説明

横型素子を有する半導体装置

【課題】耐圧バラツキを抑制し、歩留りを向上させることが可能となる横型素子を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】横型FWDなどの横型素子に備えられるSRFP21について、の不純物濃度を1×1018cm-3以上となるようにする。このように、横型FWD7などに備えられるSRFP21について、の不純物濃度を1×1018cm-3以上とすることにより、耐圧バラツキを抑制することが可能となり、的確に目標とする耐圧を得ることができる製品とすることが可能になる。したがって、製品の歩留りを向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型ダイオードや横型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、横型IGBTという)などの横型素子を有した半導体装置に関し、例えばSOI(Silicon on insulator)基板に形成される横型ダイオードや横型IGBTを形成した半導体装置に適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1において、横型の高耐圧パワーデバイスの電界緩和技術として、渦巻き型の抵抗性フィールドプレート(以下、SRFP(Scroll-shaped Field Plate)という)を備えた構造が開示されている。このSRFPは、高耐圧の横型ダイオード、横型IGBT、横型パワーMOSFETに適用されており、直流および低速のスイッチング条件の用途においては、所望の耐圧が得られることが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3207615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、SRFPの抵抗値については特定されていない。このSRFPの抵抗値と耐圧との関係について本発明者らが試作検討を行ったところ、SRFPの不純物濃度や抵抗値に応じて耐圧バラツキが変化することが確認された。このような耐圧バラツキが大きくなると、目標とする耐圧を得ることができない製品が生じ、歩留りを低下させるという問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、耐圧バラツキを抑制し、歩留りを向上させることが可能となる横型素子を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1導電型の半導体層(11c、62)を有する半導体基板(11、60)の半導体層(11c、62)の表面に、第1電極(19、32)および第2電極(20、33)を備えていると共に、第1電極(19、32)と第2電極(20、33)との間において電流を流す横型素子(7、8)が形成されてなる半導体装置において、第1電極(19、32)から第2電極(20、33)側に向けて延設された抵抗性フィールドプレート(21、34)を備え、抵抗性フィールドプレート(21、34)のうち、少なくとも第1電極(19、32)および第2電極(20、33)における低電圧が印加される電極(20、33)側の端部の不純物濃度が1×1018cm-3以上に設定されていることを特徴としている。
【0007】
このように、横型素子(7、8)に備えられる抵抗性フィールドプレート(21、34)について、低電圧が印加される電極(20、33)側の端部の不純物濃度が1×1018cm-3以上となるようにしている。これにより、空乏化される領域を制限して不純物濃度が低下することを抑制でき、耐圧バラツキを抑制することが可能となる。したがって、的確に目標とする耐圧を得ることができる製品とすることが可能になり、製品の歩留りを向上させることが可能となる。
【0008】
例えば、請求項2に記載したように、抵抗性フィールドプレート(21、34)として、第1電極(19、32)の周囲を渦巻状に囲みつつ、第2電極(20、33)側に延設された渦巻き型のものを適用する場合、該渦巻きのうち少なくとも最も低電圧とされる電極側の一周の不純物濃度が1×1018cm-3以上に設定されていれば良い。
【0009】
請求項3に記載の発明では、第1電極(19、32)の周囲を渦巻状に囲みつつ、第2電極(20、33)側に延設された渦巻き型のSRFP(21、34)を備え、SRFP(21、34)の抵抗値が1×106Ω/□以下に設定されていることを特徴としている。
【0010】
このように、横型素子(7、8)に備えられるSRFP(21、34)について、抵抗値が1×106Ω/□以下となるようにしている。これにより、耐圧バラツキを抑制することが可能となり、的確に目標とする耐圧を得ることができる製品とすることが可能になる。したがって、製品の歩留りを向上させることが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、SRFP(21、34)は、ドーズ量が2.0×1013cm-3以上とされていることを特徴としている。
【0012】
SRFP(21、34)のドーズ量が大きいほど耐圧バラツキを小さくすることが可能となり、特に、ドーズ量が2.0×1013cm-3以上となるようにすることで、より耐圧バラツキを小さく抑えることが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、半導体基板は、支持基板(11a)上に埋込絶縁膜(11b)を介して半導体層を構成する活性層(11c)が備えられたSOI基板(11)であり、該SOI基板(11)には、活性層(11c)のうち埋込絶縁膜(11b)との界面に、半導体層(11c)よりも高不純物濃度とされた第1導電型の界面層(11e)が備えられており、渦巻き型とされたSRFP(21、34)の隣り合うもの同士の間隔が1μm以下とされ、かつ、界面層(11e)の第1導電型不純物のドーズ量が1.3〜2.8×1012cm-2とされていることを特徴としている。
【0014】
このように、界面層(11e)を形成する場合、界面層(11e)のドーズ量が1.3×1012cm-2から2.8×1012cm-2の範囲において、SRFP(21、34)の間隔を1.0μm以下にすると、よりブレークダウン電圧、つまり耐圧が高くなるようにできる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、SRFP(21、34)の上を含む、半導体基板(11、60)の上には、第1層間絶縁膜(40)が形成されていると共に、該第1層間絶縁膜(40)に形成されたコンタクトホールを介して、第1電極(19、32)および第2電極(20、33)が横型素子(7、8)と電気的に接続されており、第1電極(19、32)および第2電極(20、33)の上を含み、第1層間絶縁膜(40)の上にシリコン窒化膜(41)が形成されていることを特徴としている。
【0016】
このように、シリコン窒化膜(41)にて横型素子が形成された半導体基板(11、60)を覆うことで、それよりも上に形成される層間絶縁膜中に含まれる水分をブロックすることができ、素子特性への影響を抑制することが可能となる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、SRFP(21、34)の上を含む、半導体基板(11、60)の上には、シリコン窒化膜(41)が形成されていると共に、該シリコン窒化膜(41)の上に第1層間絶縁膜(40)が形成されており、シリコン窒化膜(41)および第1層間絶縁膜(40)に形成されたコンタクトホールを介して、第1電極(19、32)および第2電極(20、33)が横型素子(7、8)と電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
このように、シリコン窒化膜(41)を第1層間絶縁膜(40)の下層に配置すると、より下層にシリコン窒化膜(41)を配置した構造となるため、第1層間絶縁膜(40)内に存在する水分についてもシリコン窒化膜(41)によってブロックすることが可能となる。したがって、さらに素子特性への影響を抑制することが可能となる。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる横型素子を有する半導体装置が適用されたインバータ1の回路図である。
【図2】半導体装置のうちの横型フリーホイールダイオード(以下、FWDという)7の断面構成を示した図である。
