説明

欠陥検出方法および欠陥検出装置

【課題】被検査物の欠陥検出の感度を向上することができる欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】欠陥検出方法は、欠陥強調処理工程と欠陥検出工程を有する。欠陥強調処理工程は、撮像画像から平滑化画像を作成する工程ST20と、検査対象画素を順次選定する工程ST21と、検査対象画素に対応する平滑化画像の着目画素の周囲に複数配置された比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する工程ST22と、比較対象画素群の各比較対象画素と検査対象画素の各輝度値の差である輝度差データを求め、その値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める工程ST23と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする工程ST24とを備える。欠陥検出工程は、欠陥強調値を閾値と比較して抽出した欠陥候補画素で構成される欠陥候補領域の特徴量から欠陥を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物を撮像した画像を処理することで、被検査物の傷やシミ等によって前記撮像画像に低コントラストで表示される欠陥を、精度よくかつ自動的に検出する欠陥検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物の欠陥を検出する欠陥検出方法として、被検査物を撮像した画像を処理して欠陥検出を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、空間フィルタを用いて欠陥を検査する方法であり、空間フィルタの注目画素を基準として予め決定した所定位置に位置する画素群の濃度を抽出し、その抽出した画素群の濃度がある一定の範囲内に入っていれば、そこに欠陥が存在すると判断して平滑化処理を行わず、エッジを強調する微分処理の空間フィルタを適用し、それ以外であれば欠陥が存在しないとして、平滑化処理を適用、微分処理を適用しないことにより、ノイズ成分の乗った画像から欠陥を検出する方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−333223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、欠陥検出をある濃度値の範囲内で判断しているため、場所によって欠陥の濃度が異なる場合、例えば画像に照明ムラなどのシェーディングが乗っている場合には、適用することが困難である。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、シェーディングの影響を軽減できて被検査物の欠陥検出の感度を向上することができる欠陥検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の欠陥検出方法は、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程と、前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出工程とを有し、前記欠陥強調処理工程は、前記撮像画像に対して平滑化処理を行って平滑化画像を作成する平滑化画像作成工程と、前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程と、選定された検査対象画素に対応する平滑化画像の着目画素から所定距離離れた比較対象画素を前記着目画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定工程と、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程とを備え、前記欠陥検出工程は、前記検査対象画素での欠陥強調値を所定の閾値と比較して欠陥候補画素を抽出し、その欠陥候補画素によって構成される欠陥候補領域の特徴量から欠陥を判別することを特徴とする。
【0008】
なお、検査対象画素および比較対象画素は、例えば、被検査物を撮像したCCDカメラの撮像画素単位で設定すればよい。
本発明では、欠陥強調処理工程において、撮像画像で選定された検査対象画素に対応する着目画素を平滑化画像に設定し、前記検査対象画素の輝度値と、前記着目画素の周囲に複数配置された平滑化画像の比較対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、各輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を選択して前記検査対象画素の欠陥強調値としているので、検査対象画素を含み、かつ、比較対象画素は含まない欠陥、例えば面状のシミ欠陥を検出できる。
すなわち、検査対象画素部分に欠陥がなく、周囲の画素と輝度差が無い場合には、前記最小輝度差は非常に小さい値になる。また、検査対象画素に欠陥があっても、その欠陥がいずれかの比較対象画素部分まで広がっている場合には、その欠陥部分に含まれる検査対象画素および比較対象画素の輝度差は殆ど無いため、前記最小輝度差も非常に小さい値になる。
一方、検査対象画素に欠陥が存在し、かつ、周囲の比較対象画素には欠陥が無い場合、つまりシミ欠陥が比較対象画素で囲まれるエリア内に納まっている場合には、検査対象画素の輝度値は、いずれの比較対象画素の輝度値とも差があるため、最小輝度差も比較的大きな値になる。これにより、比較対象画素で囲まれるエリア内に納まる大きさのシミ欠陥が存在する場合に、最小輝度差は比較的大きな値となり、欠陥が強調されることになる。
【0009】
また、本発明では、前記複数の比較対象画素を、複数の比較対象画素群に分けているので、シミ欠陥のほかに線欠陥も検出できる。すなわち、複数の比較対象画素の少なくとも一つと、検出対象画素とに重なる線欠陥がある場合、その線欠陥上の各画素の輝度値の差は小さいため、前記最小輝度差も小さな値となり、欠陥を検出することができない。
