されるように、基板と放電電極との平行度を高精度に設定できるものが提案されている。
【0004】
また、大面積化された基板に製膜する場合、プラズマの生成状態を均一にするため複数の分割電極を並列に設置して放電電極を形成するものがある。放電電極は製膜性能を維持するために、製膜枚数(生産量)に応じて交換されるので、その都度、新しい分割電極を組み込んで放電電極を形成することになる。
この新たに取付けた放電電極に対する位置調整の1つとして面調整を行い、放電電極の平行度を確保している。
放電電極の平行度が担保されないと、プラズマにムラが生じ、均一な膜分布が得られない。この平行度として、例えば、基板と放電電極との間の距離が4mm〜20mmに対し、基板と放電電極との間の距離の10%以内である±0.2mm以内に調整することがのぞましく、±0.1mm以内に調整することが更に望ましい。なお、各分割電極の平行度仕様は0.2mm以下に加工されている。
【0005】
従来、この面調整は、分割電極の配列方向に放電電極よりも長く延在する平面を有する調整用治具を、平面が放電電極の電極面に対向するようにしてチャンバに取付ける。この調整用治具は、配列方向に直交する方向に間隔を空けて2ヶ所に取り付けられる。
作業員が、隙間ゲージを各分割電極と調整用治具との間に差し込み、調整用治具の平面及び電極面の間隔を計測しつつ、この間隔が所定の管理値以内となるように各分割電極の電極面位置を調整することで、電極面の平行度を確保する手法がある。
また、各分割電極の電極面を調整用治具の平面に当接するようにして調整することもされている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−270527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の面調整では、調整に多くの時間(例えば、1個の放電電極あたり2時間程度)と労力とを要する。このように、調整が長時間に及ぶことは、装置の停止時間を増加し生産量を低下させるとともに、作業員の集中力低下にもつながるので、一定の精度を確保できない恐れがある。
また、面調整、特に、位置の計測に作業員の判断が入るので、それに基づく位置調整が作業員によってバラツク恐れがある。
更には、放電電極自体のソリなど若干(0.1mm〜0.2mm程度)あるものについては、基板と放電電極との間隔が基板面内で基板中心に対して対称となるように放電電極の平行度の計測と調整を繰り返す必要があり、更に長時間の調整を必要とする場合がある。
各分割電極の電極面を調整用治具の平面に当接するようにして調整する方法では、押付けにより調整用治具が撓んだり、分割電極が変形したりすることがある。これらの変形は位置によって変形量が異なるので、分割電極の調整位置がバラツクことになる、あるいは、調整用治具を取外すと分割電極がもとに戻るため調整された位置がずれることになる。
したがって、従来の面調整では、調整がより長時間になるし、精度も必ずしも良好とは言えない。また、調整に長時間かかると、その間は製膜作業を行えないので、製品の生産性が低下し、コストアップとなる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、放電電極の面調整を短時間に、かつ、人的要因によるバラツキを抑制できる放電電極の面調整方法及びこれに用いる電極面位置計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の第1態様は、電極面に沿った第1方向の両端側の位置が該電極面に交差する第2方向に移動可能に取り付けられた放電電極における前記電極面のレベルを略一定となるように調整する放電電極の面調整方法であって、複数の変位計が直線状に配置された計測部材を、該変位計が前記電極面に対向するとともに前記第1方向と直交する第3方向に沿った位置に配置されるように設置する設置工程と、前記各変位計によって前記電極面のレベルを計測する計測工程と、該計測工程で計測された結果に基づいて前記放電電極の両端側の位置を調整する位置調整工程と、を備えている放電電極の面調整方法である。
【0010】
放電電極は、電極面に沿った第1方向の両端側の位置が電極面に交差する第2方向に移動可能にされているので、放電電極は、この両端側の位置を調整することによって、電極面の位置を調整することができる。
複数の変位計が直線状に配置された計測部材を、変位計が放電電極の電極面に対向するとともに第1方向と直交する第3方向に沿った位置に配置されるように設置する。これは、例えば、放電電極が取り付けられる製膜室の壁面等の放電電極との位置関係が固定された部分に取り付けることになる。
そして、各変位計によって電極面のレベルを計測し、計測された結果に基づいて放電電極の電極面のレベルが略一定となるように放電電極の両端側の位置を調整する。ここで電極面のレベルとは、放電電極を設置する真空容器の基準面との距離を示す。このように、基準面に対して対向電極が略平行に設置されるので、放電電極の電極面のレベルが略一定となることで、放電電極の面と対向電極の面との間隔を略均一にすることができる。
【0011】
このように、放電電極のレベルの計測は複数の変位計が直線状に配置された計測部材によって複数個所を同時に計測するので、電極面のレベルを一挙に計測して評価・判断することができる。これにより、放電電極の面調整を精度良く短時間に行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
面調整が短時間時間で行われるので、製膜作業の停止時間を短縮することができる。これにより、製品の生産性を向上することができ、製品を安価に製造することができる。