【図3】図2に示す横型FWD7の1セル分の上面レイアウト図である。
【図4】半導体装置のうちの横型IGBT8の断面構成を示した図である。
【図5】図4に示す横型IGBT8の1セル分の上面レイアウト図である。
【図6A】SRFP34の不純物濃度と空乏化の関係を調べるのに用いた横型IGBT8の断面図である。
【図6B】図6A中において破線で囲んだ領域Rにおける電界分布および空乏化の様子を示した拡大断面図である。
【図6C】図6B中に示したようにSRFP34のうち最もエミッタ側の部分の表面部、中点、底部それぞれでSRFP34の濃度設定値と濃度測定値との関係を調べた結果を示した図である。
【図7A】SRFP34のうち最もエミッタ側の端部の表面部において電界強度とホール濃度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図7B】SRFP34のうち最もエミッタ側の端部の中点において電界強度とホール濃度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図7C】SRFP34のうち最もエミッタ側の端部の底部において電界強度とホール濃度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図8A】不純物濃度が低い場合の電界分布を示した断面図である。
【図8B】不純物濃度を1×1018cm-3以上に濃くした場合の電界分布を示した断面図である。
【図9】SRFP34のうち最もエミッタ側の端部の表面からの深さ方向におけるホール濃度の変化をプロットした図である。
【図10】SRFP34の濃度設定値に対する空乏化後の不純物濃度の割合が、濃度設定値に応じてどのように変化するかを示すグラフである。
【図11】SRFP34の不純物濃度を変化させた場合の耐圧との関係を示す図である。
【図12A】SRFP34の不純物濃度を変えて電界勾配の偏りを異ならせたときの様子を示した断面図である。
【図12B】SRFP34の不純物濃度を変えて電界勾配の偏りを異ならせたときの様子を示した断面図である。
【図12C】SRFP34の不純物濃度を変えて電界勾配の偏りを異ならせたときの様子を示した断面図である。
【図13】LOCOS酸化膜23の直下におけるn-型ドリフト層22内の電位や電位差を示したグラフである。
【図14】LOCOS酸化膜23の直下における電界強度と上記電位差や耐圧との関係を示したグラフである。
【図15】本発明の第2実施形態で説明する図2および図3に示した横型FWD7のSRFP21の抵抗値を変化させた時の抵抗値(Ω/□)と耐圧の関係を示した図である。
【図16】SRFP21への不純物のドーズ量と耐圧バラツキとの関係を示した図である。
【図17】高温ブロッキング試験によりSRFP21の抵抗値と耐圧低下の関係について調べた結果を示した図である。
【図18】本発明の第3実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の断面構造を示した図である。
【図19】(a)は、界面n型層11eのドーズ量(cm-2)とブレークダウン電圧(V)との関係を示す図であり、(b)は、(a)のうちの1.8×1012cm-2のときと2.3×1012cm-2のときを抜き出した図である。
【図20】本発明の第4実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の上面レイアウト図である。
【図21A】図20のC−C’断面図である。
【図21B】図20のD−D’断面図である。
【図22】本発明の第5実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の断面図である。
【図23】本発明の第6実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の断面図である。
【図24】本発明の第7実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の断面図である。
【図25】他の実施形態で説明する横型LDMOSの上面レイアウトを示した図である。
【図26】他の実施形態で説明する横型FWD7の上面レイアウトを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の一実施形態にかかる横型素子を有する半導体装置の適用例として、三相モータ駆動用のインバータを例に挙げて説明する。
【0023】
図1は、インバータ1の回路図である。図1に示すように、インバータ1は、直流電源2に基づいて負荷である三相モータ3を交流駆動するためのものである。
【0024】
インバータ1は、直列接続した上下アーム5、6が三相分並列接続された構成とされ、上アーム5と下アーム6との中間電位を三相モータ3のU相、V相、W相の各相に順番に入れ替えながら印加する。上下アーム5、6は、それぞれ、横型FWD7および横型IGBT8を備えた構成とされ、各相の上下アーム5、6のIGBT8がオンオフ制御されることで、三相モータ3に対して周期の異なる三相の交流電流を供給する。これにより、三相モータ3の駆動を可能としている。
【0025】
なお、インバータ1には、平滑用のコンデンサ4が並列的に接続されている。このコンデンサ4により、上下アーム5、6のIGBT8のスイッチング時のリプルの低減やノイズの影響を抑制して一定な電源電圧が形成されるようにしている。
【0026】
次に、このようなインバータ1を構成する横型FWD7および横型IGBT8の詳細構造について説明する。上下アーム5、6は、アームごとに横型FWD7および横型IGBT8が1チップ化されて形成されるか、もしくは、横型FWD7および横型IGBT8が別チップに形成されることで構成されている。これらいずれの構造であっても構わないが、ここではアームごとに横型FWD7および横型IGBT8が1チップ化されている場合を例に挙げて説明する。
【0027】
図2は、本実施形態にかかる半導体装置のうちの横型FWD7の断面構成を示した図であり、図3は、図2に示す横型FWD7の1セル分の上面レイアウト図である。図2は、図3のA−A’断面に相当する。また、図4は、本実施形態にかかる半導体装置のうちの横型IGBT8の断面構成を示した図であり、図5は、図4に示す横型IGBT8の1セル分の上面レイアウト図である。図4は、図5のB−B’断面に相当する。これらの図を参照して、本実施形態にかかる横型FWD7および横型IGBT8の詳細構造について説明する。
【0028】
まず、図2および図3に基づいて、横型FWD7の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態では、SOI基板11を用いて横型FWD7を形成している。SOI基板11は、シリコンなどによって構成された支持基板11a上に、埋込絶縁膜に相当する埋込酸化膜(ボックス)11bを介してシリコンからなる活性層11cを形成することにより構成されている。本実施形態では、活性層11cが横型FWD7の導電経路を成し、この活性層11c内に横型FWD7を構成する各部が形成されている。
【0029】
SOI基板11における埋込酸化膜11bの厚みや活性層11c(n-型ドリフト層12)の厚みおよび不純物濃度に関しては任意であるが、所望の耐圧が得られる設計としてある。例えば、高い耐圧が得られるようにするためには埋込酸化膜11bの厚みは2〜10μm、好ましくは5μm以上であることが望ましい。また、活性層11cについては、n型不純物濃度が例えば7.0×1014cm-3とされ、厚さが3〜20μmとされている。このように構成されるSOI基板11に対して、各素子を囲むことで絶縁分離を行うトレンチ分離構造11dが形成されており、このトレンチ分離構造11dによって他の素子と素子分離された状態で横型FWD7が形成されている。なお、トレンチ分離構造11dは、従来より有る周知の素子分離構造であり、例えば活性層11cの表面から埋込酸化膜11bに達するように形成されたトレンチ内を絶縁膜やPoly−Siなどによって埋め込んだ構造とされている。
【0030】
また、n-型ドリフト層12の表面には、LOCOS酸化膜13が形成されており、LOCOS酸化膜13によって横型FWD7を構成する各部が分離されている。そして、n-型ドリフト層12の表層部のうち、LOCOS酸化膜13が形成されていない部分に、一方向を長手方向とするn+型カソードコンタクト領域14が形成されている。このn+型カソードコンタクト領域14の周囲はn-型ドリフト層12よりも高不純物濃度とされたn型バッファ層15にて囲まれている。n+型カソードコンタクト領域14は、例えば、n型不純物濃度が1.0×1020cm-3、深さが0.2μmとされ、n型バッファ層15は、例えば、n型不純物濃度が3.0×1016cm-3、深さが5μmとされている。
