説明

消防車

【課題】信号線を必要以上に多くすることなく、信号発生器の連続した操作を要することなく、消火流体吐出用ポンプの駆動用エンジンの回転速度を迅速に調節できる消防車を提供する。
【解決手段】複数の信号発生器21、22は、操作部材21a、22aの基準位置Pからの操作量と操作方向に対応する値の信号を時間的に連続して発生する。選択部31は信号発生器21、22の中の何れか一つから送られる信号を選択する。回転速度調節信号生成部33は、選択部31により選択される信号の時系列な値を、操作部材21a、22aが基準位置Pから一方向に操作される時は大きさが次第に増大するよう累積し、操作部材21a、22aが基準位置Pから他方向に操作される時は大きさが次第に減少するよう累積する累積部32を有する。累積部32において累積された値に応じて消火流体吐出用ポンプ駆動用エンジン8 の回転速度調節信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火流体吐出用ポンプを駆動するエンジンの回転速度を手動操作により調節できる消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにより駆動されるポンプから吐出される消火流体を、放水銃により放水したり他の消防車に中継送水する場合、流体供給源の供給圧力、放水銃の種類、消火流体搬送用ホースでの圧力損失等が一定ではないことから、そのエンジン回転速度を調節することでポンプの消火流体吐出圧を変化させる必要がある。
【0003】
そこで、オペレータの操作速度に応じた速度でパルス信号を発生可能な複数のパルスジェネレータと、パルスジェネレータの中の何れか一つから送られるパルス信号を選択する選択部と、選択部を介してパルスジェネレータから送られるパルス信号のパルス数を、パルスジェネレータが一方向に操作される時は累積的に増大するように計数し、他方向に操作される時は計数値を減少させるパルス計数部と、パルス計数部において計数されたパルス数に応じたエンジンの回転速度調節信号を生成する回転速度調節信号生成部とを設けることが提案されている(特許文献1参照)。これにより、エンジンの回転速度調節信号は、選択部を介してパルスジェネレータから送られるパルス信号のパルス数を累積的に計数した値に対応するため、速度調節を行うパルスジェネレータを切り換えてもエンジン回転速度が急変することはない。
【特許文献1】特開2004−27903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、パルスジェネレータの操作方向を判断するため、互いに位相がずれた2種類のパルス信号を発生する必要があり、それぞれのパルス信号に応じた信号線が必要になる。そのため、信号線が多くなるために取り扱い難くなり、特にコンビナート火災等において遠隔操作される消防車においては、長尺の遠隔操作用信号線が必要であるため作業性が低下するという問題がある。また、エンジン回転速度の変化速度はパルスジェネレータの操作速度に対応し、パルスジェネレータを操作しない限りはエンジン回転速度が変化しない。そのため、エンジン回転速度を変化させるには連続してパルスジェネレータを操作し続ける必要があり、また、そのエンジン回転速度を迅速に変化させるには高速でパルスジェネレータを操作し続ける必要がある。本発明は、そのような課題を解決することのできる消防車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の消防車の一つの特徴は、消火流体吐出用ポンプと、前記ポンプの駆動用エンジンと、操作部材を有すると共に、その操作部材の基準位置からの操作量と操作方向に対応する値の信号を、時間的に連続して発生可能な複数の信号発生器と、前記信号発生器の中の何れか一つから送られる信号を選択する選択部と、前記エンジンの回転速度調節信号を生成する回転速度調節信号生成部とを備え、前記回転速度調節信号生成部は、前記選択部により選択される信号の時系列な値を累積する累積部を有し、この累積される値の大きさは、前記操作部材が前記基準位置から一方向に操作される時は次第に増大され、前記操作部材が前記基準位置から他方向に操作される時は次第に減少され、前記累積部において累積された値に応じて前記回転速度調節信号が生成される点にある。
これにより、信号発生器は操作部材の基準位置からの操作量と操作方向に対応する値の信号を発生するので、パルスジェネレータのように複数種類の信号を発生することなく、その操作方向を信号の値から判断でき、信号線が多くなることはない。
また、信号発生器は時間的に連続して信号を発生し、その信号の時系列な値の累積値が回転速度調節信号に対応するため、速度調節を行う信号発生器を切り換えてもエンジン回転速度が急変することはなく、且つ、操作部材を連続して操作し続けなくてもエンジン回転速度を変化させることができる。しかも、そのエンジン回転速度の変化速度は操作部材の基準位置からの操作量を大きくする程に高速になるので、高速で操作することなくエンジン回転速度を迅速に変化させることができる。
