説明

欠陥修正装置

【課題】レーザ光を用いて、対象物の所定箇所をさらに正確にかつ能率よく加工し、修正を行う
【解決手段】基板を載置するステージと、基板を加工する加工部となる局所排気領域と、ステージに向けてガスを噴射することにより該ステージから浮上するためのガス供給部と、ステージに向けて噴射したガス及び局所排気領域から該ステージ側に供給されたガスを排気する排気部とを備えた局所排気装置を有する。
局所排気装置は、局所排気領域に繋がる流路を、薄膜形成用の原料ガスを供給する原料供給部と、エッチングにより局所排気領域内に発生したダストを排出する局所排気部とに切り換えて連通させる切換手段を備える。そして、基板に薄膜を形成する場合には、切換手段により局所排気領域に繋がる流路が原料供給部に連通され、基板をエッチングする場合には、切換手段により局所排気領域に繋がる流路が局所排気部に連通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に複数の配線パターンが形成された配線基板の欠陥を修正する欠陥修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置として、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや液晶ディスプレイなどの所謂フラットパネルディスプレイ(FPD;Flat Panel Display)が広く知られ、普及している。これらのディスプレイ装置は、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)やキャパシタなどの素子、及びこれらの素子に電気的に連結された複数の配線(例えば信号配線や電位供給配線)などの様々な導電部材を含む配線基板によって構成される。
【0003】
このディスプレイ装置を構成する配線基板の量産においては、例えば異物の存在によって、本来互いに離れて設けられる配線や素子が電気的に連結された短絡や、本来連続的に設けられる配線や素子が内部で互いに分離された断線などの、所謂欠陥が生じることがある。このような量産時の欠陥の発生は、ディスプレイ装置が大型化するにつれ、その駆動用の配線基板となるTFT基板に生じる欠陥箇所が増加して歩留まりが低下するため、欠陥箇所を修正する欠陥修正工程が必須となっている。
【0004】
有機ELディスプレイ用TFT基板の場合、液晶ディスプレイ用TFT基板と比較して、信号配線や走査配線の他に、複数の電位供給配線が存在するため、画素内の配線密度が増加し、画素構造がいっそう複雑になっている。このため、欠陥種類、欠陥数が多くなり、それに伴い欠陥修正パターンも著しく増加する。また、一つの欠陥の修正を行うために、複数箇所にレーザ照射する必要があると、レーザ加工パラメータの設定に手間がかかり作業性が悪化する。
【0005】
このような短絡や断線などの欠陥に対する修正手法としては、例えばレーザ光照射による短絡箇所を切断する手法(ザッピング)のほか、レーザCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法による断線箇所の結線などが挙げられる。欠陥修正を行う装置の一例として、所用の加工形状に整合したビーム形状で均等なエネルギーのレーザ光を対象物に照射して所定箇所を正確に、かつ能率よく加工し、修正を行うレーザ加工装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−186100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この技術分野では、レーザ光を用いて、対象物の所定箇所をさらに正確にかつ能率よく加工し、修正を行う欠陥修正装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の欠陥修正装置は、加工対象物となる基板を載置するステージと、その基板を加工する加工部となる局所排気領域と、ステージに向けてガスを噴射することによって該ステージから浮上するためのガス供給部と、ステージに向けて噴射したガス及び局所排気領域からステージ側に供給されたガスを排気する排気部とを備えた局所排気装置と、薄膜形成のためのCVD用レーザ光源と、薄膜除去のためのエッチング用レーザ光源と、CVD用レーザ光源,エッチング用レーザ光源からのレーザ光をそれぞれ局所排気装置の局所排気領域を介して上記基板に導く光学系とを有する。
ここで、局所排気装置は、局所排気領域に繋がる流路を、薄膜形成用の原料ガスを供給する原料供給部と、エッチングにより局所排気領域内に発生したダストを排出する局所排気部とに切り換えて連通させる切換手段を備える。
そして、CVD用レーザ光源からのレーザ光により基板に薄膜を形成する場合には、切換手段により局所排気領域に繋がる流路が原料供給部に連通され、エッチング用レーザ光源からのレーザ光により基板をエッチングする場合には、切換手段により局所排気領域に繋がる流路が局所排気部に連通される。
【0009】
上記構成の欠陥修正装置によれば、CVD用とエッチング用の2つの種類のレーザを切り替えて適宜選択することにより、局所排気領域に繋がる流路が、切換手段により、薄膜形成用の原料ガスを供給する原料供給部と、エッチングにより局所排気領域内に発生したダストを排出する局所排気部とに切り換えられて連通する。
これにより、局所排気領域に繋がる1つの流路を通じて、薄膜形成用の原料ガスを供給し、またエッチングにより局所排気領域内に発生したダストを排出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の欠陥修正装置によれば、レーザ光を用いて、対象物の所定箇所をさらに正確にかつ能率よく加工し、修正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施の形態に係る配線基板の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る欠陥修正装置の一例の構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るレーザCVDに用いられる局所排気装置の断面図である。
