説明

木材の節探査方法及び装置及びプログラム

【課題】木材の節及び皮を持つ死節を確実に検出できるようにすること。
【解決手段】撮影手段8で木材を撮影し、画像処理手段1で前記撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節として検出する。また、画像処理手段1で前記撮影した木材の画像から節の部分の画像を切り出し、該切り出した部分での各画素の色空間から所定の閾値で切り出した部分を黒変部とし、該黒変部の画素数の前記切り出した節の部分の画素数に対する割合が大きいものを死節と決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の丸太等から切り出した単板又はひき材等の木質材料にある節の探査方法及び装置及びプログラムに関する。例えば合板を製造するには、丸太を刃物により切削して連続的に厚さ数ミリの単板を得、この単板を所定の大きさに揃え且つ乾燥した後、複数枚の単板を接着剤により接着して一体化される。これらの製造工程で、単板にある節、節が抜け落ちて穴となった個所、割れ、カビやヤニによる変色等の欠点の位置、数、面積等の程度により、合板となった時の表層を構成するもの(美観上、欠点の少ないもの)と、合板の内層を構成するもの(欠点が多くても問題とならない)とに選別(例えば5〜7段階に選別)する必要がある。
【背景技術】
【0002】
従来、合板となった時の表層を構成するものと、合板の内層を構成するものとに選別するには、コンベヤで搬送される単板を作業者の肉眼より判定して行われている。
【0003】
また、従来自動で木材の欠陥を検出するものとして、一次元テレビカメラにより、集成材用木材の表面の節、割れ、腐れ等の欠陥を検出するものがあった(特許文献1参照)。この欠陥検出は、検出した表面の濃淡度等が比較判断データ以上のものを除去すべき欠陥と判断するものであった。
【特許文献1】特開平8−145914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のものは次のような課題があった。
肉眼による判定では、人により判定にバラツキがある(不正確である)こと、コンベヤの速度を大きくできない(生産性が悪い)等の問題があった。
【0005】
また、一次元テレビカメラにより欠陥を判定するものは、単に濃淡度により判定しているため、節の形状、不良等を正確に検出できない問題点があった。
【0006】
本発明は、節の形状、不良となる節等を正確に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図1は単板選別装置の説明図である。図1中、1は画像処理装置(画像処理手段)、2は選別機制御装置、3は操作盤、4はベルトコンベア、5は透過光用LED照明、6は反射光用LED照明、7は等級別分配装置、8はラインセンサーカメラ(撮影手段)、9は単板(木材)である。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため次のように構成した。
(1):撮影手段8で木材を撮影し、画像処理手段1で前記撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節として検出する。このため、木材の節を正確に検出することができる。
【0009】
(2):撮影手段8で木材を撮影し、画像処理手段1で前記撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とし、前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した画像で濃淡の閾値レベルを変化させて円形度とサイズ安定度が最大となる閾値レベルを求め、節形状を決定する。このため、木材の節形状を確実に決定することができる。
【0010】
(3):前記(2)記載の木材の節探査方法又は装置において、前記画像処理手段1で前記撮影した木材の画像の濃淡の閾値レベルを変化させて、それぞれの画像の円形度を求め、該求めた円形度による係数を、それぞれの閾値レベルの画像に掛け、該掛けた前記閾値レベルごとの画像を積算して前記節候補とする。このため、木材の節候補を確実に検出することができる。
【0011】
(4):前記(2)又は(3)記載の木材の節探査方法又は装置において、前記画像処理手段1で、前記撮影した木材の画像に対し、節より大きな色むらを平滑化し、該平滑化した画像に対して円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とする。このため、木材の節候補を正確に素早く検出することができる。