【0031】
-型ドリフト層12の表層部のうち、LOCOS酸化膜13が形成されていない部分に、n+型カソードコンタクト領域14を中心としてp型アノード領域16が形成されている。p型アノード領域16は、p-型低不純物濃度領域17とp+型高不純物濃度領域18を有した構成とされている。
【0032】
-型低不純物濃度領域17は、p+型高不純物濃度領域18よりもn+型カソードコンタクト領域14側まで備えられ、かつ、p+型高不純物濃度領域18よりも深い位置まで形成されている。本実施形態では、p-型低不純物濃度領域17の上面レイアウトは、図3に示すように、n+型カソードコンタクト領域14と対応する二本の直線状部分と、その直線状部分の先端同士を結ぶ円弧状部分とを有した長円形状とされている。このp-型低不純物濃度領域17は、例えばp型不純物濃度が例えば3.0×1016cm-3とされ、厚さが3.1μmとされている。
【0033】
+型高不純物濃度領域18は、p-型低不純物濃度領域17の表層部において、p-型低不純物濃度領域17に接するように、本実施形態ではp-型低不純物濃度領域17にて周囲が覆われるようにして形成されている。p+型高不純物濃度領域18の上面レイアウトは、図3に示すように直線状とされ、n+型カソードコンタクト領域14の両側それぞれに一本ずつ、合計二本形成されている。本実施形態では、p+型高不純物濃度領域18は、p-型低不純物濃度領域17のうち最もn+型カソードコンタクト領域14から離れた位置の表層部に形成されている。このp+型高不純物濃度領域18は、例えばp型不純物濃度が例えば1.0×1020cm-3とされている。
【0034】
また、n+型カソードコンタクト領域14の表面には、n+型カソードコンタクト領域14に対して電気的に接続されたカソード電極19が形成されていると共に、p型アノード領域16の表面には、p型アノード領域16に対して電気的に接続されたアノード電極20が形成されている。カソード電極19は、n+型カソードコンタクト領域14に対してオーミック接触させられており、n+型カソードコンタクト領域14と対応する直線形状とされ、n+型カソードコンタクト領域14の表面のほぼ全域に形成されている。アノード電極20は、直線形状とされ、カソード電極19を中心とした両側に形成されており、p型アノード領域16のうちp-型低不純物濃度領域17の直線状部分に対してショットキー接触もしくはオーミック接触させられていると共にp+型高不純物濃度領域18にオーミック接触させられている。アノード電極20は、少なくともp-型低不純物濃度領域17とp+型高不純物濃度領域18の両方に接続されていれば良いが、本実施形態では、アノード電極20がp型アノード領域16のうちの直線状部分のほぼ全域に接続されるようにしてある。
【0035】
さらに、カソード−アノード間に形成されたLOCOS酸化膜13の表面には、ノンドープPoly−Siにイオンインプラで形成された抵抗層からなるSRFP21が形成されており、カソード−アノード間の電位勾配の偏りがなくなるようにされている。具体的には、SRFP21は、図3に示すように、カソード電極19を中心として渦巻状に巻回された構造とされ、その一端がカソード電極19に電気的に接続されていると共に、他端がアノード電極20に接続されている。このため、SRFP21は、カソード電極19に接続された部位がカソード電位とされ、そこから内部抵抗によって徐々に電圧降下しながらアノード電極20側に進んでいく。したがって、SRFP21の電位がカソード電極19からの距離に応じた電位勾配となり、LOCOS酸化膜13を介してSRFP21の下方に位置しているn-型ドリフト層12中の電位勾配も一定に保たれるようにできる。これにより、電位勾配に偏りがある場合に発生し得る電界集中を抑制することができ、耐圧を向上させられると共に、インパクトイオン化を抑制でき、スイッチング時(ターンオフ時)のスイッチング時間増加を抑制することが可能となる。そして、本実施形態では、このSRFP21の不純物濃度の設定に基づいて、耐圧バラツキを抑制することが可能な構成となるようにしている。この不純物濃度の設定の詳細については後述する。
【0036】
このような構造により、本実施形態の横型FWD7が構成されている。このように構成された横型FWD7では、アノード電極20がp-型低不純物濃度領域17に対してショットキー接触もしくはオーミック接触させられていると共にp+型高不純物濃度領域18にオーミック接触させられるようにしている。このように、アノード電極20がp-型低不純物濃度領域17に対して電気的に接続されるようにしていることから、p-型低不純物濃度領域17の表面からアノード電極20へ電子を排出することで、同じ量の電流を流してもホール注入を少なくでき、逆回復電荷Qrrを低減して逆回復耐量を向上することが可能となる。そして、このようにホール注入を少なくできることから、ライフタイム制御を行わなくても横型FWD7を高速動作させることが可能となる。
【0037】
次に、図4および図5に基づいて、横型IGBT8の構成について説明する。図4に示すように、本実施形態では、横型FWD7と同じSOI基板11に対してnチャネルの横型IGBT8が形成されている。図4中には示していないが、横型IGBT8の周囲もトレンチ分離構造11dによって囲まれており、他の素子と電気的に分離されている。
【0038】
本実施形態では、活性層11cがn-型ドリフト層22として機能しており、このn-型ドリフト層22の表層部に、横型IGBT8を構成する各部が形成されている。上述したように、SOI基板11における埋込酸化膜11bの厚みや活性層11c(n-型ドリフト層22)の厚さおよび不純物濃度に関しては任意であるが、横型IGBT8についても所望の耐圧が得られる設計としてある。例えば、高い耐圧が得られるようにするためには埋込酸化膜11bの厚みは2〜10μmとしてあり、特に、耐圧が安定して600V以上確保できるようにするためには厚みを5μm以上にするのが好ましい。また、活性層11cについては、耐圧が安定して600V以上確保できるようにするためには、厚さ15μm以下のときにはn型不純物濃度が1×1014〜1.2×1015cm-3、厚さ20μmのときにはn型不純物濃度が1×1014〜8×1014cm-3とすると好ましい。
【0039】
-型ドリフト層22の表面にも、LOCOS酸化膜23が形成されており、LOCOS酸化膜23によって横型IGBTを構成する各部が分離されている。そして、n-型ドリフト層22の表層部のうち、LOCOS酸化膜23が形成されていない部分に、図5に示すように、一方向を長手方向とするコレクタ領域24が形成されている。コレクタ領域24は、異なる不純物濃度の領域が設けられ、比較的高不純物濃度とされた高不純物濃度領域となるp+型領域24aと、それよりも不純物濃度が低くされた低不純物濃度領域となるp型領域24bとを有した構成とされている。
【0040】
+型領域24aは、例えば表面濃度が1×1019〜1×1020cm-3とされ、p型領域24bは、例えば表面濃度が1×1016〜1×1019cm-3、または1×1015〜1×1018cm-3とされている。図4および図5に示すように、本実施形態では、p+型領域24aとp型領域24bは共に一方向を長手方向とする短冊状をなしており、p+型領域24aの周囲がp型領域24bによって覆われた構造とされている。
【0041】
また、コレクタ領域24の周囲はn-型ドリフト層22よりも高不純物濃度とされたn型バッファ層25にて囲まれている。n型バッファ層25は、FS(Field Stop)層としての役割を果たすものであり、n-型ドリフト層22よりも高不純物濃度のn型層にて構成され、空乏層の広がりを防ぐことで耐圧と定常損失の性能向上を図っている。例えば、n型バッファ層25は、n型不純物濃度が4×1016〜1×1018cm-3とされている。
【0042】
また、n-型ドリフト層22の表層部のうち、LOCOS酸化膜23が形成されていない部分に、コレクタ領域24を中心としてチャネルpウェル層26、n+型エミッタ領域27、p+型コンタクト層28およびp型ボディ層29が形成されている。
【0043】