一方、本発明のように、複数の比較対象画素を、複数の比較対象画素群に分け、各比較対象画素群毎に最小輝度差を算出している場合、各比較対象画素の位置が異なるため、一方の比較対象画素群の比較対象画素に線欠陥が重なってその線欠陥を検出できなくても、他の比較対象画素群の比較対象画素は前記線欠陥と重ならず、その線欠陥を検出できる。
このため、複数の比較対象画素群で算出された各最小輝度差の最大値を、検査対象画素の欠陥強調値とすれば、シェーディングの影響を受けることなく、シミ欠陥および線欠陥の両方の欠陥を強調できる。特に、線欠陥は、いずれかの比較対象画素群で検出できなくても、他の比較対象画素群で検出できるため、線欠陥の角度による検出感度のムラは生じず、検出感度を向上することができる。
また、本発明では、シミ欠陥および線欠陥の両方を同時に検出できるため、シミ欠陥検出フィルタと線欠陥検出フィルタとを別々に用意して検出する場合に比べて、欠陥検出時間も短縮できる。
【0010】
さらに、検査対象点を設定する画像として撮像画像を用いているので、例えば、平滑化処理等を行った画像において検査対象点を設定した場合に比べ、平滑化処理等により欠陥の成分を弱めることがない。
また、輝度比較画素は平滑化画像に設定しているので、ノイズ成分の影響を受けることなく欠陥成分を強調することが可能となる。
すなわち、比較対象画素も撮像画像に設定した場合、検査対象画素に欠陥が存在していても、その周囲の比較対象画素部分にノイズが存在し、検査対象画素と同程度の輝度値(濃度値)であると、検査対象画素と比較対象画素との輝度差が殆ど無くなり、欠陥部分の検査対象画素を選定しても、その欠陥を検出できない。
これに対し、本発明では、比較対象画素を平滑化画像に設定しているため、比較対象画素におけるノイズの影響を軽減でき、欠陥成分を確実に強調することができ、欠陥成分の検出漏れを防止できる。
【0011】
さらに、欠陥強調処理工程では、欠陥成分だけでなくノイズ成分についても同時に強調し欠陥候補となるが、欠陥検出工程において、欠陥候補の特徴量からノイズ成分と欠陥成分とを分離できるので、欠陥を特定して検出することができる。
なお、欠陥候補領域は、互いに隣接する欠陥候補画素をまとめて一つの欠陥候補領域と設定すればよい。
また、欠陥候補領域の特徴量としては、例えば、欠陥候補領域の面積が予め設定された閾値以上であれば欠陥成分と判定し、閾値未満であればノイズ成分と判定すればよい。さらに、面積以外に、欠陥候補領域の平均輝度、最大輝度等も考慮して判別してもよい。
このように、本発明においては、欠陥候補領域の面積等の特徴量によって欠陥成分であるか判別しているので、ノイズ成分を分離して欠陥成分だけを抽出することができる。
【0012】
本発明の欠陥検出方法において、前記比較対象画素群設定工程は、前記複数の比較対象画素として、4×n個(nは2以上の整数)の比較対象画素を選定し、これらの比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して各比較対象画素群を設定することが好ましい。
【0013】
なお、4×n個の比較対象画素の具体的な個数は、検査対象画素および比較対象画素間の距離に基づいて設定すればよく、通常は、8個、12個、16個のいずれかに設定すればよい。
また、検査対象画素および比較対象画素の距離は、検出対象となるシミ欠陥の大きさに基づいて設定すればよく、通常は、各画素間の距離を4〜40画素程度、例えば7画素にすればよい。
【0014】
さらに、比較対象画素は、検査対象画素の周囲に円周上にかつ等間隔に配置することが好ましい。すなわち、各比較対象画素および検査対象画素を結ぶ線分と、その比較対象画素に隣接する他の比較対象画素および検査対象画素を結ぶ線分とがなす角度が、各比較対象画素において同一であることが好ましい。
従って、例えば、8個の比較対象画素が設けられている場合には、検査対象画素を中心とする円周方向に45度間隔で配置すればよい。この場合、検査対象画素を中心とする円周方向に1つおきに選択した4つの検査対象画素つまり90度間隔で配置された4つの検査対象画素により第1比較対象画素群を構成し、これらの第1比較対象画素群に含まれない他の4つの検査対象画素により第2比較対象画素群を構成すればよい。
同様に、12個の比較対象画素が設けられている場合には、検査対象画素を中心とする円周方向に30度間隔で配置すればよい。この場合、検査対象画素を中心とする円周方向に2つおきに選択した4つの検査対象画素つまり90度間隔で配置された4つの検査対象画素により第1〜3の比較対象画素群をそれぞれ構成すればよい。
同様に、16個の比較対象画素が設けられている場合には、検査対象画素を中心とする円周方向に22.5度間隔で配置すればよい。この場合、検査対象画素を中心とする円周方向に3つおきに選択した4つの検査対象画素つまり90度間隔で配置された4つの検査対象画素により第1〜4の比較対象画素群をそれぞれ構成すればよい。
【0015】
検査対象画素を中心とする円周方向に90度間隔に配置された4つの比較対象画素により各比較対象画素群を構成しているので、最小限の数の比較対象画素でシミ欠陥の有無を検出できるとともに、ある比較対象画素群において検査対象画素を挟んで点対称位置に配置された2つの比較対象画素を通る線欠陥があり、その線欠陥を検出できない場合でも、他の比較対象画素群によって前記線欠陥を確実に検出することができる。
【0016】
本発明の欠陥検出方法において、前記比較対象画素群設定工程は、前記複数の比較対象画素として、検査対象画素を中心とする円周方向において45度間隔で配置された8個の比較対象画素を選定し、これらの8個の比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して第1比較対象画素群および第2比較対象画素群を設定してもよい。