【0012】
(5):撮影手段8で木材を撮影し、画像処理手段1で前記撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とし、前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した部分での各画素の色空間から所定の閾値で切り出した部分を黒変部とし、該黒変部の画素数の前記節候補の画素数に対する割合が大きいものを死節と決定する。このため、皮を持つ木材の死節を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば次のような効果がある。
(1):撮影手段で木材を撮影し、画像処理手段で前記撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節として検出するため、木材の節を確実に検出することができる。
【0014】
(2):撮影手段で木材を撮影し、画像処理手段で前記撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、円形度の大きいものを節候補とし、前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した画像で濃淡の閾値レベルを変化させて円形度とサイズ安定度が最大となる閾値レベルを求め、節形状を決定するため、木材の節形状を確実に決定することができる。
【0015】
(3):前記画像処理手段で前記撮影した木材の画像の濃淡の閾値レベルを変化させて、それぞれの画像の円形度を求め、該求めた円形度による係数を、それぞれの閾値レベルの画像に掛け、該掛けた画像を積算して前記節候補とするため、木材の節候補を確実に検出することができる。
【0016】
(4):前記画像処理手段で、前記撮影した木材の画像に対し、節より大きな色むらを平滑化し、該平滑化した画像に対して円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とするため、木材の節候補を正確に素早く検出することができる。
【0017】
(5):画像処理手段で撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した部分での各画素の色空間から所定の閾値で切り出した部分を黒変部とし、該黒変部の画素数の前記節候補の画素数に対する割合が大きいものを死節と決定するため、皮を持つ木材の死節を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(1):単板選別装置の説明
図1は単板選別装置の説明図である。図1において、単板選別装置の全体構成を示しており、単板選別装置には、画像処理装置1、選別機制御装置2、操作盤3、ベルトコンベア4、透過光用LED照明5、反射光用LED照明6、等級別分配装置7、ラインセンサーカメラ8、単板9が設けてある。
【0019】
画像処理装置1は、ラインセンサーカメラ8からの画像データの処理を行い、単板品質等級等の処理結果を選別機制御装置2に出力する画像処理手段である。選別機制御装置2は、画像処理装置1の出力によりコンベアの運転、停止等の選別機コンベア制御信号の出力と等級別分配装置7の制御信号を出力するものである。操作盤3は、画像処理装置1の設定値の変更、選別機制御装置2の制御等の操作を行う操作盤である。ベルトコンベア4は単板9を搬送する搬送手段である。透過光用LED照明5は、単板9の穴を検出するための照明手段で、反射光用LED照明6と異なる色の照明(例えば緑色の照明)を使用する。これは、反射光用LED照明6からの反射光と区別(色及び強度により区別)して、単板の穴(節穴)、割れ等を検出するためである。反射光用LED照明6は、単板9の反射光を検出するための照明手段で、通常白色の照明を使用する。ラインセンサーカメラ8は、単板9のラインの画像を撮影する撮影手段である。
【0020】
この単板選別装置の動作は、ベルトコンベア4で送られてきた単板9をラインセンサーカメラ8で撮影して画像データを画像処理装置1に出力する。画像処理装置1ではこの画像データの処理を行い、単板品質等級等の処理結果を選別機制御装置2に出力する。選別機制御装置2は等級別分配装置7に制御信号を出力して、単板9を等級別に選別するものである。この選別は、虫穴数、穴・抜け節数、生節数、死節数、欠け数、割れ数、ヤニ・入皮数、青変数等及びこれらの大きさ(面積)等の程度により行われる。
【0021】
(2):画像処理装置の説明