チャネルpウェル層26は、表面にチャネル領域を形成するための部分であり、例えば厚みが2μm以下、幅が6μm以下とされている。このチャネルpウェル層26は、図5に示すように、コレクタ領域24を中心として、コレクタ領域24の周囲を1周囲むように同心状に配置されている。
【0044】
また、n+型エミッタ領域27は、チャネルpウェル層26の表層部において、チャネルpウェル層26の終端位置よりも内側で終端するように形成されており、コレクタ領域24の長手方向と同方向を長手方向として形成されている。このn+型エミッタ領域27は、図5に示したようにコレクタ領域24のコーナー部、つまり一方向を長手方向としたコレクタ領域24の両端には形成されておらず、コレクタ領域24と平行に配置された直線状のレイアウトとされている。本実施形態では、n+型エミッタ領域27がp型コンタクト層28およびp型ボディ層29を挟んだ両側に一本ずつ配置してある。
【0045】
+型コンタクト層28は、チャネルpウェル層26をエミッタ電位に固定するためのものであり、チャネルpウェル層26よりも高不純物濃度とされている。このp+型コンタクト層28も、図5に示すようにコレクタ領域24を中心として、コレクタ領域24の周囲を1周囲むように同心状に配置されている。
【0046】
p型ボディ層29は、コレクタからエミッタへ表面を経由して流れるホール電流により生じる電圧ドロップを低減する役割を果たす。このp型ボディ層29も、コレクタ領域24を中心として、コレクタ領域24の周囲を1周囲むように同心状に配置されている。このp型ボディ層29により、n+型エミッタ領域27とチャネルpウェル層26およびn-型ドリフト層22にて構成される寄生npnトランジスタが動作し難くなるようにでき、ターンオフ時間をより改善することが可能となる。
【0047】
そして、図5に示されるように、これらチャネルpウェル層26、n+型エミッタ領域27、p+型コンタクト層28およびp型ボディ層29は、各セル毎に、コレクタ領域24を挟んだ両側に配置されている。
【0048】
また、チャネルpウェル層26の表面には、ゲート絶縁膜30を介してドープドPoly−Siなどで構成されたゲート電極31が配置されている。このゲート電極31に対してゲート電圧を印加することで、チャネルpウェル層26の表面部にチャネル領域が形成されるようになっている。
【0049】
また、コレクタ領域24の表面には、コレクタ領域24に対して電気的に接続されたコレクタ電極32が形成されていると共に、n+型エミッタ領域27およびp+型コンタクト層28の表面には、これらn+型エミッタ領域27およびp+型コンタクト層28に対して電気的に接続されたエミッタ電極33が形成されている。
【0050】
コレクタ電極32は、p+型領域24aに対してはオーミック接触させられ、p型領域24bに対してはショットキー接触させられている。
【0051】
さらに、コレクタ−ゲート間に形成されたLOCOS酸化膜23の表面には、ノンドープPoly−Siにイオンインプラで形成された抵抗層からなるSRFP34が形成されており、コレクタ−ゲート間の電位勾配の偏りがなくなるようにされている。具体的には、SRFP34は、図5に示すように、コレクタ電極32を中心として渦巻状に巻回された構造とされ、その一端がコレクタ電極32に電気的に接続されていると共に、他端がゲート電極31に接続されている。このため、SRFP34は、コレクタ電極32に接続された部位がコレクタ電位とされ、そこから内部抵抗によって徐々に電圧降下しながらエミッタ側に進んでいく。このため、SRFP34の電位がコレクタ電極32からの距離に応じた電位勾配となり、LOCOS酸化膜23を介してSRFP34の下方に位置しているn-型ドリフト層22中の電位勾配も一定に保たれるようにできる。これにより、電位勾配に偏りがある場合に発生し得る電界集中を抑制することができ、耐圧を向上させられると共に、インパクトイオン化を抑制でき、スイッチング時(ターンオフ時)のスイッチング時間増加を抑制することが可能となる。そして、このSRFP34の不純物濃度の設定に関しても、上述した横型FWD7のSRFP21と同様、スイッチング損失低減や素子破壊を抑制することが可能な構成となるようにしている。なお、ここではSRFP34の一端をゲート電極31に接続した形態としたが、エミッタ電極33に接続した形態とすることもできる。
【0052】
このような構造により、本実施形態にかかる横型IGBT8が構成されている。このように構成される横型IGBT8では、ゲート電極31に対して所望のゲート電圧を印加すると、n+型エミッタ領域27とn-型ドリフト層22の間に挟まれたゲート電極31の下方に位置するチャネルpウェル層26の表層部にチャネル領域が形成され、エミッタ電極33およびn+型エミッタ領域27からチャネル領域を通じてn-型ドリフト層22内に電子が流れ込む。これに伴って、コレクタ電極32およびコレクタ領域24を通じてn-型ドリフト層22内にホールが流れ込み、n-型ドリフト層22内において導電率変調が起きる。これにより、エミッタ―コレクタ間に大電流を流すというIGBT動作を行う。
【0053】
このような横型IGBT8において、本実施形態では、コレクタ電極32がp+型領域24aに対してオーミック接触させられ、かつ、p型領域24bに対してショットキー接触させられるようにしている。このため、コレクタ側からのホールの注入を抑制して低注入効率となるようにすることができる。特に、このようなコレクタ電極32とコレクタ領域24との接触形態によって、ホールの注入を抑制することができることから、n型バッファ層25がホールの注入を抑制する役割を果たさなくても良く、単にFS層としての役割を果たせば良くなるため、n型バッファ層25の不純物濃度をコレクタ側の注入効率を変化させない程度の低不純物濃度に設定することが可能となる。
【0054】
以上のような構造により、各上下アーム5、6に備えられる横型FWD7および横型IGBT8が構成されている。そして、本実施形態では、これら横型FWD7や横型IGBT8に備えられる各SRFP21、34の不純物濃度の設定により、耐圧バラツキを抑制することが可能な構成となるようにしている。以下、このSRFP21、34の不純物濃度の設定の理由について説明するが、不純物濃度の設定は基本的には横型FWD7と横型IGBT8とで変わりはないため、ここでは横型IGBT8のSRFP34を例として説明する。
【0055】
本発明者らは、横型IGBT8のSRFP34のうち最も低電位側となるエミッタ側の端部において、SRFP34内が空乏化され、ホール濃度が低下するために、耐圧バラツキが発生していることを見出した。すなわち、SRFP34は、LOCOS酸化膜23を介して下方からの電界を受けることになるが、エミッタ側の端部において最も電界強度が高くなり、空乏化が生じ、ホール濃度が低下してしまう。このホール濃度の低下により、SRFP34内に一様に電流が流れたときに、SRFP34におけるエミッタ側の端部において抵抗値が大きくなり、電圧降下量が大きくなる。このため、n-型ドリフト層22内に生じる電界勾配がエミッタ側においてコレクタ側などと比較して急峻となり、電界の勾配に偏りが生じる。これにより、耐圧バラツキが発生するのである。
【0056】
そして、このような空乏化による影響は、SRFP34の不純物濃度、具体的には少なくともSRFP34のうちのエミッタ側の端部での不純物濃度に依存しており、本発明の者らは、その不純物濃度が高くなるほど影響が小さくなることを見出した。これについて、図6A〜図6Cを参照して説明する。
【0057】
図6Aは、SRFP34の不純物濃度と空乏化の関係を調べるのに用いた横型IGBT8の断面図であり、図4に示したものと左右対称図となるが、基本的には同じ構造である。図6Bは、図6A中において破線で囲んだ領域R、つまりSRFP34のうちエミッタ側の端部における電界分布および空乏化の様子を示した拡大断面図である。図6Cは、図6B中に示したようにSRFP34のうち最もエミッタ側の部分の表面部、中点、底部それぞれでSRFP34の濃度設定値と濃度測定値との関係を調べた結果を示した図である。なお、この実験では、埋込酸化膜11bの厚みを5μm、n-型ドリフト層22の厚みを15μm、コレクタ電圧を600V、ゲート電圧およびエミッタ電圧を0Vとしている。また、LOCOS酸化膜23の膜厚を0.6μmとしている。
【0058】
コレクタ電圧を高電圧とし、ゲート電圧およびエミッタ電圧を0Vとにすると、図6Aに示したSRFP34のうち最もエミッタ側が最も低電圧となる。そして、このような条件とすると、図6Bに示すようにSRFP34における最もエミッタ側の端部において底部側から空乏化が生じた。そして、空乏化する範囲がSRFP34の不純物濃度に応じて決まることが確認された。
