説明

樹脂封止成形品の製造方法

【課題】複雑な工程を要さず、1回の成形工程で所定の外形形状と電子部品の品質を確保できる樹脂封止成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電子部品11に当接しない距離で成形品外形面Aよりも天面が金型キャビティの中心側に突き出しているスリーブピン12と冷媒により冷却されているセンターピン13a〜13dを備え、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bをインサートすることにより冷却され寸法収縮する。寸法収縮しているため、樹脂封止後の熱膨張により保持材14a,14b,15a,15bと封止樹脂40との境界面は締まりばめとなり、境界面の密着力が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入部品としての電子部品を、金型へ挿入固定した後、樹脂成形により電子部品の周囲を封止樹脂で被覆した樹脂封止成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は特許文献1に記載された樹脂封止成形品の製造方法を示す。
封止樹脂の充填に際して、金型5にはインサート用部品1が保持されている。金型5は下型5aと上型5bで構成されている。インサート用部品1は、樹脂封止したい電子部品3と、あらかじめ分割形状で製作されて電子部品3を絶縁被覆する一次成形品2とで形成されている。一次成形品2には、複数個の保持用突起4が設けられている。保持用突起4は一次成形品2に接着剤で固定される場合もある。
【0003】
このインサート用部品1を金型5に挿入固定した後に、封止樹脂が金型5のキャビティ50に充填されて、その後に離型することによって図12に示すように、電子部品3が封止樹脂40によって封止された樹脂封止成形品41を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−254476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の構成では、樹脂封止成形前にインサート用部品1を製作しなければならず、部品点数と製造工程数がどうしても多くなってしまう。
電子部品3を金型5に直接に挿入固定し、1回の成形で封止樹脂による電子部品3の封止を行うならば、成形前に保持用突起4を金型5に挿入固定しなければならない。しかし、樹脂封止成形時に保持用突起4の電子部品3への固定が不十分な時は、金型5への封止樹脂の充填時に電子部品3の位置が移動してしまうという課題がある。
【0006】
また、樹脂封止成形後の保持用突起4と封止樹脂との境界面の密着力が弱ければ、境界面から入る湿気や異物が電子部品に付着する可能性があるので、電子部品3の品質に悪影響を及ぼすという課題も有している。
【0007】
本発明は、複雑な工程を要さず、1回の成形工程で所定の外形形状と挿入部品の品質を確保できる樹脂封止成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂封止成形品の製造方法は、樹脂封止する挿入部品を保持材で支持して金型のキャビティに配置した状態で、前記保持材に冷却したセンターピンを当接させて冷却するとともに、前記キャビティに封止樹脂の注入を開始することを特徴とする。
【0009】
具体的には、樹脂封止する挿入部品を保持材で挟持する。また、前記キャビティに対して出退自在のスリーブピンによって前記保持材を支持する。
また、前記挿入部品がセットされた前記保持材を前記スリーブピンによって支持する。
【0010】
また、上記において前記封止樹脂の注入にともなって前記スリーブピンを後退させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
センターピンによって冷却された保持材は寸法収縮しており、樹脂封止後の熱膨張により保持材と封止樹脂との境界面は締まりばめとなるので、複雑な工程を要さず、1回の成形工程で所定の外形形状と挿入部品の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における封止樹脂の充填前後の金型の正面断面図
【図2】樹脂封止成形品の断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるキャビティの平面図
【図4】本発明の実施の形態2における封止樹脂の充填前後の金型の正面断面図
【図5】本発明の実施の形態2におけるキャビティ平面図
【図6】樹脂封止成形品の断面図