図2は画像処理装置の説明図である。図2において、画像処理装置には、3台のラインセンサーカメラ8a、8b、8c、カメラPC1(カメラ用コンピュータであり符号では11aで示してある)、カメラPC2(カメラ用コンピュータであり符号では11bで示してある)、カメラPC3(カメラ用コンピュータであり符号では11cで示してあ)、イーサネット(登録商標)スイッチングハブ(HUB)12、画像処理計算機群3、計算サーバPC(計算サーバコンピュータ)14、表示装置15が設けてある。
【0022】
ラインセンサーカメラ8a、8b、8cは、カメラ3台により単板を搬送方向と直交する方向に3分割して撮影する撮影手段である。カメラPC1(カメラ用コンピュータ)、カメラPC2、カメラPC3は、それぞれのラインセンサーカメラからの1ラインの画像を取り込む度に、イーサネットスイッチングHUB12により画像処理計算機群13と計算サーバPC14に画像データを配信するものである。イーサネットスイッチングハブ(HUB)12は、ラインセンサーカメラ8a、8b、8cからの画像データを配信ための中継点である。画像処理計算機群13は、単板の白黒濃淡画像を各計算PC(計算ホスト)1〜8で分割分担して処理(節探査、欠陥探査処理)するものである。
【0023】
ここで画像データは、各計算PC1〜8でそれぞれ(各計算PCの格納手段内で)持つが処理は分担して行うものである。計算サーバPC14は、画像処理計算機群13の各計算PCへの処理の指示を行い、画像処理計算機群13の処理結果により選別機である等級別分配装置7に制御信号を出力すると共に表示装置にも出力して処理結果等の表示を行うものである。表示装置15は、画像処理結果等の表示を行う表示手段である。
【0024】
画像処理装置の動作は、カメラPC1〜3で、ラインセンサーカメラ8a、8b、8cから1ラインの画像を取り込む度に、計算PC1〜8と計算サーバPC14に、そのデータを配信する。計算PC1〜8では、受信した画像を順次結合していく、最終的にカメラPC1〜3が画像の取り込みを終了する時点で、各計算PC1〜8では、カラー画像の合成と白黒濃淡画像変換は、ほぼ終了している(単板の画像が3分割されているカメラPC1〜3からの画像を画像処理計算機群13で一旦結合する。処理は計算PC1〜8に8分割される)。こうすることで取り込み時間も有効に活用している。
【0025】
ここで、単板9には図示しないレーザマーカからマークが照射されて3分割され、ラインセンサーカメラ8a、8b、8cではそれぞれのレーザマークまでのライン画像を合わせるようにして、簡単に画像の結合ができるようにする。また、画像の処理速度を向上するため、節の探査処理は画素数の多い白黒濃淡画像で行い、死節の探査等のカラー画像は縮小(画素数を少なく)した画像で行うこともできる。
【0026】
以下、画像処理装置の動作を撮影中の処理と撮影後の処理に分けて説明する。
<撮影中の処理の説明>
ラインセンサーカメラ8a、8b、8cで撮影された画像データは、1ラインごとに、計算サーバPC14と各計算PC1〜8全てに配信され、配信されたそれぞれのPCで1枚の全体画像として合成される。こうすることで、撮影終了後に画像を転送する方法と比べ、撮影中の時間を有効に活用できる。
【0027】
・カメラPC1〜3の処理
ラインセンサーカメラ8a、8b、8cから1ラインカラー画像を取り込み、レーザマークの位置(接合位置)を検出し、その情報とともに、1ラインカラー画像を計算サーバPC14と計算PC1〜8に転送する。
【0028】
・計算サーバPC14と計算PC1〜8の処理
到着した1ラインカラー画像を、上記位置情報に基づき合成する。これは、カメラPC1〜3で撮影が終了し、最後の1ラインカラー画像を受信した段階で、各々の計算サーバPC14、計算PC1〜8では、全体カラー画像の合成が完了することになる。このように、撮影中の時間を有効に活用するため、白黒変換や縮小処理など、1ラインごとに可能な処理は、同時並行的に行うことができる。
【0029】
<撮影後の画像解析中の処理の説明>
・カメラPC1〜3の処理
次の板(単板)の到着を検出するまで待機する。
【0030】
・計算サーバPC14の処理
対象となる板の大きさや種類などの既定情報に基づき、計算PC1〜8に対し、計算すべき領域や設定値を指示する。自らは、透過光による欠陥検出処理を行うとともに、計算PC1〜8からの解析結果も受信し、最終的に等級分類処理を行う。結果を表示装置15に表示するとともに、選別機制御装置に結果を出力する。
【0031】
・計算PC1〜8の処理