【図5】図4に示した局所排気装置の下面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る配線部(単位画素)の説明に供する図であり、Aは繰り返し単位画素の概略構成、Bはその等価回路を示す。
【図7】本発明の一実施の形態に係る配線基板の欠陥の説明に供する図であり、Aは配線基板上の欠陥例、Bは断面図を示す。
【図8】本発明の一実施の形態に係るザッピングによる欠陥修正例を示す図である。
【図9】A〜Dは、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工範囲の変形例(ザッピング加工用)を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る加工パラメータの選択肢表示の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る配線基板の欠陥の説明に供する図であり、Aは配線基板内部の欠陥例、Bは断面図を示す。
【図12】本発明の一実施の形態に係るレーザCVDによる欠陥修正例を示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係るレーザCVD結線軌道の例を示す図である。
【図14】A〜Cは、本発明の一実施の形態に係る直線形状のレーザCVD結線軌道変形例を示す図である。
【図15】A〜Cは、本発明の一実施の形態に係るコの字形状のレーザCVD結線軌道変形例(1)を示す図である。
【図16】A,Bは、本発明の一実施の形態に係るコの字形状のレーザCVD結線軌道変形例(2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の例について、図1〜図16を参照しながら説明する。
本実施形態では、目的とする配線基板がディスプレイ装置を構成する場合について、つまり配線基板を構成する多数の配線部をディスプレイ装置の画素に対応して2次元マトリクス状に多数形成する場合について、説明を行う。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造工程のフローチャートを示す。このフローチャートは、配線部(配線パターン)形成工程から、欠陥検査工程を経て、欠陥修正工程までの流れを示している。
本実施形態においては、まず、基板3(図2参照)上に、走査配線と、層間絶縁膜と、信号配線及び電位供給配線とを、目的とする配線部2の主要構成として積層形成することによって、配線部形成工程を実施する(ステップS1,S2,S3)。
【0014】
続いて、図2の模式図に示すように、最終的な配線基板1を構成する共通の基板3に対し、多数の配線部2を光学的に観察して欠陥配線部2aを検出する光学検査工程を行う(ステップS4)。このとき欠陥配線部2aの基板3における欠陥位置情報が欠陥修正装置のコンピュータ等の制御部に送られる。この光学検査工程においては、欠陥配線部2aに対する撮像によって、欠陥配線部2aの存在のみならず、欠陥(パターン欠陥、異物など)及びその位置をはじめとする所謂パターン欠陥分類情報のほか、欠陥のサイズや種類(材料な状態など)等の特徴をも特定する。
【0015】
欠陥修正工程では、欠陥修正装置が上記欠陥位置情報を読み込むことにより、欠陥修正装置のステージが欠陥位置に移動し、観察系で欠陥を確認し、レーザ照射により欠陥を修正することができる。
【0016】
後述するように、予めデータベースに蓄積された、過去に実施された欠陥修正手法を含む欠陥修正手法(リペアレシピ)を、光学検査工程で検出された欠陥と、目的とする所定の配線部を構成する複数の領域との位置関係に対応して選択的に読み出して(ステップS5)、選択された適切な欠陥修正手法によって、欠陥配線部2aを修正する欠陥修正工程を行い(ステップS6)、所望の配線基板1を製造する。
【0017】
このように、予め登録されている過去の欠陥修正手法(欠陥修正手順)のデータファイルを呼び出せることで修正工程を大幅に効率化できる。さらに、欠陥位置、サイズ、種類を検出して、適切な修正データが選択されることで欠陥の修正工程の自動化が可能となる。
【0018】
ただし、画素構造が複雑などの理由により最適な欠陥修正手法が自動で選択されない場合、作業員が目視で欠陥を確認し、当該欠陥に対し適切な修正処理を施す。本発明は、手動による欠陥修正における加工位置、加工範囲及び加工パラメータの教示を適切かつ簡潔に行えるようにするものである。
【0019】
図3に、配線基板に対する欠陥修正工程を実行する欠陥修正装置の一例の構成図を示す。
本実施形態に係る欠陥修正装置200は、レーザ照射により短絡箇所を切断するほか、レーザCVD法などの配線の結線処理を行うことが可能である。欠陥修正装置200は、対物レンズ208と基板3との間にレーザCVD法を実施できる加工装置を備えており、それについては後に詳述する。
【0020】
図3において、欠陥修正装置200は、予め欠陥検査装置300によって行われた欠陥検査(光学検査)の結果として、基板3上の欠陥の位置情報を、欠陥修正装置200内にある全体制御部(以下、「制御部」という。)202により受け取ることができる。この制御部202はパーソナルコンピュータ等のコンピュータ(演算処理装置)であり、画像解析及び修正方法生成部201とともに修正方法生成手段を構成する。
【0021】
制御部202は、ステージ制御部207にコマンドを送り、基板3が搭載されたXYステージ205を動かし、欠陥検査装置300で検出された欠陥箇所が対物レンズ208の真下になるように調整する。次にフォーカスステージ210を動かして対物レンズ208と基板3の間隔を調整し、撮像装置217で光学レンズ214gを透過した光の合焦点画像が撮像できるように制御する。なお、ここではハーフミラー215a,215b、光学レンズ214a、及びランプ209による落射照明により、適切な明るさを持つ画像が得られるようにしている。撮像された欠陥箇所が含まれる画像(欠陥画像)は、欠陥画像メモリ218に一旦保存される。
【0022】
