説明

樹脂組成物およびその硬化物

【課題】本発明は、種々の基板への接着性、耐熱性、および難燃性に優れ、その硬化物において柔軟性と高弾性率を兼ね備えた、フレキシブルプリント配線板用材料に有用な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】a)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂、b)エポキシ樹脂、およびc)無機フィラーを含有する樹脂組成物であって、該フェノール性水酸基有ポリアミド樹脂、が下記式(2)
【化1】


(式中xは平均置換基数で1〜4の正数をそれぞれ表す。Arは2価の芳香族基を表す。)
で表される構造をポリアミド部位の繰り返し単位に対し0.5モル%以上5モル%未満の割合で含有するポリアミド樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、および接着性に優れる硬化物を与え、かつフィルム状に形成した場合、十分な柔軟性と高弾性率を両立させることができる、フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、および無機フィラーを含有する樹脂組成物、およびこれらを用いたフレキシブルプリント配線板用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、最も一般的に使用されてきたエポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂の硬化剤としては酸無水物やアミン系化合物が知られているが電気・電子部品分野では耐熱性などの信頼性の面からフェノールノボラックが使用されることが多い。また、硬化物に難燃性を賦与する目的で難燃剤が使用され、難燃剤としてはテトラブロモビスフェノールAおよびそのエポキシ化物、或いはテトラブロモビスフェノールAにビスフェノールA型エポキシ樹脂を反応させた化合物などの臭素を含有する化合物が一般的に知られている。
しかしながら、前記したような臭素を含有する化合物は、難燃性には優れているものの廃棄、焼却時に環境汚染の原因となる物質を発生させる可能性がある点が指摘されている。また難燃性助剤として使用されるアンチモン化合物も同様にその毒性が懸念されている。近年の環境保護意識の高まりからエポキシ樹脂組成物においてもハロゲンフリー、アンチモンフリーの要望が高まっている。また、フェノールノボラックを硬化剤として使用したエポキシ樹脂の硬化物は信頼性には優れているものの、その硬化物は剛直で柔軟性に欠ける。近年の電気・電子部品の形態としては、従来の大型パッケージやガラス繊維を基材とした剛直な基板を用いた板状のものだけではなく、ポリイミドフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、または柔軟性を持つシート状樹脂基板成型物が開発されており、これらはいずれも金属箔または金属回路を積層した構造としてフレキシブルプリント配線板に利用されている。これらフレキシブルプリント配線板は柔軟性とともに、部品や他の基板との接続および部品の実装等に適した、部分的あるいは全体的に高弾性率も要求される。また、電気・電子部品の信頼性という面からは樹脂組成物の純度と硬化物の耐熱性が要求されている。
一方、従来のエポキシ樹脂の脆弱性を改良したエポキシ樹脂組成物として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびフェノール性水酸基を有する芳香族ポリアミド樹脂(特許文献1)の3者を含有するエポキシ樹脂組成物(特許文献2)が開示され、耐熱性と強靱性を有するものであることが記載されている。また、特許文献3には、エポキシ樹脂とフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が難燃性に優れ、また、フレキシブルプリント配線板用材料として有用である旨が記載されている。
しかしながら、これら文献に開示されている樹脂組成物は柔軟であるが、弾性率が低いため、部品や他の基板との接続および部品の実装に困難で、接続不良または実装不良の原因となる。また、これらフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂は、縮合反応を亜リン酸化合物の存在下に行うため、リン系イオンの残留がある。この残留リン系イオンは、樹脂を水洗することにより除去可能だが、ポリアミド樹脂の分子量が高くなるにつれ、その粘度上昇のために十分に水洗することが困難で、樹脂を電気・電子部品用として使用する場合に電気特性低下の原因となる場合がある。
【0003】
【特許文献1】特許2969585号公報
【特許文献2】特開2000−313787号公報
【特許文献3】WO2004/048436
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、その硬化物において、柔軟性と高弾性率を両立し、かつ電気特性、殊にイオン性不純物が少なく、難燃性に優れた、樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂中の不純物イオン濃度を低減し、無機フィラーを配合することで、エポキシ樹脂組成物としたものの硬化物が、柔軟性と高弾性率を両立し、しかも硬化物は柔軟性を示し、かつ難燃性が発現し電気特性も低下しないことを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0006】
すなわち本発明は
(1)a)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂、b)エポキシ樹脂、およびc)平均粒子径10μm以下の無機フィラーを含有する樹脂組成物であって、該フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂、が下記式(2)
【化1】

(式中xは平均置換基数で1〜4の正数をそれぞれ表す。Arは2価の芳香族基を表す。)
で表される構造をポリアミド部位の繰り返し単位に対し0.5モル%以上5モル%未満、の割合で含有するポリアミド樹脂であることを特徴とする樹脂組成物
(2)a)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂が下記式(1)