【図7】本発明の実施の形態3における樹脂充填前の金型の水平断面図と正面断面図
【図8】本発明の実施の形態3における樹脂充填後の金型の水平断面図と正面断面図
【図9】本発明の実施の形態4における樹脂充填前の金型の正面断面図とキャビティの平面断面図
【図10】本発明の実施の形態4における樹脂充填後の金型の正面断面図とキャビティの平面断面図
【図11】特許文献1に記載された従来の製造方法での金型の正面断面図
【図12】従来の製造方法で製造された樹脂封止成形品の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂封止成形品の製造方法を、具体的な各実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1(a),図1(b),図2と図3は実施の形態1を示す。
【0014】
図1(a)は封止樹脂を充填する前の金型の断面図である。
金型5は、挿入部品としての電子部品11を保持する位置にスリーブピン12a,12bが下型5aに設けられている。上型5bには、スリーブピン12a,12bに対向する位置にスリーブピン12c,12dが設けられている。スリーブピン12a,12b,12c,12dの内側にはセンターピン13a,13b,13c,13dが配してある。
【0015】
スリーブピン12a,12b,12c,12dの天面は、金型5の成形品外形面Aよりもキャビティ中心側に突き出し、しかも電子部品11には当接しない位置である。センターピン13a,13b,13c,13dの天面は金型5の成形品外形面Aと同じ高さである。
【0016】
スリーブピン12a,12bの内径部にインサートされた下側保持材14a,14bの先端には凸部14oが形成されており、下側保持材14a,14bの凸部14oは電子部品11の位置決め用の孔11bに挿入されている。下側保持材14a,14bの基端はセンターピン13a,13bに当接している。下側保持材14a,14bは樹脂製である。
【0017】
スリーブピン12c,12dの内径部にインサートされた上側保持材15a,15bの先端は電子部品11の上面に当接している。上側保持材15a,15bの基端はセンターピン13c,13dに当接している。上側保持材15a,15bは樹脂製である。
【0018】
ここではセンターピン13a,13b,13c,13dの先端形状が平面形状であり、下側保持材14a,14bのセンターピン13a,13bとの当接面は、センターピン13a,13bと広い面積で当接するように平面形状に形成されている。上側保持材15a,15bのセンターピン13c,13dとの当接面も、センターピン13c,13dと広い面積で当接するように平面形状に形成されている。
【0019】
このように形成された下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bは、センターピン13a,13b,13c,13dを介して冷媒により冷却されている。
かかる構成によれば、スリーブピン12a,12b,12c,12dの内径部に下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bを嵌め込むことにより、下側保持材14と上側保持材15の位置精度を確保できる。
【0020】
下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bを自動機により挿入する場合においては、スリーブピン12a,12b,12c,12dが成形品外形面Aよりも突出しているので、スリーブピン12a,12b,12c,12dを挿入基準とできる。
【0021】
スリーブピン12a,12b,12c,12dの内径と下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bの外径は、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bを挿入できると共に位置精度が確保できる寸法設定が望ましい。
【0022】
図1(b)は封止樹脂を充填した後の金型の断面図である。
図1(b)において、スリーブピン12はアクチュエータにより成形品外形面Aまで後退することができる。
【0023】
金型5が閉じられて、キャビティ50に封止樹脂が充填されていく過程において、スリーブピン12は接続されているエアーシリンダによって成形品外形面Aまで後退し、後退してできた空間には封止樹脂が追加充填される。
【0024】
スリーブピン12の成形品外形からの凸寸法は、下側保持材14と上側保持材15を保持することができさえすれば良いので、凸寸法が小さいほうが封止樹脂の充填に有利である。
【0025】