次に、制御部202はステージ制御部207にコマンドを送ってXYステージ205を動かし、欠陥箇所の隣接画素もしくは当該欠陥箇所から繰り返しとなるパターン数個分、即ち全く同じ画素パターンとなる位置まで移動した位置が対物レンズ208の真下になるようにして、欠陥の無い画像(参照画像)を撮像し、参照画像メモリ219に保存する。ここでいう画素は、図1に示した配線部2に相当するものである。
【0023】
欠陥抽出部(欠陥検出部)220は、欠陥画像メモリ218に保存された欠陥画像と、参照画像メモリ219に保存された参照画像とを位置合わせした後に差画像を生成することで、欠陥部位の画像を抽出し、抽出した欠陥部位の画像を詳細位置情報抽出部221及び特徴抽出部222に出力する。
【0024】
詳細位置情報抽出部221は、抽出された欠陥の基板3上における正確な位置をXYステージ205の現在位置及び欠陥画像から算出し、その情報を修正方法生成部226に送る。
【0025】
特徴抽出部222は欠陥抽出部220で抽出された欠陥の形態及び種類等を特定するための情報である欠陥の色、大きさ、コントラスト、形状等の各種特徴情報を数値化して修正方法生成部226へ出力する。
【0026】
修正方法生成部226は、詳細位置情報抽出部221及び特徴抽出部222から得られる詳細位置情報、特徴情報から、修正機構部204の各ユニットをどのように動作させるかを規定するための適切な欠陥修正情報(リペアレシピ情報)を、ハードディスク等の記憶手段に記憶されている修正手法データベース225から読み出す。
具体的には、例えば詳細位置情報抽出部221からの欠陥の詳細位置情報に基づいて、欠陥箇所が後述する複数のエリア(区域)に区分けされた配線基板のどの位置に存在するかを判定し、欠陥位置に適した欠陥修正処理が実施されるような制御を実行する。
【0027】
制御部202は修正方法生成部226によって生成された欠陥修正情報に基づく修正手法(テンプレート)を、欠陥画像と重ね合わせてディスプレイ(表示装置)227に表示する。なお、制御部202は、状況に応じて位置や特徴等の欠陥情報に基づき欠陥修正情報のリペアオブジェクトの一部を補正することができる。また、一つの欠陥修正情報には複数の修正手法が含まれることもある。
【0028】
作業員はディスプレイ227に表示された修正手法を見て問題があると判断すれば、例えばキーボードなどの入力装置(入力部)228を操作して別の修正手法を選択することもできるし、修正手法(欠陥修正情報)の一部又は全部を変更することもできる。変更した修正手法は、制御部202及び修正方法生成部226を介して、修正手法データベース225に保存することもできる。更に修正方法生成部226にて修正手法データベース225から複数の欠陥修正手法が読み出された場合、その複数の欠陥修正手法をディスプレイ227に表示して作業員に選択を促し、作業員が入力装置228を操作して選択した欠陥修正手法に従い、欠陥修正を行う。入力装置228としては、キーボードのほか、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスを利用できる。
【0029】
制御部202は、入力装置228から入力された操作信号を受信すると、操作信号に含まれる欠陥修正手法の選択や変更の履歴を、修正手法データベース225に記録する。修正手法データベース225に蓄積された修正手法は、次回以降の欠陥修正に利用される。
【0030】
最終的に欠陥修正手法が決定されれば、その欠陥修正手法に従って制御部202は、修正機構制御部216にコマンドを送り、修正機構部204内の各ユニットを動作させ、欠陥の修正を行う。修正機構部204は、レーザ光源213から照射されたレーザビームを光学レンズ214b,214cにて補正した後に、可変スリット212を通過させることにより、照射サイズ、角度を変更できるようにしてある。
【0031】
可変スリット212は、例えば、XY−θスリットと呼ばれるもので、長方形のX、Y方向の開口長と、回転角θが変更できるスリットであり、修正機構制御部216からの駆動信号により駆動できるものとする。
【0032】
可変スリット212によって照射形状を整形されたレーザビームは、光学レンズ214dを通り、ガルバノミラー211a,211bで反射される。ガルバノミラー211a,211bは、2次元に角度可変なミラーであり、修正機構制御部216の制御に従って駆動することで、XYステージ205を動かさずに、対物レンズ208の視野範囲内でレーザビームの光軸、すなわち照射位置を動かすことができる。
【0033】
このような可変スリット212、ガルバノミラー211a,211bを備える欠陥修正装置200は、欠陥に対し十分な位置精度を持ってレーザビームを照射できるため、精度よくパターン欠陥の修正が可能となる。
【0034】
そして、ガルバノミラー211a,211bで反射されたレーザビームは、各種光学レンズ214e,214fを透過し、ハーフミラー215aで反射後に、対物レンズ208を通過し、加工対象である基板3表面で対物レンズ208に応じた倍率で縮小されたスリットの投影が結像されることにより、この形状で基板3にレーザビームが照射され加工がなされる。
【0035】
一方、基板3上の欠陥部を対物レンズ208視野内に移動する手段としては、XYステージ205を利用している。位置決めされた基板3に対し、ガルバノミラー211a,211bは、ミラー角度を変えることによって基板3上のビーム照射位置を対物レンズ208の視野範囲内でXY方向に動かすことが可能である。また、対物レンズ208の視野画像に与えられた座標とガルバノミラー211a,211bは、の座標間は座標変換式で関係付けられており、座標間位置キャリブレーションを行うことによって視野画像内の指定位置を正確な位置で加工することが可能となっている。
【0036】
上記欠陥検査装置300は、欠陥を探索する方法として光学式検査機を使えるため、電気式検査による導通状態が正常であるパターン欠陥に対しての修正が可能となる。
【0037】
本実施形態の欠陥修正装置は、過去の修正データ(欠陥修正手法)を呼び出せることで修正工程を大幅に効率化できる。さらに、欠陥位置に見合った適切な欠陥修正手法が選択されることで、欠陥の修正工程の自動化が可能となる。例えば、修正方法生成部226によって生成された欠陥修正手法の中の最も優先度の高い修正方法を常に自動で選択、実行することにより、作業員なしに完全自動で欠陥修正することも可能である。