また、各電極面のレベルは変位計によって計測されるので、計測を機械的に行うことができる。これにより、放電電極の位置を調整する際に、作業員の判断が若干入ったとしても面調整の人的要因によるバラツキを抑制することができる。
精度よく面調整された放電電極を用いるので、基板に形成される薄膜の厚さ分布を均一にすることに寄与できる。
【0012】
上記態様では、前記放電電極は、それぞれ前記第1方向に沿う両端側の位置が前記第2方向に移動可能に取り付けられるとともに前記第3方向に並列された複数の分割電極によって構成され、前記計測工程では、前記各変位計によって前記各分割電極の電極面のレベルを計測し、前記位置調整工程では、前記計測工程で計測された結果に基づいて、前記各分割電極の両端側の位置を調整することとしてもよい。
【0013】
複数の分割電極は、第3方向に並列するように製膜室に取り付けられ、放電電極が形成される。分割電極は、第1方向に沿う両端側の位置が電極面に交差する第2方向に移動可能にされているので、各分割電極は、両端側の位置を調整することによって、電極面の位置を調整することができる。
放電電極が形成された状態で、複数の変位計が直線状に配置された計測部材を、変位計が分割電極の電極面に対向するとともに第3方向に沿った位置に配置されるように設置する。これは、例えば、放電電極が取り付けられる製膜室の壁面等の放電電極との位置関係が固定された部分に取り付けることになる。
そして、各変位計によって各電極面のレベルを計測し、計測された結果に基づいて各分割電極の電極面のレベルが略一定となるように各分割電極の両端側の位置を調整する。
なお、調整の精度を向上させるために、変位計は、各分割電極に対応し、それらの略同じ位置を計測するように備えられるのが望ましい。したがって、変位計は、少なくとも分割電極と同数備えられる。
【0014】
このように、各電極面のレベルの計測を複数の変位計が直線状に配置された計測部材によって複数個所に計測されるので、各電極面のレベルを一挙に計測して評価・判断することができる。これにより、放電電極の面調整を精度良く短時間に行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
面調整が短時間時間で行われるので、製膜作業の停止時間を短縮することができる。これにより、製品の生産性を向上することができ、製品を安価に製造することができる。
また、各電極面のレベルは変位計によって計測されるので、計測を機械的に行うことができる。これにより、分割電極の位置を調整する際に、作業員の判断が若干入ったとしても面調整の人的要因によるバラツキを抑制することができる。
精度よく面調整された放電電極を用いるので、基板に形成される薄膜の厚さ分布を均一にすることに寄与できる。
【0015】
上記態様では、前記設置工程及び前記計測工程は、前記第1方向で間隔を空けた複数箇所で行われることが望ましい。
このようにすると、分割電極の電極面における傾斜量が電極面に対する2次元分布として判断できるので、それを考慮した位置調整を適切に行うことができる。
【0016】
上記態様では、前記変位計は、接触式であることとしてもよい。
このようにすると、比較的安価な変位計を用いることになるので、面調整を安価に行うことができる。
また、上記態様では、前記変位計は、非接触式であることとしてもよい。
このように、非接触式の変位計とすると、電極面に変位計の部材が接触しないので、電極面に傷が付くことを確実に防止することができる。
【0017】
また、本発明の第2態様は、電極面に沿った第1方向の両端側の位置が該電極面に交差する第2方向に移動可能に取り付けられた放電電極における前記電極面のレベルを計測する電極面位置計測装置であって、複数の変位計が直線状に配置された計測部材と、前記第1方向と直交する第3方向における前記放電電極の両外側に、前記第1方向に延在するように設置される一対の取付部材と、それぞれ該各取付部材の前記第3方向における略同等の位置に取り付けられ、前記計測部材の端部分を保持する一対の保持部材と、が備えられている電極面位置計測装置である。
【0018】
例えば、製膜処理を繰り返した放電電極をメンテナンス用に交換する場合、ウエット洗浄処理が必要な放電電極を取り外し、洗浄メンテナンス済の新たな放電電極を製膜室に取り付ける。
新たな、放電電極は、電極面のレベルが略一定になるように面調整される。この際は、電極面位置計測装置を用いて放電電極のレベルを計測する。
この場合、一対の取付部材が、第3方向における放電電極の両外側に、第1方向に延在するように設置される。取付部材に取り付けられた保持部材に計測部材の端部分を保持させると、保持部材は第1方向における略同等の位置に取り付けられているので、計測部材は第3方向に沿って延在するように配置することができる。
このように、取付部材を設置し、計測部材を保持部材に保持させるだけで、所定の位置における電極面のレベルを計測できるので、所定の計測を容易で、すばやく行うことができる。
なお、計測部材を保持部材に保持させた状態で取付部材を取り付けるようにしてもよい。
【0019】
取付部材は、例えば、放電電極が取り付けられる製膜室の壁面等の放電電極との位置関係が固定された部分に取り付けることが望ましい。
このように、電極面のレベルは、複数の変位計が直線状に配置された計測部材によって複数個所で計測されるので、電極面のレベルを一挙に計測して評価・判断することができる。これにより、放電電極の面調整を短時間に精度良く行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