1台のPCは、縮小カラー画像を用いて、表面の色偏差(色空間内で色中心からの距離を1.0 に規格化したもの)を計算し、その結果から、黒変部、青変部、死節部分などの欠陥を検出する。その他のPCは、濃淡画像を用いて、最も時間の要する節の探査を行う(節探査用計算PC)。節探査用計算PCは、計算サーバPC14より配信された計算領域、閾値情報に基づき、解析作業を領域分担して行う。そのため計算PCの台数は、測定する単板(板)の面積と必要とされる結果出力までの時間によって決まるものである。
【0032】
なお、前述の説明では、画像処理装置内の各カメラPC、計算サーバPC14、各計算PC等の複数のコンピュータ(PC)を使用する説明をしたが、これら使用するコンピュータの数は画像データ量やコンピュータの処理速度等により変更することができる(1台のコンピュータで処理することもできる)。
【0033】
(3):節探査の説明
節を検出するための節の要件としては、次の(1) 〜(5) が考えられる。
【0034】
(1) 全体的に濃い(明度が低い)。
(2) 部分領域内で周辺部より濃い(明度が低い)。
(3) 節境界部で濃度が急峻に上がる。
(4) 丸い形状が多い。
(5) 周辺部に同心円の木目がある。
【0035】
これらの節の用件に該当するものが多いものを節候補と決定することができる。このため、節の特徴のひとつであるところの暗部(明度が低い)が円形形状をしていることに注目し、その個所の確率分布を求め、節候補を特定する。すなわち後述する(b)形状積分の方法の説明の項で述べる方法で、閾値レベルを変えながら、白黒濃淡画像を2値化し、個々の2値化ブロックの形状が円形に近いものにより大きな値を加算して積算することにより節候補を決定することができる。また、節探査において、木材の材質によりどの要件を大きく見るか、見る要件を少なくするか等の変更を行うこともできる。
【0036】
図3は節探査処理フローチャートである。以下、図3の処理S1〜S9に従って説明する。
【0037】
S1:画像処理装置1は、受け取った濃淡画像の濃淡の最小閾値Tmin 、最大閾値Tmax 、予め設定された閾値レベルの分割数N、変化値Td =(Tmax −Tmin )/N、繰り返し変数Iを初期化して0とし処理S2に移る。
【0038】
S2:画像処理装置1は、濃淡の閾値を変化(T=Tmin +(Td ×I))し処理S3に移る。
【0039】
S3:画像処理装置1は、濃淡の閾値Tで画像を2値化し処理S4に移る。
【0040】
S4:画像処理装置1は、2値化図形個々の円形度数を計算し、個々の円形度の積算データ(別の記憶領域に円形度による重みを付加してその円形度を計算した画素ごとに積算する)を作成し、処理S5に移る。
【0041】
S5:画像処理装置1は、繰り返し変数Iに1を加算(I=I+1)し、この繰り返し変数IがNと等しいかNより小さい(I≦N)場合は処理S2に戻り、繰り返し変数IがNより大きい(I>N)場合は処理S6に移る。
【0042】
S6:画像処理装置1は、円形度の積算データの正規化を行い処理S7に移る。
【0043】
S7:画像処理装置1は、正規化した積算データから形状の積分画像を作成し処理S8に移る。
【0044】
S8:画像処理装置1は、形状の積分画像の2値化処理を行い処理S9に移る。
S9:画像処理装置1は、節候補の決定を行う。
【0045】
(a)2値化図形個々の円形度数計算方法の説明
円形度の求め方は次のようにして行う。図4は円形度の求め方の説明図であり、図4(a)は円の説明、図4(b)は楕円の説明である。図4(a)において、円の半径をrとする。図4(b)において、楕円の長い方の半径をa、短いほうの半径をbとする。
【0046】
図4(b)の楕円図で、長短比を p=a/b とする。
<円>は
面積 A= πr2
慣性モーメント I=(π/4) r4
<楕円>は
面積 A= πab
慣性モーメント I=(π/4) a3・b
が知られている。
【0047】
ここで、楕円の慣性モーメントは I=(π/4) a3・b =( 1/4π)(π2 ・a2・b2)(a/b)
=( 1/4π)A2 ・p
と書けるので( p=a/b:長短比)この式を変形すると次の式1となる。
p= 4π(I/A2)・・・・式1
実測定として慣性モーメントは、ブロックの中心を原点として、画像をg(x,y )とすると、
I'(実測値)=Σ(x2+y2 )・g(x,y) (全画素の画素位置の平方和)
A'(実測値)=Σg(x,y) (全画素)
であるから、長短比p は、これらを式1に代入して次の式で求められる。
【0048】
p= 4π(I'/A'2)