例えば、検査対象画素を挟んで上下および左右に設けられた4つの比較対象画素によって第1比較対象画素群を構成し、検査対象画素を挟んで右斜め上、右斜め下、左斜め上、左斜め下に設けられた4つの比較対象画素によって第2比較対象画素群を構成すればよい。
4個の比較対象画素を備える2つの比較対象画素群を設定すれば、最小限の比較対象画素によってシミ欠陥および線欠陥を検出できる。このため、フィルタによる欠陥検出処理も短時間で行うことができる。
【0017】
本発明の欠陥検出方法において、前記最小輝度差算出工程は、欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも高くなる明欠陥を検出する場合には、前記検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求め、欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも低くなる暗欠陥を検出する場合には、前記比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求めることが好ましい。
【0018】
本発明においては、検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を引いて求めた各輝度差データの最小値を前記検査対象画素の明欠陥用の欠陥強調値とし、比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を引いて求めた各輝度差データの最小値を前記検査対象画素の暗欠陥用の欠陥強調値としているので、明欠陥および暗欠陥を精度良く検出できる。
【0019】
本発明の欠陥検出装置は、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、前記欠陥強調処理手段で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段とを有し、前記欠陥強調処理手段は、前記撮像画像に対して平滑化処理を行って平滑化画像を作成する平滑化画像作成手段と、前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、選定された検査対象画素に対応する平滑化画像の着目画素から所定距離離れた比較対象画素を前記着目画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定手段と、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段とを備え、前記欠陥検出手段は、前記検査対象画素での欠陥強調値を所定の閾値と比較して欠陥候補画素を抽出し、その欠陥候補画素によって構成される欠陥候補領域の特徴量から欠陥を判別することを特徴とする。
この欠陥検出装置においても、前記欠陥検出方法と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る欠陥検出装置の構成を示すブロック図である。
本実施形態の欠陥検出装置は、フレキシブル基板や、液晶パネル(TFTパネル)、半導体ウェハなどの被検査物1の欠陥を検出するものであり、被検査物表面の傷や汚れなどを検査する外観検査を行うことができる。被検査物1は、XYステージ2上に載置され、平面的に移動可能に構成されている。
欠陥検出装置は、顕微鏡4、CCDカメラ5、コンピュータ装置6、表示装置7を備えている。
【0021】
顕微鏡4は、被検査物1を拡大してCCDカメラ5で撮影するために設けられており、被検査物1の欠陥を検出するために十分な倍率を有するものが用いられている。
CCDカメラ5は、顕微鏡4を介して被検査物1を撮影する撮像手段である。
コンピュータ装置6は、CCDカメラ5を制御し、被検査物1を検出する画像処理手段である。表示装置7は、コンピュータ装置6に接続された液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0022】
コンピュータ装置6は、画像入力手段60と、欠陥強調処理手段61と、欠陥抽出手段62と、欠陥判別手段63とから構成されている。
【0023】
コンピュータ装置6の画像入力手段60には、CCDカメラ5で撮像された取込画像の画像データが入力される。その取込画像は図示しない記憶手段に記憶される。従って、画像入力手段60によってCCDカメラ5を用いて検査対象を撮像する画像取得工程(撮像工程)が実施される。
【0024】
欠陥強調処理手段61は、取得した画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程を実施するものであり、平滑化画像作成手段610と、検査対象画素選定手段611と、比較対象画素群設定手段612と、最小輝度差算出手段613と、欠陥強調値算出手段614とを備える。
【0025】
平滑化画像作成手段610は、撮像画像に対して平滑化処理を行って平滑化画像を作成する平滑化画像作成工程を実施するものである。
検査対象画素選定手段611は、撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程を実施するものである。
比較対象画素群設定手段612は、撮像画像において選定された検査対象画素に対応する平滑化画像の着目画素を設定し、平滑化画像において、前記着目画素から所定距離離れた比較対象画素を前記着目画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定工程を実施するものである。
最小輝度差算出手段613は、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程を実施するものである。
欠陥強調値算出手段614は、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程を実施するものである。
【0026】
なお、欠陥には、他の画素部分に対して輝度値が高い明欠陥と、輝度値が低い暗欠陥とがある。このため、本実施形態の欠陥強調値算出手段614は、明欠陥用の欠陥強調値と、暗欠陥用の欠陥強調値とをそれぞれ別々に算出するように構成されている。