したがって、面調整が短時間で行われるので、製膜作業の停止時間を短縮することができる。これにより、製品の生産性を向上することができ、製品を安価に製造することができる。
また、各電極面のレベルは変位計によって計測されるので、計測を機械的に精度良く簡易に行うことができ、面調整の人的要因によるバラツキを抑制することができる。
【0020】
また、上記態様では、前記放電電極は、それぞれ前記第1方向に沿う両端側の位置が前記第2方向に移動可能に取り付けられるとともに前記第3方向に並列された複数の分割電極によって構成され、前記変位計は、前記各分割電極に対応して配置されているようにしてもよい。
【0021】
例えば、製膜処理を繰り返した放電電極をメンテナンス用に交換する場合、ウエット洗浄処理が必要な放電電極を取り外し、洗浄メンテナンス済の新たな複数の分割電極を第3方向に並列するように製膜室に取り付け、新たな放電電極が形成される。
新たな、放電電極は、各分割電極の電極面のレベルが略一定になるように面調整される。この際は、電極面位置計測装置を用いて各分割電極のレベルを計測する。
この場合、一対の取付部材が、第3方向における放電電極の両外側に、第1方向に延在するように設置される。取付部材に取り付けられた保持部材に計測部材の端部分を保持させると、保持部材は第1方向における略同等の位置に取り付けられているので、計測部材は第3方向に沿って延在するように配置することができる。
このように、取付部材を設置し、計測部材を保持部材に保持させるだけで、所定の位置における電極面のレベルを計測できるので、所定の計測を容易で、すばやく行うことができる。
なお、計測部材を保持部材に保持させた状態で取付部材を取り付けるようにしてもよい。
【0022】
取付部材は、例えば、放電電極が取り付けられる製膜室の壁面等の放電電極との位置関係が固定された部分に取り付けることが望ましい。
調整の精度を向上させるために、変位計は、各分割電極に対応し、それらの略同じ位置を計測するように備えられるのが望ましい。したがって、変位計は、少なくとも分割電極と同数備えられる。
このように、各電極面のレベルの計測を複数の変位計が直線状に配置された計測部材によって複数個所に計測するので、各電極面のレベルを一挙に計測して評価・判断することができる。これにより、放電電極の面調整を短時間に精度良く行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
これにより、面調整が短時間時間で行われるので、製膜作業の停止時間を短縮することができる。したがって、製品の生産性を向上することができ、製品を安価に製造することができる。
また、各電極面のレベルは変位計によって計測されるので、計測を機械的に精度良く簡易に行うことができ、面調整の人的要因によるバラツキを抑制することができる。
【0023】
上記態様では、前記保持部材は、前記取付部材に前記第1方向に移動可能に取り付けられていることとしてもよい。
このようにすると、保持部材を移動させることによって第1方向で間隔を空けた複数箇所における電極面のレベルを計測することができる。
したがって、分割電極の電極面における傾斜量が電極面に対する2次元分布として判断できるので、それを考慮した位置調整を適切に行うことができる。
【0024】
上記態様では、前記計測部材及び前記保持部材は複数組備えられ、該各組の前記保持部材は、前記取付部材に前記第1方向に間隔を空けて取り付けられていることとしてもよい。
このようにすると、取付部材及び計測部材を設置するだけで、第1方向で間隔を空けた複数箇所における電極面のレベルを一挙に計測することができるので、分割電極の電極面における傾斜量が短時間に判断できる。
【0025】
上記態様では、前記変位計は、接触式であることとしてもよい。
このようにすると、比較的安価な変位計を用いることになるので、面調整を安価に行うことができる。
また、上記態様では、前記変位計は、非接触式であることとしてもよい。
このように、非接触式の変位計とすると、電極面に変位計の部材が接触しないので、電極面に傷が付くことを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる放電電極の面調整方法によれば、電極面のレベルの計測を複数の変位計が直線状に配置された計測部材によって計測されるので、放電電極の面調整を短時間に行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
これにより、製膜作業の停止時間を短縮することができるので、製品の生産性を向上することができ、製品を安価に製造することができる。
また、電極面のレベルは変位計によって計測されるので、面調整の人的要因によるバラツキを抑制することができる。
また、本発明にかかる電極面位置計測装置によると、取付部材を設置し、計測部材を保持部材に保持させるだけで、所定の位置における電極面のレベルを計測できるので、所定の計測を容易で、すばやく行うことができる。
また、電極面のレベルの計測を複数の変位計が直線状に配置された計測部材によって計測するので、放電電極の面調整を短時間に精度良く行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
これにより、面調整が短時間時間で精度良く行われるので、製膜作業の停止時間を短縮して生産量を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態にかかる放電電極の面調整方法を用いる薄膜製造装置1について図1〜図6を参照して説明する。ここでは、放電電極が複数に分割した分割電極から構成されたものについて説明する。