この長短比p は、真円を1.0 として偏平な楕円ほど大きな値となる。そこでこの逆数1/p を円形度とすると、円形度は0.0 から1.0 の範囲で真円に近いほど1.0 に近い大きな値を取ることになる。単板は、例えば丸太の長手方向に平行な刃物で丸太を切削して得られるが、丸太の内部にはその長手方向に対し傾斜して枝が存在しており、これが節として現れる。それ故、節の形状は真円よりむしろ楕円となるため、例えば円形度が1/8 以上のものを節とみなせば良い。
【0049】
図5は節の2値化形状の説明図である。図5において、実際には、節の2値化形状は、上記のような理想形をしておらず、図5の左側のような形状が多い。そこで、最外周より内側を埋めつぶす処理を行い、図5の右側のようにした後に、その形状の楕円近似長短比を求め、その逆数を円形度とする。
【0050】
このようにして求まった円形度を、図5の黒ブロックの各画素の座標を指標としたメモリに加えることで、ある閾値で2値化した画素の円形度積算を行う。このようにすると、真円に近いブロックほど大きな円形度が積算され、大きな値をとるようになる。
【0051】
さらに、閾値を最小から最大まで変化させながら上記の積算を行うことで、濃度と形状を同時に調べることができる。
【0052】
(b)形状積分の方法の説明
濃度等高線は、白黒濃淡画像で、特定の閾値で2値化したときの画像で各ブロックの外周を探索することで得られる。一定間隔で閾値を変化させ、各閾値での2値化画像を個別に積算していく。ここで重要なことは、濃度の濃い部分は、より多くの閾値に対して値を持つため、より多くの等高線(2値化画像)が得られる(積算効果が大きい)ことである。
【0053】
図6は形状積分の説明図であり、図6(a)は水平方向の濃度グラフの説明、図6(b)は閾値レベル1で2値化した画像の説明、図6(c)は閾値レベル2で2値化した画像の説明、図6(d)は閾値レベル3で2値化した画像の説明である。
【0054】
図6(a)において、節周辺の一部を拡大した濃淡の画像を示しており、曲線aは画像の中央水平方向(水平の白線参照)の濃度グラフである。曲線aにおいて、上が白レベルで下が黒レベルを表しており、閾値レベル1、2、3(水平の黒線)が示されている。図6(b)において、閾値レベル1で2値化した画像は、閾値レベル1以下の黒い部分のみの画像となり円形度が大きくなっている(円で囲った画像)。このためこの画像の各画素に対しては、大きな値を加算して積算することになる。すなわち、画像の各画素に対しては、その画素位置に対応するメモリ番地に大きな値を加算することになる。図6(c)において、閾値レベル2で2値化した画像は、閾値レベル2以下の画像となりこの場合も円形度が大きくなっている(円で囲った画像)。このためこの画像の積算値が大きくなる(重み付けを大きくして加算する)。図6(d)において、閾値レベル3で2値化した画像は、閾値レベル3以下の画像となりこの場合は木目の模様が現れ円形度が小さくなっている。このためこの画像の各画素に対しては、その画素位置に対応するメモリ番地に小さな正値もしくは負値を加算する。
【0055】
図7は積算結果の説明図であり、図7(a)結果図の説明、図7(b)は2値化画像の説明である。図7(a)において、各閾値レベルでの2値化画像の積算結果の画像は、節部分が強調されることになる。図7(b)において、図7(a)の画像を2値化画像として節候補がえられる(図7(a)とは白黒が反転した画像で示している)。
【0056】
(c)局所平均値を用いた色むらの平滑化の説明
単板表面は、単一の色とは限らず、往々にして色むらが存在する。そうした色むら(濃淡差のある部分で)単板に節が存在する場合には、その表面の色むらを除去し、節の濃淡のみを強調する必要がある。そのため、画像処理装置1では、各画素について、その近傍平均値を求め、その結果から元の画像の明暗を補正する(節前候補の検出処理)。
【0057】
元の画像をf(i,j)とし、平滑画像をg(i,j)とすると、
【0058】
【数1】

ここで、(k,l) は、(i,j) 近傍の画素
と表せる計算により、画素(i,j) 近傍の平均を求める。画像f の全体の平均濃度を<f> として、補正後の画像h は次のように求めることができる。
【0059】
【数2】

目安として検出したい節の最大の直径をDとし、m=n=2D程度とすることで、節部分を残し、それ以上の色むらを除去(平滑化)することが可能である。また、m、nが大きい場合には、近傍領域内の全ての点で計算するのではなく、代表点(例えば、格子点)で計算しても良い。
【0060】