封止樹脂が金型5に充填されて離型することによって図2に示すように、電子部品11が封止樹脂40によって封止された樹脂封止成形品41を得ることができる。
なお、本実施の形態において、スリーブピン12の駆動源をエアーシリンダとしているが、油圧シリンダ、モータ、ソレノイド、カム等のアクチュエータを用いても良い。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1における金型5のキャビティ50の平面図である。
下側保持材14aと上側保持材15aはゲート16から充填末端17aまでの封止樹脂の流動距離18の中央部で、流動距離18の1/2の範囲19に配置されている。下側保持材14bと上側保持材15bもゲート16から充填末端17bまでの封止樹脂の流動距離の中央部で、流動距離18の1/2の範囲に配置されている。
【0027】
キャビティ50の内部では、溶融状態の封止樹脂が金型に冷やされながら流れていくため、ゲート16の近傍では樹脂温度が高く保たれる。このため、スリーブピン12a〜12dが後退した後の周辺にボイドが発生しやすくなる。また、ゲート16の近傍では封止樹脂にかかる圧力も高いため、成形圧力による電子部品11の位置ずれが発生しやすい。特に、ゲート16から流入する封止樹脂の流れ方向の直線上は、成形圧力がかかりやすい。一方、充填末端17の近傍では封止樹脂の固化が進んでいるため樹脂温度は低く、封止樹脂にかかる圧力も低くなる。このため、スリーブピン12a〜12dが後退した後に樹脂を充填しにくく、ウェルドラインが発生しやすい。
【0028】
キャビティ50の封止樹脂の温度分布と内圧分布から、平面視でのスリーブピン12a,12bの位置は、ゲート16から流入する封止樹脂の流れ方向の直線上を避け、ゲート16から充填末端17までの封止樹脂の流動距離18の中央部で、流動距離18の1/2の範囲19に配置される。2ヶ所のスリーブピン12a〜12dの位置関係は、封止樹脂の充填タイミングのばらつきを考え、ゲート16から等距離の位置が望ましい。スリーブピン12c,12dの位置も同様である。
【0029】
封止樹脂40の充填過程での成形圧力による位置ずれを防止するため、スリーブピン12a〜12dを後退させるタイミングも重要な要素である。スリーブピン12a〜12dを後退させるタイミングは、封止樹脂40が電子部品11と下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bの周囲に充填している状態でなければならない。また、スリーブピン12a〜12dが後退してできた空間に封止樹脂を充填させるため、樹脂は完全に固化していない状態でなければならないので、封止樹脂がキャビティ50に完全に充填完了する直前から保圧工程完了までの間に、スリーブピン12a〜12dを後退させる。
【0030】
これらの構成により、外形面に凹形状が残らない所定の外形形状を満足し、電子部品11が所定の位置に位置決めされ周囲が封止樹脂で被覆された樹脂封止成形品41を得ることができる。
【0031】
さらに、センターピン13a〜13dは水などの冷媒で直接に冷却されている。そのため、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bも冷却され寸法収縮している。この状態で下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bの周囲に封止樹脂が充填される。成形後の常温では寸法収縮していた下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bは膨張するため、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bは封止樹脂との境界面が締まりばめとなる。また、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bが膨張し電子部品11を強固に挟み込む。
【0032】
これらの構成により、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bと封止樹脂との境界面は密着力が高まり、境界面に湿気や異物が入らないので、電子部品11の品質を確保することができる。
【0033】
なお、センターピン13a〜13dの冷却効果を上げるため、スリーブピン12a,12bの内径寸法は一部においてセンターピン13a,13bの外径よりも大きく、隙間51により断熱されている。また、スリーブピン12a,12bは熱伝導率が金型5より低い材料を材質に用いる方法もある。具体的には、金型5が機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼、合金工具鋼などの場合にスリーブピン12a,12bの材質としてはチタン等の材料を用いる。