【0059】
すなわち、図6Cに示すように、SRFP34の不純物濃度については濃度設計値を見込んで不純物のドーズ量を調整しているため、理想的にはその濃度設計値通りの不純物濃度になっていると想定される。しかしながら、SRFP34のうち最もエミッタ側の端部では濃度測定値が濃度設計値よりも小さくなり、SRFP34の不純物濃度が小さいほど、そのような傾向になっていた。これは、不純物濃度が小さいほど空乏化が進み易く、不純物濃度(図6Aに示す横型IGBT8の場合はホール濃度)が低くなっているためであると考えられる。したがって、図6Cの結果から空乏化する範囲がSRFP34のうち最もエミッタ側の不純物濃度に応じて決まると言え、不純物濃度が小さくなるほど空乏化される範囲が広くなり、不純物濃度が大きくなると空乏化される範囲が小さくなると言える。
【0060】
具体的には、図6Cに示されるように、SRFP34の表層部、中点、底部のうち表面部については不純物濃度にかかわらずあまり濃度設計値と濃度測定値とに差が生じないが、中点や底部については不純物濃度が1×1018cm-3未満になるとその差が大きくなる。このため、SRFP34のうち最もエミッタ側の端部の不純物濃度が1×1018cm-3以上となるように濃度設計を行うことで、空乏化の領域を制限することが可能になることが分かる。
【0061】
また、コレクタ電圧を100V、300V、600Vとして電界強度を3基準で変更した場合について、SRFP34の不純物の濃度設計値を変えて、SRFP34のうち最もエミッタ側の端部における電界強度とホール濃度との関係を調べた。図7A〜図7Cは、その結果を示したもので、それぞれSRFP34のうち最もエミッタ側の端部の表層部、中点、底部での電界強度とホール濃度との関係を示したグラフである。なお、図7A〜図7Cのうち電界強度が0.0×100(=0)V/cmのときが不純物の濃度設計値に相当している。また、電界強度については、SRFP34のうち最もエミッタ側の端部と対応する位置でのLOCOS酸化膜23の直下における電界強度としてある。
【0062】
図7Aに示すように、表層部では、不純物濃度にかかわらずどの電界強度でもホール濃度がほぼ一定になった。これに対して、図7Bおよび図7Cに示すように、中点および底部では、不純物濃度が低いと電界強度が高くなったときにホール濃度が低下している。このため、中点および底部では不純物濃度が低い領域ではホール濃度の電界依存性が高くなる。しかしながら、中点および底部でも、不純物濃度が高く、1×1018cm-3以上になると電界強度が高くなってもあまりホール濃度が低下しておらず、ホール濃度の電界依存性が低くなることが分かる。
【0063】
また、SRFP34の不純物濃度を変化させて、SRFP34のうちエミッタ側とコレクタ側およびその中央部それぞれにおいてホール濃度および空乏化状態を調べた。具体的には、1×1014cm-3、1×1016cm-3、1×1017cm-3、1×1018cm-3、1×1020cm-3とした。そのときのドーズ量は、それぞれ、2.6×109cm-2、2.6×1011cm-2、2.6×1012cm-2、2.6×1013cm-2、2.6×1015cm-2である。その結果、SRFP34のうちエミッタ側では不純物濃度が低いとホール濃度の低下および空乏化が生じ、中央部やコレクタ側ではホール濃度の低下も空乏化も生じていなかった。そして、SRFP34の不純物濃度を1×1018cm-3以上にすると、中央部やコレクタ側だけでなくエミッタ側でもホール濃度の低下および空乏化がほとんど生じていなかった。
【0064】
このように、不純物濃度が低いとSRFP34のうち最もエミッタ側で空乏化が起こり、ホール濃度が低下する。このため、コレクタ側からエミッタ側に至るまでの間において、SRFP34の抵抗値が不均一となり、n-型ドリフト層22内に生じる電界勾配(電界強度勾配)に偏りが生じる。図8Aおよび図8Bは、不純物濃度を低くした場合と1×1018cm-3以上に濃くした場合それぞれでの電界分布を示した断面図である。
【0065】
図8Aに示されるように、不純物濃度が低いと、SRFP34のうち最もエミッタ側での電界勾配が急になり、コレクタ側で電界勾配が緩やかになるため、電界勾配に偏りができる。このため、電界勾配が大きくなるエミッタ側において電界緩和効果が不十分になり、耐圧バラツキが発生することになる。これに対して、図8Bに示されるように、不純物濃度が1×1018cm-3以上に濃くしてあると、エミッタ側からコレクタ側に掛けて電界勾配の偏りが小さくなる。このため、耐圧バラツキを抑制することが可能になる。
【0066】
したがって、SRFP34の不純物濃度、少なくともエミッタ側の端部の不純物濃度を1×1018cm-3以上とすることで、空乏化する領域を制限でき、ホール濃度の低下を抑制できる。このため、n-型ドリフト層22内に生じる電界勾配の偏りを小さくすることが可能となり、耐圧バラツキを抑制することができる。
【0067】
また、図9に示すように、SRFP34のうち最もエミッタ側の端部の表面からの深さ方向におけるホール濃度の変化をプロットした図を作成し、これを積算することで空乏化後のホール濃度、つまりSRFP34の不純物濃度を測定した。そして、SRFP34の濃度設定値に対する空乏化後の不純物濃度の割合(以下、濃度変化率という)が、濃度設定値に応じてどのように変化するかについて調べた結果、図10に示す特性図が得られた。このように濃度変化率(%)で示すと、空乏化後の不純物濃度が濃度設計値からどの程度変化していると電界勾配の偏りが発生するかを把握できる。
【0068】
この図10でも、不純物濃度が1×1018cm-3(ドーズ量2.5×1013cm-2)未満になったところから濃度低下が大きくなっていることが分かる。また、不純物濃度を1×1018cm-3にした場合と、不純物濃度が1×1018cm-3未満のときよりもドーズ量を減らした場合(例えば、ドーズ量1.2×1013cm-2、7.0×1012cm-2)とで静耐圧、耐久性について調べた。その結果も、前者の場合には静耐圧も耐久性も得られたが、後者の場合には静耐圧も耐久性も不十分であった。したがって、SRFP34における不純物濃度が1×1018cm-3以上となるようにすることで、空乏化を抑制してホール濃度の低下を抑制でき、電界勾配の偏りも抑制することが可能になると言える。
【0069】
また、SRFP34の不純物濃度を変化させた場合のCE(コレクタ−エミッタ)間耐圧との関係について調べた。図11は、その結果を示した図である(黒丸プロット参照)。また、この図中に、図10に示したSRFP34の不純物濃度を変化させた場合の濃度変化率についても示してある(黒四角プロット参照)。
【0070】
この図に示されるように、不純物濃度が1×1018cm-3以上であると、濃度変化率はほぼ100%であり、耐圧も750V以上という高い値が得られる。そして、不純物濃度が1×1018cm-3未満になると、濃度変化率が低下し始め、耐圧も低下し始める。不純物濃度が1×1017cm-3以上であれば、500V以上の耐圧は得られるが、耐圧バラツキがあり、安定した耐圧が得られるようにするには、不純物濃度が1×1018cm-3以上であると好ましいことが分かる。なお、SRFP34の不純物濃度は濃ければ耐圧が得られるが、デバイスリーク電流規格に基づけば、不純物濃度が2×1020cm-3以下となるようにするのが好ましい。
【0071】
さらに、図12A〜図12Cに示すように、SRFP34の不純物濃度を変え、電界勾配の偏りが異なっている条件下で、エミッタからコレクタに向かう方向をX座標に見立て、LOCOS酸化膜23の直下におけるn-型ドリフト層22内の電位や電位差を調べた。図13は、その結果をプロットしたグラフである。この図に示されるように、不純物濃度に応じて電位にバラツキが生じており、不純物濃度が低いほどエミッタ側での電位差が大きくなった。つまり、SRFP34のうち最もエミッタ側の端部において、空乏化による抵抗値増加が生じるために、そこでの電圧降下量が大きくなって、電位差も大きくなるのである。
【0072】
そして、最も耐圧バラツキに影響するSRFP34のうち最もエミッタ側の端部と対応する位置でのLOCOS酸化膜23の直下において、その場所での電界強度と上記電位差や耐圧との関係を図11および図12A〜図12Cの結果を用いてプロットした。その結果、図14に示すグラフが得られ、電位差および耐圧は近似線上にプロットされた。また、この図から分かるように、電界強度が7.0×10-5V/cm以上で、局所的な電位差が大きくなり、耐圧が低下した。