図1は、薄膜製造装置の概略構成を示す側面図である。
薄膜製造装置1は、製膜室6、対向電極2、均熱板5、均熱板保持機構11、放電電極3、防着板4、高周波給電伝送路12、整合器13、高真空排気部31、低真空排気部35、台37を具備する。なお、本図において、ガス供給に関する構成は省略している。
【0028】
製膜室6は、真空容器であり、その内部で基板8にシリコン系薄膜(非晶質系シリコン膜、微結晶シリコン膜など)を製膜する。製膜室6は、基本的に直方体構造であり、台37上でZ方向、すなわち鉛直方向に対してα=7°〜12°傾けて保持されている。このため、対向電極2の基板8の製膜処理面の法線が、水平方向(X方向)に対して7°〜12°上に向く。基板8を鉛直方向から僅かに傾けることは、装置の設置スペースの増加を抑えながら基板8の自重を利用して少ない手間で基板8を保持し、更に基板8と対向電極2の密着性を向上して基板8の温度分布と電位分布を均一化することが出来て好ましい。
【0029】
製膜室6は、製膜室本体6bと製膜室用蓋6aとを備える。製膜室本体6bは、図1中AAで示される線の右側の部分である。製膜室用蓋6aは、左側の部分である。製膜室本体6bと製膜室用蓋6aとは、放電を用いて基板8に製膜を行うとき(以下、「製膜時」ともいう)には、一体となり真空容器を形成する(図1)。AAで示される面は、例えばOリングでシールされる。
製膜室6のメンテナンス作業を行うときには、図示しない移動機構により製膜室用蓋6aがX方向へ分離し、互いに離れる。したがって、作業者は、製膜室6の外側の領域を用いて、製膜室本体6bと製膜室用蓋6aとに対して別々にメンテナンス作業を行うことができる。
【0030】
対向電極2は、基板8を保持可能な保持手段(図示されず)を有する非磁性材料の導電性の板である。セルフクリーニングを行う場合は耐フッ素ラジカル性からニッケル合金やアルミやアルミ合金の使用が望ましい。対向電極2は、放電電極3に対向する電極(例示:接地側)となる。対向電極2は、一方の面を均熱板5の表面に密接し、製膜時に他方の面を基板8の表面と密接する。
【0031】
均熱板5は、内部に温度制御された熱媒体を循環したり、または温度制御されたヒーターを組み込むことで、自身の温度を制御して、全体が概ね均一な温度を有し、接触している対向電極2の温度を所定温度に均一化する機能を有する。
熱媒体は、非導電性媒体であり、水素やヘリウムなどの高熱伝導性ガス、フッ素系不活性液体、不活性オイル、及び純水等が使用でき、中でも150℃〜250℃の範囲でも圧力が上がらずに制御が容易であることから、フッ素系不活性液体(例えば商品名:ガルデン、F05など)の使用が好適である。
均熱板保持機構11は、均熱板5及び対向電極2を製膜室6の側面(図1の右側)に対して略平行となるように保持する。均熱板5、対向電極2及び基板8は、基板搬入搬出時は基板移動が可能なよう放電電極3との距離は広がっているのに対し、製膜時は、放電電極3へ近づける。それにより、基板8と放電電極3との距離dは、例えば、4mm〜20mmとすることができる。
このように、放電電極3の電極面のレベルを計測して略一定に調整することで、放電電極3の面と製膜室6の基準面とが略平行になり、対向電極2の面の間隔が略均一になる。一方、対向電極の位置を製膜室6の基準面に別途調整することで、基板8の面と放電電極3の面との距離dを略均一の所定距離となるように調整することができる。
【0032】
放電電極3は、Y方向(第3方向)に複数、例えば、8個の分割電極3a〜3hに分割されている(図2参照)。分割電極3a〜3hはZ方向(第1方向)に伸びた各棒状の縦電極(図示省略)を略平行に組み合わせて構成されている。分割電極3a〜3hには、基板8に対向する電極面17が備えられている。
各分割電極3a〜3hのZ方向両端部には、それぞれ間隔空けて一対の取付部21,22が突出するように設けられている。
取付部21,22は、製膜室用蓋6aに取り付けられた支持部23,24にそれぞれ電極面17に略直交する方向(第2方向)、言い換えると分割電極3a〜3hの厚さ方向(第2方向)に移動を許容するように取り付けられている。
取付部21,22は、調整部材25,26を操作することによって厚さ方向に移動される。
【0033】
高周波給電伝送路12a、12bを接続する給電点53,54とから、それぞれ高周波電力を供給して、放電電極3と対向電極2との間に原料ガスのプラズマを発生させ基板8に膜を製膜する。
防着板4は、接地され、プラズマの広がる範囲を抑えて、膜が製膜される範囲を制限する。防着板4は、放電電極3における対向電極2と反対側の空間を覆うように保持されている。
整合器13(13a、13b)は、出力側のインピーダンスを整合し、図示されない高周波電源から高周波給電伝送路14(14a、14b)、高周波給電伝送路12(12a、12b)を介して高周波電力を放電電極3へ送電する。
【0034】
放電電極3の温度調節を行う場合、高周波給電伝送路12は、例えば、その円管の中心部分に設けた細管を用いて熱媒体を通し、その周辺部を用いて電力を給電することが可能である。
各分割電極3a〜3hの給電点54側へ熱媒体を供給し、各分割電極3a〜3hの給電点53側から熱媒体供給装置へ熱媒体を送出する。熱媒体の温度を熱媒体供給装置で制御することで、各分割電極3a〜3h、すなわち、放電電極3の温度を所望の温度に制御して製膜室6内のヒートバランスを適切に保つことができる。これにより、基板8の表裏温度差にともなうソリ変形を抑制することができる。
【0035】