【化2】

(式(1)中mおよびnは平均値で、0.005≦n/(m+n)<0.05を示し、また、m+nは5〜200の正数を表し、x及びArはは式(2)におけるのと同じ意味を表す。)で表される構造を有することを特徴とする上記(1)記載の樹脂組成物
(3)c)無機フィラーが平均粒子径1〜100μmの炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の樹脂組成物
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物をシート状に加工したフィルム
(5)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物または(4)に記載のフィルムを硬化させた、引っ張り弾性率が25℃で3000〜7000MPaであることを特徴とする硬化物
(6)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物、(4)に記載のフィルムまたは(5)に記載の硬化物の層を有するフレキシブルプリント配線板用接着シート
(7)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物、(4)に記載のフィルムまたは(5)に記載の硬化物の層を有するフレキシブルプリント配線板用補強板
(8)上記(1)乃至(3)に記載の樹脂組成物、(4)に記載のフィルムまたは(5)に記載の硬化物の層を有するフレキシブルプリント配線板用カバーレイ
(9)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物、(4)に記載のフィルムまたは(5)に記載の硬化物の層の片面または両面に、金属箔層の片面または片面金属張樹脂積層板の樹脂面が接するように接着していることを特徴とする、片面または両面金属張樹脂積層板
(10)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物、(4)に記載のフィルムまたは(5)に記載の硬化物の層を使用したことを特徴とするフレキシブルプリント配線板
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物およびその硬化物は、フィルム状に加工した場合でも十分な柔軟性を有し、かつ高純度であるため電気特性に優れる。また、該フィルムの硬化物は柔軟性および電気特性に加えて、高弾性率、難燃性、耐熱性、接着性に優れているため、フレキシブル印刷配線基板の製造に広く用いることが可能であり、電気基板等、電気材料分野で極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物中a)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂は、下記式(2)
【化3】

(式中xは平均置換基数で1〜4の正数をそれぞれ表す。Arは2価の芳香族基を表す。)で表される構造をポリアミド部位の繰り返し単位に対し0.5モル%以上5モル%未満であるが、0.5モル%以上3モル%以下の割合が好ましい。式(2)の構造が5モル%以上であると樹脂中に残留するイオン性不純物の量が多くなり、電気特性に影響を与える。また、−Ar−基として下記式(3)
【0009】
【化4】

【0010】
(式(3)中Rは水素原子又はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数0〜6の置換基、Rは直接結合又はO、N、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数0〜6で構成される結合を表し、a、b、cは平均置換基数であってa、bはそれぞれ0〜4、cは0〜6の正数を表す。)で表される芳香族残基のうち一種以上を含有するのが更に好ましく、中でも下記式(3’)で表される芳香族残基が好ましい。
【0011】
【化5】

【0012】
(式(3’)中、中R、Rおよびbは式(3)におけるのと同じ意味を表す。)
式(3)および(3’)において、好ましいRとしては、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の鎖状アルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全て同一であるものが好ましい。また、好ましいRとしては、直接結合、−O−、−SO−、−CO−、−(CH1〜6−、−C(CH−、−C(CF−等が挙げられる。なお、芳香環が3,4’−または4,4’−結合でカルボン酸由来のフラグメントと結合するような構造を選択するのが好ましい。
【0013】
前記フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を得るには、例えば特許2969585号公報等や特許1957919号公報等に記載されている方法が応用できる。すなわち芳香族ジアミン原料と、フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸原料、場合によってはこれに加えてフェノール性水酸基を含有しない芳香族ジカルボン酸原料(以下両者をあわせて単に芳香族ジカルボン酸原料という)とを縮合させて得られる。
【0014】
前記フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂のうち、本発明において特に好ましい構造としては、下記式(1)
【化6】

(式(1)中mおよびnは平均値で、0.005≦n/(m+n)<≦0.05を示し、また、m+nは5〜200の正数を表す。xは及びArは式(2)におけるのと同じ意味を表す。)
で表される構造が有することが特に好ましい。
【0015】
また、このフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂はエラストマーで変性しても良い。例えば、芳香族ジアミン原料を芳香族ジカルボン酸原料に対し過剰に仕込んで得られる両末端アミノ基のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドと両末端カルボン酸のブタジエン重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体とを反応させエラストマー変性することもできるし、芳香族ジカルボン酸原料を芳香族ジアミン原料に対し過剰に仕込んで得られる両末端カルボン酸のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドと両末端アミンのブタジエン重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体とを反応させエラストマー変性することもできる。