【0034】
また、上側保持材15a,15bの外径をスリーブピン12c,12dの内径よりも大きくしておくことにより、上側保持材15a,15bがスリーブピン12c,12dに圧入され、上側保持材15a,15bが落下することがない。
【0035】
また、スリーブピン12a〜12dは成形中に後退し、上側保持材15a,15bはスリーブピン12c,12dから開放されるため、金型5が開く際に上側保持材15a,15bが上型5aから離型せず残ることも防止することができる。これは下側保持材14a,14bとスリーブピン12a〜12dでも同様に防止できる。
【0036】
電子部品11は2ヶ所の位置決め用の孔11bを有しており、下側保持材14a,14bの凸部14oに挿入されて固定されるため、金型5に対して電子部品11の位置精度を確保することができる。
【0037】
さらに、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bには絶縁性の樹脂を材質に用いており、スリーブピン12a〜12dは電子部品11に当接しないので、電子部品11が電気的に絶縁を必要な時、例えば、電子部品11が電極部を有しており充電されている状態であっても金型と当接することがなく、電気的なショートが発生することはない。
【0038】
なお、本実施の形態において、スリーブピン12a〜12dの外形形状は円形状としているが、四角形状でも良い。また、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bの外形は円形状としているが、電子部品11の位置決め穴が四角等の形状で回転方向の規制が必要な場合、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bの外形も回転方向にずれないように四角形などの多角形状等にすることもできる。
【0039】
注入する封止樹脂40、下側保持材14a,14bと上側保持材15a,15bとしてはポリアミド系ホットメルトなどの合成樹脂を使用できる。
(実施の形態2)
図4(a),図4(b),図5と図6は実施の形態2を示す。
【0040】
実施の形態1では下側保持材14a,14bの凸部14oが電子部品11の孔11bに挿入されて位置決めされていたが、この実施の形態2では電子部品11に孔11bが設けられていない。さらに、この実施の形態2では、電子部品11の四隅を下側保持材と上側保持材によって挟持している。その他の基本的な構造は実施の形態1と同じである。
【0041】
図4(a)は封止樹脂を充填する前の金型の断面図、図5は封止樹脂を充填する前の金型の平面図である。下型5aには実施の形態1の下側保持材14a,14bに代わって下側保持材20a,20b,20c,20dが設けられている。下側保持材20a〜20dの材質などは下側保持材14a,14bと同じである。
【0042】
下側保持材20a〜20dはスリーブピン30a,30b,30c,30dによって支持されている。スリーブピン30a〜30dは何れもスリーブピン12a,12bと同じである。スリーブピン30a〜30dの内側には、先端がそれぞれの下側保持材20a〜20dに当接するセンターピン31a〜31dが設けられている。図5においてセンターピン31a〜31dが図示されていないが、センターピン31c,31dも図4に示したセンターピン31a,31bと同じである。センターピン31a〜31dは何れもセンターピン13a,13bと同じように水などの冷媒で冷却されている。
【0043】
上型5bには実施の形態1の上側保持材15a,15bに代わって上側保持材21a,21b,21c,21dが設けられている。上側保持材21c,21dは図示されていないが、上側保持材21a,21bが下側保持材20a,20bに対向して配置されているのと同じに、上側保持材21c,21dも下側保持材20c,20dに対向して配置されている。上側保持材21a〜21dの材質などは上側保持材15a,15bと同じである。
【0044】
上側保持材21a〜21dはスリーブピン32a,32b,32c,32dによって支持されている。スリーブピン32a〜32dは何れもスリーブピン12c,12dと同じである。
【0045】
スリーブピン32a〜32dの内側には、先端がそれぞれの上側保持材21a〜21dに当接するセンターピン33a〜33dが設けられている。図5においてセンターピン31a〜31dが図示されていないが、センターピン31c,31dも図4に示したセンターピン33a,33bと同じである。センターピン33a〜33dは何れもセンターピン13a,13bと同じように水などの冷媒で冷却されている。