【0006】
本発明の消防車の別の一つの特徴は、消火流体吐出用ポンプと、前記ポンプの駆動用エンジンと、操作部材を有すると共に、その操作部材の基準位置からの操作量と操作方向に対応する値の信号を、時間的に連続して発生可能な少なくとも一つの信号発生器と、オペレータの操作速度に応じた速度でパルス信号を発生可能な少なくとも一つのパルスジェネレータと、前記信号発生器と前記パルスジェネレータの中の何れか一つから送られる信号を選択する選択部と、前記エンジンの回転速度調節信号を生成する回転速度調節信号生成部とを備え、前記回転速度調節信号生成部は、前記選択部により選択される信号が前記信号発生器からの信号である場合、その選択される信号の時系列な値を累積し、前記選択部により選択される信号が前記パルスジェネレータからの信号である場合、その選択されるパルス信号のパルス数に対応する信号値を累積する累積部を有し、この累積される値の大きさは、前記操作部材が前記基準位置から一方向に操作される時と前記パルスジェネレータが一方向に操作される時は次第に増大され、前記操作部材が前記基準位置から他方向に操作される時と前記パルスジェネレータが他方向に操作される時は次第に減少され、前記累積部において累積された値に応じて前記回転速度調節信号が生成される点にある。
これにより、信号発生器は操作部材の基準位置からの操作量と操作方向に対応する値の信号を発生するので、その操作部材の操作方向はパルスジェネレータのように複数種類の信号を発生することなく信号の値から判断でき、信号線が多くなることはない。この場合、パルスジェネレータを消防車の車体に取り付け、信号発生器を車体に搭載される制御装置に信号線を介して接続される遠隔操作盤に取り付けるのが好ましい。
選択部が信号発生器から送られる信号を選択する場合、信号発生器は時間的に連続して信号を発生し、その信号の時系列な値の累積値が回転速度調節信号に対応し、選択部がパルスジェネレータから送られる信号を選択する場合、エンジンの回転速度調節信号はパルス信号のパルス数を累積した値に対応するため、速度調節を行う信号発生器またはパルスジェネレータを切り換えてもエンジン回転速度が急変することはない。
エンジン回転速度を信号発生器により調節する場合、操作部材を連続して操作し続けなくてもエンジン回転速度を変化させることができる。しかも、そのエンジン回転速度の変化速度は操作部材の基準位置からの操作量を大きくする程に高速になるので、高速で操作することなくエンジン回転速度を迅速に変化させることができる。
また、エンジン回転速度をパルスジェネレータにより調節する場合、エンジンの回転速度の調節速度はパルスジェネレータのパルス発生速度に対応するため、パルスジェネレータの操作速度に応じた任意の速度に容易に調節することができる。
【0007】
前記信号発生器の発生信号を電流信号として出力する信号出力要素を備え、前記累積部は、前記電流信号により充放電されるコンデンサーを有し、前記エンジンの回転速度調節信号は前記コンデンサーの端子電圧に対応するのが好ましい。あるいは、前記信号発生器の発生信号をデジタル信号として出力する信号出力要素を備え、前記累積部は、前記デジタル信号の値を累積的に記憶する記憶装置を有し、前記エンジンの回転速度調節信号は前記記憶装置に記憶された前記デジタル信号の値の累積値に対応するのが好ましい。これにより、複雑な構成を要することなく本発明を実施することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消火流体吐出用ポンプの駆動用エンジンの回転速度を調節する際に、信号線を必要以上に多くすることなく、信号発生器の連続した操作を要することなく、その操作に応じてエンジン回転速度を迅速に調節することが可能になる消防車を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示す消防車1は、車体2に内蔵される消火流体吐出用ポンプ3と真空ポンプ4を備える。消火流体吐出用ポンプ3は例えば遠心ポンプにより構成され、その吸引側にボールコック5を介して河川や消火栓等から消火用流体が導入され、その吐出側からボールコック6を介して放水銃や他の消防車の流体中継口に消火用流体が吐出される。その消火流体吐出用ポンプ3と真空ポンプ4は消防車のエンジン8により駆動される。すなわち、エンジン8により回転駆動される消火流体吐出用ポンプ3の出力シャフト3aに、電磁クラッチ9と巻き掛け伝動機構10を介して真空ポンプ4の入力シャフト4aが接続される。真空ポンプ4は例えばベーンポンプにより構成され、消火流体として河川等の水を用いる場合、エンジン8により駆動されることで消火流体吐出用ポンプ3の吸引側圧力を低下させる。これにより、消火流体吐出用ポンプ3の吸引側に河川等から呼び水が導入され、消火流体吐出用ポンプ3の吐水側圧力が一定以上になると、圧力スイッチ11の作動により電磁クラッチ9が切断され、真空ポンプ4は停止する。