【0016】
芳香族ジアミン原料と、芳香族ジカルボン酸原料との縮合反応、得られた樹脂のエラストマー変性反応は、ピリジン誘導体の存在下、リン系縮合剤を用い反応させることができ、その他有機溶媒を用いることができ、その際塩化リチウムや塩化カルシウム等の無機塩を添加すると、より分子量が増大する。リン系縮合剤として亜リン酸エステルが好ましい。この製造方法によれば、官能基であるフェノール性水酸基を保護することなしに、更にフェノール性水酸基と他の反応基、例えばカルボキシル基やアミノ基との反応を起こすことなしに、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂を容易に製造できる。また、縮合に際して高温を必要としない、すなわち約150℃以下で縮合可能という利点も有するため、ゴム成分中の二重結合も保護でき、エラストマー変性ポリアミド樹脂も容易に製造できる。
【0017】
以下、本発明で使用されるフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂の合成方法についてより詳しく説明する。合成するために使用する芳香族ジアミン原料としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等のジアミノジフェニルチオエーテル誘導体;4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキサイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン誘導体;ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル等のベンジジン誘導体;p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−キシリレンジアミン等のキシリレンジアミン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン等ジアミノジフェニルメタン誘導体等が挙げられ、フェニレンジアミン誘導体、ジアミノジフェニルメタン誘導体またはジアミノジフェニルエーテル誘導体が好ましく、ジアミノジフェニルメタン誘導体(式(3’)におけるRが−CH−の構造を有する化合物)またはジアミノジフェニルエーテル誘導体(式(3’)におけるRが−O−の構造を有する化合物)が更にましく、得られるポリマーの溶剤溶解性、難燃性の面から3,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
【0018】
本発明で使用する前記フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸としては、芳香族環が2つのカルボキシル基と1つ以上の水酸基を有する構造であれば特に制限はなく、例えば5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸等のジカルボン酸を挙げることができる。これらフェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸のうち、得られるポリマーの溶剤溶解性、純度、および樹脂組成物としたときの電気特性、金属箔およびポリイミドへの接着性等の面から5−ヒドロキシイソフタル酸が好ましい。フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸原料中で0.5モル%以上5モル%未満となる割合で使用する。この仕込み比が、フェノール性水酸基の含有割合を決定し、下記好ましい構造である式(1)におけるn/(n+m)を決定する。
【0019】
また芳香族ジカルボン酸原料のうちフェノール性水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−オキシ二安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−、メチレン二安息香酸、4,4’−メチレン二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、3,3’−カルボニル二安息香酸、4,4’−カルボニル二安息香酸、4,4’−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられイソフタル酸が好ましい。
【0020】
フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂にエラストマーを導入する場合の、両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーの具体例としては、両末端カルボン酸ポリブタジエン(宇部興産:Hycar CTB)または両末端カルボン酸ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(宇部興産:Hycar CTBN)または両末端ジアミンブタジエン−アクリロニトリル共重合体(宇部興産:Hycar ATBN)が好ましい。その使用量は、想定されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントに対して、0〜200重量%、好ましくは100重量%以下であるが、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントの末端アミノ基またはカルボキシル基と両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーのモル比が1:1を越えないように使用する必要がある。エラストマー変性は、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントを合成後、反応液中に両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーを投入することによって行う。