【0046】
下側保持材20a,20b,20c,20dの先端には、電子部品11の平面視の角に合う凹部34が形成されている。
下側保持材20a〜20dの凹部34が電子部品11の内側に向くように、センターピン31a〜31dの下側保持材20a〜20dとの当接部分は少なくとも一辺が直線の凹となっており、根元部の鍔はDカットされ回り止めの機能を有している。下側保持材20a〜20dの外形形状もセンターピン31a〜31dの先端と同様の形状を有しており、下側保持材20a〜20dはセンターピン31a〜31dの先端部に回転方向を規制して挿入することができる。
【0047】
下側の四隅が下側保持材20a〜20dの凹部34にセットされた電子部品11は、図4(a)に示すように上面の四隅が上側保持材21a〜21dによって、電子部品11が凹部34から外れないように押さえて電子部品11の移動を規制しているので、実施の形態1の場合の電子部品11に位置決め用の孔が無くても、キャビティ50における電子部品11を位置決めできる。
【0048】
そして、図4(b)と図5に示すようにゲート16から封止樹脂40をキャビティ50に注入する。封止樹脂40の注入にともなってスリーブピン30a〜30d,32a〜32dを後退させることは実施の形態1と同じである。
【0049】
なお、キャビティ50における下側保持材20a〜20dの位置は、図5に示すように中央のゲート22から充填末端23までの封止樹脂の流動距離24の中央部で、流動距離24の1/2の範囲25に配置されている。または、下側保持材20a〜20dの位置は、図5に示すように端面のゲート26から充填末端27までの封止樹脂の流動距離28の中央部で流動距離28の1/2の範囲29に配置されている。
【0050】
かかる構成によれば、下側保持材20a〜20dの位置がゲ−ト22から充填末端23までの封止樹脂の流動距離24の中央部で流動距離24の1/2の範囲25になるように設定したことによって、下側保持材20a〜20dの成形圧力による位置ずれと、スリーブピン30a〜30d,32a〜32dが後退した後の空間への封止樹脂の充填性とを良好にできる。下側保持材20a〜20dの四ヶ所の中央部にゲート22が配置可能であれば四ヶ所が等距離になる中心部にゲート22を配置すれば良いが、電子部品11の上にゲート22があることで、成形圧力と樹脂温度の電子部品11への影響が懸念される場合は、下側保持材20a〜20dの位置がゲ−ト26から充填末端27までの封止樹脂の流動距離28の中央部で流動距離28の1/2の範囲29になるようにゲート26を設定する。この範囲内に下側保持材20a〜20dを設置することができず、成形圧力による下側保持材20a〜20dの位置ずれやスリーブピン30a〜30d,32a〜32dが後退した後の空間周辺のボイドやウェルドが発生する場合は、スリーブピン30a〜30dとスリーブピン32a〜32dを後退させるタイミングを変えることで、それぞれの箇所の封止樹脂40の充填タイミングに合わせてスリーブピン30a〜30d,32a〜32dを後退させることができる。
【0051】
封止樹脂が金型5に充填されて離型することによって図6に示すように、電子部品11が封止樹脂40によって封止された樹脂封止成形品41を得ることができる。
これらの構成により、電子部品11が位置決めの孔を有していなくとも、成形品の外形面に凹形状が残らない所定の外形形状を満足し、電子部品が所定の位置に位置決めされ周囲が封止樹脂で被覆された樹脂封止成形品を得ることができる。また、樹脂封止成形品の保持材と封止樹脂との境界面は密着力が高まり、境界面に湿気や異物が入らないので、電子部品の品質を確保することができる。
【0052】
(実施の形態3)
図7(a),図7(b),図8(a),図8(b)は実施の形態3を示す。
図7(a),図7(b)は、樹脂充填前の電池樹脂封止金型の水平断面図と正面断面図である。
【0053】
電池の樹脂封止成形品を作るための電池樹脂封止金型では、挿入部品としての基板62の後ろ側に電池63が配置されるため、電池63が配置された状態で基板62の周囲に樹脂を封止する必要がある。
【0054】