本実施形態では、分割電極3a〜3hの数を8個としているが、これよりも多い場合と少ない場合があり、特に限定されるものではない。各分割電極3a〜3hへの電力供給を、8個を超えるまたは8個未満の整合器13a、13b及び高周波給電伝送路14a、14bとの組みで行うことも可能である。また各々個別の高周波電源部から電力を供給しても良い。
これらの場合、その組の数に対応するように、分割電極3a〜3hの数を加減して組み分けが好ましい。
【0036】
次に、電極面位置計測装置40について説明する。
電極面位置計測装置40には、図2に示されるように、一対の計測治具41と、計測部材42と、が備えられている。
計測治具41には、図3に示されるように、Z方向に延在するように配置される取付部材43と、取付部材43に沿って移動可能に取り付けられた可動ガイド(保持部材)44とが備えられている。
取付部材43には、矩形断面をした棒状部45と、棒状部45の両端に固定して取り付けられた取付部46,47が備えられている。
【0037】
棒状部45の一側面には、長手方向に複数の歯からなるラック48が形成されている。
ラック48の外側部分には、可動ガイド44の移動を制限するストッパ49が取り付けられている。
取付部46,47は、略直方体で、その一面に製膜室用蓋6aの壁部の所定管理位置に嵌合して位置を固定可能とする開口部50,51が形成されている。このため、取付部46,47は、側面視がコ字状をしている。
【0038】
図4に示すように、可動ガイド44の内部には、ラック48と噛み合うピニオン52が位置固定で、回転可能に取り付けられている。ピニオン52は、駆動モータ55によって回転駆動される。
可動ガイド44は、ピニオン52の回転により、ラック48との噛み合い位置が変化するので、棒状部45に沿って移動し所定の管理位置で停止する。
可動ガイド44の一側面には、計測部材42の端部を取り付けられる保持部57が取り付けられている。
【0039】
なお、本実施形態では、可動ガイド44はラック−ピニオンによって移動されるようにされているが、これに限定されず、例えば、ボールネジ式等の機械式、リニアガイド、LMガイド等の電磁力による移動手段を設けたもの等適宜な手段を用いてもよい。
【0040】
計測部材42には、棒材である本体59と、本体59の一面に長手方向に間隔を空けて取り付けられた複数の変位計61と、が備えられている。本体59は、矩形断面をした中空棒材やL型断面であると軽量化できるので好ましい。
本体59は、例えば、金属製とされ、放電電極3の幅よりも長くされている。本体59の保持部57への取り付け部分は、相互位置ずれが生じないようインローなどによる嵌め合い構造となっていることが好ましい。また、例えば、保持部57に磁石を取り付けると、その磁力によって本体59を簡易に装着することができる。また、本体59は、例えば、ボルト等によって保持部57に取り付けるようにしてもよい。こうして、計測治具41を設置した後に、計測部材42を簡易に取り付けることが出来る。
【0041】
変位計61は、各分割電極3a〜3hに各2個、計16個備えられている。2個の変位計61は、各分割電極3a〜3hのY方向における一対の取付部21,22が設置されている位置を計測するように取り付けられている。このため、各分割電極3a〜3hの略同じ位置を計測することができるので、各分割電極3a〜3hの電極面17を同じ条件で比較することができる。
なお、本実施形態では、変位計61は、各分割電極3a〜3hに各2個備えられているが、これに限定されるものではなく、各1個でも各3個以上でもよい。
【0042】
図5に示されるように、変位計61は、例えば、非接触で位置を計測できるレーザ式変位計が用いられている。変位計61の各分割電極3a〜3hに対向する部分には、レーザ式変位計の送受信部62が配置されている。
変位計61は、距離に応じた出力(電圧)を発生するようにされている。
非接触式の変位計61としては、レーザ式変位計に限らず、超音波変位計、光学式変位計、渦電流式変位計等適宜形式のものを用いるようにしてもよい。
【0043】
以上のように構成された電極面位置計測装置40を用いて行う放電電極3の面調整について説明する。
製膜処理を繰り返した放電電極3は製膜性能を維持するために、製膜枚数(生産量)に応じて定期的にセルフクリーニングとしてフッ素系ガスを製膜室内に導入して、放電電極付着膜を除去する。しかし幾度かのセルフクリーニングを繰り返すと放電電極の付着膜が一部残留するようになるため、定期的な薬液によるウェット洗浄を行うために、既にウェット洗浄済の放電電極と交換される。
放電電極3を交換する場合、ウェット洗浄が必要な分割電極3a〜3hを取り外し、新たにウェット洗浄済の分割電極3a〜3hを持ち込む。各分割電極3a〜3hは、その両端部分付近にある取付部21,22により製膜室用蓋6a側の支持部23,24に取り付けられることによって、Y方向に並列するように製膜室用蓋6aに取り付けられ、新たな放電電極3が形成される。
【0044】
新たな、放電電極3は、各分割電極3a〜3hの電極面17のレベルが略一定になるように面調整される。
この場合、一対の計測治具41がY方向における放電電極3の両外側の所定の管理位置に取り付けられる。すなわち、取付部材43の取付部46,47は、開口部50,51が製膜室用蓋6aの上壁および下壁を挟むように引っ掛けられて、所定管理位置に調整された後、取付部46は、ボルト63によって製膜室用蓋6aの上壁と下壁に固定される。
このとき、各可動ガイド44は、Z方向において略同一位置になるようにされている。
【0045】
この状態で、計測部材42を変位計61が放電電極3を向くようにしてその両端部を保持部57に磁石やボルトにより取り付ける。