【0021】
上記亜リン酸エステルとしては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリ−o−トリル、亜リン酸ジ−o−トリル、亜リン酸トリ−m−トリル、亜リン酸トリ−p−トリル、亜リン酸ジ−p−トリル、亜リン酸ジ−p−クロロフェニル、亜リン酸トリ−p−クロロフェニル、亜リン酸ジ−p−クロロフェニル等が挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0022】
また、亜リン酸エステルと共に使用するピリジン誘導体としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,4−ルチジンなどを例示することが出来る。
【0023】
本発明に使用されるフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂の製造において使用される縮合剤は、上記亜リン酸エステルとピリジン誘導体であるがピリジン誘導体は有機溶媒に添加して用いられるのが一般的である。該有機溶媒としては亜リン酸エステルと実質的に反応せず、かつ上記芳香族ジアミン原料と上記芳香族ジカルボン酸原料とを良好に溶解させる性質を有するほか、反応生成物であるフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂に対する良溶媒であることが望ましい。この様な有機溶媒としては、N−メチルピロリドンやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒の他、トルエン、メチルエチルケトン、またはこれらとアミド系溶媒との混合溶媒が挙げられ、中でもN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。通常、ピリジン誘導体と溶媒の混合物中で、ピリジン誘導体が5〜30重量%を占める量で添加した混合物が使用される。
【0024】
また、重合度の大きいフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を得るには、上記亜リン酸エステルとピリジン誘導体との他に、塩化リチウム、塩化カルシウムなどの無機塩類を添加することが好ましい。無機塩類の使用量は、亜リン酸エステル100重量部に対して、0.5〜5重量部である。
【0025】
以下、フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂の製造方法をより具体的に説明する。まず、ピリジン誘導体を含む有機溶媒からなる混合溶媒中に亜リン酸エステルを添加し、これに芳香族ジカルボン酸原料と、該芳香族ジカルボン酸成分1モルに対して0.5〜2モルの芳香族ジアミン原料を添加し、次いで窒素などの不活性雰囲気下で加熱撹拌する。反応終了後、反応混合物を水、メタノール、あるいはヘキサンなどの貧溶媒に添加して重合体を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類などを除去することにより、本発明で使用するフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
【0026】
フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂にエラストマーを導入する場合においては、前記のようにして得たフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントを含む反応混合物からフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を単離しないで、これに有機溶媒で希釈した両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーを添加し、引き続き不活性雰囲気下で加熱撹拌する。反応終了後、反応混合物を水、メタノール、あるいはヘキサンなどの貧溶媒に添加重合体を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類などを除去することにより、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントとエラストマーセグメントを有するエラストマー変性フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
【0027】
上記製造方法において縮合剤である亜リン酸エステルの添加量は、通常、全アミノ基に対して等モル以上であるが、30倍モル以上は効率的ではない。また、亜リン酸トリエステルを用いた場合、副生する亜リン酸ジエステルも縮合剤であるため、通常の80モル%程度でもよい。ピリジン誘導体の量は全アミノ基に対して等モル以上であることが必要であるが、実際には反応溶媒としての役割を兼ねて大過剰使用されることが多い。上記ピリジン誘導体と有機溶媒とからなる混合物の使用量は、理論上得られるフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂濃度が、5〜30重量部となるような範囲が好ましい。反応温度は、通常60〜180℃が好ましい。反応時間は反応温度により大きく影響されるが、いかなる場合にも最高の重合度を表す最高粘度が得られるまで撹拌することが好ましく、通常数分から20時間である。上記好ましい反応条件下で、5−ヒドロキシイソフタル酸およびイソフタル酸と3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを等モル使用すると、2〜100程度という最も好ましい平均重合度を有するフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
【0028】
上記、好ましい平均重合度を有するフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂の固有粘度値(30℃における0.5g/dlのN,N−ジメチルアセトアミド溶液で測定)は0.1〜4.0dl/gの範囲にある。一般に好ましい平均重合度を有するか否かは、固有粘度を参照することにより判断する。固有粘度が0.1dl/gより小さいと、成膜性や芳香族ポリアミド樹脂としての性質出現が不十分であるため、好ましくない。逆に固有粘度が4.0dl/gより大きいと、重合度が高すぎ溶剤溶解性が悪くなり、かつかつ成形加工性が悪くなるといった問題が発生する。