【0038】
ここで、本実施形態の欠陥修正装置200の要部について説明する。図4に、レーザCVD法及びレーザエッチングを実施可能な構成例を示す。この例では、装置の要部、すなわちレーザ光源213から出射されたレーザ光が対物レンズ208を透過して局所排気装置234を経て基板3に照射される構成を示している(その他の全体構成は図4参照)。
【0039】
本実施形態における欠陥修正加工装置は、少なくとも図4に示すように、XYステージ205上の基板3に対向する局所排気装置(局所成膜/エッチングヘッド)234を有する。本実施形態では、レーザ光源213を用いてレーザパワーの調節等を行っているが、2つの光源装置を用意して使途に応じて使い分けるようにしてもよい。
【0040】
第1の光源装置は、例えば薄膜形成のためのCVD用レーザ光源を有し、このレーザ光源としては、例えば、波長355nm、パルス幅25ナノ秒(ns)、周波数24kHz、出力2Wのものを用いることができる。また、第2の光源装置は、例えば薄膜除去のためのエッチング(ザッピング)用レーザ光源を有し、このレーザ光源としては、例えば、波長390nm、パルス幅3ピコ秒(ps)、周波数1kHz、出力1mWのものを用いることができる。この第2の光源装置については、パルス幅が10ピコ秒以下の短パルスレーザを搭載することが好ましく、これによって従来の(パルス幅がナノ秒のレーザを搭載した)装置におけるような、加工時の熱拡散が原因で生ずる溶融した状態の金属が新たな層間リークを発生させることを回避できる。XYステージ205は、例えば基板3上の欠陥部を対物レンズ208の視野内に移動し位置決めを行うことが可能である。
【0041】
レーザ光源213からのレーザ光は、各種光学素子を介して、レーザCVD法やレーザエッチング用のレーザ光Lとして基板3上に集光照射される。すなわち、対物レンズ208に応じた倍率で縮小されたスリットの投影が基板3上に結像されることにより、この結像形状に対応して加工がなされる。
【0042】
局所排気装置234には、中央に前述したレーザ光Lの透過孔247及び透明窓248と、XYステージ205に載置される加工対象物となる基板3の主たる加工部となる局所排気領域(局所成膜/エッチング領域)251が設けられ、この局所排気領域251に繋がる第1流路257が、原料供給部255及び局所排気部256のいずれか一方に切換手段258を介して連通するように設けられる。
ここで、原料供給部255及び局所排気部256は、それぞれ、XYステージ205に載置されるTFT基板などの加工対象物となる基板3上における薄膜形成及び薄膜除去の補助手段となるものであり、本実施形態においては、それぞれ後述するように、レーザCVD法とレーザエッチングの補助手段となる。
なお、局所排気領域251は、局所排気装置234の下面に臨んで、図5に示すように、排気流路262及び263の端部を構成する吸引溝が形成する略同心環状の内側に、略円筒状空間として透明窓248と基板233との間に形成される。
【0043】
本実施形態における局所排気装置234においては、更に、例えば圧縮した窒素ガス(N)をXYステージ205側に向けて噴射することによって局所排気装置234を静圧浮上させる圧縮ガス供給部252と、XYステージ205側に向けて噴射された圧縮ガス及び局所排気領域251からのXYステージ205側に供給されたうちの余剰ガス(成膜ガス、パージガス等)を、図6の局所排気装置234の底面図に示されるようなリング状の排気流路(吸引溝)262及び263から排気する排気部253及び254とが設けられる。
また、図示しないが、必要に応じて、局所排気領域251にはパージガス供給部につながるパージガス流路が連結され、このパージガスの導入における圧力、速度、位置、角度等を選定することにより、加工によって生じた異物などが透明窓248の表面に付着することを抑制することなどが可能となる。
【0044】
局所排気装置234は、XYステージ205上の加工対象物である基板3に対して相対的に変位可能とされ、圧縮ガス供給部252や排気部253及び254のほか、原料供給部255、局所排気部256、パージガス供給手段などによっても浮上剛性の向上を図ることが可能となる。ここで、浮上剛性とは、局所排気装置234と加工対象物(例えば基板3)の間の吸着力であり、この浮上剛性が十分でない場合には、局所排気装置234の加工対象物に対する高さ(ギャップ)の安定性が不十分となるとか、局所排気装置234の機械的もしくは力学的な安定性が不十分になるなどの問題が生じることから、浮上剛性を十分に確保しておくことが望ましい。
本実施形態においては、圧縮ガス供給部252からの圧縮ガスが、供給路及び通気孔を構成するリング状の圧縮ガス供給路261及びその開口部に配置された多孔質通気膜260により、局所排気装置234に対向するXYステージ205に向けて均一に出射され、圧縮ガスの圧力や流量と、各排気部による吸引量のバランスを選定することによって、局所排気装置234の浮上量が決定される。すなわち、局所排気装置234は静圧浮上パッド構成とされる。
【0045】
なお、原料供給部及び局所排気部は、それぞれ、加工対象物となる基板上における薄膜形成及び薄膜除去の補助手段となるものであり、本実施形態においては、それぞれ、レーザCVD法とレーザエッチングの補助手段となる。
また、本実施形態においては、局所排気装置234にヒーター259が併設されており、このヒーターによって、局所排気領域251を中心とするガスの温度、すなわち薄膜パターン形成装置1のチャンバー内の温度を一定に保つことが可能とされる。
【0046】
ここで、本実施形態における欠陥修正装置200の概略動作を説明する。
まず、基板3に対してレーザCVD法により薄膜を形成する場合には、圧縮ガス供給部(供給源)252から圧縮ガスを圧縮ガス供給路261に供給し、多孔質通気膜260を通して基板233側に噴射し、局所排気装置234を基板3から所定間隔だけ浮上させる。