【0027】
欠陥抽出手段62は、欠陥強調処理手段61で処理された結果を所定の閾値と比較して欠陥候補を抽出する。なお、閾値としては、明欠陥閾値と、暗欠陥閾値とが設定され、明欠陥強調結果を明欠陥閾値と比較することで明欠陥領域が抽出され、暗欠陥強調結果を暗欠陥閾値と比較することで暗欠陥領域が抽出される。
また、欠陥強調処理手段61で処理された画像に対し、メディアンフィルタなどを適用してノイズ除去処理を行ってから、欠陥抽出手段62による欠陥候補抽出処理を実行してもよい。
【0028】
欠陥判別手段63は、抽出した各欠陥領域の面積、平均輝度、最大輝度などに基づいて欠陥を判別し、さらにその欠陥のランクを評価し、今回の検査対象がどの欠陥ランクに該当するかを分類する欠陥判別処理を実行する。
【0029】
次に、本発明の実施の形態による欠陥検出装置の動作について説明する。
図2はこの実施の形態の欠陥検出装置の動作を説明するためのフローチャートである。図2に示す動作はコンピュータ装置6上で実行されるプログラムにより実現されている。
【0030】
まず、被検査物1がXYステージ2にセットされると、コンピュータ装置6の画像入力手段60は、被検査物1の画像をCCDカメラ5で撮影し、その撮影データの画像を取り込む画像取得工程(撮像工程)を行う(ST1)。このとき撮影データは、図示しないA/D変換器により、例えば、4096階調(12ビット)のデジタルデータとして、コンピュータ装置6に取り込まれる。
なお、被検査物1が液晶パネルなどの表示パネルの場合、表示パネル上に特定の画像パターンを表示させ、欠陥を検出しやすいようにしてもよい。例えば、暗欠陥を検出しやすいように全画面を白表示する全白画面パターン、明欠陥を検出しやすいように全画面を黒表示する全黒画面パターン、中間調の画面パターン等があり、検出したい欠陥種類に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
次に、欠陥強調処理手段61は、取得された画像に対して欠陥を強調する欠陥強調処理工程を行う(ST2)。この欠陥強調処理工程ST2は、低コントラストの欠陥はそのままでは検出が難しいために、画像の中の欠陥を強調する処理を行うものである。欠陥強調処理工程ST2は、図3に示す処理フローで実施される。
【0032】
欠陥強調処理手段61は、まず、平滑化画像作成手段610により、撮像画像に対して平滑化フィルタを適用し、平滑化画像を作成する(ST20)。
ここで、撮像画像に適用する平滑化フィルタとしては、局所平均フィルタやメディアンフィルタ等のノイズ成分をカットできるフィルタであればよい。また、適用する平滑化フィルタのサイズについても、例えば3×3画素サイズのものでもよいし、それ以上のサイズのものでもよい。
【0033】
次に、検査対象画素選定手段611により、撮像画像において、検査対象となる検査対象画素を選定する検査対象画素選定工程を実行する(ST21)。
本実施形態では、CCDカメラ5の各撮像画素単位で対象画素を選定するようにされている。
【0034】
次に、欠陥強調処理手段61は、比較対象画素群設定手段612により、比較対象画素群設定工程を実行する(ST22)。
すなわち、比較対象画素群設定手段612は、図4に示すように、平滑化画像において、着目画素Oを中心とする円周方向に8個の比較対象画素S1〜S8を設定し、さらに、これらの比較対象画素S1〜S8を2つの比較対象画素群に分けて設定している。
なお、前記着目画素Oは、検査対象画素選定工程ST21において選定された撮像画像の検査対象画素に対し、同じ座標位置にある平滑化画像の画素を選定して設定される。
【0035】
本実施形態では、各比較対象画素S1〜S8は、平滑化画像において、着目画素Oを中心とする円周方向に45度間隔で配置される。
具体的には、着目画素Oを挟んで上下(縦方向)に比較対象画素S1,S5が配置され、着目画素Oを挟んで左右(横方向)に比較対象画素S7,S3が配置されている。また、着目画素Oを挟んで斜め方向(右斜め上から左斜め下方向)に比較対象画素S2,S6が配置され、着目画素Oを挟んで斜め方向(左斜め上から右斜め下方向)に比較対象画素S8,S4が配置されている。
そして、各比較対象画素S1およびS5、比較対象画素S2およびS6、比較対象画素S3およびS7、比較対象画素S4およびS8は、着目画素Oを中心とした点対称位置に設定されている。
【0036】
なお、着目画素Oと比較対象画素S1〜S8の距離は、検出対象となる欠陥の大きさに応じて設定される。すなわち、本実施形態では、着目画素Oに対応する検査対象画素と比較対象画素S1〜S8との輝度差で欠陥を強調するため、欠陥は比較対象画素S1〜S8で囲まれるエリア内に納まる大きさでなければ検出できない。従って、検出したい欠陥の大きさによって、前記着目画素Oと比較対象画素S1〜S8の距離を設定すればよい。
本実施形態では、着目画素Oから約7画素離れた位置に略円形状に各比較対象画素S1〜S8を配置している。
【0037】
そして、比較対象画素群設定手段612は、これらの比較対象画素S1〜S8を、2つの比較対象画素群に分けて設定する。すなわち、円周方向に1つおきとなる比較対象画素S1,S3,S5,S7により第1の比較対象画素群を設定し、残りの比較対象画素S2,S4,S6,S8により第2の比較対象画素群を設定する。
【0038】
次に、欠陥強調処理手段61は、最小輝度差算出手段613により、各比較対象画素群ごとに比較対象画素S1〜S8を1画素ずつ選択し、選択した画素の輝度値(平滑化画像における輝度値)と検査対象画素の輝度値(撮像画像における輝度値)との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を求める最小輝度差算出工程を実行する(ST23)。
【0039】