得られた平滑化画像h は、常に<f> について規格化されているため、適当な閾値(例えば、<f> の50%)で2値化することで、節前候補を容易に決定できる。これらの方法により、節前候補を実用的に素早く決定することができる。
【0061】
図8は平滑化処理を行う節探査処理フローチャートである。図8において、処理S11では、画像処理装置1が受け取った濃淡画像の平滑化処理を行い平滑化画像(画像h )を作成し、処理S12に移る。以下、処理S12〜S20では、平滑化画像に対し図3と同様の処理(図3の処理S1〜S9)を行って節候補を決定する。このように平滑化処理を行うことにより、節以外の情報が少なくなり、節候補の決定を素早く確実に行うことができる。
【0062】
(4):節形状の決定の説明
節形状の決定の処理は、節枠のより正確な大きさを求めるために、節位置周辺の濃度変化から最適枠を求めるものである。具体的には、節ごとに、最適閾値を求め2値化する作業である。これにより、節候補それぞれに対して、最適形状と大きさを決定する。この処理は、先の2値化によって得られた連結画素成分(以降ブロックとする)(図7参照)ごとに、各節候補ブロックより大きな領域、例えば、その4倍の拡張領域で、形状積分画像と微分画像から最適な形状となる閾値を求める。これは各々の部分空間で行うので個々の節形状を正確に決定できる。以降では、2値化した場合のブロックの画素数をブロックサイズ(略してサイズ)とする。またサイズ安定性(S)とは、閾値を変化させたときのサイズの変化量である(節部分は閾値を変化しても、ある閾値まではサイズの変化量が少ない。即ち、安定度が大きい。しかし閾値を変化して木目が現れるとサイズの変化量が大きくなる。これにより染みのようなぼんやりした模様を除くことができる。)。
【0063】
図9は節形状の決定処理フローチャートである。以下、図9の処理S21〜S31に従って説明する。
【0064】
S21:画像処理装置1は、単板の円形度積算画像(S7参照)を取り込み、処理S23に移る。
【0065】
S22:画像処理装置1は、エッジ部分を強調するため単板の微分画像を作成し、処理S23に移る。
【0066】
S23:画像処理装置1は、円形度積算画像と微分画像とを加算(減算の場合はマイナスにして加算)して形状決定用画像を作成し、処理S24に移る。
【0067】
S24:画像処理装置1は、節候補の数だけ以下の処理S25〜S31を繰り返す。
【0068】
S25:画像処理装置1は、単板全体の濃淡画像から節候補の切り出し(節候補ブロック(図7参照)の4倍の拡張領域で切り出し)を行い、処理S26に移る。
【0069】
S26:画像処理装置1は、形状決定用画像の濃度範囲を調べ16段階の閾値レベルを決定し、処理S27に移る。
【0070】
S27:画像処理装置1は、閾値レベルの数(ここでは16)だけ以下の処理S28〜S29を繰り返す。
【0071】
S28:画像処理装置1は、最大探査ブロックを決定し、処理S29に移る。
S29:画像処理装置1は、円形度とサイズ安定度を数値化し、処理S30に移る。
【0072】
S30:画像処理装置1は、円形度、サイズ安定度が最大となる最適閾値レベル(閾値を変えてもサイズ変動の少ない閾値レベル)を求め、処理S31に移る。
【0073】
S31:画像処理装置1は、その最適閾値レベルのブロックから節形状を決定する。
【0074】
図10は節形状決定の画像による説明図であり、図10(a)は円形度積算画像の説明、図10(b)は微分画像の説明、図10(c)は円形度積算で求めた節候補の説明、図10(d)は最適閾値で2値化した画像の説明である。
【0075】
図10(a)は、図7(a)で説明した円形度積算画像である。この円形度積算画像でも、ほとんど節の大きさは求められているが、さらに精度を得るために、円形度積算画像の濃度画像の上に図10(b)の1次微分画像を重ねる。この結果は、節の縁を強調する効果がある。
【0076】
この重ねあわされた画像から節ごとに最適閾値を求めたのが、図10(d)の画像である。この画像は、図10(c)の円形度積算で求めた節候補の画像と比べ下側の節が明確に判断できる。また節枠も新たに求めることができる。
【0077】
また、最適閾値については、判定値が、その節候補ブロックの持つ円形度、サイズ安定度、閾値深さ、ブロックサイズを要素とする関数で現されるとした場合、この関数を最大の判定値を持つ閾値を最適閾値とするように決めることができる(この詳細は、材質が変わればそれに応じて変える場合がある)。
【0078】
(5):生死節の判定の説明