【0029】
フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂の重合度を調節する簡便な方法としては、芳香族ジアミンまたは芳香族ジカルボン酸のどちらか一方を過剰に使用する方法を挙げることが出来る。
【0030】
本発明の樹脂組成物におけるb)エポキシ樹脂としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環のような芳香族環を有し、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであるならば特に限定はされない。具体的にはノボラック型エポキシ樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の樹脂組成物におけるc)無機フィラーの具体例としてはシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミナ、タルク、ガラス短繊維等が挙げられるが、得られる樹脂硬化物の弾性率および機械強度の点から平均粒子径は10μm以下であるが、0.1〜5μmが好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。無機フィラーとしては、樹脂組成物の用途に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限なく使用できるが、炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムが好ましい。このような無機フィラーとしては、宇部マテリアルズ株式会社製 超高純度炭酸カルシウム(CS) 3N−A〜C、4N−A〜C、5N−A〜Cが挙げられる。無機フィラーの配合量は樹脂組成物中において1〜60重量%を占める量が好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。無機フィラーの量がこの範囲を超えると弾性率が低下する恐れがある。無機フィラーは、たとえば樹脂成分が溶剤に溶解した樹脂溶液に所定量の無機フィラーを添加、混合することができる。溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。溶剤の使用量は、得られる樹脂組成物溶液中の樹脂(エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂及び必要により使用する他の硬化剤の合計)および無機フィラーの両者の合計濃度が通常10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%となる範囲である。
【0032】
本発明の樹脂組成物においてa)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂、b)エポキシ樹脂、およびc)無機フィラーの他にエポキシ樹脂の硬化剤を配合しても良い。配合し得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、トリフェニルメタンおよびこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらを配合する場合、樹脂組成物中のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂がエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂及び他の硬化剤の合計重量中に占める割合としては通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上である。
【0033】
本発明の樹脂組成物において配合する硬化剤の使用量は、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂を含む硬化剤中の全活性水素当量が、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2であることが好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7活性水素当量に満たない場合、あるいは1.2活性水素当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の活性水素当量は反応時に仕込んだ芳香族ジアミン原料と芳香族ジカルボン酸原料の使用量及びフェノール性水酸基の含有割合から算出することが出来る。
【0034】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤の具体例としては例えば2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0035】
更に本発明の樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば上記各成分を、押出機、ニーダ、ロール等を用いて無機フィラーを均一に混合し本発明の樹脂組成物を得て、例えば、溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更に80〜200℃で2〜10時間に加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。本発明の硬化物はポリイミドのように前駆体に300℃以上の高温をかけなくても得ることができ、工業的に有利である。また、このようにして得られた硬化物はその引っ張り弾性率が25℃で3000〜7000MPaと高いものになる。このような高い弾性率を示すため、高い位置精度が要求される接続部品の補強版、例えばフレキシブルプリント配線板のソケット部の補強版として好適に使用できる。
【0037】
本発明の樹脂組成物をシート状に加工したフィルムおよびその硬化物は、前記a)〜c)成分と溶剤を含有する本発明の樹脂組成物(ワニス)を下記のように加工して得られる。用いられる溶剤としては、例えば前記で例示した溶剤等が挙げられる。この場合溶剤は、ワニス中の固形分濃度(溶剤を除く成分の濃度)が通常20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%となる範囲で使用する。