【0073】
これらのことから、電界強度が7.0×10-5V/cm以上となるとき、つまりSRFP34の不純物濃度に換算すれば1×1018cm-3未満になると近似線で示されるように電位差が上昇すると共に耐圧が低下することが確認された。したがって、SRFP34の不純物濃度を1×1018cm-3以上とすることで、耐圧バラツキを抑制できると共に所望の耐圧が得られることが分かる。なお、図14において、耐圧についてのプロットは実測データであるが、電位差のシミュレーションデータを用いている。
【0074】
以上の理由により、本実施形態では、SRFP34のうち少なくとも最も低電圧側となるエミッタ側の端部において、その不純物濃度が1×1018cm-3以上となるようにしている。これにより、SRFP34の空乏化による不純物濃度(ホール濃度)の低下を抑制でき、耐圧バラツキを抑制することが可能となる。これにより、歩留りを向上させることが可能な横型素子を実現できる。なお、ここでは、横型IGBT8のSRFP34を例として説明したが、横型FWD7のSRFP21についても同様の条件とすることで、同様の効果を得ることができる。
【0075】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してSRFP21、34の抵抗値(抵抗率)の設定に基づいて、第1実施形態と同様の効果を得られるようにしたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0076】
本実施形態では、SRFP21、34の抵抗値の設定に基づいて、耐圧バラツキを抑制することが可能な構成となるようにしている。第1実施形態のように、基本的にはSRFP21、34における不純物濃度を制御することで耐圧バラツキを抑制できるが、不純物濃度ではなく抵抗値として把握することもできる。このため、本実施形態では、SRFP21、34の抵抗値の設定により第1実施形態と同様の効果を得るようにする。
【0077】
以下、SRFP21、34の抵抗値の設定の理由について説明するが、抵抗値の設定は基本的には横型FWD7と横型IGBT8とで変わりはないため、ここでは横型FWD7のSRFP21を例として説明する。
【0078】
本発明者らは、横型FWD7のSRFP21の抵抗値(もしくは抵抗率)を変化させてSRFP21の抵抗値と耐圧との関係についても調べた。図15は、図2および図3に示した横型FWD7のSRFP21の抵抗値を変化させた時の抵抗値(Ω/□)もしくは抵抗率(Ω・cm)と耐圧の関係を示した図である。
【0079】
この図に示すように、SRFP21の抵抗値(もしくは抵抗率)に対して耐圧が変化し、耐圧バラツキも変化している。例えば、SRFP21の抵抗値として1×105〜1×106Ω/□(抵抗率で言えば1×10-2〜1×10-1Ω・cm)を狙って不純物をドープした。この場合には、耐圧700V以上(具体的には750V程度)という高い耐圧を少ないバラツキで得ることができることが確認された。しかしながら、1×106Ω/□以上となるように不純物をドープした場合、耐圧が低下するのに加えてバラツキが大きくなり、安定して目標耐圧を得ることができなくなった。
【0080】
このため、600V以上の高耐圧まで保証できる横型FWD7とするためには、耐圧バラツキを見込んでSRFP21の抵抗値を設定しなければならず、1×106Ω/□以下にすれば、耐圧バラツキを抑制でき、確実に600V以上の高耐圧まで保証することが可能になる。したがって、本実施形態では、横型FWD7のSRFP21の抵抗値を1×106Ω/□以下に設定するようにしている。
【0081】
また、SRFP21への不純物のドーズ量と耐圧バラツキとの関係についても調べた。図16は、SRFP21への不純物のドーズ量と耐圧バラツキとの関係を示した図である。この図では、耐圧バラツキをΔV(V)で表してある。
【0082】
この図に示されるように、1×1013cm-3以下というドーズ量としてSRFP21を作成した場合の耐圧バラツキΔVは180Vという大きな値となった。これに対して、2×1013cm-3以上のドーズ量としてSRFP21を作成した場合の耐圧バラツキΔVは20V以下という小さな値になった。これは、活性化率などによってSRFP21の抵抗値が変化するためと考えられ、より高いドーズ量とする方が横型FWD7のSRFP21の抵抗値のバラツキが小さくなり、耐圧バラツキΔVも小さな値になると考えられる。したがって、SRFP21を抵抗値が1×106Ω/□以下とするような高いドーズ量とすることで、耐圧バラツキを小さくすることが可能になると言える。
【0083】
さらに、SRFP21の抵抗値と耐圧低下の関係について、高温ブロッキング試験により調べた。図17は、高温ブロッキング試験によりSRFP21の抵抗値と耐圧低下の関係について調べた結果を示した図である。具体的には、図1のように横型FWD7と横型IGBT8が並列接続された構成において、SRFP21の抵抗値を2.1×106Ω/□と92.8×103Ω/□とし、175℃の温度下において、カソード−アノード間に600Vの電圧を掛け、電流を1μA流したときの通電時間Time(hr)に対するコレクタ−エミッタ間電圧VCEの変化について調べた。このとき、SRFP21の間隔を1.2μm、埋込酸化膜11bの厚みを5μm、活性層11cの厚みを15μmとして試験を行っている。
【0084】
その結果、SRFP21の抵抗値が1×106Ω/□以下となる92.8×103Ω/□の場合には、高温ブロッキング試験によって耐圧が低下しないが、SRFP21の抵抗値が1×106Ω/□よりも大きくなる2.1×106Ω/□の場合には、高温ブロッキング試験によって耐圧が低下していっていることが確認された。このように、SRFP21の抵抗値が1×106Ω/□以下となるようにすることで、環境温度に対する耐久耐圧性能を備えた横型FWD7とすることも可能となる。
【0085】
以上の理由により、本実施形態では、横型FWD7や横型IGBT8に備えられるSRFP21、34について、抵抗値が1×106Ω/□以下となるようにしている。このように、横型FWD7や横型IGBT8に備えられるSRFP21、34について、抵抗値を1×106Ω/□以下とすることにより、耐圧バラツキを抑制することが可能となり、的確に目標とする耐圧を得ることができる製品とすることが可能になる。したがって、製品の歩留りを向上させることが可能となる。
【0086】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対して活性層11cの底部の構成を変更したものであり、その他に関しては第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0087】
図18は、本実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の断面構造を示した図であり、図3のA−A’断面に相当する図である。ここでは、横型FWD7について示してあるが、横型IGBT8についても、同様の構造を適用できる。
【0088】
図18に示すように、活性層11cの底部、具体的には埋込酸化膜11bとの境界面に、活性層11cと同じ導電型かつ活性層11cよりも高不純物濃度とされた界面層としての界面n型層11eを備えた構造としている。このように、界面n型層11eを備える構造において、上記のようにSRFP21の不純物濃度が1×1018cm-3以上となるようにしたり、抵抗値が1×106Ω/□以下となるようにすることで、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
さらに、界面n型層11eが備えられた構造においては、SRFP21の間隔、つまり渦巻状に巻回されているSRFP21の隣り合うもの同士の間の距離を狭くすることで、電界緩和効果を向上でき、耐圧が向上させられるという効果も得られることも確認している。図19(a)は、SRFP21の間隔を2.5μmとした場合と1.0μmとした場合とで界面n型層11eのドーズ量(cm-2)とブレークダウン電圧(V)との関係を実験により調べた結果を示す図であり、図19(b)は、図19(a)のうちの1.8×1012cm-2のときと2.3×1012cm-2のときを抜き出した図である。この実験では、埋込酸化膜11bの厚みを5μmとして行っている。