死節は、皮部分を持つ節であり、節が抜けて節穴ができやすいもので程度の悪い節である。また、死節は、皮部分がドライヤー乾燥過程で、炭化するため色偏差値は大きくなる。先に求めた、節ブロックを取り囲む領域で色偏差値の割合が大きな場合(この場合カラー画像を使用)、死節と判定することができる。
【0079】
図11は3次元色分布の説明図である。図11において、節ブロックを取り囲む領域での3次元色分布(RGB)を示しており、黒変部と青変部(焦げや外部進入したカビ等)は楕円で囲まれた領域となる。この領域は、単板本来の色の標準分布からは偏った所に分布を成す。こうした部分はなんらかの欠陥である可能性が大きい。この図11の黒変部のみを画像化したものが図12である。
【0080】
図12は色偏差画像の説明図である。図12において、色偏差画像は、各画素の規格化された色空間で中心色(rgbの平均値)からの空間距離を画像化したもので、この場合は図11の黒変部を画像化したものである。実際の処理においては画像処理装置1において、全体平均の色相値を0(黒)とし、各画素の偏差値を適当な係数を掛けて(より黒い部分を強調して)画像化する。これにより、こげなど自然木質以外の要因による変色部分を検出できる。死節は、皮部分がドライヤー乾燥過程で、炭化するため色偏差値は大きくなり検出でき、図12のような画像となる。
【0081】
(6)::プログラムインストールの説明
画像処理装置(画像処理手段)1、選別機制御装置(選別機制御手段)2、カメラPC1〜PC3、画像処理計算機群13、計算サーバPC14、表示装置(表示手段)15等はプログラムで構成でき、主制御部(CPU)が実行するものであり、主記憶に格納されているものである。このプログラムは、コンピュータで処理されるものである。このコンピュータは、主制御部、主記憶、ファイル装置、表示装置等の出力装置、入力装置などのハードウェアで構成されている。
【0082】
このコンピュータに、本発明のプログラムをインストールする。このインストールは、フロッピィ、光磁気ディスク等の可搬型の記録(記憶)媒体に、これらのプログラムを記憶させておき、コンピュータが備えている記録媒体に対して、アクセスするためのドライブ装置を介して、或いは、LAN等のネットワークを介して、コンピュータに設けられたファイル装置にインストールされる。
【0083】
これにより、木材の節を確実に検出することができ、木材の節形状を確実に決定することができ、さらに木材の死節を確実に検出することができる木材の節探査装置を容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の単板選別装置の説明図である。
【図2】本発明の画像処理装置の説明図である。
【図3】本発明の節探査処理フローチャートである。
【図4】本発明の円形度の求め方の説明図である。
【図5】本発明の節の2値化形状の説明図である。
【図6】本発明の形状積分の説明図である。
【図7】本発明の積算結果の説明図である。
【図8】本発明の平滑化処理を行う節探査処理フローチャートである。
【図9】本発明の節形状の決定処理フローチャートである。
【図10】本発明の節形状決定の画像による説明図である。
【図11】本発明の3次元色分布の説明図である。
【図12】本発明の色偏差画像の説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 画像処理装置(画像処理手段)
2 選別機制御装置
3 操作盤
4 ベルトコンベア
5 透過光用LED照明(照明手段)
6 反射光用LED照明(照明手段)
7 等級別分配装置
8 ラインセンサーカメラ(撮影手段)
9 単板(木材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段で木材を撮影し、該撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節として検出することを特徴とした木材の節探査方法。
【請求項2】
撮影手段で木材を撮影し、該撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、円形度の大きいものを節候補とし、
前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した画像で濃淡の閾値レベルを変化させて円形度とサイズ安定度が最大となる閾値レベルを求め、節形状を決定することを特徴とした木材の節探査方法。
【請求項3】
前記撮影した木材の画像の濃淡の閾値レベルを変化させて、それぞれの画像の円形度を求め、該求めた円形度による係数を、それぞれの閾値レベルの画像に掛け、該掛けた前記閾値レベルごとの画像を積算して前記節候補とすることを特徴とした請求項2記載の木材の節探査方法。