【0038】
本発明の樹脂組成物をシート状に加工したフィルムは、上記のエポキシ樹脂組成物をそれ自体公知のグラビアコート法、スクリーン印刷、メタルマスク法、スピンコート法などの各種塗工方法により平面状支持体上に乾燥後の厚さが所定の厚さ、例えば5〜500μmになるように塗布後乾燥して得られるが、どの塗工法を用いるかは基材の種類、形状、大きさ、塗膜の膜厚により適宜選択される。基材としては、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールや本発明の硬化物等の各種高分子および/またはその共重合体から作られるフィルム、或いは銅箔等の金属箔であり、ポリイミド又は金属箔が好ましい。更に加熱することによりシート状の硬化物を得ることが出来る。本発明のフィルムの好ましい用途としてはフレキシブルプリント配線板用接着シート、フレキシブルプリント配線板用補強板、フレキシブルプリント配線板用カバーレイ、片面または両面金属張樹脂積層板の樹脂層(以下、これらをあわせてフレキシブルプリント配線板用材料という)が挙げられ、本発明の樹脂組成物はこれらを構成するフレキシブルプリント配線板用の接着剤または樹脂層として機能する。こういった用途には平面状支持体が剥離フィルムとしての機能を有するものが好ましい。
【0039】
また本発明のワニスを、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明の樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
【実施例】
【0040】
次に本発明を更に実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
合成例1
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、5−ヒドロキシイソフタル酸1.8g(0.010モル)、イソフタル酸81.3g(0.490モル)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル102g(0.509モル)、塩化リチウム3.4g、N−メチル−2−ピロリドン344g、ピリジン115.7gを加え撹拌溶解させた後亜リン酸トリフェニル251g(0.809モル)を加えて90℃で8時間反応させ、下記式(4)
【0042】
【化7】

【0043】
(式(4)中のn/(m+n)=0.020(仕込みモル比)である。)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂の反応液を得た。この反応液を室温に冷却した後、メタノール500gに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール500gで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を乾燥させて樹脂粉末を得た。得量は160gで収率96%であった。この樹脂粉末0.100gをN,N−ジメチルアセトアミド20.0mlに溶解させ、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した対数粘度は、0.50dl/gであった。また、樹脂のエポキシ基に対する活性水素当量は計算値で3300g/eqである(水酸基当量は17000g/eq)。
また、上記ェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂の反応液100gを90℃に保持したまま、イオン交換水30gを加え、60℃以下に冷却し樹脂を析出させた。上相液部分を除去し、次いでN,N−ジメチルホルムアミド40gを加え60℃保持で30分攪拌し、均一溶解させた後さらにイオン交換水30gを加え、樹脂の析出と溶解操作を5回繰り返し得られた樹脂溶液から、0.02MPaの減圧下にて水分を除去し樹脂濃度20重量%の樹脂組成物75gを得た。この樹脂組成物50gをメタノール50gに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール50gで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を乾燥させた樹脂粉末4gとイオン交換水40gを121℃、20時間で処理し、抽出水をイオンクロマトグラムにて分析した結果、残留P03−濃度が5ppm、P03−濃度が1ppm、Cl濃度が2ppmであった。
【0044】
実施例1
合成例1で得られたフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂380gと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)620gとを混合し樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液100gに対しエポキシ樹脂としてNC−3000(日本化薬製、エポキシ当量265から285g/eq)を3.6g、その他の硬化剤としてカヤハードGPH−65(日本化薬製、活性水素当量200から205g/eq)を1.0g、硬化促進剤として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)を0.16g混合し、樹脂組成物溶液(A)を得た。さらに、上記樹脂溶液100gに対し超高純度炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、超高純度炭酸カルシウム(CS)3N−A 平均粒子径0.5μm以下)を70g、加え混合し、無機フィラー配合樹脂溶液(B)を得た。得られた樹脂組成物溶液(A)500gと、無機フィラー配合樹脂溶液(B)20gを撹拌混合し、本発明の樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0045】
実施例2
実施例1と同様にして得られた樹脂組成物溶液(A)250gと、無機フィラー配合樹脂溶液(B)20gを撹拌混合し、本発明の樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0046】