【0010】
車体2における左側壁と右側壁とに、それぞれ信号発生器21、22が取り付けられている。図2に示すように、各信号発生器21、22は本実施形態では公知のポテンショメータにより構成され、そのポテンショメータの出力変更用のロータリータイプ可動素子に連動するレバー状操作部材21a、22aを有する。一方の操作部材21aは車体の左外側から操作可能に配置され、他方の操作部材22aは車体の右外側から操作可能に配置される。本実施形態の操作部材21a、22aは、図示の基準位置Pから一方向にθ度、他方向に−θ度ずつ回転操作可能とされ、バネ(図示省略)の弾力により基準位置Pに復帰可能とされている。操作部材21a、22aの操作量と操作方向に対応する電圧値を有する電圧信号を信号発生器21、22は時間的に連続して発生可能である。すなわち、操作部材21a、22aが一方向に操作されることで操作量に対応する絶対値の正電圧信号を連続的に発生し、他方向に操作されることで操作量に対応する絶対値の負電圧信号を連続的に発生する。
【0011】
信号発生器21、22は制御装置30に信号線21L、22Lにより接続されている。制御装置30は、選択部31、回転速度調節信号生成部33および速度制御部34を有し、例えば電子回路やマイクロコンピュータにより構成すればよい。
【0012】
選択部31は、一方の信号発生器21に接続される常開の第1リレースイッチ31a、他方の信号発生器22に接続される常開の第2リレースイッチ31b、第2リレースイッチ31bに接続される常閉の第3リレースイッチ31c、第1リレースイッチ31aに対応する第1リレーコイル31d、第2リレースイッチ31bに対応する第2リレーコイル31e、第3リレースイッチ31cに対応する第3リレーコイル31f、一方の信号発生器21と第1リレーコイル31dと第3リレーコイル31fに接続される第1操作域判定部31g、および他方の信号発生器22と第2リレーコイル31eに接続される第2操作域判定部31hを有する。
【0013】
回転速度調節信号生成部33は累積部32を有し、累積部32において累積された値に応じたエンジン8の回転速度調節信号を生成する。
【0014】
累積部32は、電圧信号を電流信号に変換する信号変換回路32aと、信号変換回路32aに接続されるコンデンサー32bを有する。信号変換回路32aに、一方の信号発生器21が第1リレースイッチ31aを介して接続され、他方の信号発生器22が第2、第3リレースイッチ31b、31cを介して接続される。
【0015】
一方の信号発生器21の操作部材21aが操作されると、その操作量が設定閾値を超えるか否かが第1操作域判定部31gにより判定され、設定閾値を超える場合は第1リレーコイル31dと第3リレーコイル31fに通電されて第1リレースイッチ31aが閉じられ、第3リレースイッチ31cが開かれ、設定閾値を超えない場合は第1リレーコイル31dと第3リレーコイル31fへの通電が解除されて第1リレースイッチ31aが開かれ、第3リレースイッチ31cが閉じられる。
他方の信号発生器22の操作部材22aが操作されると、その操作量が設定閾値を超えるか否かが第2操作域判定部31hにより判定され、設定閾値を超える場合は第2リレーコイル31eに通電されて第2リレースイッチ31bが閉じられ、設定閾値を超えない場合は第2リレーコイル31eへの通電が解除されて第2リレースイッチ31bが開かれる。
これにより、選択部31は両信号発生器21、22の中で操作量が設定閾値を超えたものから送られる電圧信号を選択し、また、両方の信号発生器21、22の操作量が設定閾値を超えた場合は一方の信号発生器21から送られる電圧信号を選択し、その選択された電圧信号を信号変換回路32aに送る。
【0016】
信号変換回路32aは、選択部31により選択された電圧信号を電流信号として出力する信号出力要素として機能する。これによりコンデンサー32bは、操作部材21a、22aが基準位置Pから一方向に操作された時に信号変換回路32aから出力される電流信号により充電され、他方向に操作された時に信号変換回路32aから出力される電流信号により放電される。よって累積部32は、選択部31により選択される信号の時系列な値を電荷として累積する。この累積される値の大きさが、選択された信号に対応する信号発生器の操作部材が基準位置Pから一方向に操作される時は次第に増大され、基準位置Pから他方向に操作される時は次第に減少されるように、信号発生器21、22の信号値の正負の符号が定められている。コンデンサー32bの端子電圧に対応する電圧信号が回転速度調節信号として出力される。その回転速度調節信号がエンジン8の回転速度制御装置8aに入力される。
【0017】