具体的には、最小輝度差算出手段613は、まず第1の比較対象画素群の各画素を順次1画素ずつ選択しながら、検査対象画素の輝度値から各比較対象画素S1,S3,S5,S7の輝度値を引いて輝度差データFを求める。すなわち、検査対象画素の輝度値を「O1」、比較対象画素S1,S3,S5,S7の各輝度値を「S1,S3,S5,S7」とした際に、以下の式1〜4を用いて輝度差データF1,F3,F5,F7を算出する。
【0040】
F1=O1−S1 (式1)
F3=O1−S3 (式2)
F5=O1−S5 (式3)
F7=O1−S7 (式4)
【0041】
次に、最小輝度差算出手段613は、以下の式5を用いて、第1の比較対象画素群の各輝度差データF1,F3,F5,F7のうち、値が最小となる最小輝度差D1を求める。
D1=Min(F1,F3,F5,F7) (式5)
【0042】
次に、最小輝度差算出手段613は、第2の比較対象画素群の各画素を順次1画素ずつ選択しながら、検査対象画素の輝度値から各比較対象画素S2,S4,S6,S8の輝度値を引いて輝度差データFを求める。すなわち、検査対象画素の輝度値を「O1」、比較対象画素S2,S4,S6,S8の各輝度値を「S2,S4,S6,S8」とした際に、以下の式6〜9を用いて輝度差データF2,F4,F6,F8を算出する。
さらに、最小輝度差算出手段613は、以下の式10を用いて、第2の比較対象画素群の各輝度差データF2,F4,F6,F8のうち、値が最小となる最小輝度差D2を求める。
【0043】
F2=O1−S2 (式6)
F4=O1−S4 (式7)
F6=O1−S6 (式8)
F8=O1−S8 (式9)
D2=Min(F2,F4,F6,F8) (式10)
【0044】
次に、欠陥強調処理手段61は、欠陥強調値算出手段614により、第1および第2の比較対象画素群ごとに算出した最小輝度差D1,D2のうち、値が大きいものを検査対象画素の位置の欠陥強調値とする欠陥強調処理工程を実行する(ST24)。
【0045】
なお、上記の式1〜4,式6〜9は、背景(周囲の画素)よりも明るい明欠陥を強調するための計算式であり、検査対象画素の輝度値O1から比較対象画素S1〜S8の輝度値S1〜S8を引いて輝度差データF1〜F8を求めていた。
これに対し、背景よりも暗い暗欠陥を強調する場合には、逆に比較対象画素S1〜S8の輝度値S1〜S8から検査対象画素の輝度値O1を引いて輝度差データF1〜F8を求めればよい。具体的には次の式11〜18を用いて輝度差データF1〜F8を求めればよい。
【0046】
F1=S1−O1 (式11)
F3=S3−O1 (式12)
F5=S5−O1 (式13)
F7=S7−O1 (式14)
F2=S2−O1 (式15)
F4=S4−O1 (式16)
F6=S6−O1 (式17)
F8=S8−O1 (式18)
【0047】
欠陥強調処理手段61は、図3に示すように、取得した画像の全体にわたって欠陥強調処理が済んだか否かを判断し(ST25)、処理済みでない場合には、検査対象画素を移動させて別の検査対象画素を選定し(ST21)、比較対象画素群設定工程ST22、最小輝度差算出工程ST23、欠陥強調値算出工程ST24を行う。すなわち、検査対象画素をCCDカメラ5の撮像画素単位に設定しているため、検査対象画素を撮像画素毎に順次移動して各工程ST21〜24を順次行えばよい。
【0048】
一方、ST25において処理済みであった場合には、欠陥強調処理手段61は、各画素毎に算出した欠陥強調値による欠陥強調画像を生成する(ST26)。すなわち、明欠陥用の欠陥強調値により明欠陥強調画像を生成し、暗欠陥用の欠陥強調値により暗欠陥強調画像を生成する。なお、欠陥強調処理手段61は、明欠陥あるいは暗欠陥のいずれか一方の欠陥強調値しか算出していない場合には、算出した欠陥強調値による欠陥強調画像のみを生成する。
以上により欠陥強調処理工程ST2が終了する。
【0049】
欠陥強調処理工程ST2が終了すると、図2に示すように、欠陥強調処理手段61の欠陥抽出手段62は、欠陥強調処理工程ST2で得られた欠陥強調画像に対して、欠陥を切り出す閾値を設定し、欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出工程を実行する(ST3)。
すなわち、欠陥抽出手段62は、明欠陥強調画像が生成されている場合には明欠陥を切り出す閾値を設定し、暗欠陥強調画像が生成されている場合には暗欠陥を切り出す閾値を設定し、各欠陥強調画像から各欠陥候補の領域を切り出す。この際、欠陥抽出手段62は、明欠陥強調結果に対しては明欠陥閾値以上の領域を明欠陥領域として検出し、暗欠陥強調結果に対しては暗欠陥閾値以上の領域を暗欠陥領域として検出する。
ここで、各閾値は、画像の状況に合わせて最適な値を設定すればよい。例えば、欠陥強調画像の平均値と、その標準偏差を求め、以下の式で閾値を設定してもよい。
【0050】
明欠陥閾値 wslevel=avr(明)+α1・σ(明)+β1
暗欠陥閾値 bslevel=avr(暗)+α2・σ(暗)+β2
【0051】
ここで、avr(明)、avr(暗)は各欠陥強調画像の平均値、σ(明)、σ(暗)は各欠陥強調画像の標準偏差、α1,α2,β1,β2は任意の数で検査対象となる画像の状況で適宜決定される。
また、各欠陥強調画像には負になる部分も存在しているが、その負になる部分は、明欠陥強調では暗欠陥の成分、暗欠陥強調では明欠陥の成分であるので、平均値や標準偏差を計算する場合には、負の値を省いて計算している。
【0052】
次に、欠陥判別手段63は、強調画像から抽出された明欠陥抽出画像と、暗欠陥抽出画像に対し、Blob処理を行い、欠陥候補として切り出した領域の面積と、平均輝度、最大輝度を求める。そして、欠陥判別手段63は、これらの特徴量の中の面積を、予め設定した閾値と比較し、面積が閾値以上の欠陥候補領域は欠陥成分と判定し、閾値未満の欠陥候補領域はノイズ成分と判定する欠陥判別工程を実施する(ST4)。
さらに、欠陥判別手段63は、欠陥判別工程ST4において、欠陥成分として分離された領域の面積と平均輝度、最大輝度に基づいて欠陥ランクを求める。
この欠陥判別手段63で求められた欠陥成分および欠陥ランクは、表示装置7に表示され、検査員は被検査物1の欠陥ランクを容易に把握することができる。