【0090】
この図に示されるように、界面n型層11eのドーズ量を大きくするとブレークダウン電圧が増加していき、さらにドーズ量を大きくすると今度はブレークダウン電圧が低下していく。ここで、SRFP21の間隔とブレークダウン電圧との関係を見てみると、SRFP21の間隔が狭い時の方が広い時と比較してブレークダウンダウン電圧が高くなっていることが判る。具体的には、界面n型層11eのドーズ量が1.3×1012cm-2から2.8×1012cm-2の範囲において、SRFP21の間隔が1.0μmとした場合の方が2.5μmとした場合よりもブレークダウン電圧が高くなっている。
【0091】
このように、界面n型層11eが備えられた構造において、SRFP21の間隔を狭くすることで、電界緩和効果を向上でき、耐圧が向上させられるという効果も得ることができる。
【0092】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第3実施形態の構造の半導体装置の具体的な配線構造の一例について説明する。
【0093】
図20は、本実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の上面レイアウト図である。また、図21Aは、図20のC−C’断面図、図21Bは、図20のD−D’断面図である。なお、図21Aおよび図21Bにおいて、第1実施形態の半導体装置に備えてあったp+型高不純物濃度領域18を省略しているなど、図面を簡略化してあるが、勿論、これらを備えた構造とすることもできる。また、ここでは第1実施形態の構造についての配線構造を示してあるが、第2実施形態のように界面n型層11eが備えられた構造としても良い。
【0094】
図20に示されるように、横型FWD7の素子構造が構成された基板上に各部に接続される配線構造が備えられている。具体的には、本実施形態では、配線構造を次のような構造としている。
【0095】
図21Aおよび図21Bに示すように、SRFP21を形成した基板表面に第1層間絶縁膜としてのBPSG膜40が形成され、このBPSG膜40にSRFP21の両端を開口させると共にn+型カソードコンタクト領域14やp型アノード領域16を露出させるコンタクトホールが形成されている。そして、BPSG膜40の表面にAlなどからなるカソード電極19およびアノード電極20が形成され、コンタクトホールを介して、カソード電極19がn+型カソードコンタクト領域14およびSRFP21の一端と接続され、アノード電極20がp型アノード領域16とSRFP21の他端と接続されている。
【0096】
さらに、カソード電極19やアノード電極20およびBPSG膜40の表面に、シリコン窒化膜41、層間絶縁膜42、第1SOG膜43、層間絶縁膜44が順に形成されている。シリコン窒化膜41は、水分から素子をブロックするために設けられている。層間絶縁膜42、44は第2層間絶縁膜として設けられている。第1SOG膜43も第2層間絶縁膜として設けられているが、流動性が高い膜であることから、平坦性を向上させるために配置してある。
【0097】
これら各膜41〜44には、カソード電極19やアノード電極20を露出させるようにコンタクトホールが形成されている。そして、層間絶縁膜44の表面には1stAl配線46が形成されており、配線46aがコンタクトホールを介してカソード電極19に電気的に接続されていると共に、配線46bがコンタクトホールを介してアノード電極20に電気的に接続されている。
【0098】
また、1stAl配線46および層間絶縁膜44の表面には、層間絶縁膜47、第2SOG膜48および層間絶縁膜49が順に形成されている。層間絶縁膜47、49は第3層間絶縁膜として設けられている。第2SOG膜48も第3層間絶縁膜として設けられているが、流動性が高い膜であることから、平坦性を向上させるために配置してある。これら各膜47〜49には、配線46a、46bを露出させるようにコンタクトホールが形成されている。そして、第5TEOS膜49の表面には2ndAl配線50が形成されており、配線50aがコンタクトホールを介してカソード電極19に繋がる配線46aに電気的に接続されていると共に、配線50bがコンタクトホールを介してアノード電極20に繋がる配線46bに電気的に接続されている。
【0099】
図20および図21Bに示されるように、1stAl配線46や2ndAl配線50は、それぞれ、n+型カソードコンタクト領域14およびp型アノード領域16の長手方向に沿って延設されている。各配線46、50のうちp型アノード領域16に接続される側はその長手方向一方向に引き出され、n+型カソードコンタクト領域14に接続される側はその長手方向一方向側であって、p+型アノード領域16に接続される側と反対側に引き出されている。このため、図21Bに示すように、横型FWD7を構成する各層やSRFP21の上方にはn+型カソードコンタクト領域14に接続される各配線46、50が延設され、高電圧が印加される状態になっている。
【0100】
そして、これらの表面全域を覆うようにP−SiNからなる保護膜51が成膜されている。このような構成により、横型FWD7の配線構造が構成されている。
【0101】
このような配線構造において、各層間絶縁膜(SOG膜など)には水分が含まれており、水分中のHやOが素子側に入り込むと、素子特性に影響を及ぼす可能性があるが、それよりも下層にシリコン窒化膜41を配置することで、水分をブロックすることが可能となり、素子特性への影響を抑制することが可能となる。特に、上記したような高電圧が印加される各配線46、50が横型FWD7を構成する各層やSRFP21の上方に配置されていると、高電圧の影響でHやOなどの+電荷を有するイオンが下方に移動し易い。このため、シリコン窒化膜41を配置して水分をブロックすることが有効となる。この水分の下方への移動は、上記した図17に示されるように時間と共にコレクタ−エミッタ間電圧VCEが低下していることからも確認されており、この結果からも、水分をブロックすることが有効であることが分かる。
【0102】
なお、ここでは横型FWD7の配線構造として説明したが、勿論、横型IGBT8についても同様の配線構造を適用することができる。
【0103】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態でも、第1〜第3実施形態の構造の半導体装置の具体的な配線構造の一例について説明する。なお、本実施形態の配線構造の基本構造は第4実施形態と同様であるため、第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0104】
図22は、本実施形態にかかる半導体装置に備えられる横型FWD7の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、シリコン窒化膜41をBPSG膜40の下層に配置している。その他の構造については第4実施形態と同様である。
【0105】
このように、シリコン窒化膜41をBPSG膜40の下層に配置すると、より下層にシリコン窒化膜41を配置した構造となるため、BPSG膜40内に存在する水分についてもシリコン窒化膜41によってブロックすることが可能となる。したがって、さらに素子特性への影響を抑制することが可能となる。
【0106】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体基板としてSOI基板11以外のものを用いたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0107】
図23は、本実施形態にかかる横型FWD7の断面構成を示した図である。この図に示すように、p-型シリコン基板61の上にn-型層62を形成したものを半導体基板60として用いている。そして、n-型層62によってn-型ドリフト層12を構成し、n-型ドリフト層12の表面からp-型シリコン基板61に達するように、幅0.67±0.07μmのトレンチ63が形成され、トレンチ63内を埋め込むようにBPSG膜からなる絶縁分離領域64が形成されている。この絶縁分離領域64は、横型FWD7の周囲を囲むように形成されており、この絶縁分離領域64により、素子分離構造が構成されている。
【0108】
このように、半導体基板60としてp-型シリコン基板61のような単なるシリコン基板などを用いた構造の横型FWD7としても良い。