この状態で、切換手段258を切り換えて、原料供給部(供給源)255から成膜用の原料ガスを第1流路257及び局所排気領域251を通して、基板3の成膜すべき局所に供給する。同時にレーザ光源装置からのレーザ光Lを透過孔247、透明窓248及び局所排気領域251を通して基板3の成膜すべき局所に照射し、成膜用の原料ガスを熱分解して基板3の局所にCVD膜を成膜する。
原料供給部255から供給される成膜用の原料ガス、及び必要に応じて供給されるパージガス(キャリアガス)は、プロセス用途としての使用後に、より内側の吸引溝による排気流路263から排気部254により吸引される。また、多孔質通気膜260より放出された圧縮ガスは、局所排気装置234の内部に向かっていくが、より外側の吸引溝による排気流路262から排気部253により排気される。この構成により、外気の遮断と、プロセスを独立化することが可能となる。
【0047】
一方、基板3の所定の一部を短パルス幅レーザ光の照射によりエッチング除去する場合は、圧縮ガス供給部252からの圧縮ガスを多孔質通気膜260を通して基板3側に噴射し、局所排気装置234を基板3から所定間隔だけ浮上させ、例えばこの状態で切換手段258を切り換えることによって第1流路257を局所排気部256に連通させると共に、レーザ光Lを基板3のエッチングすべき領域に照射し、形成されている薄膜パターンの一部を熱的に除去する。
このとき、エッチングにより発生したダスト(削りカス)は第1流路257を通して局所排気部256によって排出される。また、パージガスを供給した場合には、エッチングによって生じた異物が透明窓248の内面に付着されるのが抑制される。
【0048】
このようにして、本実施形態における欠陥修正装置においては、CVD用とエッチング用の2つの種類のレーザを切り替えて適宜選択することにより、基板3に対する加工が可能とされる。
すなわち、例えばエッチング用のレーザを選択した場合には、切換手段258を切り換えて第1流路257を局所排気部256に通じるように排気ポートに切り換えることによって、エッチング時に発生するダスト(削りカス)を排出する構成とすることができる。これにより、局所排気領域251内におけるレーザCVD法による薄膜形成やレーザエッチングによる薄膜除去などの加工が可能となる。
【0049】
なお、この静圧浮上パッド構成によれば、加工対象物に相当して配置した基板3をスライドさせたところ、基板の反りやうねりに追従して一定の浮上量を確保できたことから、このような局所排気装置234の構成により、基板と局所排気装置の間隔を常に一定に保つことができ、かつ成膜プロセス条件を外気の遮断と独立して制御できるため高品質な薄膜を安定に形成することが可能となることが確認できた。
また、各排気部及び各排気流路による排気ユニット内に、圧力制御用のバルブを設置することによって、レーザCVDプロセスの圧力制御と、レーザ照射部のガス分圧及び流速の制御が可能となる。更に、前述したCVD法及びエッチングの各プロセスに最適な条件を外気遮断とは独立に制御可能とすることもできるし、排気部253及び254には、有毒ガスを除害する機能を付加した構成とすることもできる。
【0050】
次に、上記欠陥修正装置200を用いて、本発明による欠陥修正方法について説明する。
まず、図6Aを参照して、検査対象の配線基板1の配線部2(単位画素)の概略構成を説明する。
配線部2は、基板3上に走査配線(破線図示)4が設けられ、この走査配線4上に、層間絶縁膜5を介して、信号配線6,電位供給配線7,グラウンド電極8が、走査配線4とは直交する方向に主として延在して配置されている。
信号配線6は、グラウンド電極8に連結されたキャパシタ(容量素子)12に対し、第1のTFT素子のゲートを介して対向する構成とされ、更にキャパシタ12は、電位供給配線7がソースとなる第2のTFT素子10のゲートとして設けられている。電流供給配線7に対して第2のTFT素子10を介して対抗する配線は、発光部となる有機EL素子(図示せず)のアノード電極11に連結されている。
【0051】
この配線部2における動作は、走査配線4をa1、信号配線6をb1、電位供給配線7をb2、グラウンド電極8をb3、第1及び第2のTFT素子9及び10をTr1及びTr2、アノード電極11を有する発光部をEL、キャパシタ12をcとすると、図6Bに示す等価回路図に沿ってなされる。
すなわち、電位供給配線b2には常時電流が供給されており、走査配線a1に走査パルスが印加されかつ信号配線b1に所要の信号が供給されると、第1のTFT素子Tr1がオン状態になり、キャパシタcに所要の信号が書き込まれる。この書き込まれた信号に基づいて第2のTFT素子Tr2がオン状態になり、信号量に応じた電流が電位供給配線b2を通して発光部ELに供給され、発光部ELにおける発光表示がなされる。
【0052】
図7Aに、欠陥が生じた場合の配線基板の一例の構成を示す。また、図7Bは、その要部のy−y´線に沿う断面図である。なお、図7Bの断面図において、保護膜13の上層に形成される平坦化膜については、記載を省略してある。勿論、保護膜13が形成される前の状態において、本発明の欠陥修正方法を適用することは可能である。
【0053】
図7Aの配線基板1は、例えばガラス基板上において、画素に対応して設けられる配線パターン内に、欠陥14a(電気的リーク(短絡欠陥)が生じている。すなわち、平行した3本のメタル配線(電位供給配線7、グラウンド電極8、信号配線6)が膜残りにより、それぞれショートしている。欠陥14aは、グラウンド電極8と走査配線4が交差していない、深さ方向に複数の導電部材が重複することのない位置で、つまり同一平面上においてのみ生じている。
【0054】
このような欠陥を修正するためには、短絡部3箇所をザッピング加工により切断する必要がある。ここでザッピングを行う範囲は、図8に示すような細長い長方形枠22で囲まれる範囲(3箇所)となる。長方形の短手方向(幅)は基板回路のラインルールからほとんど同じ寸法にて対応し得る。つまりL/S(ラインアンドスペース)が3/3μmであれば、ザッピング範囲は同じ3μmの幅でほとんどの場合適応し得る。一方、長方形の長手方向(長さ)の寸法は、ショート欠陥の大きさによって変わるが、一般にクリーンルーム内ではゴミの排除を行っているため、数十μmに及ぶサイズのゴミはほとんど存在せず、2μm〜20μm程度の範囲でほとんど対応し得る。