【0053】
次に、本実施形態による検出感度を確認するために、検査対象画像に対して本手法を適用した検証結果について説明する。なお、比較例として、撮像画像に検査対象画素および比較対象画素S1〜S8の両方を設定し、比較対象画素S1〜S8の輝度値と検査対象画素の輝度値との差を求め、その輝度差データの最小値を欠陥強調値とする比較例1と、撮像画像に対してメディアン処理を行い、この処理後の画像に対して比較例1と同じ処理を行って欠陥強調値を求めた比較例2についても説明する。
【0054】
図5は検査対象画像100である。検査対象画像100には、周囲に比べて暗く表示された暗欠陥が存在する。すなわち、比較的大きな面積のシミ状の暗欠陥101と、細長い線状の暗欠陥102である。これらの暗欠陥101,102以外の暗い部分はノイズ成分である。
図6は、検査対象画像100に対して、比較例1の処理を行った処理結果の画像である。この比較例1の処理結果では、暗欠陥101,102を十分に検出できておらず、かつ、ノイズ成分も検出しているため、各欠陥101、102をノイズ成分と区別して検出することができない。
図7は、検査対象画像100に対して、比較例2の処理を行った処理結果の画像である。この比較例2の処理結果では、ノイズ成分を除去し、かつ、面積の広い欠陥101は検出できているが、細長い欠陥102は、一部分が細かく分離して検出されており、その他の部分は検出できておらず、結果として欠陥102全体を検出することができない。このため、比較例2は、欠陥の形状によっては欠陥を検出することができず、特に線欠陥を確実に検出することができない。
【0055】
図8は、検査対象画像100に対して、本実施形態の手法による暗欠陥強調用のフィルタを適用し、欠陥抽出手段62によって欠陥候補抽出工程ST3を実行した暗欠陥強調画像120である。本実施形態のように、第1および第2の比較対象画素群ごとに最小輝度差D1,D2を求め、いずれか大きい値のものを欠陥強調値とすれば、ノイズも一緒に検出されているが、シミ欠陥および線欠陥の各暗欠陥101,102も検出できている。
そして、この暗欠陥強調画像120に対し、欠陥判別手段63によって欠陥判別工程ST4を実行すると、図9に示すように、ノイズ成分を除去でき、検出対象であった各暗欠陥101,102のみを検出でき、本実施形態の有効性を検証できた。
【0056】
本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)欠陥強調処理手段61は、平滑化画像において、撮像画像の検査対象画素に対応する着目画素Oの周囲に複数の上記比較対象画素S1〜S8を配置し、かつ、これらの上記比較対象画素S1〜S8を2つの比較対象画素群に分けて設定し、撮像画像における検査対象画素の輝度値と、平滑化画像における各比較対象画素S1〜S8の輝度値との差を求め、比較対象画素群ごとに輝度差データが最も小さい最小輝度差D1,D2を算出し、これらの最小輝度差D1,D2のうち、値が大きいものを検査対象画素の欠陥強調値としている。
このため、各比較対象画素群において最小輝度差を求めることで、前記検査対象画素を含み、かつ、比較対象画素で囲まれる領域内にあるシミ欠陥と、各検査対象画素およびいずれかの比較対象画素を通る線欠陥以外の線欠陥とを強調することができ、検査対象画像に照明ムラなどのシェーディングが乗っていても、問題なく欠陥を検出でき、誤検出を低減させることができる。
そして、各比較対象画素群は、比較対象画素の位置が互いに異なるため、一方の比較対象画素群では強調できない線欠陥も、他方の比較対象画素群において強調できるため、各比較対象画素群の最小輝度差のうち、値が大きいものを検査対象画素の欠陥強調値とすることで、シミ欠陥および線欠陥を強調して検出することができる。
このため、本実施形態では、線欠陥の角度によって検出できたり、できなかったりすることが無く、欠陥方向による検出感度の差を補うことが可能となり、欠陥の検出感度を向上できる。
その上、シミ欠陥および線欠陥の両方を同時に検出できるため、シミ欠陥検出用フィルタによるシミ欠陥検出処理と、線欠陥検出用フィルタによる線欠陥検出処理とをそれぞれ別々に行う場合に比べて、欠陥検出処理時間も短縮することができる。
【0057】
(2)また、検査対象画素は撮像画像に設定し、その輝度値も撮像画像から求めているので、平滑化画像から検査対象画素の輝度値を求める場合に比べ、平滑化処理によって欠陥の成分を弱めることがない。
一方、比較対象画素S1〜S8は平滑化画像に設定し、それらの輝度値も平滑化画像から求めているので、ノイズ成分の影響を受けることなく欠陥成分を強調することができる。
従って、本実施形態では、検査対象画素の輝度値は、欠陥成分が弱まっていない撮像画像から取得し、比較対象画素の輝度値は、ノイズ成分の影響を軽減した平滑化画像から取得しているので、欠陥成分を確実に強調することができ、欠陥成分の検出漏れを防止できる。
【0058】
(3)さらに、欠陥強調処理手段61による欠陥強調処理工程ST2では、欠陥成分だけでなくノイズ成分についても同時に強調し欠陥候補となるが、欠陥判別手段63による欠陥判別工程ST4において、欠陥候補の特徴量、例えば欠陥候補の面積がある閾値未満の欠陥候補をノイズ成分とし、閾値以上の面積のものを欠陥成分として分離しているので、欠陥成分を特定して検出することができる。
【0059】
(4)本実施形態では、検査対象画素(着目画素O)と比較対象画素S1〜S8の距離を適宜設定することで、強調可能なシミ欠陥の大きさを設定できるので、検出したいサイズのシミ欠陥を容易にかつ高精度に検出できる。
【0060】
(5)本実施形態では、欠陥強調値は、検査対象画素の輝度値と、比較対象画素S1〜S8の輝度値との差で算出され、検査対象画素および比較対象画素S1〜S8間にある点の輝度値は利用されていない。このため、シミ欠陥が、比較対象画素S1〜S8で囲まれるエリアよりも小さく、かつ検査対象画素を含むものであれば、欠陥のサイズがある程度変化しても、従来の検査員の目視による判定と同様に欠陥を検出できる。このため、検査対象画素および比較対象画素S1〜S8の距離サイズはあまり細かく設定する必要が無く、容易に設定できる。