これにより、一対の可動ガイド44はZ方向における略同等の位置に取り付けられているので、計測部材42はY方向に沿って延在するように配置することができる。
【0046】
この状態で各変位計61によって各電極面17のレベルを計測する。図6は、この計測結果を模式的に示している。すなわち、変位計61の各設置位置を横軸に、変位計61の出力である電圧を縦軸にとって、計測結果をプロットし、それを軌跡Kで示している。
この出力電圧は送受信部62から電極面17までの距離に比例するので、設定した距離を示す適正電圧VTからの偏差によって各電極面17のレベルの適合性、必要な調整量等が判断される。
非接触式の変位計61であるので、電極面17に変位計61の部材が接触しない。このため、電極面17に傷が付くことを確実に防止することができる。
【0047】
次いで、各駆動モータ55を作動してピニオン52を所定量回転させる。これにより、可動ガイド44は、棒状部45に沿って移動し、計測部材42のZ方向位置が変更される。
この変更された位置において、同様に各変位計61によって各電極面17のレベルを計測する。
必要に応じて、さらに異なるZ方向位置において各電極面17のレベルを計測するようにしてもよい。
計測結果はデータロガーが付いたパソコンに伝送されて、各電極面17の複数位置でのレベルを電極面上の2次元分布とし3次元で画面表示され、必要な調整量等が的確に判断される。各電極の取付部21,22にある調整部材25,26を操作するのに必要な調整量を画面表示すると更に好ましい。
このように、Z方向位置が異なる2位置以上の各電極面17のレベルを計測すると、各分割電極3a〜3hの電極面17におけるZ方向の傾斜量を電極面上の2次元分布として判定することができる。
【0048】
このように計測された結果は電極面上の2次元分布とし良好に把握できるので、この計測結果に基づいて各分割電極3a〜3hの電極面17が所定管理値以内の略一定のレベルとなるように、それぞれの各調整部材25,26を操作して電極面17の位置を適切に調整する。各分割電極3a〜3hの電極面のレベルを計測して略一定に調整することで、各分割電極3a〜3hの面と対向電極2の面との間隔を略均一にすることができる。
また、放電電極自体のソリなど若干(0.1mm〜0.2mm程度)あるものについては、基板と放電電極との間隔が基板面内で基板中心に対して対象となるように放電電極の平行度を調整することが好ましい。
計測結果を表示したパソコンで、それぞれの各調整部材25,26を操作するのに必要な調整量を画面表示すると更に好ましい。
【0049】
このように、各電極面17のレベルの計測を複数の変位計61が直線状に配置された計測部材42によって計測するので、各電極面17のレベルを一挙に計測することができる。これにより、計測時間が短縮されるので、放電電極の面調整を短時間に行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
また、各電極面17のレベルは変位計61によって計測されるので、計測を機械的に精度良く行うことができ、面調整の人的要因によるバラツキを抑制することができる。
【0050】
このように、面調整が短時間時間で行われるので、製膜作業の停止時間を短縮することができる。これにより、製品の生産性を向上することができ、製品を安価に製造することができる。
精度よく面調整された放電電極3を用いるので、基板8に形成される薄膜の厚さ分布を均一にすることに寄与するができる。
【0051】
なお、本実施形態では、変位計61として非接触式のレーザ式変位計を用いているが、これは接触式の変位計を用いてもよい。
接触式変位計としては、例えば、接触子の直線的な移動によって出力である電圧が変化するリニアポテンショメータ、作動トランス等を介在させ弱いバネ力で接触子を各電極面17に押付けるものが適当である。
この場合には、送受信部62の変わりに、接触子を配置することになる。
この接触式の変位計は比較的安価であるので、電極面位置計測装置40を安価にすることができる。これにより、放電電極3の面調整を安価に行うことができる。
【0052】
また、変位計61として作用する圧力によって電圧が変化する圧電素子を用いるようにしてもよい。
この場合には、送受信部62の部分に、圧電素子を取り付けることになる。そして、圧電素子先端に電極面17が接すると電極面17の平行が取れるように設定する。
このように設定すると、圧電素子に電圧が生じ始める境界を目標に各分割電極3a〜3hを調整することになるので、電極面17を圧電素子に押付けすぎることなく電極面17を調整できる。
【0053】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図7および図8を参照して説明する。
本実施形態の基本構成は、第1実施形態と基本的に同様であるが、第1実施形態とは、電極面位置計測装置の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、この異なっている部分を説明し、その他の重複するものについては説明を省略する。
なお、第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
図7は、製膜室用蓋6aを分離し、放電電極3の面調整を行っている状態を示す斜視図である。
【0054】
本実施形態における電極面位置計測装置70には、図7に示されるように、一対の計測治具71と、一対の計測部材72と、が備えられている。
計測治具71には、Z方向に延在するように配置される取付部材73と、取付部材73に間隔を空けて固定して取り付けられた保持部材74とが備えられている。