図示例の回転速度制御装置8aは、エンジン8のガバナレバー8bをリンク8cを介して作動させるサーボモータ8dと、回転速度調節信号をサーボモータ8dへの位置指令信号に変換するサーボ制御器8eを有する。これにより、両信号発生器21、22の中の何れかを操作することで、その操作量に応じてエンジン8の回転速度を増減し、ポンプ3の消火流体吐出圧を調節することができる。なお、図2において2点鎖線で示すようにエンジン8は電子ガバナ8gを装備するものでもよく、この場合は電子ガバナ8gに回転速度調節信号生成部33から回転速度調節信号を送ればよい。
【0018】
速度制御部34は、例えばマイクロコンピュータにより構成される本体34aを有し、真空ポンプ4の起動スイッチ41の操作により真空ポンプ起動信号が入力されることで、電磁クラッチ9を接続し、回転速度調節信号生成部33からの回転速度調節信号に代えて、真空ポンプ4の駆動に適した設定速度でエンジン8を駆動するための回転速度調節信号を回転速度制御装置8aに送り、選択部31と信号変換回路32aの間の常閉スイッチ34bの開き信号を送り、信号変換回路32aにコンデンサー32bの端子電圧を初期値(例えば零)にするため放電用電圧信号を送る。これにより消火流体吐出用ポンプ3の吸引側に適切に呼び水を導入できる。また、速度制御部34は、圧力スイッチ11の作動信号が入力することで、電磁クラッチ9を切断し、常閉スイッチ34bの開き信号、回転速度調節信号、および放電用電圧信号の伝送を解除する。
【0019】
速度制御部34は、接続された緊急停止スイッチ45が操作されると、回転速度調節信号生成部33からの回転速度調節信号に代えて、エンジン8をアイドリング状態で駆動するための回転速度調節信号を回転速度制御装置8aに送り、常閉スイッチ34bの開き信号を送り、信号変換回路32aにコンデンサー32bの端子電圧を初期値にするため放電用電流信号を送る。これによりエンジン8はアイドリング状態となり、ポンプ3からの消火流体の吐出は停止する。速度制御部34は、停止解除スイッチ46が操作されると、常閉スイッチ34bの開き信号、回転速度調節信号、および放電用電流信号の伝送を解除する。
【0020】
速度制御部34は、接続された圧力設定盤42の操作によりポンプ3の設定圧力指示信号が入力されると、常閉スイッチ34bの開き信号を送り、信号変換回路32aにコンデンサー32bの端子電圧を初期値にするため放電用電流信号を送り、その設定圧力とポンプ3の吐出圧センサ43からの検出圧力との圧力偏差に応じた回転速度調節信号を回転速度制御装置8aに送る。その回転速度調節信号は、その圧力偏差を低減するように設定された速度でエンジン8を駆動するよう定められ、これによりポンプ3の消火流体吐出圧を自動調圧できる。速度制御部34は、接続された自動調圧解除スイッチ44の操作により手動設定信号が入力されると、常閉スイッチ34bの開き信号、回転速度調節信号、および放電用電流信号の伝送を解除する。
【0021】
上記実施形態によれば、信号発生器21、22は操作部材21a、22aの基準位置Pからの操作量と操作方向に対応する値の信号を発生するので、パルスジェネレータのように複数種類の信号を発生することなく、その操作方向を信号の値から判断でき、信号線L1、L2が多くなることはない。また、信号発生器21、22は時間的に連続して信号を発生し、その信号の時系列な値の累積値が回転速度調節信号に対応するため、速度調節を行う信号発生器21、22を切り換えてもエンジン回転速度が急変することはなく、且つ、操作部材21a、22aを連続して操作し続けなくてもエンジン8の回転速度を変化させることができる。しかも、エンジン8の回転速度の変化速度は操作部材21a、22aの基準位置Pからの操作量を大きくする程に高速になるので、高速で操作することなくエンジン8の回転速度を迅速に変化させることができる。さらに、コンデンサー32bを利用して累積部32を複雑な構造を要することなく構成できる。さらに、信号発生器21、22の配置はオペレータにより操作可能な位置であれば特に限定されず、任意の位置に配置できる。また、呼び水用真空ポンプ4を作動させる場合、消火流体の吐出圧を自動調圧する場合、あるいは消火流体の吐出を迅速に停止させるためにエンジンをアイドリング状態にするような場合に、信号発生器21、22を操作することなく、エンジン回転速度を所望速度に設定できる。
【0022】
図3は第1変形例を示し、上記実施形態と同様部分は同一符号で示す。上記実施形態との相違は、まず、信号発生器21、22に加えて同様の構造の信号発生器23が車体2に取り付けられ、その操作部材23aは例えば車体の後部から操作可能に配置される。各信号発生器21、22、23はA/D変換器24a、24b、24cを介して制御装置130に信号線21L、22L、23Lにより接続されている。制御装置130は、選択部131、回転速度調節信号生成部133および速度制御部134を有する。制御装置130は電子回路やマイクロコンピュータにより構成すればよい。