【0061】
(6)各比較対象画素群における最小輝度差D1,D2を求めて欠陥強調値とし、この欠陥強調値が所定の閾値以上の場合に、欠陥候補と認定しているので、欠陥の誤検出を低減することができる。
【0062】
(7)さらに、最小輝度差算出手段613においては、明欠陥強調値を算出する式と、暗欠陥を算出する式とをそれぞれ別々に設定しているので、明欠陥や暗欠陥の欠陥部分をそれぞれ精度良く強調することができ、欠陥抽出手段62で明欠陥用の閾値と、暗欠陥用の閾値とでそれぞれ抽出することで、明欠陥および暗欠陥の両方を簡単にかつ精度良く検出することができる。このため、各種の欠陥を簡単な処理で効率的に検出することができる。
【0063】
(8)欠陥判別手段63により、抽出された欠陥のランクを分類できるので、欠陥の客観的なランク付けを短時間に行うことができ、検査者は欠陥の度合いを容易に判断でき、良品かどうかの判定を短時間で容易にすることができる。
【0064】
なお、本発明は、前記実施形態に限らない。
例えば、欠陥を強調するためのフィルタにおける検査対象画素(着目画素O)と比較対象画素S1〜S8との距離は、前記実施形態のものに限らず、検出対象となるシミ欠陥の大きさに応じて設定すればよい。また、フィルタサイズは一定とし、検出対象となる画像を縮小等して処理を行うことで、検出対象となる欠陥サイズを変更しても良い。
【0065】
また、様々な欠陥サイズに対応するために、検査対象画素(着目画素O)および比較対象画素S1〜S8の距離を異ならせた複数のフィルタを用意し、これらのフィルタを同じ画像に適用して各サイズの欠陥強調画像を取得し、それらの欠陥強調画像の同じ位置の画素の強調値を比較して最大となる値を選択し、1枚に合成して欠陥強調画像としてもよい。このような構成によれば、複数のサイズのシミ欠陥や線欠陥をまとめてかつ容易に検出することができる。
【0066】
さらに、前記実施形態では、8個の比較対象画素S1〜S8を設け、これらの比較対象画素S1〜S8を2つの比較対象画素群に分けて設定していたが、欠陥強調フィルタとしては、前記実施形態のものに限らない。
例えば、図10に示すように、12個の比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34を設け、検査対象画素(着目画素O)を中心とする円周方向において90度間隔で配置された各比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34毎に比較対象画素群を構成して、3つの比較対象画素群を設けた欠陥強調フィルタを用いてもよい。
【0067】
さらに、図11に示すように、16個の比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34,S41〜S44を設け、検査対象画素(着目画素O)を中心とする円周方向において90度間隔で配置された各比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34,S41〜S44毎に比較対象画素群を構成して、4つの比較対象画素群を設けた欠陥強調フィルタを用いてもよい。
【0068】
また、前記実施形態や図10,11に示す変形例では、各比較対象画素群には4つの比較対象画素を配置し、これらの比較対象画素は互いに円周方向に90度間隔で配置されていたが、各比較対象画素の間隔は90度間隔のものに限定されない。但し、4つの比較対象画素を設けて90度間隔に配置すれば、各比較対象画素を等間隔に配置でき、欠陥を効率的に検出できる。
【0069】
さらに、前記実施形態や図10,11に示す変形例では、各比較対象画素群には4つの比較対象画素を配置していたが、図12に示すように、16個の比較対象画素S11〜S18,S21〜S28を設け、検査対象画素(着目画素O)を中心とする円周方向において1つおきに配置された各比較対象画素S11〜S18,S21〜S28毎に比較対象画素群を構成し、それぞれ8個の比較対象画素を有する2つの比較対象画素群を設定してもよい。
この場合、各比較対象画素群において各比較対象画素S11〜S18、S21〜S28は45度間隔で配置されるため、90度間隔で配置される前記実施形態などに比べると、検出できる線欠陥の幅寸法が小さくなる。つまり、線欠陥を検出する場合には、線欠陥が各比較対象画素間の隙間を通る必要がある。このため、45度間隔で比較対象画素が配置されると、それらの隙間を通る線欠陥の幅寸法も小さくなる。従って、検出する線欠陥の幅寸法を制限する場合には、図12のようなフィルタを利用すればよい。
【0070】
なお、比較対象画素の数は、特に検査対象画素(着目画素O)と比較対象画素との距離に応じて設定すればよい。すなわち、検査対象画素(着目画素O)と比較対象画素との距離を大きくした場合には、各比較対象画素同士の間隔が広がるため、比較対象画素を適宜増やして欠陥を適切に検出できるようにすることが好ましい。
但し、比較対象画素が増えると、その分、処理に時間が掛かるため、比較対象画素の数は、8,12,16個のいずれかが好ましい。
【0071】
また、前記実施形態では、欠陥判別手段63で欠陥部分の面積などに基づいて欠陥ランクを判別していたが、他の方法・手順で欠陥を判別してもよい。要するに、欠陥判別手段63は、欠陥強調処理手段61で強調された欠陥に基づいてそれが欠陥に該当するか否かを判断できるものであればよい。
【0072】
本発明は、被検査物1の撮像画像に、周囲と輝度差がある部分があれば検出できる。このため、本発明は、フレキシブル基板などにおける異物欠陥検出や、被検査物表面の傷や汚れの検出や、各種表示装置の輝度シミ欠陥や色シミ欠陥の検出等に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態による画面の欠陥検出装置の構成図。