【0055】
そこで、幾種類かのサイズの長方形枠(例えば、長さ5,10,20μmで幅3μm)よりなるザッピング範囲選択枝(長方形枠(修正候補)21,22,23)を用意しておき、作業者がザッピング範囲を選択可能にしておく。図8の例では、欠陥レビュー画面と同一の画面上に6種類のザッピング範囲選択肢が用意された修正手法選択肢表示画面20をダイアログ表示している。また横方向の配線に対する欠陥修正にも対応できるように、同様に長方形枠の向きを90度変えたザッピング範囲選択枝(長方形枠(修正候補)24,25,26)が用意されている。
【0056】
上記ザッピング範囲選択枝を、予め修正手法データベース225に登録、すなわち記憶手段に保存しておき、入力装置228からの入力信号の指示内容に基づいて修正手法データベース225から読み出す。そして、修正方法生成部226が欠陥の内容に応じて同じタイプの修正手法、例えばザッピング用の修正候補を複数抽出して修正手法選択肢表示画面20としてディスプレイに出力し、作業者がその中から修正候補を選定する。あるいは、作業者が欠陥を確認して、修正手法データベース225から直接修正手法を選定するようにしてもよい。
【0057】
本例では、作業者は、入力装置228のポインティングデバイス、例えばマウスを用いてドラッグ・アンド・ドロップ操作によって選択したサイズの加工形状(長方形枠)を欠陥レビュー画像上の欠陥修正部(欠陥14b)に持っていき(図8参照)、修正位置と修正内容の教示、すなわち欠陥修正を指示する。さらに、編集中(教示が未完了)の加工範囲は、マウスで教示しにくい微妙な位置調整をキーボードのカーソルキー等を利用して行うことが可能となっている。
【0058】
一方、予め準備したサイズ(長方形枠)をそのまま適用できない場合は、近いサイズの長方形枠を選択し、マウスのドラッグ・アンド・ドロップ操作にて加工位置近傍に移動させた後、マウス操作にて長方形枠の変形を行い、レーザ光を照射する位置及び加工エリア(加工範囲)を調整することが可能である。
【0059】
長方形枠の変形の種類には、図9A〜Dに示すように、横方向引き伸ばし、縦方向引き伸ばし、斜め方向変形、回転等がある。変形作業は、マウスカーソル(マウスポインタ)又はキーボードカーソルキー等を利用して行う。
【0060】
例えば、図9Aに示す横方向引き伸ばしの場合、例として長方形枠24の右端に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置28aから第2の位置28b(右方向)に移動させると、長方形枠24が左端の変形中心27を中心として(固定した状態で)右方向に引き伸ばされ、長方形枠24aに変形する。
【0061】
また、図9Bに示す縦方向引き伸ばしの場合、例として長方形枠24の下端に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置28aから第2の位置28b(下方向)に移動させると、長方形枠24が上端の変形中心27を中心として(固定した状態で)下方向に引き伸ばされ、長方形枠24bに変形する。
【0062】
また、図9Cに示す斜め方向変形の場合、例として長方形枠24の右下角に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置28aから第2の位置28b(右斜め下方向)に移動させると、長方形枠24が左上角の変形中心27を中心として(固定した状態で)右斜め下方向に引き伸ばされ、長方形枠24cに変形する。
【0063】
また、図9D示す回転の場合、例として長方形枠25の右端近傍に表示された回転ハンドル29にマウスカーソルを当て、マウスカーソルを第1の位置28aから第2の位置28bにドラッグしながら移動させると、長方形枠25が左端の変形中心27を中心としてマウスカーソル移動量に応じて回転する。
このようなGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を構築することにより、ザッピング加工を行いたい位置、範囲の教示を簡便に行うことが可能である。
【0064】
一方、修正加工時に用いるレーザパラメータ(周波数・照射エネルギー・パルスショット数等)の設定に関しては、加工対象となる膜材料によって決まってくる。例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素等よりなる絶縁膜5はエネルギーを吸収しにくいので、照射エネルギーが高めに設定される。保護膜13も同様である。一方、走査配線4やグラウンド電極8については、照射エネルギーは低めでパルスショット数も変更される。平坦化膜はその中間の設定値というように設定される。そこで、加工対象となる膜材料に応じた選択肢を予め用意しておき、これをマウスでクリックすることによって選択することで教示を行えるようにする。
【0065】
図10に、加工パラメータの選択肢表示の例を示す。図10において、加工パラメータ選択肢表示画面30に、それぞれメタル(1)(走査配線4)、絶縁膜、メタル(2)(グラウンド電極8)、保護膜、平坦化膜のアイコン31〜35で表された選択肢が用意されている。膜の種類に応じて、それぞれに予め設定(プリセット)された、加工レーザエネルギー、レーザ周波数、レーザショット数のデータが加工設定値に反映されている。作業者は、欠陥が存在する又は欠陥の一部がかかっている膜の種類に応じたアイコンをマウスを用いて選択するだけで、適切な加工パラメータによるレーザ照射が実行される。
【0066】
なお、各パラメータは通常その内容を表示しないが、図10のように加工パラメータ選択肢表示画面30内に表示して、作業者が必要に応じてキーボード等を使用して設定値を変更できるようにしてもよい。
【0067】
次に、レーザCVDを用いて行う欠陥修正例を説明する。
図11Aに、欠陥が生じた場合の配線基板の一例の構成を示す。また、図11Bは、その要部のy−y´線に沿う断面図である。なお、図11Bの断面図において、保護膜13の上層に形成される平坦化膜については、記載を省略してある。勿論、保護膜13が形成される前の状態において、本発明の欠陥修正方法を適用することは可能である。