【請求項4】
前記撮影した木材の画像に対し、節より大きな色むらを平滑化し、該平滑化した画像に対して円形度を計算し、円形度の大きいものを節候補とすることを特徴とした請求項2又は3記載の木材の節探査方法。
【請求項5】
撮影手段で木材を撮影し、該撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、円形度の大きいものを節候補とし、
前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した部分での各画素の色空間から所定の閾値で切り出した部分を黒変部とし、該黒変部の画素数の前記節候補の画素数に対する割合が大きいものを死節と決定することを特徴とした木材の節探査方法。
【請求項6】
木材を撮影する撮影手段と、
該撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節として検出する画像処理手段とを備えることを特徴とした木材の節探査装置。
【請求項7】
木材を撮影する撮影手段と、
該撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とし、前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した画像で濃淡の閾値レベルを変化させて円形度とサイズ安定度が最大となる閾値レベルを求め、節形状を決定する画像処理手段とを備えることを特徴とした木材の節探査装置。
【請求項8】
前記画像処理手段は、前記撮影した木材の画像の濃淡の閾値レベルを変化させて、それぞれの画像の円形度を求め、該求めた円形度による係数を、それぞれの閾値レベルの画像に掛け、該掛けた前記閾値レベルごとの画像を積算して前記節候補とすることを特徴とした請求項7記載の木材の節探査装置。
【請求項9】
前記画像処理手段は、前記撮影した木材の画像に対し、節より大きな色むらを平滑化し、該平滑化した画像に対して円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とすることを特徴とした請求項7又は8記載の木材の節探査装置。
【請求項10】
木材を撮影する撮影手段と、
該撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とし、前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した部分での各画素の色空間から所定の閾値で切り出した部分を黒変部とし、該黒変部の画素数の前記節候補の画素数に対する割合が大きいものを死節と決定する画像処理手段とを備えることを特徴とした木材の節探査装置。
【請求項11】
撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節として検出する画像処理手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項12】
撮影した木材の画像の濃淡の閾値レベルを変化させて、それぞれの画像の円形度を求め、該求めた円形度による係数を、それぞれの閾値レベルの画像に掛け、該掛けた前記閾値レベルごとの画像を積算して節候補とし、前記撮影した木材の画像から少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した画像の濃淡の閾値レベルを変化させて円形度とサイズ安定度が最大となる閾値レベルを求め、節形状を決定する画像処理手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項13】
撮影した木材の画像から画像の円形度を計算し、該計算した円形度の大きいものを節候補とし、前記撮影した木材の画像から、少なくとも前記節候補を含む部分の画像を切り出し、該切り出した部分での各画素の色空間から所定の閾値で切り出した部分を黒変部とし、該黒変部の画素数の前記節候補の画素数に対する割合が大きいものを死節と決定する画像処理手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−322774(P2006−322774A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145146(P2005−145146)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】