実施例3
実施例1で得られたワニスをPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、130℃で7分間乾燥しPETフィルムを除去することにより、本発明のシート状フィルムを得た。
【0047】
実施例4
実施例2で得られたワニスをPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、130℃で7分間乾燥しPETフィルムを除去することにより、本発明のシート状フィルムを得た。
【0048】
実施例5
実施例3で得られたシート状フィルムを20cm角に切り出し、テフロン(登録商標)板ではさみ、熱板プレス機を用い170℃、5MPaで60分間加熱処理し、本発明のシート状フィルム硬化物を得た。本フィルム硬化物はV−0相当の難燃性を示し、DMA測定によるガラス転移温度(Tg)は220℃であった。また、テンシロン試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて室温(25℃)で測定した引っ張り弾性率は3200MPaであり、伸度は20%であった。
【0049】
実施例6
実施例4で得られたシート状フィルムを20cm角に切り出し、実施例5と同様にし、本発明のシート状フィルム硬化物を得た。本フィルム硬化物はV−0相当の難燃性を示し、Tgは205℃であった。また、引っ張り弾性率は5700MPaであり、伸度は13%であった。
【0050】
実施例7
実施例3で得られたシート状フィルムの片面に厚さ25μmのポリイミド(ユーピレックス25SGA 宇部興産株式会社製)と、反対面に厚さ18μmの圧延銅箔(日鉱マテリアルズ製、BHN箔)の粗化処理面とが接触する様はさみ、熱板プレス機を用い170℃、5MPaで60分間加熱圧着して本発明の片面銅張樹脂積層板を得た。得られた片面銅張樹脂積層板をテンシロン試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて、JIS C6481に準拠してポリイミド−接着樹脂層−銅箔の剥離強度を測定した結果、10.2N/cmであった。
【0051】
比較例1
実施例1の樹脂組成物溶液(A)を用いて実施例3および5と同様な操作を行いシート状フィルムおよびその硬化物を得た。得られた硬化物はV−0相当の難燃性を示し、Tgは220℃であった。また、引っ張り弾性率は2300MPaであり、伸度は70%であった。
【0052】
比較例2
比較例1と同様な操作でシート状フィルムを得た後、実施例7と同様にして片面銅張樹脂積層板を得た。得られた片面銅張樹脂積層板のポリイミド−接着樹脂層−銅箔の剥離強度は、11.8N/cmであった。
【0053】
このように本発明の樹脂組成物は、比較用の樹脂組成物に比べ、基板への接着性、耐熱性、および難燃性を損ねることなく、得られる硬化物が柔軟性と高弾性率を兼ね備えていることから、フレキシブルプリント配線板用材料に極めて有用であるが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂、b)エポキシ樹脂、およびc)平均粒子径10μm以下の無機フィラーを含有する樹脂組成物であって、該フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂、が下記式(2)
【化1】

(式中xは平均置換基数で1〜4の正数をそれぞれ表す。Arは2価の芳香族基を表す。)
で表される構造をポリアミド部位の繰り返し単位に対し0.5モル%以上5モル%未満の割合で含有するポリアミド樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
a)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂が下記式(1)
【化2】

(式(1)中mおよびnは平均値で、0.005≦n/(m+n)<0.05を示し、また、m+nは5〜200の正数を表し、x及びArは式(2)におけるのと同じ意味を表す。)で表される構造を有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
c)無機フィラーが炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物をシート状に加工したフィルム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物または請求項4に記載のフィルムを硬化させた、引っ張り弾性率が25℃で3000〜7000MPaであることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物、請求項4に記載のフィルムまたは請求項5に記載の硬化物の層を有するフレキシブルプリント配線板用接着シート。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物、請求項4に記載のフィルムまたは請求項5に記載の硬化物の層を有するフレキシブルプリント配線板用補強板。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物、請求項4に記載のフィルムまたは請求項5に記載の硬化物の層を有するフレキシブルプリント配線板用カバーレイ。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物、請求項4に記載のフィルムまたは請求項5に記載の硬化物の層の片面または両面に、金属箔層の片面または片面金属張樹脂積層板の樹脂面が接するように接着していることを特徴とする、片面または両面金属張樹脂積層板。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物、請求項4に記載のフィルムまたは請求項5に記載の硬化物の層を使用したことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2007−204598(P2007−204598A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24924(P2006−24924)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】