【0109】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対して半導体基板としてSOI基板11以外のものを用いたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0110】
図24は、本実施形態にかかる横型FWD7の断面構成を示した図である。この図に示すように、p-型シリコン基板61の上にn-型層62を形成したものを半導体基板60として用いている。そして、n-型層62によってn-型ドリフト層12を構成し、n-型ドリフト層12の表面からp-型シリコン基板61に達するように、p-型分離領域65が形成されている。このp-型分離領域65は、横型FWD7の周囲を囲むように形成されており、このp-型分離領域65とn-型ドリフト層22とのPN接合により、接合分離構造が構成されている。
【0111】
このように、半導体基板60としてp-型シリコン基板61のような単なるシリコン基板などを用いた、接合分離型の横型FWD7としても良い。
【0112】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では横型IGBT8について、第2実施形態以降では横型FWD7について、主に説明した。しかしながら、上記各実施形態で適用した構造については、横型FWD7および横型IGBT8それぞれで適用できるし、他の横型素子についても適用することができる。例えば、横型FWD7および横型IGBT8の他には、横型LDMOSなどについて本発明を適用することができる。図25は、横型LDMOSの上面レイアウトを示した図である。この図に示すように、ドレイン領域70を中心としてゲート電極71やソース領域72を配置し、ドレイン領域70を中心として渦巻状に巻回されたSRFP73を備えた構造としている。このような横型LDMOSについても、上記各実施形態で説明した構造を適用することができる。
【0113】
さらに、上記各実施形態では、抵抗性フィールドプレート(RFP)として渦巻き型となるSRFP21、34を例に挙げたが、渦巻き型に限るものではない。すなわち、低電圧とされる電極(横型FWD7であればアノード、横型IGBT8であればエミッタ)側において、抵抗性フィールドプレートの端部の不純物濃度を1×1018cm-3以上にすることで、上記各実施形態の効果が得られる。
【0114】
なお、抵抗性フィールドプレートの端部とは、抵抗性フィールドプレートのうち低電圧側の電極に接続される拡散層と対向する部分を意味している。上記各実施形態で示したような渦巻き型とされたSRFP21、34であれば、渦巻きのうち最も低電圧とされる電極側の一周、より詳しくはその周のうち、少なくとも当該電極に接続される拡散層と対向する部分の不純物濃度を1×1018cm-3以上にすれば良い。また、例えば、図26に示おいて破線ハッチングで示したように、抵抗性フィールドプレート21をカソード側からアノード側に向けて全面形成(ベタ形成)することもでkりう。この場合、前面形成された抵抗性フィールドプレート21のうちの少なくともアノード電極20に接続されたp型アノード領域16と対向する部分(図中太線で示した部分)の不純物濃度を1×1018cm-3以上にすれば良い。
【0115】
また、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型とした構造(例えば、nチャネルタイプのIGBT)を例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させた構造(例えばpチャネルタイプのIGBT)に対しても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
7 横型FWD
8 横型IGBT
11 SOI基板
11a 支持基板
11b 埋込酸化膜
11c 活性層
11e 界面n型層
19 カソード電極
20 アノード電極
21 SRFP
31 ゲート電極
32 コレクタ電極
33 エミッタ電極
34 SRFP
60 半導体基板
62 n-型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層(11c、62)を有する半導体基板(11、60)の前記半導体層(11c、62)の表面に、第1電極(19、32)および第2電極(20、33)を備えていると共に、前記第1電極(19、32)と前記第2電極(20、33)との間において電流を流す横型素子(7、8)が形成されてなる半導体装置において、
前記第1電極(19、32)から前記第2電極(20、33)側に向けて延設された抵抗性フィールドプレート(21、34)を備え、
前記抵抗性フィールドプレート(21、34)のうち、前記第1電極(19、32)および前記第2電極(20、33)における低電圧が印加される側の電極(20、33)側の端部の不純物濃度が1×1018cm-3以上に設定されていることを特徴とする横型素子を有する半導体装置。
【請求項2】
前記抵抗性フィールドプレート(21、34)は、前記第1電極(19、32)の周囲を渦巻状に囲みつつ、前記第2電極(20、33)側に延設された渦巻き型とされ、該渦巻きのうち少なくとも最も低電圧とされる電極側の一周の不純物濃度が1×1018cm-3以上に設定されていることを特徴とする横型素子を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
第1導電型の半導体層(11c、62)を有する半導体基板(11、60)の前記半導体層(11c、62)の表面に、第1電極(19、32)および第2電極(20、33)を備えていると共に、前記第1電極(19、32)と前記第2電極(20、33)との間において電流を流す横型素子(7、8)が形成されてなる半導体装置において、
前記第1電極(19、32)の周囲を渦巻状に囲みつつ、前記第2電極(20、33)側に延設された渦巻き型の抵抗性フィールドプレート(21、34)を備え、
前記抵抗性フィールドプレート(21、34)の抵抗値が1×106Ω/□以下に設定されていることを特徴とする横型素子を有する半導体装置。
【請求項4】
前記抵抗性フィールドプレート(21、34)は、ドーズ量が2.0×1013cm-3以上とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板は、支持基板(11a)上に埋込絶縁膜(11b)を介して前記半導体層を構成する活性層(11c)が備えられたSOI基板(11)であり、該SOI基板(11)には、前記活性層(11c)のうち前記埋込絶縁膜(11b)との界面に、前記半導体層(11c)よりも高不純物濃度とされた第1導電型の界面層(11e)が備えられており、
渦巻き型とされた前記抵抗性フィールドプレート(21、34)の隣り合うもの同士の間隔が1μm以下とされ、かつ、前記界面層(11e)の第1導電型不純物のドーズ量が1.3〜2.8×1012cm-2とされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記抵抗性フィールドプレート(21、34)の上を含む、前記半導体基板(11、60)の上には、第1層間絶縁膜(40)が形成されていると共に、該第1層間絶縁膜(40)に形成されたコンタクトホールを介して、前記第1電極(19、32)および前記第2電極(20、33)が前記横型素子(7、8)と電気的に接続されており、
前記第1電極(19、32)および前記第2電極(20、33)の上を含み、前記第1層間絶縁膜(40)の上にシリコン窒化膜(41)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記抵抗性フィールドプレート(21、34)の上を含む、前記半導体基板(11、60)の上には、シリコン窒化膜(41)が形成されていると共に、該シリコン窒化膜(41)の上に第1層間絶縁膜(40)が形成されており、
前記シリコン窒化膜(41)および前記第1層間絶縁膜(40)に形成されたコンタクトホールを介して、前記第1電極(19、32)および前記第2電極(20、33)が前記横型素子(7、8)と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−84903(P2013−84903A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154884(P2012−154884)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】