金型103は、下型103aと上型103bによってキャビティ104を形成している。金型103は、基板62を保持する位置に対応して下型103aにスリーブピン66a,66bを設け、基板62を保持する位置に対応して上型103bにスリーブピン66c,66dが設けられている。各スリーブピン66a〜66dの内側にはセンターピン67a,67b,67c,67dが配してある。スリーブピン66a〜66dの天面は成形品外形面よりも金型のキャビティ中心側に突き出してはいるが、基板62に当接しない位置である。センターピン67a,67b,67c,67dの天面は成形品外形面と同じ高さである。スリーブピン66a,66bの内径部には樹脂を材質が樹脂の下側保持材64a,64bがインサートされている。スリーブピン66c,66dの内径部には材質が樹脂の上側保持材65a,65bがインサートされている。下側保持材64a,64bの先端の一部分には凹部105を有している。上側保持材65a,65bの先端は平面形状である。基板62は、下側保持材64a,64bの凹部105に合わせて挿入固定される。センターピン67a〜67dは冷媒により冷却されている。
【0055】
かかる構成によれば、樹脂を充填する前の状態において、スリーブピン66a,66bの内径部に下側保持材64a,64bが機械により自動挿入され、下側保持材64a,64bの凹部105に基板62の外形を合わせて挿入固定されるため、金型103に対して基板62の位置精度を左右方向と前後方向で確保することができる。さらに、上側保持材65a,65bで挟み込むことにより基板62の上下方向の位置精度も確保することができる。
【0056】
また、下側保持材64a,64bと上側保持材65a,65bには、絶縁性の樹脂を材質に用いており、スリーブピン66a〜66dは基板62に当接しないので、電気的なショートが発生することはない。
【0057】
図8は、本発明の実施の形態3における樹脂充填後の電池樹脂封止金型の断面図である。金型103が閉じられて、キャビティ104に封止樹脂40が充填されていく過程で、スリーブピン66a〜66dが成形品外形面まで後退し、樹脂は充填中であるため、後退してできた空間には封止樹脂40が追加充填される。
【0058】
これらの構成により、成形品の外形面に凹形状が残らない所定の外形形状を満足し、基板が所定の位置に位置決めされ、基板周囲と基板と電池の間が樹脂で被覆された電池樹脂封止成形品を得ることができる。
【0059】
また、センターピン67a〜67dが水で冷却されているため、下側保持材64a,64bと上側保持材65a,65bも冷却され寸法収縮している。樹脂充填後の膨張のため、下側保持材64a,64bと上側保持材65a,65bは封止樹脂との境界面がしまりばめとなる。
【0060】
下側保持材64a,64bと上側保持材65a,65bの外側面に微小な凹凸を持たせておけば、封止樹脂との境界面はより強固となり、境界面に湿気や異物が入らないので、より高品質な電池樹脂封止成形品を得ることができる。
【0061】
(実施の形態4)
図9(a),図9(b),図10(a),図10(b)は実施の形態4を示す。
上記の各実施の形態では、挿入部品を下側保持材14a,14bと上側保持体15a,15b、または下側保持材20a〜20dと上側保持体21a〜21d、または下側保持材64a,64bと上側保持体65a,65bで挟持して、キャビティにおける挿入部品の位置決めを行っていたが、下側保持材と上側保持体とで挿入部品を挟持するのではなく、この実施の形態4では挿入部品にセットした保持材を金型側に取り付けるだけで、キャビティにおける挿入部品の位置決めを行っている。
【0062】
図9(a)は、本発明の実施の形態4における樹脂充填前の電池樹脂封止金型の水平断面図である。図9(b)は樹脂充填前の電池樹脂封止金型のキャビティの正面断面図である。図9(a)(b)において、図7と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0063】
図9において、電池の樹脂封止成形品では、基板62の後ろ側に電池63が配置されるため、電池63が配置された状態で基板62の周囲に樹脂を封止する必要がある。
金型106は、基板62を保持する位置にスリーブピン66a,66bを有し、内側にはセンターピン67a,67bが配してある。実施の形態3で見られたスリーブピン66c,66dとセンターピン67c,67dは設けられていない。
【0064】
スリーブピン66a,66bの天面は成形品外形面よりも金型106のキャビティ中心側に突き出してはいるが、基板62に当接しない位置である。センターピン67a,67bの天面は成形品外形面と同じ高さである。スリーブピン66a,66bの内径部に、材質が樹脂の保持材68a,68bがインサートされている。
【0065】
保持材68は中央部に凹部107を有している。基板62は、端面に切り欠き部62aを有しており、切り欠き部62aに保持材68a,68bの凹部107を嵌め込むことができる。センターピン67a,67bは冷媒により冷却されている。