【0023】
選択部131においては、第1の信号発生器21にA/D変換器24a、第1操作量演算部131aを介して常開の第1リレースイッチ131bが接続され、第1リレースイッチ131bに対応するリレーコイル131gが設けられ、第2の信号発生器22にA/D変換器24b、第2操作量演算部131cを介して常開の第2リレースイッチ131dが接続され、第2リレースイッチ131dに対応するリレーコイル131hが設けられ、第3の信号発生器23にA/D変換器24c、第3操作量演算部131eを介して常開の第3リレースイッチ131fが接続され、第3リレースイッチ131fに対応するリレーコイル131iが設けられ、各信号発生器21、22、23は操作域判定部131j、131k、131lを介して選択回路131mに接続され、選択回路131mに各リレーコイル131g、131h、131iが接続されている。各操作量演算部131a、131c、131eは、A/D変換器24a、24b、24cを介して送られる信号発生器21、22、23の発生信号を、操作部材21a、22a、23aの操作量と操作方向に対応する値を有するデジタル信号として出力する信号出力要素として機能する。
【0024】
回転速度調節信号生成部133における累積部132は記憶装置132aを有する。
記憶装置132aは、メモリー132a′と書き込み回路132a″を有する。書き込み回路132a″は、各信号発生器21、22、23にリレースイッチ131b、131d、131f、操作量演算部131a、131c、131e、A/D変換器24a、24b、24cを介して接続され、選択部131を介して何れかの操作量演算部131a、131c、131eから出力されるデジタル信号の値を、一定時間毎にメモリー132a′の現時点の記憶値に加算するように書き込む。これにより、記憶装置132aは選択部131を介して何れかの操作量演算部131a、131c、131eから出力されるデジタル信号の値を累積的に記憶する。
【0025】
各信号発生器21、22、23の操作部材21a、22a、23aの操作量が設定閾値を超えるか否かが各操作域判定部131j、131k、131lにより判定され、その判定結果が選択回路131mに送られる。選択回路131mは、信号発生器21、22、23の中の一つのみの操作量が設定閾値を超える場合、リレーコイル131g、131h、131iの中でその一つの信号発生器に対応するものを励磁し、信号発生器21、22、23の中の複数の操作量が設定閾値を超える場合、最初に入力された信号を発生した信号発生器に対応するリレーコイルを励磁することで、リレースイッチ131b、131d、131fの中の一つのみを閉じる。これにより、選択部131は信号発生器21、22、23の中の何れか一つから送られる信号を選択し、その選択した信号を記憶装置132aに送る。
【0026】
累積部132の記憶装置132aはメモリー132a′に、選択部131により選択される信号の時系列な値を累積する。この累積される値の大きさが、選択された信号に対応する操作部材が基準位置Pから一方向に操作される時は次第に増大され、基準位置Pから他方向に操作される時は次第に減少されるように、信号発生器21、22、23の信号値の正負の符号が定められている。メモリー132a′に記憶されたデジタル信号の値の累積値に対応する信号が、一定時間毎にD/A変換器140を介して回転速度調節信号として出力される。その回転速度調節信号がエンジン8の回転速度制御装置8aに入力される。
【0027】
速度制御部134は、真空ポンプ4の起動スイッチ41の操作により真空ポンプ起動信号が入力されることで、電磁クラッチ9を接続し、回転速度調節信号生成部133からの回転速度調節信号に代えて、真空ポンプ4の駆動に適した設定速度でエンジン8を駆動するための回転速度調節信号を回転速度制御装置8aに送り、選択部131と記憶装置132aの間の常閉スイッチ134bの開き信号を送り、メモリー132a′の記憶値を初期値(例えば零)にするためリセット信号を送る。これにより消火流体吐出用ポンプ3の吸引側に適切に呼び水を導入できる。また、速度制御部134は、圧力スイッチ11の作動信号が入力することで、電磁クラッチ9を切断し、常閉スイッチ134bの開き信号、回転速度調節信号、およびリセット信号の伝送を解除する。
【0028】
速度制御部134は、接続された緊急停止スイッチ45が操作されると、回転速度調節信号生成部133からの回転速度調節信号に代えて、エンジン8をアイドリング状態で駆動するための回転速度調節信号を回転速度制御装置8aに送り、常閉スイッチ134bの開き信号を送り、メモリー132a′の記憶値を初期値にするためリセット信号を送る。これによりエンジン8はアイドリング状態となり、ポンプ3からの消火流体の吐出は停止する。速度制御部34は、停止解除スイッチ46が操作されると、常閉スイッチ134bの開き信号、回転速度調節信号、およびリセット信号の伝送を解除する。