【0068】
図11Aに示す例は、欠陥14bにおいて走査配線4とグラウンド電極8が異物によって短絡しているケースである。このような複数の導電部材が深さ方向に関して重複している、複数種類の配線の交差箇所やキャパシタ及びトランジスタの内部などに、層間リーク(深さ方向の短絡欠陥)として欠陥が生じている場合には、前述のエッチング処理(ザッピング)によって単純に修正を行うと、欠陥の除去と同時に周囲への熱拡散によって周囲の導電部材を構成する材料(金属など)が溶融し、除去を行った加工部断面で導電部材同士がつながって新たな層間リークを発生してしまう。
【0069】
したがって、図11A,Bに示す例の場合、欠陥の修正方法の一例としては、まず走査配線4とグラウンド電極8の重複部分の周辺のグラウンド電極8側(2箇所)をザッピング処理で切断することによって、走査配線4とグラウンド電極8の短絡部を切断してから、切断されたグラウンド電極8によって形成されるラインをレーザCVDを用いて結線すればよい。
【0070】
レーザCVDを用いて成膜結線を行う場合には、図12に示すように結線ライン(結線軌道)の開始点及び終端点に、電気的コンタクトを得るためのライトザッピング(表面を軽く削る)をザッピング加工を用いて行い、次にレーザCVDによってコンタクト間の結線を行う。
【0071】
この一連の加工作業を教示する場合にも図8の例と同様に、修正手法選択肢画面40を欠陥レビュー画面とともに表示し、作業者が、予めプリセットされたレーザCVD結線軌道(以下、修正候補と称す)41,42,43,44,45,46の中からマウスのドラッグ・アンド・ドロップ操作によって選択した加工形状(修正候補)を欠陥修正部(欠陥14b)に持っていき、重ねて表示させることで教示を行う。また、編集中(教示が未完了)の加工範囲、結線軌道は、マウスで教示しにくい微妙な位置調整をキーボードのカーソルキー等を利用して行うことが可能となっている。
【0072】
ここで、レーザCVD用の修正候補について、修正候補44を例に説明する。図13に、修正候補44の拡大図を示す。修正候補44は、レーザCVDの結線軌道44cとザッピングを表す長方形枠44d,44eから構成されている。レーザCVDの結線軌道44cには、その始点と終点にライトザッピングが行われる矩形44a及び44bが表示される。
【0073】
図12の例に示すレーザCVDの選択肢には、レーザCVDの結線軌道として直線状のもの(修正候補41)、コの字状のもの(修正候補42〜45)、ザッピングを含むもの(修正候補44,44)、ザッピングを含まないもの(修正候補42,43)を用意してあるが、もちろん任意の結線形状、例えばクランク型などの形状を選択肢に加えてもよい。また、ザッピングの箇所数を変えたものを用意してもよい。
【0074】
一方、予め準備した結線軌道形状又は結線軌道サイズ(幅など)をそのまま適用できない場合には、一旦プリセットされた修正候補を選択し、マウスのドラッグ・アンド・ドロップ操作にて加工位置近傍に移動させた後、マウス操作にて結線軌道の変形を行い、結線軌道を調整することが可能である。
【0075】
結線軌道の変形の種類には、図14A〜Cに示す直線形状結線軌道の変形例、図15A〜C、図16A,Bに示すコの字形状結線軌道の変形例がある。変形作業は、マウスカー
ソル(マウスポインタ)又はキーボードカーソルキー等を利用して行う。
【0076】
まず、直線形状のレーザCVD結線軌道の変形例について説明する。
例えば、図14Aに示す直線形状の結線軌道の縦方向変形の場合、例として修正候補41の結線軌道の下端に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置47aから第2の位置47b(下方向)に移動させると、結線軌道が上部(始点)を変形中心46として(固定した状態で)下方向に引き伸ばされ、修正候補41aのような形状に変形する。
【0077】
また、図14Bに示す直線形状の結線軌道の斜め方向変形の場合、例として修正候補41の結線軌道の右下角に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置47aから第2の位置47b(右斜め下方向)に移動させると、結線軌道が上部(始点)を変形中心46として(固定した状態で)全体として下方向に引き伸ばされ、修正候補41bな形状に変形する。この変形を実施すると、結線軌道の長さとともに幅が太くなる。
【0078】
また、図14Cに示す直線形状の結線軌道の回転の場合、例として修正候補41の右側近傍に表示された回転ハンドル48にマウスカーソルを当て、マウスカーソルをドラッグしながら第1の位置47aから第2の位置47bに移動させると、修正候補41の結線軌道が上部(始点)を回転中心46としてマウスカーソル移動量に応じて回転する。
【0079】
次に、コの字形状のレーザCVD結線軌道の変形例について、左側に開口を持つコの字形状の修正候補43を例に説明する。
図15Aに示すコの字形状の結線軌道の縦方向変形の場合、例として修正候補43の結線軌道の下辺に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置52aから第2の位置52b(下方向)に移動させると、結線軌道が上部(始点)を変形中心51として(固定した状態で)下方向に引き伸ばされ、修正候補43aのような形状に変形する。
【0080】
図15Bに示すコの字形状の結線軌道の横方向変形の場合、例として修正候補43の結線軌道の上辺と下辺をつなぐ辺に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置52aから第2の位置52b(右方向)に移動させる。そうすると、結線軌道の始点と終点の中間付近の変形中心51を中心として(固定した状態で)、結線軌道が右方向に引き伸ばされ、修正候補43bのような形状に変形する。
【0081】