【0066】
かかる構成によれば、樹脂を充填する前の状態において、基板62の切り欠き部62aに保持材68a,68bの凹部107を嵌め込む。そして金型106へ挿入する際に、基板62がセットされた保持材68a,68bを、スリーブピン66a,66bの内径部に挿入固定する。また、電池63は保持材68a,68bと当接しているため、基板62は金型106に対しての位置精度を左右方向と前後方向、上下方向で確保することができる。
【0067】
また、保持材68a,68bは絶縁性の樹脂を材質に用いており、スリーブピン66a,66bは基板62に当接しないので、電気的なショートが発生することはない。
図10(a)は、実施の形態4における樹脂充填後の電池樹脂封止金型水平断面図である。図10(b)は、実施の形態4における樹脂封止成形品の縦断面図である。
【0068】
図10(a)において、金型106が閉じられて、基板62と電池63と金型106との間に封止樹脂40が充填されていく過程で、スリーブピン66a,66bは成形品外形面まで後退し、樹脂は充填中であるため、後退してできた空間には封止樹脂40が追加充填される。
【0069】
この構成により、成形品の外形面に凹形状が残らない所定の外形形状を満足し、基板が所定の位置に位置決めされ、基板周囲と基板と電池の間が樹脂で被覆された電池樹脂封止成形品を得ることができる。
【0070】
また、センターピン67a,67bが冷媒により冷却されているため、保持材68a,68bも冷却され寸法収縮している。樹脂充填後の膨張のため、保持材68a,68bは封止樹脂40との境界面がしまりばめとなる。
【0071】
保持材68a,68bの外側面に微小な凹凸を持たせておけば、封止樹脂との境界面はより強固となり、境界面に湿気や異物が入らないので、より高品質な電池樹脂封止成形品を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、電子基板、電極、リード線、電池、コネクタ部品等の各種の電子部品などの封止成形の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
5 金型
5a 下型
5b 上型
11 電子部品
11b 孔
12a〜12d,30a〜30d,32a〜32d スリーブピン
13a〜13d,31a〜31d,33a〜33d センターピン
14a,14b,20a〜20d 下側保持材
14o 下側保持材の凸部
15a,15b,21a〜21d 上側保持材
16,22 ゲート
17a,17b 充填末端
18 流動距離
19 流動距離18の1/2の範囲
23,27 充填末端
24 流動距離
25 流動距離24の1/2の範囲
28 流動距離
29 流動距離28の1/2の範囲
34 下側保持材20a,20b,20c,20dの凹部
40 封止樹脂
41 樹脂封止成形品
50 キャビティ
51 隙間
62 基板
62a 切り欠き部
63 電池
64a,64b 下側保持材
65a,65b 上側保持材
66a,66b スリーブピン
66c,66d スリーブピン
67a,67b,67c,67d センターピン
103,106 金型
103a 下型
103b 上型
104 キャビティ
105 下側保持材64a,64bの凹部
107 保持材68a,68bの凹部
A 成形品外形面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂封止する挿入部品を保持材で支持して金型のキャビティに配置した状態で、前記保持材に冷却したセンターピンを当接させて冷却するとともに、前記キャビティに封止樹脂の注入を開始する
樹脂封止成形品の製造方法。
【請求項2】
樹脂封止する挿入部品を保持材で挟持する
請求項1記載の樹脂封止成形品の製造方法。
【請求項3】
前記キャビティに対して出退自在のスリーブピンによって前記保持材を支持する
請求項2記載の樹脂封止成形品の製造方法。
【請求項4】
前記挿入部品がセットされた前記保持材を前記スリーブピンによって支持する
請求項1記載の樹脂封止成形品の製造方法。
【請求項5】
前記封止樹脂の注入にともなって前記スリーブピンを後退させる
請求項3または請求項4記載の樹脂封止成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−236404(P2012−236404A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31193(P2012−31193)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】