取付部材73には、矩形断面をした棒状部75と、棒状部75の両端に固定して取り付けられた取付部76,77が備えられている。
取付部76,77は、第1実施形態の取付部46,47と同様な構成とされている。
【0055】
棒状部75には、Z方向に間隔を空けて2個の保持部材74が固定して取り付けられている。保持部材74の一側面には、計測部材72の端部を取り付けられる保持部85が取り付けられている。
【0056】
計測部材72には、矩形断面をした中空棒材またはL型断面棒材である本体79と、本体79の一面に長手方向に間隔を空けて取り付けられた複数の変位計81と、が備えられている。
本体79は、例えば、金属製とされ、放電電極3の幅よりも長くされている。本体79の保持部85への取り付け部分は、相互位置ずれが生じないようインローなどによる嵌め合い構造となっていることが好ましい。例えば、保持部85に磁石を取り付けると、その磁力によって本体79を装着することができる。また、本体79は、例えば、ボルト等によって保持部85に取り付けるようにしてもよい。
【0057】
変位計81は、各分割電極3a〜3hに各2個、計16個備えられている。2個の変位計81は、各分割電極3a〜3hのY方向における一対の取付部21,22が設置されている位置を計測するように取り付けられている。このため、各分割電極3a〜3hの略同じ位置を計測することができるので、各分割電極3a〜3hの電極面17を同じ条件で比較することができる。
なお、本実施形態では、変位計81は、各分割電極3a〜3hに各2個備えられているが、これに限定されるものではなく、各1個でも各3個以上でもよい。
【0058】
変位計81は、例えば、接触子の直線的な移動によって出力である電圧が変化するリニアポテンショメータを介在し弱いバネ力で接触子を各電極面17に押付けるものが用いられている。変位計81の各分割電極3a〜3hに対向する部分には、リニアポテンショメータの接触子82が配置されている。
この接触式の変位計は比較的安価であるので、電極面位置計測装置70を安価にすることができる。これにより、放電電極3の面調整を安価に行うことができる。
接触式の変位計81としては、作動トランス等適宜形式のものを用いてもよい。
【0059】
変位計82は、非接触で位置を計測できる非接触式のものを用いるようにしてもよい。
非接触式の変位計81としては、レーザ式変位計、超音波変位計、光学式変位計、渦電流式変位計等適宜形式のものが用いられる。
また、第1実施形態で説明したように、変位計81として圧電素子を用いるようにしてもよい。
【0060】
以上のように構成された電極面位置計測装置70を用いて行う放電電極3の面調整について説明する。
この場合、一対の計測治具81がY方向における放電電極3の両外側の所定の位置に取り付けられる。すなわち、取付部材73の取付部76,77は、開口部が製膜室用蓋6aの上壁および下壁を挟むように引っ掛けられる。位置が所定管理位置に調整された後、取付部76は、ボルトによって製膜室用蓋6aの上壁と下壁に固定される。
【0061】
この状態で、各計測部材82を変位計81が放電電極3を向くようにしてその両端部を保持部85に取り付ける。
これにより、一対の計測部材72は、Z方向における異なる位置において、それぞれY方向に沿って延在するように配置することができる。
【0062】
この状態で各変位計81によって各電極面17のレベルを計測する。
これにより、Z方向で間隔を空けた2箇所における電極面17のレベルを一挙に計測することができる。計測部材72をZ方向へ移動させる機械機構が省略できるので、機器コストの低減が可能となる。
また、Z方向で間隔を空けた2箇所での分割電極3a〜3hの電極面17のレベルが計測できるので、そのデータによって電極面17の傾斜量が電極面上の2次元分布として短時間に判断できる。
【0063】
このように計測された結果に基づいて各分割電極3a〜3hの電極面17が略一定の所定管理値以内のレベルとなるように、それぞれの調整部材25,26を操作して電極面17の位置を調整する。
計測結果を表示したパソコンで、それぞれの各調整部材25,26を操作するのに必要な調整量を画面表示すると更に好ましい。
【0064】
このように、各電極面17のレベルの計測を複数の変位計81が直線状に配置された計測部材82によって計測するので、計測部材72をZ方向へ移動させる機械機構と作業労力を省くことができ、各電極面17のレベルを一挙に計測することができる。これにより、計測時間が短縮されるので、放電電極の面調整を短時間に行うことができるし、作業員の労力を軽減することができる。
また、各電極面17のレベルは変位計81によって計測されるので、計測を機械的に精度良く行うことができ、面調整の人的要因によるバラツキを抑制することができる。
【0065】
このように、放電電極3の面調整が短時間時間で簡易に行われるので、製膜作業の停止時間を短縮することができる。これにより、製品の生産性を向上することができ、製品を安価に製造することができる。
精度よく面調整された放電電極3を用いるので、基板8に形成される薄膜の厚さ分布を均一にすることに寄与できる。