図15Cに示すコの字形状の結線軌道の斜め方向変形の場合、例として修正候補43の結線軌道の右下角に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置52aから第2の位置52b(右斜め下方向)に移動させると、結線軌道が上部(始点)を変形中心51として(固定した状態で)斜め右下方向に引き伸ばされ、修正候補43cのような形状に変形する。
【0082】
さらに、図16A示すコの字形状の結線軌道の太り変形の場合、例として修正候補43の結線軌道の始点部分に当てたマウスカーソルをドラッグしながら第1の位置52aから第2の位置52b(僅かに下方向)に移動させる。そうすると、結線軌道の始点と終点の中間付近の変形中心51を中心として(固定した状態で)、結線軌道が太り、すなわち結線軌道のライン幅が大きくなり、修正候補43dのような形状に拡大変形する。
【0083】
また、図16Bに示すコの字形状の結線軌道の回転の場合、例として修正候補43の右側近傍に表示された回転ハンドル53にマウスカーソルを当て、マウスカーソルをドラッグしながら第1の位置52aから第2の位置52bに移動させると、修正候補43の結線軌道が上部(始点)の変形中心51を回転心としてマウスカーソル移動量に応じて回転する。
【0084】
上記図15A〜C、図16A,Bに示したレーザCVDの結線軌道変形のように、結線軌道がコの字形状のような線対称でない形状の場合、図16Aの太り変形以外の変形を行うときには、結線軌道のライン幅は、一定にして(太らせない)変形を行うようにすると、隣接する導電部材などへ及ぼす影響を最小限に抑えられ、欠陥修正の品質及び作業性が向上する。
【0085】
以上、基板平面上に作用する欠陥14aと深さ方向に作用する欠陥14bの2つの欠陥例を用いて、欠陥を手動で修正する際における修正部の加工位置、加工範囲及び加工範囲を教示する方法を説明した。このような方法を欠陥修正装置200に接続されたディスプレイ227上でGUIの機能として用いることによって、欠陥修正工程における加工位置、加工範囲及び加工パラメータの教示作業効率を著しく向上させることができる。それにより、従来、手動修正時に加工位置、加工範囲及びパラメータ設定にかかっていた作業時間を大幅に短縮し、作業の効率化を図ることが可能となる。
【0086】
配線基板又はディスプレイ装置の製造過程において、本発明の欠陥修正方法を導入した欠陥修正装置を用いることによって、加工時に必要な加工パラメータの設定作業を大幅に簡素化し、装置の稼動タクトを短縮することが可能となる。したがって、生産に必要な欠陥修正装置の台数を極力少なくできるとともに、作業員の人数も少なくすることができる。それにより、製造コストが大幅に削減され、設備投資の回収効果を向上させるとともに、作業員の作業工数を低減させることができる。
【0087】
なお、以上の説明で挙げた使用材料及びその量、処理時間及び寸法などの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法形状及び配置関係も概略的なものである。すなわち、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0088】
さらに、上述した実施形態では、フラットパネルディスプレイのガラス基板上に形成されたデザインパターンの欠陥修正を行なう場合について説明したが、修正対象はこの例に限定されるものではなく、例えば半導体ウェハ、フォトマスク、磁気ディスク等、修正対象基板上に所定パターンが形成されたものに適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1…配線基板、2…配線部(単位画素)、2a…欠陥配線部、3…基板、14a,14b…欠陥、20…修正手法選択肢表示画面、21〜26…(ザッピング用)修正候補、29…回転ハンドル、30…加工パラメータ選択肢表示画面、31〜35…アイコン、40…修正手法選択肢表示画面、41〜45…(レーザCVD用)修正候補、44c…結線軌道、48…回転ハンドル、200…欠陥修正装置、202…全体制御部、225…修正手法データベース、226…修正方法生成部、227…ディスプレイ、228…入力装置、300…欠陥検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物となる基板を載置するステージと、
前記基板を加工する加工部となる局所排気領域と、前記ステージに向けてガスを噴射することによって前記ステージから浮上するためのガス供給部と、前記ステージに向けて噴射したガス及び前記局所排気領域から前記ステージ側に供給されたガスを排気する排気部とを備えた局所排気装置と、
薄膜形成のためのCVD用レーザ光源と、
薄膜除去のためのエッチング用レーザ光源と、
前記CVD用レーザ光源,エッチング用レーザ光源からのレーザ光をそれぞれ前記局所排気装置の前記局所排気領域を介して前記基板に導く光学系とを有し、
前記局所排気装置は、前記局所排気領域に繋がる流路を、薄膜形成用の原料ガスを供給する原料供給部と、エッチングにより前記局所排気領域内に発生したダストを排出する局所排気部とに切り換えて連通させる切換手段を備え、
前記CVD用レーザ光源からのレーザ光により前記基板に薄膜を形成する場合には、前記切換手段により前記局所排気領域に繋がる前記流路が前記原料供給部に連通され、前記エッチング用レーザ光源からのレーザ光により前記基板をエッチングする場合には、前記切換手段により前記局所排気領域に繋がる前記流路が前記局所排気部に連通される
欠陥修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−168539(P2012−168539A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34404(P2012−34404)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2007−25999(P2007−25999)の分割
【原出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(598172398)株式会社ジャパンディスプレイウェスト (90)
【Fターム(参考)】