【図2】同欠陥検出装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図3】欠陥強調処理工程の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】撮像画像に対する検査対象画素および比較対象画素の配置例を示す図。
【図5】本実施形態で検出される撮像画像の例を示す図。
【図6】比較例1による欠陥強調画像の例を示す図。
【図7】比較例2による欠陥強調画像の例を示す図。
【図8】本実施形態による欠陥強調画像の例を示す図。
【図9】本実施形態による欠陥候補抽出処理後の画像の例を示す図。
【図10】欠陥強調フィルタの変形例を示す図。
【図11】欠陥強調フィルタの他の変形例を示す図。
【図12】欠陥強調フィルタの他の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0074】
1…被検査物、2…XYステージ、4…顕微鏡、5…CCDカメラ、6…コンピュータ装置、7…表示装置、60…画像入力手段、61…欠陥強調処理手段、62…欠陥抽出手段、63…欠陥判別手段、610…平滑化画像作成手段、611…検査対象画素選定手段、612…比較対象画素群設定手段、613…最小輝度差算出手段、614…欠陥強調値算出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程と、
前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出工程とを有し、
前記欠陥強調処理工程は、
前記撮像画像に対して平滑化処理を行って平滑化画像を作成する平滑化画像作成工程と、
前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程と、
選定された検査対象画素に対応する平滑化画像の着目画素から所定距離離れた比較対象画素を前記着目画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定工程と、
比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程と、
比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程とを備え、
前記欠陥検出工程は、前記検査対象画素での欠陥強調値を所定の閾値と比較して欠陥候補画素を抽出し、その欠陥候補画素によって構成される欠陥候補領域の特徴量から欠陥を判別することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検出方法において、
前記比較対象画素群設定工程は、
前記複数の比較対象画素として、4×n個(nは2以上の整数)の比較対象画素を選定し、
これらの比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して各比較対象画素群を設定することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥検出方法において、
前記比較対象画素群設定工程は、
前記複数の比較対象画素として、検査対象画素を中心とする円周方向において45度間隔で配置された8個の比較対象画素を選定し、
これらの8個の比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して第1比較対象画素群および第2比較対象画素群を設定することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の欠陥検出方法において、
前記最小輝度差算出工程は、
欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも高くなる明欠陥を検出する場合には、前記検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求め、
欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも低くなる暗欠陥を検出する場合には、前記比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求めることを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項5】
被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、
前記欠陥強調処理手段で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段とを有し、
前記欠陥強調処理手段は、
前記撮像画像に対して平滑化処理を行って平滑化画像を作成する平滑化画像作成手段と、
前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、
選定された検査対象画素に対応する平滑化画像の着目画素から所定距離離れた比較対象画素を前記着目画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定手段と、
比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、
比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段とを備え、
前記欠陥検出手段は、前記検査対象画素での欠陥強調値を所定の閾値と比較して欠陥候補画素を抽出し、その欠陥候補画素によって構成される欠陥候補領域の特徴量から欠陥を判別することを特徴とする欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−198290(P2009−198290A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39802(P2008−39802)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】