【0029】
速度制御部134は、接続された圧力設定盤42の操作によりポンプ3の設定圧力指示信号が入力されると、常閉スイッチ134bの開き信号を送り、メモリー132a′の記憶値を初期値にするためリセット信号を送り、その設定圧力とポンプ3の吐出圧センサ43からの検出圧力との圧力偏差に応じた回転速度調節信号を回転速度制御装置8aに送る。その回転速度調節信号は、その圧力偏差を低減するように設定された速度でエンジン8を駆動するよう定められ、これによりポンプ3の消火流体吐出圧を自動調圧できる。速度制御部134は、接続された自動調圧解除スイッチ44の操作により手動設定信号が入力されると、常閉スイッチ134bの開き信号、回転速度調節信号、およびリセット信号の伝送を解除する。他は上記実施形態と同様の構成とされ同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
図4は第2変形例を示し、上記第1変形例と同様部分は同一符号で示す。上記第1変形例との相違は、まず、第3の信号発生器23と対応するA/D変換器24c、操作量演算部131e、リレースイッチ131f、リレーコイル131i、操作域判定部131lが設けられておらず、代わって、オペレータの操作速度に応じた速度でパルス信号を発生可能な3つのパルスジェネレータ221、222、223と対応するパルス発生判定部224a、224b、224c、パルス信号用リレースイッチ231a、231b、232a、232b、233a、233b、パルス信号用リレーコイル231c、232c、233c、パルス方向判定部234を備える。本変形例では、パルスジェネレータ221、222、223は車体2に取り付けられ、信号発生器21、22は遠隔操作盤Rに取り付けられる。
【0031】
すなわち制御装置230の選択部231においては、第1のパルスジェネレータ221にA相信号線221AとB相信号線221Bを介して常開のA相用第1リレースイッチ231aとB相用第1リレースイッチ231bが接続され、両リレースイッチ231a、231bに対応するリレーコイル231cが設けられ、第2のパルスジェネレータ222にA相信号線222AとB相信号線222Bを介して常開のA相用第2リレースイッチ232aとB相用第2リレースイッチ232bが接続され、両リレースイッチ232a、232bに対応するリレーコイル232cが設けられ、第3のパルスジェネレータ223にA相信号線223AとB相信号線223Bを介して常開のA相用第3リレースイッチ233aとB相用第3リレースイッチ233bが接続され、両リレースイッチ233a、233bに対応するリレーコイル233cが設けられている。各パルスジェネレータ221、222、223はA相信号線221A、222A、223A、パルス発生判定部224a、224b、224cを介して選択回路231mに接続される。選択回路231mに各リレーコイル131g、131h、231c、232c、233cが接続されている。
【0032】
パルス方向判定部234は、A相パルス信号に対するB相パルス信号の位相のずれからパルスジェネレータ221、222、223の操作方向を判断し、パルスジェネレータ221、222、223から選択回路231mを介して送られるパルス信号のパルス数に対応する信号値の符号を、そのパルスジェネレータが一方向に操作される時は正値とし、他方向に操作される時は負値とする。
【0033】
回転速度調節信号生成部233における累積部232は記憶装置132aを有する。
記憶装置132aは、メモリー132a′と書き込み回路132a″を有する。書き込み回路132a″は、各信号発生器21、22にリレースイッチ131b、131d、操作量演算部131a、131c、A/D変換器24a、24bを介して接続され、選択部231を介して何れかの操作量演算部131a、131cから出力される操作部材の操作量と操作方向に対応する値のデジタル信号の値を、一定時間毎にメモリー132a′の現時点の記憶値に加算するように書き込む。また、メモリー132a′には、パルス方向判定部234を介して送られるパルス信号のパルス数に対応する正または負の信号値が記憶値として累積的に書き込まれる。
【0034】
各信号発生器21、22の操作部材21a、22aの操作量が設定閾値を超えるか否かが各操作域判定部131j、131kにより判定され、パルスジェネレータ221、222、223がパルス信号を発生したか否かがパルス発生判定部224a、224b、224cにより判定され、その判定結果が選択回路231mに送られる。
選択回路231mは、信号発生器21、22とパルスジェネレータ221、222、223の中で、一つの信号発生器のみの操作量が設定閾値を超える場合、または一つのパルスジェネレータのみがパルスを発生する場合、その一つの信号発生器またはパルスジェネレータに対応するリレーコイルのみを励磁することで、励磁されたリレーコイルに対応するリレースイッチのみ閉じる。