【0066】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態では、本発明を分割電極3a〜3hで構成された放電電極3に適用したものであるが、これに限定されない。例えば、本発明は、1枚の平板電極で構成され、両端部で厚さ方向に位置が調整できるように取り付けられる放電電極3に同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる薄膜製造装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1の製膜室用蓋を分離し、面調整を行っている上体を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる計測治具を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる可動ガイドの内部を示す側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる計測部材を示す部分平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる変位計の計測結果を模式的に示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる製膜室用蓋を分離し、面調整を行っている上体を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる計測部材を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 薄膜製造装置
3 放電電極
3a〜3h 分割電極
17 電極面
41,71 計測治具
42,72 計測部材
43,73 取付部材
44 可動ガイド
61,81 変位計
74 保持部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極面に沿った第1方向の両端側の位置が該電極面に交差する第2方向に移動可能に取り付けられた放電電極における前記電極面のレベルを略一定となるように調整する放電電極の面調整方法であって、
複数の変位計が直線状に配置された計測部材を、該変位計が前記電極面に対向するとともに前記第1方向と直交する第3方向に沿った位置に配置されるように設置する設置工程と、
前記各変位計によって前記電極面のレベルを計測する計測工程と、
該計測工程で計測された結果に基づいて前記放電電極の両端側の位置を調整する位置調整工程と、
を備えていることを特徴とする放電電極の面調整方法。
【請求項2】
前記放電電極は、それぞれ前記第1方向に沿う両端側の位置が前記第2方向に移動可能に取り付けられるとともに前記第3方向に並列された複数の分割電極によって構成され、
前記計測工程では、前記各変位計によって前記各分割電極の電極面のレベルを計測し、
前記位置調整工程では、前記計測工程で計測された結果に基づいて、前記各分割電極の両端側の位置を調整することを特徴とする請求項1に記載された放電電極の面調整方法。
【請求項3】
前記設置工程及び前記計測工程は、前記第1方向で間隔を空けた複数箇所で行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された放電電極の面調整方法。
【請求項4】
前記変位計は、接触式であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された放電電極の面調整方法。
【請求項5】
前記変位計は、非接触式であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された放電電極の面調整方法。
【請求項6】
電極面に沿った第1方向の両端側の位置が該電極面に交差する第2方向に移動可能に取り付けられた放電電極における前記電極面のレベルを計測する電極面位置計測装置であって、
複数の変位計が直線状に配置された計測部材と、
前記第1方向と直交する第3方向における前記放電電極の両外側に、前記第1方向に延在するように設置される一対の取付部材と、
それぞれ該各取付部材の前記第3方向における略同等の位置に取り付けられ、前記計測部材の端部分を保持する一対の保持部材と、
が備えられていることを特徴とする電極面位置計測装置。
【請求項7】
前記放電電極は、それぞれ前記第1方向に沿う両端側の位置が前記第2方向に移動可能に取り付けられるとともに前記第3方向に並列された複数の分割電極によって構成され、
前記変位計は、前記各分割電極に対応して配置されていることを特徴とする請求項6に記載された電極面位置計測装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記取付部材に前記第1方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載された電極面位置計測装置。
【請求項9】
前記計測部材及び前記保持部材は複数組備えられ、該各組の前記保持部材は、前記取付部材に前記第1方向に間隔を空けて取り付けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載された電極面位置計測装置。
【請求項10】
前記変位計は、接触式であることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載された電極面位置計測装置。
【請求項11】
前記変位計は、非接触式であることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載された電極面位置計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−157611(P2010−157611A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335056(P2008−335056)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】