選択回路231mは、複数の信号発生器21、22の操作量が設定閾値を超える場合、複数のパルスジェネレータ221、222、223がパルスを発生する場合、または少なくとも一つの信号発生器の操作量が設定閾値を超えると共に少なくとも一つのパルスジェネレータがパルスを発生する場合、最初に入力された信号を発生した信号発生器またはパルスジェネレータに対応するリレーコイルを励磁することで、励磁されたリレーコイルに対応するリレースイッチのみ閉じる。
これにより、選択部231は信号発生器21、22とパルスジェネレータ221、222、223の中の何れか一つから送られる信号を選択し、その選択した信号を記憶装置132aに送る。
【0035】
選択部231により選択される信号が信号発生器21、22の中の何れかからの信号である場合、記憶装置132aはメモリー132a′に、選択部231により選択される信号の時系列な値を累積する。また、選択回路231mにより選択される信号がパルスジェネレータ221、222、223の中の何れかからの信号である場合、記憶装置132aはメモリー132a′に、選択部231により選択されるパルス信号のパルス数に対応する信号値を累積する。この累積される値の大きさが、選択された信号に対応する操作部材が基準位置Pから一方向に操作される時と、選択される信号に対応するパルスジェネレータが一方向に操作される時は次第に増大され、選択された信号に対応する操作部材が基準位置Pから他方向に操作される時と、選択される信号に対応するパルスジェネレータが他方向に操作される時は次第に減少されるように、信号発生器21、22の発生信号値の正負の符号が定められ、パルスジェネレータ221、222、223の発生パルス信号のパルス数に対応する信号値の正負の符号が定められている。メモリー132a′に記憶されたデジタル信号の値の累積値に対応する信号が、一定時間毎にD/A変換器140を介して回転速度調節信号として出力される。その回転速度調節信号がエンジン8の回転速度制御装置8aに入力される。他は上記第2変形例と同様の構成とされる。
【0036】
上記第2変形例によれば、信号発生器21、22は、パルスジェネレータ221、222、223のようにA相信号線221AとB相信号線221Bのような2種類の信号線を用いることなく、その操作方向を信号の値から判断でき、信号線21L、22Lが多くなることはない。特に、信号発生器21、22を遠隔操作盤Rに取り付ける場合に、信号線21L、22Lの取り扱いが容易になって作業性を向上できる。また、選択部231が信号発生器21、22から送られる信号を選択する場合、信号発生器21、22は時間的に連続して信号を発生し、その信号の時系列な値の累積値が回転速度調節信号に対応し、選択部231がパルスジェネレータ221、222、223から送られる信号を選択する場合、エンジン8の回転速度調節信号はパルス信号のパルス数を累積した値に対応するため、速度調節を行う信号発生器21、22またはパルスジェネレータ221、222、223を切り換えてもエンジン回転速度が急変することはない。また、エンジン8の回転速度をパルスジェネレータ221、222、223により調節する場合、エンジン8の回転速度の調節速度はパルスジェネレータ221、222、223のパルス発生速度に対応するため、パルスジェネレータ221、222、223の操作速度に応じた任意の速度に容易に調節できる。他は第2変形例と同様の作用効果を奏することができる。
【0037】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、信号発生器はポテンショメータに限定されず、操作部材の基準位置からの操作量と操作方向に対応する値の信号を時間的に連続して発生可能なものであればよく、例えば、操作部材として回転位置が基準位置から一定距離毎に段階的に位置決めされるロータリースイッチを有し、ロータリースイッチの位置に応じた電気信号を時間的に連続して発生するものでもよい。また、信号発生器の数を4以上にしてもよい。第2変形例において、信号発生器の数は1つでも3つ以上でもよく、パルスジェネレータの数も1つ、2つ又は4つ以上でもよく、少なくとも一つの信号発生器と少なくとも一つのパルスジェネレータを備えていればよい。信号発生器の消防車における配置は特に限定されず、使い勝手に応じて定めればよく、例えば消防車の運転室や後側に配置されてもよい。また、本発明を構成するためのスイッチ等のデバイスは、その機能を奏することができるものであれば構成は限定されない。さらに、選択部は複数の信号発生器の中の何れか一つから送られる信号を選択するものであればよく、その選択の仕方は特に限定されない。例えば、第1実施形態において第3リレースイッチ31cを他方の信号発生器22でなく一方の信号発生器21に接続し、両方の信号発生器21、22の操作量が設定閾値を超えた場合は他方の信号発生器22から送られる信号を選択したり、他方の信号発生器22の操作量が設定閾値を超えた場合に開かれる常閉のリレースイッチであって一方の信号発生器21に接続されるものを追加することで、複数の信号発生器21、22の操作量が設定閾値を超えた場合は何れの信号も選択せず、信号発生器21、22の何れか一つの操作量が設定閾値を超えた場合のみ送られる信号を選択するようにしたり、各変形例において最後に操作量が設定閾値を超えた信号発生器からの信号を選択するようにしてもよい。また、各信号発生器と回転速度調節信号生成部との間を開閉する選択スイッチを各操作部材の近傍に配置し、エンジン回転速度を調節するための信号発生器をオペレータによる選択スイッチの操作により選択するようにしてもよい。また、信号発生器の操作量に閾値を設定せず、操作量に関わらず信号発生器の発生信号は選択の対象にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態の消防車の構成説明図
【図2】本発明の実施形態の消防車における要部の構成説明図
【図3】本発明の第1変形例の消防車における要部の構成説明図
【図4】本発明の第2変形例の消防車における要部の構成説明図
【符号の説明】
【0039】
3 消火流体吐出用ポンプ
8 エンジン
21、22、23 信号発生器
21a、22a、23a、221a、222a、223a 操作部材
31、131、231 選択部
32、132、232 累積部
32a 信号変換回路(信号出力要素)
32b コンデンサー
33、133、233 回転速度調節信号生成部
131a、131c、131e 各操作量演算部(信号出力要素)
132a 記憶装置
221、222、223 パルスジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火流体吐出用ポンプと、
前記ポンプの駆動用エンジンと、
操作部材を有すると共に、その操作部材の基準位置からの操作量と操作方向に対応する値の信号を、時間的に連続して発生可能な複数の信号発生器と、
前記信号発生器の中の何れか一つから送られる信号を選択する選択部と、
前記エンジンの回転速度調節信号を生成する回転速度調節信号生成部とを備え、
前記回転速度調節信号生成部は、前記選択部により選択される信号の時系列な値を累積する累積部を有し、この累積される値の大きさは、前記操作部材が前記基準位置から一方向に操作される時は次第に増大され、前記操作部材が前記基準位置から他方向に操作される時は次第に減少され、
前記累積部において累積された値に応じて前記回転速度調節信号が生成される消防車。
【請求項2】
消火流体吐出用ポンプと、
前記ポンプの駆動用エンジンと、
操作部材を有すると共に、その操作部材の基準位置からの操作量と操作方向に対応する値の信号を、時間的に連続して発生可能な少なくとも一つの信号発生器と、
オペレータの操作速度に応じた速度でパルス信号を発生可能な少なくとも一つのパルスジェネレータと、
前記信号発生器と前記パルスジェネレータの中の何れか一つから送られる信号を選択する選択部と、
前記エンジンの回転速度調節信号を生成する回転速度調節信号生成部とを備え、
前記回転速度調節信号生成部は、前記選択部により選択される信号が前記信号発生器からの信号である場合、その選択される信号の時系列な値を累積し、前記選択部により選択される信号が前記パルスジェネレータからの信号である場合、その選択されるパルス信号のパルス数に対応する信号値を累積する累積部を有し、この累積される値の大きさは、前記操作部材が前記基準位置から一方向に操作される時と前記パルスジェネレータが一方向に操作される時は次第に増大され、前記操作部材が前記基準位置から他方向に操作される時と前記パルスジェネレータが他方向に操作される時は次第に減少され、
前記累積部において累積された値に応じて前記回転速度調節信号が生成される消防車。
【請求項3】
前記信号発生器の発生信号を電流信号として出力する信号出力要素を備え、
前記累積部は、前記電流信号により充放電されるコンデンサーを有し、
前記エンジンの回転速度調節信号は前記コンデンサーの端子電圧に対応する請求項1または2に記載の消防車。
【請求項4】
前記信号発生器の発生信号をデジタル信号として出力する信号出力要素を備え、
前記累積部は、前記デジタル信号の値を累積的に記憶する記憶装置を有し、
前記エンジンの回転速度調節信号は前記記憶装置に記憶された前記デジタル信号の値の累積値に対応する請求項1または2に記載の消防車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−217957(P2006−217957A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31775(P2005−31775)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【Fターム(参考)】